(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂成形品、及び繊維強化樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 39/24 20060101AFI20220203BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B29C39/24
B29C39/10
(21)【出願番号】P 2017216295
(22)【出願日】2017-11-09
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 茂則
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-260238(JP,A)
【文献】特開2000-43171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/24
B29C 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂製の板状のコア材と、前記コア材の表面及び裏面にそれぞれ重ねられる一対のシート状の補強繊維基材とを有する積層体と、
前記積層体に含浸された未硬化状態の樹脂が硬化されてなる樹脂部とを備える繊維強化樹脂成形品であって、
前記積層体の前記コア材は、前記表面及び裏面に、又は内部に形成され、未硬化状態の前記樹脂を面方向に沿って流す流路と、厚み方向に貫通しつつ、前記流路と繋がる孔部からなり、前記補強繊維基材越しに外部から未硬化状態の前記樹脂が供給される供給口とを有し、
前記樹脂部は、前記流路を埋める流路樹脂部と、前記供給口を埋める供給口樹脂部とを有
し、
前記積層体の前記コア材は、前記流路として使用される隙間が形成されるように互いに重ねられ、各々が板状をなした一対の単位コア材を有し、
前記樹脂部は、前記流路樹脂部として、前記隙間を埋める隙間樹脂部を有する繊維強化樹脂成形品。
【請求項2】
前記積層体の前記コア材は、一対の前記単位コア材の間に配され、前記隙間を確保するスペーサ部を有する
請求項1に記載の繊維強化樹脂成形品。
【請求項3】
発泡樹脂製の板状のコア材と、前記コア材の表面及び裏面にそれぞれ重ねられる一対のシート状の補強繊維基材とを有する積層体と、
前記積層体に含浸された未硬化状態の樹脂が硬化されてなる樹脂部とを備える繊維強化樹脂成形品であって、
前記積層体の前記コア材は、前記表面及び裏面に、又は内部に形成され、未硬化状態の前記樹脂を面方向に沿って流す流路と、厚み方向に貫通しつつ、前記流路と繋がる孔部からなり、前記補強繊維基材越しに外部から未硬化状態の前記樹脂が供給される供給口とを有し、
前記樹脂部は、前記流路を埋める流路樹脂部と、前記供給口を埋める供給口樹脂部とを有し、
前記積層体の前記コア材は、前記内部に形成され、前記流路として使用される空洞部を有し、
前記樹脂部は、前記流路樹脂部として、前記空洞部を埋める空洞樹脂部を
有する繊維強化樹脂成形品。
【請求項4】
前記積層体の前記コア材は、前記流路と、一方の前記補強繊維基材に面する表面側又は他方の前記補強繊維基材とを連絡し、未硬化状態の前記樹脂の流れを分岐させる分岐路を有し、
前記樹脂部は、前記分岐路を埋める分岐路樹脂部を有する請求項1~
請求項3の何れか一項に記載の繊維強化樹脂成形品。
【請求項5】
請求項1~
請求項4の何れか一項に記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法であって、
前記積層体が収容された成形型のキャビティに、外部から未硬化状態の樹脂が供給されると、前記補強繊維基材越しに前記供給口に未硬化状態の樹脂が供給され、かつ前記樹脂が前記流路に沿って流れる樹脂供給工程とを備える繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂成形品、及び繊維強化樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボン繊維やガラス繊維等の補強繊維で強化された樹脂成形品が広く用いられている。このような樹脂成形品の一例として、発泡樹脂からなるコア材の表裏面にシート状の補強繊維基材が重ねられた積層物を、熱硬化性樹脂で固めたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の樹脂成形品は、RTM(Resin Transfer Molding)法を利用して成形されており、具体的には、成形型のキャビティ内に上記積層物がセットされた状態で、キャビティ内に未硬化状態の流動性を備えた熱硬化性樹脂が注入され、その樹脂が前記積層物の補強繊維基材等に含浸された状態で熱硬化されることにより、上記樹脂成形品が製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形型のキャビティ内に熱硬化性樹脂を高い圧力で供給すると、積層物のコア材が潰れてしまう可能性がある。そのため、この種の成形品の製造工程では、樹脂の注入圧力を極力、低く抑えたいという事情があった。しかしながら、樹脂の注入圧力を低く設定すると、積層物中やキャビティ内の隅々に樹脂が行き渡るまでに時間が長くかってしまい、生産効率が低下する。特に、熱硬化性樹脂の粘性が高いと、樹脂が積層物中やキャビティ内の隅々に行き渡るまでに時間がかかってしまう。
【0005】
本発明の目的は、製造時に未硬化状態の樹脂が行き渡り易い構造を備えた繊維強化樹脂成形品等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る繊維強化樹脂成形品は、発泡樹脂製の板状のコア材と、前記コア材の表面及び裏面にそれぞれ重ねられる一対のシート状の補強繊維基材とを有する積層体と、前記積層体に含浸された未硬化状態の樹脂が硬化されてなる樹脂部とを備える繊維強化樹脂成形品であって、前記積層体の前記コア材は、前記表面及び裏面に、又は内部に形成され、未硬化状態の前記樹脂を面方向に沿って流す流路と、厚み方向に貫通しつつ、前記流路と繋がる孔部からなり、前記補強繊維基材越しに外部から未硬化状態の前記樹脂が供給される供給口とを有し、前記樹脂部は、前記流路を埋める流路樹脂部と、前記供給口を埋める供給口樹脂部とを有する。
【0007】
前記繊維強化樹脂成形品において、前記積層体の前記コア材は、前記流路として使用される隙間が形成されるように互いに重ねられ、各々が板状をなした一対の単位コア材を有し、前記樹脂部は、前記流路樹脂部として、前記隙間を埋める隙間樹脂部を有するものであってもよい。
【0008】
前記繊維強化樹脂成形品において、前記積層体の前記コア材は、一対の前記単位コア材の間に配され、前記隙間を確保するスペーサ部を有することが好ましい。
【0009】
前記繊維強化樹脂成形品において、前記積層体の前記コア材は、少なくとも前記裏面に形成され、前記流路として使用される溝を有し、前記樹脂部は、前記流路樹脂部として、前記溝を埋める溝樹脂部を有するものであってもよい。
【0010】
前記繊維強化樹脂成形品において、前記積層体の前記コア材は、前記内部に形成され、前記流路として使用される空洞部を有し、前記樹脂部は、前記流路樹脂部として、前記空洞部を埋める空洞樹脂部を有するものであってもよい。
【0011】
前記繊維強化樹脂成形品において、前記積層体の前記コア材は、前記流路と、一方の前記補強繊維基材に面する表面側又は他方の前記補強繊維基材とを連絡し、未硬化状態の前記樹脂の流れを分岐させる分岐路を有し、前記樹脂部は、前記分岐路を埋める分岐路樹脂部を有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る繊維強化樹脂成形品は、発泡樹脂製の板状のコア材と、前記コア材の表面及び裏面にそれぞれ重ねられる一対のシート状の補強繊維基材とを有する積層体と、前記積層体に含浸された未硬化状態の樹脂が硬化されてなる樹脂部とを備える繊維強化樹脂成形品であって、前記積層体の前記コア材は、隣り合った端面同士の間に、面方向に沿って延びかつ厚み方向に貫通する長手状の貫通流路が形成されるように、分割された一対の分割コア材を有し、前記樹脂部は、長手状の前記貫通流路を埋める貫通流路樹脂部を有する。
【0013】
前記繊維強化樹脂成形品において、前記積層体の前記コア材は、厚み方向に貫通する孔部からなり、一方の前記補強繊維基材に面する表面側と、他方の前記補強繊維基材に面する裏面側とを連通する連通路を有し、前記樹脂部は、前記連通路を埋める連通路樹脂部を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法は、前記何れかに記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法であって、前記積層体が収容された成形型のキャビティに、外部から未硬化状態の樹脂が供給されると、前記補強繊維基材越しに前記供給口に未硬化状態の樹脂が供給され、かつ前記樹脂が前記流路に沿って流れる樹脂供給工程とを備える。
【0015】
また、本発明に係る繊維強化樹脂成形品の製造方法は、前記何れかに記載の繊維強化樹脂成形品の製造方法であって、前記積層体が収容された成形型のキャビティに、外部から未硬化状態の樹脂が供給されると、前記補強繊維基材越しに前記貫通流路に未硬化状態の樹脂が供給され、かつ前記樹脂が前記貫通流路に沿って流れる樹脂供給工程とを備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造時に未硬化状態の樹脂が行き渡り易い構造を備えた繊維強化樹脂成形品等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】繊維強化樹脂成形品の断面構成を模式的に表した説明図
【
図2】成形装置の固定金型に、一対の単位コア材からなるコア材と一対の補強繊維基材とからなる積層体がセットされる工程を示す説明図
【
図3】型締め工程において、可動金型が固定金型に向かって近づく様子を示す説明図
【
図4】型締めされた成形型のキャビティに未硬化状態の樹脂が注入される工程を示す説明図
【
図5】キャビティ内の積層体に、注入孔から供給された樹脂が行き渡る様子を示す説明図
【
図6】固定金型から成形品が脱型される工程を示す説明図
【
図7】実施形態2の成形品の断面構成を模式的に表した説明図
【
図8】実施形態2の成形品の製造工程において、キャビティ内の積層体に、注入孔から供給された樹脂が行き渡る様子を示す説明図
【
図9】実施形態3の成形品の断面構成を模式的に表した説明図
【
図11】実施形態3の成形品の製造工程において、キャビティ内の積層体に、注入孔から供給された樹脂が行き渡る様子を示す説明図
【
図12】実施形態4の成形品の断面構成を模式的に表した説明図
【
図13】実施形態4の成形品の製造工程において、キャビティ内の積層体に、注入孔から供給された樹脂が行き渡る様子を示す説明図
【
図14】実施形態5の成形品の断面構成を模式的に表した説明図
【
図16】実施形態5の成形品の製造工程において、キャビティ内の積層体に、注入孔から供給された樹脂が行き渡る様子を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1を、
図1~
図6を参照しつつ説明する。本実施形態では、繊維強化樹脂成形品10、及びその製造方法について例示する。先ず、
図1を参照しつつ、繊維強化樹脂成形品10について説明する。
【0019】
〔繊維強化樹脂成形品〕
図1は、繊維強化樹脂成形品(以下、成形品)10の断面構成を模式的に表した説明図である。成形品10は、軽量かつ高剛性であり、車両用シートの一部(例えば、バックボード)として利用される。このような成形品10は、コア材11と、コア材11の表裏面にそれぞれ重ねられる一対のシート状の補強繊維基材12a,12bと、補強繊維基材12a,12b等に含浸された後、硬化される熱硬化性樹脂からなる樹脂部13とを備えている。なお、一対の補強繊維基材12a,12bのうち、補強繊維基材12aは、表面11a1側(
図1の上側)に配され、補強繊維基材12bは、裏面11b1側(
図1の下側)に配される。
【0020】
コア材11は、独立気泡構造を有する合成樹脂製(所謂、発泡樹脂製)の部材である。本実施形態のコア材11は、各々が板状をなした一対の単位コア材11a,11bが積層されたものからなる。一対の単位コア材11a,11bのうち、単位コア材11aは、表側(
図1の上側)に配され、単位コア材11bは、裏側(
図1の下側)に配される。なお、コア材11は、全体的には、各補強繊維基材12a,12bよりも厚みの大きな板状(層状)をなしている。コア材11(単位コア材11a,11b)に利用される合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂が挙げられる。単位コア材11a,11bは、比較的薄いため、所定の口金(ダイ)を利用した押出成形で製造することができ、コスト的に優れた部材である。
【0021】
厚み方向で重ねられた単位コア材11a,11bの間には、極僅かな隙間110が形成される。この隙間110は、後述するように、成形品10の製造工程において、未硬化状態の樹脂Rを面方向に沿って流す流路110として利用される。そして、この隙間(流路)110は、成形品10の状態において、面状に薄く広がった状態で硬化した、樹脂部13の一部(流路樹脂部の一例である隙間樹脂部)130によって埋められた状態となる。
【0022】
また、表側の単位コア材11aには、厚み方向に貫通しつつ、流路(隙間)110と繋がる孔部111からなる供給口111が設けられている。供給口111は、後述するように、成形品10の製造工程において、表側の一方の補強繊維基材12a越しに外部から、未硬化状態の樹脂Rが供給される部分である。なお、供給口111内には、補強繊維基材12a,12bと同種の素材からなる充填材121が充填されている。そのような供給口(孔部)111は、成形品10の状態において、充填材121に含浸された状態で硬化した、樹脂部13の一部(供給口樹脂部)131によって埋められた状態となる。
【0023】
また、表側の単位コア材11aは、隙間(流路)110と、表側の一方の補強繊維基材12aに面する表面11a1側とを連絡する分岐路112aを備えている。分岐路112aは、単位コア材11aに複数箇所設けられており、各々が単位コア材11aを厚み方向に貫通する細径の孔部からなる。これに対し、裏側の単位コア材11bは、隙間(流路)110と、裏側の他方の補強繊維基材12bに面する裏面11b側とを連絡する分岐路112bを備えている。分岐路112bは、単位コア材11bに複数箇所設けられており、各々が単位コア材11bを厚み方向に貫通する細径の孔部からなる。本明細書において、分岐路112a,112bをまとめて表現する場合、「分岐路112」とする。分岐路112は、成形品10の状態において、厚み方向に沿って細長く延びた状態で硬化した、樹脂部13の一部(分岐路樹脂部132)によって埋められた状態となる。
【0024】
補強繊維基材12は、シート状に加工されたカーボン繊維(炭素繊維)の織物からなる。補強繊維基材12としては、カーボン繊維以外に、ガラス繊維等の他の繊維が利用されてもよいが、高強度を備える等の観点より、カーボン繊維からなる補強繊維基材12が最も好ましい。本実施形態の場合、表側の補強繊維基材12aと、裏側の補強繊維基材12bは、互いに同じ厚みのカーボン繊維の織物からなる。本明細書において、表側の補強繊維基材12aと、裏側の補強繊維基材12bをまとめて表現する場合、「補強繊維基材12」とする。
【0025】
図1に示されるように、コア材11は、一対の補強繊維基材12a,12bによって表裏面側から挟まれており、それらは、所謂、サンドイッチ構造となっている。
【0026】
樹脂部13に利用される熱硬化性樹脂としては、RTM法で一般的に用いられるもの(例えば、二液混合型のエポキシ樹脂)が用いられる。なお、熱硬化性樹脂としては、無色透明なものが利用されてもよいし、着色剤が添加されているものが利用されてもよい。
【0027】
成形品10において、樹脂部13を構成する熱硬化性樹脂の硬化物は、補強繊維基材12の内部のみならず、補強繊維基材12の表面を覆うように形成される。そのため、成形品10において、樹脂部13は、コア材11と一対の補強繊維基材12a,12bからなる積層体の全体を包み込むように形成されている。
【0028】
このような成形品10は、コア材11を含むため、軽量性、及び高剛性を維持しつつ、比較的高価である補強繊維基材12(特に、カーボン繊維製)の使用量を低減することができる。また、コア材11は、流路110、供給口111、及び分岐路112を備えるため、成形品10の製造工程において、樹脂の供給圧力(注入圧力)が比較的、低い場合であっても、成形品10の細部に、未硬化状態の樹脂を行き渡らせ易い。
【0029】
〔繊維強化樹脂成形品の製造方法〕
次いで、
図2~
図6を参照しつつ、成形装置20を利用した成形品10の製造方法を説明する。
図2は、成形装置20の固定金型31に、一対の単位コア材11a,11bからなるコア材11と一対の補強繊維基材12a,12bとからなる積層体Xがセットされる工程を示す説明図である。
【0030】
成形装置20は、一方の分割金型である固定金型31と、他方の分割金型である可動金型32(
図3参照)とを有する成形型30を備えている。固定金型31は、成形品10の裏側を形作る成形面31aを備えている。成形面31aは、中央側が凹状に窪んだ形をなしている。
図2には、型開き状態の成形型30が示されており、成形面31aが上方を向くように、固定金型31が水平な床面上に配置されている。型開き状態において、固定金型31の上方には、可動金型32が待機しているが、
図2では、省略されている。このような型開き状態の固定金型31の成形面31a上に、一対の単位コア材11a,11bからなるコア材11と一対の補強繊維基材12a,12bからなる積層体Xが載せられる(セット工程)。積層体Xは、成形面31aの形状に倣った状態で、固定金型31にセットされる。本実施形態の場合、周縁が立ち上がった状態で、積層体Xが固定金型31の成形面31a上に載せられている。積層体Xは、予め成形面31aの形に倣った形状に成形(プリフォーム)されてもよい。積層体Xを構成する補強繊維基材12a,12bには、予めバインダ(例えば、粉末状の接着剤)が付与されており、そのバインダの作用で、積層体Xが所定形状に保たれている。なお、成形面31aに積層体Xを押し付ける等して成形面31aを利用して積層体Xを賦形してもよい。
【0031】
図2に示されるように、積層体Xのコア材11は、比較的、厚みの小さい単位コア材11a,11bが重ねられたものからなる。また、コア材11は、平面視で、補強繊維基材12a,12bよりも小さく、コア材11の周縁の外側に、補強繊維基材12a,12bの周縁が配された状態となっている。そして、補強繊維基材12a,12bの周縁同士は、コア材11を介さずに、直接、互いに重なった状態となっている。
【0032】
図3は、型締め工程において、可動金型32が固定金型31に向かって近づく様子を示す説明図である。
図3に示されるように、固定金型31の上方で待機していた可動金型32が、固定金型31側に向かって近づくように下降することで、成形型30の型締めが行われる(型締め工程)。可動金型32は、油圧シリンダー等を備えた公知の昇降機構(往復機構)(不図示)を利用して昇降駆動する。このような可動金型32には、成形品10の表側を形作る成形面32aが設けられている。成形面32aは、中央側が凸状に盛り上がった形をなしている。成形面32aは、固定金型31側を向く可動金型32の内側(内面側)に設けられている。なお、後述するように、型締め状態の成形型30において、可動金型32の成形面32aと、固定金型31の成形面31aで囲まれた空間が、成形型30のキャビティCとなる。
【0033】
可動金型32は、全体的には、固定金型31の凹状の成形面31aを覆うような蓋状をなしている。このような可動金型32の中央部分には、成形型30内に樹脂を注入するための注入孔(スプルー)33が設けられている。注入孔33は、可動金型32を貫通する形で設けられており、成形型30のキャビティCに連通している。そして、そのような注入孔33には、樹脂供給装置40のノズル41が接続されている。
【0034】
樹脂供給装置40は、成形型30のキャビティCに未硬化状態の熱硬化性樹脂を供給する装置である。本実施形態の樹脂供給装置40は、主剤と硬化剤からなる二液混合型のエポキシ樹脂(樹脂R)を成形型30内に供給する。樹脂供給装置40は、主剤と硬化剤とを衝突混合させながら成形型30側へ吐出するミキシングヘッドを備えている。主剤と硬化剤は、それぞれ所定のタンク内に収容されており、各々の圧送ポンプによって正確な配合比でミキシングヘッドに送られる。そして、ミキシングヘッド内で主剤と硬化剤が互いに衝突しながら混ざり合い、それらの混合物からなる未硬化状態のエポキシ樹脂が、ミキシングヘッドの先端にあるノズル41から吐出される。ノズル41から吐出された樹脂は、注入孔33を介してキャビティCに注入される。
【0035】
また、可動金型32の内側(内面側)の周縁側には、キャビティCの周縁を取り囲むシール部材34が設けられている。このようなシール部材34が、型締め時に固定金型31と可動金型32との間で挟まれることにより、キャビティCの周りにある可動金型32と固定金型31の間の隙間が密封される。
【0036】
図4は、型締めされた成形型30のキャビティCに未硬化状態の樹脂Rが注入される工程を示す説明図である。
図4に示されるように、成形型30が型締めされると、固定金型31の成形面31aと、可動金型32の成形面32aとで囲まれた空間が1つのキャビティCとして形成される。型締めされた成形型30のキャビティCには、積層体Xが収容された状態となっている。
【0037】
型締め後、成形装置20が備える負圧付与機構(不図示)を利用して、キャビティC内のガスが外部に排出され、キャビティC内が負圧状態にされる(負圧付与工程)。成形型30の可動金型32には、貫通孔状の排気孔(不図示)が設けられており、その排気孔を介してキャビティC内のガスが、真空ポンプにより外部へ排出される。
【0038】
キャビティC内の負圧が所定の値になったところで、所定の弁装置(不図示)が作動し、排気孔からのガスの排出が停止される。そして、キャビティC内は、気密状態で保たれる。その後、このような状態のキャビティC内に、樹脂供給装置40を利用して未硬化状態の樹脂(エポキシ樹脂)が注入される。本実施形態の場合、樹脂供給装置40の注入圧力は、積層体Xのコア材11が潰れること等を抑制するために、比較的、低圧力(例えば、0.3MPa~5MPa、好ましくは1MPa以下)に設定される。
【0039】
樹脂供給装置40は、主剤と硬化剤とからなる二液混合型のエポキシ樹脂(樹脂R)を、衝突混合させながら、キャビティC内へ注入する(樹脂供給工程)。
図5は、キャビティC内の積層体Xに、注入孔33から供給された樹脂Rが行き渡る様子を示す説明図である。
図5に示されるように、供給口111の真上に注入孔33が配されるように、積層体XがキャビティC内にセットされている。供給口111は、表側の単位コア材11aを貫通する孔部からなり、平面視で、注入孔33よりも小さな円形状をなしている。供給口111の中には、カーボン繊維の織物からなる充填材121が充填されており、単位コア材11a内に大きな空隙が形成されることが抑制されている。
【0040】
注入孔33から供給された樹脂Rは、キャビティC内において、表側の補強繊維基材12a越しに、コア材11の供給口111に供給される。補強繊維基材12aは、カーボン繊維の織物からなるため、多孔質状であり、未硬化状態の樹脂Rを含浸し易く、しかも樹脂Rを通過させ易い。なお、注入孔33から供給された樹脂Rの一部は、コア材11の表面に沿いつつ、表側の補強繊維基材11の内部を面方向に広がるように移動する。
【0041】
供給口111に供給された樹脂Rは、供給口111と繋がる単位コア材11a,11bの間の隙間(流路)110に供給される。隙間110に供給された樹脂Rは、面状に広がるように隙間110内を移動する。隙間110内を移動する際に、樹脂Rの一部は、単位コア材11a,11bに設けられている各分岐路112(112a,112b)に浸入し、表側の補強繊維基材12aや、裏側の補強繊維基材12aにそれぞれ供給される。注入孔33に樹脂Rが供給され続け、キャビティC内が樹脂で埋め尽くされると、積層体Xの表側の補強繊維基材12a及び裏側の補強繊維基材12bは、それぞれ樹脂Rに含浸された状態となる。また、積層体X内に樹脂Rを行き渡らせるための流路として利用された、コア材11の隙間110、供給口111及び分岐路112は、何れも樹脂Rで埋められた状態となっている。
【0042】
積層体Xのコア材11は独立気泡構造の発泡樹脂からなるため、コア材11に未硬化状態の樹脂Rを積極的に含浸させることはできないものの、上記のようにコア材11に供給口111、隙間(流路)110及び分岐路112を設けることで、コア材11と各補強繊維基材12a,12bとの間等に、効率よく樹脂Rを行き渡らせることができる。
【0043】
未硬化状態である液状の樹脂R(エポキシ樹脂)は、粘性が低いため(例えば、数mPa・s~数100mPa・s程度)、樹脂の注入圧力が低くても、積層体Xに含浸され易い。つまり、エポキシ樹脂は隙間110や分岐路112等の小さなスペースでも移動することができる。
【0044】
成形型30のキャビティC内が樹脂Rで充填された後、樹脂Rの吐出が停止され、その後、キャビティC内が保圧(保圧工程)される。そして、キャビティC内が保圧された状態で、成形型30内の樹脂Rの硬化が行われる(硬化工程)。成形型30には、図示されない加熱装置(ヒーター等)が備えられており、その加熱装置により成形型30が加熱されることで、キャビティC内の樹脂Rの硬化が行われる。
【0045】
隙間110内の樹脂Rが硬化すると、隙間樹脂部130(流路樹脂部の一例、
図1参照)となり、供給口111内の樹脂Rが硬化すると、供給口樹脂部131(
図1参照)となり、分岐路112内の樹脂Rが硬化すると、分岐路樹脂部132(
図1参照)となる。その後、成形型30が型開きされる(型開き工程)。型開きの際、可動金型32が固定金型31から離れるように上昇する。
【0046】
図6は、固定金型31から成形品10が脱型される工程(脱型工程)を示す説明図である。型開き後、固定金型31の成形面31a上に残された成形品10が、成形面31aから取り外される。このようにして、成形装置20を利用して、成形品10が製造される。
【0047】
以上のように、コア材11の内部に、未硬化状態の樹脂Rを平面方向に通す流路(隙間110)を形成することで、成形品10の外観に影響を与えることなく、キャビティC内及び積層体X内に樹脂Rを行き渡らせることができる。樹脂Rの注入圧力が低圧の場合や、樹脂Rの粘度が高い場合でも、短時間で成形型のキャビティC内に樹脂Rを隅々まで行き渡らせることができる。
【0048】
<実施形態2>
次いで、本発明の実施形態2を、
図7及び
図8を参照しつつ説明する。
図7は、実施形態2の成形品10Aの断面構成を模式的に表した説明図であり、
図8は、実施形態2の成形品10Aの製造工程において、キャビティC内の積層体XAに、注入孔33から供給された樹脂Rが行き渡る様子を示す説明図である。なお、実施形態2以降の各実施形態では、上記実施形態1の成形品10と同じ構成については、実施形態1と同じ符号を付し、その詳細説明は適宜、省略する。
【0049】
本実施形態の成形品10Aは、
図7に示されるように、コア材11Aと、コア材11Aの表面11Aa1及び裏面11Ab1に重ねられる一対の補強繊維基材12a、12bと、補強繊維基材12a,12b等に含浸された後、硬化される熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる樹脂部13Aとを備えている。コア材11Aは、一対の単位コア部材11Aa,11Abが重ねられたものからなり、それらの間の隙間110Aが、未硬化状態の樹脂Rを通す流路となっている。
【0050】
本実施形態の場合、表側の単位コア部材11Aaの内面側(裏側の補強繊維基材12bと対向する面側)には、スペーサ部113Aが複数個設けられている。スペーサ部113Aは、単位コア部材11aの内面から凸状に盛り上がった形を成しており、そのようなスペーサ部113Aにより、単位コア部材11Aa,11Abの間に隙間110Aが形成され易くなっている。このような隙間110Aは、樹脂部13Aの一部である隙間樹脂部(流路樹脂部の一例)130Aで埋められている。
【0051】
コア材11Aを構成する表側の単位コア部材11Aaには、実施形態1と同様、充填材121Aが充填された供給口111Aが形成されている。そして、その供給口111Aは、樹脂部13Aの一部である供給口樹脂部131Aで埋められている。また、各単位コア部材11Aa,11Abには、実施形態1と同様、複数の分岐路112Aが形成されている。そして、各分岐路112Aは、樹脂部13Aの一部である分岐路樹脂部132Aで埋められている。
【0052】
図8に示されるように、積層体XAがセットされた成形型のキャビティC内に、注入孔33より未硬化状態(液状)の樹脂Rが供給されると、その樹脂Rは、実施形態1と同様、表側の補強繊維基材12a越しに、積層体XA内に供給される。そして、補強繊維基材12aを通って供給口111Aに供給された樹脂Rは、隙間110A内で面状に広がるように移動しつつ、その途中で各分岐路112Aに分配される。特に、本実施形態の場合、隙間110Aがスペーサ部113Aにより確実に確保されるため、樹脂Rが、隙間110A内を面状に広がるように移動し易い。そのため、本実施形態では、未硬化状態の樹脂Rを、キャビティC内及び積層体XA内(特に、各補強繊維基材12a,12b等)に、効率よく行き渡らせることができる。
【0053】
<実施形態3>
次いで、本発明の実施形態3を、
図9~
図11を参照しつつ説明する。
図9は、実施形態3の成形品10Bの断面構成を模式的に表した説明図であり、
図10は、実施形態3のコア材11Bの斜視図であり、
図11は、実施形態3の成形品10Bの製造工程において、キャビティC内の積層体XBに、注入孔33から供給された樹脂Rが行き渡る様子を示す説明図である。
【0054】
本実施形態の成形品10Bは、
図9に示されるように、コア材11Bと、コア材11Bの表面11B1及び裏面11B2に重ねられる一対の補強繊維基材12a,12bと、補強繊維基材12a,12b等に含浸された後、硬化される熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる樹脂部13Bとを備えている。コア材11Bは、一枚の発泡樹脂製の板材からなる。コア材11Bには、表側の補強繊維基材12a越しに未硬化状態の樹脂Rが供給される貫通孔状の供給口111Bが設けられている。この供給口111B内には、
図9に示されるように、実施形態1等と同様、カーボン繊維の織物からなる充填材121Bが充填されている。そして、成形品10Bの状態において、充填材121Bが充填された供給口111B内は、樹脂部13Bの一部である供給口樹脂部131Bで埋められている。また、コア材11Bの裏面11B2には、供給口11Bと接続しつつ、面方向に沿って延びる形で複数の溝110Bが設けられている。溝110Bは、未硬化状態の樹脂Rを通す流路であり、特に、コア材11Bの裏面11B2に樹脂Rが行き渡り易いように設けられている。
【0055】
また、成形品10Bの状態において、溝110Bは、樹脂部13Bの一部である溝樹脂部130Bで埋められている。また、コア材11Bには、厚み方向に貫通する形で設けられた複数の分岐路112Bが設けられている。各分岐路112Bは、裏面11B2側の溝110Bと表面11B1側とを連通する。そして、成形品10Bの状態において、各分岐路112Bは、樹脂部13Bの一部である分岐路樹脂部132Bで埋められている。
【0056】
図11に示されるように、積層体XBがセットされた成形型のキャビティC内に、注入孔33より未硬化状態(液状)の樹脂Rが供給されると、その樹脂Rは、実施形態1と同様、表側の補強繊維基材12a越しに、積層体XB内に供給される。そして、補強繊維基材12aを通って供給口111Bに供給された樹脂Rは、裏側の補強繊維基材12bに含浸されながら、溝110Bに導かれつつ、コア材11Bの裏面11B2を覆うように面状に広がる。また、注入孔33より供給された樹脂Rの一部は、コア材11Bの表面11B1に沿う形で、表側の補強繊維基材12aに含浸されつつ面状に広がる。
【0057】
本実施形態のように、コア材11Bに供給口111B、溝110B、及び分岐路112Bを設けることで、未硬化状態の樹脂Rを、キャビティC内及び積層体XB内(特に、各補強繊維基材12a,12b等)に効率よく行き渡らせることができる。
【0058】
<実施形態4>
次いで、本発明の実施形態4を、
図12及び
図13を参照しつつ説明する。
図12は、実施形態4の成形品10Cの断面構成を模式的に表した説明図であり、
図13は、実施形態4の成形品10Cの製造工程において、キャビティC内の積層体XCに、注入孔33から供給された樹脂Rが行き渡る様子を示す説明図である。
【0059】
本実施形態の成形品10Cは、
図12に示されるように、コア材11Cと、コア材11Cの表面11C1及び裏面11C2に重ねられる一対の補強繊維基材12a,12bと、補強繊維基材12a,12b等に含浸された後、硬化される熱硬化樹脂(エポキシ樹脂)からなる樹脂部13Cとを備えている。コア材11Cは、一枚の発泡樹脂製の板材からなり、コア材11Cには、表側の補強繊維基材12a越しに未硬化状態の樹脂が供給される貫通孔状の供給口111Cが設けられている。この供給口111C内には、
図12に示されるように、実施形態1等と同様、カーボン繊維の織物からなる充填材121Cが充填されている。そして、充填材121Cが充填された供給口111C内は、樹脂部13Cの一部である供給口樹脂部131Cで埋められている。
【0060】
コア材11Cの内部には、供給口11Bと接続しつつ、面方向に沿って延びる空洞部110Cが設けられている。空洞部110Cは、未硬化状態の樹脂Rを通す流路であり、コア材11C内に複数設けられている。また、コア材11Cには、空洞部110Cと、コア材11Cの表面11C1側又は裏面11C2側とを連絡し、空洞部10C内を流れる樹脂Rの流れを分岐させる分岐路112Cが複数設けられている。成形品10Cの状態において、空洞部110C内は、樹脂部13Cの一部である空洞樹脂部130Cで埋められ、また、各分岐路112C内は、樹脂部13Cの一部である分岐路樹脂部132Cで埋められている。
【0061】
図13に示されるように、積層体XCがセットされた成形型のキャビティC内に、注入孔33より未硬化状態(液状)の樹脂Rが供給されると、その樹脂Rは、実施形態1と同様、表側の補強繊維基材12a越しに、積層体XC内の供給口111Cに供給される。そして、補強繊維基材12aを通って供給口111Cに供給された樹脂Rの一部は、空洞部130C内に浸入し、更に、空洞部130Cに沿って面方向へ移動する。空洞部130C内を流れる樹脂Rは、適宜、分岐路112Cで分岐されるため、コア材11Cの表面11C1側及び裏面11C2側に、それぞれ樹脂Rが行き渡る。また、供給口111Cから裏側の補強繊維基材11bに供給された樹脂Rは、コア材11Cの裏面11C2に沿う形で、裏側の補強繊維基材12bに含浸されつつ面状に広がる。また、注入孔33より供給された樹脂Rの一部は、コア材11Cの表面11C1に沿う形で、表側の補強繊維基材12aに含浸されつつ面状に広がる。
【0062】
本実施形態のように、コア材11Cに供給口11C、空洞部110C、及び分岐路112Cを設けることで、未硬化状態の樹脂Rを、キャビティC内及び積層体XC内(特に、各補強繊維基材12a,12b等)に効率よく行き渡らせることができる。
【0063】
<実施形態5>
次いで、本発明の実施形態5を、
図14~
図16を参照しつつ説明する。
図14は、実施形態5の成形品10Dの断面構成を模式的に表した説明図であり、
図15は、実施形態5のコア材14Dの平面図であり、
図16は、実施形態5の成形品10Dの製造工程において、キャビティC内の積層体XDに、注入孔33から供給された樹脂Rが行き渡る様子を示す説明図である。
【0064】
本実施形態の成形品10Dは、
図14に示されるように、コア材11Dと、コア材11Dの表面11D1及び裏面11D2に重ねられる一対の補強繊維基材12a,12bと、補強繊維基材12a,12b等に含浸された後、硬化される熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる樹脂部13Dとを備えている。コア材11Dは、面方向で分割された一対の分割コア材11Da,11Dbからなる。分割コア材11Da,11Dbは、それぞれ、発泡樹脂製の板材からなり、それらが隣り合った端面11D3,11D4同士の間に、面方向に沿って延びかつ厚み方向に貫通する長手状の貫通流路113Dが形成される。貫通流路113Dは、製造過程において、未硬化状態の樹脂Rを面方向に沿って通す流路ある。各端面11D3,11D4はそれぞれ長手状をなしており、それらの両端部に、それぞれ各端面11D3,11D4から突出した凸部115Dが設けられている。貫通流路113Dは、各端面11D3,11D4と、各凸部114Dとで囲まれた部分からなる。
【0065】
貫通流路113D内には、
図14及び
図15に示されるように、カーボン繊維の織物からなる充填材123Dが充填されている。そして、充填材123Dが充填された貫通流路113D内は、樹脂部13Dの一部である貫通流路樹脂部133Dで埋められている。また、コア材11D(分割コア材11Da,11Db)には、厚み方向に貫通する孔部からなり、表面11D1側と裏面11D2側とを連通する連通路114Dが形成されている。連通路114Dは、各分割コア材11Da,11Dbにそれぞれ複数設けられている。成形品10Dの状態において、各分割コア材11Da、11Dbには、樹脂部13Dの一部である連通路樹脂部134Dで埋められている。
【0066】
図16に示されるように、積層体XDがセットされた成形型のキャビティC内に、注入孔33より未硬化状態(液状)の樹脂Rが供給されると、その樹脂Rは、表側の補強繊維基材12a越しに、積層体XD内の貫通流路113Dに供給される。そして、貫通流路113Dに供給された樹脂Rは、貫通流路113Dの長手方向等に沿って移動する。貫通流路113D内に浸入した樹脂Rの一部は、コア材11Dの裏面11D2に沿いつつ、裏側の補強繊維基材12bに含浸された状態で、面状に広がる。注入孔33より供給された樹脂Rの一部は、コア材11Dの表面11D1に沿う形で、表側の補強繊維基材12aに含浸されつつ面状に広がる。また、コア材11Dの表面11D1側の樹脂Rの一部は、連通路114Dを介して裏面側11D2側へ移動する。場合によっては、裏面11D2側の樹脂Rの一部が、表面11D1側へ移動する。
【0067】
本実施形態のように、分割コア材11Da,11Dbを組み合わせてコア材11Dに貫通流路113Dを形成することで、未硬化状態の樹脂Rを、キャビティC内及び積層体XD内(特に、各補強繊維基材12a,12b等)に効率よく行き渡らせることができる。特に、コア材11D(分割コア材11Da,11Db)に、複数の連通路114Dが形成されることで、更に、樹脂Rを効率よく行き渡らせることができる。
【0068】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0069】
(1)上記実施形態1では、コア材が一対(2つ)の単位コア材を重ねたものが使用されていたが、本発明はこれに限られず、例えば、3つ以上の単位コア材を重ねたものを、コア材として使用されてもよい。
【0070】
(2)上記実施形態1では、同程度の厚みの単位コア材が使用されていたが、本発明の目的を損なわない限り、互いに厚みが異なる単位コア材が使用されてもよい。
【0071】
(3)上記実施形態2において、スペーサ部は、表側の単位コア材の一部から形成されていたが、他の実施形態においては、裏側の単位コア材の一部をスペーサ部として用いてもよいし、双方の単位コア材の一部をスペーサ部として用いてもよい。また、場合によっては、単位コア材とは別の部材を、スペーサ部として利用してもよい。
【0072】
(4)上記実施形態3において、溝は、コア材の裏面側に設けられていたが、他の実施形態においては、更にコア材の表面側に設けられていてもよい。なお、溝は、少なくともコア材の裏面に形成されることが好ましい。
【0073】
(5)上記実施形態5において、貫通流路を形成するための凸部は、隣り合った一対の分割コア材のうち、一方の分割コア材のみに形成されてもよく、貫通流路が形成されれば特に制限はない。
【0074】
(6)他の実施形態においては、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を利用して、成形品を製造してもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…繊維強化樹脂成形品(成形品)、11…コア材、110…流路(隙間)、111…供給口、112…分岐路、12a,12b…補強繊維基材、13…樹脂部、130…流路樹脂部(隙間樹脂部)、131…供給口樹脂部、132…分岐路樹脂部、20…成形装置、30…成形型、31…固定金型(分割金型)、31a…成形面、32…可動金型(分割金型)、32a…成形面、40…樹脂供給装置、C…キャビティ、R…未硬化状態の樹脂、X…積層体