(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】昇降装置
(51)【国際特許分類】
B66F 7/20 20060101AFI20220113BHJP
B66F 17/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B66F7/20 D
B66F17/00 E
(21)【出願番号】P 2017241687
(22)【出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(73)【特許権者】
【識別番号】393008360
【氏名又は名称】株式会社タダノエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 明
(72)【発明者】
【氏名】高篠 良和
(72)【発明者】
【氏名】常谷 洋平
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-069155(JP,A)
【文献】特開平07-137994(JP,A)
【文献】特開2003-194012(JP,A)
【文献】特開2008-240878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 7/00- 7/28
B66F 13/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降対象物を支持する油圧式の複数のジャッキと、各ジャッキに作動油を供給する油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出されて各ジャッキに供給される作動油の流通を規制するか否かを切り替える切替バルブと、を備え、複数のジャッキの伸縮動作によって昇降対象物を上昇または下降させる昇降装置であって、
各ジャッキの伸縮長さを検出するジャッキ長検出手段と、
ジャッキ長検出手段によって検出された各ジャッキの伸縮長さから得られる各ジャッキの互いの伸縮長さの差
に基づいて油圧ポンプ及び切替バルブを制御するコントローラと、を備え、
コントローラは、
各ジャッキの互いの伸縮長さの差が第1所定値以上の場合に、油圧ポンプを停止させ
、
各ジャッキの互いの伸縮長さの差が第1所定値より小さい第2所定値以上で第1所定値未満の場合に、切替バルブに
よる作動油の流通を規制して
すべてのジャッキを停止させ
る
昇降装置。
【請求項2】
コントローラは、
各ジャッキの互いの伸縮長さの差が第2所定値より小さい第3所定値以上で第2所定値未満の場合に、各ジャッキの互いの伸縮長さの差が第4所定値になるまで各ジャッキのうち高さが最も高いジャッキ又は最も低いジャッキを停止させる
請求項1記載の昇降装置。
【請求項3】
コントローラは、
ポンプ停止手段による油圧ポンプの停止後、油圧ポンプの再駆動時に、切替バルブのスプールを移動させて切替バルブの状態の回復を図
る
請求項1
または請求項2に記載の昇降装置。
【請求項4】
コントローラは、
切替バルブのスプールを移動させた後
に切替バルブの中立位置を検出しない場合に、油圧ポンプの再駆動を規制す
る
請求項
3に記載の昇降装置。
【請求項5】
油圧ポンプは、電動モータの動力によって駆動するものであり、
コントローラは、電動モータへの通電を遮断することによって油圧ポンプを停止する
請求項1乃至
4のいずれかに記載の昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のジャッキによって昇降対象物を上下方向に移動させるための昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の昇降装置としては、昇降対象物を支持する油圧式の複数のジャッキと、各ジャッキに作動油を供給する油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出されて各ジャッキに供給される作動油の流量を調整する流量調整バルブと、各ジャッキの伸縮長さを検出する長さ検出手段と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この昇降装置は、長さ検出手段によって検出された複数のジャッキのそれぞれの伸縮長さに基づいて、各ジャッキの伸縮動作を同調させる制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記昇降装置では、長さ検出手段によって検出された複数のジャッキのそれぞれの伸縮長さに所定以上の差が生じた状態を不具合の発生と判断し、流量調整バルブのスプールを操作して各ジャッキを停止させている。
【0006】
前記昇降装置では、流量調整バルブのスプールを操作して各ジャッキを停止させた状態においても、油圧ポンプは継続して駆動している。このため、前記昇降装置では、油圧回路に混入した異物によって流量調整バルブのスプールの動作が妨げられると、スプールを操作して各ジャッキの伸縮動作を停止させようとしても、実際には各ジャッキの伸縮動作が停止していない状態が生じ得る。この場合、前記昇降装置では、各ジャッキのそれぞれの伸縮長さの差が更に大きくなり、昇降装置を構成する部材が破損したり昇降装置が転倒したりするおそれがある。
【0007】
本発明の目的とするところは、不具合が発生した場合に、複数のジャッキのそれぞれの伸縮動作を確実に停止させることのできる昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、昇降対象物を支持する油圧式の複数のジャッキと、各ジャッキに作動油を供給する油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出されて各ジャッキに供給される作動油の流通を規制するか否かを切り替える切替バルブと、を備え、複数のジャッキの伸縮動作によって昇降対象物を上昇または下降させる昇降装置であって、各ジャッキの伸縮長さを検出するジャッキ長検出手段と、ジャッキ長検出手段によって検出された各ジャッキの伸縮長さから得られる各ジャッキの互いの伸縮長さの差が第1所定値以上の場合に、油圧ポンプを停止させるポンプ停止手段と、ジャッキ長検出手段によって検出された各ジャッキの伸縮長さから得られる各ジャッキの互いの伸縮長さの差が第1所定値より小さい第2所定値以上で第1所定値未満の場合に、切替バルブによって油圧ポンプから吐出されて各ジャッキに供給される作動油の流通を規制して各ジャッキを停止させるジャッキ停止手段と、を備えている。
【0009】
これにより、油圧ポンプを停止させることによって各ジャッキが伸縮動作を停止することから、ジャッキ停止手段によって各ジャッキの伸縮動作を停止させた後に、各ジャッキの互いの伸縮長さの差が大きくなる場合に、ポンプ停止手段によって確実に各ジャッキの伸縮動作を停止させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジャッキ停止手段によって各ジャッキの伸縮動作を停止させた後に、各ジャッキの互いの伸縮長さの差が大きくなる場合に、ポンプ停止手段によって確実に各ジャッキの伸縮動作を停止させることが可能となるので、昇降装置を構成する部材の破損や昇降装置の転倒を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態を示す昇降装置を後方から見た図である。
【
図6】ポンプ停止状態解除処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図6は、本発明の一実施形態を示すものである。尚、本実施形態では、
図1の上方向を上と、
図1の下方向を下と、
図1の右方向を右と、
図1の左方向を左と、
図1の手前方向を後と、
図1の奥方向を前として表記する。
【0013】
本発明の昇降装置1は、大型のプレス機械や工作機械等の昇降対象物Tを、持ち上げるとともに、水平方向に移動させることが可能な油圧式の門型リフターである。
【0014】
昇降装置1は、
図1及び
図2に示すように、昇降対象物Tの幅方向両側において前後に配置された4つのジャッキ10と、4つのジャッキ10の上部に設けられ、昇降対象物Tを支持するための支持機構20と、4つのジャッキ10及び支持機構20を前後方向に移動させるための走行装置30と、を備えている。
【0015】
4つのジャッキ10は、それぞれ、テレスコピック式の伸縮機構を有している。各ジャッキ10は、ベースジャッキ11、セカンドジャッキ12、サードジャッキ13、フォースジャッキ14及びトップジャッキ15の5つの角筒状のジャッキ部材を有している。
【0016】
また、各ジャッキ10は、それぞれ、ベースジャッキ11に対してセカンドジャッキ12を移動させるためのセカンドジャッキ用シリンダ16と、セカンドジャッキ12に対してサードジャッキ13を移動させるためのサードジャッキ用シリンダ17と、サードジャッキ13に対してフォースジャッキ14を移動させるためのフォースジャッキ用シリンダ18と、フォースジャッキ14に対してトップジャッキ15を移動させるためのトップジャッキ用シリンダ19と、を有している。
各シリンダ16,17,18,19は、それぞれ伸長動作時にシリンダチューブ内に作動油を流入させる伸長側流入口と、縮小動作時にシリンダチューブ内に作動油を流入させる縮小側流入口と、を有している。
【0017】
支持機構20は、それぞれ幅方向に延びる前後一対のメインビーム21と、一対のメインビーム21の間を前後方向に延びる幅方向一対のサブビーム22と、一対のサブビーム22のそれぞれの前後方向中央部の下面に設けられたフック23と、を備えている。
【0018】
一対のメインビーム21の一方は、前側且つ左側のジャッキ10のトップジャッキ15の上端部と前側且つ右側のジャッキ10のトップジャッキ15の上端部との間を連結している。一対のメインビーム21の他方は、後側且つ左側のジャッキ10のトップジャッキ15の上端部と後側且つ右側のジャッキ10のトップジャッキ15の上端部との間を連結している。
【0019】
一対のサブビーム22は、前後一対のメインビーム21に対して幅方向に移動自在に設けられている。また、一対のサブビーム22は、それぞれの前後両側に設けられたサブビーム用シリンダ24によって幅方向に移動する。
サブビーム用シリンダ24は、伸長動作時にシリンダチューブ内に作動油を流入させる伸長側流入口と、縮小動作時にシリンダチューブ内に作動油を流入させる縮小側流入口と、を有している。
【0020】
走行装置30は、幅方向両側において前後方向に隣り合うジャッキ10のベースジャッキ11の基端部同士を互いに連結する走行フレーム31と、走行フレーム31の下部に設けられた前後一対の車輪ユニット32と、を有している。車輪ユニット32は、走行用電動モータ33によって駆動し、4つのジャッキ10及び支持機構20を前後方向に移動させる。
【0021】
1つのジャッキ10に対応するセカンドジャッキ用シリンダ16、サードジャッキ用シリンダ17、フォースジャッキ用シリンダ18及びトップジャッキ用シリンダ19と、4つのサブビーム用シリンダ24のうち隣接する1つのサブビーム用シリンダ24は、1つの油圧供給回路40に接続されており、油圧供給回路40を流通する作動油によって伸縮動作を行う。
【0022】
油圧供給回路40は、
図3に示すように、セカンドジャッキ用シリンダ16、サードジャッキ用シリンダ17、フォースジャッキ用シリンダ18、トップジャッキ用シリンダ19及びサブビーム用シリンダ24に供給する作動油を吐出する油圧ポンプ41と、油圧ポンプ41が吐出する作動油を貯留するための作動油タンク42と、油圧ポンプ41とセカンドジャッキ用シリンダ16との間の作動油の流通方向及び流量を調整するための切替バルブとしてのセカンドジャッキ用コントロールバルブ43と、油圧ポンプ41とサードジャッキ用シリンダ17との間の作動油の流通方向及び流量を調整するための切替バルブとしてのサードジャッキ用コントロールバルブ44と、油圧ポンプ41とフォースジャッキ用シリンダ18との間の作動油の流通方向及び流量を調整するための切替バルブとしてのフォースジャッキ用コントロールバルブ45と、油圧ポンプ41とトップジャッキ用シリンダ19との間の作動油の流通方向及び流量を調整するための切替バルブとしてのトップジャッキ用コントロールバルブ46と、油圧ポンプ41とサブビーム用シリンダ24との間の作動油の流通方向及び流量を調整するためのサブビーム用コントロールバルブ47と、各コントロールバルブ43,44,45,46,47(以降、43~47と記載する)のスプールが中立位置の状態で油圧ポンプ41から吐出された作動油を作動油タンク42に戻すための切替バルブとしてのアンロードバルブ48と、を有している。
尚、本実施形態においては、作動油の流量を調整可能な各コントロールバルブ43~47を用いているが、作動油の流量の調整機能を有さないソレノイドバルブを用いてもよい。
【0023】
油圧ポンプ41は、ポンプ用電動モータ41aによって駆動し、作動油タンク42に貯留されている作動油を吸入口から吸入して吐出口から吐出する。
【0024】
各コントロールバルブ43~46は、4方向4ポート3位置電磁弁である。各コントロールバルブ43~46は、スプールが中立位置の状態において、各ポートからの作動油の流入を規制する。
【0025】
サブビーム用コントロールバルブ47は、4方向4ポート3位置電磁弁である。サブビーム用コントロールバルブ47は、スプールが中立位置の状態において、Tポートからの作動油の流入を規制し、Tポート、Aポート及びBポートを互いに連通している。
【0026】
アンロードバルブ48は、4方向4ポート3位置電磁弁である。アンロードバルブ48は、スプールが中立位置において各ポートを連通している。
【0027】
各コントロールバルブ43~46、サブビーム用コントロールバルブ47及びアンロードバルブ48は、それぞれスプールの中立位置において後述するコントローラ50に信号を送信する機能(中立位置検出手段)を有している。
【0028】
ここで、油圧供給回路40の回路構成を具体的に説明する。
【0029】
油圧ポンプ41の吸入側は、作動油タンク42に接続されている。油圧ポンプ41の吐出側は、各コントロールバルブ43~47及びアンロードバルブ48のPポートが互いに並列に接続されている。
また、各コントロールバルブ43~47及びアンロードバルブ48のTポートは、互いに並列に作動油タンク42に接続されている。
各コントロールバルブ43~47のAポート及びBポートは、それぞれ各シリンダ16~19,24の伸長側流入口または縮小側流入口に接続されている。
アンロードバルブ48のAポートは、各ジャッキ10の伸長動作時にリリーフ圧が第1所定圧力のリリーフバルブ40aを介して作動油タンク42に接続されている。また、アンロードバルブ48のBポートは、ジャッキ10の縮小動作時にリリーフ圧が第1所定圧力よりも小さい第2所定圧力のリリーフバルブ40bを介して作動油タンク42に接続されている。
【0030】
また、昇降装置1は、
図4に示すように、各ジャッキ10の動作を制御するためのコントローラ50を備えている。コントローラ50は、CPU、ROM、RAM等を有している。コントローラ50は、入力側に接続された装置から入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0031】
コントローラ50の入力側には、
図4に示すように、オペレータが昇降装置1の操作及び設定に関する入力を行うための操作設定入力部51と、4つのジャッキ10のそれぞれの伸縮長さを検出するためのジャッキ長検出手段としてのジャッキ長検出器52-1,52-2,52-3,52-4(以降、52-1~4と記載する)と、が接続されている。
【0032】
ジャッキ長検出器52-1~4は、リールと、リールに巻き掛けられたワイヤと、リールの回転方向及び回転数を検出するためのエンコーダと、からなる。ジャッキ長検出器52-1~4は、リールがベースジャッキ11に取り付けられ、ワイヤの先端がトップジャッキ15の先端部に固定され、ジャッキ10の伸長動作によって繰り出されるワイヤの長さをエンコーダによって検出することで、ジャッキ10の伸縮長さを検出するものである。
【0033】
コントローラ50の出力側には、
図4に示すように、走行用電動モータ33、ポンプ用電動モータ41a、4つのジャッキ10のそれぞれの油圧供給回路40に設けられたセカンドジャッキ用コントロールバルブ43-1,43-2,43-3,43-4(以降、43-1~4と記載する)、サードジャッキ用コントロールバルブ44-1,44-2,44-3,44-4(以降、44-1~4と記載する)、フォースジャッキ用コントロールバルブ45-1,45-2,45-3,45-4(以降、45-1~4と記載する)、トップジャッキ用コントロールバルブ46-1,46-2,46-3,46-4(以降、46-1~4と記載する)、サブビーム用コントロールバルブ47-1,47-2,47-3,47-4(以降、47-1~4と記載する)及びアンロードバルブ48-1,48-2,48-3,48-4(以降、48-1~4と記載する)が接続されている。
【0034】
以上のように構成された昇降装置1において、昇降対象物Tを上下方向に移動させる昇降動作について説明する。
【0035】
まず、昇降装置1の4つのジャッキ10、支持機構20及び走行装置30を駆動させてフック23を、床面に載置された昇降対象物Tの上方に位置させる。
【0036】
次に、昇降対象物Tに取り付けられたアイボルト等の連結部材を用いて、昇降対象物Tとフック23とをワイヤロープによって連結し、4つのジャッキ10を伸長させて昇降対象物Tを持ち上げる。
【0037】
フック23によって持ち上げた昇降対象物Tは、走行装置30を駆動させることによって前後方向に移動させることが可能であり、前後方向の目的の位置において4つのジャッキ10を縮小させて昇降対象物Tを床面または所定の載置面に載置する。
【0038】
また、昇降装置1の4つのジャッキ10による昇降動作中において、コントローラ50は、4つのジャッキ10の伸縮動作を制御する昇降動作制御処理を行う。このときのコントローラ50の動作を、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、ジャッキ10が昇降動作中であるか否かを判定する。昇降動作中であると判定した場合にはステップS2に処理を移し、昇降動作中であると判定しなかった場合には昇降動作制御処理を終了する。
【0040】
(ステップS2)
ステップS1において昇降動作中であると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、各ジャッキ長検出器52-1~4の検出結果に基づいて各ジャッキ10のトップジャッキ15の上端部の高さを取得する。
【0041】
(ステップS3)
ステップS3においてCPUは、ステップS2において取得した4つのジャッキ10の上端部の高さのうち、最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第1所定値D1(例えば、D1=100mm)以上であるか否かを判定する。差Dが第1所定値D1以上であると判定した場合にはステップS4に処理を移し、差Dが第1所定値D1以上であると判定しなかった場合にはステップS6に処理を移す。
ここで、差Dが第1所定値D1以上であることは、後述する4つのジャッキ10の昇降動作を停止させるためにコントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4を操作したにもかかわらず、ジャッキ10の昇降動作が継続していることを意味している。この状態では、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4の何れかの作動油の流路において作動油に混入した異物が詰まり、作動油の流路に詰まった異物によってスプールの移動が妨げられていると判断する。
【0042】
(ステップS4)
ステップS3において最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第1所定値D1以上であると判定した場合に、ステップS4においてCPUは、油圧ポンプ41を停止させ(ポンプ停止手段)、ステップS5に処理を移す。
ここで、油圧ポンプ41は、油圧ポンプ41を駆動するポンプ用電動モータ41aへの通電を遮断したり、ポンプ用電動モータ41aの回転数がゼロとなるように回転数の制御をしたりすることによって、駆動が停止される。
【0043】
(ステップS5)
ステップS5においてCPUは、走行装置30の駆動を停止して昇降動作制御処理を終了する。
ここで、走行装置30は、走行用電動モータ33の駆動を停止することによって、駆動が停止される。
【0044】
(ステップS6)
ステップS3において最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第1所定値D1以上であると判定しなかった場合に、ステップS6においてCPUは、最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第1所定値D1よりも小さい第2所定値D2(D1>D2、例えば、D2=60mm)以上であるか否かを判定する。差Dが第2所定値D2以上であると判定した場合にはステップS7に処理を移し、差Dが第2所定値D2以上であると判定しなかった場合にはステップS8に処理を移す。
ここで、差Dが第2所定値D2以上であることは、後述する最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dを小さくするために、4つのジャッキの動作を調整する制御を行っているにもかかわらず、差Dが大きくなっていることを意味している。
【0045】
(ステップS7)
ステップS6において最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第2所定値D2以上であると判定した場合に、ステップS7においてCPUは、セカンドジャッキ用コントロールバルブ43-1~4、サードジャッキ用コントロールバルブ44-1~4、フォースジャッキ用コントロールバルブ45-1~4、トップジャッキ用コントロールバルブ46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4を操作して4つのジャッキ10の動作を停止させ(ジャッキ停止手段)、昇降動作制御処理を終了する。
この状態において、オペレータは、各ジャッキを個別に動作させることによって最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dを小さくし、ジャッキの昇降動作を再開させることが可能である。
【0046】
(ステップS8)
ステップS6において最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第2所定値D2以上であると判定しなかった場合に、ステップS8においてCPUは、最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第1所定値D1や第2所定値D2よりも小さい第3所定値D3(D1>D2>D3、例えば、30mm)以上であるか否かを判定する。差Dが第3所定値D3以上であると判定した場合にはステップS9に処理を移し、差Dが第3所定値D3以上であると判定しなかった場合にはステップS12に処理を移す。
【0047】
(ステップS9)
ステップS8において最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第3所定値D3以上であると判定した場合に、ステップS9においてCPUは、4つのジャッキ10が上昇動作中であるか否かを判定する。4つのジャッキ10が上昇動作中であると判定した場合にはステップS10に処理を移し、4つのジャッキ10が上昇動作中であると判定しなかった場合にはステップS11に処理を移す。
【0048】
(ステップS10)
ステップS9において4つのジャッキ10が上昇動作中であると判定した場合に、ステップS10においてCPUは、最も高いジャッキ10の伸長動作を停止してステップS12に処理を移す。
【0049】
(ステップS11)
ステップS9において4つのジャッキ10が下降動作中であると判定した場合に、ステップS11においてCPUは、最も低いジャッキ10の縮小動作を停止してステップS12に処理を移す。
【0050】
(ステップS12)
ステップS12においてCPUは、最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第4所定値D4(D1>D2>D3>D4、例えば、10mm)未満であるか否かを判定する。差Dが第4所定値D4未満であると判定した場合にはステップS13に処理を移し、差Dが第4所定値D4未満であると判定しなかった場合にはステップS9に処理を戻す。
【0051】
(ステップS13)
ステップS12において最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第4所定値D4未満であると判定した場合に、ステップS13においてCPUは、停止中のジャッキ10の駆動を再開する。
【0052】
(ステップS14)
ステップS14においてCPUは、操作設定入力部51に対して昇降動作を停止させるための操作がなされたか否かを判定する。操作設定入力部51に対して昇降動作を停止させるための操作がなされたと判定した場合には昇降動作制御処理を終了し、操作設定入力部51に対して昇降動作を停止させるための操作がなされたと判定しなかった場合にはステップS2に処理を戻す。
【0053】
また、昇降動作制御処理のステップS4において油圧ポンプ41を停止した場合に、コントローラ50は、油圧ポンプ41の停止状態を解除するポンプ停止状態解除処理を行う。このときのコントローラ50の動作を、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
(ステップS21)
ステップS21においてCPUは、昇降動作制御処理のステップS4に基づいて油圧ポンプ41が回転しているか否かを判定する。昇降動作制御処理のステップS4に基づいて油圧ポンプ41が回転していると判定した場合、即ち、油圧ポンプ41が停止していると判定しなかった場合にはポンプ停止状態解除処理を終了し、昇降動作制御処理のステップS4に基づいて油圧ポンプ41が回転していると判定しなかった場合、即ち、油圧ポンプ41が停止していると判定した場合にはステップS22に処理を移す。
【0055】
(ステップS22)
ステップS21において昇降動作制御処理のステップS4に基づいて油圧ポンプ41が停止していると判定した場合に、ステップS22においてCPUは、操作設定入力部51に対してオペレータによる油圧ポンプ41の停止状態を解除する操作の入力がなされたか否かを判定する。油圧ポンプ41の停止状態を解除する操作の入力がなされたと判定した場合にはステップS23に処理を移し、油圧ポンプ41の停止状態を解除する操作の入力がなされたと判定しなかった場合にはポンプ停止状態解除処理を終了する。
【0056】
(ステップS23)
ステップS22において油圧ポンプ41の停止状態を解除する操作の入力がなされたと判定した場合に、ステップS23においてCPUは、セカンドジャッキ用コントロールバルブ43-1~4、サードジャッキ用コントロールバルブ44-1~4、フォースジャッキ用コントロールバルブ45-1~4、トップジャッキ用コントロールバルブ46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4のスプールを移動させて繰り返し作動油の流路を切り替えるバルブ状態回復動作(バルブ状態回復手段)を行う。
ここで、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4のバルブ状態回復動作は、作動油の流路に詰まった異物を作動油の流路から排出するために、繰り返しスプールを移動させて作動油の流路を切り替える動作である。
【0057】
(ステップS24)
ステップS24においてCPUは、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4のスプールの位置が中立位置であるか否かを判定する。スプールの位置が中立位置であると判定した場合にはステップS25に処理を移し、スプールの位置が中立位置であると判定しなかった場合にはポンプ停止状態解除処理を終了する。
即ち、スプールの位置が中立位置であると判定しなかった場合には、ポンプ停止状態を解除しないため、油圧ポンプ41の再駆動が規制された状態となる(再駆動規制手段)。
【0058】
(ステップS25)
ステップS25においてCPUは、油圧ポンプ41の停止状態を解除し、ポンプ停止状態解除処理を終了する。
この状態において、オペレータは、油圧ポンプ41の駆動を再開し、各ジャッキ10を個別に動作させることが可能である。
【0059】
このように、本実施形態の昇降装置によれば、最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第2所定値D2以上で第1所定値D1未満の場合に、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4によって各ジャッキ10のセカンドジャッキ用シリンダ16、サードジャッキ用シリンダ17、フォースジャッキ用シリンダ18、トップジャッキ用シリンダ19を停止させ、最も高いジャッキ10と最も低いジャッキ10の高さの差Dが第1所定値D1以上の場合に、油圧ポンプ41を停止させている。
【0060】
これにより、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4によって各ジャッキ10の伸縮動作を停止させた後に、各ジャッキ10の互いの伸縮長さの差Dが大きくなる場合に、油圧ポンプ41を停止させることによって確実に各ジャッキ10の伸縮動作を停止させることが可能となるので、昇降装置1を構成する部材の破損や昇降装置1の転倒を抑制することが可能となる。
【0061】
また、油圧ポンプ41の停止後、油圧ポンプ41の再駆動時に、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4のスプールを移動させてコントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4の状態の回復を図るバルブ状態回復動作を行っている。
【0062】
これにより、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4の異物の詰まりが、各ジャッキ10の伸縮動作を停止する原因である場合には、バルブ状態回復動作を行って各バルブの異物の詰まりを解消することにより、油圧ポンプ41を停止させた後に再び油圧ポンプ41を駆動させることで各ジャッキの昇降動作を継続することが可能となる。
【0063】
また、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4のスプールを移動させてコントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4の状態の回復を図った後に、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4の中立位置を検出しない場合に、油圧ポンプ41の再駆動を規制する。
【0064】
これにより、コントロールバルブ43-1~4,44-1~4,45-1~4,46-1~4及びアンロードバルブ48-1~4の異物の詰まりが解消されない状態でのジャッキ10の昇降動作の再開を防止することができ、安全性を向上させることが可能となる。
【0065】
また、油圧ポンプ41は、ポンプ用電動モータ41aの動力によって駆動するものであり、油圧ポンプ41は、ポンプ用電動モータ41aへの通電を遮断することによって駆動を停止する。
【0066】
これにより、油圧ポンプ41を停止する際に、駆動源としてのポンプ用電動モータ41aを停止した状態とするため、油圧ポンプ41の駆動が誤って継続する状態を回避して油圧ポンプ41を確実に停止させることが可能となる。
【0067】
尚、前記実施形態では、昇降対象物Tを4つのジャッキ10によって支持すると共に上下方向に移動させるようにしたものを示したが、これに限られるものではない。昇降対象物を支持するジャッキは2つ以上であればよい。
【0068】
また、前記実施形態では、油圧ポンプ41をポンプ用電動モータ41aによって駆動するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。油圧ポンプは、エンジンの動力によって駆動するものであってもよい。エンジンの動力によって油圧ポンプを駆動させる場合には、エンジンを停止することによって油圧ポンプを停止させればよい。
【0069】
また、前記実施形態では、ポンプ用電動モータ41aの駆動を停止することで油圧ポンプ41を停止させるようにしたものを示したが、油圧ポンプとポンプ用電動モータとをクラッチを介して連結している場合には、クラッチによって油圧ポンプに対するポンプ用電動モータの動力の伝達を遮断するようにしてもよい。ただし、油圧ポンプを停止させるという目的においては、クラッチよりもポンプ用電動モータを停止させる方がより確実である。
【符号の説明】
【0070】
1…昇降装置、10…ジャッキ、16…セカンドジャッキ用シリンダ、17…サードジャッキ用シリンダ、18…フォースジャッキ用シリンダ、19…トップジャッキ用シリンダ、41…油圧ポンプ、41a…ポンプ用電動モータ、43…セカンドジャッキ用コントロールバルブ、44…サードジャッキ用コントロールバルブ、45…フォースジャッキ用コントロールバルブ、46…トップジャッキ用コントロールバルブ、48…アンロードバルブ、50…コントローラ、52-1~4…ジャッキ長検出器。