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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気構造
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/42 20060101AFI20220113BHJP
   F02B 23/08 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F02F1/42 F
F02B23/08 C
F02B23/08 S
F02B23/08 X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017242410
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019108844
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】吉原 昭
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小山 和明
(72)【発明者】
【氏名】岡本 雄弥
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180359(JP,A)
【文献】特開2000-179417(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02787208(EP,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02923268(FR,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02910541(FR,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02037270(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/42
F02B 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートのバルブシート上流側のシリンダ室の外周部寄りに位置する箇所に前記吸気ポートの内側に突出する凸部が設けられ、
前記凸部は、前記凸部の頂点から吸気上流側に延びる上流案内面と、前記頂点から吸気下流側に延び中腹部で前記凸部の内部に窪む曲面を形成する下流案内面とを備え、前記シリンダ室から前記外周部に流れる混合気を中心側壁部に案内するように構成されている、
ことを特徴とする内燃機関の吸気構造。
【請求項2】
前記頂点は、前記吸気ポートを流れる吸気の流れ方向に対し直交方向に延びる
ことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の吸気構造。
【請求項3】
1つのシリンダ室に対して前記吸気ポートは2つ横に並んで設けられ、
前記凸部は前記2つの吸気ポートにそれぞれ設けられ、
前記各凸部の前記頂点は、外側より内側が低く形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の吸気構造。
【請求項4】
前記凸部の形状は、シリンダ室の上方から見てそれら吸気ポートの間を中心として線対称の形状で形成されている、
ことを特徴とする請求項3記載の内燃機関の吸気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の吸気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の燃焼を効率よく行なうために、シリンダ室の軸線方向に沿って旋回するタンブル流を吸気により形成することが知られている。
この場合、シリンダ室の中心線に対してシリンダ室の一方の側に傾斜させて吸気ポートを設けることでタンブル流を形成している。
内燃機関の燃焼の効率の向上を図るためには、強いタンブル流を安定して得ることが重要である。
そこで、特許文献1には、吸気ポート内にタンブル流生成用の偏向流を発生させる突部を設け、この突部を伸縮性ベローズで構成することが提案されている。
特許文献1によれば、突部の膨出量を調整することで偏向流の強度を調整し、内燃機関の負荷に応じてタンブル流の強さを調整するようにしている。
また、特許文献2には、吸気ポートの壁面のうち上記一方の側に対して遠方に位置する側の壁面と吸気ポートに連なるバルブシートのスロート部との境界に、吸気ポートの内側に張り出した段差部を設けることが提案されている。
特許文献2によれば、吸気ポートの壁面のうち一方の側に対して遠方に位置する側の壁面に沿って導かれる吸気の流れ、すなわち、タンブル流と反対向きの吸気を段差部によって乱し、一方の側と反対側のシリンダ室内に導かれる吸気、すなわちタンブル流と反対向きの吸気の流速を抑制し、強いタンブル流を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平7-25235号公報
【文献】特開2004-316609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、シリンダ室内に形成されたタンブル流の一部が吸気ポートに逆流することを如何にして抑制するかについては考慮されていない。
特に、内燃機関を高い膨張比で運転させる際に、ピストンが下死点から上死点に上がるタイミングで吸気弁が遅閉じされるような場合は、タンブル流が強いほどシリンダ室内の混合気が吸気ポートに逆流しやすく、そのため、充填効率の低下が懸念される。また、一般的にシリンダヘッドは鋳造品でバルブシート等を機械加工にて形成するが、例えば、機械加工を利用して段差部を形成した場合、加工精度により段差部の位置にばらつきが生じる惧れがあり、鋳造時の型ずれが重なると段差部の高さまでばらつきが生じてしまう。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、シリンダ室内のタンブル流の強化を図りつつ混合気の吸気ポートへの逆流を抑制する上で有利な内燃機関の吸気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の内燃機関の吸気構造は吸気ポートのバルブシート上流側のシリンダ室の外周部寄りに位置する箇所に前記吸気ポートの内側に突出する凸部が設けられ、前記凸部は、前記凸部の頂点から吸気上流側に延びる上流案内面と、前記頂点から吸気下流側に延び中腹部で前記凸部の内部に窪む曲面を形成する下流案内面とを備え、前記シリンダ室から前記外周部に流れる混合気を中心側壁部に案内するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、下流案内面は、タンブル流によりシリンダ室から外周側壁部に案内されて吸気ポートに戻されようとする混合気を、外周側壁部から中心側壁部に案内する。この案内された混合気の流れにより、タンブル流によりシリンダ室から吸気ポートの上流側に戻されようとする混合気をせき止める。
したがって、シリンダ室内の混合気が吸気ポートに逆流することを抑制する上で有利となり、充填効率を高める上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係る内燃機関の吸気構造の構造を示す断面図である。
図2】シリンダ室、吸気ポート、排気ポートを吸気ポートの上流側から見た状態を示す図である。
図3図2のA-A線断面で凸部を破断した断面図である。
図4】シリンダ室の内側から吸気ポートに形成された凸部を見た説明図である。
図5】第2の実施の形態においてシリンダ室、吸気ポート、排気ポートを吸気ポートの上流側から見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、内燃機関(エンジン)10は、複数のシリンダ室12が形成されたシリンダブロック14と、シリンダブロック14の上側に設けられたシリンダヘッド16と、シリンダ室12に配設されたピストン18とを含んで構成されている。
燃焼室20は、ピストン18の上死点近傍で、シリンダ室12の内周面1202とシリンダヘッド16の下面1602とピストン18の頂面1802とによって構成される。
【0009】
シリンダヘッド16には、2つの吸気ポート22と、各吸気ポート22を開閉する吸気弁24と、2つの排気ポート26と、各排気ポート26を開閉する排気弁28と、点火プラグ30とが設けられている。
点火プラグ30は、燃焼室20のほぼ中央に位置するように、シリンダヘッド16の下面1602に設けられている。
各吸気ポート22は、インテークマニホールド31に連通してシリンダ室12の上方でシリンダ室12の径方向に延在する上流部2202と、上流部2202に接続されシリンダ室12側に湾曲された下流部2204を有している。
下流部2204の下流端に吸気バルブシート32が装着され、吸気バルブシート32に吸気弁24が接触離間することで吸気ポート22の開閉がなされる。
【0010】
図1図2に示すように、下流部2204のうち吸気バルブシート32に対して上流側に隣接する部分34は、シリンダ室12の中心部側で半円弧状に延在する中心側壁部34Aと、シリンダ室12の外周側で半円弧状に延在する外周側壁部34Bとを有している。
図1図3に示すように、各吸気ポート22の外周側壁部34Bに、タンブル流T1を生じさせるための凸部36が吸気ポート22の内側にそれぞれ突出形成され、符号3610は凸部36の頂点を示している。
図1図2図3図4に示すように、各凸部36は、それぞれ上流案内面3602と、下流案内面3604とを備えている。
上流側案内面3602は、頂点3610から吸気上流側に延びている。
下流側案内面3604は、頂点3610から吸気下流側に延び中腹部で凸部36の内部に窪む曲面を形成している。
図2図4に示すように、吸気ポート22の内部で吸気の上流側から見て、頂点3610は、吸気ポート22の吸気の流れ方向に対し直交方向に直線状に延びている。
【0011】
上流案内面3602は、吸気ポート22からシリンダ室12に流入する吸気がタンブル流T1を形成する傾斜で形成されている。
言い換えると、上流案内面3602は、吸気ポート22を流れる吸気をシリンダ室12の中央に向けるように形成されている。
上流案内面3602は、吸気ポート22の壁面とは鈍角をなして連続状に接続されている。
下流案内面3604は、吸気弁24の吸気工程時に、タンブル流T1によりシリンダ室12から外周側壁部34Bに案内されて吸気ポート22に戻される混合気を、中心側壁部34Aに案内させ、混合気の吸気ポート22の上流側への戻りを阻止するものである。
より詳細に説明すると、下流案内面3604の先端は、シリンダ室12の中心部側で半円弧状に延在する中心側壁部34Aの部分に向けられている。
また、頂点3610は、上流案内面3602と下流案内面3604とが曲線にて接続される流線型となっている。
【0012】
なお、シリンダヘッド16の鋳造時、凸部36は金型によって形成され、頂点3610および上流案内面3602は中子(金型)で形成され、下流案内面3604は、切削加工によって形成される。
したがって、簡単に凸部36を製造でき、生産性向上を図る上で有利となる。
なお、切削加工により凸部36の頂点3610を形成することも考えられるが、この場合、切削加工の精度により頂点3610の位置にばらつきが生じてしまう。また、切削加工はドリル等で行われるため、頂点3610を直線状に形成することができず、吸気をシリンダ室12の中央に向けるタイミングが径方向でずれてしまいタンブル流T1の形成に影響を及ぼすことが考えられる。さらに、切削加工の端面はエッジとなってしまうため、エッジにより乱流が発生し、この乱流によってもタンブル流T1の形成に影響を及ぼすも考えられる。
よって、凸部36を鋳造の金型で形成すると頂点3610を曲線にて接続される流線型にすることができる。さらに、切削加工によるエッジが頂点3610の下流側となるため、エッジによるタンブル流の形成への影響を小さくすることができる。
【0013】
本実施の形態によれば次の作用効果が奏される。
下流案内面3604は、タンブル流T1によりシリンダ室12から外周側壁部34Bに案内されて吸気ポート22に戻されようとする混合気を、外周側壁部34Bから中心側壁部34Aに案内するので、この案内された混合気の流れT2により、タンブル流T1によりシリンダ室12から吸気ポート22の上流側に戻されようとする吸気をせき止める。
したがって、シリンダ室12内の混合気が吸気ポート22に逆流することを抑制する上で有利となり、充填効率を高める上で有利となる。
【0014】
また、頂点3610は吸気ポート22の吸気の流れ方向に対し直交方向に直線状に延在するので、凸部36の上流案内面3602で吸気をシリンダ室12内に導くタンブル流T1を形成すると共に、凸部36の上流案内面3602で案内された吸気は頂点3610の延在方向において偏ることはなく、したがって、タンブル流T1を強化でき、吸気を効率よくシリンダ室12内に導く上で有利となり、充填効率を高める上で有利となる。
また、上流案内面3602と吸気ポート22の壁面とは鈍角をなして連続状に接続されているので、上流案内面3602によって吸気を偏向させることによりタンブル流T1を強化しつつ、上流案内面3602による抵抗を抑制し、吸気を効率よくシリンダ室12内に導く上で有利となり、充填効率を高める上で有利となる。
【0015】
なお、下流案内面3604を、タンブル流T1によりシリンダ室12から外周側壁部34Bに案内されて吸気ポート22に戻されようとする混合気を、外周側壁部34Bからこの外周側壁部34Bに対向する吸気弁24の背面2402に向けるように形成し、下流案内面3604と吸気弁24の背面2402との間で旋回流を形成するようにしてもよい。この場合には、タンブル流T1によりシリンダ室12から吸気ポート22の上流側に戻されようとする吸気をこの旋回流でせき止め、シリンダ室12内の混合気が吸気ポート22に逆流することを抑制する上で有利となり、充填効率を高める上で有利となる。
【0016】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について図5を参照して説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態では、凸部36が突出高さの異なる2つの頂点3610A、3610Bを有している点が第1の実施の形態と異なっており、各凸部36に上流側案内面3602と下流側案内面3604とが形成されている点は同様である。
詳細に説明すると、各凸部36は、吸気ポート22の上流側から見て、頂点3610Aが直線状に延在する第1部分36Aと、頂点3610Aよりも突出量が小さい頂点3610Bが直線状に延在する第2部分36Bとを含んで構成されている。
各頂点3610A、3610Bは、吸気ポート22を流れる吸気の流れ方向に対して直交方向に延びている。
本実施の形態では、1つのシリンダ室12に対して吸気ポート22が2つ横に並んで設けられていることから、第1部分36Aは、各凸部36の互いに離れた箇所に形成され、言い換えると、各凸部36A、36Bの頂点3610A、3610Bは外側より内側が低く形成され、各凸部36A、36Bの形状は、シリンダ室12の上方から見てそれら吸気ポート22の間を中心として線対称の形状で形成されている。
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な効果が奏されると共に、2つの吸気ポート22のシリンダ室12の中央寄りの凸部36の箇所に、第1部分36Aよりも突出量が小さい第2部分36Bが形成されているので、吸気工程時、シリンダ室12中央(奥行のある部分に)に向かうタンブル流T1を強化する上でより有利となる。
【符号の説明】
【0017】
10 内燃機関
12 シリンダ室
22 吸気ポート
32 吸気バルブシート
34 吸気バルブシートに対して上流側に隣接する部分
36 凸部
3610 頂点
3610A 頂点
3610B 頂点
3602 上流案内面
3604 下流案内面
T1 タンブル流
T2 混合気の流れ
図1
図2
図3
図4
図5