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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】マスト支持構造
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/08 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
B66F9/08 M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017243643
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019108216
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】荻原 隆志
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-173579(JP,A)
【文献】実開昭63-198820(JP,U)
【文献】特開2003-040591(JP,A)
【文献】特開2010-024019(JP,A)
【文献】特開平09-048597(JP,A)
【文献】特開2010-195554(JP,A)
【文献】特公昭48-044458(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体の前側で上下方向に延びるマストを支持するフォークリフトのマスト支持構造であって、
前記マストの下部において、車幅方向の外側へ延びるマストピンと、
前記車両本体の前側の下部において、車輪の車軸を支持し、前記マストピンと連結される支持部材と、を備え、
前記マストピン及び支持部材は、前記フォークリフトの前記車幅方向の両側に設けられ、
前記支持部材は、前記マストピンを挿通させる支持穴を有し、当該支持穴を介して前記マストピンと連結され、
前記マストピンの外周面は、当該外周面と径方向外側で対向する前記支持穴の内周面によって支持され、
前記マストピンの前記外周面及び前記支持穴の前記内周面は、前記車幅方向の外側へ向かうに従って中心軸線から離れるように傾斜する傾斜部を有する、マスト支持構造。
【請求項2】
前記マストピンの前記外周面及び前記支持穴の前記内周面は、互いに接触する領域の前記車幅方向の全域にわたり、前記傾斜部を有する、請求項1に記載のマスト支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスト支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフォークリフトのマスト支持構造としては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載のマスト支持構造は、マストの下部において、車幅方向の外側へ延びるマストピンと、車両本体の前側の下部において、車輪の車軸を支持し、マストピンと連結される支持部材と、を備えている。支持部材は、マストピンを挿通させる支持穴を有し、当該支持穴を介してマストピンと連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-173579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、マストピンは車幅方向に真っすぐに延びている。例えば、フォークリフトが旋回する場合などにおいては、支持部材がマストに対して相対的に広がる方向へ力を受けることがある。これにより、マストピンと支持穴との間の車幅方向における位置がずれる場合がある。この場合、支持穴がマストピンから受ける面圧が設計値よりも高くなることによる不具合が生じる可能性がある。
【0005】
従って、本発明は、マストピンと支持穴との間の車幅方向における位置ずれを抑制できるマスト支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のマスト支持構造は、車両本体の前側で上下方向に延びるマストを支持するフォークリフトのマスト支持構造であって、マストの下部において、車幅方向の外側へ延びるマストピンと、車両本体の前側の下部において、車輪の車軸を支持し、マストピンと連結される支持部材と、を備え、支持部材は、マストピンを挿通させる支持穴を有し、当該支持穴を介してマストピンと連結され、マストピンの外周面は、当該外周面と径方向外側で対向する支持穴の内周面によって支持され、マストピンの外周面及び支持穴の内周面は、車幅方向の外側へ向かうに従って中心軸線から離れるように傾斜する傾斜部を有する。
【0007】
マスト支持構造では、支持部材は、マストピンを挿通させる支持穴を有し、当該支持穴を介してマストピンと連結される。マストピンの外周面は、当該外周面と径方向外側で対向する支持穴の内周面によって支持される。このような支持構造において、マストピンの外周面及び支持穴の内周面は、車幅方向の外側へ向かうに従って中心軸線から離れるように傾斜する傾斜部を有する。従って、支持部材がマストに対して相対的に広がる方向へ力を受けた場合であっても、傾斜部において支持穴の内周面がマストピンの外周面に支持される。これにより、マストピンと支持穴との車幅方向への相対的な移動が抑制される。以上により、マストピンと支持穴との間の車幅方向における位置ずれを抑制できる。
【0008】
マスト支持構造において、マストピンの外周面及び支持穴の内周面は、互いに接触する領域の車幅方向の全域にわたり、傾斜部を有してよい。この場合、広い範囲において、支持穴の内周面がマストピンの外周面に支持される。従って、マストピンと支持穴との車幅方向への相対的な移動が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マストピンと支持穴との間の車幅方向における位置ずれを抑制できるマスト支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るマスト支持構造を備えるフォークリフトの全体構成を説明する模式的な側面図である。
図2】マスト支持構造を車幅方向の外側から見た図である。
図3】マスト支持構造の分解斜視図である。
図4図2に示すIV-IV線に沿った断面図である。
図5】変形例に係るマスト支持構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
本発明の実施形態に係るフォークリフト1について、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るマスト支持構造を備えるフォークリフトの全体構成を説明する模式的な側面図である。
【0013】
本実施形態のフォークリフト1は、荷物の運搬に用いられるものであり、特に工場や、倉庫や、貨物駅や港湾等の構内における荷役作業に用いられるものである。フォークリフト1の種類は特に限定されない。フォークリフト1は、例えば三輪タイプ(前輪が二輪で後輪が一輪)のものであってもよく、四輪タイプのものであってもよい。図1に示すように、車両本体10と、フォークリフト1の走行に用いられる前輪20および後輪30と、運転者が乗り込む運転席40と、荷物を取り扱う荷役部50と、を主に備える。
【0014】
車両本体10は、前側に荷役部50が設けられ、上面中央に運転席40が設けられているものである。車両本体10の下部前方には一対の前輪20が、下部後方には後輪30が設けられている。また、車両本体10の内部には、フォークリフト1を走行させる走行用モータ、バッテリ、及び荷役部50で用いられる高圧のオイルを供給する油圧発生部、これらの機器を制御するコントローラ部などが収納されている。
【0015】
前輪20は、走行用モータによって回転駆動されることによりフォークリフト1を走行させるものである。前輪20には、車軸21が取り付けられている(図2参照)。前輪20は、車軸21が回転することに伴って回転する。
【0016】
後輪30は、運転席40のステアリング41によって操舵される操舵輪であり、フォークリフト1の走行に従って回転する従動輪である。後輪30における構成は、公知の構成を用いることができ、形式などを限定するものではない。
【0017】
運転席40は、フォークリフト1の運転者、言い換えると荷役作業を行う作業者が乗り込む部分である。運転席40には、フォークリフト1の操舵に用いられるステアリング41や、荷役部50の操作に用いるレバー42などが設けられる。
【0018】
荷役部50は、マスト51と、リフトシリンダ53と、フォーク54と、を備える。マスト51は、車両本体の前側で上下方向に延びる部材である。マスト51は、アウタマストとインナマストを備える。インナマストはアウタマストに沿って上下方向に移動する。フォーク54は、荷物を支持する部材である。フォーク54は、マスト51のインナマストに取り付けられており、当該インナマストの動作に従って上下方向へ移動する。
【0019】
リフトシリンダ53は、車両本体10に収納された油圧発生部から昇圧されたオイルが供給されることで、伸縮動作を行う。リフトシリンダ53は、伸縮動作を行うことにより、一対のインナマストを介してフォーク54を、アウタマストに沿って上下方向に昇降させる。
【0020】
次に、図2図4を参照して、本実施形態に係るフォークリフト1のマスト支持構造100について説明する。図2は、マスト支持構造100を車幅方向の外側から見た図である。図3は、マスト支持構造100の分解斜視図である。図4は、図2に示すIV-IV線に沿った断面図である。
【0021】
マスト支持構造100は、車両本体2の前側で上下方向に延びるマスト51を支持する構造である。マスト支持構造100は、マストピン60と、アクスルブラケット70と、を備える。なお、図2図4は、フォークリフト1の車幅方向における左側(後方から前方を見たときの左側)のマスト支持構造100のみを示している。右側のマスト支持構造100は、左側のマスト支持構造100と同趣旨の構成を有しているので説明を省略する。
【0022】
マストピン60は、マスト51の下部において、車幅方向の外側へ延びる部材である。マストピン60は、四角柱状のマスト51の側面のうち、車幅方向の外側の側面51aから、突出している。マストピン60は、マスト51の側面51aに設けられた板状のベース部材63を介して突出している。マストピン60の中心軸線CLは、車幅方向と平行をなす。マストピン60は、略円柱状の形状をなしている。マストピン60の先端面60aは、中心軸線に対して直交する平面をなしている。マストピン60の外周面61は、車幅方向の外側へ向かって直径が広がる逆テーパー状の形状を有する(詳細は後述)。
【0023】
アクスルブラケット70は、車両本体2の前側の下部において、前輪20の車軸21(図2参照)を支持する部材である。アクスルブラケット70は、前輪20が設けられる本体部71と、マストピン60と連結されるマスト取付部72と、を備える。
【0024】
本体部71は、車幅方向から見て略円形状をなしている。本体部71は、前輪20に対し、車幅方向の内側にて対向する位置に配置されている。本実施形態では、本体部71は、マスト51の下部から後側へ離間した位置に配置されている。また、本体部71は、中心に前輪20の車軸21を挿通させる支持穴71aを有する。支持穴71aの中心軸線は、前輪20の車軸21の中心軸線と一致するように配置される。
【0025】
マスト取付部72は、マストピン60を挿通させる支持穴73を有し、当該支持穴73を介してマストピン60と連結される。マストピン60の外周面61は、当該外周面61と径方向外側で対向する支持穴73の内周面74によって支持される。マスト取付部72は、ベース部76と、ブッシュ77と、カバー部78と、を備える。支持穴73は、ベース部76、ブッシュ77、及びカバー部78の組み合わせによって構成される。
【0026】
ベース部76は、本体部71からマストピン60へ向かって延びる部材である。ベース部76は、車幅方向へ厚みを有する略矩形板状の形状をなしている。ベース部76は、本体部71の前側の端部から前方へ向かって延びる。本実施形態では、マストピン60が車軸21より僅かに高い位置に配置されているため、ベース部76は、本体部71からマストピン60へ向けて斜め上方へ延びる。ベース部76の前端部は、マストピン60の外周面61と外周側で対向するように半円状の円弧を描く円弧部81と、円弧部81の上端部から上側へ向かって延びる平面状の平面部82と、円弧部81の下端から下側へ向かって延びる平面状の平面部83と、を備える。
【0027】
平面部82,83は、下方から上方へ向かうに従って、後側へ向かうように傾斜している。組立状態においては、円弧部81の中心軸線は、マストピン60の中心軸線CLと一致するように配置される(図2参照)。また、円弧部81の内周面81aは、マストピン60の外周面61から径方向に離間した位置に配置される。ベース部76の車幅方向の内側の端面76aは、マスト51の側面51aに対して、車幅方向の外側の位置で対向するように配置される。ベース部76の車幅方向の外側の端面76bは、マストピン60の先端面60aと車幅方向における略同位置に配置される。
【0028】
ブッシュ77は、マストピン60とベース部76との間に介在することで、マストピン60とベース部76とが直接接触することを防止する部材である。ブッシュ77は、金属材料であるマストピン60、ベース部76及びカバー部78とは異なる材料によって構成されており、例えば、樹脂材料、黄銅系材料等によって構成される。ブッシュ77は、半円弧状の形状を有する部材である。本実施形態では、ブッシュ77は、ベース部76及びマストピン60から独立した別部品として構成されている。また、ブッシュ77が支持穴73の一部を構成する。
【0029】
ブッシュ77の内周面77aは、マストピン60の外周面61と同形状を有しており、当該外周面61と面接触する。ブッシュ77の内周面77aは、支持穴73の内周面74を構成する。ブッシュ77の外周面77bは、ベース部76の円弧部81の内周面81aと同形状を有しており、当該内周面81aと面接触する。ブッシュ77の車幅方向の内側の端面77cは、ベース部材63の車幅方向の外側の端面63aに対して、車幅方向の外側の位置で対向するように配置される。ブッシュ77の車幅方向の外側の端面77dは、マストピン60の先端面60aと車幅方向における略同位置に配置される。
【0030】
カバー部78は、ブッシュ77との間でマストピン60を挟み込む部材である。カバー部78は、ベース部76及びブッシュ77よりもマストピン60を挟んで前側の位置に配置される。カバー部78は、ブッシュ77との間でマストピン60を挟むカバー本体部84と、カバー本体部84の上端部から上側へ向かって延びるフランジ部86と、カバー本体部84の下端から下側へ向かって延びるフランジ部87と、を備える。なお、カバー部78の車幅方向の内側の端面78a(図3図4参照)は、マスト51の側面51aに対して、車幅方向の外側の位置で対向するように配置される。カバー部78の車幅方向の外側の端面78b(図3図4参照)は、マストピン60の先端面60aと車幅方向における略同位置に配置される。
【0031】
カバー本体部84は、マストピン60側において、マストピン60の外周面61と外周側で対向するように半円状の円弧を描く円弧部85を有する。円弧部85は、支持穴73の一部を構成する。円弧部85の内周面85aは、マストピン60の外周面61と同形状を有しており、当該外周面61と面接触する。円弧部85の内周面85aは、支持穴73の内周面74を構成する。なお、カバー本体部84の前側の縁部は、円弧部85に対応するように前側へ凸となる形状を有する。
【0032】
フランジ部86は、マストピン60側において、円弧部85の上端部から上側へ向かって延びる平面86aを有する。フランジ部86にはボルト91を挿通させる貫通穴が形成され、平面部82にはボルト91が締結されるネジ穴が形成される。組立状態においては、平面86aは、ベース部76の平面部82と対向するように配置され、ボルト91によって平面部82に対して固定される。フランジ部87は、マストピン60側において、円弧部85の下端部から下側へ向かって延びる平面87aを有する。フランジ部87にはボルト92を挿通させる貫通穴が形成され、平面部83にはボルト92が締結されるネジ穴が形成される。組立状態においては、平面87aは、ベース部76の平面部83と対向するように配置され、ボルト92によって平面部83に対して固定される。
【0033】
次に、図4を参照して、マストピン60及び支持穴73について詳細に説明する。なお、以降の説明で「支持穴73の内周面74」とは、ブッシュ77の内周面77a及びカバー部78の円弧部85の内周面85aを指すものとする。マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74は、車幅方向の外側へ向かうに従って中心軸線CLから離れるように傾斜する傾斜部64を有する。本実施形態に係る傾斜部64では、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74は、断面視において、直線状に傾斜している。なお、ブッシュ77の外周面77b及び円弧部81の内周面81aは、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74と同様の態様で傾斜している。
【0034】
本実施形態では、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74は、互いに接触する領域の車幅方向の全域にわたり、傾斜部64を有する。なお、「互いに接触する領域」とは、傾斜部64における外周面61と内周面74とを互いに接触させることで、マストピン60と支持穴73との間でガタツキの無い状態としたときを基準として設定される領域である。図4に示す形態では、マストピン60の外周面61のうち、支持穴73の内周面74と接触しない箇所においても傾斜しているが、当該接触しない箇所は、傾斜しなくてもよい。マストピン60の外周面61と支持穴73の内周面74とが互いに接触する領域は、フォークリフト1のサイズにもよるが、車幅方向において20~40mm程度の寸法に設定されてよい。また、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74の直径は、フォークリフト1のサイズにもよるが、30~60mm程度の寸法に設定されてよい。
【0035】
傾斜部64の中心軸線CLに対する傾斜角度は、支持穴73によるマストピン60の支持力を確保するために、例えば5°以上であってよく、より好ましくは10°以上であってよい。また、傾斜部64の中心軸線CLに対する傾斜角度は、マストピン60及び支持穴73の強度確保のために、例えば45°以下であってよく、より好ましくは30°以下であってよい。
【0036】
次に、本実施形態に係るマスト支持構造100の作用・効果について説明する。
【0037】
まず、比較例に係るマスト支持構造について説明する。比較例に係るマスト支持構造では、マストピンの内周面と支持穴の外周面とは、いずれも車幅方向に真っ直ぐに延びている。例えば、フォークリフトが旋回する場合などにおいては、マスト取付部がマストに対して相対的に広がる方向へ力を受けることがある。この場合、比較例に係るマスト支持構造においては、マストピンと支持穴との間の車幅方向における位置がずれる場合がある。この場合、マストピンから受ける支持穴の面圧が設計値よりも高くなることによる不具合が生じる可能性がある。例えば、ブッシュの寿命などが、ブッシュの内周面の全面がマストピンの外周面と接触している状態での面圧の設計値に基づいて設定される場合がある。マストピンとブッシュとの車幅方向の位置がずれると、マストピンから受けるブッシュの面圧が設計値よりも大きくなる。これにより、ブッシュの寿命が(例えば予めの計算などによって)想定された値より短くなる場合がある。
【0038】
これに対し、本実施形態に係るマスト支持構造100では、アクスルブラケット(支持部材)70のマスト取付部72は、マストピン60を挿通させる支持穴73を有し、当該支持穴73を介してマストピン60と連結される。マストピン60の外周面61は、当該外周面61と径方向外側で対向する支持穴73の内周面74によって支持される。このような支持構造において、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74は、車幅方向の外側へ向かうに従って中心軸線CLから離れるように傾斜する傾斜部64を有する。従って、マスト取付部72がマスト51に対して相対的に広がる方向へ力を受けた場合であっても、傾斜部64において支持穴73の内周面74がマストピン60の外周面61に支持される。これにより、マストピン60と支持穴73との車幅方向への相対的な移動が抑制される。以上により、マストピン60と支持穴73との間の車幅方向における位置ずれを抑制できる。
【0039】
また、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74が傾斜部64を有する構造は、比較例のように外周面61及び内周面74が車幅方向に真っ直ぐに延びている構造に比して、外周面61と内周面74との接触面積を増やすことができる。これにより、構成部品の耐久性を向上できる。例えば、ブッシュ77の受圧面積を拡大することで当該ブッシュ77の面圧を下げることができる。これにより、ブッシュ77の耐久性を向上できる。
【0040】
また、比較例に係るマスト支持構造に対し、マストピンの先端部であって支持穴よりも車幅方向の外側へはみ出した位置にフランジなどのストッパーを設けることで、マストピンと支持穴の位置ずれを抑制する構造について検討する。このような構造では、支持穴よりも外側にストッパーを設ける分だけ、前輪を車幅方向の外側へ配置する必要性が生じる。この場合、フォークリフトの車幅方向外側の寸法が増加してしまう。それに対し、本実施形態に係るマスト支持構造100は、上述のストッパーなどの追加部材を設けなくとも、車幅方向のレイアウトを変更することなく、マストピン60と支持穴73の位置ずれを抑制できる。
【0041】
また、マスト支持構造100において、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74は、互いに接触する領域の車幅方向の全域にわたり、傾斜部64を有してよい。この場合、広い範囲において、支持穴73の内周面74がマストピン60の外周面61に支持される。従って、マストピン60と支持穴73との車幅方向への相対的な移動が抑制される。
【0042】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0043】
例えば、上述の実施形態では、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74は、互いに接触する領域の車幅方向の全域にわたり、傾斜部64を有していた。これに代えて、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74は、互いに接触する領域の一部に傾斜部を有してもよい。すなわち、マストピン60の外周面61及び支持穴73の内周面74は、互いに接触する領域の他の部分において、車幅方向に真っ直ぐに延びる部分を有してもよい。なお、当該互いに接触する領域のうち、どの程度の範囲が傾斜部であるかは特に限定されないが、例えば車幅方向における30%以上の領域が傾斜部であってよく、より好ましくは60%以上の領域が傾斜部であってよい。
【0044】
例えば、図5(a)に示すように、マストピン160の外周面161及び支持穴の内周面174は、車幅方向の外側の領域に傾斜部164を有し、内側の領域に中心軸線CLと平行に延びる平行部165を有してよい。なお、図5(a)では、ベース部176とマストピン160との間にブッシュ177が設けられているが、ベース部176とマストピン160が接触する箇所も、同趣旨の傾斜部164及び平行部165を有している。なお、図5においては、一体的に構成されている部分と、別体として構成されている部分との区別を付けるため、互いに別体として構成されている部品同士の間には隙間を空けて図示している。しかし、実際の構成では、各部品同士は、隙間無く互いに接触して設けられる。
【0045】
また、図5(b)に示すように、マストピン260の外周面261及び支持穴の内周面274は、車幅方向の内側の領域に傾斜部264を有し、外側の領域に中心軸線CLと平行に延びる平行部265を有してよい。なお、図5(b)では、ベース部276とマストピン260との間にブッシュ277が設けられているが、ベース部276とマストピン260が接触する箇所も、同趣旨の傾斜部264及び平行部265を有している。なお、図5(a),(b)に示すパターンとは異なるパターン及び大きさにて、傾斜部と平行部が設けられてもよい。
【0046】
また、上述の実施形態では、ブッシュは、マストピン及びベース部(またはカバー部)から独立した別体の部品として構成されていた。これに代えて、ブッシュが他の部品と一体的に構成されてもよい。例えば、図5(c)に示すように、マスト取付部において、ベース部376とブッシュ377が互いに固定されることで、一つの部品として一体的に構成されてよい。この場合、ベース部376と一体的に構成されたブッシュ377の内周面が支持穴の内周面374に該当する。あるいは、図5(d)に示すように、マストピン460において、金属部材とブッシュ477が互いに固定されることで、一つの部品として一体的に構成されてよい。すなわち、ブッシュ477は、マスト取付部ではなく、マストピン460に属する部材となる。この場合、ベース部76の内周面が支持穴の内周面474に該当する。ブッシュ477の外周面が、マストピン460の外周面461に該当する。なお、マスト取付部にブッシュが一体的に固定され、且つ、マストピンにブッシュが一体的に固定されてもよい。なお、図5(c),(d)では、マストピンの外周面及び支持穴の内周面が、互いに接触する領域の車幅方向の全域にわたって傾斜部364,464を有していたが、一部に傾斜部を有してもよい。
【0047】
また、上述の実施形態では、マストピンの外周面及び支持穴の内周面は、断面視において真っ直ぐ延びるように傾斜していた。これに代えて、マストピンの外周面及び支持穴の内周面は、断面視において湾曲するように傾斜してもよい。例えば、マストピンの外周面及び支持穴の内周面は、外周側へ凸となるように湾曲してもよく、内周側へ凸となるように湾曲してもよい。
【0048】
また、マスト取付部及び支持穴の構造は、上述の実施形態に限定されず、趣旨を逸脱しない範囲であらゆる構造が採用されてよい。例えば、ベース部とカバー部の分割方向が上述の実施形態と異なっていてよく、カバー部が上側からマストピンを覆ってよい。また、カバー部が更に分割されてもよい。また、支持穴は、マストピンを全周にわたって設けられていなくともよく、周方向における一部で分断されていてもよい。例えば、カバー部とベース部とが境界部分で互いに離間しており、当該部分で支持穴が途切れていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…フォークリフト、20…前輪(車輪)、21…車軸、51…マスト、60…マストピン、61,161,261,461…外周面、64,164,264,364,464…傾斜部、70…アクスルブラケット(支持部材)、72…マスト取付部、73…支持穴、74,174,274,374,474…内周面、100…マスト支持構造。
図1
図2
図3
図4
図5