IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロンヘルスケア株式会社の特許一覧

特許7003654生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム
<>
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図1
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図2
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図3
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図4
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図5
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図6
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図7
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図8
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図9
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図10
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図11
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図12
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図13
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図14
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図15
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図16
  • 特許-生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/08 20120101AFI20220203BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20220203BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20220203BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
G06Q40/08
G16H10/00
A61B5/02 D
A61B5/00 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017252564
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019117599
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 宏
(72)【発明者】
【氏名】和田 洋貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博則
(72)【発明者】
【氏名】吉川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】上田 民生
【審査官】阿部 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-129629(JP,A)
【文献】特開2017-027157(JP,A)
【文献】特表2017-533805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0042142(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0188831(US,A1)
【文献】特開2017-038844(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 20/00-20/42;40/00-40/08
G16H 10/00-80/00
A61B 5/00
A61B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報を記憶する記憶装置と、
前記記憶された特定の被測定者の生体情報に基づいて、当該生体情報の変動特性を推定する推定部と、
前記特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報の測定時期を表す情報と共に取得する取得部と、
前記取得された特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報と共に取得した測定時期を表す情報と、前記推定された前記変動特性と、に基づいて補正する補正部と、
を備え、
前記生体情報は、第1の場所に関連づけられた第1の生体情報と、前記第1の場所と異なる第2の場所に関連づけられた第2の生体情報と、を含み、
前記推定部は、前記第1の生体情報に基づいて第1の変動特性を推定し、前記第2の生体情報に基づいて第2の変動特性を推定し、
前記取得部は、前記特定の被測定者の生体情報の測定場所を示す位置情報を更に取得し、
前記補正部は、前記取得された特定の被測定者の生体情報を、前記取得された位置情報が前記第1の場所に含まれる場合には前記第1の変動特性に基づいて補正し、前記第2の場所に含まれる場合には前記第2の変動特性に基づいて補正する、
生体情報処理装置。
【請求項2】
前記補正部により補正された生体情報と、前記推定された前記変動特性とに基づいて、前記特定の被測定者の生体情報に関する解析情報を生成する生成部を更に備える、請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項3】
前記推定部は、前記取得された特定の被測定者の生体情報に基づいて、前記推定された前記変動特性を更新する、請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項4】
前記推定部は、不特定の少なくとも1人の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報の変動特性の統計情報に更に基づいて、前記特定の被測定者の生体情報の変動特性を推定する、請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記記憶された特定の被測定者の生体情報に基づいて、当該生体情報の異なる期間に対応する複数の変動特性を推定する、請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項6】
前記単位期間は、1年間、1週間、及び1日間のいずれかに設定される、請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項7】
前記補正部により補正された生体情報に基づいて、前記特定の被測定者の健康状態に応じた評価情報を生成する評価部を更に備える、請求項1記載の生体情報処理装置。
【請求項8】
前記評価情報は、保険加入の可否を判定するための情報と、保険料又はリワードポイントを算定するための情報の少なくとも一方を含む、請求項7記載の生体情報処理装置。
【請求項9】
記憶装置を備える生体情報処理装置が実行する生体情報処理方法であって、
特定の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報を記憶する過程と、
前記記憶された特定の被測定者の生体情報に基づいて、当該生体情報の変動特性を推定する過程と、
前記特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報の測定時期を表す情報と共に取得する過程と、
前記取得された特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報と共に取得した測定時期を表す情報と、前記推定された前記変動特性とに基づいて補正する過程と、
を備え、
前記生体情報は、第1の場所に関連づけられた第1の生体情報と、前記第1の場所と異なる第2の場所に関連づけられた第2の生体情報と、を含み、
前記推定する過程は、前記第1の生体情報に基づいて第1の変動特性を推定し、前記第2の生体情報に基づいて第2の変動特性を推定し、
前記取得する過程は、前記特定の被測定者の生体情報の測定場所を示す位置情報を更に取得し、
前記補正する過程は、前記取得された特定の被測定者の生体情報を、前記取得された位置情報が前記第1の場所に含まれる場合には前記第1の変動特性に基づいて補正し、前記第2の場所に含まれる場合には前記第2の変動特性に基づいて補正する、
生体情報処理方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の生体情報処理装置が備える各部としてコンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報処理装置、処理方法、及び処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報の1つとして血圧値がある。血圧値は、被測定者の健康状態を判断するための重要な指標の1つである。このため、血圧値は、被測定者の健康状態に基づいて導出される様々な情報に反映される。
【0003】
特許文献1では、加入者から測定された心拍数及び血圧値を含む体調データをホームドクターセンターに送信し、送信された体調データに基づいて加入者の体調を初期診断するホームドクターセンターシステムが提案されている。当該ホームドクターセンターシステムによれば、加入者の血圧値等の体調データに基づいて健康状態を診断し、その結果を様々な付帯的なサービスに利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-249996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、血圧値等の生体情報の測定値は、環境等の外的要因により変化しやすいため、測定された血圧値等の生体情報を付帯的なサービスに利用する場合には注意が必要である。例えば、血圧値は、測定時期によって変化し得ること、及び当該測定時期による血圧値の変動特性が個々人によって異なり得ること、が知られている。そのため、健康状態が異なる複数の人物からの同一の測定時期における測定であっても、同程度の血圧値が測定され得る。このため、被測定者毎の変動特性の違いを考慮せずに、測定された血圧値をそのままサービスに使用すると、被測定者は、測定時期によっては希望するサービスを受けることができなくなることが予想される。
【0006】
本発明は、一側面では、このような実状を鑑みてなされたものであり、その目的は、被測定者によらず、被測定者の生体情報を適正に処理可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
すなわち、本発明の一側面に係る生体情報処理装置は、特定の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報を記憶する記憶装置と、前記記憶された特定の被測定者の生体情報に基づいて、当該生体情報の変動特性を推定する推定部と、前記特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報の測定時期を表す情報と共に取得する取得部と、前記取得された特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報と共に取得した測定時期を表す情報と、前記推定された前記変動特性と、に基づいて補正する補正部と、を備える。
【0009】
上記構成では、異なる時期に測定された複数の生体情報に基づいて、推定情報が推定される。このため、離散的な生体情報に基づいて、期間全体にわたる連続的な生体情報の変動特性を把握することができる。なお、推定情報は、同一の被測定者の生体情報によって推定される。このため、変動特性が当該被測定者以外の者の変動特性にはみられないような特有のものであったとしても、生体情報の変動量を適切に推定することができる。したがって、被測定者によらず、被測定者の生体情報を適切に処理可能にする技術を提供することができる。
【0010】
上記一側面に係る生体情報処理装置において、前記補正部により補正された生体情報と、前記推定された前記変動特性とに基づいて、前記特定の被測定者の生体情報に関する解析情報を生成する生成部を更に備えてもよい。当該構成によれば、補正された生体情報と、変動特性との関係を把握可能な情報を生成することができる。このため、生体情報の評価に際し、より有用な情報を提供できる。
【0011】
上記一側面に係る生体情報処理装置において、前記推定部は、前記取得された特定の被測定者の生体情報に基づいて、前記推定された前記変動特性を更新してもよい。当該構成によれば、変動特性の推定の際に、最新の生体情報を取り入れることができる。これにより、仮に被測定者の健康状態が少しずつ変化していくことによって生体情報の変動特性が変化していった場合にも、当該変化に追従することができ、ひいては、適切に生体情報を補正することができる。
【0012】
上記一側面に係る生体情報処理装置において、前記推定部は、不特定の少なくとも1人の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報の変動特性の統計情報に更に基づいて、前記特定の被測定者の生体情報の変動特性を推定してもよい。当該構成によれば、特定の被測定者からの生体情報を、統計的な変動特性で補うことができる。これにより、特定の被測定者からの生体情報だけでは変動特性を精度よく推定できない場合においても、一般的な変動特性によっておおまかな変動特性の傾向を用いて補間することができる。したがって、被測定者の生体情報を、その変動特性から大きく逸脱しない範囲で補正することができる。
【0013】
上記一側面に係る生体情報処理装置において、前記推定部は、前記記憶された特定の被測定者の生体情報に基づいて、当該生体情報の異なる期間に対応する複数の変動特性を推定してもよい。当該構成によれば、生体情報内に異なる期間を周期として変動する複数の変動特性が重畳している場合において、当該複数の変動特性の各々を抽出することができる。これにより、生体情報内に含まれる複数の周期的な変動成分の各々を取り除くことができる。したがって、被測定者の生体情報をより適正に処理することができる。
【0014】
上記一側面に係る生体情報処理装置において、前記単位期間は、1年間、1週間、及び1日間のいずれかに設定されてもよい。当該構成によれば、生体情報の様々な周期的変動を考慮することができる。これにより、被測定者の生体情報をより適正に処理することができる。
【0015】
上記一側面に係る生体情報処理装置において、前記評価情報は、保険加入の可否を判定するための情報と、保険料又はリワードポイントを算定するための情報の少なくとも一方を含んでもよい。当該構成によれば、生体情報に基づいて、被測定者の生体情報の評価結果を保険加入可否、保険料、又はリワードポイントに反映できる。これにより、被測定者は、測定時期によらない公平な評価の結果により、適切な保険に加入し、適切な保険料を支払い、又は適切なクーポンを受け取ることができる。
【0016】
上記一側面に係る生体情報処理装置において、前記評価情報は、保険加入の可否を判定するための情報と、保険料又はリワードポイントを算定するための情報の少なくとも一方を含んでもよい。当該構成によれば、生体情報に基づいて、被測定者の生体情報の評価結果を保険加入可否、保険料、又はリワードポイントに反映できる。これにより、被測定者は、測定時期によらない公平な評価の結果、適切な保険に加入し、適切な保険料を支払い、又は適切なクーポンを受け取ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被測定者によらず、被測定者の生体情報を適正に処理可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、適用例に係る生体情報処理装置の機能構成を例示するブロック図。
図2図2は、本実施形態に係る血圧処理装置を含む血圧処理システムの構成を例示する模式図。
図3図3は、本実施形態に係る血圧測定装置のハードウェア構成を例示するブロック図。
図4図4は、本実施形態に係る携帯端末のハードウェア構成を例示するブロック図。
図5図5は、本実施形態に係る血圧処理装置のハードウェア構成を例示するブロック図。
図6図6は、本実施形態に係る変動特性推定情報を例示するダイアグラム。
図7図7は、本実施形態に係る血圧評価装置のハードウェア構成を例示するブロック図。
図8図8は、本実施形態に係る血圧処理装置の機能構成を例示するブロック図。
図9図9は、本実施形態に係る血圧推移情報と変動特性推定情報との関係を例示するダイアグラム。
図10図10は、本実施形態に係る血圧評価装置の機能構成を例示するブロック図。
図11図11は、本実施形態に係る血圧処理装置における血圧解析処理の手順を例示するフローチャート。
図12図12は、本実施形態に係る血圧評価装置における血圧評価処理の手順を例示するフローチャート。
図13図13は、本実施形態に係る効果を説明するためのダイアグラム。
図14図14は、本実施形態の第1変形例に係る変動特性推定情報を例示するダイアグラム。
図15図15は、本実施形態の第1変形例に係る変動特性推定情報を例示するダイアグラム。
図16図16は、本実施形態の第3変形例に係る血圧処理装置の機能構成を例示するブロック図。
図17図17は、本実施形態の第4変形例に係る評価基準情報を例示するダイアグラム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する構成要素については、共通する参照符号を付す。また、共通する参照符号を有する複数の構成要素を区別する場合、当該共通する参照符号に後続する追加符号を更に付して区別する。なお、複数の構成要素について特に区別を要さない場合、当該複数の構成要素には、共通する参照符号のみが付され、追加符号は付さない。
【0020】
1.適用例
まず、図1を用いて、本発明が適用される生体情報処理装置の一例について説明する。
【0021】
図1に示すように、生体情報処理装置は、記憶部1と、取得部2と、推定部3と、補正部4と、生成部5と、を備えている。
【0022】
記憶部1には、特定の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報が記憶される。
【0023】
取得部2は、測定対象となる特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報の上記単位期間内における測定時期を表す情報と共に取得する。取得部2は、例えば、センサから被測定者の血圧値等の生体情報を、その測定日時を表す情報と共に取得する。
【0024】
推定部3は、上記記憶された特定の被測定者の生体情報に基づいて、当該生体情報の変動特性を推定する。変動特性とは、単位期間内の時期によって、生体情報がどの程度変動するか、を示す情報である。この場合、記憶部1に記憶される生体情報の数が多いほど、推定される変動特性の精度を高めることができる。
【0025】
補正部4は、上記取得された生体情報を、同時に取得された当該生体情報の測定時期を表す情報と、上記推定部3によって推定された変動特性とに基づいて補正する。補正部4は、例えば、上記推定された変動特性から、上記取得部2によって取得された生体情報の測定日時に対応する時期の変動量を抽出し、上記取得された生体情報を上記抽出された変動量に応じて補正する。
【0026】
生成部5は、上記補正部4によって補正された生体情報と、上記推定部3によって推定された上記変動特性とに基づいて、上記特定の被測定者の生体情報に関する解析情報を生成する。解析情報は、補正された生体情報に加えて、当該補正された生体情報と、推定された変動特性と、を組み合わせて得られる情報を含む。例えば、解析情報は、補正された生体情報のまわりに被測定者の生体情報がどの程度変動し得るか、を示す情報を含む。
【0027】
以上のような構成であれば、被測定者の生体情報がその測定時期に依存する変動成分を含んでいても、当該変動成分の影響を軽減させることが可能となる。すなわち、測定時期によらず、被測定者の生体情報を適正に処理することが可能となる。また、当該変動成分の影響を軽減させた上で当該生体情報を評価させることが可能となる。加えて、被測定者の血圧値の変動特性が一般的にみられる血圧値の変動特性と異なる挙動を示す場合でも、当該被測定者の血圧値を正当に評価することができる。
【0028】
2.実施例
上述の適用例に係る生体情報処理装置の実施例について、以下に説明する。以下では、生体情報処理装置の一例としての血圧処理装置を含む血圧処理システムについて説明する。
【0029】
2.1 全体構成例
図2は、本実施形態に係る血圧処理システムの適用場面の一例を模式的に例示する。本実施形態に係る血圧処理システムは、被測定者から測定された血圧値を測定時期に依存しない形式に処理することにより、被測定者の健康状態に応じた評価結果を提供するシステムである。被測定者の健康状態は、当該被測定者が有する健康上のリスクに対応付けられる。本実施形態におけるリスクは、脳・心血管疾患の発症のリスクを示す。
【0030】
図2に示すように、血圧処理システムは、血圧測定装置10、携帯端末30、血圧処理装置50、及び血圧評価装置70を備える。血圧測定装置10と、血圧処理装置50とは、携帯端末30を介して互いに通信可能に接続される。また、携帯端末30は、ネットワークNWを経由して血圧処理装置50及び血圧評価装置70と接続される。
【0031】
血圧測定装置10は、例えば、血圧評価装置70の管理者から譲渡されて被測定者が所持する、任意の測定箇所(例えば、手首)に装着可能な装置である。血圧測定装置10は、測定箇所における被測定者の血圧値を測定し、当該血圧値が測定日時と対応付けられた血圧情報を生成する。測定日時は、周期性を有する単位期間内の時期を特定するための情報であり、本発明の「時期」の一例である。以下の説明では、「単位期間」は、単に「期間」とも言う。周期性を有する期間は、例えば、日、週、及び年を含む。周期性を有する期間内の時期は、例えば、日に対する時間、週に対する曜日、及び年に対する月を含む。血圧測定装置10は、血圧情報を携帯端末30に送信する。
【0032】
携帯端末30は、例えば、被測定者が携帯可能な端末である。携帯端末30は、血圧測定装置10から血圧情報を受信すると、当該血圧情報を血圧処理装置50に転送する。また、携帯端末30は、血圧値の評価結果を示す評価情報を血圧処理装置50から受信すると、当該評価結果を被測定者に通知する。
【0033】
血圧処理装置50は、例えば、被測定者の血圧値を評価するための機能構成を備えるサーバ装置である。血圧処理装置50は、同一の被測定者からの複数の血圧情報を関連づけ、血圧推移情報として記憶する。血圧推移情報は、本発明の「特定の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報」の一例である。血圧処理装置50は、血圧推移情報に基づき、当該被測定者の血圧値の周期的な変動を示す変動特性推定情報を推定する。変動特性推定情報は、本発明の「推定された変動特性」の一例である。血圧処理装置50は、当該被測定者に関する血圧情報を更に取得する。血圧処理装置50は、当該更に取得した血圧情報の測定日時における周期的な変動量を、変動特性推定情報に基づいて考慮することにより、周期的な変動の影響を排除するように血圧値を補正する。血圧処理装置50は、補正された血圧値に基づいて、被測定者の血圧値に関する解析情報を生成し、血圧評価装置70に送信する。解析情報は、例えば、補正された血圧値に加え、被測定者の血圧値が変動する範囲や、変動の最大値、及び最小値、最頻値等の情報を含む。
【0034】
血圧評価装置70は、例えば、被測定者の血圧値を評価するための機能構成を備える、保険会社等のサーバ装置である。血圧評価装置70は、解析情報に基づいて評価情報を生成し、携帯端末30に送信する。評価情報は、被測定者の健康状態に基づいて導出される任意の態様を含む。例えば、評価情報は、被測定者が加入を希望する保険の加入可否を判断するための情報や、被測定者が加入する健康保険の保険料、又は被測定者の健康状態に応じて付与されるクーポン等のリワードポイントを算定するための基礎情報を含む。
【0035】
これにより、血圧処理装置50は、血圧値の周期的な変動量の影響を受けることなく、被測定者の健康状態に応じた解析情報を生成することができる。また、血圧評価装置70は、当該解析情報に基づく評価情報を、被測定者に通知することができる。
【0036】
以上の通り、本実施形態では、血圧処理装置50は、期間内における同一の被測定者の血圧値の推移から、当該被測定者の血圧値の変動特性を変動特性推定情報として推定する。当該変動特性推定情報は、専ら当該被測定者の血圧値の補正に用いられる。このため、血圧処理装置50は、当該被測定者の血圧値の変動特性が一般的にみられる血圧値の変動特性と異なる挙動を示す場合でも、当該被測定者の血圧値を適正に処理することができる。例えば、2人の被測定者から同一の時期に同程度の血圧値が測定された場合、血圧処理装置50は、当該2人の被測定者はそれぞれ異なるリスクを有すると評価可能な解析情報を生成することができ得る。
【0037】
2.2 ハードウェア構成例
本実施形態に係る血圧処理システムにおける各装置のハードウェア構成の一例について説明する。
【0038】
2.2.1 血圧測定装置のハードウェア構成例
まず、本実施形態に係る血圧測定装置10のハードウェア構成例について説明する。図3は、本実施形態に係る血圧測定装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係る血圧測定装置10は、制御部11、記憶部12、通信部13、操作部14、表示部15、血圧センサ16、加速度センサ17、及び温湿度センサ18を備える。
【0039】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて各構成要素の制御を行う。また、制御部11は、図示しないクロックを含み、現在の日時を掲示する時計機能を有する。
【0040】
制御部11は、血圧センサ16、加速度センサ17、及び温湿度センサ18による測定結果に基づき、血圧情報、活動情報、及び環境情報を生成する。具体的には、例えば、血圧情報は、血圧センサ16による測定に基づく、被測定者の血圧値を含む。活動情報は、加速度センサ17による測定に基づく、被測定者の活動量、歩数、及び睡眠状態を含む。環境情報は、温湿度センサ18による測定に基づく、被測定者の周辺の温度、及び湿度を含む。血圧情報、活動情報、及び環境情報の各々は、クロックによる測定日時と関連付けられる。また、血圧情報、活動情報、及び環境情報の各々は、血圧測定装置10を一意に識別する機器IDと更に関連付けられてもよい。
【0041】
記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置である。記憶部12は、血圧情報、活動情報、及び環境情報等が携帯端末30に送信されるまでの間、これらの情報を一時的に記憶する。
【0042】
通信部13は、携帯端末30との通信を司る通信インタフェースである。通信部13は、例えば、血圧情報、活動情報、及び環境情報等を携帯端末30へ送信する。本実施形態では、通信部13による携帯端末30との通信は、例えば、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信が適用可能であるが、これに限定されない。通信部13による通信は、例えば、LAN(Local Area Network)のようなネットワークNWを介する通信、又は通信ケーブルを用いた有線の通信が適用されてもよい。
【0043】
操作部14は、例えば、タッチパネル及び操作ボタン等のユーザインタフェースを含む。操作部14は、当該ユーザインタフェースを介して被測定者による操作を検出し、当該操作の内容を示す信号を制御部11に出力する。
【0044】
表示部15は、例えば、表示画面(例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又はEL(Electroluminescence)ディスプレイ等)及びインジケータ等を含む。表示部15は、制御部11からの信号にしたがって情報を表示し、被測定者へ通知する。
【0045】
血圧センサ16は、被測定者の血圧値を測定する。血圧値は、例えば、最高血圧及び最低血圧等の代表的な指数を含む。以下の説明では一例として、血圧値が最高血圧であるものとして説明するが、最低血圧及びその他の指数が最高血圧に代えて用いられてもよく、これらの複数の指数が組み合わせて用いられてもよい。
【0046】
血圧センサ16は、例えば、被測定者の血圧を、心拍の一拍ごと(連続的)に測定可能な連続測定型でもよく、所定の時期についてスポット(非連続的)で測定可能な非連続測定型でもよい。連続測定型の血圧センサ16には、例えば、脈波伝播時間(PTT;Pulse Transmit Time)に基づいて被測定者の血圧を連続的に測定する手法、及び圧脈波に基づいて血圧を連続的に測定する手法(トノメトリ法)等が適用可能である。なお、連続的に血圧を測定する手法は、上述の例に限らず、発光素子を用いて脈波を検出する手法等が適宜適用可能である。非連続測定型の血圧センサ16には、例えば、カフを圧力センサとして用いて血管を圧迫することで脈波を検出する手法(オシロメトリック法)が適用可能である。
【0047】
加速度センサ17は、血圧測定装置10の装着箇所において生じる被測定者の加速度を、3軸成分の組として検出する。また、加速度センサ17は、ジャイロセンサを更に含んでもよく、加速度に加えて、角速度を3軸成分の組として更に検出してもよい。
【0048】
温湿度センサ18は、被測定者の周辺の温度及び湿度を測定する。
【0049】
2.2.2 携帯端末のハードウェア構成例
次に、携帯端末30のハードウェア構成例について説明する。図4は、本実施形態に係る携帯端末30のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、本実施形態に係る携帯端末30は、制御部31、記憶部32、通信部33、操作部34、表示部35、及びGPS(Global Positioning System)受信機36を備える。
【0050】
制御部31及び記憶部32はそれぞれ、上記血圧測定装置10の制御部11及び記憶部12と同様である。ただし、携帯端末30の記憶部32は、血圧測定装置10から受信した血圧情報、活動情報、及び環境情報、並びにGPS受信機36によって生成される位置情報等が血圧処理装置50に送信されるまでの間、これらの情報を一時的に記憶する。
【0051】
通信部33は、血圧測定装置10、血圧処理装置50、及び血圧評価装置70との通信を司る通信インタフェースである。通信部33は、例えば、血圧情報、活動情報、及び環境情報等を血圧測定装置10から受信する。また、通信部33は、血圧情報、活動情報、環境情報、位置情報等を血圧処理装置50に送信し、評価情報を血圧評価装置70から受信する。本実施形態では、通信部33による血圧処理装置50及び血圧評価装置70との通信は、例えば、ネットワークNWを介する通信が適用可能であるが、これに限定されず、近距離無線通信、又は有線通信が適用されてもよい。
【0052】
操作部34及び表示部35はそれぞれ、上記血圧測定装置10の操作部14及び表示部15と同様である。
【0053】
GPS受信機36は、携帯端末30の位置を測位し、位置情報を生成する。位置情報は、例えば、測位日時、並びに測位日時における携帯端末30の緯度、及び経度を含む。GPS受信機36による測位は、例えば、血圧測定装置10の血圧センサ16の測定と同期して行うことが可能である。
【0054】
2.2.3 血圧処理装置のハードウェア構成例
次に、血圧処理装置50のハードウェア構成例について説明する。図5は、本実施形態に係る血圧処理装置50のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図5に示すように、本実施形態に係る血圧処理装置50は、制御部51、記憶部52、通信部53、及びドライブ54を備える。
【0055】
制御部51及び記憶部52はそれぞれ、上記血圧測定装置10の制御部11及び記憶部12と同様である。ただし、血圧処理装置50の記憶部52は、制御部51で実行される血圧処理プログラム521、並びに血圧処理プログラム521において用いられる血圧推移情報522、被測定者情報523、及び変動特性推定情報524等を記憶する。
【0056】
通信部53は、携帯端末30及び血圧評価装置70との通信を司る通信インタフェースである。通信部53は、例えば、血圧情報、活動情報、環境情報、及び位置情報等を携帯端末30から受信する。また、通信部53は、血圧値の解析情報を血圧評価装置70に送信する。
【0057】
ドライブ54は、例えば、CD(Compact Disk)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disk)ドライブ等であり、記憶媒体55に記憶されたプログラムを読込むための装置である。ドライブ54の種類は、記憶媒体55の種類に応じて適宜選択されてよい。上記血圧処理プログラム521、並びに血圧推移情報522、被測定者情報523、及び変動特性推定情報524は、この記憶媒体55に記憶されていてもよい。
【0058】
記憶媒体55は、コンピュータその他装置、機械等が記録されたプログラム等の情報を読取り可能なように、当該プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的又は化学的作用によって蓄積する媒体である。血圧処理装置50は、この記憶媒体55から、血圧処理プログラム521、並びに血圧推移情報522、被測定者情報523、及び変動特性推定情報524を取得してもよい。
【0059】
血圧処理プログラム521は、後述する血圧値を解析処理する血圧解析処理(図11)を、血圧処理装置50に実行させるためのプログラムである。
【0060】
血圧推移情報522は、同一の被測定者に関する複数の血圧情報を集約した情報である。複数の血圧情報の各々は、それぞれ期間内の異なる測定時期において測定された血圧値を含む。これにより、当該血圧推移情報522に対応する被測定者の血圧値が全期間にわたって離散的に把握できる。
【0061】
被測定者情報523は、評価の対象となり得る血圧値の被測定者に関する情報である。被測定者情報523は、例えば、氏名、年齢、性別、住所、肥満度、及び喫煙の有無等の個人情報と、当該個人情報に対応する被測定者が所持する血圧測定装置10の機器IDとが関連付けられ、記憶部52に予め記憶される。肥満度は、例えば、体脂肪率及びBMI(Body Mass Index)等を含む。被測定者情報523は、被測定者からの申告によって適宜更新される。
【0062】
変動特性推定情報524は、所定の長さの期間を周期として血圧値が周期的に変動する様子を示す情報である。また、変動特性推定情報524は、同一の被測定者の血圧推移情報522に基づいて推定される。すなわち、変動特性推定情報524には、血圧推移情報522に対応付けられる被測定者の有する血圧値の変動特性と、周期内の時期毎における最も確からしい変動量が全期間にわたって連続的に示される。
【0063】
図6は、本実施形態に係る変動特性推定情報524の一例を例示するダイアグラムである。図6の例では、変動特性推定情報524は、1年間を周期として、血圧値が所定の平均値周りに周期的に変動する様子を示している。また、図6の例では、互いに異なる被測定者について推定された2つの変動曲線L10及びL11が示される。なお、図6の例では、変動曲線L10及びL11は、いずれも同一の国(例えば、日本)の同一の地域における被測定者に関する変動特性であるものとする。
【0064】
図6に示すように、変動曲線L10及びL11は、1年間を血圧変動の周期とした場合、血圧値の変動量は、月(又は季節)に応じて平均値(例えば、“0”)に対して上下する。より具体的には、変動曲線L10及びL11において、例えば、血圧値の変動量は概ね、12月~3月の期間(冬)に平均値(血圧値の変動量“0”)に対して高くなり、6月~9月の期間(夏)に平均値に対して低くなる。また、例えば、血圧値の変動量は、3月~6月の期間(春)と、9月~12月の期間(秋)とで平均値付近を推移する。これらの変動曲線L10及びL11の変動幅は、最大で10~20mmHg程度になり得る。
【0065】
しかしながら、上述の通り、変動特性推定情報524は、被測定者毎に固有であるため、変動曲線L10及びL11の変動特性は、必ずしも一致しない。図6の例では例えば、変動曲線L11は、変動曲線L10よりも変動量の幅が大きく、変動曲線L10よりも変動量が極大及び極小となる時期が1ヶ月程度遅い。
【0066】
なお、図6はあくまで一例であり、変動曲線L10及びL11の変動特性は、図6に示された変動特性及び変動量に限らず、図6の例傾向と異なる任意の変動特性及び変動量となり得る。例えば、1年間の血圧の周期的変動を引き起こす原因の1つとして、地球の公転によって生じる季節の変化が考えられる。このため、図6では、上述の通り、日本に住む被測定者から取得された血圧値の変動特性が示されているが、日本とは季節変化や気候等が異なる国又は地域に住む被測定者から取得された血圧値の変動特性は、図6に示された変動特性と異なり得る。つまり、血圧値の測定場所(国や地域などの違い、又は緯度及び経度の違い)に応じて、異なる変動特性となり得る。なお、以下の説明では、当該図6に示される変動特性と同様の国及び地域における被測定者から得られる変動特性を参照して説明する。
【0067】
2.2.4 血圧評価装置のハードウェア構成例
次に、血圧評価装置70のハードウェア構成例について説明する。図7は、本実施形態に係る血圧評価装置70のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、本実施形態に係る血圧評価装置70は、制御部71、記憶部72、通信部73、及びドライブ74を備える。
【0068】
制御部71及び記憶部72はそれぞれ、上記血圧測定装置10の制御部11及び記憶部12と同様である。ただし、血圧評価装置70の記憶部72は、制御部71で実行される血圧評価プログラム721、並びに血圧評価プログラム721において用いられる被測定者情報722、及び評価基準情報723等を記憶する。
【0069】
通信部73は、携帯端末30及び血圧処理装置50との通信を司る通信インタフェースである。通信部73は、例えば、解析情報等を血圧処理装置50から受信する。また、通信部73は、血圧値の評価情報を携帯端末30に送信する。
【0070】
ドライブ74及び記憶媒体75は、上記血圧処理装置50のドライブ54及び記憶媒体55と同様である。ただし、上記血圧評価プログラム721、並びに被測定者情報722及び評価基準情報723は、この記憶媒体75に記憶されていてもよい。すなわち、血圧評価装置70は、この記憶媒体75から、血圧評価プログラム721、並びに被測定者情報722及び評価基準情報723を取得してもよい。
【0071】
血圧評価プログラム721は、後述する血圧評価処理(図12)を、血圧評価装置70に実行させるためのプログラムである。
【0072】
被測定者情報722は、上記血圧処理装置50の被測定者情報523と同様である。
【0073】
評価基準情報723は、血圧値と評価結果との関係を定義するための情報である。評価基準情報723は、評価内容に応じて種々の態様を取り得る。評価内容が被測定者の保険加入の可否を示す情報である場合、評価基準情報723は、例えば、血圧値を閾値として、当該閾値を上回る血圧値に保険加入不可を示す情報を対応付け、当該閾値を下回る血圧値に保険加入可を示す情報を対応付ける。また、評価内容が被測定者の保険料又はリワードポイントである場合、評価基準情報723は、例えば、血圧値を引数として含む関数の出力値を閾値として、血圧値に保険料又はリワードポイントを対応付ける。評価基準情報723は、被測定者の属性情報に応じて、異なる基準が設定されてもよい。
【0074】
2.3 機能構成例
次に、本実施形態に係る血圧処理システムの機能構成の一例について説明する。
【0075】
2.3.1 血圧評価装置の機能構成例
図8は、本実施形態に係る血圧処理システムの血圧処理装置50の機能構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【0076】
血圧処理装置50の制御部51は、記憶部52に記憶された血圧処理プログラム521をRAMに展開する。そして、制御部51は、RAMに展開された血圧処理プログラム521をCPUにより解釈及び実行して、各構成要素を制御する。これによって、図8に示されるように、本実施形態に係る血圧処理装置50は、取得部511、変動特性推定部512、解析部513、及び出力部514を備えるコンピュータとして機能する。
【0077】
取得部511は、血圧測定装置10及び携帯端末30が測定した各種情報を取得する。具体的には、例えば、取得部511は、血圧情報を取得し、記憶部52及び解析部513に転送する。記憶部52に転送された血圧情報は、被測定者毎に集計されて血圧推移情報522として記憶される。
【0078】
変動特性推定部512は、血圧推移情報522に基づき、当該血圧推移情報522に対応する被測定者のための変動特性推定情報524を推定する。変動特性推定部512による変動特性推定情報524の推定については、後述する。
【0079】
解析部513は、血圧値に内在する周期的な変動量を補正しつつ、血圧値を補正し、解析する。具体的には、解析部513は、補正部515及び解析情報生成部516を含む。
【0080】
補正部515は、取得部511から血圧情報を受けると、当該血圧情報の測定日時を抽出する。補正部515は、変動特性推定情報524を読出し、血圧情報から抽出した測定日時に該当する周期内の時期を特定する。補正部515は、変動特性推定情報524から、特定された周期内の時期に対応する血圧値の変動量を抽出し、当該変動量に基づいて血圧値を補正する。具体的には、例えば、補正部515は、血圧値から周期的な変動量を差し引き、測定日時に依存しない補正済み血圧値を算出する。より具体的には、補正済み血圧値は、期間内において変動する血圧値の平均値となるように算出されてもよい。補正部515は、血圧情報内の血圧値を補正済み血圧値に書き換えて補正情報を生成する。補正部515は、生成された補正情報を解析情報生成部516に送出する。
【0081】
解析情報生成部516は、補正情報を受けると、変動特性推定情報524を用いて、補正情報と共に血圧値の評価に用いられ得る情報を含む解析情報を生成する。解析情報は、後述の血圧評価装置70による評価の際に、補正済み血圧値と組み合わせることによって評価情報の精度を高め得る。具体的には、例えば、解析情報は、補正済み血圧値に加えて、期間内における血圧値の変動幅や、最大値、最小値、及び最頻値等を含む。これにより、被測定者の血圧値が補正済み血圧値を平均としてどの程度変動し得るか、といった情報を評価の際に考慮することができる。解析情報生成部516は、生成された解析情報を出力部514に送出する。
【0082】
出力部514は、評価情報を血圧評価装置70に出力する。
【0083】
図9は、本実施形態に係る血圧推移情報522と変動特性推定情報524との関係の一例を例示するダイアグラムである。図9の例では、血圧推移情報522は、6つの測定時期において同一の被測定者から測定された血圧情報P21、P22、P23、P24、P25、及びP26を含む。また、当該血圧推移情報522から推定される変動特性推定情報524として変動曲線L20が示される。変動曲線L20は、全期間にわたって被測定者の血圧変動を正確に近似することが望ましい。
【0084】
図9に示すように、変動特性推定部512は、例えば、血圧情報P21~P26の各々からの誤差が最小となるように変動曲線L20を推定する。推定手法としては、例えば、最小二乗法等が適宜適用可能であるが、これに限らず、任意の最尤推定手法が適用可能である。すなわち、変動特性推定部512は、血圧情報P21~P26の各々に重み付けして、変動曲線L20を推定してもよい。具体的には、例えば、変動特性推定部512は、血圧情報P21~P26のうち、測定時期が他の血圧情報と離れているものに対してより高い重み付けを行い、ほぼ同じ測定時期に測定された複数の血圧情報に対してより低い重み付けを行ってもよい。
【0085】
また、変動特性推定部512は、推定した変動曲線L20の変動特性を多項式、三角関数等の任意の形式で数式化してもよい。これにより、解析部513は、変動特性推定情報524に基づき、期間内のうち、血圧推移情報522内に直接含まれない測定時期についても、変動量を推定することができる。なお、変動曲線L20は、平均値Pcからの変動量が出力値となるように数式化されてもよい。これにより、変動曲線L20は、平均値Pcの値によらず、血圧値方向に上下にシフトさせて適用することができる。
【0086】
2.3.2 血圧評価装置の機能構成例
図10は、本実施形態に係る血圧処理システムの血圧評価装置70の機能構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【0087】
血圧評価装置70の制御部71は、記憶部72に記憶された血圧評価プログラム721をRAMに展開する。そして、制御部71は、RAMに展開された血圧評価プログラム721をCPUにより解釈及び実行して、各構成要素を制御する。これによって、図10に示されるように、本実施形態に係る血圧評価装置70は、取得部711、評価部712、及び出力部713を備えるコンピュータとして機能する。
【0088】
取得部711は、血圧処理装置50から出力された解析情報を取得する。
【0089】
評価部712は、解析情報を受けると、被測定者情報722を読出し、当該解析情報内の機器IDに対応付けられた人物を特定する。評価部712は、特定された人物の属性情報に応じた評価基準情報723を設定し、補正済み血圧値に応じた評価情報を生成する。また、評価部712は、補正済み血圧値に加え、血圧値の変動幅等の情報を併せて考慮して、評価情報を生成してもよい。
【0090】
評価情報は、例えば、評価結果として被測定者が加入を希望する保険の加入の可否を判定するための情報と、被測定者が加入する健康保険の保険料、又は被測定者の健康状態に応じて付与されるクーポン等のリワードポイントを算定するための情報を含んでもよい。
【0091】
出力部713は、評価情報を携帯端末30に出力する。
【0092】
2.4 動作例
次に、本実施形態に係る血圧処理システムの動作例について説明する。なお、以下で説明する処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り変更されてよい。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0093】
2.4.1 血圧処理装置の動作例
図11は、本実施形態に係る血圧処理装置50における血圧解析処理の手順の一例を模式的に示すフローチャートである。
【0094】
(ステップST10)
まず、ステップST10では、制御部51は、記憶部52に、同一の被測定者に関する複数の血圧情報を血圧推移情報522として記憶させる。なお、当該被測定者は、被測定者情報523によって特定可能であるとする。
【0095】
(ステップST20)
ステップST20では、制御部51は、変動特性推定部512として機能し、ステップST10で記憶した血圧推移情報522に基づき、変動特性推定情報524を推定する。
【0096】
(ステップST30)
ステップST30では、制御部51は、通信部53を取得部511として機能させ、携帯端末30を介して、血圧測定装置10で測定された血圧情報を取得する。取得される血圧情報の測定時期は、ステップST10において記憶された血圧推移情報522内の血圧情報の測定時期と異なってもよい。また、通信部53は、活動情報、環境情報、及び位置情報を更に取得してもよい。
【0097】
(ステップST40)
ステップST40では、制御部51は、補正部515として機能し、ステップST20で記憶した変動特性推定情報524に基づき、ステップST30で取得した血圧情報の補正情報を生成する。
【0098】
具体的には、制御部51は、血圧情報内の測定日時に対応する血圧値の変動量を、変動特性推定情報524から抽出する。制御部51は、抽出された変動量を血圧値から差し引き、周期的な変動によらない補正済み血圧値を算出する。制御部51は、補正済み血圧値を含む補正情報を生成し、解析情報生成部516に送信する。
【0099】
(ステップST50)
ステップST50では、制御部51は、解析情報生成部516として機能し、ステップST40で生成した補正情報に基づき、解析情報を生成する。
【0100】
具体的には、制御部51は、変動特性推定情報524に基づき、補正済み血圧値まわりの血圧値の変動幅等を算出し、補正情報に加えることにより、解析情報を生成する。
【0101】
(出力)
最後に、制御部51は、通信部53を出力部514として機能させ、ステップST50で生成した解析情報を血圧評価装置70に出力する。
【0102】
以上で、血圧処理装置50の動作は終了する。
【0103】
2.4.2 血圧評価装置の動作例
図12は、本実施形態に係る血圧評価装置70における血圧評価処理の手順の一例を模式的に示すフローチャートである。
【0104】
(ステップST60)
ステップST60では、制御部71は、通信部73を取得部711として機能させ、血圧処理装置50から解析情報を取得する。
【0105】
(ステップST70)
ステップST70では、制御部71は、評価部712として機能し、被測定者情報722及び評価基準情報723に基づいてステップST50で取得した解析情報を評価し、評価情報を生成する。
【0106】
具体的には、制御部71は、解析情報内の機器IDを介して、血圧情報内の血圧値に対応する被測定者情報722内の属性情報を特定する。また、制御部71は、当該特定された属性情報に応じて、評価基準情報723を設定する。制御部71は、設定された評価基準情報723に基づいて補正済み血圧値、及び解析情報内のその他の情報を評価し、評価結果を含む評価情報を生成する。
【0107】
(ステップST80)
ステップST80では、制御部71は、通信部73を出力部713として機能させ、ステップST70で生成した評価情報を携帯端末30に出力する。出力された評価情報は、例えば、携帯端末30の表示部35を介して被測定者に通知される。
【0108】
以上で、血圧評価装置70の動作は終了する。
【0109】
2.5 作用・効果
本実施形態によれば、被測定者によらず、被測定者の血圧値を適正に処理可能にする技術を提供することができる。本効果につき、図13を用いて以下に説明する。図13は、本実施形態の効果の一例を説明するためのダイアグラムである。
【0110】
図13の例では、ステップST20において、異なる被測定者から、異なる変動特性を有する2つの変動特性推定情報524が推定される場合が示される。当該2つの変動特性推定情報524はそれぞれ、変動曲線L30及びL31として示される。すなわち、変動曲線L30に対応する被測定者は、変動曲線L31に対応する被測定者に対して、血圧の変動幅が大きい。
【0111】
また、図13の例では、ステップST30において、変動曲線L30に対応する被測定者から血圧情報P31が、変動曲線L31に対応する被測定者から血圧情報P33が取得される場合が示される。血圧情報P31及びP33の測定時期は同一時期であり、血圧値も同程度であるとする。
【0112】
このような場合、ステップST40において、制御部51は、血圧情報P31及びP33に対してそれぞれ変動曲線L30及びL31を適用し、補正済み血圧値を含む補正情報P32及びP34に補正する。変動曲線L30及びL31は、変動幅が互いに異なるため、補正情報P32及びP34の補正済み血圧値は互いに異なる値となる。図13の例では、補正情報P32の補正済み血圧値Pc1は、補正情報P34の補正済み血圧値Pc2よりも大きくなる。
【0113】
このように、本実施形態によれば、互いに異なる変動特性を有する2人の被測定者から、同一時期に同等の血圧値が測定された場合において、各々の血圧値を、被測定者に応じて補正することができる。このため、ステップST50において、制御部51は、2つの血圧情報P31及びP33から、補正済み血圧値Pc1及びPc2を生成することができる。したがって、血圧処理装置50は、血圧情報P31及びP33が異なるリスクを有すると評価可能な情報を血圧評価装置70に対して提供することができる。
【0114】
また、ステップST50において、制御部51は、補正済み血圧値Pc1及びPc2に加えて、被測定者の血圧値が補正済み血圧値Pc1及びPc2を平均値としてどの程度変動するかを示す情報を解析情報に含めることができる。これにより、血圧処理装置50は、被測定者のリスクを更に正確に評価するための情報を血圧評価装置70に対して提供することができる。
【0115】
3. 変形例等
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0116】
3.1 第1変形例
例えば、上記実施形態では、変動特性推定情報524における血圧変動の周期が1年間である場合について説明したが、血圧変動の周期は、血圧変動が統計的に周期性を有する期間であれば、1年間に限らず任意の期間が適用可能である。
【0117】
具体的には、例えば、血圧変動の周期は、1週間、及び1日間のいずれかが設定されてもよい。図14及び図15は、本実施形態の第1変形例に係る変動特性推定情報524の一例を例示するダイアグラムである。図14及び図15の例ではそれぞれ、変動特性推定情報524は、1週間及び1日間を周期として、血圧値が周期的に変動する様子を示している。なお、図14及び図15の例では、各変動曲線はいずれも、平日の日中に勤務し、平日の夜間及び土曜日及び日曜日に休む被測定者に関する変動特性であるものとする。
【0118】
図14に示すように、1週間を血圧変動の周期とした場合、血圧値の変動量は、曜日に応じて平均値(例えば、“0”)に対して上下する。より具体的には、例えば、血圧値の変動量は、月曜日から火曜日の期間(週の始め)で平均値に対して高くなり、水曜日から日曜日の期間(その他)とで平均値に対して低くなる。
【0119】
また、図15に示すように、1日間を血圧変動の周期とした場合、血圧値の変動量は、時間に応じて平均値(例えば、“0”)に対して上下する。より具体的には、例えば、血圧値の変動量は、明け方(例えば6時)から日没(例えば18時)の期間(日中)で平均値に対して高くなり、日没から明け方(夜間)で平均値に対して低くなる。
【0120】
このように、一般的に、被測定者から得られる血圧値には、様々な周期の変動成分が重畳している可能性がある。なお、図14及び図15はあくまで一例であり、変動特性推定情報524には、図14及び図15に例示された変動特性及び変動量に限らず、図14及び図15の例と傾向と異なる任意の変動特性及び変動量が重畳している可能性がある。例えば、1週間の血圧の周期的変動を引き起こす原因の1つとして、1週間を周期とする労働日と休息日とのサイクルが考えられる。このため、図14では、上述の通り、平日に勤務し、土曜日及び日曜日に休む被測定者から取得された血圧値の変動特性が示されているが、土曜日又は日曜日に勤務する被測定者から取得された血圧値の変動特性は、図14に示された変動特性と異なり得る。また、例えば、1日間の血圧の周期的変動を引き起こす原因の1つとして、1日間を周期とする労働時間と休息時間とのサイクルが考えられる。このため、図15では、上述の通り、日中に勤務し、夜間に休む被測定者から取得された血圧値の変動特性が示されているが、夜間に勤務する被測定者から取得された血圧値の変動特性は、図15に示された変動特性と異なり得る。また、例えば、無職(例えば、いずれの曜日のいずれの時間帯にも勤務しない)被測定者から取得された血圧値の変動特性は、図14及び図15に示された変動特性と異なり得る。
【0121】
変動特性推定部512は、血圧推移情報522に基づいて、これらの複数の異なる周期ごとに変動特性推定情報524を推定してもよい。例えば、変動特性推定部512は、血圧推移情報522内の複数の血圧情報をフィルタリングすることによって、複数の変動特性推定情報524を推定してもよい。具体的には、例えば、変動特性推定部512は、複数の血圧情報に対してフーリエ変換を施して周波数変換し、所望の単位期間を周期とする周波数成分を抽出することにより、異なる複数の周期に関する変動特性推定情報524を推定してもよい。
【0122】
また、補正部515は、当該異なる周期ごとに推定された複数の変動特性推定情報524の各々に基づいて、血圧値を順次補正してもよい。
【0123】
これにより、周期性を有する様々な血圧の変動要因を考慮することができ、被測定者の血圧値をより適正に処理することができる。
【0124】
3.2 第2変形例
また、上記実施形態では、評価情報の生成に用いられる血圧情報は、変動特性推定情報524の推定には用いられない場合について説明したが、これに限られない。例えば、変動特性推定情報524は、最新の血圧情報を反映した血圧推移情報522によって推定されてもよい。また、例えば、血圧推移情報522は、最新の血圧情報が取得された時期から、所定の期間(例えば、1年間)より過去の血圧情報を破棄してもよい。これにより、変動特性推定情報524を最新の血圧情報で更新することができるため、被測定者の変動特性が時間の経過と共に変化する場合に、当該影響を低減することができる。
【0125】
また、被測定者の血圧値の変動特性は、例えば、被測定者が喫煙を開始又は停止した場合、及び異なる気候の土地へ移住した場合(例えば、寒暖差の激しい場所から緩やかな場所への移住等)に、非連続的に変化することが考えられる。このため、被測定者情報523の更新の際に喫煙の有無又は住所の変更があった場合、及び携帯端末30からの位置情報が従前と異なる位置を示す場合、血圧推移情報522を新たに集計し直してもよい。これにより、被測定者の生活環境や生活習慣等の変化と共に被測定者の血圧値の変動特性が変化する影響を考慮することができる。
【0126】
3.3 第3変形例
また、上記実施形態では、特定の被測定者から得られる血圧情報のみが補正に用いられる場合について説明したが、これに限られない。例えば、変動特性推定情報524は、血圧推移情報522と、不特定の少なくとも1人の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報の変動特性の統計情報と、を組み合わせることによって推定されてもよい。
【0127】
図16は、本実施形態の第3変形例に係る血圧処理装置50の機能構成を例示するブロック図である。図16に示すように、変動特性推定部512は、血圧推移情報522、及び変動特性統計情報525に基づき、変動特性推定情報524を推定する。
【0128】
変動特性統計情報525は、評価対象である特定の被測定者とは異なる不特定多数の被測定者から取得された血圧情報に基づいて統計的に算出され、記憶部52に予め記憶される。すなわち、変動特性統計情報525は、当該情報の生成に用いられた被測定者の大多数に共通する血圧値の変動特性にしたがう変動量、すなわち、周期内の時期における最も確からしい変動量が示される。
【0129】
上述の通り、特定の被測定者の血圧値の変動特性は、不特定多数の被測定者の血圧値の統計的な変動特性とは異なり得る。しかしながら、特定の被測定者の血圧値の変動特性は、期間全体のうちの一部分においては統計的な変動特性とは異なるものの、両者の全体的な変動傾向は一致していることが多いと想定される。また、特定の被測定者から、変動特性推定情報524を十分な精度で推定するために必要な量の血圧情報が取得できない場合も想定される。
【0130】
このため、変動特性推定部512は、血圧推移情報522内に血圧値が十分に取得されていない期間が存在する場合、当該期間に変動特性統計情報525を適用して、変動特性推定情報524を推定してもよい。
【0131】
これによれば、期間全体にわたって十分な血圧情報が取得できていない状況においても、全体的な変動傾向を逸脱しない範囲で、変動特性推定情報524を推定することができる。したがって、被測定者の血圧値を適正に処理することができる。
【0132】
3.4 第4変形例
また、上記実施形態では、血圧処理装置50及び血圧評価装置70は、異なるサーバ装置に構成されるものとして説明したが、これに限られない。例えば、血圧処理装置50及び血圧評価装置70内の各機能構成は、1つのサーバ装置内に構成されていてもよい。この場合、補正部515による補正の対象は、血圧値に限定されなくてもよい。例えば、補正部515は、血圧情報内の測定時期に応じて、評価基準情報723を補正することによって、補正情報を生成してもよい。
【0133】
図17は、本実施形態の第4変形例に係る評価基準情報723を例示するダイアグラムである。図17の例では、異なる被測定者から、血圧情報P41及びP42がそれぞれ取得された場合が示される。血圧情報P41及びP42の血圧値はいずれも、測定時期によらない閾値Psを下回っている。このような場合、補正部515は、例えば、閾値Psを、被測定者の各々にそれぞれ対応する変動特性に基づいて変動させてもよい。つまり補正部515は、閾値Psを、血圧情報P41の測定者に対しては補正済み閾値L40のように補正し、血圧情報P42の測定者に対しては補正済み閾値L41のように補正してもよい。なお、補正済み閾値L40及びL41はそれぞれ、対応する被測定者の各々の変動特性推定情報524と相関する形状を有していることが望ましい。
【0134】
これにより、血圧情報P41の血圧値が補正済み閾値L40を下回るのに対し、血圧情報P42の血圧値が補正済み閾値L41を上回ることが分かり、ひいては、評価部712は、血圧情報P41及びP42のリスクが異なると評価することができる。
【0135】
3.5 その他
また、上記実施形態では、変動特性推定情報524は期間全体にわたって連続的な情報である場合について説明したが、これに限られない。例えば、変動特性推定情報524は、期間内のある時期を境に非連続となる情報であってもよい。具体的には、例えば、変動特性推定情報524は、1年を単位期間とする場合、春、夏、秋、冬の4つの季節について、変動量が定められるような情報であってもよい。
【0136】
また、上記実施形態では、補正済み血圧値が周期的に変動する血圧値の平均値となる場合について説明したが、これに限られない。例えば、補正済み血圧値は、周期的に変動する血圧値の最大値、最小値、最頻値、及びその他の任意の値が適用可能である。
【0137】
また、上記実施形態では、血圧処理装置50内の各機能構成は、携帯端末30にネットワークNWを介して接続されたサーバ装置内に含まれるものとして説明したが、これに限られない。例えば、血圧処理装置50内の各機能構成は、血圧測定装置10、及び携帯端末30内に含まれてもよい。
【0138】
また、上記実施形態では、血圧測定装置10は、被測定者が装着可能な装置であるものとして説明したが、これに限られない。例えば、血圧測定装置10は、据え置き型の装置であってもよい。
【0139】
更に、上記実施形態では生体情報として血圧値を取り扱った場合を例にとって説明したが、これに限られない。他に例えば、脈拍や体温、血糖値、心電等のその他の生体情報のうち、時期(年、月、日)の影響を受ける可能性がある生体情報に対し、本発明を適用してもよい。
【0140】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0141】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られるものではない。
【0142】
(付記1)
特定の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報を記憶する記憶装置と、
前記記憶された特定の被測定者の生体情報に基づいて、当該生体情報の変動特性を推定する推定部と、
前記特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報の測定時期を表す情報と共に取得する取得部と、
前記取得された特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報と共に取得した測定時期を表す情報と、前記推定された前記変動特性と、に基づいて補正する補正部と、
を備える、生体情報処理装置。
【0143】
(付記2)
記憶装置を備える生体情報処理装置が実行する生体情報処理方法であって、
特定の被測定者の、複数の時期を含む単位期間における生体情報を記憶する過程と、
前記記憶された特定の被測定者の生体情報に基づいて、当該生体情報の変動特性を推定する過程と、
前記特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報の測定時期を表す情報と共に取得する過程と、
前記取得された特定の被測定者の生体情報を、当該生体情報と共に取得した測定時期を表す情報と、前記推定された前記変動特性とに基づいて補正する過程と、
を備える、生体情報処理方法。
【符号の説明】
【0144】
1…記憶部、2…取得部、3…推定部、4…補正部、5…生成部、
10…血圧測定装置、30…携帯端末、50…血圧処理装置、70…血圧評価装置、
11,31,51,71…制御部、12,32,52,72…記憶部、
13、33、53,73…通信部、
14、34…操作部、15、35…表示部、
16…血圧センサ、17…加速度センサ、18…温湿度センサ、
36…GPS受信機、
54,74…ドライブ、55,75…記憶媒体、
511…取得部、512…変動特性推定部、513…解析部、514…出力部、
515…補正部、516…解析情報生成部、
521…血圧処理プログラム、721…血圧評価プログラム、
522…血圧推移情報、523,722…被測定者情報、
524…変動特性推定情報、525…変動特性統計情報、723…評価基準情報。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17