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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20220128BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20220128BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20220128BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20220128BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220128BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/0432
H01M8/04537
C01B3/38
H01M8/12 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017253866
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019121466
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】胡桃澤 侑彌
(72)【発明者】
【氏名】後藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】市川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 則天
(72)【発明者】
【氏名】太田 光国
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-16356(JP,A)
【文献】特開2011-76945(JP,A)
【文献】特開2013-191315(JP,A)
【文献】特開2012-216289(JP,A)
【文献】特開2002-8697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
C01B 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとから発電する燃料電池と、
前記燃料電池に前記燃料ガスを供給する燃料供給部と、
前記燃料電池に前記酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部と、
前記燃料電池から導出された燃料オフガスと酸化剤オフガスとを燃焼させる燃焼部と、
前記燃料電池によって発電された発電電力を検知する電力検知装置と、
前記燃焼部の温度である燃焼部温度を検出する温度センサと、
前記燃料電池を少なくとも制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムであって、
前記制御装置は、
前記電力検知装置によって検知された前記発電電力に基づいて、前記燃料供給部によって供給される前記燃料ガスの流量を第一流量に設定する燃料流量設定部と、
前記電力検知装置によって検知された前記発電電力が所定電力範囲内であるか否かを判定する電力判定部と、
前記温度センサによって検出された前記燃焼部温度が所定温度範囲内であるか否かを判定する温度判定部と、
前記電力判定部によって前記発電電力が前記所定電力範囲内であると判定され、かつ、前記温度判定部によって前記燃焼部温度が前記所定温度範囲内であると判定された状態が第一所定時間継続する毎に、前記燃料流量設定部によって設定された前記燃料ガスの流量を前記第一流量から段階的に減少させるように変更する燃料流量変更部と、を備えている燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料流量変更部は、前記燃料電池の燃料利用率を高くするように、前記燃料ガスの流量を減少させるように変更する請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記電力検知装置によって検知された前記発電電力に基づいて、前記酸化剤ガス供給部によって供給される前記酸化剤ガスの流量を第二流量に設定する酸化剤ガス流量設定部と、
前記燃料流量変更部によって前記燃料ガスの流量が変更される場合、前記燃料オフガスの流量に対する前記酸化剤オフガスの流量の割合が所定比率以上となるように、前記酸化剤ガスの流量を前記酸化剤ガス流量設定部によって設定された前記第二流量から変更する酸化剤ガス流量変更部と、をさらに備えている請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記燃焼部の燃焼状態が解消される吹き消えが発生しているか否かを判定する吹き消え判定部と、
前記燃料流量変更部によって前記燃料ガスの流量が変更された後、前記吹き消え判定部によって前記吹き消えが発生したと判定された場合、前記第一流量より少なく、かつ、前記吹き消え判定部によって前記吹き消えが発生したと判定された時点における前記燃料ガスの流量より多い流量を、前記燃料ガスの流量の下限値である下限燃料流量に設定する下限流量設定部と、をさらに備え、
前記燃料流量変更部は、
前記吹き消え判定部によって前記吹き消えが発生したと判定された後に、前記燃焼部が燃焼状態になった場合、
前記第一流量以下、かつ、前記下限流量設定部によって設定された前記下限燃料流量以上の前記燃料ガスの流量の範囲にて、前記燃料ガスの流量を前記第一流量から段階的に減少させるように変更する請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムの一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、燃料電池システムは、改質ガスを燃料ガスとして用いて発電する燃料電池、原料を改質した改質ガスを生成する改質器(改質部)、燃料電池の発電に利用されなかった燃料オフガスを燃焼させて改質器を加熱する燃焼部、および、改質部または燃焼部の温度を検出する温度検出部を備えている。
【0003】
燃料電池システムは、温度検出部によって検出された温度に基づいて、改質部の温度または燃焼部の温度が、改質部における原料の改質に適した温度となるように、改質部に供給される原料の流量ひいては燃料電池に供給される燃料ガスの流量を制御する。これにより、改質効率を維持しつつ、燃料電池の発電効率の向上を図ることができる。燃料電池の発電効率は、燃料電池が発電する電力に対して燃料電池に供給される燃料ガスの流量が少ないほど高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2010/010699号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の燃料電池システムにおいては、改質効率を維持しつつ改質部の温度または燃焼部の温度を制御しているため、燃焼部においては、十分に安定した燃焼状態を保つ必要がある。このため、燃焼部を燃焼させる燃料オフガスの流量ひいては燃料ガスの流量は、燃焼部にて燃料オフガスを燃焼させるための最小限必要な燃料ガスの流量に対して余裕のある流量となる。一方で、燃料電池の発電効率をさらに向上させたいとの要望がある。
【0006】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、燃料電池システムにおいて、燃料電池の発電の高効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとから発電する燃料電池と、燃料電池に燃料ガスを供給する燃料供給部と、燃料電池に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部と、燃料電池から導出された燃料オフガスと酸化剤オフガスとを燃焼させる燃焼部と、燃料電池によって発電された発電電力を検知する電力検知装置と、燃焼部の温度である燃焼部温度を検出する温度センサと、燃料電池を少なくとも制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムであって、制御装置は、電力検知装置によって検知された発電電力に基づいて、燃料供給部によって供給される燃料ガスの流量を第一流量に設定する燃料流量設定部と、電力検知装置によって検知された発電電力が所定電力範囲内であるか否かを判定する電力判定部と、温度センサによって検出された燃焼部温度が所定温度範囲内であるか否かを判定する温度判定部と、電力判定部によって発電電力が所定電力範囲内であると判定され、かつ、温度判定部によって燃焼部温度が所定温度範囲内であると判定された状態が第一所定時間継続する毎に、燃料流量設定部によって設定された燃料ガスの流量を第一流量から段階的に減少させるように変更する燃料流量変更部と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
これによれば、燃料電池によって発電された発電電力が所定電力範囲内であり、かつ、燃焼部の温度が所定温度範囲内である状態が第一所定時間継続する毎に、燃料ガスの流量が段階的に減少する。すなわち、発電電力が安定している状態かつ燃焼部の燃焼状態が安定している状態にて、燃料ガスの流量を段階的に減少させることができる。よって、燃焼部の燃焼状態を確認しつつ、燃焼部にて燃料オフガスを燃焼させるための最小限必要な燃料ガスの流量にまで燃料ガスの流量を減少させることができる。したがって、燃料電池システムにおいて、燃料電池の発電の高効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における燃料電池システムの概要図である。
図2図1に示す燃料電池システムのブロック図である。
図3A図1に示す制御装置が実行するフローチャートである。
図3B図1に示す制御装置が実行するフローチャートである。
図4図3Aおよび図3Bに示すフローチャートが実行された場合の燃料電池システムの動作を示すタイムチャートであり、上から下に順に、燃料利用率、燃料ガスの流量、空気利用率、空気の流量、発電電力、第一燃焼部温度および第二燃焼部温度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による燃料電池システムの一実施形態について説明する。燃料電池システム1は、図1に示すように、発電ユニット10および貯湯槽21を備えている。
【0011】
発電ユニット10は、筐体10a、燃料電池モジュール11、熱交換器12、電力変換装置13、水タンク14、制御装置15を備えている。燃料電池モジュール11は、後述するように燃料電池34を少なくとも含んで構成されるものである。
【0012】
熱交換器12は、燃料電池モジュール11の排気口31aから排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され、燃焼排ガスと貯湯水とが熱交換する熱交換器である。熱交換器12は排気口31aに接続された排気管11dが接続(貫設)されている。熱交換器12は、水タンク14に接続されている凝縮水供給管12aが接続されている。
【0013】
貯湯槽21は、貯湯水を貯湯するものであり、貯湯水が循環する(図にて矢印の方向に循環する)貯湯水循環ライン22が接続されている。貯湯水循環ライン22上には、下端から上端に向かって順番に貯湯水循環ポンプ22aおよび熱交換器12が配置されている。
【0014】
熱交換器12において、燃料電池モジュール11からの燃焼排ガスは、排気管11dを通って熱交換器12内に導入され、貯湯水との間で熱交換が行われて冷却されるとともに、燃焼排ガス中に含まれる水蒸気が凝縮される。冷却後の燃焼排ガスは排気管11dを通って外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管12aを通って水タンク14に供給される。水タンク14は、凝縮水をイオン交換樹脂によって純水化し、改質水として貯留する。
【0015】
上述した熱交換器12、貯湯槽21および貯湯水循環ライン22から、排熱回収システム20が構成されている。排熱回収システム20は、燃料電池モジュール11の排熱を貯湯水に回収して蓄える。
【0016】
さらに、電力変換装置13は、燃料電池34から出力される直流電圧を入力し所定の交流電圧に変換して、交流の系統電源16aおよび外部電力負荷16c(例えば電化製品)に接続されている電源ライン16bに出力する。
【0017】
また、電力変換装置13は、系統電源16aからの交流電圧を電源ライン16bを介して入力し所定の直流電圧に変換して、後述する補機(各ポンプ11a1,11b1、ブロワ11c1など)や制御装置15に出力する。
【0018】
制御装置15は、少なくとも燃料電池34を制御するものである。制御装置15は、補機を駆動して燃料電池システム1の運転を制御する。制御装置15は、燃料電池システム1の発電運転中において、燃料電池34の発電電力を外部電力負荷16cの消費電力となるように制御する(負荷追従運転)。
【0019】
次に、燃料電池モジュールについて詳細に説明する。
燃料電池モジュール30は、ケーシング31、蒸発部32、改質部33および燃料電池34を備えている。ケーシング31は、断熱性材料で箱状に形成され、排気口31aが設けられている。
【0020】
燃料電池モジュール30は、蒸発部32に、一端が供給源Gsに接続されて改質用原料が供給される改質用原料供給管11aの他端が接続されている。供給源Gsは、例えば都市ガスのガス供給管、LPガスのガスボンベである。改質用原料供給管11aは、原料ポンプ11a1が設けられている。原料ポンプ11a1は、改質用原料を送るポンプである。原料ポンプ11a1が改質用原料を送ることによって、後述するように、燃料ガスが燃料電池34に供給される。原料ポンプ11a1は、本発明の燃料供給部に相当する。
【0021】
また、蒸発部32には、一端(下端)が水タンク14に接続されて改質水が供給される改質水供給管11bの他端が接続されている。改質水供給管11bは、改質水を送る改質水ポンプ11b1が設けられている。
【0022】
また、燃料電池モジュール30は、一端がカソードエアブロワ11c1に接続されてケーシング31内に酸化剤ガスであるカソードエア(空気)が燃料電池に供給されるカソードエア供給管11cの他端が接続されている。カソードエアブロワ11c1は、カソードエアを送るポンプである。カソードエアブロワ11c1は、後述するように、燃料電池34にカソードエアを供給される。カソードエアブロワ11c1は、本発明の酸化剤ガス供給部に相当する。
【0023】
蒸発部32は、改質水から水蒸気を生成するものである。蒸発部32は、具体的には、後述する燃焼ガスにより加熱されて、水タンク14から供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成する。また、蒸発部32は、供給源Gsから供給された改質用原料を予熱する。
【0024】
蒸発部32は、このように生成された水蒸気と予熱された改質用原料とを混合して改質部33に供給する。改質用原料としては天然ガス、LPガスなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料があり、本実施形態においては天然ガスにて説明する。
【0025】
改質部33は、供給源Gsからの改質用原料と蒸発部32からの水蒸気とから改質ガスを生成して燃料電池34に供給するものである。改質部33は、具体的には、後述する燃焼ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部32から供給された混合ガス(改質用原料、水蒸気)から改質ガスを生成して導出する。
【0026】
改質部33内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素などを含んだ改質ガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応である。
【0027】
燃料電池34は、燃料ガスと酸化剤ガスにより発電するものである。燃料ガスは、改質ガスである。燃料電池34は、燃料極、空気極(酸化剤極)、および両極の間に介装された電解質からなる複数のセル34aが積層されて構成されている。本実施形態の燃料電池34は、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。
【0028】
燃料電池34の燃料極には、燃料として改質ガス(水素、一酸化炭素、メタンガスなど)が供給される。セル34aの燃料極側には、燃料ガス(改質ガス)が流通する燃料流路34bが形成されている。セル34aの空気極側には、酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する空気流路34cが形成されている。燃料電池34は、比較的高温の動作温度にて発電が行われる。
【0029】
燃料電池34は、マニホールド35上に設けられている。マニホールド35には、改質部33からの改質ガスが改質ガス供給管39を介して供給される。燃料流路34bは、その下端(一端)がマニホールド35の燃料導出口(図示なし)に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され上端から導出されるようになっている。
【0030】
カソードエアブロワ11c1によって送出されたカソードエアはカソードエア供給管11cを介して供給され、空気流路34cの下端から導入され上端から導出されるようになっている。
【0031】
また、燃料電池34と蒸発部32および改質部33との間には、第一燃焼部36(本発明の燃焼部に相当)が設けられている。第一燃焼部36は、燃料電池34から導出された燃料オフガスと酸化剤オフガスとを燃焼させるものである。すなわち、第一燃焼部36は、燃料オフガスが燃焼する空間である。燃料オフガスは、発電に利用されなかった燃料ガス(改質ガス)である。酸化剤オフガスは、発電に利用されなかった酸化剤ガス(カソードエア(空気))である。第一燃焼部36には、燃料オフガスを着火させるための一対の着火ヒータ36aが設けられている。
【0032】
第一燃焼部36は、燃料オフガスが燃焼されて燃焼ガス(火炎37)が発生している。その燃焼ガスが蒸発部32および改質部33を加熱する。また、第一燃焼部36は、燃料電池モジュール30内の温度を燃料電池34の動作温度にする。さらに、第一燃焼部36では、燃料オフガスが燃焼されて、比較的高温の燃焼排ガスが発生している。比較的高温の燃焼排ガスは、排気口31aおよび排気管11dを介して熱交換器12に導出される。
【0033】
また、排気口31aには、第二燃焼部38が設けられている。第二燃焼部38は、燃焼排ガスのうち第一燃焼部36で燃焼されなかった燃料オフガスを可燃性ガス(未燃焼可燃性ガス)として導入し、燃焼して導出するものである。未燃焼可燃性ガスは、例えば、水素、メタンガス、一酸化炭素などである。第二燃焼部38は、可燃性ガスを燃焼する触媒である燃焼触媒(例えばセラミックハニカムまたは、メタルハニカムと貴金属の触媒である。)で構成されている。
【0034】
第二燃焼部38には、燃焼触媒ヒータ38aが設けられている。燃焼触媒ヒータ38aは、未燃焼可燃性ガスを燃焼させる燃焼触媒を加熱するものである。燃焼触媒ヒータ38aは、燃焼触媒を触媒の活性温度まで加熱する。
【0035】
また、燃料電池システム1は、電流センサ40a、電圧センサ40b、第一温度センサ41(本発明の温度センサに相当)、および、第二温度センサ42をさらに備えている。
【0036】
電流センサ40aは、燃料電池34の発電電流を検出するものである。電圧センサ40bは、燃料電池34の発電電圧を検出するものである。電流センサ40aおよび電圧センサ40bは、電力変換装置13に配置されている。電流センサ40aの検出結果および電圧センサ40bの検出結果は、制御装置15に出力される。
【0037】
第一温度センサ41は、第一燃焼部36の温度である第一燃焼部温度(本発明の燃焼部温度に相当)を検出するものである。第一温度センサ41は、第一燃焼部36において火炎37が直接接触しない部位に配置され、配置された位置の温度を検出する。第一温度センサ41の検出結果は、制御装置15に出力される。
【0038】
第二温度センサ42は、第二燃焼部38の温度である第二燃焼部温度を検出するものである。第二温度センサ42は、第二燃焼部38に配置された位置の温度を検出する。第二温度センサ42の検出結果は、制御装置15に出力される。
【0039】
次に、制御装置15について詳細に説明する。制御装置15は、図2に示すように、電力算出部150、燃料流量設定部15a、ポンプ駆動部15b、電力判定部15c、温度判定部15d、第一状態判定部15e、燃料流量変更部15f、空気流量設定部15g(本発明の酸化剤ガス流量設定部に相当)、ブロワ駆動部15h、空気流量変更部15i(本発明の酸化剤ガス流量変更部に相当)、第二状態判定部15j、吹き消え判定部15k、下限流量設定部15mおよび着火制御部15nを備えている。
【0040】
電力算出部150は、電流センサ40aの検出結果および電圧センサ40bの検出結果を用いて燃料電池34の発電電力を算出するものである。このように、電流センサ40a、電圧センサ40bおよび電力算出部150は、燃料電池34によって発電された発電電力を検知する電力検知装置40に相当する。なお、電力検知装置40において、電流センサ40aおよび電圧センサ40bに代えて、燃料電池34の発電電力を検出する電力センサとしても良い。この場合、電力算出部150を、電力センサの検出結果を取得する電力取得部とする。
【0041】
燃料流量設定部15aは、電力算出部150によって算出された発電電力に基づいて、原料ポンプ11a1によって供給される燃料ガスの流量(単位時間当たりの流量)を第一流量に設定するものである。燃料流量設定部15aは、燃料電池34の発電電力と第一流量との相関関係を示す第一マップ(図示なし)を使用して、電力算出部150によって算出された発電電力から第一流量を導出する。第一マップは、制御装置15の記憶部(図示なし)に記憶されている。
【0042】
ポンプ駆動部15bは、原料ポンプ11a1によって送出される改質用原料ひいては燃料ガスの流量が燃料流量設定部15aによって設定された第一流量となるように、原料ポンプ11a1の駆動量を制御するものである。原料ポンプ11a1は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されているため、原料ポンプ11a1への制御指令値は、デューティ比にて算出される。
【0043】
電力判定部15cは、電力算出部150によって算出された発電電力が所定電力範囲内であるか否かを判定するものである。所定電力範囲は、例えば上限を燃料電池34の最大出力値とし、下限を燃料電池34の最大出力値の90%とする範囲である。
【0044】
温度判定部15dは、第一温度センサ41によって検出された第一燃焼部温度が所定温度範囲内であるか否かを判定するものである。所定温度範囲は、第一燃焼部36が燃焼状態である場合であって、燃料電池34が所定電力範囲内にて動作している場合における第一温度センサ41の配置された位置の温度に基づいて設定されている。所定温度範囲は、予め実験等によって実測されて導出されている。
【0045】
第一状態判定部15eは、電力判定部15cによって発電電力が所定電力範囲内であると判定され、かつ、温度判定部15dによって第一燃焼部温度が所定温度範囲内であると判定された状態(以下、第一状態とする。)が第一所定時間T1継続したか否かを判定するものである。第一所定時間T1は、例えば2分である。
【0046】
燃料流量変更部15fは、第一状態判定部15eによって第一状態が第一所定時間T1継続したと判定される毎に、燃料流量設定部15aによって設定された燃料ガスの流量を第一流量から段階的に減少させるように変更するものである(詳細は後述する)。
【0047】
燃料流量変更部15fは、例えば、燃料ガスの流量を第一所定流量ずつ減少させる。第一所定流量は、例えば、燃料ガスの最大流量(燃料電池34の最大出力時の燃料ガスの流量に相当)のおよそ2%に設定されている。
【0048】
また、燃料流量変更部15fは、燃料電池34の燃料利用率が高くなるように、燃料ガスの流量を減少させるように変更する。燃料電池34の燃料利用率は、燃料電池34に供給される燃料ガスの流量に対する燃料電池34の発電に利用される燃料ガスの流量の割合(燃料利用率=(燃料電池34の発電に利用される燃料ガスの流量)/(燃料電池34に供給される燃料ガスの流量))である。燃料流量変更部15fは、具体的には、発電に利用される燃料ガスの流量を変更せずに、発電に利用されずに燃料電池34から導出される燃料オフガスの流量を減少させるように、燃料ガスの流量を減少させる。
【0049】
また、燃料流量変更部15fは、吹き消え判定部15kによって吹き消えが発生したと判定された後に、第一燃焼部36が燃焼状態になった場合、第一流量以下、かつ、下限流量設定部15mによって設定された下限燃料流量以上の燃料ガスの流量の範囲にて、燃料ガスの流量を第一流量から段階的に減少させるように変更する(詳細は後述する)。
【0050】
空気流量設定部15gは、電力算出部150によって算出された発電電力に基づいて、カソードエアブロワ11c1によって供給される空気の流量(単位時間当たりの流量)を第二流量に設定するものである。空気流量設定部15gは、燃料電池34の発電電力と第二流量との相関関係を示す第二マップ(図示なし)を使用して、電力算出部150によって算出された発電電力から第二流量を導出する。第二マップは、制御装置15の記憶部に記憶されている。
【0051】
ブロワ駆動部15hは、カソードエアブロワ11c1によって送出される空気の流量が空気流量設定部15gによって設定された第二流量となるように、カソードエアブロワ11c1の駆動量を制御するものである。カソードエアブロワ11c1は、PWM制御されているため、カソードエアブロワ11c1への制御指令値は、デューティ比にて算出される。
【0052】
空気流量変更部15iは、燃料流量変更部15fによって燃料ガスの流量が変更される場合、空気の流量を空気流量設定部15gによって設定された第二流量から変更するものである。空気流量変更部15iは、空気の流量を減少させる場合に、空気利用率が高くなるようにする。
【0053】
空気利用率は、燃料電池34に供給される空気の流量に対する燃料電池34の発電に利用される空気の流量の割合(空気利用率=(燃料電池34の発電に利用される空気の流量)/(燃料電池34に供給される空気の流量))である。空気流量変更部15iは、具体的には、発電に利用される空気の流量を変更せずに、発電に利用されずに燃料電池34から導出される空気(酸化剤オフガス)の流量を減少させるように、空気の流量を減少させる。
【0054】
また、空気流量変更部15iは、燃料オフガスの流量に対する酸化剤オフガスの流量の割合が所定比率以上となるように、空気の流量を第二流量から変更する。所定比率は、1より大きい値に設定されている。
【0055】
空気流量変更部15iは、具体的には、燃料流量変更部15fによって燃料ガスの流量が実際に変更される前に、空気の流量を、第二流量から第二所定流量だけ少なくするように変更する(詳細は後述する)。第二所定流量は、燃料ガスの流量が第一流量、あるいは第一流量から変更された場合においても、燃料オフガスの流量に対する酸化剤オフガスの流量の割合が所定比率以上となるように設定されている。
【0056】
第二状態判定部15jは、空気流量変更部15iによって空気の流量が変更された場合、温度判定部15dによって第一燃焼部温度が所定温度範囲内であると判定された状態(以下、第二状態とする。)が第二所定時間T2継続したか否かを判定するものである。
【0057】
第二状態判定部15jによって第二状態が第二時間継続したと判定された場合、燃料流量設定部15aによって設定された燃料ガスの流量が燃料流量変更部15fによって変更される(詳細は後述する)。第二所定時間T2は、本実施形態においては第一所定時間T1より短い時間(例えば1分)に設定されている。
【0058】
吹き消え判定部15kは、第二温度センサ42によって検出された第二燃焼部温度から、第一燃焼部36の燃焼状態が解消される吹き消えが発生しているか否かを判定するものである。第一燃焼部36の吹き消えは、第一燃焼部36の少なくとも一部の燃焼状態が解消(終了)することである。第一燃焼部36の吹き消えは、想定されていない燃料ガスの濃度や流量の変化によって生じる。
【0059】
燃料電池システム1の発電運転中において第一燃焼部36が燃焼状態であるときにおいて、第一燃焼部36の少なくとも一部が吹き消えた場合、第二燃焼部38によって燃焼される上述した未燃焼可燃性ガスの流量が増加するため、第二燃焼部38の温度が上昇する。これにより、第二温度センサ42の検出温度が第一判定温度以上となった場合、吹き消え判定部15kは、第一燃焼部36の吹き消えが発生したと判定する。第一判定温度は、予め実験等によって実測されて導出されている。
【0060】
下限流量設定部15mは、燃料流量変更部15fによって燃料ガスの流量が変更された後、吹き消え判定部15kによって吹き消えが発生したと判定された場合、第一流量より少なく、かつ、吹き消え判定部15kによって吹き消えが発生したと判定された時点における燃料ガスの流量より多い流量を、燃料ガスの流量の下限値である下限燃料流量に設定する。
【0061】
下限流量設定部15mは、具体的には、下限燃料流量を、吹き消えが発生したと判定された時点の燃料ガスの流量に対して、燃料流量変更部15fによって変更される直前の燃料ガスの流量に設定する。すなわち、下限燃料流量は、吹き消えが発生したと判定された時点の燃料ガスの流量から、第一所定流量だけ多い燃料ガスの流量に設定される。
【0062】
着火制御部15nは、吹き消え判定部15kによって吹き消えが発生したと判定された場合、第一燃焼部36を着火する着火制御を実行するものである。着火制御部15nは、着火ヒータをオンして着火制御を開始する。着火制御部15nは、第一温度センサ41によって検出された第一燃焼部温度が第二判定温度以上となった場合、着火制御を終了する。第二判定温度は、予め実験等によって導出されて設定されている。
【0063】
なお、着火制御部15nは、着火制御が開始された時点から、第三所定時間(例えば30秒)経過した時点においても、第一燃焼部36が着火されない場合、例えば原料ポンプ11a1の異常により燃料が供給されていないことが考えられる。この場合、着火制御部15nは、燃料電池システム1をシャットダウンする。
【0064】
次に、上述した燃料電池システム1が実行する高効率発電運転について、図3Aおよび図3Bに示すフローチャートを用いて説明する。高効率発電運転は、燃料電池システム1の発電運転中において、燃料電池34の発電効率の向上させる運転である。なお、下限燃料流量の初期値は、ゼロに設定されている。
【0065】
燃料電池システム1の発電運転中において、高効率発電運転が実行されていない場合、通常発電運転が実行される。通常発電運転は、上述した負荷追従運転であり、燃料電池34の発電電力に応じて、燃料ガスの流量が第一流量に設定され(燃料流量設定部15a)、かつ空気の流量が第二流量に設定されて(空気流量設定部15g)、燃料電池34において発電が行われる。
【0066】
制御装置15は、通常発電運転が行われている場合に、ステップS102にて、吹き消えが発生したか否かを判定する(吹き消え判定部15k)。例えば改質用原料の濃度の変動により燃料オフガスの濃度に変動が生じて第一燃焼部36の吹き消えが発生した場合、上述したように第二燃焼部38の温度が上昇する。これにより、第二温度センサ42によって検出された第二燃焼部温度が第一判定温度以上となった場合、制御装置15は、ステップS102にて「YES」と判定し、ステップS104にて着火制御を実行する(着火制御部15n)。
【0067】
改質用原料の濃度の変動が解消され、着火ヒータ36aがオンされたことにより、第一燃焼部36が着火されたために、第一温度センサ41によって検出された第一燃焼部温度が第二判定温度以上となった場合、着火制御が終了する。続けて、制御装置15は、プログラムをステップS102に戻し、通常発電運転を継続する。
【0068】
一方、第一燃焼部36の燃焼状態が安定しており、第一燃焼部36にて吹き消えが発生していない場合、制御装置15は、ステップS102にて「NO」と判定し、ステップS106にて、第一状態(発電電力が所定電力範囲内であり、かつ、第一燃焼部温度が所定温度範囲内である状態)が、第一所定時間T1継続したか否かを判定する(電力判定部15c、温度判定部15d、第一状態判定部15e)。
【0069】
例えば外部電力負荷16cの消費電力ひいては発電電力が変動したことにより発電電力が所定電力範囲から外れたため、または、第一燃焼部36の燃焼状態が不安定になって第一燃焼部温度が所定温度範囲から外れたために、第一所定時間T1が経過する前に第一状態が解消された場合、制御装置15は、ステップS106にて「NO」と判定する。そして、制御装置15は、プログラムをステップS102に戻して、第一燃焼部36の燃焼状態が継続している間、ステップS102,S106を繰り返し実行する。
【0070】
一方、外部電力負荷16cの消費電力の変動が比較的小さく、かつ第一燃焼部36の燃焼状態が安定しているために、第一状態が第一所定時間T1継続した場合、制御装置15は、ステップS106にて「YES」と判定し、ステップS108にて空気の流量を変更する(空気流量変更部15i)。
【0071】
続けて制御装置15は、ステップS110にてステップS102と同様に、吹き消えが発生したか否かを判定する(吹き消え判定部15k)。この吹き消えは、例えば空気の流量が変更されて第一燃焼部36の燃焼状態が不安定となることにより発生する。
【0072】
上述したステップS108にて空気の流量が変更されて、第一燃焼部36の吹き消えが発生したことにより、第二燃焼部温度が第一判定温度以上となった場合、制御装置15は、ステップS110にて「YES」と判定し、ステップS112にて空気の流量を第二流量に戻す。さらに、制御装置15は、ステップS104にて着火制御を実行する(着火制御部15n)。そして、上述したように着火制御が終了した場合、プログラムをステップS102に戻し、通常発電運転を継続する。
【0073】
一方、ステップS108にて空気の流量が変更されたときにおいても、第一燃焼部36にて吹き消えが発生していない場合、制御装置15は、ステップS110にて「NO」と判定し、ステップS114にて第二状態(第一燃焼部温度が所定温度範囲内である状態)が第二所定時間T2継続したか否かを判定する(第二状態判定部15j)。
【0074】
例えば比較的長期間の使用により燃料電池34が劣化している状態において、空気の流量が変更されたとき、第一燃焼部温度が上昇する。これにより、第一燃焼部温度が所定温度範囲から外れたために、第二所定時間T2が経過する前に第二状態が解消された場合、制御装置15は、ステップS114にて「NO」と判定する。そして、第一燃焼部36の燃焼状態が継続している間、ステップS110,S114を繰り返し実行する。
【0075】
なお、上述したように燃料電池34が劣化しているときに、後述する高効率発電運転によって燃料利用率を上げるように燃料ガスの流量を変更した場合、燃料電池34の劣化がさらに促進することが考えられる。すなわち、高効率発電運転が実行される前に、空気の流量を変更することにより、高効率発電運転を実際に実行してもよいか、確認することができる。
【0076】
一方、空気の流量が変更されても第一燃焼部36の燃焼状態が安定しており、第二状態が第二所定時間T2継続した場合、制御装置15は、ステップS114にて「YES」と判定し、ステップS116にて高効率運転を開始する。
【0077】
制御装置15は、ステップS118にて、変更後の燃料ガスの流量が下限燃料流量以上であるか否かを判定する。下限燃料流量が初期値(ゼロ)である場合、現時点の燃料ガスの流量である第一流量が、第一所定流量だけ減少するように変更された場合においても下限燃料流量以上となるため、制御装置15は、ステップS118にて「YES」と判定し、ステップS120にて燃料ガスの流量を変更する(燃料流量変更部15f)。
【0078】
続けて、制御装置15は、ステップS122にてステップS102と同様に、吹き消えが発生したか否かを判定する(吹き消え判定部15k)。燃料ガスの流量が変更されても第一燃焼部36の吹き消えが発生していない場合、制御装置15は、ステップS122にて「NO」と判定し、ステップS124にてステップS106と同様に、第一状態が第一所定時間T1継続したか否かを判定する(電力判定部15c、温度判定部15d、第一状態判定部15e)。
【0079】
外部電力負荷16cの使用ひいては消費電力の変動が比較的小さく、かつ燃料ガスの流量が変更されても第一燃焼部36の燃焼状態が安定しているために、第一状態が第一所定時間T1継続した場合、制御装置15は、ステップS124にて「YES」と判定し、プログラムをステップS118に戻す。
【0080】
このように、第一燃焼部36の吹き消えが発生せず、かつ、変更後の燃料ガスの流量が下限燃料流量以上である場合であって、第一状態が継続する場合、上述したステップS118~S124が繰り返し実行される。これにより、燃料ガスの流量が、第一所定時間T1毎に、段階的に第一所定流量だけ減少するように変更される。
【0081】
一方、後述するように下限燃料流量がゼロより大きい流量に設定された後に、上述したステップS118~S124が繰り返し実行されている場合において、変更後の燃料ガスの流量が下限燃料流量より少なくなる場合、制御装置15は、ステップS118にて「NO」と判定し、燃料ガスの流量を変更せずに、ステップS122,S124を実行した後にステップS118に戻す。すなわち、この場合、燃料ガスの流量が変更されずに高効率発電運転が継続する。
【0082】
また、上述したステップS118~S124が繰り返し実行されている場合において、第一燃焼部36において吹き消えが発生した場合、制御装置15は、ステップS122にて「YES」と判定する。この場合、制御装置15は、ステップS126にて下限燃料流量を設定し(下限流量設定部15m)、ステップS128にて高効率発電運転を終了する。これにより、通常発電運転が再度実行される。さらに制御装置15は、ステップS130にてステップS104と同様に着火制御を実行し(着火制御部15n)、プログラムをステップS102に戻す。
【0083】
さらに、上述したステップS118~S124が繰り返し実行されている場合において、外部電力負荷16cが変動して発電電力が所定電力範囲から外れたため、または燃料ガスの流量が減少して第一燃焼部36の燃焼状態が不安定になったことにより第一燃焼部温度が所定温度範囲から外れたために、第一所定時間T1が経過する前に第一状態が解消された場合、制御装置15は、ステップS124にて「NO」と判定する。続けて、制御装置15は、ステップS132にて高効率発電を終了して、プログラムをステップS102に戻す。
【0084】
次に、上述したフローチャートが実行された場合における燃料電池システム1の動作について、図4のタイムチャートを用いて説明する。発電電力が所定電力範囲内であり、第一燃焼部温度が所定温度範囲内であり、かつ、下限燃料流量が初期値(ゼロ)である状態にて通常発電運転が開始された時点(時刻t1)から説明する。
【0085】
通常発電運転が開始された時点(時刻t1)から、吹き消えが発生せず、第一状態(発電電力が所定電力範囲内であり、かつ、第一燃焼部温度が所定温度範囲内である状態)が第一所定時間T1経過した時点に(時刻t2)、制御装置15は、空気利用率が増加するように、空気の流量を第二流量から第二所定流量だけ減少するように変更する(ステップS108)。
【0086】
空気の流量が変更された時点(時刻t2)から、吹き消えが発生せず、かつ、第二状態(第一燃焼部36の温度が所定温度範囲内である状態)が第二所定時間T2が経過した時点に(時刻t3)、高効率発電運転が開始されて(ステップS116)、燃料利用率が増加するように、燃料ガスの流量が第一流量から第一所定流量だけ減少するように第三流量に変更される(ステップS120)。この場合、燃料オフガスの流量が減少するため、第一燃焼部温度が僅かに低下する。
【0087】
燃料ガスの流量が第三流量に変更された時点(時刻t3)から、吹き消えが発生せず、第一状態が継続しているため、第一所定時間T1が経過する毎に、第一所定時間T1が経過した時点に(時刻t4,t5)、燃料ガスの流量が第一所定流量だけ減少するように第四流量、第五流量の順に変更される(ステップS120)。
【0088】
そして、この燃料ガスの流量が第五流量に変更された時点(時刻t5)から第一所定時間T1が経過する前に、燃料ガスの流量が低下して燃料オフガスの流量が不足したために、吹き消えが発生(時刻t6)したことにより、第一燃焼部温度が徐々に低下するとともに、第二燃焼部温度が上昇する。
【0089】
そして、第二燃焼部温度が第一判定温度以上となった時点(時刻t7)に、下限燃料流量が設定される(ステップS126)。この場合、燃料ガスの流量が第五流量である場合に吹き消えが発生したと判定されたため、第五流量に変更される直前の第四流量が下限燃料流量に設定される。
【0090】
さらに、高効率発電運転が終了して通常発電運転に戻るため(ステップS128)、燃料ガスの流量が第一流量に設定され、空気の流量が第二流量に設定される。続けて、着火制御が開始される(ステップS130)。これにより、第一燃焼部36が着火されて第一燃焼部温度が上昇し、第一燃焼部温度が第二判定温度に到達した時点に(時刻t8)、着火制御が終了される。
【0091】
着火制御が終了した時点(時刻t8)から、吹き消えが発生せず、第一状態が第一所定時間T1が経過した時点に(時刻t9)、空気の流量を変更する(ステップS108)。さらに、吹き消えが発生せず、かつ、第二状態が第二所定時間T2が経過した時点に(時刻t10)、高効率発電運転が開始される(ステップS116)。
【0092】
そして、吹き消えが発生せず、第一状態が継続している間、第一所定時間T1が経過する毎に、第一所定時間T1が経過した時点に、燃料ガスの流量が第三流量、第四流量の順に変更される(時刻t10,t11)。上述したように、下限燃料流量が第四流量に設定されているため、燃料ガスの流量が第四流量に設定された時点(時刻t11)から第一所定時間T1が経過した時点においても(時刻t12)、燃料ガスの流量が変更されない。
【0093】
そして、外部電力負荷16cが変動して発電電力が低下したため、所定電力範囲から外れたことにより、第一状態が解消された時点(時刻t13)に、高効率発電運転が終了して通常発電運転が再度実行される(ステップS124,S132)。さらに、外部電力負荷16cが変動して発電電力が高くなることにより、発電電力が所定電力範囲内となった時点(時刻t14)から、吹き消えが発生せず、第一状態が第一所定時間T1継続した時点(時刻t15)に、空気の流量が変更される(ステップS108)。その後、吹き消えが発生せず、第一状態が継続する限り、第四流量を燃料ガスの流量の下限値とした高効率発電運転が継続される。
【0094】
本実施形態によれば、燃料電池システム1は、燃料ガスと酸化剤ガスとから発電する燃料電池34と、燃料電池34に燃料ガスを供給する原料ポンプ11a1と、燃料電池34に酸化剤ガスを供給するカソードエアブロワ11c1と、燃料電池34から導出された燃料オフガスと酸化剤オフガスとを燃焼させる第一燃焼部36と、燃料電池34によって発電された発電電力を検知する電力検知装置40と、第一燃焼部36の温度である第一燃焼部温度を検出する第一温度センサ41と、燃料電池34を少なくとも制御する制御装置15と、を備えている。制御装置15は、電力検知装置40によって検知された発電電力に基づいて、原料ポンプ11a1によって供給される燃料ガスの流量を第一流量に設定する燃料流量設定部15aと、電力検知装置40によって検知された発電電力が所定電力範囲内であるか否かを判定する電力判定部15cと、第一温度センサ41によって検出された第一燃焼部温度が所定温度範囲内であるか否かを判定する温度判定部15dと、電力判定部15cによって発電電力が所定電力範囲内であると判定され、かつ、温度判定部15dによって第一燃焼部温度が所定温度範囲内であると判定された状態(第一状態)が第一所定時間T1継続する毎に、燃料流量設定部15aによって設定された燃料ガスの流量を第一流量から段階的に減少させるように変更する燃料流量変更部15fと、を備えている。
【0095】
これによれば、第一状態が第一所定時間T1継続する毎に、燃料ガスの流量が段階的に減少する。すなわち、発電電力が安定している状態かつ第一燃焼部36の燃焼状態が安定している状態にて、燃料ガスの流量を段階的に減少させることができる。よって、第一燃焼部36の燃焼状態を確認しつつ、第一燃焼部36にて燃料オフガスを燃焼させるための最小限必要な燃料ガスの流量にまで燃料ガスの流量を減少させることができる。したがって、燃料電池システム1において、燃料電池34の発電の高効率化を図ることができる。
【0096】
また、燃料流量変更部15fは、燃料電池34の燃料利用率を高くするように、燃料ガスの流量を変更する。
これによれば、燃料電池34の発電電力を維持しつつ、燃料電池34の発電の高効率化を図ることができる。
【0097】
また、制御装置15は、電力検知装置40によって検知された発電電力に基づいて、カソードエアブロワ11c1によって供給される空気の流量を第二流量に設定する空気流量設定部15gと、燃料流量変更部15fによって燃料ガスの流量が変更される場合、燃料オフガスの流量に対する酸化剤オフガスの流量の割合が所定比率以上となるように、空気の流量を空気流量設定部15gによって設定された第二流量から変更する空気流量変更部15iと、をさらに備えている。
【0098】
これによれば、燃料ガスの流量が変更される場合、燃料オフガスの流量に対する酸化剤オフガスの流量の割合が所定比率以上となるように、空気の流量が変更される。よって、第一燃焼部36の燃焼状態がより安定した状態にて、燃料電池34の発電の高効率化を図ることができる。
【0099】
また、制御装置15は、第一燃焼部36の燃焼状態が解消される吹き消えが発生しているか否かを判定する吹き消え判定部15kと、燃料流量変更部15fによって燃料ガスの流量が変更された後、吹き消え判定部15kによって吹き消えが発生したと判定された場合、第一流量より少なく、かつ、吹き消え判定部15kによって吹き消えが発生したと判定された時点における燃料ガスの流量より多い流量を、燃料ガスの流量の下限値である下限燃料流量に設定する下限流量設定部15mと、をさらに備えている。燃料流量変更部15fは、吹き消え判定部15kによって吹き消えが発生したと判定された後に、第一燃焼部36が燃焼状態になった場合、第一流量以下、かつ、下限流量設定部15mによって設定された下限燃料流量以上の燃料ガスの流量の範囲にて、燃料ガスの流量を第一流量から段階的に減少させるように変更する。
【0100】
これによれば、燃料ガスの流量が減少して第一燃焼部36の吹き消えが発生した後、第一燃焼部36が再度燃焼状態となり、燃料ガスの流量の減少が再度実行される場合には、吹き消えが発生した時点の燃料ガスの流量より多い流量を、燃料ガスの流量の下限値とする。このため、吹き消えが発生した時点の燃料ガスの流量より多い流量にて、燃料ガスの流量の減少が再度実行される。よって、第一燃焼部36の吹き消えの発生を抑制しつつ、燃料電池34の発電の高効率化を図ることができる。
【0101】
なお、上述した実施形態において、燃料電池システムの一例を示したが、本発明はこれに限定されず、他の構成を採用することもできる。例えば、下限流量設定部15mは、下限燃料流量を、吹き消えが発生したと判定された時点の燃料ガスの流量に対して、燃料流量変更部15fによって変更される直前の燃料ガスの流量に設定しているが、これに対して、燃料流量変更部15fによって変更される直前の燃料ガスの流量より多い流量に設定しても良い。
【0102】
また、上述した実施形態において、吹き消え判定部15kは、第一燃焼部36の吹き消えが発生したか否かを、第二燃焼部温度に基づいて判定しているが、これに代えて、第一燃焼部温度に基づいて判定するようにしてもよい。この場合、第一燃焼部温度が第二判定温度より低い第三判定温度以下となった場合、第一燃焼部36の吹き消えが発生したと判定される。
【0103】
また、上述した実施形態において、高効率発電運転にて燃料ガスの流量が変更される前に、空気の流量が変更されているが、これに代えて、燃料ガスの流量の変更と同時に、または、燃料ガスの流量を変更した後に、空気の流量を変更しても良い。さらに、空気の流量の変更を燃料ガスの流量の変更と同様に、段階的に変更するようにしても良い。また、空気の流量を第二流量のまま変更しなくても良い。
【0104】
また、上述した実施形態において、燃料流量変更部15fは、第一所定時間T1経過する毎に燃料ガスの流量を第一所定流量の一定量を減少させるように変更しているが、これに代えて、第一所定時間T1経過する毎に異なる流量を減少させるように変更しても良い。
【0105】
また、上述した実施形態において、下限燃料流量は、燃料流量設定部15aによって設定され、燃料流量変更部15fによって変更された燃料ガスの流量から設定されるが、これに代えて、改質用原料供給管11aに改質用原料の流量を検出する流量センサ(図示なし)を配置して、流量センサの検出結果から下限燃料流量を設定するようにしても良い。この場合、燃料ガスの流量の制御指令値でなく、燃料ガスの実際の流量に基づいて下限燃料流量が設定されるため、下限燃料流量を精度よく設定することができる。
【0106】
また、上述した実施形態において、第一状態は、電力判定部15cによって発電電力が所定電力範囲内であると判定され、かつ、温度判定部15dによって第一燃焼部温度が所定温度範囲内であると判定された状態であるが、これに代えて、発電電力が燃料電池34の最大発電電力であり、かつ、温度判定部15dによって第一燃焼部温度が所定温度範囲内であると判定された状態としても良い。この場合、電力判定部15cは、発電電力が燃料電池34の最大発電電力であるか否かを判定する。また、燃料流量変更部15fは、発電電力が燃料電池34の最大発電電力であり、かつ、温度判定部15dによって第一燃焼部温度が所定温度範囲内であると判定された状態が第一所定時間T1継続する毎に、燃料ガスの流量を段階的に減少するように変更する。
【符号の説明】
【0107】
1…燃料電池システム、11(30)…燃料電池モジュール、11a1…原料ポンプ(燃料供給部)、11c1…カソードエアブロワ(酸化剤ガス供給部)、15…制御装置、15a…燃料流量設定部、15c…電力判定部、15d…温度判定部、15e…第一状態判定部、15f…燃料流量変更部、15g…空気流量設定部(酸化剤ガス流量設定部)、15i…空気流量変更部(酸化剤ガス流量変更部)、15j…第二状態判定部、15k…吹き消え判定部、15m…下限流量設定部、15n…着火制御部、34…燃料電池、36…第一燃焼部(燃焼部)、40…電力検知装置、41…第一温度センサ、42…第二温度センサ、T1…第一所定時間、T2…第二所定時間。
図1
図2
図3A
図3B
図4