(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-20
(54)【発明の名称】車両用シートの給電装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220113BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20220113BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220113BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220113BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220113BHJP
H01M 10/46 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B60N2/90
H02J50/12
H02J7/00 301D
B60R16/02 620A
H01M10/44 P
H01M10/46
(21)【出願番号】P 2018009176
(22)【出願日】2018-01-23
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】小田 康太
(72)【発明者】
【氏名】浦城 健司
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰行
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-285837(JP,A)
【文献】特開2006-056440(JP,A)
【文献】特開平08-251713(JP,A)
【文献】特開平06-092166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに設けられ、該車両用シートにおける複数の負荷と接続される受電部と、
該受電部に非接触で電力を送電する送電部と、
前記車両用シートに設けられ、前記負荷に接続され、前記受電部及び送電部による給電経路を介して充電される蓄電部と、
前記受電部と前記蓄電部との間に設けられる切換部とを備え、
前記蓄電部は、該切換部の切換えによって、前記給電経路を介して充電される充電状態又は、前記負荷に対し電力を供給する放電状態となり、
前記負荷を駆動するための負荷電力を導出する負荷電力導出部と、
前記給電経路を介して給電される給電電力を検出する給電電力検出部とを備え、
前記切換部は、前記負荷電力導出部が導出した負荷電力及び前記給電電力検出部が検出した給電電力に基づいて、前記蓄電部を前記充電状態又は放電状態に切り換える
車両用シートの給電装置。
【請求項2】
前記切換部は、前記負荷電力が前記給電電力よりも大きい場合、前記蓄電部を放電状態に切り換え、前記負荷電力が前記給電電力以下の場合、前記蓄電部を充電状態に切り換える
請求項
1に記載の車両用シートの給電装置。
【請求項3】
車両用シートに設けられ、該車両用シートにおける複数の負荷と接続される受電部と、
該受電部に非接触で電力を送電する送電部と、
前記車両用シートに設けられ、前記負荷に接続され、前記受電部及び送電部による給電経路を介して充電される蓄電部と、
前記受電部と前記蓄電部との間に設けられる切換部とを備え、
前記蓄電部は、該切換部の切換えによって、前記給電経路を介して充電される充電状態又は、前記負荷に対し電力を供給する放電状態となり、
前記蓄電部の出力電圧を検出する出力電圧検出部を備え、
前記切換部は、前記出力電圧検出部が検出した出力電圧に基づいて、前記蓄電部を前記充電状態又は放電状態に切り換える
車両用シートの給電装置。
【請求項4】
前記切換部は、前記蓄電部の出力電圧が所定値以下の場合、前記蓄電部を前記充電状態に切り換える
請求項
3に記載の車両用シートの給電装置。
【請求項5】
車両用シートに設けられ、該車両用シートにおける複数の負荷と接続される受電部と、
該受電部に非接触で電力を送電する送電部と、
前記車両用シートに設けられ、前記負荷に接続され、前記受電部及び送電部による給電経路を介して充電される蓄電部と、
前記負荷を駆動するための負荷電力を導出する負荷電力導出部と、
前記給電経路を介して給電される給電電力を検出する給電電力検出部と、
前記蓄電部の出力電力を検出する出力電力検出部と、
前記負荷電力が、前記給電電力及び出力電力の合計電力よりも大きい場合、同時に実行する一つ又は複数の前記負荷の負荷電力が、該合計電力よりも小さくなるように、該負荷の駆動のタイミングを異ならせる制御をする制御部と
を備える車両用シートの給電装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記負荷電力が前記給電電力及び出力電力の合計電力よりも大きい場合、前記負荷夫々の駆動優先順位に基づいて、該負荷の駆動を順次に制御する
請求項
5に記載の車両用シートの給電装置。
【請求項7】
前記送電部に電力を供給する車載バッテリの出力電圧を検出する第2出力電圧検出部と、
該第2出力電圧検出部が検出した前記車載バッテリの出力電圧が所定値以下の場合、前記送電部から前記受電部への電力の給電を停止する給電停止部と
を備える請求項1から請求項
6のいずれか一つに記載の車両用シートの給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられている車両用シートは、車体の床部に設けられたレール上において、スライド等の移動が可能となるように構成されている。この車両用シートを移動するためのモータ等の駆動部に電力を供給するため、車両用シートに設けられた受電コイルと、車体の床部に設けられた給電コイルを備える車両用シートの給電装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用シートの給電装置は複数の受電コイルを有し、これら複数の受電コイルは、車両用シートの座面、アームレスト又はヘッドレストに設けられている。給電コイルは、車載バッテリとDC/ACコンバータを介して接続されている。給電コイルから、座面に設けられた受電コイルに給電がされ、この座面に設けられた受電コイルを中継して、アームレスト又はヘッドレストに設けられた受電コイルに給電がされるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両用シートには、当該車両用シートを移動するためのモータのみならず、複数の負荷が設けられている。従って、複数の負荷を同時に駆動する場合、特許文献1に記載の給電装置が供給できる電力では、これら複数の負荷を同時に駆動するための電力に対し不足する虞があるという問題点がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非接触によってシートに設けられた負荷に電力を供給する際、シートに設けられた複数の負荷に対応した電力を供給することができる車両用シートの給電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る車両用シートの給電装置は、車両用シートに設けられ、該車両用シートにおける複数の負荷と接続される受電部と、該受電部に非接触で電力を送電する送電部と、前記車両用シートに設けられ、前記負荷に接続され、前記受電部及び送電部による給電経路を介して充電される蓄電部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、非接触によって車両用シートに設けられた負荷に電力を供給する際、車両用シートに設けられた複数の負荷に対応した電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る車両用シートの給電システムの構成を示す模式図である。
【
図2】実施形態1に係る車両用シートの給電装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】蓄電部の充放電の状態遷移に関する一例を示す説明図である。
【
図4】各負荷における負荷テーブルに関する一例を示す説明図である。
【
図5】実施形態1(基本形)に係る第2制御部の処理を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態2(車載バッテリの出力電圧)に係る第2制御部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0011】
(1)本開示の一態様に係る車両用シートの給電装置は、車両用シートに設けられ、該車両用シートにおける複数の負荷と接続される受電部と、該受電部に非接触で電力を送電する送電部と、前記車両用シートに設けられ、前記負荷に接続され、前記受電部及び送電部による給電経路を介して充電される蓄電部と、前記受電部と前記蓄電部との間に設けられる切換部とを備え、前記蓄電部は、該切換部の切換えによって、前記給電経路を介して充電される充電状態又は、前記負荷に対し電力を供給する放電状態となり、前記負荷を駆動するための負荷電力を導出する負荷電力導出部と、前記給電経路を介して給電される給電電力を検出する給電電力検出部とを備え、前記切換部は、前記負荷電力導出部が導出した負荷電力及び前記給電電力検出部が検出した給電電力に基づいて、前記蓄電部を前記充電状態又は放電状態に切り換える。又は、車両用シートの給電装置は、前記蓄電部の出力電圧を検出する出力電圧検出部を備え、前記切換部は、前記出力電圧検出部が検出した出力電圧に基づいて、前記蓄電部を前記充電状態又は放電状態に切り換える。又は、車両用シートの給電装置は、前記負荷電力が、前記給電電力及び出力電力の合計電力よりも大きい場合、同時に実行する一つ又は複数の前記負荷の負荷電力が、該合計電力よりも小さくなるように、該負荷の駆動のタイミングを異ならせる制御をする制御部とを備える。
【0012】
本態様にあたっては、車両用シートに設けられた蓄電部は、負荷に接続されているので、当該負荷に対し蓄電部から電力を供給することができる。従って、送電部から給電された電力及び蓄電部から供給された電力によって、負荷に対応した電力を供給することができる。
【0013】
(2)前記受電部と前記蓄電部との間に設けられる切換部を備え、前記蓄電部は、該切換部の切換えによって、前記給電経路を介して充電される充電状態又は、前記負荷に対し電力を供給する放電状態となる構成が好ましい。
【0014】
本態様にあたっては、切換部によって、蓄電部を充電状態又は放電状態に切り換えることにより、蓄電部への充放電を効率的に行うことができる。
【0015】
(3)前記負荷を駆動するための負荷電力を導出する負荷電力導出部と、前記給電経路を介して給電される給電電力を検出する給電電力検出部とを備え、前記切換部は、前記負荷電力導出部が導出した負荷電力及び前記給電電力検出部が検出した給電電力に基づいて、前記蓄電部を前記充電状態又は放電状態に切り換える構成が好ましい。
【0016】
本態様にあたっては、切換部は、負荷電力及び給電電力に基づいて、蓄電部を充電状態又は放電状態に切り換えるため、蓄電部への充放電を的確に行うことができる。
【0017】
(4)前記切換部は、前記負荷電力が前記給電電力よりも大きい場合、前記蓄電部を放電状態に切り換え、前記負荷電力が前記給電電力以下の場合、前記蓄電部を充電状態に切り換える構成が好ましい。
【0018】
本態様にあたっては、切換部は、負荷電力が前記給電電力よりも大きい場合は放電状態に、負荷電力が給電電力以下の場合は充電状態に切換えるため、蓄電部への充放電を的確に行うことができる。
【0019】
(5)前記蓄電部の出力電圧を検出する出力電圧検出部を備え、前記切換部は、前記出力電圧検出部が検出した出力電圧に基づいて、前記蓄電部を前記充電状態又は放電状態に切り換える構成が好ましい。
【0020】
本態様にあたっては、切換部は、蓄電部の出力電圧に基づいて、蓄電部を前記充電状態又は放電状態に切り換えるため、蓄電部への充放電を的確に行うことができる。
【0021】
(6)前記切換部は、前記蓄電部の出力電圧が所定値以下の場合、前記蓄電部を前記充電状態に切り換える構成が好ましい。
【0022】
本態様にあたっては、切換部は、蓄電部の出力電圧が所定値以下の場合、蓄電部を前記充電状態に切り換えるため、蓄電部が過放電になることを防止することができる。
【0023】
(7)前記負荷を駆動するための負荷電力を導出する負荷電力導出部と、前記給電経路を介して給電される給電電力を検出する給電電力検出部と、前記蓄電部の出力電力を検出する出力電力検出部と、前記負荷電力が、前記給電電力及び出力電力の合計電力よりも大きい場合、同時に実行する一つ又は複数の前記負荷の負荷電力が、該合計電力よりも小さくなるように、該負荷の駆動のタイミングを異ならせる制御をする制御部とを備える構成が好ましい。
【0024】
本態様にあたっては、制御部は、負荷電力が給電電力及び出力電力の合計電力よりも大きい場合、同時に実行する一つ又は複数の負荷の負荷電力が合計電力よりも小さくなるように、負荷を駆動するタイミングを異ならせ、これら負荷の駆動に対応することができる。
【0025】
(8)前記制御部は、前記負荷電力が前記給電電力及び出力電力の合計電力よりも大きい場合、前記負荷夫々の駆動優先順位に基づいて、該負荷の駆動を順次に制御する構成が好ましい。
【0026】
本態様にあたっては、制御部は、負荷電力が給電電力及び出力電力の合計電力よりも大きい場合、負荷夫々の駆動優先順位に基づいて、負荷を順次に駆動制御するため、同時に駆動される負荷の負荷電力を合計電力以下にさせて、これら負荷の駆動に対応することができる。
【0027】
(9)前記送電部に電力を供給する車載バッテリの出力電圧を検出する第2出力電圧検出部と、該第2出力電圧検出部が検出した前記車載バッテリの出力電圧が所定値以下の場合、前記送電部から前記受電部への電力の給電を停止する給電停止部とを備える構成が好ましい。
【0028】
本態様にあたっては、給電停止部は、送電部に電力を供給する車載バッテリの出力電圧が所定値以下の場合、給電部から前記受電部への電力の給電を停止するため、車載バッテリが過放電になることを抑制しつつ、蓄電部から負荷へ電力を供給することによって、当該負荷を駆動することができる。
【0029】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。本開示の実施形態に係る給電装置Kを、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
(実施形態1)
以下、実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る車両用シートの給電システムの構成を示す模式図である。
図2は、実施形態1に係る車両用シートの給電装置Kの構成を示すブロック図である。給電システムは、車両Cに実装されており、車体フロアFに設けられた第1シートECU1及び複数の送電コイル102を含む送電部と、シートSに設けられた第2シートECU2及び複数の受電コイル202を含む受電部とを備える。
【0031】
シートSには、例えば、シートSをスライドして移動させるためのモータ、シートSの背もたれ部を傾けるリクライニング用のモータ等の駆動部、又はシートSの表面温度を可変させるシート用ヒータ等の複数の負荷3が設けられてある。シートSは、後述する第2シートECU2の制御によって、車体フロアFに設けられたレールRに沿って移動するように構成されている車両用のスライドシートである。レールRは、I字状の直性形状に限定されず、例えばJ字状、U字状等の曲線部を含むものであってもよい。特に自動化運転技術が実装された車両Cにおいては、車両Cの前部に設けられているシートSは、常に前方向を向いている必要はなく、例えばJ字状のレールRに沿って案内され、後方向に向くように移動される。
【0032】
複数の送電コイル102は、レールRの近傍に沿うように、このレールRの配置に対応して複数個配置されている。または、複数の送電コイル102は、このレールRの内部に設けられていてもよい。複数の送電コイル102は、互いに並列に接続されており、その両端は、DC/ACコンバータ5に接続されている。DC/ACコンバータ5は、車載バッテリ7と接続されおり、車載バッテリ7から出力された直流電圧を交流電圧に変換して、変換した交流電圧を複数の送電コイル102夫々に出力する。DC/ACコンバータ5は、一つに限定されず、複数個あってもよい。DC/ACコンバータ5を複数個備える場合、複数の送電コイル102を、DC/ACコンバータ5の個数に合わせてグループ分けし、グループ毎の送電コイル102を個々のDC/ACコンバータ5に接続するものであってもよい。
【0033】
DC/ACコンバータ5と複数の送電コイル102夫々との間には、送電側スイッチ103が設けられている。送電側スイッチ103は、例えばn型FET等の半導体スイッチである。又は、送電側スイッチ103は、機械式のリレーであってもよい。送電側スイッチ103をオン又はオフすることによって、DC/ACコンバータ5と送電コイル102との接続又は切断が行われる。
【0034】
送電コイル102夫々には、送電コイル102毎の電圧値、電流値、電力値又は磁束密度等の送電コイル102が出力する電力に関する値を検出する送電側検出部101が設けられている。送電側検出部101は、例えばシャント抵抗又はホール素子等によって構成される。
【0035】
第1シートECU1は、夫々の送電側検出部101から出力された検出結果を取得すると共に、夫々の送電側スイッチ103をオン又はオフにすることによって、送電コイル102に対するDC/ACコンバータ5から出力された交流電圧の給断を制御する。
【0036】
シートSの内部には、複数の受電コイル202が所定の間隔を空けて設けられている。これら受電コイル202は、車体フロアFとの距離、すなわち送電コイル102との距離が小さくなるように、シートSの座部の下方に設けられていることが望ましい。複数の受電コイル202は、互いに並列に接続されており、その両端は、AC/DCコンバータ6に接続されている。AC/DCコンバータ6は、互いに並列に接続された複数の負荷3と接続されており、受電コイル202で受電した交流電圧を直流電圧に変換して、変換した直流電圧を複数の負荷3に出力する。AC/DCコンバータ6は、一つに限定されず、複数個あってもよい。AC/DCコンバータ6を複数個備える場合、複数の受電コイル202を、AC/DCコンバータ6の個数に合わせてグループ分けし、グループ毎の受電コイル202を個々のAC/DCコンバータ6に接続するものであってもよい。
【0037】
AC/DCコンバータ6と複数の受電コイル202夫々との間には、受電側スイッチ203が設けられている。受電側スイッチ203は、例えばn型FET等の半導体スイッチである。又は、受電側スイッチ203は、機械式のリレーであってもよい。受電側スイッチ203をオン又はオフすることによって、AC/DCコンバータ6と受電コイル202との接続又は切断が行われる。
【0038】
受電コイル202夫々には、受電コイル202毎の電圧値、電流値、電力値又は磁束密
度等の受電コイル202が受電する電力に関する値を検出する受電側検出部201が設け
られている。受電側検出部201は、例えばシャント抵抗又はホール素子等によって構成
される。
【0039】
第2シートECU2は、夫々の受電側検出部201から出力された検出結果を取得すると共に、夫々の受電側スイッチ203をオン又はオフにすることによって、AC/DCコンバータ6に接続される受電コイル202を切換える。AC/DCコンバータ6に接続された受電コイル202は、送電コイル102から送電される受電コイル202となる。
【0040】
第1シートECU1は、例えば、車両C全体を制御するボディECU(図示せず)からの指示信号に基づいて、第2シートECU2と通信し、第2シートECU2は、シートSに設けられた負荷3を駆動するための制御を行う。
【0041】
シートSには、蓄電部4が設けられている。蓄電部4は、例えばリチウムイオン電池等のバッテリ又はキャパシタ等の電力を蓄電する装置である。蓄電部4からの満充電時の出力電圧(定格値)は、車載バッテリ7からの出力電圧を略同じとなるように設定してあり、例えば略12Vである。蓄電部4は、蓄電部スイッチ41を介してAC/DCコンバータ6と接続されおり、AC/DCコンバータ6から出力された直流電圧によって充電される。
【0042】
蓄電部スイッチ41は、蓄電部4と負荷3とが接続されるように構成されている。すなわち、蓄電部スイッチ41によって、蓄電部4は、AC/DCコンバータ6に接続される充電状態と、負荷3に接続される放電状態とに切換えられるように構成してある。蓄電部スイッチ41は、更に蓄電部4が、負荷3及びAC/DCコンバータ6のいずれにも接続されていない状態、すなわち切離状態に切換えられるように構成してある。従って、蓄電部スイッチ41の切換えによって、蓄電部4は、充電状態、放電状態又は切離状態となるように構成されている。蓄電部スイッチ41は、例えば機械式リレー又はn型FET等の半導体スイッチにより構成される。第2シートECU2との接続については、蓄電部スイッチ41を介さずに、蓄電部4から直接、第2シートECU2に接続し、第2シートECU2には常に蓄電部4から電力が供給されるように構成してもよい。給電経路からの給電が遮断された場合であっても、第2シートECU2と蓄電部4とを常時接続することによって、第2シートECU2の駆動を継続することができる。
【0043】
蓄電部4と蓄電部スイッチ41との間には、蓄電圧検出部42が設けられてあり、蓄電圧検出部42が検出した蓄電圧、すなわち蓄電部4が出力することができる電圧値は、第2シートECU2に出力される。第2シートECU2は、取得した蓄電圧等に基づき、蓄電部スイッチ41の切換えを制御し、蓄電部4への充電、蓄電部4から負荷3への放電(電力の出力)又は、蓄電部4を切離すように制御する。
【0044】
図3は、蓄電部4の充放電の状態遷移に関する一例を示す説明図である。蓄電部には、
過放電を防止するための所定値が定められており、当該所定値は、後述する第2シートE
CU2の第2記憶部22等の所定の記憶領域に記憶されている。過放電を防止するための
所定値は、例えば、蓄電部4のバッテリ特性等に基づき決定される放電終
止電圧、又は当
該放電終
止電圧に基づき決定される値として、放電終
止電圧の略1.1倍とする値であっ
てもよい。
図3に示すごとく、給電経路を介して給電される給電電力が、駆動対象の負荷
3の消費電力を合算した負荷電力よりも大きく、かつ蓄電部4が満充電でない場合、蓄電
部4は充電状態に切換えられる。給電電力が負荷電力よりも大きく、かつ満充電の場合、
蓄電部4は切離状態であってもよい。蓄電圧が所定値よりも小さく、かつ給電電力が負荷
電力以下の場合、蓄電部4は切離状態に切換えられる。蓄電圧が所定値以上であり、かつ
給電電力が負荷電力以下の場合、蓄電部4は放電状態に切換えられる。なお、蓄電圧が所
定値以上であり、かつ給電電力と負荷電力とが等しい場合、蓄電部4は切離状態であって
もよい。蓄電部4の出力電圧となる蓄電圧は、蓄電部4の蓄電残量に関連するものであり
、このように蓄電部4の蓄電圧と、給電電力と負荷電力との大小関係に基づいて、蓄電部
4を適切に充放電することができる。
【0045】
第1シートECU1は、第1制御部11、第1記憶部12、第1通信部13、第1無線部14及び第1制御インターフェイス15を含む。第1制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、第1記憶部12に予め記憶された制御プログラム及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。
【0046】
第1記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成してあり、制御プログラム及び処理時に参照するデータがあらかじめ記憶してある。第1記憶部12に記憶された制御プログラムは、給電装置Kが読み取り可能な記録媒体(図示せず)から読み出された制御プログラムを記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから制御プログラムをダウンロードし、第1記憶部12に記憶させたものであってもよい。
【0047】
第1通信部13は、CAN(Control Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)又はEthernet(登録商標)等の通信プロトコルを用いた入出力インターフェイスであり、車内LAN(L)に接続されているボディECU等の他のECU(図示せず)と相互に通信する。
【0048】
第1無線部14は、LF帯又はUHF帯(RF帯)の無線信号を用いて、所定のプロトコルによって無線通信を行う。第1制御部11は、第1無線部14を介して第2シートECU2と通信可能に構成されている。または、第1無線部14は、WiFi(登録商標)又はBluetooth(登録商標)等を用いて無線通信するものであってもよい。
【0049】
第1制御インターフェイス15は、送電側検出部101及び各種センサ(図示せず)とシリアルケーブル等によって接続されており、送電側検出部101等が出力した検出結果を取得し、第1制御部11に送信する。また、第1制御インターフェイス15は、送電側スイッチ103と電気的に接続してあり、第1制御部11から送信された制御指示に基づいて、送電側スイッチ103のオン又はオフするための信号を出力する。
【0050】
第2シートECU2は、第2制御部21、第2記憶部22、第2無線部24及び第2制御インターフェイス25を含む。更に第2シートECU2は、第2通信部23を備えてあってもよい。
【0051】
第2制御部21は、第1制御部11と同様にCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、第2記憶部22に予め記憶された制御プログラム及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。
【0052】
第2記憶部22は、第1記憶部12と同様の構成であり、制御プログラム及び処理時に参照するデータがあらかじめ記憶してある。第2記憶部22には、駆動対象となる負荷3夫々の消費電力及び駆動の順番を決定するための優先順位に関するデータが記憶されており、これらデータは、例えば、後述するデーブル表(負荷テーブル/
図4参照)の形式で記憶されている。
【0053】
第2無線部24は、第1無線部14と同様の構成である。第2制御部21は、第2無線部24を介して第1シートECU1と通信可能に構成されている。
【0054】
第2通信部23は、第1通信部13と同様の構成である。ただし、第2無線部24を用いて第1シートECU1と通信することにより、第2通信部23を不要とする構成であってもよい。
【0055】
第2制御インターフェイス25は、受電側検出部201、蓄電圧検出部42及び各種セ
ンサ(図示せず)とシリアルケーブル等によって接続されており、受電側検出部201、
蓄電圧検出部42等が出力した検出結果を取得し、第2制御部21に送信する。第2制御
インターフェイス25は、受電側スイッチ203と電気的に接続してあり、第2制御部2
1から送信された制御指示に基づいて、受電側スイッチ203のオン又はオフするための
信号を出力する。第2制御インターフェイス25は、蓄電部スイッチ41と電気的に接続
してあり、第2制御部21から送信された制御指示に基づいて、蓄電部スイッチ41の切
換えるための信号を出力する。第2制御インターフェイス25は、シートSに設けられた
負荷3と電気的に接続してあり、第2制御部21から送信された制御指示に基づいて、当
該負荷3の駆動を行うための信号を出力する。
【0056】
第1シートECU1又は第2シートECU2が、制御プログラムを実行し、送電側スイッチ103又は受電側スイッチ203のオン、オフを行うことによって、給電経路切換部として機能する。または、第1シートECU1及び第2シートECU2が協働して、送電側スイッチ103及び受電側スイッチ203のオン、オフを行うことによって、給電経路切換部として機能してもよい。オンにされた送電側スイッチ103及び受電側スイッチ203に対応する送電コイル102及び受電コイル202によって、給電経路が形成される。すなわち、給電経路切換部によって給電経路が切り換えられるものとなる。
【0057】
第1シートECU1の第1制御部11又は第2シートECU2の第2制御部21は、制御プログラムを実行することによって、送電側検出部101又は受電側検出部201からの検出結果に基づいて、給電経路を形成している送電コイル102及び受電コイル202による給電電力を検出する給電電力検出部として機能する。
【0058】
第2シートECU2の第2制御部21は、制御プログラムを実行することによって、シートSに設けられた複数の負荷3夫々を駆動して制御する制御部として機能する。負荷3夫々は駆動を開始するための駆動スイッチ(図示せず)を含んでおり、第2制御部21は、第2制御インターフェイス25を介して、当該駆動スイッチをオン又はオフすることにより、負荷3夫々の駆動を制御する。
【0059】
第2シートECU2の第2制御部21は、制御プログラムを実行することによって、第2記憶部22に記憶されている負荷テーブルを参照し、同時に駆動すべき負荷の消費電力の合算値(負荷電力)を導出する負荷電力検出部として機能する。
【0060】
図4は、各負荷3における負荷テーブルに関する一例を示す説明図である。シートSに設けられる負荷3としては、例えば
図4に示すごとく、第2シートECU2、パワーシート用のスライド用モータ、リクライニング用モータ、及びシートエアコン用の送風ファン、ペルチェ素子である。負荷夫々を駆動するための消費電力は、定格値として予め決定されている。更に、負荷夫々の駆動を行うにあたっての優先順位(駆動優先順位)が決定されている。
【0061】
詳細はフローチャートにて説明するが、第2シートECU2の第2制御部21は、複数の負荷を同時に駆動すべき場合、例えば、第2記憶部に記憶されている負荷テーブルを参照して当該負荷夫々の消費電力及び駆動優先順位を導出する。第2制御部21は、同時に駆動する複数の負荷の消費電力の合算値(負荷電力)が、給電電力及び蓄電部4の出力電力の合算値以下となるように、負荷を駆動するタイミングを異ならせて駆動する。更に、第2制御部21は、駆動優先順位に基づき、これら負荷を駆動する順番を決定し、負荷を順次に駆動してもよい。
【0062】
第2シートECU2の第2制御部21は、制御プログラムを実行することによって、蓄電圧検出部42が検出した出力電圧(蓄電圧)に基づき、蓄電部の出力電圧及び出力電力を検出する出力電圧検出部及び出力電力検出部として機能する。
【0063】
第1シートECU1の第1制御部11又は第2シートECU2の第2制御部21は、制御プログラムを実行することによって、送電側検出部101からの検出結果に基づいて、車載バッテリ7の出力電圧を検出する第2出力電力検出部として機能する。
【0064】
第1シートECU1の第1制御部11又は第2シートECU2の第2制御部21は、例えばボディECUからの指示制御に基づき、シートSをレールRに沿ってスライドさせ移動させた場合、移動させるためのモータの回転数又は回転角等によってシートSの位置を導出する。第1シートECU1又は第2シートECU2は、導出したシートSの位置を第1記憶部12又は第2記憶部22に記憶する。すなわち、第1シートECU1の第1制御部11又は第2シートECU2の第2制御部21は、シートSの位置を導出するシート位置導出部として機能する。
【0065】
更に、第1記憶部12又は第2記憶部22には、シートSの位置夫々に対応して、最も近接な距離となる送電コイル102と受電コイル202との組み合わせが記憶されている。この組み合わせは、例えば、シートSの位置を示す座標に対し、送電コイル102と受電コイル202との組み合わせをテーブル表として記憶してあるものでもよい。従って、第1シートECU1又は第2シートECU2は、シートSの現在の位置に基づいて、最も近接な距離となる送電コイル102と受電コイル202との組み合わせを導出することができる。送電コイル102と受電コイル202とによる電磁誘導において、これらコイル間の距離に反比例して、電磁誘導の結合係数が決定される。すなわち、距離が短いほど、結合係数が大きくなる。結合係数が大きくなると給電効率が高くなる。
【0066】
第1シートECU1がいずれかの送電側スイッチ103をオンにし、第2シートECU2がいずれかの受電側スイッチ203をオンにすることによって、当該送電側スイッチ103に接続してある送電コイル102と、当該受電側スイッチ203に接続してある受電コイル202との間で、電磁誘導又は磁界共鳴によって非接触による給電が行われる。すなわち、これら送電コイル102と受電コイル202とによって、給電経路が形成される。
【0067】
複数の送電コイル102夫々は、DC/ACコンバータ5を介して車載バッテリ7に接
続されている。複数の受電コイル202夫々は、AC/DCコンバータ6を介して、並列
に接続された複数の負荷3に接続されている。給電経路は、いずれかの送電コイル102
と、いずれかの受電コイル202との組み合わせによって形成されるため、この組み合わ
せに応じて、複数の給電経路を形成することができる。従って、いずれかの送電コイル1
02又は受電コイル202が故障した場合であっても、他の送電コイル102又は受電コ
イル202を組み合わせて給電経路を形成することによって、当該給電経路を介して、車
載バッテリ7からの電力を、シートS内に設けられた負荷3に対し、非接触にて給電する
ことができる。
【0068】
シートSに蓄電部4を設けることにより、給電経路を介して給電された電力が、複数の負荷3を同時に駆動するために要する負荷電力よりも小さい場合又は給電経路が遮断された場合であっても、蓄電部4からの出力電力を用いることにより、負荷3を駆動することができる。
【0069】
蓄電部スイッチ41によって、蓄電部4を充電状態、放電状態又は切離状態に切換えることによって、蓄電部4を適切に充電し、また過放電となることを防止することができる。
【0070】
同時に駆動すべき複数の負荷3の負荷電流が大きい場合であっても、負荷3を駆動するタイミングを異ならせることにより、給電電力及び蓄電部の出力電力以下となるように制御して、これら負荷3の駆動に適切に対応することができる。更に、これら負荷3の駆動の順番を決定し、複数の負荷3を順次に駆動させることにより、これら負荷3の駆動に適切に対応することができる。
【0071】
第1シートECU1又は第2シートECU2は、送電側検出部101又は受電側検出部
201もしくは両検出部からの検出結果に基づき、所定の給電効率を発揮する給電経路を
特定し、送電側スイッチ103及び受電側スイッチ203のオン、オフを制御し、当該給
電経路となるように切換える。従って、送電コイル102及び受電コイル202の給電性
能を担保することができる。また、所定の給電効率として、最も給電効率が高い給電経路
に切換えることによって、より効率的にシートSに設けられた負荷3に電力を供給するこ
とができる。
【0072】
第1シートECU1又は第2シートECU2は、シートSの現在位置に基づいて、最も
近接する送電コイル102と受電コイル202の組合せを導出する。第1シートECU1
又は第2シートECU2は、導出した送電コイル102と受電コイル202の組合せによ
る給電経路に切換えることによって、効率的にシートSに設けられた負荷3に電力を供給
することができる。
【0073】
第1シートECU1の第1制御部11と、第2シートECU2の第2制御部21との通信は、第1無線部14及び第2無線部24を介して行うことにより、第1シートECU1及び第2シートECU2との間に通信線を配することを不要とすることができる。従って、第2シートECU2及び負荷3等が設けられているシートSにおいて、給電系統及び通信系統を共にワイヤレスとすることができ、当該シートSの移動における自由度を向上させることができる。なお、第1制御部11と第2制御部21との通信は、無線通信に限定されず、有線による第1通信部13及び第2通信部23を介するものであってもよい。
【0074】
第1シートECU1は、ボディECUと別体として記載したがこれに限定されない。第1シートECU1は、ボディECUに含まれ、ボディECUの一機能として、第1シートECU1の機能が発揮されてもよい。
【0075】
第1シートECU1と第2シートECU2とは、別体として記載したがこれに限定されない。第2シートECU2に第1シートECU1の機能を持たせ、第2シートECU2から通信線を介して送電コイル102に接続してある送電側スイッチ103のオン、オフを制御するものであってもよい。
【0076】
送電側スイッチ103及び受電側スイッチ203をオン、オフすることによって給電経路を切換えるとしたが、これに限定されない。送電側スイッチ103又は受電側スイッチ203のいずれかのスイッチを不要とし、送電コイル102側又は受電コイル202側のいずれかのスイッチ103、203をオン、オフすることによって給電経路を切換えるものとしてもよい。または、送電コイル102をDC/ACコンバータ5に、受電コイル202をAC/DCコンバータ6に常時接続し、車載バッテリ7からの出力電圧が、常に負荷3に出力(印加)されるものとしてもよい。
【0077】
図5は、実施形態1に係る第2制御部21の処理を示すフローチャートである。第2シートECU2の第2制御部21は、シートSにおける負荷3の駆動を行うための制御信号を取得した場合、以下の処理を開始する。または、第2制御部21は、IG(イグニッション)スイッチ等の車両を起動するスイッチがオンされた時点、及びこれ以降の所定時間経過毎に定期的に以下の処理を開始してもよい。または、第2制御部21は、シートSの移動に応じて、すなわちシートSが移動されることによって、送電コイル102と受電コイル202との位置関係が変更されることによって、以下の処理を開始してもよい。
【0078】
第2制御部21は、負荷電力を導出する(S11)。第2制御部21は、例えばボディECUからシートSに設けられている負荷3の駆動指示に関する信号を、第1シートECU1を介して取得する。この信号は、車両の操作者の操作に基づきボディECUから送信されるところ、操作者は、例えばシートエアコンをオンにした後、パワーシートのリクライニングを操作するなど、複数の負荷3を同時に実行すべき場合が発生する。そこで、第2シートECU2は、複数の負荷3の駆動指示を受けた場合、当該負荷3の消費電力の合算値を導出する。または、第2制御部21は、既にいずれかの負荷3を駆動している最中において、更に他の負荷3の駆動指示の信号を取得した場合、既に駆動している負荷3の消費電力に、当該駆動指示の対象の負荷3の消費電力の合算値を導出する。この合算値を導出するにあたり、第2制御部21は、第2記憶部22等の所定の記憶領域に記憶されている負荷テーブルを参照し、対象となる負荷3夫々の消費電力の合算値を負荷電力として導出する。
【0079】
第2制御部21は、給電電力を検出する(S12)。第2制御部21は、受電側検出部201からの検出結果に基づき、受電コイル202が受電した電力、すなわち給電経路を介して給電される給電電力を導出する。または、第2制御部21は、AC/DCコンバータ6から出力された直流電力を検出する電力計(図示せず)の検出結果に基づき、給電電力を導出するものであってもよい。
【0080】
第2制御部21は、給電電力が、負荷電力以上であるかの判定を行う(S13)。給電電力が負荷電力以上である場合(S13:YES)、給電電力によって、駆動対象となっている全ての負荷3を駆動することができるものとなる。
【0081】
第2制御部21は、蓄電部4が満充電状態か否かの判定を行う(S14)。蓄電部4が満充電状態の判定を行うにあたって、第2制御部21は、例えば、蓄電圧検出部42が検出した蓄電部4の出力電圧(放電電圧)と、満充電状態における出力電圧とを比較して、満充電状態か否かの判定を行う。
【0082】
蓄電部4が満充電状態でない場合(S14:NO)、第2制御部21は、蓄電部4を充電状態に切換える(S141)。第2制御部21は、蓄電部4とAC/DCコンバータ6とが接続され、蓄電部4が充電状態となるように、蓄電部スイッチ41を切換える。第2制御部21は、駆動対象の負荷3を駆動する(S15)。第2制御部21は、負荷3の構成に含まれる又は負荷3と直列に接続される負荷駆動スイッチをオンにすることによって、当該負荷3を駆動を開始する。
【0083】
蓄電部4が満充電状態の場合(S14:YES)、第2制御部21は、駆動対象の負荷3を駆動する(S15)。なお、この場合、第2制御部21は、蓄電部4をAC/DCコンバータ6及び負荷3のいずれにも接続されない切離状態となるように、蓄電部スイッチ41を切換えてもよい。蓄電部4を切離状態にすることによって、過充電又は負荷3に放電することによる蓄電量の低減を抑制することができる。
【0084】
給電電力が負荷電力以上でない場合(S13:NO)、給電電力によって、駆動対象となっている全ての負荷3を駆動することはできない。第2制御部21は、蓄電部4の出力電圧が所定値以上であるかの判定を行う(S131)。この所定値とは、例えば、負荷3駆動に最低限必要な蓄電部4の出力電圧であり、または蓄電部4が過放電となることを防止するために定める所定の電圧値であり、蓄電部4の蓄電残量に対応した値である。
【0085】
蓄電部4の出力電圧が所定値以上である場合(S131:YES)、第2制御部21は、蓄電部4を放電状態に切換える(S132)。第2制御部21は、蓄電部4と負荷3とが接続され蓄電部4から負荷3に電力が供給され、蓄電部4が放電状態となるように、蓄電部スイッチ41を切換える。
【0086】
第2制御部21は、負荷電力が、給電電力及び蓄電部4の出力電力の合計電力以下であるかの判定を行う(S133)。負荷電力が合計電力以下の場合(S133:YES)、第2制御部21は、駆動対象の負荷3を駆動する(S15)。
【0087】
負荷電力が合計電力以下でない場合(S133:NO)、すなわち負荷電力が合計電力よりも大きい場合、第2制御部21は、駆動対象の負荷3夫々の駆動順番を決定する(S1331)。そして、第2制御部21は、決定した駆動順番に基づいて、負荷3夫々を順次に駆動する(S1332)。
【0088】
負荷電力が合計電力よりも大きい場合は、給電経路から給電される給電電力に、蓄電部4から出力される電力を加えても、駆動対象の負荷3を同時に駆動することは、できない。そこで、第2制御部21は、第2記憶部22に記憶されている負荷テーブルを参照し、駆動対象の負荷3夫々の消費電力と、駆動優先順位を読み出す。そして、第2制御部21は、当該駆動優先順位に従って、同時に実行する負荷3の消費電力の合算値が、合計電力以下となるように負荷3の駆動順番を決定する。例えば、給電電力を45W、蓄電部4からの出力電力を45Wとする。なお、給電電力及び蓄電部4からの出力電力における電圧は、例えば略12Vとして設定してある。駆動対象の負荷3は、例えば第2シートECU2(a[W])、スライド用モータ(b[W])、リクライニング用モータ(c[W])、送風ファン(d[W])及びペルチェ素子(e[W])とする。これら全ての負荷3を駆動した場合の消費電力(負荷電力)は、(a+b+c+d+e)[W]となり、負荷電力が、合計電力(90W=45W+45W)よりも大きい場合は、優先順位が最も低いペルチェ素子をオフにする。そして、ペルチェ素子以外の負荷3の消費電力の合算値(負荷電力)が、合計電力よりも低ければ、ペルチェ素子以外の負荷3の駆動を行う。そして、パワーシートのスライド用モータ及びリクライニング用モータの駆動が終了した後、送風ファンの駆動を継続しつつ、ペルチェ素子の駆動を開始する。このように、決定した駆動順番に基づいて、駆動対象の負荷3を順次に駆動する、すなわち駆動対象の負荷3における駆動を実行するタイミングを異ならせることによって、複数の負荷3の駆動に対応することができる。
【0089】
負荷3を順次に駆動する態様は、これに限定されない。例えば、送風ファン及びペルチェ素子を駆動するにあたり、これら2つの負荷3を交互に駆動することによって、負荷電力が、合計電力以下になるようにしてあってもよい。または、複数の負荷3による負荷電力が、合計電力以下であれば、これら負荷3を同時に実行するとしたが、これに限定されない。複数の負荷3による負荷電力が合計電力以下であっても、これら負荷3を優先順位に従って、負荷3夫々を個別に順次に駆動するものであってもよい。なお、第2シートECU2の優先順位は、他の負荷3に対し最も高くしてあり、第2シートECU2は常に駆動されるべきであることは、言うまでもない。
【0090】
蓄電部4の出力電圧が所定値以上でない場合(S131:NO)、すなわち蓄電部4の出力電圧が所定値よりも低い場合、第2制御部21は、蓄電部4をAC/DCコンバータ6及び負荷3のいずれにも接続されない切離状態に切換える(S1311)。蓄電部4を切離状態に切換ることによって、蓄電部4の過放電を防止することができる。
【0091】
第2制御部21は、(S133:NO)の処理と同様に駆動対象の負荷3夫々の駆動順番を決定する(S1331)。そして、第2制御部21は、決定した駆動順番に基づいて、負荷3夫々を順次に駆動する(S1332)。ただし、この場合は、蓄電部4は切離されているため、給電経路を介して供給される給電電力が、合計電力となる。従って、負荷3を駆動するにあたり、消費電力の上限が更に低くなる。そこで、例えば最も消費電力の大きいペルチェ素子等、所定の消費電力よりも大きい消費電力の負荷3の駆動を禁止し、他の負荷3において駆動の優先順位を決定し、これら負荷3を個別に順次に駆動するものであってもよい。ただし、第2シートECU2の駆動は、常に行う必要があるため、第2シートECU2を駆動しつつ、スライド用モータの駆動を開始及び停止した後、次にリクライニング用モータの駆動を開始及び停止した後、送風ファンを駆動するものとし、これら負荷3を順次に駆動してもよい。
【0092】
駆動対象の負荷3の消費電力の合算値である負荷電力と給電電力との大小関係に基づいて、蓄電部4の充電状態又は放電状態を切換えることによって、負荷電力に対し給電電力が不足する場合であっても、蓄電部4の電力を用いて、負荷3に対し電力を供給し、これら負荷3の駆動を行うことができる。
【0093】
蓄電部4からの出力電圧に基づいて、蓄電部4の充電状態又は放電状態を切換えることによって、蓄電部4の充電を適切に行うことができる。また、蓄電部4が過放電となることを防止することができる。
【0094】
負荷3に供給できる合計電力、すなわち給電電力と蓄電部4の出力電力との合算値よりも、駆動対象の負荷3の消費電力の合算値である負荷電力が大きい場合であっても、当該負荷3の駆動優先順位に基づき、これら負荷3を駆動する順番を決定し、これら負荷3を順次に、すなわち駆動するタイミングを異ならせて駆動する。従って、同時に駆動する負荷3の消費電力の合算値を合計電力以下にし、これら負荷3の駆動に対応することができる。給電電力と蓄電部4の出力電力との合算値に応じて、負荷3を順次に駆動するため、蓄電部4が小型化することができる。
【0095】
本実施形態1において、シートSの内部に設けられている第2シートECU2の第2制御部21を主体として記載したがこれに限定されない。本実施形態1に係る処理は、第1シートECU1の第1制御部11が主体として行うものであってもよい。または、第1制御部11と第2制御部21とが通信することによって、第1制御部11と第2制御部21とが協働して、本実施形態1に係る処理を行うものであってもよい。
【0096】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る第2制御部21の処理を示すフローチャートである。第2シートECU2の第2制御部21は、実施形態1と同様に、以下の処理を開始する。
【0097】
第2制御部21は、車載バッテリ7の出力電圧を検出する(S21)。第2制御部21は、第1シートECU1の第1制御部11と通信し、送電側検出部101の検出結果に基づき、車載バッテリ7の出力電圧を検出する。第2制御部21は、車載バッテリ7又はDC/ACコンバータ5の出力電圧を検出する電圧計(図示せず)の検出結果を、第1制御部11を介して取得し、車載バッテリ7の出力電圧を検出してもよい。
【0098】
第2制御部21は、車載バッテリ7の出力電圧が所定値以上であるか否かの判定を行う(S22)。この所定値は、例えば、負荷3駆動に最低限必要な車載バッテリ7の出力電圧であり、又は車載バッテリ7が過放電となることを防止するために定める所定の電圧値であり、車載バッテリ7の蓄電残量に対応した値である。
【0099】
車載バッテリ7の出力電圧が所定値以上である場合(S22:YES)、第2制御部21は、実施形態1と同じフローにて処理を行う(S220)。
【0100】
車載バッテリ7の出力電圧が所定値以上でない場合(S22:NO)、すなわち車載バッテリ7の出力電圧が所定値よりも低い場合、第2制御部21は、給電経路を遮断する(S23)。給電経路を遮断するにあたり、第2制御部21は、受電コイル202の接続されている全ての受電側スイッチ203をオフにする。または、第2制御部21は、第1シートECU1の第1制御部11と通信することによって、送電コイル102に接続されている全ての送電側スイッチ103をオフにする。または、AC/DCコンバータ6のスイッチをオフにしてもよく、AC/DCコンバータ6と車載バッテリ7との間に接続されているスイッチ(図示せず)をオフにするものであってもよい。
【0101】
第2制御部21は、実施形態1の処理S11と同様に負荷電力を導出する(S24)。第2制御部21は、実施形態1の処理S131と同様に蓄電部4の出力電圧が所定値以上か否かを判定する(S25)。
【0102】
蓄電部4の出力電圧が所定値以上でない場合(S25:NO)、すなわち蓄電部4の出力電圧が所定値よりも小さい場合、蓄電部4を放電状態にして負荷3に電力を供給することは、できない。そこで、第2制御部21は、再度S21の処理を実行すべくループ処理を行う。すなわち、第2制御部21は、車載バッテリ7の出力電圧が回復するまで、負荷3の駆動は行わず待機するものとなる。なお、このような状態であっても、蓄電部4から第2シートECU2への電力の供給は継続されている。第2シートECU2の消費電力は、主には第2制御部21のMPUの駆動電力となるが、スライド用モータ等の他の負荷3と比較し消費電力は小さい。従って、給電経路からの給電がない場合、第2シートECU2は、蓄電部4からの電力が常に供給されるように構成されている。
【0103】
蓄電部4の出力電圧が所定値以上である場合(S25:YES)、第2制御部21は、実施形態1の処理S132と同様に蓄電部4を放電状態に切換える(S26)。第2制御部21は、実施形態1の処理S133、S1331、S1332及びS15と同様に、S27、S271、S272、S28の処理を実行する。なお、実施形態1の処理S1331、S1332と比較して、S271、S272の処理においては、蓄電部4に蓄電されている電力のみで負荷3を駆動するものとなり、消費電力の上限が更に低くなる。従って、実施形態1のように給電経路からの給電がされる場合と比較して、駆動を禁止する負荷3を更に設定するものとしてもよい。
【0104】
車載バッテリ7の出力電圧に基づいて、シートS内に設けられた負荷3に対し電力を給電する給電経路を遮断するため、車載バッテリ7が過放電することを防止することができる。
【0105】
給電経路を遮断することによって、車載バッテリ7からシートS内に設けられた負荷3に対し、電力を供給できない場合であっても、蓄電部4からこれら負荷3に対し電力を供給し、当該負荷3を駆動することができる。当該負荷3を駆動するにあたり、同時に駆動する負荷3の負荷電力が蓄電部4の出力電力以下となるように、負荷3の駆動順番を決定し、これら負荷3を順次に駆動することによって、蓄電部4を小型化することができる。
【0106】
実施形態2においても、実施形態1と同様に第1制御部11を主体、又は第1制御部11と第2制御部21とが協働して、本実施形態2に係る処理を行うものであってもよい。
【0107】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0108】
C 車両
S シート
F 車体フロア
L 車内LAN
R レール
K 給電装置
1 第1シートECU
11 第1制御部(給電電力検出部、第2出力電圧検出部)
12 第1記憶部
13 第1通信部
14 第1無線部
15 第1制御インターフェイス
101 送電側検出部
102 送電コイル(送電部)
103 送電側スイッチ
2 第2シートECU
21 第2制御部(負荷電力導出部、給電電力検出部、出力電圧検出部、出力電力検出部、制御部)
22 第2記憶部
23 第2通信部
24 第2無線部
25 第2制御インターフェイス
201 受電側検出部
202 受電コイル(受電部)
203 受電側スイッチ
3 負荷
4 蓄電部
41 蓄電部スイッチ(切換部)
42 蓄電圧検出部
5 DC/ACコンバータ
6 AC/DCコンバータ
7 車載バッテリ