(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】印刷システム、プリンタ、情報処理装置、および端末装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20220113BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20220113BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B41J29/38 202
G06F3/12 353
G06F3/12 308
G06F3/12 329
G06F3/12 326
G06F3/12 385
H04N1/00 L
H04N1/00 127Z
(21)【出願番号】P 2018016584
(22)【出願日】2018-02-01
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086933
【氏名又は名称】久保 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125117
【氏名又は名称】坂田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 敦史
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悠史
(72)【発明者】
【氏名】岩井 英剛
(72)【発明者】
【氏名】山口 武久
(72)【発明者】
【氏名】三縞 信広
(72)【発明者】
【氏名】杉田 克行
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-230220(JP,A)
【文献】特開2017-084027(JP,A)
【文献】特開2009-188679(JP,A)
【文献】特開2007-033888(JP,A)
【文献】特開2016-147444(JP,A)
【文献】特開2003-341180(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0195812(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
H04N 1/00
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタと、端末装置と、を有する印刷システムであって、
前記端末装置に、
印刷する対象であるドキュメントを印刷するのに掛かる予測時間を前記プリンタに問い合わせる問合せ手段、
が設けられ、
前記プリンタに、
前記ドキュメントを当該プリンタが複数の条件それぞれで印刷するのに掛かる予測時間を算出する算出手段と、
前記複数の条件それぞれの前記予測時間を前記端末装置に回答する、回答手段と、
が設けられ、
前記端末装置に、さらに、
前記複数の条件と、当該複数の条件それぞれの前記予測時間とを、ディスプレイに表示させる提示手段と、
前記複数の条件のうちの選択された条件で前記ドキュメントを印刷するように前記プリンタに指令する指令手段と、
が設けられ、
前記プリンタに、さらに、
前記ドキュメントを前記複数の条件のうちの選択された条件で印刷する印刷手段と、
が設けられる、
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記提示手段は、前記複数の条件それぞれを、当該複数の条件それぞれを表わす文字列として表示させる、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記提示手段は、前記複数の条件それぞれを、当該複数の条件それぞれを表わすイラストとして表示させる、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記提示手段は、前記複数の条件それぞれの前記予測時間を、当該複数の条件それぞれを選択するための選択肢として表示する、
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項5】
前記提示手段は、前記ディスプレイに表示されているいずれかの前記予測時間がフォーカスされた際に、前記複数の条件のうちの当該フォーカスされた予測時間に対応する条件を表示させる、
請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記算出手段は、前記予測時間として、前記プリンタの現在の状態において前記ドキュメントを印刷し終えるまでの時間を算出する、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項7】
前記複数の条件のそれぞれは、複数の項目それぞれの条件を組み合わせたグループである、
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項8】
前記提示手段は、前記複数の条件それぞれの前記予測時間のうちの、ユーザによって指定された要件に該当するもののみを表示させる、
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の印刷システム。
【請求項9】
前記プリンタを複数有し、
前記問合せ手段は、前記予測時間を、前記複数のプリンタそれぞれに問い合わせ、
前記提示手段は、前記複数のプリンタそれぞれから回答された前記複数の条件と当該複数の条件それぞれの前記予測時間とをディスプレイに表示させ、
前記指令手段は、前記複数のプリンタそれぞれの前記複数の条件のうちの選択された条件で前記ドキュメントを印刷する旨の指令を、当該複数のプリンタのうちの当該選択された条件を回答したプリンタに対して与える、
請求項1に記載の印刷システム。
【請求項10】
印刷する対象であるドキュメントをプリンタによって複数の条件それぞれで印刷するのに掛かる予測時間を取得する取得手段と、
前記複数の条件と当該複数の条件それぞれの前記予測時間とを通知する通知手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項11】
前記複数の条件のうちの選択された条件で前記ドキュメントを印刷する印刷手段、を有する、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記通知手段は、前記複数の条件と当該複数の条件それぞれの前記予測時間とを端末装置へ通知する、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記印刷手段は、前記複数の条件のうちの前記端末装置において選択された条件で前記ドキュメントを印刷する、
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記通知手段は、前記複数の条件と当該複数の条件それぞれの前記予測時間とを、ディスプレイに表示させることによって通知する、
請求項11に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記印刷手段は、前記ディスプレイに表示された前記複数の条件のうちの選択された条件で前記ドキュメントを印刷する、
請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記複数の条件のうちの選択された条件で前記ドキュメントを前記プリンタに印刷させる印刷制御手段、を有し、
前記取得手段は、前記プリンタから取得した情報に基づいて前記予測時間を算出する、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記取得手段は、前記予測時間を、前記プリンタに問い合わせることによって取得し、
前記通知手段は、前記予測時間を、ディスプレイに表示させることによって通知する、
請求項10に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記ディスプレイに表示された前記複数の条件のうちの選択された条件で前記ドキュメントを前記プリンタに印刷させる印刷制御手段、を有する、
請求項17に記載の情報処理装置。
【請求項19】
印刷する対象であるドキュメントをプリンタによって印刷するのに掛かる予測時間を当該プリンタに問い合わせる問合せ手段と、
前記プリンタから回答された、複数の条件と当該複数の条件それぞれの前記予測時間とを、ディスプレイに表示させる提示手段と、
前記複数の条件のうちの選択された条件で前記ドキュメントを前記プリンタに印刷させる印刷制御手段と、
を有することを特徴とする端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドキュメントを印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コピー、ネットワークプリント、ファックス、スキャン、およびファイルサーバなどの機能を集約した画像形成装置が普及している。このような画像形成装置は、「複合機」または「MFP(Multi Function Peripherals)」などと呼ばれている。
【0003】
画像形成装置は、企業または役所などにおいて複数のユーザによって共用される。これらのユーザは、画像形成装置を直接操作して画像形成装置に印刷を行わせることもできるし、通信回線を介して端末装置によって遠隔的に画像形成装置を直接操作して画像形成装置に印刷を行わせることもできる。
【0004】
また、ユーザは、ドキュメントを印刷する条件として、様々な条件を指定することができる。条件の1つとして解像度を指定することができる。指定された解像度が高いほど、印刷に掛かる時間が長くなる。
【0005】
そこで、印刷に掛かる時間を短くするための技術として、次のような技術が提案されている。
【0006】
受信したPDLデータを解析し、レンダリングする単位のディスプレイリストを生成する。そして、そのディスプレイリストが文字/線画であるか、写真画像を含む中間調画像かを判断する。文字/線画であると判断した場合には、ディスプレイリストをプリンタエンジンの解像度に応じてリサイズし、各色成分を8ビットの精度(整数)としてレンダリングする。また、ディスプレイリストが写真画像を含む中間調画像と判断した場合には、そのディスプレイリストをプリンタエンジンの解像度に応じてリサイズし、各色成分を10ビットの精度(8整数+2ビット小数点以下)としてレンダリングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ユーザは、できるだけ早くドキュメントを画像形成装置に印刷させその印刷物を取得したい場合がある。例えば、出張に出掛ける直前または会議が始まる直前に、出張または会議に必要なドキュメントが完成した場合である。
【0009】
特許文献1に記載されるような従来の技術によると、印刷物を取得するまでの時間を短縮することができる。しかし、少しでも早く印刷物を取得するためには、例えば解像度を下げるなど、条件を変更することが望ましい。
【0010】
ところが、条件を変更すると、印刷物の仕上がりがユーザの意図しない状態になるおそれがある。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑み、ユーザが急いでいる場合に、従来よりも確実にユーザの希望する状態の印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一形態に係る印刷システムは、プリンタと、端末装置と、を有する印刷システムであって、前記端末装置に、印刷する対象であるドキュメントを印刷するのに掛かる予測時間を前記プリンタに問い合わせる問合せ手段、が設けられ、前記プリンタに、前記ドキュメントを当該プリンタが複数の条件それぞれで印刷するのに掛かる予測時間を算出する算出手段と、前記複数の条件それぞれの前記予測時間を前記端末装置に回答する、回答手段と、が設けられ、前記端末装置に、さらに、前記複数の条件と、当該複数の条件それぞれの前記予測時間とを、ディスプレイに表示させる提示手段と、前記複数の条件のうちの選択された条件で前記ドキュメントを印刷するように前記プリンタに指令する指令手段と、が設けられ、前記プリンタに、さらに、前記ドキュメントを前記複数の条件のうちの選択された条件で印刷する印刷手段と、が設けられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ユーザが急いでいる場合に、従来よりも確実にユーザの希望する状態の印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】印刷システムの全体的な構成の例を示す図である。
【
図2】画像形成装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【
図3】端末装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【
図4】画像形成装置および端末装置それぞれの機能的構成の例を示す図である。
【
図12】メッセージ領域に表示されるメッセージの例を示す図である。
【
図13】画像形成装置の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【
図14】端末装置の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【
図15】画像形成装置の全体的な構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、印刷システム100の全体的な構成の例を示す図である。
図2は、画像形成装置1のハードウェア構成の例を示す図である。
図3は、端末装置2のハードウェア構成の例を示す図である。
【0016】
図1に示す印刷システム100は、ドキュメントを用紙に印刷するためのシステムであって、画像形成装置1、端末装置2、および通信回線3などによって構成される。
【0017】
画像形成装置1および端末装置2は、通信回線3を介して通信することができる。通信回線3として、インターネット、イーサネット(登録商標)回線、無線LAN(Local Area Network)回線、公衆回線、または専用線などが用いられる。
【0018】
画像形成装置1は、コピー、PCプリント、ファックス、スキャン、およびボックスなどの機能を集約した装置である。一般に、「複合機」または「MFP(Multi Function Peripherals)」などと呼ばれることがある。
【0019】
PCプリント機能は、端末装置2から受信した画像データに基づいて画像を用紙に印刷する機能である。「ネットワークプリンティング」または「ネットワークプリント」などと呼ばれることもある。
【0020】
ボックス機能は、ユーザごとに「ボックス」または「パーソナルボックス」などと呼ばれる記憶領域を与えておき、各ユーザが自分の記憶領域によって画像データなどを保存し管理するための機能である。グループごとにボックスを設けておき、グループのメンバで共用することもできる。ボックスは、パーソナルコンピュータにおける「フォルダ」または「ディレクトリ」に相当する。
【0021】
画像形成装置1は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)10a、RAM(Random Access Memory)10b、ROM(Read Only Memory)10c、補助記憶装置10d、タッチパネルディスプレイ10e、操作キーパネル10f、ネットワークアダプタ10g、モデム10h、スキャンユニット10i、プリントユニット10j、およびフィニッシャ10kなどによって構成される。
【0022】
タッチパネルディスプレイ10eは、ユーザに対するメッセージを示す画面、ユーザがコマンドまたは情報を入力するための画面、およびCPU10aが実行した処理の結果を示す画面などを表示する。また、タッチパネルディスプレイ10eは、タッチされた位置を示す信号をCPU10aへ送る。
【0023】
操作キーパネル10fは、いわゆるハードウェアキーボードであって、テンキー、スタートキー、ストップキー、およびファンクションキーなどによって構成される。
【0024】
ネットワークアダプタ10gは、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)などのプロトコルで端末装置2などとの通信を行う。ネットワークアダプタ10gとして、NIC(Network Interface Card)または無線LANアダプタなどが用いられる。
【0025】
モデム10hは、ファックス端末との間でG3などのプロトコルで画像データをやり取りする。
【0026】
スキャンユニット10iは、プラテンガラスの上にセットされたシートに記されている画像を読み取って画像データを生成する。
【0027】
プリントユニット10jは、スキャンユニット10iによって読み取られた画像のほか、ネットワークアダプタ10gまたはモデム10hによって他の装置から受信した画像を用紙に印刷する。
【0028】
フィニッシャ10kは、プリントユニット10jによって得られた印刷物に対して、必要に応じて後処理を施す。後処理は、ステープルで綴じる処理、パンチ穴を開ける処理、または折り曲げる処理などである。
【0029】
ROM10cまたは補助記憶装置10dには、上述のコピーなどの各機能を実現するためのプログラムが記憶されている。さらに、印刷ジョブプログラム10Pが記憶されている。印刷ジョブプログラム10Pは、印刷のジョブを実行するためのプログラムである。
【0030】
これらのプログラムは、必要に応じてRAM10bにロードされ、CPU10aによって実行される。補助記憶装置10dとして、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などが用いられる。
【0031】
端末装置2は、画像形成装置1のクライアントである。ユーザは、画像形成装置1の機能を、端末装置2によって遠隔的に使用することができる。端末装置2として、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、またはタブレットコンピュータなどが用いられる。以下、端末装置2としてパーソナルコンピュータが用いられる場合を例に説明する。
【0032】
端末装置2は、
図3に示すように、CPU20a、RAM20b、ROM20c、補助記憶装置20d、タッチパネルディスプレイ20e、キーボード20f、ポインティングデバイス20g、およびネットワークアダプタ20hなどによって構成される。
【0033】
タッチパネルディスプレイ20eは、ユーザに対してメッセージを与えるための画面、処理の結果を示す画面、またはユーザが指令を入力するための画面などを表示する。また、タッチパネルディスプレイ20eは、タッチされた位置を検知し、CPU20aにその位置を通知する。
【0034】
キーボード20fおよびポインティングデバイス20gは、指令および条件などをユーザが入力するために用いられる。
【0035】
ネットワークアダプタ20hは、TCP/IPなどのプロトコルで画像形成装置1などとの通信を行う。ネットワークアダプタ20hとして、NICまたは無線LANアダプタなどが用いられる。
【0036】
補助記憶装置20dには、オペレーティングシステムおよび種々のアプリケーションのほか、画像形成装置1用のプリンタドライバ20Pが記憶されている。アプリケーションとして、ワープロ、表計算、または描画などドキュメントを作成しまたは閲覧するためのアプリケーションが記憶されている。
【0037】
これらのプログラムはRAM20bにロードされ、CPU20aによって実行される。補助記憶装置20dとして、ハードディスクまたはSSDなどが用いられる。
【0038】
印刷ジョブプログラム10Pおよびプリンタドライバ20Pによると、ドキュメントの印刷物を取得するのをユーザが待つことができる時間に応じた印刷などの条件をユーザに提示することができる。このような、印刷などの条件を提示する機能を「条件提示機能」と記載する。以下、1つまたは複数のページによって構成されるドキュメント5(
図5参照)を印刷する場合を例に、条件提示機能の仕組みについて、説明する。なお、説明の簡単のため、各ドキュメント5の各ページのサイズはすべて一定のサイズ、例えば、A4サイズであるものとする。
【0039】
図4は、画像形成装置1および端末装置2それぞれの機能的構成の例を示す図である。
図5は、ドキュメント51の例を示す図である。
図6は、条件入力画面4Aの例を示す図である。
図7は、単位所要時間テーブル6Dの例を示す図である。
図8は、ジョブデータ6Eの例を示す図である。
図9は、実績データ6Fの例を示す図である。
【0040】
印刷ジョブプログラム10Pによると、
図4に示す所要時間算出部101、印刷ジョブ登録部102、ジョブデータ記憶部103、印刷ジョブ実行部104、印刷実績登録部105、実績データ記憶部106、完了待時間算出部107、および回答データ送信部108などの機能が画像形成装置1に実現される。
【0041】
プリンタドライバ20Pによると、
図4に示す第一の印刷条件受付部201、印刷ジョブ実行指令部202、完了待時間問合部203、および第二の印刷条件受付部204などの機能が端末装置2に実現される。
【0042】
ユーザは、印刷したいドキュメント5のファイル6Aを端末装置2に予め用意しておく。ファイル6Aは、端末装置2のアプリケーションで作成してもよいし、インターネット上のウェブサーバから端末装置2にダウンロードしてもよい。例えば、
図5に示すような、3つのページからなるドキュメント51のドキュメント5として作成する。そして、ファイル6Aをアプリケーションで開き、印刷のコマンドを入力する。
【0043】
すると、端末装置2の第一の印刷条件受付部201は、ドキュメント5を印刷する条件などを受け付けるための処理を次のように実行する。
【0044】
第一の印刷条件受付部201は、
図6に示すような条件入力画面4Aをタッチパネルディスプレイ20eに表示させる。
【0045】
ユーザは、ドキュメント5をフルカラーで印刷したい場合は選択ボタン4A11をクリックし、モノクロで印刷したい場合は選択ボタン4A12をクリックすることによって、カラーの条件を入力する。または、ドキュメント5を、2ページを1つの面に集約して印刷したい場合は選択ボタン4A21をクリックし、1ページを1つの面に印刷したい場合は選択ボタン4A22をクリックすることによって、集約の条件を入力する。または、ドキュメント5を低解像度(例えば、300dpi)で印刷したい場合は選択ボタン4A31をクリックし、標準的な解像度(例えば、600dpi)で印刷したい場合は選択ボタン4A32をクリックし、高解像度(例えば、1200dpi)で印刷したい場合は選択ボタン4A33をクリックすることによって、解像度の条件を入力する。
【0046】
または、ユーザは、ドキュメント5を用紙の2つの面のうちの一方の面のみに印刷したい場合は選択ボタン4A41をクリックし、両面に印刷したい場合は選択ボタン4A42をクリックすることによって、印刷面の条件を入力する。または、印刷セッションにおいてドキュメント5のデータを暗号化してやり取りする場合は選択ボタン4A51をクリックし、暗号化せずにやり取りする場合は選択ボタン4A52をクリックすることによって、印刷セッションの暗号化の条件を入力する。
【0047】
なお、条件提示機能を使用する場合は、ユーザは、選択ボタン4A11~4A52を操作せずに、時間指定ボタン4A6をクリックする。この場合の処理については、後述する。
【0048】
各項目の条件を入力し終えたら、ユーザは、完了ボタン4A7をクリックする。すると、第一の印刷条件受付部201は、条件入力画面4Aに対して入力された、各項目の条件を受け付ける。
【0049】
すると、印刷ジョブ実行指令部202は、PCプリントのジョブの実行を画像形成装置1に対して次のように指令する。
【0050】
印刷ジョブ実行指令部202は、第一の印刷条件受付部201によって受け付けられた、カラー、集約、解像度、および印刷面それぞれの条件の通りにドキュメント5を印刷するための印刷データ6Bを生成する。印刷データ6Bは、画像形成装置1に対応しているPDL(Page Description Language)で記述される。
【0051】
例えば、条件入力画面4Aにおいて選択ボタン4A12、4A21、4A33、および4A42がクリックされた場合、つまり、カラー、集約、解像度、および印刷面それぞれの条件として「フルカラー」、「2in1」、「高解像度」、および「両面」が受け付けられた場合は、ドキュメント5を用紙の両面に2in1でフルカラーでかつ高解像度で印刷するためにデータを、印刷データ6Bとして生成する。
【0052】
さらに、印刷ジョブ実行指令部202は、第一の印刷条件受付部201によって受け付けられた各項目の条件およびドキュメント5のページ数を示す条件データ6Cを生成する。
【0053】
そして、印刷ジョブ実行指令部202は、印刷データ6Bおよび条件データ6Cを画像形成装置1へ送信することによって、PCプリントのジョブの実行を画像形成装置1へ指令する。ただし、選択ボタン4A51がクリックされた場合つまり印刷セッションの条件として「暗号化」が受け付けられた場合は、印刷データ6Bおよび条件データ6Cを暗号化して送信する。選択ボタン4A52がクリックされた場合は、平文のまま送信する。
【0054】
画像形成装置1において、印刷データ6Bおよび条件データ6Cが受信されると、印刷ジョブ登録部102、印刷ジョブ実行部104、印刷実績登録部105、および所要時間算出部101によって次のように処理が実行される。なお、印刷データ6Bおよび条件データ6Cは、暗号化されている場合は、所要時間算出部101によって平文に復号される。
【0055】
所要時間算出部101は、条件データ6Cに基づいてドキュメント5の所要時間Taを算出する。所要時間Taは、プリントユニット10jが印刷を行っていないが既にウォームアップされている状態である場合においてPDLのデータを用いてドキュメントを印刷するのに掛かると予測される時間である。
【0056】
したがって、例えば、ドキュメント51の所要時間Taは、プリントユニット10jが他のドキュメント5の印刷を行っていない状態である場合においてドキュメント51の印刷データ6Bを用いてドキュメント51を印刷するのに掛かる時間である。ドキュメント51をドキュメント51の条件データ6Cに基づいて印刷するのに掛かる時間であると、言うこともできる。
【0057】
所要時間Taは、公知の方法によって算出することができる。例えば、次のように算出すればよい。
【0058】
単位所要時間テーブル6Dを予め用意しておく。単位所要時間テーブル6Dには、
図7のように、上述の4つの項目それぞれの条件の組合せごとの、ドキュメント5の1ページ当たりの平均的な所要時間が示されている。
【0059】
以下、ドキュメント5の1ページ当たりの平均的な所要時間を「単位所要時間Tm」と記載する。例えば、ドキュメント5を用紙の片面に2in1でフルカラーでかつ低解像度で印刷する場合の単位所要時間Tmとして単位所要時間Tm1が単位所要時間テーブル6Dに示されている。
【0060】
また、4つの項目それぞれの条件の組合せを「印刷条件グループ」と記載する。本例では、カラー、集約、解像度、および印刷面それぞれの項目の条件が2個、2個、3個、および2個なので、2×2×3×2組、つまり、24組の印刷条件グループがある。
【0061】
単位所要時間Tm1~Tm24は、印刷条件グループごとにドキュメント5をプリントユニット10jに印刷させ、印刷するのに掛かる時間を計測することによって求めることができる。
【0062】
例えば、単位所要時間Tm1は、次のように求めることができる。複数のドキュメント5を順次、用紙の片面に2in1でフルカラーでかつ低解像度でプリントユニット10jにさせ、各ドキュメントを印刷するのに掛かる時間を計測する。そして、各ドキュメント5の計測した時間の合計を各ドキュメント5のページ数の合計で割った値を、単位所要時間Tm1として算出する。
【0063】
なお、単位所要時間テーブル6Dは、実績データ記憶部106などに記憶させておけばよい。
【0064】
所要時間算出部101は、単位所要時間テーブル6Dに示される単位所要時間Tm1~Tm24のうちの、条件データ6Cに示される印刷条件グループに対応する単位所要時間Tmを選出する。そして、選出した単位所要時間Tmと条件データ6Cに示されるページ数との積を、所要時間Taとして算出する。例えば、条件データ6Cに4つの項目の条件として「モノクロ」、「2in1」、「高解像度」、および「両面」が示され、ページ数として「3」が示される場合は、単位所要時間Tm22と「3」との積が、所要時間Taとして算出される。
【0065】
印刷ジョブ登録部102は、ユニークなコードをジョブコードとして発行し、ジョブデータ6Eを生成してジョブデータ記憶部103に記憶させる。
【0066】
ジョブデータ6Eには、
図8に示すように、発行したジョブコード、受付時刻Pa、および所要時間算出部101によって算出された所要時間Taが示される。受付時刻Paは、印刷データ6Bおよび条件データ6Cが受信された時刻である。さらに、ジョブデータ6Eには、印刷データ6Bが含まれている。
【0067】
印刷ジョブ実行部104は、ジョブデータ記憶部103に記憶されているジョブデータ6Eに含まれる印刷データ6Bを用いてジョブを実行する。具体的には、その印刷データ6Bを用いてドキュメント5を用紙に印刷する。ただし、ジョブデータ6Eが複数、ジョブデータ記憶部103に記憶されている場合は、受付時刻Paが早いジョブデータ6Eから順に用いてジョブを実行する。
【0068】
ジョブを実行し終えると、印刷ジョブ実行部104は、そのジョブデータ6Eをジョブデータ記憶部103から削除する。
【0069】
印刷実績登録部105は、印刷ジョブ実行部104がジョブを実行し終えると、実績データ6Fを生成し実績データ記憶部106に記憶させる。
【0070】
実績データ6Fには、
図9のように、そのジョブのジョブコード、そのジョブの条件データ6Cに示される条件およびページ数、および実績時間Tbが示される。実績時間Tbは、そのジョブを実行し始めてから実行し終えるまでに掛かった時間である。
【0071】
ジョブが実行されるごとに印刷実績登録部105によって実績データ6Fが生成され実績データ記憶部106に記憶される。よって、実績データ6Fが実績データ記憶部106が蓄積される。
【0072】
なお、所要時間算出部101は、単位所要時間Tmを単位所要時間テーブル6Dから選出する代わりに、実績データ記憶部106に記憶されている実績データ6F(
図9参照)に基づいて単位所要時間Tmを算出することができる。そして、算出した単位所要時間Tmと条件データ6Cに示されるページ数との積を、所要時間Taとして算出してもよい。
【0073】
所要時間算出部101は、印刷データ6Bおよび条件データ6Cが受信されると、4つの項目それぞれの条件つまり印刷条件グループが、条件データ6Cに示される印刷条件グループと同じである実績データ6Fを、実績データ記憶部106から読み出す。
【0074】
例えば、「モノクロ」、「2in1」、「高解像度」、および「片面」が条件データ6Cに示される場合は、これらと同じものを示す実績データ6Fを実績データ記憶部106から読み出す。このような実績データ6Fが複数記憶されている場合は、このような実績データ6Fをすべて読み出す。または、新しいものから優先的に所定の個数(例えば、5つ)だけ読み出してもよい。
【0075】
そして、所要時間算出部101は、読み出した実績データ6Fに示される実績時間Tbの合計を、読み出した実績データ6Fに示されるページ数の合計で割った値を、単位所要時間Tmとして算出する。例えば、実績時間Tbの合計がTs1でありページ数の合計がSである場合は、Ts1/S、が単位所要時間Tmとして算出される。
【0076】
図10は、条件選択画面4Bの例を示す図である。
図11は、回答データ6H1の例を示す図である。
図12は、メッセージ領域4B2に表示されるメッセージの例を示す図である。
【0077】
ところで、ユーザは、条件提示機能を使用する場合は、条件入力画面4A(
図6参照)の時間指定ボタン4A6をクリックすればよい。すると、画像形成装置1の各部および端末装置2の各部は、次のように処理を行う。
【0078】
端末装置2において、完了待時間問合部203は、時間指定ボタン4A6がクリックされると、問合データ6Gを画像形成装置1へ送信することによって、印刷する対象のドキュメント5を印刷し終えるまでに掛かる時間を画像形成装置1へ問い合わせる。問合データ6Gには、ドキュメント5のページ数が示されている。以下、
図5に示したドキュメント51を印刷し終えるまでに掛かる時間を問い合わせる場合を例に説明する。
【0079】
画像形成装置1において、完了待時間算出部107は、問合データ6Gを受信すると、印刷条件グループごとに、その印刷条件グループでドキュメント51のPCプリントジョブを実行し終えるまでに掛かると予測される時間を算出する。以下、この時間を「完了待時間Tc」と記載する。
【0080】
本実施形態では、
図7に示した通り、24組の印刷条件グループがある。したがって、完了待時間算出部107は、24組の印刷条件グループそれぞれの完了待時間Tcを算出する。
【0081】
完了待時間算出部107は、各印刷条件グループの完了待時間Tcを、例えば次の(1)式によって算出する。
Tck=Td×F1+Tmk×Ca+Tp+Tq …… (1)
「Tck」は、k組目の印刷条件グループの完了待時間Tcである。「Td」は、プリントユニット10jをウォームアップするのに要する時間である。「F1」は、時間Tdを行う必要があるか否かを示す変数である。プリントユニット10jが現在、既にウォームアップされている場合は「F1」に「0」が代入され、未だウォームアップされていない場合は「1」が代入される。ウォームアップの要否は、オペレーティングシステムまたはプリントユニット10jに問い合わせればよい。時間Tdは、予め、ウォームアップを実験的に行いウォームアップに掛かる時間を計測することによって求めておけばよい。室温に応じて時間Tdの値を変えてもよい。
【0082】
「Tmk」は、k組目の単位所要時間Tmである。単位所要時間Tmは、単位所要時間テーブル6Dから読み出してもよいし、上述のように、実績データ記憶部106に記憶されている実績データ6Fに基づいて算出してもよい。「Ca」は、問合データ6Gに示されるページ数である。
【0083】
「Tp」は、印刷のフェーズの実行待ちのジョブのそれぞれの所要時間Taの合計である。それぞれの所要時間Taは、ジョブデータ記憶部103に記憶されている、それぞれのジョブのジョブデータ6Eに示されている。
【0084】
「Tq」は、印刷のフェーズの実行中のジョブが完了するまでに掛かる時間である。Tq時間は、そのジョブのジョブデータ6Eに示される所要時間Taから、そのジョブの印刷のフェーズが開始してから現在までの経過時間Trを引くことによって算出される。
【0085】
例えば、ウォームアップが必要であり、問合データ6Gにページ数として「3」が示され、印刷のフェーズの実行待ちのジョブが2つありそれぞれの所要時間Taが所要時間Ta2、Ta3であり、かつ、実行中のジョブの所要時間TaがTa1でありかつ経過時間Trが経過時間Tr1である場合に、完了待時間算出部107は、「モノクロ」、「低解像度」、「2in1」、および「両面」の組合せ、つまり、10組目の印刷条件グループの完了待時間Tcとして、
Tc10=Td×1+Tm10×3+(Ta2+Ta3)+(Ta1-Tr1)
を算出する。
【0086】
ところで、端末装置2が印刷データ6Bを生成し始めてから印刷データ6Bが画像形成装置1で受信されるまでに掛かる時間も、完了待時間Tcに考慮したほうが望ましい。また、印刷データ6Bを暗号化してやり取りする場合と暗号化せずやり取りする場合とで、この時間が異なる。
【0087】
そこで、完了待時間算出部107は、次の(2)式および(3)式によって完了待時間Tfおよび完了待時間Tgを完了待時間Tcとして算出してもよい。
Tfk=Td×F1+Tmk×Ca+Tp+Tq+Th×Ca …… (2)
Tgk=Td×F1+Tmk×Ca+Tp+Tq+Ti×Ca …… (3)
「Tfk」は、k組目の印刷条件グループの完了待時間Tfである。「Tgk」は、k組目の印刷条件グループの完了待時間Tgである。
【0088】
「Th」は、端末装置2が印刷データ6Bを生成し始めてから印刷データ6Bが画像形成装置1で受信されるまでに掛かる、ドキュメント5の1ページ当たりの時間である。ただし、暗号化されずに印刷データ6Bが端末装置2から画像形成装置1へ送信される場合の時間である。
【0089】
「Ti」は、端末装置2が印刷データ6Bを生成し始めてから、印刷データ6Bが暗号化されて端末装置2と画像形成装置1との間でやり取りされ、画像形成装置1において印刷データ6Bが復号されるまでに掛かる、ドキュメント5の1ページ当たりの時間である。
【0090】
時間Thおよび時間Tiは、予め、実験的に印刷データ6Bおよび条件データ6Cの生成および送受信などを行うことによって、求めておけばよい。
【0091】
以下、完了待時間算出部107が(2)式および(3)式によって完了待時間Tcを算出した場合を例に説明する。
【0092】
本例によると、完了待時間算出部107による処理の結果、24組の印刷条件グループそれぞれについて、暗号化を行う場合および行わない場合それぞれの完了待時間Tcが算出される。言い換えれば、印刷条件グループと暗号化の条件との組合せごとに、1つの完了待時間Tcが算出される。以下、印刷条件グループと暗号化の条件との組合せを「ジョブ条件グループ」と記載する。本例では、印刷条件グループが24組あり、暗号化の条件が2つあるので、24×2、つまり、48組のジョブ条件グループが存在する。
【0093】
回答データ送信部108は、回答データ6Hを端末装置2へ送信する。回答データ6Hには、各ジョブ条件グループの内容(構成する条件)および完了待時間Tcが示される。
【0094】
ところで、本例によると、48組のジョブ条件グループそれぞれについて、内容および完了待時間Tcが回答データ6Hに示される。これらの情報は、ユーザがドキュメント5を印刷する条件を選択するために用いられる。しかし、ジョブ条件グループの組数が多いと、ユーザにとって、所望の条件を見つけるのが大変である。
【0095】
そこで、完了待時間算出部107は、48組のジョブ条件グループのうちの所定の組数のジョブ条件グループを選出し、選出したジョブ条件グループについてのみ内容および完了待時間Tcが示されるように回答データ6Hを生成してもよい。ジョブ条件グループは、過去に印刷の条件として指定された回数が多いものから優先的に選出すればよい。または、選出するジョブ条件グループをユーザごとに予め設定おいてもよい。そして、端末装置2を操作するユーザに応じたジョブ条件グループを選出すればよい。
【0096】
端末装置2において、回答データ6Hが受信されると、第二の印刷条件受付部204は、条件入力画面4Aに代えて、条件選択画面4Bをタッチパネルディスプレイ20eに表示させる。
【0097】
条件選択画面4Bには、
図10に示すように、回答データ6Hに内容および完了待時間Tcが示されるジョブ条件グループごとの選択ボタン4B1が配置されている。各選択ボタン4B1には、それに対応するジョブ条件グループの完了待時間Tcがボタン名として示されている。
【0098】
例えば、回答データ6Hとして、
図11に示すような回答データ6H1が受信された場合は、それぞれのボタン名が「2分」、「5分」、「8分」、および「12分」である選択ボタン4B11、4B12、4B13、および4B14が選択ボタン4B1として配置される。
【0099】
ユーザは、いずれかの選択ボタン4B1を、マウスポインタを重ねることによってフォーカスさせることができる。
【0100】
いずれかの選択ボタン4B1にマウスポインタが重なると、第二の印刷条件受付部204は、回答データ6Hに示される、その選択ボタン4B1に対応するジョブ条件グループの内容を、メッセージ領域4B2に提示する。
【0101】
例えば、回答データ6H1が回答データ6Hとして受信された場合は、第二の印刷条件受付部204は、選択ボタン4B11~4B14それぞれのマウスポインタが重なった際に、
図12(A)~(D)のようにジョブ条件グループの内容をメッセージ領域4B2に提示する。なお、1行目の「かなりお急ぎのコースです。」、「ややお急ぎのコースです。」、「標準コースです。」、および「じっくりコースです。」の各メッセージは、完了待時間Tcに応じて配置される。例えば、完了待時間Tcが3分未満であれば、「かなりお急ぎのコースです。」のメッセージが配置される。3分以上かつ6分未満であれば、「ややお急ぎのコースです。」のメッセージが配置される。6分以上かつ10分未満であれば、「標準コースです。」のメッセージが配置される。10分以上であれば、「じっくりコースです。」のメッセージが配置される。
【0102】
ユーザは、必要に応じていずれかの選択ボタン4B1にマウスポインタを合わせてジョブ条件グループの内容を確認する。ドキュメント5を印刷する条件として好ましいジョブ条件グループを決める。ボタン名が表わす完了待時間Tcのみを参照して決めてもよいし、メッセージ領域4B2に示される内容のみを参照して決めてもよいし、両方を参照して決めてもよい。そして、決めたジョブ条件グループに対応する選択ボタン4B1をクリックし、完了ボタン4B3をクリックする。
【0103】
すると、印刷ジョブ実行指令部202は、クリックされた選択ボタン4B1に対応するジョブ条件グループの通りにドキュメント5を印刷するための印刷データを、画像形成装置1のPDLで生成し、印刷データ6Bとして画像形成装置1へ送信する。この際に、そのジョブ条件グループの内容およびドキュメント5のページ数を示すデータを条件データ6Cとして画像形成装置1へ送信する。なお、そのジョブ条件グループに暗号化を行うという条件が含まれている場合は、印刷データ6Bおよび条件データ6Cを暗号化して送信する。
【0104】
例えば、選択ボタン4B14がクリックされ、完了ボタン4B3がクリックされた場合は、印刷ジョブ実行指令部202は、ドキュメント5を、ページの集約を行わず用紙の片面にフルカラーでかつ高解像度で印刷するためにデータを、印刷データ6Bとして生成する。そして、印刷データ6Bおよび条件データ6Cを暗号化して画像形成装置1へ送信する。
【0105】
図13は、画像形成装置1の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
図14は、端末装置2の全体的な処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【0106】
次に、画像形成装置1および端末装置2それぞれの全体的な処理の流れの例を、
図5に示したドキュメント51を印刷する場合を例に、フローチャートを参照しながら説明する。
【0107】
画像形成装置1は、印刷ジョブプログラム10Pに基づいて、
図13に示す手順で処理を実行する。一方、端末装置2は、プリンタドライバ20Pに基づいて、
図14に示す手順で処理を実行する。
【0108】
ユーザは、ドキュメント51のファイル6Aを端末装置2のアプリケーションで開き、印刷のコマンドを入力する。
【0109】
すると、端末装置2は、条件入力画面4A(
図6参照)を表示する(
図14の#721)。時間指定ボタン4A6がクリックされると、問合データ6Gを画像形成装置1へ送信することによって、ドキュメント51を印刷し終えるまでに掛かる時間を画像形成装置1へ問い合わせる(#722)。
【0110】
画像形成装置1は、問合データ6Gを受信すると(
図13の#701でYes)、単位所要時間テーブル6D(
図7参照)または実績データ6F(
図9参照)を読み出すとともに(#702)、プリントユニット10jがウォームアップされているか否かをチェックし(#703)、ジョブ条件グループごとの完了待時間Tcを算出する(#704)。そして、完了待時間Tcなどを示すデータを回答データ6H(
図11参照)として端末装置2へ送信する(#705)。
【0111】
端末装置2は、回答データ6Hを受信すると(#723)、条件入力画面4Aに代えて条件選択画面4B(
図10参照)を表示する(#724)。そして、いずれかの選択ボタン4B1にマウスポインタが重なるごとに(#725でYes)、回答データ6Hに示される、マウスポインタが重なった選択ボタン4B1に対応するジョブ条件グループの内容を、メッセージ領域4B2に提示する(#726)。
【0112】
いずれかの選択ボタン4B1がクリックされ、完了ボタン4B3がクリックされると(#727でYes)、クリックされた選択ボタン4B1に対応するジョブ条件グループに基づいて、印刷データ6Bおよび条件データ6Cを生成し画像形成装置1へ送信する(#728、#729)。
【0113】
画像形成装置1は、印刷データ6Bおよび条件データ6Cを受信すると(#706)、ドキュメント51のジョブデータ6E(
図8参照)を生成し、ドキュメント51を印刷するまでジョブデータ記憶部103によって一時的に記憶する(#707)。そして、ドキュメント51の順番が来たら、印刷データ6Bに基づいてドキュメント51を用紙に印刷し(#708)、ドキュメント51の実績データ6Fを実績データ記憶部106によって記憶する(#709)。
【0114】
本実施形態によると、ユーザが急いでいる場合に、従来よりも確実にユーザの希望する状態のその印刷物を提供することができる。また、時間に余裕がある場合は、時間に応じた品質の印刷物を生成することができる。
【0115】
図15は、画像形成装置1の全体的な構成の変形例を示す図である。
図16は、条件選択画面4Cの例を示す図である。
図17は、条件選択画面4Bの変形例を示す図である。
図18は、閾値指定画面4Dの例を示す図である。
図19は、条件選択画面4Bの変形例を示す図である。
【0116】
本実施形態では、画像形成装置1は、PCプリント機能によってドキュメント5を印刷する際の完了待時間Tcを算出したが、他の機能によってドキュメント5を印刷する際の完了待時間Tcも算出することができる。
【0117】
例えば、画像形成装置1は、スキャンユニット10iで読み取った画像を印刷する機能すなわちコピー機能によってドキュメント5を印刷する際の完了待時間Tcを算出することができる。
【0118】
ただし、この場合は、画像形成装置1は、スキャンユニット10iのADF(Auto Document Feeder)にセットされた、ドキュメント5の用紙の束の厚さを厚み検出手段によって計測し、計測した厚さおよび用紙1枚当たりの厚さに基づいてページ数を算出すればよい。そして、算出したページ数を、条件データ6Cに示されるページ数の代わりに用い、かつ、タッチパネルディスプレイ10eに入力された4つの項目それぞれの条件を、条件データ6Cに示される印刷条件グループの代わりに用いることによって、所要時間Ta(
図8参照)を算出する。また、(2)式および(3)式ではなく(1)式を用い、かつ、算出したページ数を(1)式のページ数Caの代わりに用いて完了待時間Tckを算出する。条件選択画面4B(
図10参照)に相当する画面は、タッチパネルディスプレイ10eによって表示する。
【0119】
コピー機能による印刷の場合は、上述の4つの項目(印刷解像度、印刷面、カラー、および集約)それぞれの条件だけでなく読取解像度の条件が加わることがある。そこで、これら5つの項目それぞれの条件の組合せを印刷条件グループとして、完了待時間Tckを算出してもよい。さらに、この場合に、プリントユニット10jの印刷速度よりもスキャンユニット10iの読取速度のほうが遅いならば、(1)式に示す各パラメータだけでなく読取速度をもパラメータとして用いた式によって完了待時間Tckを算出してもよい。
【0120】
または、画像形成装置1は、ボックスに画像データが保存されている画像を印刷する機能すなわちボックス印刷機能によってドキュメント5を印刷する際の完了待時間Tcを算出することができる。
【0121】
ただし、この場合は、(2)式および(3)式ではなく(1)式を用いて完了待時間Tckを算出する。なお、画像データがPDLで記述されていない場合は、PDLに変換する時間を(1)式の右辺に加えてもよい。条件選択画面4Bに相当する画面は、タッチパネルディスプレイ10eによって表示する。
【0122】
本実施形態では、端末装置2は、1台の画像形成装置1のみに完了待時間Tcを問い合わせた。しかし、
図15のように印刷システム100に複数の画像形成装置1が備わっている場合は、複数の画像形成装置1に問い合わせてもよい。この場合は、問合せ用のプログラムを端末装置2にインストールしておき、このプログラムによって各画像形成装置1に問い合わせればよい。
【0123】
端末装置2は、例えば画像形成装置1A、1Bに問い合わせた場合は、画像形成装置1A、1Bそれぞれから受信した回答データ6Hに基づいて、
図16のような、それぞれの完了待時間Tcを示す条件選択画面4Cを表示すればよい。選択ボタン4C11~4C14のいずれかにマウスポインタが重なった場合は、画像形成装置1Aから得られた回答データ6Hに基づいて、メッセージ領域4C3に、マウスポインタが重なった選択ボタン4C1に対応するジョブ条件グループの内容を表示する。同様に、選択ボタン4C21~4C24のいずれかにマウスポインタが重なった場合は、画像形成装置1Bから得られた回答データ6Hに基づいて、メッセージ領域4C3に、マウスポインタが重なった選択ボタン4C2に対応するジョブ条件グループの内容を表示する。
【0124】
そして、端末装置2は、選択ボタン4C11~4C14のいずれかがクリックされ完了ボタン4C4がクリックされた場合は、クリックされた選択ボタン4C1に対応するジョブ条件グループに基づいて印刷データ6Bおよび条件データ6Cを生成し画像形成装置1Aへ送信する。同様に、選択ボタン4C21~4C24のいずれかがクリックされ完了ボタン4C4がクリックされた場合は、クリックされた選択ボタン4C2に対応するジョブ条件グループに基づいて印刷データ6Bおよび条件データ6Cを生成し画像形成装置1Bへ送信する。
【0125】
本実施形態では、端末装置2は、いずれかの選択ボタン4B1にマウスポインタが重なった場合に、その選択ボタン4B1に対応するジョブ条件グループの内容などをメッセージ領域4B2に表示させたが、さらに、
図17(A)または(B)のように、ジョブ条件グループの各条件を表現したイラスト(いわゆる疑似プレビュー画像)を表示させてもよい。
【0126】
本実施形態では、完了待時間Tcを問い合わせる際に、ユーザは時間指定ボタン4A6を単にクリックするだけであったが、ドキュメント5の印刷を何分以内に完了させたいのかを指定することができるように完了待時間問合部203を構成してもよい。
【0127】
具体的には、時間指定ボタン4A6がクリックされると、完了待時間問合部203は、
図18のような閾値指定画面4Dをタッチパネルディスプレイ20eに表示させる。ユーザは、テキストボックス4D1に、印刷の完了までの所望する時間を入力し、指定ボタン4D2をクリックする。
【0128】
すると、完了待時間問合部203は、問合データ6Gとして、ドキュメント5のページ数だけでなくテキストボックス4D1に入力された時間を示すデータを画像形成装置1へ送信する。
【0129】
画像形成装置1において、回答データ送信部108は、完了待時間算出部107によって完了待時間Tcが算出されたジョブ条件グループのうちの、完了待時間Tcが問合データ6Gに示される時間以内であるものを選出する。そして、選出したジョブ条件グループそれぞれの内容および完了待時間Tcを示すデータを回答データ6Hとして端末装置2へ送信する。
【0130】
端末装置2において、第二の印刷条件受付部204は、回答データ6Hに基づいて条件選択画面4Bを表示させる。その結果、例えば、テキストボックス4D1に「6」と入力された場合は、条件選択画面4Bが
図19のように表示される。なお、時間が指定されなかった場合は、
図10に示したように表示される。
【0131】
本実施形態では、条件選択画面4Bによって完了待時間Tcを提示したが、他のジョブを考慮しない時間、つまり、Td×F1+Tmk×Ca、を完了待時間Tcの代わりに提示してもよい。
【0132】
本実施形態では、選択ボタン4B1を、マウスポインタを重ねることによってフォーカスしたが、指でタップすることによってフォーカスしてもよい。
【0133】
本実施形態では、完了待時間Tcを画像形成装置1が算出したが、端末装置2が算出してもよい。この場合は、端末装置2は、完了待時間Tcを算出するのに必要なデータを画像形成装置1からダウンロードすればよい。または、印刷システム100にサーバを設け、サーバによって完了待時間Tcを算出してもよい。
【0134】
その他、印刷システム100、画像形成装置1、端末装置2の全体または各部の構成、印刷の条件の組合せ、所要時間Taの算出方法、完了待時間Tcの算出方法、処理内容、処理順序、画面の構成、データの構成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0135】
100 印刷システム
1、1A、1B 画像形成装置(プリンタ)
104 印刷ジョブ実行部(印刷制御手段)
107 完了待時間算出部(算出手段)
108 回答データ送信部(回答手段)
10j プリントユニット(印刷手段)
2 端末装置
202 印刷ジョブ実行指令部(指令手段)
203 完了待時間問合部(問合せ手段)
204 第二の印刷条件受付部(提示手段)
Tc 完了待時間(予測時間)
4A11~4A52 選択ボタン(選択肢)
4B 条件選択画面
4C 条件選択画面
5 ドキュメント
51 ドキュメント