IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許-産業車両 図1
  • 特許-産業車両 図2
  • 特許-産業車両 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20220113BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
F02D29/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018025361
(22)【出願日】2018-02-15
(65)【公開番号】P2019142599
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】田中 博之
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘和
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059010(JP,A)
【文献】特開2014-209005(JP,A)
【文献】特開2015-067394(JP,A)
【文献】特開2007-099413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に搭載されるエンジンと、
前記エンジンからの駆動力が伝達される変速機と、
前記エンジンの回転数をアクセル開度に応じて制御する車両制御装置と、を備え、
エコモードが選択されたときにアクセル開度に応じたエンジントルクの割合を通常モードが選択されたときのアクセル開度に応じたエンジントルクの割合よりも抑えることで前記エンジンにトルクの制限をかける産業車両であって、
前記変速機による複数段の変速を可能とする走行モードと、前記変速機による変速を不可とし、低速に固定する作業モードと、を切り替える作業モード切替手段を備え、
前記作業モード切替手段は、前記車体の運転席に設けられた作業モードスイッチであり、
前記車両制御装置は、前記作業モードスイッチの操作により前記作業モードが選択されると、前記エコモードによる前記エンジンのトルク制限を無条件かつ直ちに解除し、
作業モードスイッチの操作により前記作業モードから前記走行モードに切り替わったとき、前記エコモードに切り替えることを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記変速機は、前記走行モードにて第一速および第二速に切り替え可能であり、
前記車両制御装置は、前記作業モードにおいて前記変速機により第一速に固定することを特徴とする請求項1記載の産業車両。
【請求項3】
前記通常モードから前記エコモードに切り替えるエコモード切替手段を備え、
前記車両制御装置は、前記作業モードから前記走行モードに切り替わったとき、前記エコモード切替手段の状態に応じて前記通常モード又は前記エコモードに切り替えることを特徴とする請求項1又は2記載の産業車両
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術としては、例えば、通常モードからエコモードに切り替えるエコモードスイッチを備え、エコモードにおいてエンジンのトルク制限をかける産業車両が知られている(特許文献1を参照)。特許文献1に開示された産業車両は、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、トルク制限を解除するトルク制限解除手段と、を備える。トルク制限解除手段は、トルク制限がかかっているエコモードの状態において、アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度が予め定めた値以上、かつ、車速が予め定めた値以上および荷役装置上昇中の少なくとも一方が成立した状態が予め定めた時間連続したならば、トルク制限を解除する。特許文献1に開示された産業車両によれば、エコモードにおいて車両の状態に応じて燃費性能の向上と車両最大性能を両立するようにトルク制限を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-59010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フォークリフトには、変速機能を有するエンジンを搭載し、変速機による変速を可能とする走行モードと、低速に固定される作業モードとを切り替え可能とするフォークリフトが存在する。この種のフォークリフトでは、平坦路の走行時には走行モードに切り替えられ、充分なエンジントルクを必要とする登坂時には作業モードに切り替えられる。走行モードと作業モードとの切り替えは、作業モードスイッチ等の作業モード切替手段によって行われる。この種のフォークリフトには、特許文献1に開示された産業車両のようにエコモードへの切り替え機能が備えられる場合がある。この場合、フォークリフトは、エコモードの状態にある走行モードから作業モードに切り替えられても、エコモードによるトルク制限が解除されず、作業モードに必要なエンジントルクが得られないという問題がある。その理由は、エコモードが解除されるためには、アクセル開度が予め定めた値以上、かつ、車速が予め定めた値以上および荷役装置上昇中の少なくとも一方が成立した状態が予め定めた時間連続する必要があるためである。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、走行モードから作業モードに切り替わっても必要なエンジントルクを得ることができる産業車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体に搭載されるエンジンと、前記エンジンからの駆動力が伝達される変速機と、前記エンジンの回転数をアクセル開度に応じて制御する車両制御装置と、を備え、エコモードが選択されたときにアクセル開度に応じたエンジントルクの割合を通常モードが選択されたときのアクセル開度に応じたエンジントルクの割合よりも抑えることで前記エンジンにトルクの制限をかける産業車両であって、前記変速機による複数段の変速を可能とする走行モードと、前記変速機による変速を不可とし、低速に固定する作業モードと、を切り替える作業モード切替手段を備え、前記作業モード切替手段は、前記車体の運転席に設けられた作業モードスイッチであり、前記車両制御装置は、前記作業モードスイッチの操作により前記作業モードが選択されると、前記エコモードによる前記エンジンのトルク制限を無条件かつ直ちに解除し、作業モードスイッチの操作により前記作業モードから前記走行モードに切り替わったとき、前記エコモードに切り替えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、エコモードの状態にある走行モードから作業モード切替手段により作業モードが選択されて作業モードに切り替わると、制御装置は、作業モードを優先し、エコモードによるエンジンのトルク制限を無条件かつ直ちに解除する。このため、登坂時や荷役時に走行モードから作業モードに切り替えると、エコモードによるエンジンのトルク制限が解除され、必要なエンジントルクを速やかに得ることができる。
また、作業モードスイッチの操作により作業モードから走行モードに切り替わると、エコモード切替手段の状態に関わらず、エコモードに移行するため、エコモードにおいて車両の状態に応じて燃費性能の向上と車両最大性能を両立することができる。
【0008】
また、上記の産業車両において、前記変速機は、前記走行モードにて第一速および第二速に切り替え可能であり、前記車両制御装置は、前記作業モードにおいて前記変速機により第一速に固定する構成としてもよい。
この場合、作業モードでは第一速に固定されるため、登坂時や荷役時にエンジントルクが不足することはない。
【0009】
また、上記の産業車両において、前記通常モードから前記エコモードに切り替えるエコモード切替手段を備え、前記車両制御装置は、前記作業モードから前記走行モードに切り替わったとき、前記エコモード切替手段の状態に応じて前記通常モード又は前記エコモードに切り替える構成としてもよい。
この場合、例えば、走行モードから作業モードに切り替わる前に、エコモード切替手段がエコモードへ切り替えられていると、作業モードから走行モードに切り替わったとき、エコモードへ復帰する。一方、エコモード切替手段が作業モードに切り替わる前にエコモードへ切り替えられていないと、作業モードから走行モードに切り替わっても、エコモードへ移行しない。つまり、オペレータの意思によって操作したエコモード切替手段の操作と一致する通常モード又はエコモードへ切り替わるため、オペレータは作業モードから走行モードに切り替わっても運転フィーリングの違和感を覚えることはない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、走行モードから作業モードに切り替わっても必要なエンジントルクを得ることができる産業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るフォークリフトの全体構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係るフォークリフトの運転状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る産業車両について図面を参照して説明する。本実施形態では、産業車両としてのフォークリフトについて説明する。本実施形態のフォークリフトは、エンジン(内燃機関)の駆動力により走行するエンジンフォークリフトである。
【0014】
図1に示すように、フォークリフト10は、車体11の前部に荷役装置12を備えている。車体11の中央付近には運転席13が設けられている。車体11の前部には前輪としての駆動輪14が設けられ、車体11の後部には後輪としての操舵輪15が設けられている。
【0015】
荷役装置12はアウタマスト16およびインナマスト17を有するマスト18を備えている。左右一対のアウタマスト16には、アウタマスト16の内側にてスライド可能なインナマスト17が備えられている。車体11とアウタマスト16との間には、油圧により作動するティルトシリンダ19が設置されている。マスト18はティルトシリンダ19の作動により下端部を支点として前後方向に傾動する。マスト18には油圧により作動するリフトシリンダ20が設けられている。リフトシリンダ20の作動により、インナマスト17がアウタマスト16内でスライドして昇降する。マスト18には左右一対のフォーク22がリフトブラケット21を介して設けられ、リフトブラケット21はインナマスト17に対して昇降するように設けられている。
【0016】
フォークリフト10の車体11には、図2に示すように、エンジン23と、油圧ポンプ24と、油圧機構25と、変速機26と、が搭載されている。エンジン23は、フォークリフト10の走行動作および荷役動作の駆動源である。エンジン23の出力は、車両走行用の駆動力と荷役用のティルトシリンダ19およびリフトシリンダ20の作動用の駆動力となる。油圧ポンプ24はエンジン23によって駆動される。油圧ポンプ24は、エンジン23により駆動されると、車体11に設けた作動油タンク27から作動油を汲み上げ、汲み上げた作動油を油圧機構25へ吐出する。
【0017】
油圧機構25は、電磁式コントロールバルブ(図示略)を有する。油圧機構25は、コントロールバルブによりティルトシリンダ19およびリフトシリンダ20に対する作動油の供給と排出を制御する。ティルトシリンダ19およびリフトシリンダ20から排出された作動油は油圧機構25を介して作動油タンク27へ回収される。
【0018】
変速機26は、複数段の変速が可能な変速機であり、具体的には、第一速と、第二速とによる2段変速を可能とする変速機である。変速機26には、変速ソレノイド(図示せず)が備えられており、変速ソレノイドの作動により円滑な第一速又は第二速への切り替えが行われる。エンジン23には、変速機26、ディファレンシャルギヤ28を介して車軸29が連結されている。車軸29の両側には駆動輪14が配設されている。そして、エンジン23の出力は変速機26、ディファレンシャルギヤ28、車軸29を介して駆動輪14に伝達される。駆動輪14に対応する場所には、フォークリフト10の車速を検出する車速センサ30が配設されている。車速センサ30は、車速に応じた検出信号を出力する。
【0019】
ティルトシリンダ19はティルトレバー(図示せず)の操作により作動され、リフトシリンダ20は、リフトレバー(図示せず)の操作により作動される。図2ではティルトレバーおよびリフトレバーを荷役レバー31として示す。荷役レバー31の操作を検出する荷役レバー操作センサ32が備えられている。車体11にはフォークリフト10の加速を指示するアクセルペダル33が備えられている。アクセルペダル33の操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ34が設けられている。さらに、運転席13には通常モードからエコモードに切り替えるエコモード切替手段としてのエコモードスイッチ35および走行モードから作業モードに切り替える作業モード切替手段としての作業モードスイッチ36が設けられている。
【0020】
エコモードとは、アクセル開度に応じたエンジントルクの割合を通常モードが選択されたときのアクセル開度に応じたエンジントルクの割合よりも抑えるモードである。走行モードとは、変速機26による低速の第一速および高速の第二速のシフト変速が可能な変速可能モードであり、例えば、最高速などの車速が要求される平坦路を走行するときに主に使用されるモードである。作業モードは、変速機26により第一速に固定され、第二速が選択できない第一速固定モードである。作業モードは、主に、充分なエンジントルクを必要とする登坂時や荷役時に使用されるモードである。
【0021】
車体11には、車両制御装置37が搭載されている。車両制御装置37には、車速センサ30、荷役レバー操作センサ32、アクセル開度センサ34、エコモードスイッチ35および作業モードスイッチ36が電気的に接続されている。車両制御装置37は、車速センサ30、荷役レバー操作センサ32、アクセル開度センサ34、エコモードスイッチ35および作業モードスイッチ36からの信号により荷役レバー31の操作、アクセルペダル33の操作量(アクセル開度)、車速、エコモードスイッチ35のオン/オフ操作および作業モードスイッチ36の選択操作を検知する。車両制御装置37は油圧機構25を制御して所望の荷役動作を行わせるべくティルトシリンダ19、リフトシリンダ20の作動油の供給および排出を制御する。なお、エコモードスイッチ35および作業モードスイッチ36は、運転席13のインストルメントパネル(図示せず)に設けられている。
【0022】
車両制御装置37にはエンジン制御装置38が接続されている。エンジン制御装置38によりエンジン23が制御される。車両制御装置37は、エンジン制御装置38に指令信号を出力してエンジン回転数の制御を行う。具体的には、例えば、アクセルペダル33の踏み込み量によってエンジン回転数を制御する。車両制御装置37は、エコモードスイッチ35の操作に基づいてトルク制限指令をエンジン制御装置38に出力する。このトルク制限指令を受けたエンジン制御装置38はエンジン23を制御してエコモードにおいてエンジントルクの制限をかける。
【0023】
車両制御装置37は、変速機26に指令信号を出力してシフト変速を制御する。具体的には、エンジン回転数と車速に応じたシフト変速を制御し、第一速から第二速へのシフトアップおよび第二速から第一速へのシフトダウンが行われる。車両制御装置37は、作業モードスイッチ36の操作に基づいて、第一速に固定するようにシフト変速を規制するシフト変速規制指令を変速機26に出力する。このシフト変速規制指令を受けた変速機26は、シフト変速を規制して作業モードにおいて第一速に固定する。
【0024】
次に、本実施形態のフォークリフト10の作用について説明する。車両制御装置37は、エコモードスイッチ35のオン/オフにてエンジン制御装置38に対するトルク制限値を切り替える。通常モードではアクセル開度に応じた100%のトルクを出力するのに対し、エコモードではエンジントルクに制限がかけられ、エンジントルクを例えば通常モードの80%程度に抑える。エコモードでは、エンジントルクを通常モードよりも抑えることにより、エンジン23の燃料消費量が抑えられる。エンジントルクの制限値は、車両の積載可能重量や搭載されるエンジン23の仕様や作業の内容などを考慮して最適な制限値を予め定めている。
【0025】
車両制御装置37は、作業モードスイッチ36の選択により作業モードと走行モードを切り替える。走行モードでは車速とエンジン回転数に応じて第一速、第二速に変速可能とするのに対し、作業モードではシフト変速が規制され、第一速に固定される。作業モードでは、シフト変速を規制して第一速に固定されることにより、登坂時や荷役時に必要な高いエンジントルクの出力が可能となる。
【0026】
本実施形態では、図3に示すように、第1運転状態~第3運転状態という3つの運転状態が設定されている。第1運転状態は走行モードであって通常モードである運転状態であり、すなわち、エコモードスイッチ35はオフであって作業モードスイッチ36は走行モードに入っている。第1運転状態では、通常モードであるからアクセル開度に応じた100%のトルクを出力可能であり、また、走行モードであるため、エンジン回転数と車速に応じて第一速、第二速に変速可能である。したがって、燃料消費量は抑制され、車速は制限されない。
【0027】
第2運転状態は作業モードであって通常モードである運転状態であり、すなわち、作業モードスイッチ36は作業モードに入っている。第2運転状態では、エコモードスイッチ35のオン/オフに関わらず、エコモードによるトルク制限は解除される。このため、第2運転状態では、通常モードであるアクセル開度に応じた100%のトルクを出力可能である。また、第2運転状態は、作業モードであるから、第一速に固定されており、変速機26によるシフト変速が不可となる。したがって、車速は第一速に対応する低速に制限され、燃料消費量は抑制されない。第2運転状態では、アクセル開度に応じた100%のトルクを出力可能であって第一速に固定されているため、例えば、登坂時や荷役時に必要なエンジントルクの出力が可能である。
【0028】
第3運転状態は走行モードであってエコモードである運転状態であり、すなわち、エコモードスイッチ35はオンであって作業モードスイッチ36は走行モードに入っている。第3状態では、エコモードであるから通常モードのエンジントルクの80%程度に抑えられているが、走行モードであるため、エンジン回転数と車速に応じて第一速、第二速に変速可能である。したがって、車速は制限されないが、エンジントルクの制限により燃料消費量は抑制される。
【0029】
第1運転状態から第3運転状態の3つの運転状態は、エコモードスイッチ35および作業モードスイッチ36の操作により互いに切り替わる。第1運転状態において作業モードスイッチ36をオンにすると、フォークリフト10は第2運転状態に切り替わる(図3の矢印Aを参照)。第2運転状態において作業モードスイッチ36をオフにすると、フォークリフト10は第1運転状態に切り替わる(図3の矢印Bを参照)。第1運転状態においてエコモードスイッチ35をオンにすると、フォークリフト10は第3運転状態に切り替わる(図3の矢印Cを参照)。第3運転状態においてエコモードスイッチ35をオフにすると、フォークリフト10は第1運転状態に切り替わる(図3の矢印Dを参照)。
【0030】
ところで、第3運転状態において作業モードスイッチ36を作業モードに選択する場合が考えられる。第3運転状態において作業モードスイッチ36を作業モードに選択すると、車両制御装置37は、第一速に固定するようにシフト変速を規制するシフト変速規制指令をエンジン制御装置38に出力する。車両制御装置37は、シフト変速を規制するシフト変速規制指令を出力するとともに、エコモードスイッチ35がオンであっても、エンジン制御装置38に対するトルク制限値を切り替え、エコモードによるエンジントルクの制限を解除する。したがって、第3運転状態において作業モードスイッチ36を作業モードに選択すると、フォークリフト10は、アクセル開度に応じた100%のトルクを出力可能であって第一速に固定される第2運転状態に切り替わる(図3の矢印Eを参照)。
【0031】
本実施形態では、車両制御装置37は、第3運転状態から第2運転状態へ切り替わるときにエンジントルクの制限を無条件に解除するとともにエコモードスイッチ35をオンとして認識する。このため、第3運転状態から切り替わった第2運転状態において作業モードスイッチ36を走行モードに選択すると、フォークリフト10は第3運転状態に切り替わる(図3の矢印Fを参照)。
【0032】
本実施形態のフォークリフト10によれば以下の作用効果を奏する。
(1)作業モード切替手段としての作業モードスイッチ36の操作により、エコモードの状態にある走行モードから作業モードに切り替わると、車両制御装置37は、作業モードを優先するようにエコモードによるエンジントルクの制限を無条件に解除する。このため、登坂時や荷役時において走行モードから作業モードに切り替えると、エコモードによるエンジントルクの制限が直ちに解除され、必要なエンジントルクを速やかに得ることができる。
【0033】
(2)変速機26は、走行モードにて第一速および第二速に切り替え可能であり、車両制御装置37は、作業モードにおいて変速機26により第一速に固定する。登坂時や荷役時といった作業モードでは、フォークリフト10は第一速に固定されるため、エンジントルクが不足することはない。
【0034】
(3)第3運転状態から切り替わった第2運転状態において作業モードスイッチ36を走行モードに選択すると、車両制御装置37はエコモードスイッチ35のオンの状態に基づいてフォークリフト10の運転状態を第3運転状態に切り替える。したがって、オペレータによるエコモードスイッチ35に対する操作の意思が作業モードスイッチ36を走行モードに選択した後に再び反映される。したがって、オペレータは、第2運転状態から第3運転状態に切り替わることで運転フィーリングの違和感を覚えることはない。
【0035】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0036】
○ 上記の実施形態では、車両制御装置は、第3運転状態から第2運転状態へ切り替わるときにエンジントルクの制限を無条件で解除するとともにエコモード切替手段をオフと認識するとしたが、この限りではない。例えば、車両制御装置は、第3運転状態から第2運転状態へ切り替わるときにエンジントルクの制限を解除しても、エコモード切替手段のオンの状態を解除してもよい。この場合、第3運転状態から切り替わった第2運転状態において作業モード切替手段を走行モードにすると、車両制御装置がエコモード切替手段のオンの状態に基づいてフォークリフトの運転状態を第1運転状態に切り替えることができる。このため、作業モードから走行モードに切り替わると、フォークリフトの車両最大性能を引き出せる状態となり、オペレータはエンジントルクの不足感を感じることがない。
○ 上記の実施形態では、第1運転状態から切り替わった第2運転状態において作業モード切替手段をオフにしたとき第1運転状態へ切り替わるとしたがこの限りではない。例えば、第1運転状態から切り替わった第2運転状態において作業モード切替手段を走行モードに選択するとき、第3運転状態に切り替えるようにしてもよい。この場合、作業モードから走行モードに切り替わったときにエコモードによりエンジントルクが制限されるため、燃費性能の向上を図ることができる
上記の実施形態では、エンジンの変速機として第一速、第二速の2段変速の例について説明したが、変速機は2段変速に限定されない。変速機は、例えば、3段変速であってもよく、この場合、走行モードでは、第一速~第三速の切り替えを可能とし、作業モードでは第一速に固定することが好ましい。
○ エコモード切替手段のオン/オフによるトルク制御を直ちに切り替えるようにしてもよいが、エコモード切替手段のオン/オフによるトルク制御を一定時間をかけて緩やかに切り替えるようにしてもよい。
○ 上記の実施形態では、産業車両としてのフォークリフトについて説明したが、フォークリフトに限定されない。例えば、産業車両は牽引車両であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 フォークリフト
11 車体
12 荷役装置
23 エンジン
24 油圧ポンプ
26 変速機
30 車速センサ
31 荷役レバー
32 荷役レバー操作センサ
33 アクセルペダル
34 アクセル開度センサ
35 エコモードスイッチ
36 作業モードスイッチ
37 車両制御装置
38 エンジン制御装置
図1
図2
図3