(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】放熱パネルの製造方法及び治具
(51)【国際特許分類】
B26D 1/06 20060101AFI20220114BHJP
F24D 3/16 20060101ALI20220114BHJP
B21D 28/10 20060101ALI20220114BHJP
B26D 7/27 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B26D1/06 Z
F24D3/16 G
B21D28/10 Z
B26D7/27
(21)【出願番号】P 2018041986
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】飯島 滋子
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-270862(JP,A)
【文献】特開2005-14432(JP,A)
【文献】特開平7-198153(JP,A)
【文献】実開平5-17937(JP,U)
【文献】特開2005-186236(JP,A)
【文献】米国特許第6009612(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/06
F24D 3/16
B21D 28/10
B26D 7/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝を有した基板と、該基板の溝を有した面に貼着された伝熱シートとを有する伝熱シート付基板の該伝熱シートを溝に沿って割断し、生じたフラップを溝内に押し込むための放熱パネル製造用治具であって、
ベース板と、
該ベース板に前記溝のパターンに従って設けられた刃と、
該刃の両側面に沿って設けられた、生じたフラップを溝に押し込むための押し込み片と
を有することを特徴とする放熱パネル製造用治具。
【請求項2】
前記押し込み片は、ゴム又は合成樹脂製であることを特徴とする請求項1の放熱パネル製造用治具。
【請求項3】
前記刃は鋸刃状である請求項1又は2の放熱パネル製造用治具。
【請求項4】
前記ベース板に、前記基板の位置決め用のストッパが設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれかの放熱パネル製造用治具。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの放熱パネル製造用治具の上に伝熱シート付き基板を重ね、該基板を押圧して伝熱シートを割断し、生じたフラップを溝内に押し込む工程を有する放熱パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床暖房用温調パネル等に用いられる放熱パネルを製造する方法及びこの製造に用いられる治具に関する。
【背景技術】
【0002】
板状の基板の上面の溝に温水配管を引き回した温調パネルを床に敷設した床暖房構造が周知である。
【0003】
温調パネルは、上面に複数本の温水配管配設用の溝が設けられた略長方形状の基板の該溝に温水配管を引き回した後、この溝を覆うように、アルミ箔等よりなる放熱シートを貼り付けたものである。
【0004】
図4は特許文献1に記載の温調パネルの一部の拡大図、
図5は
図4のV-V線拡大断面図である。なお、
図4,5では放熱シートの図示を省略している。
【0005】
図4の温調パネル1は、長方形状の主基板Aと、該主基板Aの短辺部分に沿う副基板B,C,D,E,F等を有している。主基板Aにあっては、溝2は該主基板Aの長手方向に直線状の延在している。副基板B~Fにあっては、溝3は湾曲している。
【0006】
副基板Cにあっては、各溝3は、隣接する主基板A,Aの溝2,2同士を繋ぐように略コ字形に延在している。
【0007】
主放熱パネルの溝2には、
図5に示すように、均熱シート4と称されるアルミや銅などよりなる伝熱部材が装着されている。この均熱シート4は、
図6に示されるように、U字形断面部4aと、該U字形断面部4aの両端からそれぞれ反対方向に張り出すフランジ部4bとを有している。この均熱シート4は温水配管5の熱を温調パネル1の上面に効率よく伝達させるためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
副基板B~Fにあっては、溝3は湾曲しているため、
図6に示す一直線状の均熱シート4を装着することはできない。そのため、
図7に示すように、溝付きの基板Bの表面にアルミシート7を貼ったものに対し、溝3に沿ってアルミシート7にカッター等により切り込みを入れ、次いで切り込みに沿う部分を指先で溝3内に押し込み、フラップ7aを溝3の側壁面に沿わせるようにしている。この作業は、作業員による人手作業によって行われるため、温調パネル用基板の製造に手間がかかっていた。
【0010】
本発明は、温調パネル等に用いられる放熱パネルを容易に製造することができる方法とそのための治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の放熱パネル製造用治具は、溝を有した基板と、該基板の溝を有した面に貼着された伝熱シートとを有する伝熱シート付基板の該伝熱シートを溝に沿って割断し、生じたフラップを溝内に押し込むための放熱パネル製造用治具であって、ベース板と、該ベース板に前記溝のパターンに従って設けられた刃と、該刃の両側面に沿って設けられた、生じたフラップを溝に押し込むための押し込み片とを有する。
【0012】
本発明の一態様では、前記押し込み片は、ゴム又は合成樹脂製である。
【0013】
本発明の一態様では、前記刃は鋸刃状である。
【0014】
本発明の一態様では、前記ベース板に、前記基板の位置決め用のストッパが設けられている。
【0015】
本発明の放熱パネルの製造方法は、かかる本発明の放熱パネル製造用治具の上に伝熱シート付き基板を重ね、該基板を押圧して伝熱シートを割断し、生じたフラップを溝内に押し込む工程を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の治具によると、治具の上に伝熱シート付き基板を、伝熱シートを治具に向けた状態で重ね、該基板を押圧(叩打を含む)して伝熱シートを割断して基板の溝に容易に押し込むことができる。また、この冶具を用いると、製造された伝熱シート付き基板の品質のバラツキが少ないものとなり、伝熱シート付き基板の伝熱特性が安定したものとなる。
【0017】
本発明では、基板の溝に倣った形状の刃を有する冶具を用意することにより、種々の溝パターンの伝熱シート付き基板を容易に加工(フラップ押し込み)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係る放熱パネルの製造方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、
図1,2を参照して実施の形態について説明する。この実施の形態では、放熱パネルとして
図9に示したアルミシート7付き基板Bを例にとって説明するが、アルミシートの代りに銅シートなど高伝熱性の伝熱シートを用いてもよい。また、基板Bの代りに前記基板C,D,E,Fなど、各種形状の溝を有する基板を用いてもよい。
【0020】
この治具10は、ベース板11と、該ベース板11上に設けられた刃ユニット12と、基板Bを位置決めするためのストッパ13とを有する。刃ユニット12は、
図2の通り、薄板状の刃14と、刃14の両側面に沿って配置された押し込み片15とからなる。薄板状の刃14は、ベース板11の上面から垂直に立設されている。刃14の上端は、
図3の通り鋸刃形状となっている。刃14は、この実施の形態では金属製であるが、これに限定されない。
【0021】
刃ユニット12は、基板Bの溝3の配置パターンに合致するパターンにて設けられている。ストッパ13は、基板Bの外側辺に沿う位置関係にてベース板11上に設置されている。
【0022】
この治具10を用いてアルミシート7付き基板Bに加工を施して放熱パネルを製造するには、
図1の通り、アルミシート7が下向きとなるようにして基板Bを治具10上に重ねる。この際、基板Bの辺縁をストッパ13に当接させ、位置決めを行う。この状態では、各刃ユニット12がアルミシート7を介して各溝3に重なった状態となる。
【0023】
そこで、基板Bを下向きに強く押圧し、刃ユニット12を溝3に押し込み、刃14によってアルミシート7を割断すると共に、押し込み片15によって、生じたフラップ7aを溝3に押し込み、
図9のようにフラップ7aを溝3の側壁面に沿わせる。この基板Bを下向きに押圧するには、基板Bをゴムハンマー等の叩打具で叩くのが簡便で好適であるが、プレス機等を用いてもよい。なお、ゴムハンマー等で叩く際には、基板Bに当て板を重ね、その上から叩くのが好ましい。
【0024】
その後、基板Bを治具10から離反させることにより、フラップ7aが溝3の側壁面に沿っているアルミシート付基板Bよりなる放熱パネルが得られる。
【0025】
押し込み片15の材料が固すぎると、基板Bを押圧したときに基板Bの変形やアルミシート7の傷つきが生じる。逆に押し込み片15の材料が柔らかすぎると、フラップ7aが溝3の側壁面に沿わないという不具合が生じる。このことから、押し込み片15は、合成樹脂製スポンジやゴム等の所定の柔軟性を有した材料よりなることが好ましい。
【0026】
ストッパ13は、粘着剤でベース板に仮固定されているため、基板Bの形状に合わせて位置決めの変更が容易にできる。また、ストッパ13は、基板Bを押圧したときに変形が生じないようにするため、ゴム製の材料を使用することが好ましい。
【0027】
上記の刃14の種類は特に限定されないが、例えば、直線刃、ミシン刃、鋸刃等が挙げられる。なかでも、鋸刃はアルミシート7に食い込み易く、アルミシート7を容易に割断することが容易であるため好ましい。
【0028】
上記実施の形態では、押し込み片15の上面は水平であるが、刃14に近づくほど高くなるような傾斜面とされてもよい。
【0029】
上記説明は本発明の一例であり、本発明は上記説明に限定されるものではなく、上記以外の態様とされてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 治具
11 ベース板
12 刃ユニット
13 ストッパ
14 刃
15 押し込み片