(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】接ぎ木装置
(51)【国際特許分類】
A01G 2/32 20180101AFI20220114BHJP
【FI】
A01G2/32
(21)【出願番号】P 2018086192
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2020-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】山本 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大越 崇博
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-155361(JP,A)
【文献】特開2016-174556(JP,A)
【文献】特開2014-132840(JP,A)
【文献】国際公開第2017/171074(WO,A3)
【文献】特開2007-186256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 2/00 - 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台木(2)と前記台木(2)に接ぎ木される穂木(3)との接合部を挟んで対向する一対のテープ(6,7)であって、前記台木(2)および穂木(3)の延びる方向に対して交差する長手方向に延びる前記テープ(6,7)と、
前記台木(2)および穂木(3)よりもテープ(6,7)の外側に配置されるとともに、テープ(6,7)の対向方向に移動可能に支持され、テープ(6,7)を前記台木(2)及び穂木(3)に接触させた状態で前記テープ(6,7)どうしを接着する接着機(41)であって、テープ長手方向に対して前記台木(2)および穂木(3)を挟んで両側に配置され且つテープ対向方向の内側に突出する接着部(42a,42′)を有し、前記接着部(42a,42′)で前記テープ(6,7)どうしを接着する前記接着機(41)と、
前記テープ(6,7)の長手方向に対して前記接着機(41)よりも外側に配置され、テープ(6,7)の対向方向に移動可能に支持され、前記一対のテープ(6,7)どうしを接触させて押さえるテープ寄せ機(21)であって、前記テープ(6,7)どうしを接触させた状態で、前記テープ長手方向に対して前記接着機(41)の外側から前記接着機(41)に向けてテープ(6,7)を押さえながら移動可能な前記テープ寄せ機(21)と、
を備えたことを特徴とする接ぎ木装置。
【請求項2】
前記台木(2)及び穂木(3)に対してテープ長手方向の両側に隙間をあけた位置で前記テープ(6,7)どうしを接着する前記接着機(41)、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の接ぎ木装置。
【請求項3】
前記一対のテープ(6,7)の一方のテープと他方のテープとが異なる物性を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の接ぎ木装置。
【請求項4】
前記台木(2)の切断面(2a)の鈍角側の頂点(2b)と前記穂木(3)の切断面(3a)の鋭角側の頂点(3b)とを揃えた状態で前記テープ(6,7)を接着させる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の接ぎ木装置。
【請求項5】
前記テープ(6,7)よりも下方に配置されて、前記台木(2)を固定する台木固定部材(51)と、
前記テープ(6,7)よりも上方に配置されて、前記穂木(3)を固定する穂木固定部材(52)と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の接ぎ木装置。
【請求項6】
前記台木(2)を両側から挟む一対の台木固定具(54)を有し、前記テープ対向方向に対して、前記テープ(6,7)よりも外側の台木待機位置と、前記台木(2)を挟んで固定する台木固定位置との間で移動可能な前記台木固定部材(51)と、
前記穂木(3)を両側から挟む一対の穂木固定具(54)を有し、前記テープ対向方向に対して、前記テープ(6,7)よりも外側の穂木待機位置と、前記穂木(3)を挟んで固定する穂木固定位置との間で移動可能な前記穂木固定部材(52)と、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の接ぎ木装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台木と穂木とを接ぎ木する際に使用される接ぎ木装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のテープの間に台木と穂木を挿入し、テープ(フィルム)の外側から溶着機と押し当て部材で挟み込み接ぎ木をする技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、1台の超音波溶着機(34)で、フィルム(テープ)の長手方向に離れた位置を1か所ずつ溶着する構成が記載されている。しかしながら、1か所ずつ溶着していく構成では、1か所目を溶着する際に溶着位置と反対側が開放されているので、台木と穂木とがずれる恐れがある。特に、特許文献1に記載の構成では、フィルムに張力を作用させた状態で溶着しているので、溶着しようとしてフィルムを押さえるとフィルムに押されて台木と穂木がずれやすい。
また、特許文献1には、フィルムの長手方向に幅広の1台の超音波溶着機(34)で溶着する構成も記載されている。しかしながら、この構成では、テープを挟んで超音波溶着機(34)が接ぎ木部分を押すこととなり、台木と穂木とがずれやすい問題がある。
【0005】
本発明は、従来の構成に比べて、テープを接着する場合に台木と穂木とをずれにくくすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、次の解決手段により解決される。
すなわち、請求項1に記載の発明は、台木(2)と前記台木(2)に接ぎ木される穂木(3)との接合部を挟んで対向する一対のテープ(6,7)であって、前記台木(2)および穂木(3)の延びる方向に対して交差する長手方向に延びる前記テープ(6,7)と、前記台木(2)および穂木(3)よりもテープ(6,7)の外側に配置されるとともに、テープ(6,7)の対向方向に移動可能に支持され、テープ(6,7)を前記台木(2)及び穂木(3)に接触させた状態で前記テープ(6,7)どうしを接着する接着機(41)であって、テープ長手方向に対して前記台木(2)および穂木(3)を挟んで両側に配置され且つテープ対向方向の内側に突出する接着部(42a,42′)を有し、前記接着部(42a,42′)で前記テープ(6,7)どうしを接着する前記接着機(41)と、前記テープ(6,7)の長手方向に対して前記接着機(41)よりも外側に配置され、テープ(6,7)の対向方向に移動可能に支持され、前記一対のテープ(6,7)どうしを接触させて押さえるテープ寄せ機(21)であって、前記テープ(6,7)どうしを接触させた状態で、前記テープ長手方向に対して前記接着機(41)の外側から前記接着機(41)に向けてテープ(6,7)を押さえながら移動可能な前記テープ寄せ機(21)と、を備えたことを特徴とする接ぎ木装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記台木(2)及び穂木(3)に対してテープ長手方向の両側に隙間をあけた位置で前記テープ(6,7)どうしを接着する前記接着機(41)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の接ぎ木装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記一対のテープ(6,7)の一方のテープと他方のテープとが異なる物性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の接ぎ木装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記台木(2)の切断面(2a)の鈍角側の頂点(2b)と前記穂木(3)の切断面(3a)の鋭角側の頂点(3b)とを揃えた状態で前記テープ(6,7)を接着させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の接ぎ木装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記テープ(6,7)よりも下方に配置されて、前記台木(2)を固定する台木固定部材(51)と、前記テープ(6,7)よりも上方に配置されて、前記穂木(3)を固定する穂木固定部材(52)とを備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の接ぎ木装置である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記台木(2)を両側から挟む一対の台木固定具(54)を有し、前記テープ対向方向に対して、前記テープ(6,7)よりも外側の台木待機位置と、前記台木(2)を挟んで固定する台木固定位置との間で移動可能な前記台木固定部材(51)と、前記穂木(3)を両側から挟む一対の穂木固定具(54)を有し、前記テープ対向方向に対して、前記テープ(6,7)よりも外側の穂木待機位置と、前記穂木(3)を挟んで固定する穂木固定位置との間で移動可能な前記穂木固定部材(52)とを備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の接ぎ木装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、接着機(41)が、テープ長手方向に対して台木(2)および穂木(3)を挟んで両側に配置され且つテープ対向方向の内側に突出する接着部(42a,42′)で、テープ(6,7)どうしを接着することで、台木(2)と穂木(3)の片側ずつ接着していく従来の構成に比べて、テープを接着する場合に台木と穂木とをずれにくくすることができる。また、請求項1記載の発明によれば、テープ寄せ機(21)がテープ(6,7)を挟んだ状態で接着機(41)側に移動することで、台木(2)と穂木(3)がずれにくく、接合精度が向上する。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、前記台木(2)及び穂木(3)に対してテープ長手方向の両側に隙間をあけた位置で前記テープ(6,7)どうしを接着することで、テープの伸縮性を生かして確実に接着できる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、一方のテープと他方のテープとが異なる物性とすることで、一方と他方で収縮が異なり、接着が良好になる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、台木(2)の頂点(2b)と穂木(3)の頂点(3b)とを揃えた状態で接着することで、維管束どうしが接合しやすく、台木(2)と穂木(3)を確実に接合することで接ぎ木が良好になる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、台木固定部材(51)と穂木固定部材(52)とを設けることで、台木(2)と穂木(3)の姿勢を確実に固定することができ、確実に接ぎ木をすることができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、台木待機位置および穂木待機位置において、テープ(6,7)よりも外側に台木固定具(54)および穂木固定具(54)が移動することで、台木(2)と穂木(3)をテープ(6,7)の間に挿入しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本実施形態の接ぎ木装置の説明図である。
【
図2】
図2はテープ固定装置の説明図であり、
図2(A)は平面図、
図2(B)は
図2(A)の矢印IIB方向から見た図、
図2(C)は
図2(B)の矢印IIC方向から見た図である。
【
図3】
図3は本実施形態のテープ寄せ機の要部説明図である。
【
図4】
図4は胚軸寄せの説明図であり、
図4(A)は待機位置に移動した状態の説明図、
図4(B)は
図4(A)の矢印IVB方向から見た概略図、
図4(C)は胚軸寄せ位置に移動した状態の説明図、
図4(D)は
図4(C)の矢印IVD方向から見た概略図である。
【
図5】
図5は本実施形態の制御部の制御の過程の説明図であり、
図5(A)はテープが張られて胚軸寄せがされた状態の説明図、
図5(B)はテープ寄せ機が閉位置に移動した状態の説明図、
図5(C)はテープ寄せ機がテープ寄せ位置に移動した状態の説明図、
図5(D)はテープが溶着された状態の説明図である。
【
図6】
図6は本実施形態の接ぎ木作業のフローチャートである。
【
図7】
図7は本実施形態の接ぎ木装置において、テープがカットされた場合の説明図であり、
図7(A)はカット直後の状態の説明図、
図7(B)はテープが収縮した状態の説明図である。
【
図8】
図8は台木と穂木の接合部分の説明図であり、
図8(A)は本実施形態の場合の側面図、
図8(B)は
図8(A)の矢印VIIIB方向から見た図、
図8(C)は別の形態の場合の側面図、
図8(D)は
図8(C)の矢印VIIID方向から見た図である。
【
図9】
図9は本実施形態の溶着機の別の形態の説明図であり、
図9(A)は第1の別形態の説明図、
図9(B)は第2の別形態の説明図、
図9(C)は第3の別形態の説明である。
【
図10】
図10は本実施形態の別の形態の説明図であり、
図10(A)はテープが台木と穂木から離間した状態の説明図、
図10(B)はテープが台木と穂木に接触した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は本実施形態の接ぎ木装置の説明図である。
図1において、本発明の一例の接ぎ木装置1は、台木2と穂木3とを挟んで対向して配置された一対のテープ6,7を有する。テープ6,7は、供給軸6a,7aを中心とするロール状に巻かれている。供給軸6a,7aは、図示しないブレーキ(制動部材)が設けられている。なお、本実施形態では、テープ6,7は、一例として、熱可塑性のフィルムで構成されているが、これに限定されず、任意の構成を採用可能である。例えば、テープ6,7の内側(対向する側)の面に接着剤の層が積層された構成とすることも可能である。
【0024】
図2はテープ固定装置の説明図であり、
図2(A)は平面図、
図2(B)は
図2(A)の矢印IIB方向から見た図、
図2(C)は
図2(B)の矢印IIC方向から見た図である。
図1、
図2において、テープ6,7の下方には、張力付与部の一例としてのテープ固定装置11が配置されている。
図2において、テープ固定装置11は、テープ6,7の長手方向(X方向)に沿って延びるスライドレール12を有する。スライドレール12には、テープ長手方向に沿って延びる回転シャフト13が支持されている。回転シャフト13の外表面には、らせん状のネジ山が形成されている。また、回転シャフト13は、駆動源の一例としてのモータ14で駆動可能に構成されている。
【0025】
回転シャフト13には、スライダ16が支持されている。スライダ16には、回転シャフト13が貫通するネジ孔16aが形成されている。また、スライダ16は、スライドレール12に沿って、テープ長手方向に沿って移動可能に支持されている。したがって、回転シャフト13の正逆回転に伴って、ネジ山とネジ孔16aとの噛み合いで、スライダ16は回転シャフト13に沿って移動する。
スライダ16には、昇降部材の一例としての上下シリンダ17が支持されている。上下シリンダ17は、制御信号の入力に応じて、上部のプランジャ17aが上下方向に伸縮可能に構成されている。
【0026】
上下シリンダ17の上部には、開閉部の一例としてのチャック18が支持されている。チャック18は、上方に延びる固定板18aを有する。固定板18aは、一対のテープ6,7の間に挟まれるように配置される。また、チャック18は、固定板18aを挟んで一対のテープ固定ハンド18b,18cが配置されている。各テープ固定ハンド18b,18cと固定板18aとの間に、それぞれテープ6,7が位置するように、テープ固定ハンド18b,18cが配置されている。テープ固定ハンド18b,18cは、チャック18の作動または作動停止に応じて、固定板18aに対して接近して固定板18aとの間でテープ6,7を挟む閉位置と、固定板18aに対して離間してテープ6,7を挟まない開位置との間で移動可能に構成されている。
【0027】
図2(A)において、本実施形態では、固定板18aおよびテープ固定ハンド18b,18cのテープ対向面には、テープ6,7側に突出する凹凸部18dが形成されている。凹凸部18dは、テープ6,7を挟んだ際の滑り止めとして機能し、テープ6,7を確実に保持することが可能である。
図2(B)において、本実施形態では、固定板18aおよびテープ固定ハンド18b,18cの上端部には、案内部の一例としてのガイド面18eが形成されている。ガイド面18eは面取り形状に形成されている。したがって、上下シリンダ17の作動に伴って、チャック18がテープ6,7の下端よりも下方の下降位置から、テープ6,7が固定板18aとテープ固定ハンド18b,18cの間に入る上昇位置に移動する際に、テープ6,7がガイド面18eにガイドされ、固定板18aやテープ固定ハンド18b,18cに引っ掛かりにくくなる。
【0028】
また、本実施形態では、テープ6,7がテープ固定ハンド18b,18cに挟まれた状態で、回転シャフト13が回転すると、テープ6,7が張力が付与された状態で供給軸6a,7a側から引き出される引張位置(
図1、
図2(C)の実線参照)にチャック18が移動可能である。なお、引張位置に移動する際に、供給軸6a,7aのブレーキを作動させることで、テープ6,7に張力を付与可能である。
また、テープ固定ハンド18b,18cがテープ6,7から離れた状態で、上下シリンダ17が下降し、回転シャフト13が逆回転した後で、上下シリンダ17を上昇させることで待機位置(
図1、
図2(C)の破線参照)に移動可能である。
【0029】
図3は本実施形態のテープ寄せ機の要部説明図である。
図1において、テープ固定装置11の引張位置と待機位置との間には、テープ寄せ機21が配置されている。本実施形態のテープ寄せ機21は、テープ6,7の長手方向に沿って間隔をあけて2組設置されている。各テープ寄せ機21は、テープ6,7を挟んで対向する一対の接触プレート22を有する。
図3において、テープ寄せ機21は、接触プレート22をテープ6,7に対して接触、離間する方向に移動させる挟持テーブル23と、テープ6,7の長手方向に沿って接触プレート22を移動させる寄せテーブル24とを有する。
【0030】
したがって、本実施形態のテープ寄せ機21は、挟持テーブル23を作動させることで、接触プレート22どうしでテープ6,7を挟む挟持位置に移動したり、テープ6,7から離間する位置に移動させることも可能である。また、寄せテーブル24を作動させることで、接触プレート22どうしでテープ6,7を挟んだ状態で台木2および穂木3に接近するテープ寄せ位置と、台木2および穂木3から離間した待機位置との間で移動可能である。
【0031】
図1において、テープ長手方向に対して、2組のテープ寄せ機21の内側には、切断部材の一例としてのカッター31が配置されている。カッター31は、テープ6,7の長手方向に沿って間隔をあけて2組配置されている。各カッター31は、切断刃により構成されたナイフ32と、受け台33とがテープ6,7を挟んで配置されている。ナイフ32および受け台33は、図示しない移動機構(例えば、挟持テーブル23等参照)により、テープ6,7に対して接近、離間可能に支持されている。したがって、ナイフ32と受け台33がテープ6,7に接触することにより、テープ6,7が切断可能である。
【0032】
前記カッター31の内側には、接着機の一例としての溶着機41が配置されている。溶着機41は、テープ6,7を挟んで一対の溶着アーム42,42が配置されている。各溶着アーム42は、図示しない移動機構(例えば、挟持テーブル23等参照)により、テープ6,7に対して接近、離間可能に支持されている。
各溶着アーム42のテープ6,7に対向する側の端部には、テープ長手方向に対して台木2および穂木3を挟んで両側に配置され且つテープ対向方向の内側に突出する突出部(接着部)42aが形成されている。従って、突出部42aどうしの内側には、凹部42bが形成されている。
なお、本実施形態では、溶着アーム42の上下方向の長さは、テープ6,7を確実に溶着できる(接合率が高まる)ように、テープ6,7の上下方向の長さ(幅)よりも長く構成されている。
【0033】
本実施形態の溶着アーム42は、対向する溶着アーム42どうしが接近すると、テープ6,7を挟んで突出部42aどうしが間接的に接触する状態となる。このとき、凹部42bどうしで囲まれた空間に、台木2および穂木3が収容された状態となり、台木2および穂木3の両側においてテープ6,7が突出部42aで挟まれた状態となる。
そして、溶着アーム42どうしでテープ6,7を挟んだ状態で、溶着アーム42(の突出部42a)が加熱されると、テープ6,7どうしが熱溶着される。したがって、台木2と穂木3の両側に隙間があけられた状態で、テープ6,7が溶着される。
【0034】
なお、本実施形態では、接着機として熱溶着でテープ6,7どうしを接合する構成を例示したがこれに限定されない。例えば、超音波溶着機を利用したり、あるいは、綴じ針を使用して接合(綴じる)ステープラ等を利用したり、あるいはテープ6,7の内面に接着剤を塗布して溶着アーム42で押さえて接着する等、テープ6,7どうしを接合可能な任意の構成を採用可能である。
【0035】
図4は胚軸寄せの説明図であり、
図4(A)は待機位置に移動した状態の説明図、
図4(B)は
図4(A)の矢印IVB方向から見た概略図、
図4(C)は胚軸寄せ位置に移動した状態の説明図、
図4(D)は
図4(C)の矢印IVD方向から見た概略図である。
図1において、溶着機41の下方には、台木固定部材の一例としての台木胚軸寄せ51が配置され、溶着機41の上方には、穂木固定部材の一例としての穂木胚軸寄せ52が配置されている。
図1、
図4において、台木胚軸寄せ51は、箱型のベース部53を有する。ベース部53には、テープ6,7の長手方向に沿って一対の胚軸寄せアーム(台木固定具、穂木固定具)54が配置されている。胚軸寄せアーム54は、ベース部53を中心として対称の略L字状のアーム形状に形成されており、先端部には、台木2の胚軸2aに接触可能な凹部54bが形成されている。また、本実施形態の胚軸寄せアーム54は、
図4(B)、(D)に示すように、一方の胚軸寄せアーム54と他方の胚軸寄せアーム54は、上下方向にずれた位置に配置されている。
【0036】
胚軸寄せアーム54は、ベース部53に、回転軸54aを中心として、
図4(A)に示す待機位置と、
図4(C)に示す胚軸寄せ位置との間で回転可能に支持されている。
図4(A)に示す待機位置では、胚軸寄せアーム54は、テープ6,7よりも外側に位置する。
図4(C)に示す胚軸寄せ位置では、一対の胚軸寄せアーム54の凹部54bの間の空間に台木2の胚軸2aを挟み込む形で位置決めを行う。
なお、穂木胚軸寄せ52は、台木胚軸寄せ51と同様に構成されているので、穂木胚軸寄せ52については詳細な説明は省略する。
【0037】
したがって、
図4(A)に示すように、台木2と穂木3との位置がずれていても、胚軸寄せアーム54で台木2と穂木3が所定の位置に位置決めされ、
図4(C)、(D)に示すように、台木2と穂木3とが接がれた状態で保持(固定)される。
【0038】
(制御部の説明)
接ぎ木装置1の制御部61は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、制御部61は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、制御部61は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、制御部61は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。したがって、実施形態1の制御部61は、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されている。よって、制御部61は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0039】
図5は本実施形態の制御部の制御の過程の説明図であり、
図5(A)はテープが張られて胚軸寄せがされた状態の説明図、
図5(B)はテープ寄せ機が閉位置に移動した状態の説明図、
図5(C)はテープ寄せ機がテープ寄せ位置に移動した状態の説明図、
図5(D)はテープが溶着された状態の説明図である。
本実施形態の制御部61は、図示しない作業開始ボタンの入力がされると、接ぎ木作業が開始される。制御部61は、まず、テープ固定ハンド18b,18cを閉位置に移動させた後、引張位置へ移動させる。したがって、テープ6,7を張った状態(張力が付与された状態)にする。制御部61は、この状態で作業の一時待機状態とする。
そして、テープ6,7の間に、台木2と穂木3とが作業者の手でセットされた後、図示しない完了ボタンの入力がされると、制御部61は、胚軸寄せアーム54を胚軸寄せ位置に移動させる(
図5(A)参照)。
【0040】
次に、制御部61は、テープ寄せ機21を挟持位置(
図5(B)参照)に移動させた後、テープ寄せ位置(
図5(C)参照)に移動させる。
次に、制御部61は、溶着機41を溶着位置に移動させてテープ6,7の溶着を行う(
図5(D)参照)。
次に、制御部61は、溶着機41を待機位置に移動させた後、胚軸寄せアーム54を待機位置に戻す。
【0041】
次に、制御部61は、カッター31を作動させてテープ6,7を切断して、カッター31を元の位置(待機位置)に戻す。そして、制御部61はこの状態で作業の一時待機状態とする。
そして、テープ6,7で固定された台木2と穂木3を作業者が取り出した後、完了ボタンの入力がされると、制御部61は、テープ固定ハンド18b,18cを開位置に移動させた後、待機位置に移動させる。
そして、制御部61は、テープ寄せ機21を開位置に移動させた後、待機位置に移動させる。
【0042】
(本実施形態の流れ図の説明)
図6は本実施形態の接ぎ木作業のフローチャートである。
次に、本実施形態の接ぎ木装置1における制御の流れを流れ図、いわゆるフローチャートを使用して説明する。
図6のフローチャートの各ステップSTの処理は、接ぎ木装置1の制御部61に記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理は接ぎ木装置1の他の各種処理と並行して実行される。
図6に示すフローチャートは接ぎ木装置1の電源投入により開始される。
【0043】
ST1において、接ぎ木作業が開始されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST2に進み、ノー(N)の場合はST1を繰り返す。
ST2において、テープ固定ハンド18b,18cを閉位置に移動させて、ST3に進む。
ST3において、テープ固定ハンド18b,18cを引張位置に移動させて、ST4に進む。
ST4において、台木2と穂木3とをテープ6,7の間にセットする作業が完了したか否かを判別する。すなわち、完了ボタンの入力がされたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST5に進み、ノー(N)の場合はST4を繰り返す。
【0044】
ST5において、胚軸寄せ51,52を胚軸寄せ位置に移動させ、ST6に進む。
ST6において、テープ寄せ機21を挟持位置に移動させ、ST7に進む。
ST7において、テープ寄せ機21をテープ寄せ位置に移動させ、ST8に進む。
ST8において、溶着機41を溶着位置へ移動させて、テープ6,7を溶着する。そして、ST9に進む。
ST9において、溶着機41を待機位置に移動させ、ST10に進む。
ST10において、胚軸寄せ51,52を待機位置に移動させ、ST11に進む。
ST11において、カッター31を作動させて、テープ6,7をカットする。そして、ST12に進む。
【0045】
ST12において、台木2と穂木3とがテープ6,7の間から取り出す作業が完了したか否かを判別する。すなわち、完了ボタンの入力がされたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST13に進み、ノー(N)の場合はST12を繰り返す。
ST13において、テープ固定ハンド18b,18cを開位置に移動させ、ST14に進む。
ST14において、テープ固定ハンド18b,18cを待機位置に移動させ、ST15に進む。
ST15において、次の処理(1)、(2)を実行して、ST1に戻る。
(1)テープ寄せ機21を開位置に移動させる
(2)テープ寄せ機21を待機位置に移動させる。
【0046】
(本実施形態の接ぎ木装置の作用)
前記構成を備えた本実施形態の接ぎ木装置1では、テープ6,7がテープ固定装置11で張られた状態で、テープ6,7の上下の胚軸寄せ51,52で台木2と穂木3とが所定の位置に位置合わせされる。したがって、胚軸寄せ51,52を有しない構成に比べて、台木2と穂木3のずれが抑制される。
そして、胚軸寄せ51,52で位置合わせがされた状態で、テープ寄せ機21がテープ寄せ位置に移動する。したがって、テープ寄せ機21で寄せられたテープ6,7が、台木2と穂木3に巻き付く範囲(巻き付き角)が大きくなる。よって、テープ寄せ機21がテープ寄せ位置に移動しない場合に比べて、台木2と穂木3の位置がさらに安定する(ずれにくくなる)。
【0047】
テープ寄せ機21がテープ寄せ位置に移動した状態で、溶着機41で溶着が行われる。本実施形態の溶着機41は、台木2と穂木3の両側を挟むように突出部42aで溶着を行う。したがって、台木2と穂木3の片側ずつ溶着していく従来の構成に比べて、テープ6,7を接着する場合に台木2と穂木3とがずれにくくなる。
【0048】
図7は本実施形態の接ぎ木装置において、テープがカットされた場合の説明図であり、
図7(A)はカット直後の状態の説明図、
図7(B)はテープが収縮した状態の説明図である。
また、本実施形態の接ぎ木装置1では、溶着後に、カッター31でテープ6,7が切断(カット)される。このとき、
図5(D)、
図7(A)に示すようにテープ6,7に張力が作用した状態から、テープ6,7を押さえたり、引っ張ったりする部材(テープ寄せ機21やテープ固定装置11)が離れると、テープ6,7の伸縮性と張力とにより、
図7(B)に示すように、テープ6,7が収縮して、台木2と穂木3に巻き付く。したがって、巻き付いたテープ6,7で台木2と穂木3が固定され、台木2と穂木3がずれにくくなる。
【0049】
また、本実施形態の接ぎ木装置1では、台木2及び穂木3に対してテープ6,7の長手方向の両側に隙間をあけた位置で、テープ6,7どうしが接着(溶着)される。したがって、テープ6,7をカッター31で切断した場合に、テープ6,7の伸縮性を生かして確実に接着できる。また、台木2や穂木3に溶着機41が接触する場合、台木2と穂木3に熱が加わって、台木2と穂木3がダメージを受ける恐れがあるが、本実施形態では、それも抑制される。
【0050】
特に、本実施形態の溶着機41では、一対の溶着アーム42が対称に配置されており、両方の溶着アーム42が移動する。特許文献1に記載のように、一方が固定の押し当て板で、他方が移動する溶着機を使用する構成では、溶着する際に、先に溶着機側(移動側)のテープに接触した後で、固定の押し当て板に押し当てられることとなり、先に溶着機側から力を受け、後で押し当て板側から力を受けることとなる。したがって、溶着時に台木2と穂木3がずれてしまう恐れがある。これに対して、実施形態1では、台木2と穂木3の両側からテープ6,7がほぼ同時に接触することとなり、台木2と穂木3がずれにくくなる。
【0051】
図8は台木と穂木の接合部分の説明図であり、
図8(A)は本実施形態の場合の側面図、
図8(B)は
図8(A)の矢印VIIIB方向から見た図、
図8(C)は別の形態の場合の側面図、
図8(D)は
図8(C)の矢印VIIID方向から見た図である。
また、本実施形態では、
図8(A)に示すように、台木2の切断面2aの鈍角側の頂点2bと、穂木3の切断面3aの鋭角側の頂点3bとを揃えた状態でテープ6,7を接着させている。例えば、トマトの接ぎ木を行う場合、
図8(B)、(D)に示すように、維管束2c,3cは外周側に存在している。したがって、
図8(C)、(D)に示すように、台木2と穂木3の中心線を合わせると、台木2と穂木3の径によっては、台木2の維管束2cと穂木3の維管束3cとが接続されにくい場合がある。維管束2c,3cが接続されないと、接ぎ木された作物が成長しない恐れがある。これに対して、本実施形態では、
図8(A)、(B)に示すように、頂点2b,3bが揃うように胚軸寄せ51,52で位置合わせをする。したがって、維管束2c,3cが確実に接続される部分が確保され、接ぎ木が成功しやすい。
【0052】
この時、テープ6,7は、同一のテープを使用するのではなく、揃えられた頂点2b,3b側のテープが、反対側のテープよりも収縮が小さいものを使用することが好ましい。同一のテープを使用した場合、台木2と穂木3がテープ6,7の両側から均等に力を受ける。したがって、頂点2b,3bを揃えた状態で溶着を行っても、カッター31でテープ6,7が切断されて長手方向に引っ張る力がなくなった後に、テープ6,7から均等に受ける力で、穂木3が押されて
図8(C)、(D)に示す状態になる恐れがある。したがって、テープ6,7で物性が異なるものを使用し、頂点2b,3b側の収縮が小さいテープを配置することで、揃えられた頂点2b,3bがずれにくくすることが好ましい。
なお、テープ6,7の収縮が異なれば、任意のテープ6,7を使用可能である。したがって、熱収縮量や弾性定数、ヤング率等の物性が異なるテープ6,7としたり、例えば、同一材料でも、厚さを変えることで収縮を小さくする構成とすることも可能である。
【0053】
また、本実施形態では、熱可塑性のテープ6,7を使用し、溶着機41で熱溶着を行う構成を例示したがこれに限定されない。例えば、一方のテープを透明なテープとし、他方のテープを有色のテープとし、有色のテープが吸収する波長のレーザー光を照射することで、熱溶着を行う構成とすることも可能である。また、レーザー光の幅や強度を変えることで、熱溶着後に、テープ6,7をレーザー光で切断する構成とすることも可能である。この場合、溶着機41とカッター31とが、レーザー光源で兼用される構成となり、部品点数の削減や小型化に寄与する。
また、例えば、接ぎ木する作物の品種や日時等に応じて、テープの色を変えることも可能である。このようにすることで、テープの色を見るだけで、接ぎ木された品種の確認や、病気への耐性、生長の速度の判断等に活かすことも可能である。
【0054】
図9は本実施形態の溶着機の別の形態の説明図であり、
図9(A)は第1の別形態の説明図、
図9(B)は第2の別形態の説明図、
図9(C)は第3の別形態の説明である。
本実施形態の溶着機41では、2つの突出部42aを有する溶着アーム42を使用する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、
図9(A)に示すように、2つの突起部42aに対応して、テープ長手方向に間隔を離して配置された一対の溶着部42′がテープ6,7に対して接近、離間可能な構成とすることも可能である。
また、
図9(B)に示すように、一方を
図1に示す溶着アーム42とし、他方を
図9(A)に示す溶着部(接着部)42′とすることも可能である。さらに、
図9(C)に示すように、一方を台木2と穂木3が収容可能な窪み43が形成され且つテープ長手方向に長く延びる溶着アーム44とし、他方を
図9(A)に示す溶着部42′とすることも可能である。
【0055】
図10は本実施形態の別の形態の説明図であり、
図10(A)はテープが台木と穂木から離間した状態の説明図、
図10(B)はテープが台木と穂木に接触した状態の説明図である。
図10において、テープ6,7の対向する側の面に、上下方向に沿った凹凸を有するテープ6,7を使用することも可能である。凹凸が無い場合は、溶着後のテープ6,7の間から台木2と穂木3が上下方向に抜けてしまう場合もあった。これに対して、凹凸を形成することで、テープ6,7の凹凸が台木2と穂木3が引っ掛かって、抜けにくくなる。
【符号の説明】
【0056】
1…接ぎ木装置、
2…台木、
2a…切断面、
2b…鈍角側の頂点、
3…穂木、
3a…切断面、
3b…鋭角側の頂点、
6,7…テープ、
21…テープ寄せ機、
41…接着機、
42a,42′…接着部、
51…台木固定部材、
52…穂木固定部材、
54…台木固定具、穂木固定具。