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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】給電制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/20 20060101AFI20220114BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20220114BHJP
   H01H 9/54 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H02H7/20 D
H02J1/00 309Q
H02J1/00 309W
H01H9/54 B
H01H9/54 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018120097
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020005344
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中口 真之介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅幸
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-131021(JP,A)
【文献】中国実用新案第2737044(CN,Y)
【文献】特開平10-040563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H7/00
H02H7/10-7/20
H02H3/08-3/253
H01H9/54-9/56
H01H85/00-87/00
B60R16/02-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチをオン又はオフに切替えることによって、前記スイッチを介した給電を制御する給電制御装置であって、
前記スイッチをオン又はオフに切替える切替え機と、
前記切替え機に電力が供給されている場合に前記切替え機から出力される出力電流の第1電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第1閾値以上となった場合に溶断される第1溶断部と、
前記第1電流経路とは異なる前記出力電流の第2電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第2閾値以上となった場合に溶断される第2溶断部と
を備え、
前記第2溶断部はダイオードを有し、
前記第1電流経路及び第2電流経路夫々に第1導線及び第2導線が配置され、
前記第1導線のインダクタンス成分は、前記第2導線のインダクタンス成分を超えている
給電制御装置。
【請求項2】
スイッチをオン又はオフに切替えることによって、前記スイッチを介した給電を制御する給電制御装置であって、
前記スイッチをオン又はオフに切替える切替え機と、
前記切替え機に電力が供給されている場合に前記切替え機から出力される出力電流の第1電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第1閾値以上となった場合に溶断される第1溶断部と、
前記第1電流経路とは異なる前記出力電流の第2電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第2閾値以上となった場合に溶断される第2溶断部と
を備え、
前記第2溶断部はダイオードを有し、
前記第1電流経路及び第2電流経路夫々に第1インダクタ及び第2インダクタが配置され、
前記第1インダクタのインダクタンスは、前記第2インダクタのインダクタンスを超えている
給電制御装置。
【請求項3】
前記第2溶断部を介して流れる電流が前記第2閾値以上となった場合、前記ダイオードが溶断される
請求項1又は請求項2に記載の給電制御装置。
【請求項4】
前記出力電流が前記第1電流経路を流れた場合における前記第1溶断部の両端間の電圧は、前記ダイオードに電流が順方向に流れた場合における前記ダイオードの両端間の電圧未満である
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の給電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、バッテリから負荷への給電を制御する給電制御装置(例えば、特許文献1を参照)が搭載されている。特許文献1に記載の給電制御装置では、バッテリから負荷に給電される給電経路に設けられたスイッチをオン又はオフに切替えることによって、バッテリから負荷への給電を制御する。
【0003】
スイッチをオン又はオフに切替える切替え機は、バッテリの正極に接続されるとともに接地されている。電流はバッテリ及び切替え機の順に流れる。これにより、バッテリから切替え機に電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-131021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような従来の給電制御装置では、切替え機は、導体、例えば車両のボディに接続することによって、接地される。バッテリから負荷に電力が供給されている状態で切替え機及び導体との接続が外れた場合、バッテリから切替え機への給電が停止し、切替え機は動作を停止する。これにより、スイッチはオフに切替わり、負荷の動作が突然に停止する可能性がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切替え機への給電が停止する可能性が低い給電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る給電制御装置は、スイッチをオン又はオフに切替えることによって、前記スイッチを介した給電を制御する給電制御装置であって、前記スイッチをオン又はオフに切替える切替え機と、前記切替え機に電力が供給されている場合に前記切替え機から出力される出力電流の第1電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第1閾値以上となった場合に溶断される第1溶断部と、前記第1電流経路とは異なる前記出力電流の第2電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第2閾値以上となった場合に溶断される第2溶断部とを備え、前記第2溶断部はダイオードを有し、前記第1電流経路及び第2電流経路夫々に第1導線及び第2導線が配置され、前記第1導線のインダクタンス成分は、前記第2導線のインダクタンス成分を超えている。
本発明の一態様に係る給電制御装置は、スイッチをオン又はオフに切替えることによって、前記スイッチを介した給電を制御する給電制御装置であって、前記スイッチをオン又はオフに切替える切替え機と、前記切替え機に電力が供給されている場合に前記切替え機から出力される出力電流の第1電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第1閾値以上となった場合に溶断される第1溶断部と、前記第1電流経路とは異なる前記出力電流の第2電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第2閾値以上となった場合に溶断される第2溶断部とを備え、前記第2溶断部はダイオードを有し、前記第1電流経路及び第2電流経路夫々に第1インダクタ及び第2インダクタが配置され、前記第1インダクタのインダクタンスは、前記第2インダクタのインダクタンスを超えている。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、切替え機への給電が停止する可能性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態における電源システムの回路図である。
図2】切替え機の要部構成を示すブロック図である。
図3】第1導線が開放された場合における通電の説明図である。
図4】第2導線が開放された場合における通電の説明図である。
図5】ダイオードの作用の説明図である。
図6】過電流保護の説明図である。
図7】過電流保護の他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0011】
(1)本発明の一態様に係る給電制御装置は、スイッチをオン又はオフに切替えることによって、前記スイッチを介した給電を制御する給電制御装置であって、前記スイッチをオン又はオフに切替える切替え機と、前記切替え機に電力が供給されている場合に前記切替え機から出力される出力電流の第1電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第1閾値以上となった場合に溶断される第1溶断部と、前記第1電流経路とは異なる前記出力電流の第2電流経路に配置され、自身を介して流れる電流が第2閾値以上となった場合に溶断される第2溶断部とを備え、前記第2溶断部はダイオードを有する。
【0012】
上記の一態様にあっては、第1電流経路を介した通電が停止した場合、出力電流は第2電流経路を流れる。第2電流経路を介した通電が停止した場合、出力電流は第1電流経路を流れる。このため、切替え機への給電が停止する可能性が低い。
【0013】
第1電流経路には、例えば、インダクタンス成分を有する導線が配置される。この場合においては、第1電流経路を介して流れる電流が上昇したとき、導線はサージ電圧を発生させる。切替え機から出力される出力電流が第1電流経路及び第2電流経路を流れるので、電流が導線の一端から第1溶断部、ダイオード及び導線の他端の順に流れる還流経路が形成される。このため、サージ電圧は小さな値以下に抑制される。また、第1溶断部及び第2溶断部夫々が第1電流経路及び第2電流経路に配置されているため、切替え機に過電流が流れることはない。
【0014】
(2)本発明の一態様に係る給電制御装置では、前記第2溶断部を介して流れる電流が前記第2閾値以上となった場合、前記ダイオードが溶断される。
【0015】
上記の一態様にあっては、第2溶断部を介して流れる電流が第2閾値以上となった場合、ダイオードが溶断される。ダイオードが溶断機能を有するので、装置を構成する部品の数が少なく、装置の小型化を実現することが可能である。
【0016】
(3)本発明の一態様に係る給電制御装置では、前記出力電流が前記第1電流経路を流れた場合における前記第1溶断部の両端間の電圧は、前記ダイオードに電流が順方向に流れた場合における前記ダイオードの両端間の電圧未満である。
【0017】
上記の一態様にあっては、第1溶断部の両端間の電圧がダイオードの両端間の電圧未満であるため、基本的に、出力電流は第1電流経路を流れ、切替え機において、出力電流が出力される出力端の電圧は小さい。第1電流経路を介した通電が停止した場合に出力電流は第2電流経路を流れる。
【0018】
(4)本発明の一態様に係る給電制御装置では、前記第1電流経路及び第2電流経路夫々に第1導線及び第2導線が配置され、前記第1導線のインダクタンス成分は、前記第2導線のインダクタンス成分を超えている。
【0019】
上記の一態様にあっては、第1導線のインダクタンス成分が第2導線のインダクタンス成分よりも大きいので、前述した還流経路を介して電流が流れる可能性が高い。このため、サージ電圧を抑制する効果は大きい。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る電源システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
図1は、本実施形態における電源システム1の回路図である。電源システム1は、好適に車両に搭載されており、バッテリ10、給電制御装置11、負荷12、導体13、第1導線W1及び第2導線W2を備える。第1導線W1及び第2導線W2夫々はインダクタンス成分を有する。第1導線W1の等価回路は第1インダクタL1で表される。第2導線W2の等価回路は第2インダクタL2で表される。第1インダクタL1のインダクタンスは、第1導線W1が有するインダクタンス成分である。第2インダクタL2のインダクタンスは、第2導線W2のインダクタンス成分である。導体13は、例えば車両のボディである。導体13への接続は接地に相当する。
【0022】
給電制御装置11は、メインスイッチ20、切替え機21、ヒューズ22及びダイオード23を有する。メインスイッチ20は、Nチャネル型のFET(Field Effect Transistor)である。
【0023】
バッテリ10の正極は、メインスイッチ20のドレインに接続されている。メインスイッチ20のソースは、負荷12の一端に接続されている。バッテリ10の負極と、負荷12の他端とは、導体13に接続されている。メインスイッチ20のドレイン及びゲートには、切替え機21が各別に接続されている。切替え機21は、更に、ヒューズ22の一端に接続されている。
【0024】
ヒューズ22の他端は、第1導線W1の第1インダクタL1の一端が接続されている。第1インダクタL1の他端は導体13に接続されている。ヒューズ22の一端には、更に、ダイオード23のアノードに接続されている。ダイオード23のカソードは、第2導線W2の第2インダクタL2の一端に接続されている。第2インダクタL2の他端は導体13に接続されている。
【0025】
メインスイッチ20について、ソースの電位を基準としたゲートの電圧がオン電圧以上である場合、ドレイン及びソースを介して電流が流れることが可能である。このとき、メインスイッチ20はオンである。メインスイッチ20について、ソースの電位を基準としたゲートの電圧がオフ電圧未満である場合、ドレイン及びソースを介して電流が流れることはない。このとき、メインスイッチ20はオフである。オン電圧はオフ電圧を超えている。
【0026】
バッテリ10は切替え機21に電力を供給する。バッテリ10が切替え機21に電力を供給している場合、電流は、バッテリ10の正極から切替え機21に入力される。切替え機21に入力された電流は、ヒューズ22の一端及びダイオード23のアノードが接続される切替え機21の出力端から出力される。バッテリ10が切替え機21に電力を供給している場合に切替え機21の出力端から出力される出力電流は、ヒューズ22、第1導線W1、導体13及びバッテリ10の順に流れるか、又は、ダイオード23、第2導線W2、導体13及びバッテリ10の順に流れる。
【0027】
ヒューズ22及び第1導線W1を流れる出力電流の電流経路は、第1電流経路に相当する。ダイオード23及び第2導線W2を流れる出力電流の電流経路は、第2電流経路に相当する。従って、第1電流経路には、ヒューズ22及び第1導線W1が配置されている。第2電流経路には、ダイオード23及び第2導線W2が配置されている。
【0028】
切替え機21は、バッテリ10から供給された電力を用いて、作動する。切替え機21はメインスイッチ20をオン又はオフに切替える。
切替え機21は、メインスイッチ20をオンに切替える場合、出力端の電位を基準としたバッテリ10の出力電圧を昇圧し、昇圧した電圧をメインスイッチ20のゲートに出力する。これにより、メインスイッチ20では、ソースの電位を基準としたゲートの電圧がオン電圧以上となり、メインスイッチ20はオンに切替わる。切替え機21は、メインスイッチ20をオフに切替える場合、昇圧を停止し、メインスイッチ20のゲートへの電圧の出力を停止する。これにより、メインスイッチ20では、ソースの電位を基準としたメインスイッチ20のゲートの電圧はオフ電圧未満となり、メインスイッチ20はオフに切替わる。
【0029】
切替え機21がメインスイッチ20をオンに切替えた場合、バッテリ10は、メインスイッチ20を介して負荷12に電力を供給する。負荷12は、車両に搭載された電気機器である。バッテリ10から負荷12に電力が供給されている間、負荷12は作動する。切替え機21がメインスイッチ20をオフに切替えた場合、バッテリ10から負荷12への給電が停止する。バッテリ10から負荷12への給電が停止した場合、負荷12は動作を停止する。
【0030】
以上のように、給電制御装置11では、切替え機21がメインスイッチ20をオン又はオフに切替えることによって、メインスイッチ20を介した給電を制御する。バッテリ10が切替え機21に電力を供給している場合、切替え機21の出力端から出力電流が出力し続ける。
【0031】
ヒューズ22に流れる電流が第1閾値以上となった場合、ヒューズ22は溶断される。ヒューズ22は第1溶断部として機能する。
ダイオード23において、アノード及びカソードの順に流れる電流が第2閾値以上となった場合、ダイオード23は溶断される。ダイオード23は第2溶断部として機能する。
【0032】
図2は切替え機21の要部構成を示すブロック図である。切替え機21は、レギュレータ30、駆動部31及びマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)32を有する。レギュレータ30及び駆動部31は、メインスイッチ20のドレインに接続されている。レギュレータ30は、更に、マイコン32に接続されている。マイコン32は、更に、駆動部31に接続されている。駆動部31は、更に、メインスイッチ20のゲートに接続されている。レギュレータ30、駆動部31及びマイコン32は、更に、ヒューズ22の一端に接続されている。レギュレータ30、駆動部31及びマイコン32間の接続ノードの電位は、切替え機21の出力端の電位に相当する。
【0033】
バッテリ10はレギュレータ30に電力を供給する。バッテリ10がレギュレータ30に電力を供給している場合、電流は、バッテリ10の正極からレギュレータ30及び切替え機21の出力端の順に流れる。バッテリ10からレギュレータ30に電力が供給されている場合、レギュレータ30は作動している。バッテリ10からレギュレータ30への給電が停止した場合、レギュレータ30は動作を停止する。
【0034】
レギュレータ30は、切替え機21の出力端の電位を基準としたバッテリ10の出力電圧が目標電圧を超えている場合、切替え機21の出力端の電位を基準としたバッテリ10の出力電圧を目標電圧に降圧し、降圧した電圧(目標電圧)をマイコン32に出力する。目標電圧は、一定であり、予め設定されている。レギュレータ30は、切替え機21の出力端の電位を基準としたバッテリ10の出力電圧が目標電圧以下である場合、バッテリ10の出力電圧をそのままマイコン32に出力する。
【0035】
レギュレータ30がマイコン32に電圧を出力している場合、マイコン32に電力が供給される。バッテリ10がレギュレータ30を介してマイコン32に電力を供給している場合、電流は、バッテリ10の正極からレギュレータ30、マイコン32及び切替え機21の出力端の順に流れる。レギュレータ30からマイコン32に出力されている電圧が一定電圧以上である場合、マイコン32は作動する。レギュレータ30からマイコン32に出力されている電圧が一定電圧未満である場合、マイコン32は動作を停止する。
【0036】
バッテリ10は駆動部31にも電力を供給する。バッテリ10が駆動部31に電力を供給している場合、電流は、バッテリ10の正極から駆動部31及び切替え機21の出力端の順に流れる。レギュレータ30、駆動部31及びマイコン32から出力された電流は、切替え機21の出力端を介して流れる。
【0037】
マイコン32は、ハイレベル電圧及びローレベル電圧を駆動部31に出力する。マイコン32が駆動部31にハイレベル電圧を出力している場合、駆動部31は、切替え機21の出力端の電位を基準としたバッテリ10の出力電圧を昇圧し、昇圧した電圧をメインスイッチ20のゲートに出力する。駆動部31が、昇圧した電圧をメインスイッチ20のゲートに出力している場合、メインスイッチ20では、ソースの電位を基準としたゲートの電圧はオン電圧以上であり、メインスイッチ20はオンである。
【0038】
マイコン32が駆動部31にローレベル電圧を出力している場合、駆動部31は、昇圧を停止し、電圧をメインスイッチ20のゲートに出力することはない。駆動部31が電圧をメインスイッチ20のゲートに出力していない場合、メインスイッチ20では、ソースの電位を基準としたゲートの電圧がオフ電圧未満であり、メインスイッチ20はオフである。
【0039】
マイコン32が、駆動部31に出力している電圧をローレベル電圧からハイレベル電圧に切替えた場合、駆動部31はメインスイッチ20をオフからオンに切替える。マイコン32が、駆動部31に出力している電圧をハイレベル電圧からローレベル電圧に切替えた場合、駆動部31はメインスイッチ20をオンからオフに切替える。
【0040】
駆動部31は、一又は複数のサブスイッチ40を有する。一又は複数のサブスイッチ40夫々について、駆動部31が動作している間、オンからオフへの切替えと、オフからオンへの切替えとが繰り返し行われる。一又は複数のサブスイッチ40において切替えが行われた場合、切替え機21の出力端から出力される出力電流は変動する。
【0041】
ヒューズ22が配置された第1電流経路を出力電流が流れた場合におけるヒューズ22の両端間の電圧の最大値は、ダイオード23において、アノード及びカソードの順に電流が流れた場合におけるダイオード23の両端間の電圧(以下、順方向電圧という)の最小値未満である。即ち、ヒューズ22の抵抗値は十分に小さい。このため、基本的に、切替え機21の出力端から出力された出力電流は第1電流経路を流れ、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧は小さい。後述するように、第1電流経路を介した通電が停止した場合に出力電流は、ダイオード23が配置された第2電流経路を流れる。
【0042】
第1電流経路を流れる電流が上昇した場合、第1導線W1の第1インダクタL1は、サージ電圧を発生させる。このとき、第1導線W1は、導体13側の一端の電位を基準としたヒューズ22側の電圧を上昇させる。これにより、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧が上昇する。バッテリ10の負極が導体13に接続されている。従って、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧が上昇した場合、バッテリ10がマイコン32に印加することが可能な最大の電圧が、バッテリ10の出力電圧からサージ電圧を減算することによって算出される電圧に低下する。
【0043】
バッテリ10の出力電圧は、バッテリ10から出力されている電流の大きさに応じて変動する。バッテリ10の出力電圧が低い場合において、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧が大きく上昇したとき、バッテリ10がマイコン32に印加することが可能な最大の電圧が、前述した一定電圧未満となる。この場合、マイコン32は動作を停止する。
【0044】
マイコン32が動作を停止した場合、駆動部31が動作を停止し、メインスイッチ20がオフに切替わる。これにより、バッテリ10から負荷12への給電が停止し、負荷12が突然に動作を停止する。マイコン32が不意に動作を停止することを防止するためには、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧の上昇、即ち、サージ電圧を抑制する必要がある。
【0045】
第1電流経路を流れる電流が低下した場合も、第1導線W1の第1インダクタL1は、サージ電圧を発生させる。このとき、第1導線W1は、導体13側の一端の電位を基準としたヒューズ22側の電圧を低下させる。これにより、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧が低下する。導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧が低下した場合、バッテリ10がマイコン32に印加することが可能な最大の電圧が、バッテリ10の出力電圧にサージ電圧を加算することによって算出される電圧に上昇する。このため、第1電流経路を流れる電流が低下した場合において、マイコン32が動作を停止することはない。
【0046】
以下では、ヒューズ22が配置される第1電流経路と、ダイオード23が配置される第2電流経路とを設けることによって得られる効果を述べる。
【0047】
図3は、第1導線W1が開放された場合における通電の説明図である。例えば、第1導線W1と導体13との接続が外れた場合、図3に示すように、第1導線W1の導体13側の一端が開放される。第1導線W1の導体13側の一端が開放された場合、第1電流経路を介した通電が停止する。この場合、切替え機21の出力端から出力した出力電流は、ダイオード23が配置された第2電流経路を流れる。このため、バッテリ10から切替え機21、即ち、レギュレータ30、駆動部31及びマイコン32への給電は継続される。
【0048】
第1導線W1の導体13側の一端の開放以外の原因によって第1電流経路を介した通電が停止した場合も、切替え機21の出力端から出力した出力電流は第2電流経路を流れる。結果、バッテリ10から切替え機21への給電は継続される。
【0049】
図4は、第2導線W2が開放された場合における通電の説明図である。例えば、第2導線W2と導体13との接続が外れた場合、図4に示すように、第2導線W2の導体13側の一端が開放される。第2導線W2の導体13側の一端が開放された場合、第2電流経路を介した通電が停止する。この場合、切替え機21の出力端から出力した電流は、ヒューズ22が配置された第1電流経路を流れ続ける。このため、バッテリ10から切替え機21への給電は継続される。
【0050】
第2導線W2の導体13側の一端の開放以外の原因によって第2電流経路を介した通電が停止した場合も、切替え機21の出力端から出力した出力電流は第1電流経路を流れ続ける。結果、バッテリ10から切替え機21への給電は継続される。
【0051】
以上のように、第1電流経路を介した通電が停止した場合、出力電流は第2電流経路を流れる。第2電流経路を介した通電が停止した場合、出力電流は第1電流経路を流れ続ける。このため、切替え機21への給電が停止する可能性は低い。
【0052】
図5はダイオード23の作用の説明図である。前述したように、駆動部31が有する一又は複数のサブスイッチ40において切替えが行われた場合、切替え機21の出力端から出力される出力電流は変動する。出力電流が上昇した場合、第1導線W1の第1インダクタL1はサージ電圧を発生させ、第1導線W1は、導体13側の一端の電位を基準としたヒューズ22側の一端の電圧を上昇させる。結果、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧が上昇する。
【0053】
サージ電圧は、第1インダクタL1のインダクタンスが大きい程、高い。第1インダクタL1のインダクタンスは、車両内で配置されている状態の第1導線W1の形状に依存する。第1インダクタL1のインダクタンスは、第1導線W1が曲げられているか否かに応じて変動する。また、第1導線W1が曲げられている場合においては、第1インダクタL1のインダクタンスは、曲げられている部分の曲率に応じて変動する。車両が走行している場合、車両内で配置されている状態の第1導線W1の形状が変動するので、第1インダクタL1のインダクタンスも変動する。
【0054】
電源システム1では、図5に示すように、電流が、第1導線W1の一端から、ヒューズ22、ダイオード23、第2導線W2、導体13及び第1導線W1の他端の順に流れる電流経路(以下、還流経路という)が形成されている。導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧がダイオード23の順方向電圧以上となった場合、電流が還流経路を流れる。これにより、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧はダイオード23の順方向電圧、例えば、0.7Vに維持される。
【0055】
従って、第1導線W1の第1インダクタL1がサージ電圧を発生した場合であっても、ダイオード23は、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧をダイオード23の順方向電圧以下に維持する。結果、サージ電圧はダイオード23の順方向電圧以下に抑制される。
【0056】
電源システム1では、第1インダクタL1のインダクタンスは、第2インダクタL2のインダクタンスを超えている。即ち、第1導線W1のインダクタンス成分は、第2導線W2のインダクタンス成分を超えている。この場合、導体13の電位を基準とした切替え機21の出力端の電圧がダイオード23の順方向電圧以上となる可能性、即ち、電流が還流経路を流れる可能性が高い。このため、第1導線W1のインダクタンス成分は、第2導線W2のインダクタンス成分を超えている電源システム1では、サージ電圧を抑制する効果は大きい。
【0057】
第1インダクタL1のインダクタンスは、第1導線W1が細い程、大きく、第1導線W1が長い程、大きい。同様に、第2インダクタL2のインダクタンスは、第2導線W2が細い程、大きく、第2導線W2が長い程、大きい。
【0058】
図6は、過電流保護の説明図である。切替え機21の出力端から出力した出力電流が、ヒューズ22が配置された第1電流経路を流れている場合において、ヒューズ22を流れる電流、即ち、出力電流が第1閾値以上となったとき、ヒューズ22は溶断される。これにより、第1電流経路を介して、第1閾値を超える電流が流れることはない。
【0059】
図7は、過電流保護の他の説明図である。前述したように、第1電流経路を介した通電が停止した場合、切替え機21の出力端から出力した出力電流は、ダイオード23が配置された第2電流経路を流れる。例えば、図7に示すように、ヒューズ22が溶断された場合、又は、図3に示すように、第1導線W1の導体13側の一端が開放された場合、第1電流経路を介した通電が停止する。
【0060】
出力電流が第2電流経路を流れている場合において、ダイオード23を流れる電流、即ち、出力電流が第2閾値以上となったとき、ダイオード23は溶断される。これにより、第2閾値を超える電流が第2電流経路を流れることはない。
【0061】
以上のように、第1電流経路にヒューズ22が配置されているため、第1閾値を超える電流が第1電流経路を流れることはない。また、第2電流経路にダイオード23が配置されているため、第2閾値を超える電流が第2電流経路を流れることはない。従って、切替え機21を流れる電流が、第1閾値及び第2閾値中の高い閾値を超えることはない。結果、切替え機21は過電流から保護される。第1閾値及び第2閾値は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0062】
切替え機21を過電流から保護する構成として、ヒューズ22及びダイオード23の代わりに、自身を流れる電流が所定値以上となった場合に溶断される溶断素子を用いる構成が考えられる。この構成では、切替え機21の出力端に溶断素子の一端が接続され、溶断素子の他端に第1導線W1及び第2導線W2の一端が接続される。この場合、出力電流が所定値以上となった場合、溶断素子が溶断される。結果、切替え機21に過電流が流れることはない。
【0063】
しかしながら、切替え機21から出力される出力電流の上昇とは異なる原因、例えば、車両の振動によって、溶断素子が破壊された場合、切替え機21への給電が停止する。
【0064】
電源システム1では、切替え機21から出力される出力電流の上昇とは異なる原因でヒューズ22が破壊された場合、出力電流は第2電流経路を流れる。切替え機21から出力される出力電流の上昇とは異なる原因でダイオード23が破壊された場合、出力電流は第1電流経路を流れる。このため、切替え機21から出力される出力電流の上昇とは異なる原因で切替え機21への給電が停止する可能性も低い。
【0065】
給電制御装置11では、ダイオード23が溶断機能を有している。このため、ダイオード23に加えて、第2電流経路に、自身を流れる電流が所定値以上となった場合に溶断される溶断素子、例えば、ヒューズを配置する必要はない。このため、給電制御装置11を構成する部品の数は少なく、給電制御装置11の小型化を実現することができる。
【0066】
なお、第1インダクタL1のインダクタンスは、第2インダクタL2のインダクタンス以下であってもよい。また、自身を介して流れる電流が第2閾値以上となった場合に溶断される第2溶断部として、ダイオード23の代わりに、溶断機能を有しないダイオードと、溶断素子との直列回路を用いてもよい。更に、自身を介して流れる電流が第1閾値以上となった場合に溶断される抵抗素子又は導線等の溶断素子をヒューズ22の代わりに用いてもよい。また、メインスイッチ20は、Nチャネル型のFETに限定されず、Pチャネル型のFET、バイポーラトランジスタ又はリレー接点等であってもよい。
【0067】
以上のような場合であっても、切替え機21への給電が停止する可能性は低く、サージ電圧はダイオード23の順方向電圧以下に抑制され、切替え機21に過電流が流れることはない。
【0068】
開示された本実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 電源システム
10 バッテリ
11 給電制御装置
12 負荷
13 導体
20 メインスイッチ
21 切替え機
22 ヒューズ(第1溶断部)
23 ダイオード(第2溶断部)
30 レギュレータ
31 駆動部
32 マイコン
40 サブスイッチ
L1 第1インダクタ
L2 第2インダクタ
W1 第1導線
W2 第2導線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7