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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220114BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220114BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20220114BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/00 101
B32B27/36
C08J7/04 Z CFD
C08J7/04 Z CFH
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018518363
(86)(22)【出願日】2017-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2017018726
(87)【国際公開番号】W WO2017200056
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2016101737
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016101738
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097928
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 数彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 太朗
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-214497(JP,A)
【文献】特開2007-186804(JP,A)
【文献】特開2015-208898(JP,A)
【文献】特開2003-292894(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198827(WO,A1)
【文献】特開2013-208810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
C08J7/04-7/06
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、重量平均分子量が500以上、30000以下であり、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する第1のポリジメチルシロキサンと、重量平均分子量が150以上、10000以下であり、1分子中に少なくとも1個のヒドロシリル基を有する第2のポリジメチルシロキサンと、白金系触媒とを含有する離型剤組成物からなるシリコーン系離型層を有し、前記離型剤組成物において、前記第1のポリジメチルシロキサンの含有量は40~80重量%であり、前記第2のポリジメチルシロキサンの含有量は20~60重量%であり、且つ前記離型剤組成物中の各成分の総含有量が100重量%であることを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層と離型層とが順次設けられた離型フィルムであり、当該塗布層が、導電性化合物(A)とバインダーポリマー(B)とを含有し、当該離型層が、重量平均分子量が500以上、30000以下であり、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する第1のポリジメチルシロキサンと、重量平均分子量が150以上、10000以下であり、1分子中に少なくとも1個のヒドロシリル基を有する第2のポリジメチルシロキサンと、白金系触媒とを含有する離型剤組成物からなるシリコーン系離型層であり、前記離型剤組成物において、前記第1のポリジメチルシロキサンの含有量は40~80重量%であり、前記第2のポリジメチルシロキサンの含有量は20~60重量%であり、且つ前記離型剤組成物中の各成分の総含有量が100重量%であることを特徴とする離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムが、粘着剤層を介して貼り合わせる各種用途(静電容量方式のタッチパネル、LCD用偏光板、位相差板、PDP構成部材、有機EL構成部材、各種ディスプレイ構成部材、各種光学用途等)に使用されている。
【0003】
基材レス両面粘着シートは、粘着層の両面に剥離力の相対的に低い軽剥離フィルムと、剥離力の相対的に高い重剥離フィルムが積層された積層体構成からなり、両面の剥離フィルムを除去した後には、支持基材を有さない粘着層のみとなる両面粘着シートである。
【0004】
基材レス両面粘着シートの使用方法として、まず軽剥離フィルムが剥がされ、露出した粘着層の一方の表面が貼り合わせる相手方の物体面に接着され、その接着後、さらに重剥離フィルムが剥がされ、露出された粘着層の他方の面が、異なる物体面に接着され、これにより物体間が面接着される加工工程が例示される。
【0005】
近年、基材レス両面粘着シートは、その作業性良好な点が注目され、用途が広がりつつあり、各種光学用途の部材、例えば、携帯電話等にも使用されている。特に、静電容量方式のタッチパネルは、二本の指で画面操作を行なうマルチタッチ操作により、情報端末としての用途が急速に拡大する状況にある。静電容量方式のタッチパネルは、抵抗膜方式に比べ、構成上、印刷の段差が厚くなる傾向にあるため、粘着層を厚くして印刷の段差を解消する提案がなされている。粘着層を厚くした場合には、離型フィルムを剥す時に、粘着層の一部が離型フィルムに付着する、或いは離型フィルムに転写した部分の粘着層に気泡が混入する等の不具合を生じる場合があった。そのため、基材レス両面粘着シートを光学用途に使用する場合には、基材レス両面粘着シートだけでなく、組み合わせる離型フィルムにおいても、従来よりも一段と厳しく、より高度な品質の離型フィルムが必要とされる状況にある。
【0006】
基材レス両面粘着シートの使用において、軽剥離離型フィルムを粘着層から剥離する際に、軽剥離離型フィルムの剥離力が高く、粘着剤から上手く剥離できないことが問題になっている。
【0007】
かかる問題に対する解決策として、例えば、特許文献1~3には、離型層の剥離速度を一定レベル以下にする提案がされている。しかしながら、特許文献1~3に記載の離型フィルムでは、軽剥離化が不十分で、全く対応できないという課題がある。
【0008】
また、離型フィルム使用時、粘着層から剥離させた際に剥離帯電が発生する場合があり、その結果、部材を製造する際に異物等の付着或いは巻き込みによる製品不良が発生する等の不具合を生じる場合がある。そのため、製造工程における設備対応による帯電防止対策だけでは、必ずしも十分ではなく、離型フィルム自体からの帯電防止処理が強く切望される状況にある。
【0009】
かかる問題に対する解決策として、例えば、特許文献4、特許文献5には、π電子共役系導電性高分子を含有する帯電防止層の提案がされている。当該文献記載の帯電防止フィルムにおいては、帯電防止性は良好な反面、帯電防止層上に離型層を設けた場合に、離型層と帯電防止層との密着性は必ずしも十分ではない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-25088号公報
【文献】特開2012-179888号公報
【文献】特開2015-142999号公報
【文献】特開2012-183811号公報
【文献】特開2012-993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その第1の解決課題は、使用時の剥離速度に拘わらず、粘着剤からの離型性が良好で、粘着剤の部材への移行性が少ない離型フィルムを提供することにある。
そして、本発明の第2の解決課題は、使用時の剥離速度に拘わらず、粘着剤からの離型性が良好で、粘着剤の部材への移行性が少なく、帯電防止性良好な離型フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0014】
(1)本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、重量平均分子量が500以上、30000以下であり、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する第1のポリジメチルシロキサンと、重量平均分子量が150以上、10000以下であり、1分子中に少なくとも1個のヒドロシリル基を有する第2のポリジメチルシロキサンとを含有し、白金系触媒とを含有する離型剤組成物からなるシリコーン系離型層を有し、前記離型剤組成物において、前記第1のポリジメチルシロキサンの含有量は40~80重量%であり、前記第2のポリジメチルシロキサンの含有量は20~60重量%であり、且つ前記離型剤組成物中の各成分の総含有量が100重量%であることを特徴とする離型フィルムである(第1発明)。
【0015】
(2)本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層と離型層とが順次設けられた離型フィルムであり、当該塗布層が、導電性化合物(A)とバインダーポリマー(B)とを含有し、当該離型層が、重量平均分子量が500以上、30000以下であり、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する第1のポリジメチルシロキサンと、重量平均分子量が150以上、10000以下であり、1分子中に少なくとも1個のヒドロシリル基を有する第2のポリジメチルシロキサンと、白金系触媒を含有する離型剤組成物からなるシリコーン系離型層であり、前記離型剤組成物において、前記第1のポリジメチルシロキサンの含有量は40~80重量%であり、前記第2のポリジメチルシロキサンの含有量は20~60重量%であり、且つ前記離型剤組成物中の各成分の総含有量が100重量%であることを特徴とするポリエステルフィルムである(第2発明)。
【0016】
また、本発明においては、剥離速度が300mm/分における、シリコーン系離型層表面と、tesa社製tesa7475粘着テープとの剥離力が9g/25mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば前記の課題を解決することが出来る。
本発明の離型フィルムは、例えば、タッチパネル製造用基材レス両面粘着シート、静電容量方式のタッチパネル製造用等、液晶ディスプレイ(LCD)に用いられる偏光板、位相差板等のLCD構成部材製造用、プラズマディスプレイパネル構成部材製造用、有機エレクトロルミネッセンス構成部材製造用等、各種ディスプレイ構成部材製造用のほか、各種粘着剤層保護用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願第1発明はポリエステルフィルム/シリコーン系離型層の層構成を有し、本願第2発明はポリエステルフィルム/塗布層/シリコーン系離型層の層構成を有する。以下、ポリエステルフィルム、塗布層、シリコーン系離型層の順に説明する。
【0019】
[ポリエステルフィルム]
離型フィルムを粘着剤保護用途で用いる際、剥離時に粘着剤層の一部が離型フィルムに付着することがある。離型フィルムに粘着剤が付着すると、粘着剤層の表面形状が粗面化となり、光学部材などの他の部材との密着性に悪影響を及ぼす可能性が考えられる。離型フィルムの基材が紙である場合、剥離時に粘着剤の付着だけでなく、移行性が不十分であることから、本発明ではポリエステルフィルムが用いられる。
本発明でいうポリエステルフィルムとは、いわゆる押出法に従い押出口金から溶融押出されたシートを延伸したフィルムである。
【0020】
上記のフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン-2、6-ナフタレート等が例示される。
【0021】
本発明のフィルム中には、好ましくは、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子が配合される。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59-5216号公報、特開昭59-217755号公報等に記載されているような耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0022】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0023】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常は0.01~3μm、好ましくは0.1~2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できない場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの製膜時に、その粒子の凝集物のために透明性が低下することがある他に、破断などを起こし易くなり、生産性の面で問題になることがある。
【0024】
さらにポリエステル中の粒子含有量は、通常は0.001~5重量%、好ましくは0.005~3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0025】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0026】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0027】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0028】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10~350μm、好ましくは15~100μmの範囲である。
【0029】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
先ず、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
次に、得られた未延伸シートを二軸方向に延伸する。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常90~140℃、好ましくは95~120℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3.0~6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常90~170℃であり、延伸倍率は通常3.0~7倍、好ましくは3.5~6倍である。
そして、引き続き180~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0030】
また、本発明のポリエステルフィルム製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常90~140℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4~50倍、好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。そして、引き続き、170~250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0031】
さらに上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に塗布層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0032】
[塗布層]
本発明の離型フィルムを構成する塗布層について説明する。
前記塗布層は、導電性化合物(A)とバインダーポリマー(B)とを含有することを必須要件とするものである。
【0033】
(導電性化合物(A))
本発明の離型フィルムを構成する塗布層は、帯電防止性、オリゴマー析出防止性を良好とするとするために、導電性化合物(A)が含有されていることが重要である。かかる導電性化合物(A)としては、チオフェンまたはチオフェン誘導体を単独または共重合して得られる重合体が好ましく、特に、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされたものもしくは、化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされたものが、優れた導電性を示し好適である。かかる化合物(A)としては、たとえば下記の化1もしくは化2の化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合して得られるものを例示できる。
【0034】
【化1】

(R,Rはそれぞれ独立に、水素元素、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、もしくは芳香族炭化水素基をあらわし、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロヘキシレン基、ベンゼン基などである。)
【0035】
【化2】

(nは1~4の整数である。)
【0036】
本発明の離型フィルムにおいては、化2で表される構造式からなるポリチオフェン、またはポリチオフェン誘導体を用いることが好ましく、例えば化2で、n=1(メチレン基)、n=2(エチレン基)、n=3(プロピレン基)の化合物が好ましい。中でも特に好ましいのは、n=2のエチレン基の化合物、すなわち、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェンである。ポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体としては、例えばチオフェン環の3位と4位の位置に官能基が結合した化合物が例示される。上記の通り3位と4位の炭素原子に酸素原子が結合した化合物が好ましい。なお、該炭素原子に直接炭素原子あるいは水素原子が結合した構造を有する化合物については、塗液の水性化が容易でない場合がある。
なお、かかる重合体の製造方法としては、例えば特開平7-90060号公報に示される方法が採用できる。
【0037】
本発明の離型フィルムにおいては、塗布層に上記ポリチオフェンとポリ陰イオンを含有する組成物、または、上記ポリチオフェン誘導体とポリ陰イオンを含有する組成物であることが好ましい。
重合時に使用するポリ陰イオンとしては、例えばポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸などが例示される。またこれらの酸は、一部または全てが中和されていてもよい。
特に好ましい様態としては、ポリチオフェンとして上記化2でn=2の化合物、ポリ陰イオンとしてポリスチレンスルホン酸を用いたものが挙げられる。
【0038】
(バインダーポリマー(B))
本発明における塗布層を構成するバインダーポリマー(B)とは、高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月、化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
【0039】
本発明における塗布層を構成するバインダーポリマー(B)としては、チオフェンまたはチオフェン誘導体と相溶又は混合分散可能であれば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;エポキシ樹脂;オキセタン樹脂;キシレン樹脂;アラミド樹脂;ポリイミドシリコーン;ポリウレタン;ポリウレア;メラミン樹脂;フェノール樹脂;ポリエーテル;アクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0040】
前記バインダーポリマー(B)は、有機溶剤に溶解されていてもよいし、スルホ基やカルボキシ基などの官能基が付与されて水溶液化されていてもよい。また、バインダーポリマー(B)には、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶媒、粘度調整剤等を併用してもよい。
【0041】
前記バインダーポリマー(B)の中でも、塗布液作製時の混合が容易なことから、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂の中から選択される、いずれか1種類以上が好ましい。特にポリウレタン樹脂が好ましい。
【0042】
<ポリエステル樹脂>
本発明において使用するポリエステル樹脂とは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを構成成分とする線状ポリエステルと定義する。ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6ーナフタレンジカルボン酸、4,4-ジフェニルジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、フェニルインダンジカルボン酸、ダイマー酸等を例示することができる。これらの成分は二種以上を用いることができる。さらに、これらの成分とともにマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のような不飽和多塩基酸やp-ヒドロキシ安息香酸、p-(β-ヒドロキシエトキシ)安息香酸等のようなヒドロキシカルボン酸を少割合用いることができる。不飽和多塩基酸成分やヒドロキシカルボン酸成分の割合は高々10モル%、好ましくは5モル%以下である。
【0043】
また、グリコール成分としては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシ)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシ)グリコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等を例示することができる。これらは2種以上を用いることができる。
【0044】
かかるポリオール成分の中でもエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物、1,4-ブタンジオールが好ましく、さらにエチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物が好ましい。また、前記ポリエステル樹脂には、水性液化を容易にするために若干量の、スルホン酸塩基を有する化合物やカルボン酸塩基を有する化合物を共重合させることが可能であり、その方が好ましい。このスルホン酸塩基を有する化合物としては、例えば5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-アンモニウムスルホイソフタル酸、4-ナトリウムスルホイソフタル酸、4-メチルアンモニウムスルホイソフタル酸、2-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-カリウムスルホイソフタル酸、4-カリウムスルホイソフタル酸、2-カリウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホコハク酸等のスルホン酸アルカリ金属塩系またはスルホン酸アミン塩系化合物等が好ましく挙げられる。
【0045】
このカルボン酸塩基を有する化合物としては、例えば無水トリメリット酸、トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、ジメチロールプロピオン酸等、あるいはこれらのモノアルカリ金属塩等が挙げられる。なお、遊離カルボキシル基は共重合後にアルカリ金属化合物やアミン化合物を作用させてカルボン酸塩基とする。これらの化合物の中からそれぞれ適宜1つ以上選択して、常法の重縮合反応によって合成することによって得たポリエステルを用いることができる。
【0046】
ポリエステル樹脂に関して、ガラス転移温度(以下、Tgと略記する場合がある。)は40℃以上であるのが好ましく、さらに好ましくは60℃以上がよい。Tgが40℃未満の場合、接着性向上を目的として、塗布層の塗布厚みを厚くした場合、ブロッキングし易くなる等の不具合を生じる場合がある。
【0047】
<アクリル樹脂>
アクリル樹脂としては、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。さらにポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0048】
上記炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、代表的な化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類。また、これらと併用して以下に示すような重合性モノマーを共重合することができる。すなわち、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロイルシリコンマクロマー等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類等が例示される。
【0049】
アクリル樹脂においてはガラス転移温度(以下、Tgと略記する場合がある。)は40℃以上であるのが好ましく、さらに好ましくは60℃以上がよい。Tgが40℃未満の場合、接着性向上を目的として、塗布層の塗布厚みを厚くした場合、ブロッキングし易くなる等の不具合を生じる場合がある。
【0050】
<ウレタン樹脂>
本発明におけるポリウレタン樹脂とはウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことを指す。その中でも、インラインコーティングへの適性を考慮した場合、水分散性または水溶性のウレタン樹脂が好ましい。水分散性または水溶性を付与させるためには、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をウレタン樹脂に導入することが可能である。前記親水性基のなかでも、塗膜物性及び密着性向上の観点から、カルボン酸基またはスルホン酸基が好適に使用される。
【0051】
ウレタン樹脂の具体的な製造例として、例えば、水酸基とイソシアネートとの反応を利用する方法が挙げられる。原料として用いる水酸基としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いても良い。
【0052】
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0053】
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
【0054】
ポリカーボネート系ポリオール類としては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えば、ポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0055】
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0056】
ウレタン樹脂を合成する際には従来から公知の鎖延長剤を使用しても良く、鎖延長剤として、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に限定されるわけではなく、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤が汎用的に用いられる。
【0057】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類が例示されることを挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1 ,9-ノナンジアミン、1 ,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0058】
本発明においては、離型フィルムを構成する塗布層中には離型層に対する接着性向上を目的として、さらに好ましくはポリウレタン樹脂を含有するのがよい。
【0059】
本発明における塗布層を設けるための塗布液には、さらに成分(C)として、グリセリン(C1)、ポリグリセリン(C2)、グリセリンまたはポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物(C3)の群から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体を含有するのが好ましい。分子内のグリセリン単位の平均個数が2~20の範囲のものがより好ましい。
【0060】
また、グリセリンまたはポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物とは、グリセリンまたはポリグリセリンのヒドロキシル基にアルキレンオキサイドまたはその誘導体を付加重合した構造を有するものである。
【0061】
ここで、グリセリンまたはポリグリセリン骨格のヒドロキシル基ごとに、付加されるアルキレンオキサイドまたはその誘導体の構造は異なっていても構わない。また、少なくとも分子中一つのヒドロキシル基に付加されていればよく、全てのヒドロキシル基にアルキレンオキサイドまたはその誘導体が付加されている必要はない。
【0062】
アルキレンオキサイドまたはその誘導体として好ましいものは、エチレンオキサイド またはプロピレンオキサイド骨格を含んだ構造である。アルキレンオキサイド構造中のアルキル鎖が長くなりすぎると、疎水性が強くなり、塗布液中での均一な分散性が悪化し、塗膜の帯電防止性や透明性が悪化する傾向がある。特に好ましいものはエチレンオキサイドである。
【0063】
かかるグリセリンまたはポリグリセリンの、アルキレンオキサイド付加物において、グリセリンまたはポリグリセリン骨格に対するアルキレンオキサイドまたはその誘導体の共重合比率は、特に限定されないが、分子量比で、グリセリンまたはポリグリセリン部分を1とした時に、アルキレンオキサイド部分が20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下であることが好ましい。グリセリンまたはポリグリセリン骨格に対するアルキレンオキサイドまたはその誘導体の比率が、この範囲より大きい場合には、通常のポリアルキレンオキサイドを用いた場合の特性に近くなり、本発明の効果が十分に得られない場合がある。
【0064】
本発明における成分(C)に関して、特に好ましい様態としては、ポリグリセリン(C2)および、グリセリンまたはポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物(C3)が例示される。ポリグリセリン(C2)としては、下記の化3の化合物において、nが2~20のものが特に好ましい。また、グリセリンまたはポリグリセリンのアルキレンオキサイド付加物(C3)としては、下記の化3の化合物において、n=2にエチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイドを付加した構造のものが特に好ましく、また、その付加数は、最終的な化合物(C3)としての重量平均分子量で300~2000の範囲になるものが特に好ましい。
【0065】
【化3】
【0066】
塗布層中における成分(C)の配合比率に関しては、10~90重量%の範囲、より好ましくは20~80重量%の範囲である。当該範囲が10重量%未満の場合、塗布性が低下する場合がある。一方、90重量%を超える場合には塗布層の耐久性が不十分となる場合がある。
【0067】
本発明において、離型フィルムを構成する塗布層に関して、塗布層中に占める導電性化合物(A)の重量が0.5mg/m以上であることが好ましく、さらに好ましくは1mg/m以上がよい。導電性化合物(A)の量が0.5mg/m以上することで、十分な帯電防止性を有することができる。
【0068】
また、本発明において、離型フィルムを構成する塗布層中に占める導電性化合物(A)の比率は限定されないが、上限に関して好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、最も好ましくは60重量%以下である。導電性化合物(A)の比率が重量比率90重量%を超える場合には塗布層の透明性が不十分となる、或いは帯電防止性能が不十分となる場合がある。一方、下限に関して、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上である。導電性化合物(A)の重量比率が1重量%未満の場合には、帯電防止性能が不十分となる場合がある。
【0069】
本発明の離型フィルムを構成する塗布層中において、導電性化合物(A)とバインダーポリマー(B)との比率は、重量比で90/10~1/99の範囲であることが好ましく、より好ましくは70/30~1/99、最も好ましくは50/50~2/98の範囲である。当該範囲を外れると帯電防止性能或いは塗膜の外観が悪化しやすい傾向にある。
【0070】
本発明で使用する塗布液は、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、離型剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0071】
本発明における塗布液は、取扱い上、作業環境上、また塗布液組成物の安定性の面から水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を超えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0072】
本発明における塗布層は、特定の化合物を含有する塗布液をフィルムに塗布することにより設けられ、特に本発明では塗布をフィルム製膜中に行うインラインコーティングにより設けられることが好ましい。
【0073】
[シリコーン離型層]
シリコーン系離型層は、以下の離型剤組成物を使用して形成されてなるものである。本実施形態における離型剤組成物は、付加反応型シリコーン樹脂として、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する第1のポリジメチルシロキサンと、1分子中に少なくとも1個のヒドロシリル基を有する第2のポリジメチルシロキサンとを含有する。
【0074】
本発明において使用する第1のポリジメチルシロキサンに含まれるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の1価炭化水素基が挙げられ、中でもビニル基とヘキセニル基が好ましい。
【0075】
第1のポリジメチルシロキサンの30g中に、アルケニル基(a)は好ましくは3~90mmol含まれ、より好ましくは6~45mmol含まれる。また、第2のポリジメチルシロキサンの30g中に、ヒドロシリル基(b)は好ましくは6~450mmol含まれ、より好ましくは15~450mmol含まれる。さらに、アルケニル基(a)に対するヒドロシリル基(b)のモル比(b/a)は、好ましくは1.5~5.0であり、より好ましくは1.5~3.0である。
【0076】
第1のポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、500以上30000以下であることが必須であり、1000以上或いは20000以下であることが好ましく、特に2000以上或いは10000以下であることがより好ましい。第1のポリジメチルシロキサンの重量平均分子量が500未満だと、反応性が高く、配合液中で反応が進行するため、所望の軽剥離力を発現しなくなり、30000を超えると、反応性が悪くなり、所望の軽剥離力を発現しなくなる。
離型剤組成物での第1のポリジメチルシロキサンの含有量は、40~90重量%が好ましく、50~80重量%がより好ましい。
【0077】
第2のポリジメチルシロキサンの重量平均分子量は、120以上10000以下であることが必須であり、150以上或いは5000以下であることが好ましく、特に200以上或いは2000以下であることがより好ましい。第2のポリジメチルシロキサンの重量平均分子量が120未満だと、反応性が高く、配合液中で反応が進行するため、所望の軽剥離力を発現しなくなり、10000を超えると、反応性が悪くなり、所望の軽剥離力を発現しなくなる。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
離型剤組成物での第2のポリジメチルシロキサンの含有量は、10~60重量%が好ましく、20~50重量%がより好ましい。
【0078】
本発明の離型フィルムでは、シリコーン系離型層をきれいかつ頑丈にするため、付加型の反応を促進する白金系触媒を用いる。本成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体等の白金系化合物、白金黒、白金担持シリカ、白金担持活性炭が例示される。シリコーン系離型層中の白金系触媒含有量は、通常は0.3~3.0重量%、好ましくは0.5~2.0重量%の範囲が良い。シリコーン系離型層中の白金系触媒含有量が0.3重量%よりも低い場合、剥離力の不具合や、塗布層での硬化反応が不十分になるため、面状悪化などの不具合を生じる場合があり、一方、シリコーン系離型層中の白金系触媒含有量が3.0重量%を超える場合には、コストがかかる、また、反応性が高まり、ゲル異物が発生する等の工程不具合を生じてしまうことがある。
【0079】
シリコーン系離型層が上記の条件を満たす離型剤組成物を使用して形成されることで、基材レス両面粘着シートの使用において、軽剥離離型フィルムを粘着層から剥離する際に、軽剥離離型フィルムを極めてスムーズに剥離することができる。
【0080】
本発明の離型剤組成物において、軽剥離性を付与するために、さらに未反応性シリコーン樹脂の1つとして未反応性オルガノポリシロキサンを添加してもよい。未反応性オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、50000以上500000以下であることが好ましい。
【0081】
前記の未反応性シリコーン樹脂としては、下記一般式(I)で示される、オルガノポリシロキサンが好ましい。
SiO(RSiO)SiR……(I)
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない同一または異種の一価炭化水素基、mは正の整数を表す。)
【0082】
本発明の離型剤組成物で使用する未反応性シリコーン樹脂の含有量は、通常は1~10重量%の範囲であり、好ましくは1~5重量%である。未反応性シリコーン樹脂の含有量が1重量%以上で十分な軽剥離効果が発現し、5重量%以下で十分な硬化性、密着性を得ることができる。
【0083】
本発明において剥離力を小さくするために、シリコーンオイルを添加してもよい。シリコーンオイルはストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルと称されるシリコーンオイルで、以下のようなものが挙げられる。ストレートシリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。また、変性シリコーンオイルとしては、側鎖型タイプのポリエーテル変性、アラルキル変性、フロロアルキル変性、長鎖アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級脂肪酸アミド変性、ポリエーテル・長鎖アルキル変性・アラルキル変性、フェニル変性、両末端型のポリエーテル変性、ポリエーテル・メトキシ変性などが挙げられる。
【0084】
本発明の離型剤組成物について、シリコーンオイル成分は、通常は1~10重量%の範囲であり、好ましくは1~5重量%である。シリコーンオイル成分の含有量が1重量%より低いと、剥離力に関する速度依存性が高くなるおそれがあり、5重量%を超えると、移行性が高く、粘着剤加工時にロール汚れや粘着剤面に移行して、粘着剥離力低下などが生じるおそれがある。
【0085】
また、本発明で用いる離型剤組成物について、付加反応型シリコーン樹脂を用いることが好ましい。付加反応型は非常に反応性が高いため、場合によっては、反応抑制剤として、アセチレンアルコールを添加してもよい。その成分は炭素-炭素3重結合と水酸基を有する有機化合物であるが、好ましくは、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールおよびフェニルブチノールからなる群から選択される化合物である。
【0086】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面にシリコーン系離型層を形成する方法は、特に制限されないが、ポリエステルフィルムを製造する工程中で離型剤組成物(塗布液)を塗布する方法が好適に採用される。具体的には、未延伸シート表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、二軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。これらの中では、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布後、フィルムに熱処理を行う過程で同時にシリコーン系離型層を乾燥硬化する方法が経済的である。
また、シリコーン系離型層を形成する方法として、必要に応じ、前述の塗布方法の幾つかを併用した方法も採用し得る。具体的には、未延伸シート表面に第一層を塗布して乾燥し、その後、一軸方向に延伸後、第二層を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。ポリエステルフィルムの表面に塗布液を塗布する方法としては、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ほかにもバーコーター、ドクターブレードコーター等を使用することができる。
【0087】
本発明におけるシリコーン系離型層の塗布量は、通常0.01~1g/mの範囲であることが好ましいが、特に0.15~0.70g/mであることがより好ましい。
【0088】
本発明において、シリコーン系離型層が設けられていない面や、ポリエステルフィルムとシリコーン系離型層との間には、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよく、また、ポリエステルフィルムにはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0089】
本発明においてテープ(日東電工株式会社製、No.31Bテープ)による残留接着率は、80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上である。残留接着率が80%より低いと、移行性が高く、粘着剤加工時にロール汚れや粘着剤面に移行して、粘着剥離力低下などが生じてしまう。
【0090】
本発明において、粘着テープ(tesa社製「tesa7475」)による300mm/分でのシリコーン系離型層面の剥離力は9g/25mm以下であることが好ましく、8g/25mm以下であることがより好ましい。前記剥離力が9g/25mmを超えると、粘着剤層保護用途に離型フィルムを用いる際、離型フィルムが粘着剤から綺麗に剥がれなくなる不具合が発生する場合がある。一方、前記剥離力の下限は特に限定はされないが、1g/25mm以上がより好ましく、3g/25mm以上がさらに好ましい。
【0091】
また、剥離速度は大きくなればなるほど剥離力が大きくなる傾向があり、剥離速度を上げると綺麗に剥がれなくなる不具合が発生する場合がある。
本発明において、粘着テープ(tesa社製「tesa7475」)による30m/分での剥離力は250g/25mm以下が好ましく、200g/25mm以下がより好ましい。前記剥離力が250g/25mm以下とすることで、粘着剤層保護用途に離型フィルムを用いる際、離型フィルムが粘着剤から綺麗に剥がれやすくなり、生産性の観点からも有効である。
一方、前記剥離力の下限は特に限定はされないが、10g/25mm以上がより好ましく、25g/25mm以上がさらに好ましい。
【0092】
本発明における、剥離力とは、粘着テープ(tesa社製「tesa7475」)をシリコーン系離型層面に貼り付け、室温にて1時間放置した後に、ポリエステルフィルムと剥離角度180°、特定の引張速度(剥離速度)でテープを剥離したときに引張試験機で測定した値を言う。本発明において特定の剥離力を調整する方法は、シリコーン系離型層中の組成を選択することにより達成することができるが、その他の手段も採用でき、主にシリコーン離型層の離型剤の種類を、所望の剥離力に応じて変更することが好ましく、さらには、剥離力は用いる離型剤組成物の塗布量に大きく依存するため、その離型剤組成物の塗布量を調整する方法がさらに好ましい。
【0093】
[粘着剤層]
本発明の離型フィルムは、粘着剤層と貼り合せに好適である。
粘着剤層に用いられる粘着剤組成物は特に限定はしないが、具体的にはシリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ粘着剤などが挙げられる。中でも粘着特性の調整範囲が広く、汎用的に用いられている観点からアクリル系粘着剤が好ましく、アクリル溶剤系粘着剤であることがより好ましい。
【0094】
また、前記粘着材組成物には、安定剤、硬化剤、粘着付与剤、充填剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などの添加剤を本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて用いることができる。
【0095】
また、前記粘着剤組成物に用いる溶剤としては、特に限定されないが、適度に均一かつ安定に溶解または分散可能な溶媒を用いることが好ましい。前記溶媒としては、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール、ジアセトンアルコール);ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジアセトンアルコール);エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、蟻酸メチル、PGMEA);脂肪族炭化水素(ヘキサン、シクロヘキサン);ハロゲン化炭化水素(メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素);芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン);アミド(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリドン);エーテル(ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン);エーテルアルコール(1-メトキシ-2-プロパノール);カーボネート(炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル)等が挙げられる。これらの溶媒、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
【実施例
【0096】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0097】
(1)平均粒径(d50:μm)の測定:
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA-CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0098】
(2)離型フィルムの剥離力の評価:
試料フィルムのシリコーン系離型層の表面に粘着テープ(tesa社製「tesa7475」)の片面を貼り付けた後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機(インテスコ社製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分条件下、180°剥離を行った。評価結果は表2A、表3Bに示す。
【0099】
(3)離型フィルムの移行性代替評価(残留接着率):
試料フィルムをA4大に切り取り、フィルムの測定面に粘着テープ(日東電工社製「No.31B」)をゴムローラーを用いて貼り合わせた後、1時間経過後に、粘着テープを剥がし、その粘着テープを、表面を洗浄したステンレス板にゴムローラーを用いて貼り合わせる。上部チャックに粘着テープ、下部チャックにステンレス板を固定し、300mm/minの速度で、180°方向に引き剥がし、接着力(I)を測定する。
試料と貼り合わせない粘着テープ(日東電工社製「No.31B」)を用い、上述と同じ手順で接着力(II)を測定する。残留接着率は次式により求める。評価結果は表2A、表3Bに示す。
残留接着率(%)={接着力(I)/接着力(II)}×100
【0100】
(4)離型フィルムの表面固有抵抗
下記(4-1)の方法に基づき、試料フィルムの離型層表面における表面固有抵抗を測定した。(4-1)の方法では、1×108Ωより高い表面固有抵抗は測定できないため、(4-1)で測定出来なかったサンプルについては(4-2)の方法を用いた。評価結果は表3Bに示す。
《測定方法》
(4-1)三菱化学社製低抵抗率計:ロレスタGPMCP-T600を使用し、23℃、50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面固有抵抗値を測定した。
(4-2)日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、表面固有抵抗値を測定した。
《評価基準》
◎:R(Ω)が1×10以下(実用可能で、特に良好)
○:R(Ω)が1×10以下(実用可能)
△:R(Ω)が1×1010以下(実用上問題になる場合がある)
×:R(Ω)が1×1010を超える(実用困難)
【0101】
(5)離型フィルムの塗膜密着性評価(実用特性代用評価)
試料フィルムを恒温恒湿槽中、60℃、80%RH雰囲気下、4週間放置した後に試料フィルムを取り出した。その後、試料フィルムの離型面を触手により5回擦り、離型層の脱落程度を以下の評価基準によって評価を行った。
《評価基準》
○:塗膜の脱落が見られない(実用可能で、特に良好)
△:塗膜が白くなるが脱落はしていない(実用可能な)
×:塗膜の脱落が確認された(実用困難)
【0102】
(6)離型特性(実用代替評価):
離型フィルムに下記組成のアクリル系粘着剤組成物を塗工後、100℃、5分間加熱処理して、乾燥後の厚みが200μmの粘着剤を得た。その後、離型フィルムと粘着剤貼り合わせ品を室温で1週間保管した後、離型フィルムを剥がし、粘着剤より離型フィルムを剥がした時の状況より、以下の評価基準によって離型特性を評価した。評価結果は表2A、表3Bに示す。
《アクリル系粘着剤組成物》
主剤:AT352(サイデン化学社製) 100重量部
硬化剤:AL(サイデン化学社製) 0.25重量部
添加剤:X-301-375SK(サイデン化学社製) 0.25重量部
添加剤:X-301-352S(サイデン化学社製) 0.4重量部
トルエン: 40重量部
《評価基準》
○:離型フィルムがきれいに剥がれ、粘着剤がシリコーン系離型層に付着する現象が見られない。
△:離型フィルムは剥がれるが、速い速度で剥離した場合に粘着剤がシリコーン系離型層に付着する。
×:離型フィルムに粘着剤が付着する、上手く剥がれない。
【0103】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
【0104】
<ポリエステルの製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、平均粒径1.6μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.06重量部、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、4時間を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルの極限粘度は0.53dl/gであった。
【0105】
<離型フィルムの製造>
以下の実施例1A~4A及び比較例1A~6Aは第1発明の説明用であり、以下の実施例1B~4B及び比較例1B~6Bは第2発明の説明用である。
【0106】
[実施例1A]
先に述べたポリエステル(1)を原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して厚さ約550μmの無定形フィルムを得た。
このフィルムを85℃で縦方向に3.7倍延伸し、100℃で横方向に3.9倍延伸し、210℃で熱処理して、厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0107】
得られたポリエステルフィルムに、下記に示す離型剤組成物を塗布量(乾燥後)が0.200g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度150℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型フィルムを得た。離型フィルムの評価結果を表2Aに示す。
【0108】
また、実施例1Aで得た離型フィルムを引張速度が30m/分で180°剥離を行った結果、剥離力は108g/25mmであった。なお、剥離力に関する条件は、引張速度を30m/分に変更した以外は前記(2)と同様にして行った。
【0109】
<離型剤組成物>
第1のポリジメチルシロキサンとして、ポリジメチルシロキサンの構造中にビニル基を少なくとも2個有するビニル変性シリコーン樹脂(重量平均分子量:2000)と、第2のポリジメチルシロキサンとして、ポリジメチルシロキサンの構造中にヒドロシリル基を少なくとも2個有するポリメチルハイドロジェンシロキサン(重量平均分子量:200)を第1のポリジメチルシロキサン/第2のポリジメチルシロキサン=77/22となるように混ぜ合わせ、固形分3重量%となるようにトルエン/MEK/ヘキサン=1/1/18の配合比の溶剤で希釈したのち、白金系触媒(東レ・ダウコーニング社製 SRX-212)2重量部を加えて、離型剤組成物を得た。
上記の白金系触媒の重量部は第1のポリジメチルシロキサンと第2のポリジメチルシロキサンの合計部数を100とした時の値である。
【0110】
[実施例2A~4A]、[比較例1A~6A]
シリコーン系離型層について、表1Aに示す離型剤組成物に変更以外は実施例1Aと同様にして製造し、離型フィルムを得た。離型フィルムの評価結果を表2Aに示す。
<離型剤組成物の原料>
a1:ポリジメチルシロキサンの構造中にビニル基を少なくとも2個有するビニル変性シリコーン樹脂(重量平均分子量:2000)
a2:ポリジメチルシロキサンの構造中にビニル基を少なくとも2個有するビニル変性シリコーン樹脂(重量平均分子量:20000)
a3:ポリジメチルシロキサンの構造中にビニル基を少なくとも2個有するビニル変性シリコーン樹脂(重量平均分子量:1000)
a4:ポリジメチルシロキサンの構造中にビニル基を少なくとも2個有するビニル変性シリコーン樹脂(重量平均分子量:60000)
a5:ポリジメチルシロキサンの構造中にビニル基を少なくとも2個有するビニル変性シリコーン樹脂(重量平均分子量:300)
b1:ポリジメチルシロキサンの構造中にヒドロシリル基を少なくとも2個有するポリメチルハイドロジェンシロキサン(重量平均分子量:200)
b2:ポリジメチルシロキサンの構造中にヒドロシリル基を少なくとも1個有するポリメチルハイドロジェンシロキサン(重量平均分子量:5000)
b3:ポリジメチルシロキサンの構造中にヒドロシリル基を少なくとも1個有するポリメチルハイドロジェンシロキサン(重量平均分子量:30000)
b4:ポリジメチルシロキサンの構造中にヒドロシリル基を少なくとも2個有するポリメチルハイドロジェンシロキサン(重量平均分子量:100)
c1:白金系触媒(東レ・ダウコーニング社製「SRX-212」)
【0111】
また、実施例4Aで得た離型フィルムを引張速度が30m/分で180°剥離を行った結果、剥離力は112g/25mmであった。なお、剥離力に関する条件は、引張速度を30m/分に変更した以外は前記(2)と同様にして行った。
【0112】
【表1A】
【0113】
[比較例7A]
実施例1Aで得た二軸延伸ポリエステルフィルムに離型剤組成物を塗布せず、シリコーン系離型層を設けなかったポリエステルフィルムを離型フィルムとして用いた。離型フィルムの評価結果を表2Aに示す。
【0114】
【表2A】
【0115】
[実施例1B]
先に述べたポリエステル(1)を原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して厚さ約550μmの無定形フィルムを得た。
このフィルムを85℃で縦方向に3.7倍延伸し、下記塗布剤組成物から構成される塗布層を厚み(乾燥後)が0.03g/mになるように塗布した後、100℃で横方向に3.9倍延伸し、210℃で熱処理して、厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0116】
<塗布剤組成物>
A:ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸からなる、
スタルク株式会社製 BaytronPAG
B:ポリウレタン樹脂
テレフタル酸を664重量部、イソフタル酸を631重量部、1,4-ブタンジオールを472重量部、ネオペンチルグリコールを447重量部からなるポリエステルポリオールを得た。次いで、得られたポリエステルポリオールに、アジピン酸を321重量部、ジメチロールプロピオン酸を268重量部加え、ペンダントカルボキシル基含有ポリエステルポリオールAを得た。更に、前記ポリエステルポリオールAを1880重量部に、ヘキサメチレンジイソシアネートを160重量部加えてポリウレタン塗布剤組成物を得た。
C:前記式(3)で、n=1であるグリセリン
配合重量比:A/B/C=40/40/20(重量%)
【0117】
得られたポリエステルフィルムに、第1発明説明用で使用した前述の離型剤組成物を塗布量(乾燥後)が0.200g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度150℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型フィルムを得た。
【0118】
[実施例2B~5B]、[比較例1B~10B]
塗布層および離型層について、表1B、2Bに示す塗布剤組成物と離型剤組成物に変更以外は実施例1Bと同様にして製造し、離型フィルムを得た。
【0119】
【表1B】
【0120】
【表2B】
【0121】
[比較例10B]
実施例1で得た二軸延伸ポリエステルフィルムに離型剤を塗布せず、離型層を設けなかったポリエステルフィルムを離型フィルムとして用いた。
【0122】
【表3B】