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  • 特許-搬送装置及び画像形成装置 図1
  • 特許-搬送装置及び画像形成装置 図2
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  • 特許-搬送装置及び画像形成装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/02 20060101AFI20220114BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B65H5/02 A
B41J11/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018536981
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2017023871
(87)【国際公開番号】W WO2018042855
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2016168418
(32)【優先日】2016-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒田 直也
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-132515(JP,A)
【文献】特開平06-220781(JP,A)
【文献】特開2016-150806(JP,A)
【文献】特開平05-296293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に形成されたベルト部材と、
前記ベルト部材に着脱可能に取り付けられたシート部材と、
前記シート部材に設けられ、記録媒体が載置される保持部と、
を備え、
前記ベルト部材を移動させて前記保持部に載置された前記記録媒体を搬送し、
前記ベルト部材には、係合部が形成され、
前記シート部材における前記保持部と反対側の一面には、前記係合部と係合する被係合部が形成され、
前記係合部は、前記ベルト部材に形成された複数の係合凹部を有し、
前記被係合部は、前記係合凹部に嵌り込む係合凸部を有し、
前記係合凹部と前記係合凸部とが係合する力は、前記保持部が前記記録媒体を保持する力よりも大きく設定されており、
前記シート部材の継ぎ目には、前記保持部を構成する接着剤と同じ接着剤が充填される
搬送装置。
【請求項2】
前記記録媒体は、布帛であり、
前記保持部は、前記布帛が密着する粘着層を有する
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記記録媒体は、インクにより画像が形成される
請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送装置に搬送された前記記録媒体に画像を形成する画像形成部と、を備える
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を搬送する搬送装置、及びこの搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体を搬送する搬送装置としては、例えば、特許文献1に記載されたような技術が開示されている。特許文献1に記載された技術では、無端状に形成されたベルト部材の一面に接着剤を塗布することで、粘着層を形成している。この粘着層によって記録媒体を保持し、搬送している。
【0003】
従来のこのような搬送装置では、記録媒体が粘着層に貼付されて粘着層に密着することで、記録媒体に不均一なテンションが加わることを抑制し、記録媒体に歪みや皺が発生することを抑制している。これにより、ベルト部材を移動させることで、記録媒体を画像形成領域に精度良く搬送することができ、高品質な画像形成処理を施すことが可能となる。
【0004】
しかしながら、記録媒体のクズや、画像形成処理時のインク等が保持部に付着することで、保持部の記録媒体を保持する力が低下する。そして、保持部で確実に記録媒体を保持することができなくなり、搬送する際に記録媒体の位置がずれたり、画像不良が発生したりするおそれがある。そのため、従来から、保持部における記録媒体を保持する力が低下した場合には、保持部を構成する粘着層を張り替るというメンテナンス作業が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-247592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、粘着層を張り替えるためには、古い粘着層をベルト部材から全て剥がし、新たな粘着層をベルト部材に形成し、新たな粘着層を乾燥させる必要があった。具体的には、まず酢酸エチルなどの有機溶剤を用いてベルト部材の表面に形成された粘着層を全て除去し、ベルト部材の表面が十分に乾燥された後に、接着剤をベルト部材の表面に塗布すること等により粘着層をベルト部材に形成する。そして、形成した粘着層を乾燥させる。
【0007】
このように、粘着層を除去するためには、有機溶剤を使わなければならないため、安全性や衛生上の点で問題があっただけでなく、ベルト部材の表面から粘着層を全て除去する作業は、大変煩雑なものであった。さらに、上述したように、多数の工程及び煩雑な作業が必要となり、保持部を交換する作業にかかる時間が長くなる、という問題を有していた。
【0008】
本発明は、上述のような従来の問題点に鑑み、メンテナンス作業にかかる時間の短縮を図ることができる搬送装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の搬送装置は、ベルト部材と、シート部材と、保持部と、を備えている。ベルト部材は、無端状に形成されている。シート部材は、ベルト部材に着脱可能に取り付けられる。保持部は、シート部材に設けられ、記録媒体が載置される。そして、搬送装置は、ベルト部材を移動させて保持部に載置された記録媒体を搬送する。
【0010】
また、本発明の画像形成装置は、記録媒体を搬送する搬送装置と、搬送装置に搬送された記録媒体に画像を形成する画像形成部と、を備えている。また、搬送装置は、上述した搬送装置が適用される。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の搬送装置及び画像形成装置によれば、メンテナンス作業にかかる時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態例に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態例に係る搬送装置のベルト部材及びシート部材を示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態例に係る搬送装置におけるベルト部材からシート部材を取り外した状態を示す概略構成図である。
図4】本発明の実施の形態例に係る搬送装置におけるベルト部材からシート部材を取り外した状態を示す断面図である。
図5】本発明の実施の形態例に係る搬送装置におけるシート部材の取り付け作業を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の搬送装置及び画像形成装置を実施するための形態について、図1図5を参照しながら説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0014】
1.画像形成装置の構成
まず、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)に係る画像形成装置の全体構成について説明する。図1は、本例の画像形成装置の概略構成図、図2は、本例の画像形成装置における搬送装置の断面図である。
【0015】
本例の画像形成装置1は、記録媒体に向けてインク滴を吐出することで画像を形成する、いわゆるインクジェットプリンタである。また、本例では、記録媒体として布帛を適用した例を説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、画像形成装置1は、画像形成部2と、搬送装置10とを有している。搬送装置10は、2つのローラ4、5と、ベルト部材3と、シート部材6と、保持部7と、を有している。
【0017】
2つのローラ4、5は、所定の間隔をあけて平行に配置されている。2つのローラ4、5のうち一方のローラには不図示の駆動部の駆動力が伝達可能に構成され、駆動部が駆動した際に回転駆動する。2つのローラ4、5には、ベルト部材3が張架されている。
【0018】
ベルト部材3は、帯状で、かつ長手方向の両端が接続された無端状に形成されている。そして、2つのローラ4、5のうち一方のローラが回転駆動すると、ベルト部材3は、2つのローラ4、5の間を循環移動する。これにより、後述する保持部7に載置された記録媒体が搬送される。また、ベルト部材3には、シート部材6が着脱可能に取り付けられている。
【0019】
図2に示すように、ベルト部材3の一面を示す外周面には、係合部の一例を示す複数の係合凹部11が形成されている。係合凹部11は、ベルト部材3の外周面から略垂直に突出する複数の突起12により形成されている。この係合凹部11には、後述する係合凸部14が着脱可能に嵌り込む。
【0020】
シート部材6は、帯状に形成されている。シート部材6の幅方向の長さは、ベルト部材3の幅方向の長さと略等しくなるように設定されている。シート部材6は、ベルト部材3の外周面に着脱可能に取り付けられる。そして、シート部材6は、ベルト部材3の外周面を覆う。
【0021】
シート部材6におけるベルト部材3の外周面と対向する一面には、被係合部の一例を示す複数の係合凸部14が形成されている。係合凸部14は、シート部材6の一面から略垂直に突出している。係合凸部14は、ベルト部材3に設けた係合凹部11に着脱可能に係合する。また、係合凹部11を形成する複数の突起12は、複数の係合凸部14における隣り合う係合凸部14の間に嵌り込む。
【0022】
これにより、シート部材6は、ベルト部材3の外周面に対して面方向への移動が規制される。その結果、後述する保持部7に載置された記録媒体を搬送する際に、シート部材6がベルト部材3の面方向に対してずれることを抑制することができる。
【0023】
また、ベルト部材3の係合凹部11とシート部材6の係合凸部14とが係合する力は、後述する保持部7が記録媒体を保持する力よりも大きく設定されている。これにより、搬送した記録媒体が保持部7から離反する際に、ベルト部材3からシート部材6が剥がれることを防ぐことができる。
【0024】
なお、係合凸部14及び係合凹部11の形状は、図2に示す柱状に限定されるものではなく、鉤型や球状等互いに係合することができる形状であればその他各種の形状を適用できるものである。
【0025】
シート部材6における係合凸部14が形成された一面と反対側の他面には、保持部7が形成されている。保持部7は、例えば、接着剤からなる粘着層である。この保持部7には、記録媒体が載置されて、記録媒体を保持する。保持部7は、粘着層が記録媒体に密着することで、記録媒体に不均一なテンションが加わることを抑制し、搬送時及び画像形成時において記録媒体に歪みや皺が発生することなく記録媒体を保持する。
【0026】
なお、本例では、保持部7を接着剤からなる粘着層で構成した例を説明したが、これに限定されるものではない。保持部としては、例えば、複数の突起、またはエアーによる吸引で記録媒体を保持するものや、静電吸着によって記録媒体を保持するもの等その他各種の構成を適用できるものである。
【0027】
さらに、本例では、係合凹部11と係合凸部14との係合により、シート部材6をベルト部材3に取り付けた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ベルト部材3及びシート部材6の両方に互いに係合する係合凸部を設けてもよい。または、ベルト部材3とシート部材6のどちらか一方、または両方に磁石を設け、磁力によりシート部材6をベルト部材3に取り付けてもよい。さらに、エアーによる吸引や、静電吸着、またはゴムの摩擦によりシート部材6をベルト部材3に取り付けてもよい。
【0028】
画像形成部2は、搬送装置10における保持部7の上方に所定の間隔を空けて配設されている。画像形成部2における保持部7と対向する下面には、複数のノズルが設けられている。複数のノズルからは、インク滴が吐出される。また、画像形成部2は、複数のノズルからインク滴を、間欠的に搬送される記録媒体に向けて吐出することで、記録媒体に所定の画像を形成する。
【0029】
画像形成部2としては、搬送装置10が記録媒体を搬送する方向と直交する方向に複数のノズルを往復移動させるシャトル型の画像形成部を適用してもよい。または、画像形成部2としては、搬送装置10が記録媒体を搬送する方向と直交する方向に沿って複数のノズルを配置し、連続的に搬送される記録媒体にインク滴を吐出することによって画像を形成するライン型の画像形成部であってもよい。
【0030】
なお、本例では、画像形成部2としてインク滴を記録媒体に向けて吐出する、いわゆるインクジェットプリンタの記録ヘッドとして構成した例を説明したが、これに限定されるものではない。画像形成部としては、例えば、昇華転写印刷の転写部やワイヤドット式の印刷ヘッド等その他各種の画像形成装置の画像形成部を適用できるものである。
【0031】
2.シート部材及び保持部の交換作業
次に、図3図5を参照して上述した構成を有する画像形成装置1におけるシート部材6及び保持部7の交換作業の一例について説明する。
図3及び図4は、ベルト部材3からシート部材6を取り外した状態を示す説明図、図5は、ベルト部材3にシート部材6を取り付ける状態を示す説明図である。
【0032】
保持部7は、記録媒体である布帛のクズや、画像形成部2のインク等によって汚れると、記録媒体を保持する力が低下する。そのため、保持部7を交換する必要がある。まず、図3及び図4に示すように、作業者は、シート部材6をベルト部材3の外周面から離反する方向に引っ張る。これにより、図4に示すように、係合凹部11と係合凸部14の係合が解除されて、係合凸部14が係合凹部11から抜け出る。その結果、保持部7及びシート部材6をベルト部材3から容易に剥がすことができる。
【0033】
このように、本例の搬送装置10によれば、保持部7を構成する接着剤を、従来技術のように有機溶剤等を用いて剥がす必要ないため、ベルト部材3から保持部7を取り外す作業を容易に行うことができる。また、図5に示すローラ状の張り付け治具21によって、シート部材6を巻き取ることで、保持部7及びシート部材6をベルト部材3から取り外してもよい。
【0034】
次に、新たなシート部材6が巻回された張り付け治具21を用いてシート部材6をベルト部材3に取り付ける。このとき、シート部材6に設けた係合凸部14がベルト部材3に設けた係合凹部11に嵌り込み、係合凸部14と係合凹部11が係合する。
【0035】
なお、新たなシート部材6には、予め保持部7が形成されている。そのため、接着剤をベルト部材3に塗布し、接着剤を乾燥させる作業を省略することができる。なお、シート部材6は、その長手方向の長さがベルト部材3の一周分の長さと略同じになるように形成されている。そのため、シート部材6によってベルト部材3の外周面を全て覆うことができる。
【0036】
また、シート部材6の長手方向の両端部が互いに当接、または間隔を空けてベルト部材に配置される。そして、シート部材6の継ぎ目となる長手方向の両端部の隙間には、例えば、保持部7を構成する接着剤と同じ接着剤を充填する。これにより、シート部材6の継ぎ目によって生じる保持部7の段差を解消することができる。
【0037】
なお、上述した例では、長手方向の長さがベルト部材3の一周分の長さと同じシート部材6を用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ベルト部材3の一周分の長さよりも長いシート部材6を用意し、ベルト部材3の外周面を覆った後に、余分なシート部材6を切断してもよい。
【0038】
このように、本例の搬送装置10によれば、予め保持部7が形成されたシート部材6を交換することで、搬送装置10のメンテナンス作業にかかる時間の短縮を図ることができる。また、保持部7の交換にかかる時間の短縮を図ることで、交換時に画像形成装置1を停止させる時間も短縮することができ、画像形成装置1の作業効率の向上を図ることができる。
【0039】
また、ベルト部材3から取り外した古いシート部材6は、保持力が低下した保持部7を剥がし、新たな保持部7を形成することで、再利用することができる。なお、シート部材6に新たな保持部7を形成する作業は、ベルト部材3から取り外されているため、画像形成装置1の画像形成作業や搬送装置10の搬送作業に影響を与えることがない。
【0040】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0041】
また、上述した実施の形態例では、記録媒体として布帛を用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、記録媒体としては、例えば、紙、プラスチックフィルム、ガラス板等その他各種の記録媒体を適用できるものである。
【符号の説明】
【0042】
1…画像形成装置
2…画像形成部
3…ベルト部材
4、5…ローラ
6…シート部材、
7…保持部
10…搬送装置
11…係合凹部(係合部)
12…突起
14…係合凸部(被係合部)
21…張り付け治具
図1
図2
図3
図4
図5