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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ダブルデッキエレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20220114BHJP
   B66B 7/08 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B66B11/02 T
B66B7/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019049176
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020147441
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【弁理士】
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【弁理士】
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】戸川 寛太
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0267488(US,A1)
【文献】特開2010-275042(JP,A)
【文献】特開2013-006635(JP,A)
【文献】国際公開第2002/038482(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
B66B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する外かごの内側に上かごと下かごとを有し、駆動シーブに掛けられて折り返された、かご間隔調整用の間隔調整索状物の一端側で前記上かごを吊り下げ、他端側で前記下かごを吊り下げた構成を含み、前記上かごと前記下かごの飛び上がり抑制機構を有するダブルデッキエレベータであって、
当該飛び上がり抑制機構は、
前記下かごよりも下方の外かご部分に設置された固定滑車装置と、
前記固定滑車装置に案内されて上方へ折り返され、前記上かごと前記下かごを連結する索状手段と、
を備え、
前記索状手段に生じる張力で前記上かごと前記下かごが相互に下方へ引っ張られる構成とされ、上かごに作用する張力の合力の作用線が、平面視で、上かごの重心を通り、下かごに作用する張力の合力の作用線が、平面視で、下かごの重心を通る構成とされていることを特徴とするダブルデッキエレベータ。
【請求項2】
前記固定滑車装置は、第1の固定滑車と第2の固定滑車を含み、
前記索状手段は、前記第1の固定滑車に案内されて上方へ折り返され、第1端部が前記上かごに、第2端部が前記下かごに連結された第1の索状物と、前記第2の固定滑車に案内されて上方へ折り返され、第1端部が前記上かごに、第2端部が前記下かごに連結された第2の索状物とからなり、
前記第1の索状物の前記第1端部と前記第2の索状物の前記第1端部が、平面視で前記上かごの重心に関し、点対称となる位置で連結されており、
前記第1の索状物の前記第2端部と前記第2の索状物の前記第2端部が、平面視で前記下かごの重心に関し、点対称となる位置で連結されていることを特徴とする請求項1に記載のダブルデッキエレベータ。
【請求項3】
前記下かごの下部に設置され、当該下かごと共に上下移動する第1の可動滑車装置と第2の可動滑車装置を有し、
前記固定滑車装置は、一対の固定滑車からなる第1組の固定滑車と一対の固定滑車からなる第2組の固定滑車を含み、
前記索状手段は、第1の索状物と第2の索状物とからなり、
前記第1の索状物は、前記第1の可動滑車装置に案内されて下方へ折り返された第1端部側が前記第1組の固定滑車の一方の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて、当該第1端部が前記上かごに連結され、第2端部側が他方の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて当該第2端部が前記上かごに連結されており、
前記第2の索状物は、前記第2の可動滑車装置に案内されて下方へ折り返された第1端部側が前記第2組の固定滑車の一方の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて、当該第1端部が前記上かごに連結され、第2端部側が他方の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて当該第2端部が前記上かごに連結されていて、
前記第1の索状物の前記第1端部と前記第2端部、前記第2の索状物の前記第1端部と前記第2端部が、平面視で前記上かごの重心に関し、点対称となる位置で連結されており、
前記第1の可動滑車装置と前記第2の可動滑車装置は、当該両可動滑車装置の各々に案内されて折り返された索状物部分に生じる張力の合力の作用線が、平面視で前記下かごの重心を通る位置に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のダブルデッキエレベータ。
【請求項4】
前記下かごの下部に設置され、当該下かごと共に上下移動する可動滑車装置を有し、
前記固定滑車装置は、第1の固定滑車と第2の固定滑車を含み、
前記索状手段は、単一の索状物からなり、
前記索状物は、その一部が前記可動滑車装置に案内されて下方へ折り返されていて、当該可動滑車装置を介して前記下かごに連結されており、
前記可動滑車装置に案内されて下方へ折り返された第1端部側が前記第1の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて、当該第1端部が前記上かごに連結され、第2端部側が第2の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて当該第2端部が前記上かごに連結されており、
前記索状物の前記第1端部と前記第2端部が、平面視で前記上かごの重心に関し、点対称となる位置で連結されており、
前記可動滑車装置は、当該可動滑車装置に案内されて折り返された両索状物部分に生じる張力の合力の作用線が、平面視で前記下かごの重心を通る位置に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のダブルデッキエレベータ。
【請求項5】
前記可動滑車装置は、第1の可動滑車と第2の可動滑車を含み、
前記単一の索状物は、前記第1の可動滑車と前記第2の可動滑車に掛け渡されており、前記第1端部側が前記第1の可動滑車で、前記第2端部側が前記第2の可動滑車でそれぞれ下方へ折り返されていて、
前記第1の可動滑車と前記第2の可動滑車が、平面視で前記下かごの重心に関し、点対称となる位置に設置されていることを特徴とする請求項4に記載のダブルデッキエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルデッキエレベータに関し、特に、外かご内に上かごと下かごとが設けられてなるダブルデッキエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
昇降路内を昇降する外かご内に設置された上かごと下かごとで2階建て構成とされるダブルデッキエレベータは、単一のかごで構成されるエレベータと比較して、輸送力で優れる。また、同等の輸送力を得るための設置スペースが少なくて済む。このため、大規模高層建物への導入が進められている。
【0003】
前記外かごはカウンタウエイトと主ロープで連結されており、当該主ロープは、昇降路上部の機械室に設置された巻上機の綱車に掛けられている。そして、前記巻上機を構成する巻上機モータを駆動して、前記綱車を回転させることにより、上・下かご各々の目的階に対応する目標位置まで外かごを昇降させて、当該上かごと下かごを異なる階に着床させるようになっている。
【0004】
ところで、建物によっては、階高に不揃いがある場合がある。例えば、1階は天井の高いエントランスホールで、2階以上は1階よりも天井の低いオフィスフロアとなっているような場合である。
【0005】
このように階高に不揃いのある建物に設置されるダブルデッキエレベータでは、同時に着床する二つの階の階高に合わせて、上かごと下かごの間隔を調整する必要がある。この調整を可能とするダブルデッキエレベータとして、駆動シーブに掛けられて折り返された、索状物の一種であるワイヤロープの一端側で上かごを吊り下げ、他端側で下かごを吊り下げた構成を有するものが知られている(特許文献1)。外かご内には、上下かご用のガイドレールが上下方向に設置されており、上かごと下かごの各々には、前記ガイドレールに案内される上かごガイドシューと下かごガイドシューがそれぞれ設けられている。
【0006】
上記の構成によれば、駆動シーブを第1の向きに回転させ、下かごを引き上げて上昇させれば、上かごは上かごガイドシューを介し前記ガイドレールに案内されて下降するので、かごの間隔が短くでき、駆動シーブを第1の向きとは反対の第2の向きに回転させ、上かごを引き上げて上昇させれば、下かごは下かごガイドシューを介し前記ガイドレールに案内されて下降するので、かご間隔が長くできるため、かご間隔の調整が可能となっている。これにより、目的階に合わせて、かごの間隔が調整され得る。
【0007】
上記のように構成されたダブルデッキエレベータは、上かごと下かごとが外かご内でワイヤロープによって吊り下げられているだけなので、上昇中の外かごが急停止すると、上かごと下かごとの両方が外かご内で飛び上がってしまう事態が生じる。
【0008】
例えば、電気系統のトラブルにより前記巻上機が暴走し、前記カウンタウエイトが昇降路底部に設置された緩衝器に突っ込んだ場合である。この場合、外かごと一緒に上昇している上かごと下がごが、外かごの急停止後もその慣性によって飛び上がり、ことによっては、上記ワイヤロープが上記駆動シーブから外れてしまうおそれがある。
【0009】
上かごと下かごの飛び上がりを防止するため、特許文献1には、その図3に示されているように、外かご枠7の下部に設けられたストッパ綱車32a,32bと、ストッパ綱車32a,32bに巻き掛けられ、一端部が上かご8に他端部が下かご9にそれぞれ連結されたストッパロープ33a,33bとを有するダブルデッキエレベータが記載されている(特許文献1の段落[0044])。また、ストッパ綱車32a,32b及びストッパ綱車32a,32bは、上かご8及び下かご9の前側に偏って配置した構成とされている(特許文献1の段落[0045])。
【0010】
特許文献1に記載のダブルデッキエレベータによれば、上昇中に外かご枠7が急停止したとしても、上かご8と下かご9が外かご枠7に対して上昇するのが阻止される(特許文献1の段落[0044])。また、特許文献1には、『ストッパ綱車32a,32b及びストッパロープ33a,33bは、上かご8及び下かご9の前側に偏って配置されているので、主枠7に対する上かご8及び下かご9の上昇を阻止する際に、上かご8及び下かご9に前側の偏荷重が作用する。これにより、上かごガイドシュー8c及び下かごガイドシュー9cの摩擦抵抗が増大され、主枠7に対する上かご8及び下かご9の上昇をより確実に阻止することができる。』と記載されている(特許文献1の段落[0045])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2014/027398号(特許第5931203号公報)
【文献】国際公開第2007/074206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のダブルデッキエレベータでは、上かご8及び下かご9に作用する上記偏荷重の影響で、上かご8と下かご9が傾いて、前後に振動する可能性がある。これにより、緊急停止時における乗客の不安感が一層増幅されるおそれがある。
【0013】
本発明は、上記した課題に鑑み、外かごの急停止の際、上かごと下かごが傾くことを可能な限り防止しつつ、上かごと下かごの飛び上がりを効果的に抑制することが可能なダブルデッキエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明に係るダブルデッキエレベータは、昇降路内を昇降する外かごの内側に上かごと下かごとを有し、駆動シーブに掛けられて折り返された、かご間隔調整用の間隔調整索状物の一端側で前記上かごを吊り下げ、他端側で前記下かごを吊り下げた構成を含み、前記上かごと前記下かごの飛び上がり抑制機構を有するダブルデッキエレベータであって、当該飛び上がり抑制機構は、前記下かごよりも下方の外かご部分に設置された固定滑車装置と、前記固定滑車装置に案内されて上方へ折り返され、前記上かごと前記下かごを連結する索状手段と、を備え、前記索状手段に生じる張力で前記上かごと前記下かごが相互に下方へ引っ張られる構成とされ、上かごに作用する張力の合力の作用線が、平面視で、上かごの重心を通り、下かごに作用する張力の合力の作用線が、平面視で、下かごの重心を通る構成とされていることを特徴とする。
【0015】
また、前記固定滑車装置は、第1の固定滑車と第2の固定滑車を含み、前記索状手段は、前記第1の固定滑車に案内されて上方へ折り返され、第1端部が前記上かごに、第2端部が前記下かごに連結された第1の索状物と、前記第2の固定滑車に案内されて上方へ折り返され、第1端部が前記上かごに、第2端部が前記下かごに連結された第2の索状物とからなり、前記第1の索状物の前記第1端部と前記第2の索状物の前記第1端部が、平面視で前記上かごの重心に関し、点対称となる位置で連結されており、前記第1の索状物の前記第2端部と前記第2の索状物の前記第2端部が、平面視で前記下かごの重心に関し、点対称となる位置で連結されていることを特徴とする。
【0016】
あるいは、前記下かごの下部に設置され、当該下かごと共に上下移動する第1の可動滑車装置と第2の可動滑車装置を有し、前記固定滑車装置は、一対の固定滑車からなる第1組の固定滑車と一対の固定滑車からなる第2組の固定滑車を含み、前記索状手段は、第1の索状物と第2の索状物とからなり、前記第1の索状物は、前記第1の可動滑車装置に案内されて下方へ折り返された第1端部側が前記第1組の固定滑車の一方の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて、当該第1端部が前記上かごに連結され、第2端部側が他方の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて当該第2端部が前記上かごに連結されており、 前記第2の索状物は、前記第2の可動滑車装置に案内されて下方へ折り返された第1端部側が前記第2組の固定滑車の一方の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて、当該第1端部が前記上かごに連結され、第2端部側が他方の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて当該第2端部が前記上かごに連結されていて、前記第1の索状物の前記第1端部と前記第2端部、前記第2の索状物の前記第1端部と前記第2端部が、平面視で前記上かごの重心に関し、点対称となる位置で連結されており、前記第1の可動滑車装置と前記第2の可動滑車装置は、当該両可動滑車装置の各々に案内されて折り返された索状物部分に生じる張力の合力の作用線が、平面視で前記下かごの重心を通る位置に設置されていることを特徴とする。
あるいは、前記下かごの下部に設置され、当該下かごと共に上下移動する可動滑車装置を有し、前記固定滑車装置は、第1の固定滑車と第2の固定滑車を含み、前記索状手段は、単一の索状物からなり、前記索状物は、その一部が前記可動滑車装置に案内されて下方へ折り返されていて、当該可動滑車装置を介して前記下かごに連結されており、前記可動滑車装置に案内されて下方へ折り返された第1端部側が前記第1の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて、当該第1端部が前記上かごに連結され、第2端部側が第2の固定滑車に案内されて上方へ折り返されて当該第2端部が前記上かごに連結されており、前記索状物の前記第1端部と前記第2端部が、平面視で前記上かごの重心に関し、点対称となる位置で連結されており、前記可動滑車装置は、当該可動滑車装置に案内されて折り返された両索状物部分に生じる張力の合力の作用線が、平面視で前記下かごの重心を通る位置に設置されていることを特徴とする。
【0017】
この場合に、前記可動滑車装置は、第1の可動滑車と第2の可動滑車を含み、前記単一の索状物は、前記第1の可動滑車と前記第2の可動滑車に掛け渡されており、前記第1端部側が前記第1の可動滑車で、前記第2端部側が前記第2の可動滑車でそれぞれ下方へ折り返されていて、前記第1の可動滑車と前記第2の可動滑車が、平面視で前記下かごの重心に関し、点対称となる位置に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成からなる本発明に係るダブルデッキエレベータによれば、例えば、上昇中の外かごが何らかの原因により急停止されたことに起因して、外かごと一緒に上昇している上かごと下かごが、外かごの急停止後もその慣性によって飛び上がろうとした場合でも、上かごと下かごは、下かごよりも下方の外かご部分に設置された固定滑車装置に案内されて折り返された索状手段で連結されているため、過度の飛び上がりが抑制される。
【0019】
このとき、上かごと下かごが索状手段を引っ張る反作用で、索状手段に張力が生じ、当該張力で、上かごと下かごが相互に下方へ引っ張られることとなるが、上かごに作用する張力の合力の作用線が、平面視で、上かごの重心を通り、下かごに作用する張力の合力の作用線が、平面視で、下かごの重心を通る構成とされているため、索状手段に生じる張力で下方へ引っ張られたことによっては、上かごおよび下かごの姿勢はほとんど崩れない。すなわち、上かごと下かごが傾くことを可能な限り防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態1に係るダブルデッキエレベータ全体の概略構成を示す図である。
図2】上記ダブルデッキエレベータの外かごおよび外かごに設置された機器および装置を示す拡大図である。
図3】上記ダブルデッキエレベータの、(a)は、主として、かご間隔調整機構に関する構成要素を抽出した正面図であり、(b)は、主として、飛び上がり抑制機構に関する構成要素を抽出した正面図である。
図4】(a)は、上かごを、(b)は、下かごを平面視で描いた図であり、それぞれ、主に飛び上がり抑制機構に関係する要素を抽出して描いた図である。
図5】実施形態2に係るダブルデッキエレベータの外かごおよび外かごに設置された機器および装置を示す正面図である。
図6図5におけるE・E線で切断した右側面図である。
図7図5におけるG・G線で切断した左側面図である。
図8】実施形態2における、(a)は、上かごを、(b)は、下かごを平面視で描いた図であり、それぞれ、主に飛び上がり抑制機構に関係する要素を抽出して描いた図である。
図9】実施形態3における、(a)は、上かごを、(b)は、下かごを平面視で描いた図であり、それぞれ、主に飛び上がり抑制機構に関係する要素を抽出して描いた図である。
図10図9(b)の矢印Hの向きに上かご、下かご、および飛び上がり抑制機構を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るダブルデッキエレベータの実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施形態1>
(全体構成)
図1は、実施形態に係るダブルデッキエレベータ10全体の概略構成を示す図である。
【0022】
図1に示すように、ダブルデッキエレベータ10は駆動方式としてトラクション方式を採用したロープ式エレベータである。昇降路12の最上部よりも上の建物部分に機械室14が設けられている。機械室14には、綱車16を有する巻上機とそらせ車18が設置されている。
【0023】
綱車16とそらせ車18には、いわゆるダブルラップ式で主ロープ20が掛けられている。主ロープ20の両端は、昇降路12の上部に固定されている。主ロープ20の一端と巻上機の間には、吊車22を介して外かご24が吊り下げられており、主ロープ20の他端と巻上機の間には、吊車26を介してカウンタウエイト28が吊り下げられている。
【0024】
上記の構成において、不図示の巻上機モータにより綱車16が正転または逆転されると、綱車16に巻き掛けられた主ロープ20が走行し、主ロープ20で吊り下げられた外かご24とカウンタウエイト28が互いに反対向きに昇降する。
【0025】
昇降路12の底部(ピット)には、何らかの原因で、外かご24が最上階を超えて上昇し過ぎた場合、または、外かご24が落下した場合に備えて、カウンタウエイト用緩衝器30と外かご用緩衝器32が設置されている。
【0026】
図2は、外かご24および外かご24に設置された機器および装置を示す拡大図である。図2に示すように、外かご24は、上梁34A、下梁34B、および上梁34Aと下梁34Bを連結する2つの立枠34C,34Dを含み、正面視で、縦方向に(上下方向に)長い長方形をした外かご枠34を有する。外かご24内には、上かご36と下かご38が上下方向に間隔を空けて設けられている。
【0027】
(かご間隔調整機構)
図3(a)は、図2から主としてかご間隔調整のための構成要素を抽出した図である。図2図3(a)を参照しながら説明を続ける。
上かご36は、上かご本体40と上かご本体40の上部に設けられた一対の吊車42A,42Bを含んでいる。下かご38は、下かご本体44と下かご本体44の下部に設けられた一対の吊車46A,46Bを含んでいる。
【0028】
上梁34Aには、階間調整用巻上機48が設置されている。階間調整用巻上機48は、電動機(不図示)によって正転駆動、逆転駆動される駆動シーブ50を有する。
【0029】
駆動シーブ50には、かご間隔調整用の間隔調整索状物としてワイヤロープ52が掛けられていて、駆動シーブ50に掛けられて折り返されたワイヤロープ52の一端52aと他端52bは、共に、上梁34Aに連結されている。一端52aと駆動シーブ50との間のワイヤロープ52部分には、吊車42A,42Bを介して上かご本体40が吊り下げられており、他端52bと駆動シーブ50との間のワイヤロープ52部分には、吊車46A,46Bを介して下かご本体44が吊り下げられている。
【0030】
すなわち、ダブルデッキエレベータ10(図1)は、外かご24に設置された階間調整用巻上機48の駆動シーブ50に掛けられて折り返されたワイヤロープ52の一端52a側で上かご36を吊り下げ、他端52b側で下かご38を吊り下げた構成を有している。
【0031】
上梁34Aと下梁34Bの間には、一対のガイドレール54A,54Bが上下方向に設けられている(図3(a)では不図示)。上かご本体40の上部と下部には、それぞれ、図2に示すように、ガイドレール54A,54Bに対応して、ガイドシュー56A,56B、ガイドシュー58A,58Bが設けられている。また、下かご本体44の上部と下部には、それぞれ、ガイドレール54A,54Bに対応して、ガイドシュー60A,60B、ガイドシュー62A,62Bが設けられている。
なお、上かご36、下かご38をガイドレール54A,54Bに案内するためのガイド装置は、ガイドシューに限らず、ローラガイドを用いても構わない。
【0032】
上記の構成を有するダブルデッキエレベータ10において、駆動シーブ50を矢印Aの向きに回転させ、上かご36を引き上げて上昇させれば、下かご38は下降して、かごの間隔が長くでき、駆動シーブ50を矢印Aとは反対の矢印Bの向きに回転させ、下かご38を引き上げて上昇させれば、上かご36は下降して、かご間隔が短くできるため、かご間隔の調整が可能となっている。これにより、目的階に合わせて、かごの間隔が調整され得る。
【0033】
(飛び上がり抑制機構)
上記のようなかご間隔調整機構、すなわち、トラクション式のかご間隔調整機構を採用したダブルデッキエレベータでは、〔背景技術〕の欄で述べたように、外かごの急停止時における上かごと下かごの飛び上がりが問題となる。
【0034】
以下、実施形態1における、上かごと下かごの飛び上がり抑制機構について、図2図3(b)、および図4を参照しながら説明する。図3(b)は、図2から主に飛び上がり抑制機構に関する構成要素を抽出した正面図である。図4(a)は、上かご36を、図4(b)は、下かご38を平面視で描いた図であり、それぞれ、主に飛び上がり抑制機構に関係する要素を抽出して描いた図である。
【0035】
飛び上がり抑制機構は、固定滑車装置66と索状手段72を含む。
固定滑車装置66は、下かご38よりも下方の外かご24部分である下梁34Bに台座64を介して設置されている。固定滑車装置66は、シーブ68aを有する第1固定滑車68とシーブ70aを有する第2固定滑車70とからなる。
【0036】
索状手段72は、索状物である第1ワイヤロープ74と第2ワイヤロープ76とからなる。第1ワイヤロープ74は、第1固定滑車68(のシーブ68a)に案内されて上方へ折り返され、第1端部74e1が連結手段78Aを介して上かご本体40に連結されており、第2端部74e2が連結手段80Aを介して下かご本体44に連結されている。第2ワイヤロープ76は、第2固定滑車70(のシーブ70a)に案内されて上方へ折り返され、第1端部76e1が連結手段78Bを介して上かご本体40に連結されており、第2端部76e2が連結手段80Bを介して下かご本体44に連結されている。
【0037】
第1ワイヤロープ74において、第1固定滑車68と連結手段78Aの間、および第1固定滑車68と連結手段80Aの間は、鉛直方向に張架されている。また、第2ワイヤロープ76において、第2固定滑車70と連結手段78Bの間、および第2固定滑車70と連結手段80Bの間は、鉛直方向に張架されている。
【0038】
連結手段78Aと連結手段78Bは、図4(a)に示すように、平面視で、上かご36の重心C1に関し点対称となる位置に設けられている。すなわち、第1ワイヤロープ74の第1端部74e1と第2ワイヤロープ76の第1端部76e1が、平面視で、上かご36の重心C1に関し、点対称となる位置で連結されている。
【0039】
また、連結手段80Aと連結手段80Bは、図4(b)に示すように、平面視で、下かご38の重心C2に関し点対称となる位置に設けられている。すなわち、第1ワイヤロープ74の第2端部74e2と第2ワイヤロープ76の第2端部76e2が、平面視で、下かご38の重心C2に関し、点対称となる位置で連結されている。
【0040】
ここで、例えば、何らかのトラブルにより外かご24用の巻上機が暴走し、図1に示すカウンタウエイト28がカウンタウエイト用緩衝器30に突っ込んだ場合を考える。この場合、外かご24と一緒に上昇している上かご36と下かご38が、外かご24の急停止後もその慣性によって飛び上がろうとするが、上かご36と下かご38は、第1ワイヤロープ74と第2ワイヤロープ76で連結されているため、過度の飛び上がりが抑制される。
【0041】
このとき、飛び上がろうとする上かご36と下かご38が第1ワイヤロープ74と第2ワイヤロープ76を引っ張る反作用で、第1ワイヤロープ74と第2ワイヤロープに張力が生じ、当該張力で、上かご36と下かご38が相互に下方へ引っ張られることとなる。
【0042】
この場合、第1ワイヤロープ74の第1端部74e1と第2ワイヤロープ76の第1端部76e1が、平面視で、上かご36の重心C1に関し、点対称となる位置で上かご36を下方へ引っ張ることとなる。すなわち、索状手段72を構成する第1ワイヤロープ74に生じる張力と第2ワイヤロープ76に生じる張力の合力の作用線が、上かご36の重心C1を通る構成とされている。
【0043】
このため、第1ワイヤロープ74と第2ワイヤロープ76に生じる張力で下方へ引っ張られたことによっては、上かご36の姿勢はほとんど崩れない。すなわち、特許文献1に記載の『偏荷重』(特許文献1の段落[0045])は、ほとんど、上かご36には作用しない。その結果、上かご36が傾くことを可能な限り抑制することができる。
【0044】
また、特許文献1では、上記『偏荷重』によって、ガイド装置として設けられているガイドシュー8c,9c(特許文献1の図2)がガイドレールに強く押し付けられるため、ガイドシュー8c,9cの損傷を招くおそれがある。ガイドシュー8c,9cが損傷すると、保守要員がこれを交換するまで、通常運転を再開できないので、ダブルデッキエレベータの復旧に時間がかかってしまう。
【0045】
これに対し、本実施形態1では、上述したように、上記『偏荷重』が上かご36にはほとんど作用しないため、ガイド装置であるガイドシュー56A,56B,58A,58Bの損傷を可能な限り回避できる。
【0046】
また、上記のようなトラブルが発生した場合ではなく、通常運転中において、下降開始時などで外かごに下向きの加速度がかかった場合でも、上かごと下かごを連結しているワイヤロープに張力が生じる。この場合、特許文献1では、上記『偏荷重』によって上かごと下かごが傾いて、前後に振動して乗り心地に悪影響を及ぼすおそれがあるが、本実施形によれば、上かご36の姿勢はほとんど崩れないため、可能な限り乗り心地に悪影響を及ぼさない。
【0047】
上記のことは、下かご38においても同様である。すなわち、第1ワイヤロープ74の第2端部74e2と第2ワイヤロープ76の第2端部76e2が、平面視で、下かご38の重心C2に関し、点対称となる位置で下かご38を下方へ引っ張ることとなる。すなわち、索状手段72を構成する第1ワイヤロープ74と第2ワイヤロープ76に生じる張力の合力の作用線が、下かご38の重心C2を通る構成とされている。
【0048】
その結果、下かご38が傾くことを可能な限り抑制することができると共に、ガイド装置であるガイドシュー60A,60B,62A,62B(図1)の損傷が可能な限り回避される。また、通常運転中における乗り心地にも可能な限り悪影響を及ぼさない。
【0049】
<実施形態2>
実施形態2は、実施形態1とは、飛び上がり抑制機構が異なっている以外は、基本的に同様の構成である。よって、共通する構成については、実施形態1と同じ符号を付して説明を省略するか必要に応じて言及するに止め、以下異なる部分である飛び上がり抑制機構を中心に説明する。
【0050】
図5は、実施形態2における、外かご24および外かご24に設置された機器および装置を示す拡大図であり、主に飛び上がり抑制機構に関する要素を抽出した正面図である。図6は、図5をE・E線で切断した右側面図であり、図7は、図5をG・G線で切断した左側面図である。図8(a)は、上かご36を、図8(b)は、下かご38を平面視で描いた図であり、それぞれ、主に飛び上がり抑制機構に関係する要素を抽出して描いた図である。
【0051】
実施形態2における飛び上がり抑制機構において、下かご38よりも下方の外かご24部分である下梁34Bに台座82を介して設けられた固定滑車装置84は、第1組の固定滑車86Aと第2組の固定滑車の二組の固定滑車86Bを含む。
索状手段は、第1ワイヤロープ92Aと第2ワイヤロープ92Bとからなる。
また、下かご38の下部には、下かご38と共に上下移動する第1可動滑車装置94Aと第2可動滑車装置94Bが設置されている。
【0052】
実施形態2では、(i)第1ワイヤロープ92A、第1組の固定滑車86A、および第1可動滑車装置94A、並びに、(ii)第2ワイヤロープ92B、第2組の固定滑車86B、および第2可動滑車装置94Bで、上かご36と下かご38が相互に下方へ引っ張られる構成とされている。
【0053】
図6に示すように、第1組の固定滑車86Aは、第1固定滑車88Aと第2固定滑車90Aの一対の固定滑車を含む。また、第1可動滑車装置94Aは、第1可動滑車96Aと第2可動滑車98Aを含む。
【0054】
第1ワイヤロープ92Aは、第1可動滑車96A(のシーブ961A)に案内されて下方へ折り返された第1端部92Ae1側が第1固定滑車88Aに案内されて上方へ折り返されて、第1端部92Ae1が、連結手段100Aで上かご36に連結されている。また、第1ワイヤロープ92Aは、第2可動滑車98A(のシーブ981A)に案内されて下方へ折り返された第2端部92Ae2側が第2固定滑車90Aに案内されて上方へ折り返されて、第2端部92Ae2が、連結手段102Aで上かご36に連結されている。
【0055】
図7に示すように、第2組の固定滑車86Bは、第1固定滑車88Bと第2固定滑車90Bの一対の固定滑車を含む。また、第2可動滑車装置94Bは、第1可動滑車96Bと第2可動滑車98Bを含む。
【0056】
第2ワイヤロープ92Bは、第1可動滑車96B(のシーブ961B)に案内されて下方へ折り返された第1端部92Be1側が第1固定滑車88Bに案内されて上方へ折り返されて、第1端部92Be1が、連結手段100Bで上かご36に連結されている。また、第2ワイヤロープ92Bは、第2可動滑車98B(のシーブ981B)に案内されて下方へ折り返された第1端部92Be2側が第2固定滑車90Bに案内されて上方へ折り返されて、第2端部92Be2が、連結手段102Bで上かご36に連結されている。
【0057】
図8(a)に示すように、4個の連結手段100A、連結手段102A、連結手段100B、連結手段102Bは、平面視で、上かご36の重心C1に関し点対称となる位置に設けられている。すなわち、第1ワイヤロープ92Aの第1端部92Ae1、第2端部92Ae2、第2ワイヤロープ92Bの第1端部92Be1、第2端部92Be2が、平面視で、上かご36の重心C1に関し、点対称となる位置で連結されている。
【0058】
図8(b)に示すように、シーブ961Aとシーブ961Bは共通のシャフト963を有しており、シーブ981Aとシーブ981Bは共通のシャフト983を有している。シャフト963は、第1可動滑車96Aの軸受部材962Aと第1可動滑車96Bの軸受部材962Bとで回転自在に支持されており、シャフト983は、第2可動滑車98Aの軸受部材982Aと第2可動滑車98Bの軸受部材982Bとで回転自在に支持されている。
【0059】
上記の構成から明らかなように、第1可動滑車装置94Aと第2可動滑車装置94Bは、第1ワイヤロープ92Aと第2ワイヤロープ92Bをそれぞれ下かご38に連結する連結手段として機能している。また、図8(b)に示すように、第1可動滑車装置94Aを構成する第1可動滑車96A、第2可動滑車98A、第2可動滑車装置94Bを構成する第1可動滑車96B、第2可動滑車98Bの4台の可動滑車は、平面視で、下かご38の重心C2に関し、点対称となる位置に設けられている。
【0060】
上記の構成からなる実施形態2における飛び上がり抑制機構でも、何らかのトラブルにより、カウンタウエイト28(図1)がカウンタウエイト用緩衝器30に突っ込んだ場合、外かご24と一緒に上昇している上かご36と下かご38が、外かご24の急停止後もその慣性によって飛び上がろうとするが、上かご36と下かご38は、第1ワイヤロープ92Aと第2ワイヤロープ92Bで連結されているため、過度の飛び上がりが抑制される。
【0061】
このとき、飛び上がろうとする上かご36と下かご38が第1ワイヤロープ92Aと第2ワイヤロープ92Bを引っ張る反作用で、第1ワイヤロープ92Aと第2ワイヤロープ92Bに張力が生じ、当該張力で、上かご36と下かご38が相互に下方へ引っ張られることとなる。
【0062】
この場合、第1ワイヤロープ92Aの第1端部92Ae1、第2端部92Ae2、第2ワイヤロープ92Bの第1端部92Be1、第2端部92Be2が、平面視で、上かご36の重心C1に関し、点対称となる位置で上かご36を下方へ引っ張ることとなる。すなわち、実施形態2において索状手段を構成する第1ワイヤロープ92Aに生じる張力と第2ワイヤロープ92Bに生じる張力の合力の作用線が、上かご36の重心C1を通る構成とされている。
【0063】
このため、第1ワイヤロープ92Aと第2ワイヤロープ92Bに生じる張力で下方へ引っ張られたことによっては、上かご36の姿勢はほとんど崩れないため、実施形態1と同様、上かご36が傾くことを可能な限り抑制することができると共に、ガイドシュー56A,56B,58A,58B(図1)の損傷が可能な限り回避される。また、通常運転中における乗り心地にも可能な限り悪影響を及ぼさない。
【0064】
第1ワイヤロープ92Aと第2ワイヤロープ92Bを下かご38に連結する連結手段であり、下かご38を直接的に下方へ引っ張る4台の第1可動滑車96A、第2可動滑車98A、第1可動滑車96B、第2可動滑車98Bが、平面視で、下かご38の重心C2に関し、点対称となる位置に設けられている。すなわち、第1ワイヤロープ92Aに生じる張力と第2ワイヤロープ92Bに生じる張力の合力の作用線が、下かご38の重心C2を通る構成とされている。
【0065】
これにより、上述した上かご36と同様、下かご38が傾くことを可能な限り抑制することができると共に、ガイド装置であるガイドシュー60A,60B,62A,62B(図1)の損傷が可能な限り回避される。また、通常運転中における乗り心地にも可能な限り悪影響を及ぼさない。
【0066】
<実施形態3>
実施形態1、実施形態2では、2本のワイヤロープで飛び上がり抑制機構を構成したが、実施形態3では、単一の(1本の)ワイヤロープで飛び上がり抑制機構を構成している。
実施形態3に係るダブルデッキエレベータは、実施形態1、2とは、飛び上がり抑制機構が異なっている以外は、基本的に同様の構成である。よって、かご間隔調整機構等の共通する構成についての説明は省略し、以下異なる部分である飛び上がり抑制機構を中心に説明する。
【0067】
図9(a)は、上かご36を、図9(b)は、下かご38を平面視で描いた図であり、それぞれ、主に飛び上がり抑制機構に関係する要素を抽出して描いた図であって、図8(a)、図8(b)に準じて描いた図である。図10は、図9(b)の矢印Hの向きに上かご36、下かご38および飛び上がり抑制機構を示した図である。矢印Hの向きは、平面視で直線上に配された後述する第1固定滑車124、第1可動滑車130、第2可動滑車132、および第2固定滑車126の配列方向と直交する向きである。
【0068】
実施形態3における飛び上がり抑制機構において、実施形態3の台座82と同様に設けられた台座120には、固定滑車装置122が設置されている。固定滑車装置122は、第1固定滑車124と第2固定滑車126を含む。
【0069】
下かご38の下部には、下かご38と共に上下移動する可動滑車装置128が設置されている。可動滑車装置128は、第1可動滑車130と第2可動滑車132を含む。
索状手段として、単一のワイヤロープ134が用いられている。
【0070】
ワイヤロープ134は、第1可動滑車130(のシーブ130a)に案内されて下方へ折り返された第1端部134e1側が第1固定滑車124に案内されて上方へ折り返されて、第1端部134e1が、連結手段136で上かご36に連結されている。また、ワイヤロープ134は、第2可動滑車132(のシーブ132a)に案内されて下方へ折り返された第2端部134e2側が第2固定滑車126に案内されて上方へ折り返されて、第2端部134e2が、連結手段138で上かご36に連結されている。
【0071】
図9図10に示すように、ワイヤロープ134において、第1固定滑車124と第1連結手段136の間、第1固定滑車124と第1可動滑車130の間、第2固定滑車126と第2可動滑車132の間、および第2固定滑車126と第2連結手段138との間は、いずれも、鉛直方向に張架されている。
【0072】
第1連結手段136と第2連結手段138は、図9(a)に示すように、平面視で、上かご36の重心C1に関し点対称となる位置に設けられている。すなわち、ワイヤロープ134の第1端部134e1と第2端部134e2が、平面視で、上かご36の重心C1に関し、点対称となる位置で連結されている。
【0073】
上記の構成から明らかなように、第1可動滑車130と第2可動滑車132は、ワイヤロープ134を下かご38に連結する連結手段として機能している。また、図9(b)に示すように、第1可動滑車130と第2可動滑車132は、平面視で、下かご38の重心C2に関し、点対称となる位置に設けられている。
【0074】
上記の構成からなる実施形態3における飛び上がり抑制機構でも、何らかのトラブルにより、カウンタウエイト28(図1)がカウンタウエイト用緩衝器30に突っ込んだ場合、外かご24と一緒に上昇している上かご36と下かご38が、外かご24の急停止後もその慣性によって飛び上がろうとするが、上かご36と下かご38は、ワイヤロープ134で連結されているため、過度の飛び上がりが抑制される。
【0075】
このとき、上かご36と下かご38がワイヤロープ134を引っ張る反作用でワイヤロープ134に張力が生じ、当該張力で、上かご36と下かご38が相互に下方へ引っ張られることとなる。
【0076】
この場合、ワイヤロープ134の第1端部134e1と第2端部134e2が、平面視で、上かご36の重心C1に関し、点対称となる位置で上かご36を下方へ引っ張ることとなる。すなわち、索状手段であるワイヤロープ134の両端部部分に生じる張力の合力の作用線が、上かご36の重心C1を通る構成とされている。
【0077】
このため、ワイヤロープ134に生じる張力で下方へ引っ張られたことによっては、上かご36の姿勢はほとんど崩れないため、実施形態1、実施形態2と同様、上かご36が傾くことを可能な限り抑制することができると共に、ガイドシュー56A,56B,58A,58B(図1)の損傷が可能な限り回避される。また、通常運転中における乗り心地にも可能な限り悪影響を及ぼさない。
【0078】
ワイヤロープ134を下かご38に連結する連結手段であり、下かご38を直接的に下方へ引っ張る2台の第1可動滑車130、第2可動滑車132が、平面視で、下かご38の重心C2に関し、点対称となる位置に設けられている。すなわち、ワイヤロープ134において、第1可動滑車130と第1固定滑車124の間で生じる張力と第2可動滑車132と第2固定滑車126の間で生じる張力の二つの張力の合力の作用線が、下かご38の重心C2を通る構成とされている。
【0079】
これにより、実施形態3においても、上述した上かご36と同様、下かご38が傾くことを可能な限り抑制することができると共に、ガイド装置であるガイドシュー60A,60B,62A,62B(図1)の損傷が可能な限り回避される。また、通常運転中における乗り心地にも可能な限り悪影響を及ぼさない。
【0080】
以上、本発明に係るダブルデッキエレベータを実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態としても構わない。
(1)上記実施形態では、かご間隔調整のために、上かご36と下かご38を外かご24内で吊り下げる間隔調整索状物として、ワイヤロープ52を用いたが、間隔調整索状物は、ワイヤロープに限らず、例えば、スチールコード等の心線入りのゴムベルトや炭素繊維からなるベルトを用いても構わない。
(2)上記実施形態では、飛び上がり抑制機構を構成する索状物としてワイヤロープ74,76(実施形態1)、ワイヤロープ92A,92B(実施形態2)、ワイヤロープ134(実施形態3)を用いたが、ワイヤロープに限らず、例えば、スチールコード等の心線入りのゴムベルトや炭素繊維からなるベルトを用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係るダブルデッキエレベータは、例えば、駆動シーブに掛けた索状物の一端側で上かごを吊下げ、他端側で下かごを吊り下げて、上かごと下かごのかご間隔を調整するダブルデッキエレベータに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 ダブルデッキエレベータ
24 外かご
36 上かご
38 下かご
52 ワイヤロープ
66、84、122 固定滑車装置
72 索状手段
92A 第1ワイヤロープ
92B 第2ワイヤロープ
134 ワイヤロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10