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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20220114BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B62D25/04 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019059988
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157952
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】片岡 愉樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 岳司
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0246692(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジピラーと、該ヒンジピラーに対して車両前方に離間して設けられた前輪とを備え、上記ヒンジピラーが、ヒンジピラーアウタと、ヒンジピラーアウタよりも車幅方向内側に備えたヒンジピラーインナとを備え、これらの間に上下方向に延びる閉断面を構成する車両の前部車体構造であって、
車両前後方向で上記ヒンジピラーと上記前輪との間に、車両後方ほど車幅方向外側に位置する前面を構成する傾斜壁部を有するガセットを備え、
該ガセットは、傾斜壁部の上端から車幅方向内側且つ後方に延びる上壁部を有し、
上記ガセットは、上記傾斜壁部と上記上壁部との夫々が車両前後方向において上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとに跨って固定された
車両の前部車体構造。
【請求項2】
ヒンジピラーと、該ヒンジピラーに対して車両前方に離間して設けられた前輪とを備え、上記ヒンジピラーが、ヒンジピラーアウタと、ヒンジピラーアウタよりも車幅方向内側に備えたヒンジピラーインナとを備え、これらの間に上下方向に延びる閉断面を構成する車両の前部車体構造であって、
車両前後方向で上記ヒンジピラーと上記前輪との間に、車両後方ほど車幅方向外側に位置する前面を構成する傾斜壁部を有するガセットを備え、
該ガセットは、傾斜壁部の下端から車幅方向内側且つ後方に延びる下壁部を有し、
上記ガセットは、上記傾斜壁部と上記下壁部との夫々が車両前後方向において上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとに跨って固定された
車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記ガセットは、傾斜壁部の上端から車幅方向内側且つ後方に延びる上壁部と、傾斜壁部の下端から車幅方向内側且つ後方に延びる下壁部とを有し、
上記上壁部と、上記下壁部と、上記傾斜壁部と、上記ヒンジピラーインナと、上記ヒンジピラーアウタとで協働して閉断面を形成する
請求項1又は2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
上記ガセットにおける上記傾斜壁部には、前後方向に延びるリブが形成されている
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
上記ガセットにおける上記傾斜壁部には、開口部が形成されており、上記リブは上記開口部の周縁を含めて前後方向に延びる
請求項4に記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
上記ガセットに対して、車幅方向内側に、上記傾斜壁部の車幅方向内側への変位を抑制する変位抑制構造として車幅方向に略水平に延びる閉断面部が構成されている
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項7】
上記ガセットにおける上記傾斜壁部よりも後部から後方へ延びる後縁フランジ部は、上記ヒンジピラーアウタの車幅方向外壁に接合された
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項8】
上記ヒンジピラーインナの上下方向の上記ガセットに対応する部位には、上記閉断面の側へ迫り出して該閉断面を上下方向に分断する節構造体が構成された
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項9】
上記ヒンジピラーインナの上下方向の上記ガセットに対応する部位には、上記ヒンジピラーアウタよりも車両前方へ延出する前方延出部が形成され、
上記ガセットは、上記前方延出部に車幅方向外側から固定された
請求項1乃至のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下方向に延びるヒンジピラーと、該ヒンジピラーに対して車両前方に離間して設けられた前輪とを備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部車体構造としては、特許文献1に例示されるように、スモールオーバーラップ衝突時に前輪の後退ひいては車室内への侵入量を低減するための工夫が施されたものが知られている。
【0003】
下記特許文献1のものは、ヒンジピラー内部に、車両前後方向後部ほど車幅方向外側に位置する前側縦壁部(15b)を前面に有する補強部材(ガセット)としてのヒンジブラケット(15)を設け、該前側縦壁部(15b)によって、後退する前輪を車幅方向外側に変位(いわゆるグランスオフ)させることで前輪の車室内への侵入量を低減するものである(特許文献1の段落[0019]、[0027]、図2参照)。
【0004】
また、下記特許文献2に記載のものは、前輪を相対的に後退させるような衝撃荷重が車体前方側から入力された際の荷重分散効果を高める車体構造として、ヒンジピラーの前方に、補強部材(78)によって補強されたトルクボックスを設けたものである(特許文献2の図9参照)。
【0005】
ところで、エンジンが縦置きされるような例えば後輪駆動車等の車両においては、横置きされるような車両と比して前輪がヒンジピラーに対して前方に、より離間して配置されることが多い。このため、このようなパワートレインのレイアウトや車両のデザインを採用した場合においては、ヒンジピラーと前輪との間隔が長くなることに起因してスモールオーバーラップ衝突時に、ヒンジピラーの前方から後退する前輪が車幅方向内側へ侵入し易くなることが顕在化することが懸念される。
【0006】
そこで特許文献2のように、補強部材をヒンジピラーよりも前方に配置することで、スモールオーバーラップ衝突時に後退する前輪の車室内への侵入をより未然に防ぐことができる。
【0007】
しかしその一方で、特許文献1のように補強部材がヒンジピラー内部に設けられている構成とは異なり、特許文献2のように補強部材をヒンジピラーよりも前方に設けた場合には、補強部材によって後退する前輪を受け止めて車幅方向外側に変位させる際に、該補強部材自体が、前輪から受ける荷重のうち車幅方向内側成分によって車幅方向内側に変位することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-60401号公報
【文献】特許第6432535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、スモールオーバーラップ衝突時に、ガセット(補強部材)の車幅方向内側への変位を抑制しつつ、該ガセットによって後退する前輪を確実にグランスオフさせることができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、ヒンジピラーと、該ヒンジピラーに対して車両前方に離間して設けられた前輪とを備え、上記ヒンジピラーが、ヒンジピラーアウタと、ヒンジピラーアウタよりも車幅方向内側に備えたヒンジピラーインナとを備え、これらの間に上下方向に延びる閉断面を構成する車両の前部車体構造であって、車両前後方向で上記ヒンジピラーと上記前輪との間に、車両後方ほど車幅方向外側に位置する前面を構成する傾斜壁部を有するガセットを備え、該ガセットは、傾斜壁部の上端から車幅方向内側且つ後方に延びる上壁部を有し、上記ガセットは、上記傾斜壁部と上記上壁部との夫々が車両前後方向において上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとに跨って固定されたものである。
【0011】
また、この発明は、ヒンジピラーと、該ヒンジピラーに対して車両前方に離間して設けられた前輪とを備え、上記ヒンジピラーが、ヒンジピラーアウタと、ヒンジピラーアウタよりも車幅方向内側に備えたヒンジピラーインナとを備え、これらの間に上下方向に延びる閉断面を構成する車両の前部車体構造であって、車両前後方向で上記ヒンジピラーと上記前輪との間に、車両後方ほど車幅方向外側に位置する前面を構成する傾斜壁部を有するガセットを備え、該ガセットは、傾斜壁部の下端から車幅方向内側且つ後方に延びる下壁部を有し、上記ガセットは、上記傾斜壁部と上記下壁部との夫々が車両前後方向において上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとに跨って固定されたものである。
【0012】
上記構成によれば、上記ガセットの前部をヒンジピラーインナに、上記ガセットの後部をヒンジピラーアウタに夫々固定することで、スモールオーバーラップ衝突時に、後退する前輪をガセットの傾斜壁部によって受け止め時に、該ガセットが後方へ変位しないように、ヒンジピラーアウタとヒンジピラーインナとの双方の部材によって受け止めることができる。
【0013】
従って、ヒンジピラーと前輪との間が比較的長い車両においても、ガセットに備えた傾斜壁部によって、後退する前輪の確実なグランスオフを行うことができる。
【0014】
ここで上記ガセットは、傾斜壁部の車幅方向内側への変位を抑制可能な強度を有する部材であれば、例えば、板状部材、剛体等で構成することができる。
【0015】
この発明の態様として、上記ガセットは、傾斜壁部の上端から車幅方向内側且つ後方に延びる上壁部と、傾斜壁部の下端から車幅方向内側且つ後方に延びる下壁部とを有し、上記上壁部と、上記下壁部と、上記傾斜壁部と、上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとで協働して閉断面を形成するものである。
【0016】
この発明の態様として、上記ガセットにおける上記傾斜壁部には、前後方向に延びるリブが形成されたものである。
【0017】
この発明の態様として、上記ガセットにおける上記傾斜壁部には、開口部が形成されており、上記リブは上記開口部の周縁を含めて前後方向に延びるものである。
【0018】
この発明の態様として、上記ガセットに対して、車幅方向内側に、上記傾斜壁部の車幅方向内側への変位を抑制する変位抑制構造として車幅方向に略水平に延びる閉断面部が構成されたものである。
【0019】
この発明の態様として、上記ガセットにおける上記傾斜壁部よりも後部から後方へ延びる後縁フランジ部は、上記ヒンジピラーアウタの車幅方向外壁に接合されたものである。
【0020】
上記構成によれば、上記ガセットの後縁フランジ部は、上記ヒンジピラーアウタの車幅方向外壁に車幅方向において接合することができるため、これら後縁フランジ部と車幅方向外壁との接合部分には、スモールオーバーラップ衝突時に、後退する前輪をガセットによってグランスオフ時に、車両前後方向のせん断力が作用する。
【0021】
よって、上記接合部分は、このせん断方向の接合力にて車両前後方向荷重に抗することになるため、該接合部分によってガセットが後方へ変位しないようにしっかりと受け止めることができる。
【0022】
この発明の態様として、上記ヒンジピラーインナの上下方向の上記ガセットに対応する部位には、上記閉断面の側へ迫り出して該閉断面を上下方向に分断する節構造体が構成されたものである。
【0023】
上記構成によれば、節構造体を、上記ヒンジピラーインナの上下方向の上記ガセットに対応する部位に構成したため、スモールオーバーラップ衝突時に、後退する前輪をガセットによってグランスオフ時に、ガセットが後方へ変位しないように受け止めるヒンジピラーの強度を節構造体によって効果的に高めることができる。
【0024】
さらに、補機(スピーカ)を格納する補機格納部(スピーカーボックス)やドアヒンジレインとしてヒンジピラーに備えた既存の部材を節構造体として適用することで、このような既存の部材を、スモールオーバーラップ衝突時に、ガセットが後方へ変位しないように受け止める節構造体としても兼用することができる。
【0025】
この発明の態様として、上記ヒンジピラーインナの上下方向の上記ガセットに対応する部位には、上記ヒンジピラーアウタよりも車両前方へ延出する前方延出部が形成され、上記ガセットは、上記前方延出部に車幅方向外側から固定されたものである。
【0026】
上記構成によれば、後退する前輪をガセットによってグランスオフ時に、車幅方向内側へ変位しようとするガセットを上記ヒンジピラーインナの前方延出部によって車幅方向内側から受け止めることができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、スモールオーバーラップ衝突時に、ガセット(補強部材)の車幅方向内側への変位を抑制しつつ、該ガセットによって後退する前輪を確実にグランスオフさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態の自動車の前部車体構造の要部を示す右側面図。
図2】本実施形態の自動車の前部車体構造の要部を前側かつ右側の斜め上方から視た斜視図。
図3図1中のA-A線断面図。
図4】本実施形態の自動車の前部車体構造における、ヒンジピラーの節部材周辺高さ部位を図3中の矢視Dおよび一部断面により示した斜視図。
図5】本実施形態の自動車の前部車体構造の要部を上方かつ車幅方向内側から視た斜視図。
図6図1中のガセット周辺部分の拡大図。
図7図6においてガセットおよび前方延出部を取り外した状態を示す図6対応図。
図8図6中のB-B線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて本発明の車両の前部車体構造を、エンジンが縦置きされたフロントエンジン・リアドライブ方式(FR)の自動車に適用した実施形態について説明する。
【0030】
図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両右側を示し、矢印Lは車両左側を示し、矢印Uは車両上方を示すものとする。また以下の説明では、車両右側の構成について説明するが、車両左側の構成についても同様であるため、車両右側の構成を中心に説明する。
なお、図1は、連結レイン20、すなわち、ホイールハウス補強部材21およびホイールハウスアウタ52の後壁部52Rを仮想線にてあらわしている。また、図1図3以外は、ホイールハウス5の図示を省略している。
【0031】
図1図3に示すように、実施形態の前部車体構造を備えた自動車は主に、左右一対のヒンジピラー1とダッシュパネル2(図2参照)と左右一対のフロントサイドフレーム3と左右一対のエプロンレインフォースメント4(以下「エプロンレイン4」と略記する)と左右一対のホイールハウス5と左右一対のサイドシル6とを備えている。
【0032】
ヒンジピラー1は、車室Ca(図3図4参照)のサイドドア開口9(図2参照)の前縁に沿って上下方向に延びており、ヒンジピラーインナ11(図3図4参照)と、車室Ca外側に配置されたヒンジピラーアウタ12とを備えている。
【0033】
ヒンジピラー1は、ヒンジピラーアウタ12とヒンジピラーインナ11との間に、上下方向に延びる閉断面空間1sを構成している。
【0034】
なお図1に示すように、ヒンジピラー1の上端部には、後方程上方に位置するように傾斜して延びるフロントピラー7が接合されている。
【0035】
図1図3に示すように、ヒンジピラーアウタ12は、車幅方向外側の車幅外側壁部12aと、前後各端側から車幅方向内側へ延びる前壁部12bおよび後壁部12cと、前壁部12bの車幅内端から前側へ延びる前端フランジ部12dと、後壁部12cの車幅内端から後側へ延びる後側フランジ部12eとで、上下方向の直交断面が車幅方向内側へ開放したハット形状に一体形成されている。
【0036】
一方図3図4に示すように、ヒンジピラーインナ11は、車幅方向内側の車幅内側壁部11aと、車幅内側壁部11aの後端から後側へ延びる後端フランジ部11bと、車幅内側壁部11aの前端から前方へ延びる前端フランジ部11cと、前端フランジ部11cの前端(ヒンジピラーアウタ12の前端フランジ部12dの前端)よりもさらに前方に延びる前方延出部11dとで一体に形成されている。
【0037】
換言すると図3に示すように、ヒンジピラーインナ11は、上下方向および車幅方向に延びる略平板状に形成したインナ本体部110と、該インナ本体部110に対して車幅方向外側へ突出する節部材111とを備えている。
【0038】
節部材111は、ヒンジピラーインナ11の上下方向における、後述するガセット30(図1参照)と略同じ高さに備えている。
さらに図3図4に示すように、節部材111は、上壁部111aと下壁部111bと前壁部111cと後壁部111dと、これら壁部の各車幅方向内端から車両側面視で外側(上方、下方、前方、後方)へ突出するフランジ部111eと、これら壁部に囲まれた空間を車幅方向外側から閉塞する車幅外壁部111fとで、車幅方向内側が開放した中空形状に形成している。そして、節部材111は、インナ本体部110の車両側面視で節部材111に対応する部位に形成された開口部110A(図3参照)からヒンジピラー1の閉断面空間1sに嵌め込まれた状態で、フランジ部111eを開口部110Aの縁部に接合することで一体に接合されている。
【0039】
ところで図1に示すように、ヒンジピラー1には、サイドドア開口9に備えた不図示のフロントドアが開閉可能に枢支される。具体的には図1図3に示すように、ヒンジピラー1(ヒンジピラーアウタ12)の車幅外側壁部12aには、フロントドアの前縁の上下各側に設けられたヒンジブラケット(図示省略)が取り付けられるサイドドア取付け部13a,13bが、ヒンジブラケットに対応する位置に台座状に設けられている。
【0040】
上述した節部材111は、図3に示すように、車両側面視でヒンジピラーアウタ12の車幅外側壁部12aに設けた下側のサイドドア取付け部13bと略同じ高さに設けられている。
【0041】
ここで、節部材111は、ヒンジピラー1の閉断面空間1sにおいて、インナ本体部110からヒンジピラーアウタ12の車幅外側壁部12aに当接するまで迫り出して該閉断面空間1sを上下方向に分断するように配設されている(図3参照)。
【0042】
そして、節部材111の車幅外壁部111fは、車幅外側壁部12aに設けた下側のサイドドア取付け部13bに、ヒンジピラー1の閉断面空間1s側(車幅方向内側)から当接した状態で接合されている。
【0043】
これにより、節部材111は、車幅外側壁部12aに設けた下側のサイドドア取付け部13bの補強部材として、すなわち、ヒンジピラー1自体の補強部材として機能する。
【0044】
さらに図3図4に示すように、節部材111は、インナ本体部110からヒンジピラー1の閉断面空間1sの側(車幅方向外側)へ凹むとともに車幅方向内側に向けて開口した内部空間111sを有して形成されている。この内部空間111sには、車載用の補機(機能部品)として例えばオーディオスピーカ(図示省略)が格納される。このため、節部材111は、その内部空間111sを、補機を格納する格納スペースとしても兼用している。
【0045】
図1に示すように、ヒンジピラーインナ11に備えた前方延出部11dは、前方延出部アッパ11duと、該前方延出部アッパ11duよりも下方に有する前方延出部ロア11ddとを備え、エプロンレイン4とサイドシル6とに亘って互いに上下方向に連続するとともに該ヒンジピラーアウタ12の前端フランジ部12dの前端よりも車両前方に延びるサイドパネルとして形成している。
【0046】
図3図4に示すように、ダッシュパネル2は、左右のヒンジピラーアウタ12に対して若干前側位置において、左右のヒンジピラー1(ヒンジピラーインナ11)を車幅方向に連結するように縦壁状に配設されており、これによりエンジンルームEとその後方の車室Caとに区分している。
【0047】
詳しくは、ダッシュパネル2は、その車幅方向外端が、ヒンジピラーインナ11の車両前後方向における、左右のヒンジピラーアウタ12よりも前側に延出する前方延出部11dの後部(基端側)に車幅方向内側から接合されている(図4参照)。
【0048】
ダッシュパネル2は、上部に車幅方向に延びるカウルパネル14が接合されている一方で(図1参照)、下部が下方程後方に傾斜して形成し、該下部の後端部には、車両の床下を形成するフロアパネル8(図3参照)の前端が接合されている。
【0049】
図2に示すように、ダッシュパネル2の前面には、ダッシュクロスメンバ15が接合されており、これらダッシュパネル2とダッシュクロスメンバ15との間に車幅方向に延びる閉断面15sが構成されている。
【0050】
具体的には、ダッシュクロスメンバ15は、前壁部15aと上壁部15bと下壁部15cと、上壁部15bおよび下壁部15cの各後端から上下方向の相反する方向へ突出するフランジ部15d,15eとを有して車幅方向(延在方向)の直交断面がハット形状に形成されている。ダッシュクロスメンバ15は、その上下各フランジ部15d,15eがダッシュパネル2の前面にスポット溶接等により接合されている。
【0051】
ダッシュクロスメンバ15は、両サイドのフロントサイドフレーム3の間において、これらを繋ぐように車幅方向に延びている。
【0052】
ところで図2に示すように、本実施形態の自動車は、車体下部の車幅方向の中央部に、ダッシュパネル2の下部とフロアパネル8とにかけて車両前後方向に延びるトンネル部16(ダッシュパネル2側のトンネル部16のみ図示)が設けられている。
【0053】
上述したダッシュクロスメンバ15は、その車幅方向の中央部が、ダッシュパネル2の下部中央部に設けられたトンネル部16を上方に迂回するように車幅方向に延びている(同図参照)。
【0054】
フロアパネル8の両サイドに設けられた後述するサイドシル6と、トンネル部16との車幅方向の間には、フロアフレーム17(図5参照)がフロアパネル8の下面側から接合されている。このフロアフレーム17は、フロアパネル8との間に車両前後方向に延びる閉断面空間17sを構成している。
【0055】
さらに図2図5図8に示すように、フロアフレーム17の前部とサイドシル6の前部との車幅方向の間には、これらを連結するように車幅方向に延びるトルクボックス18が配設されている。トルクボックス18は、ダッシュパネル2の下部との間に車幅方向に延びる閉断面空間8s(図8参照)を構成している。
【0056】
図1図2図5に示すように、フロントサイドフレーム3は、ダッシュパネル2の前方かつ前輪(図示省略)よりも車幅方向内側において、車両前後方向に延びるように配設されている。
【0057】
フロントサイドフレーム3は、エンジンルームE(図2参照)の両サイドに車両前後方向に直線状に延びる水平部131と、該水平部131の基部(後部)側の下部からダッシュパネル2に対して下方に迂回するようにダッシュパネル2の傾斜状の下部に沿って後方程徐々に下方に位置するように傾斜して延びる傾斜部132(キックアップ部)とを備えている。
図5に示すように、フロントサイドフレーム3の傾斜部132の後端は、フロアフレーム17の前端に接合されている。
【0058】
フロントサイドフレーム3の水平部131は、アウタパネル133とインナパネル134とを備えている。
【0059】
図1図2に示すように、アウタパネル133は、上壁部131aと下壁部(図示省略)と車幅外壁部131cと、上下各壁部の車幅内端から上下各側に突出するフランジ部131d,131eとで車両前後方向の直交断面が車幅方向内側に向けて開口するハット形状に形成され、インナパネル134は、図5に示すように、車幅内壁部131fと、車幅内壁部131fから上下各側に突出する上下各フランジ部131g,131hとで上下方向に延びる略平板状に形成されている。
【0060】
水平部131は、アウタパネル133とインナパネル134との各上端フランジ部131d,131g同士および各下端フランジ部同士131e,131hが車幅方向に接合され、両パネルの間には、車両前後方向に延びる閉断面空間3sが構成している。
【0061】
エプロンレイン4は、フロントサイドフレーム3よりも車幅方向外側かつ上側に配設され、車両前後方向に略水平に延びており、内部に閉断面空間(図示省略)が構成されている。
【0062】
エプロンレイン4は、ヒンジピラー1の上端部から前方へ延びるエプロンレイン後部4Rと、該エプロンレイン後部4Rの前端から前方へ延びるエプロンレイン前部4Fとを備えている。
【0063】
図1に示すように、ホイールハウス5は、ヒンジピラー1に対して前方に離間して配設されており、ホイールハウス5には前輪(図示省略)が収容される。ホイールハウス5は、前方延出部11dに対して車幅方向内外各側に配設されたホイールハウスインナ51およびホイールハウスアウタ52を備えている。
【0064】
図1中の仮想線にて示すように、ホイールハウスアウタ52の後壁部52Rは、ホイールハウスアウタ52の後側に配設される後述する連結レインフォースメント20(以下、「連結レイン20」と略記する。)の前面を形成するように後方程下方に湾曲して延びている。すなわち、後述する連結レイン20は、ホイールハウスアウタ52の後壁部52Rを含んで構成される。
【0065】
図1に示すように、ホイールハウスインナ51の車両前後方向の中間部には、前輪用サスペンション部材としての不図示のダンパを収容するサスペンションハウジング53を備えている。
【0066】
サスペンションハウジング53は、フロントサイドフレーム3とエプロンレイン前部4Fとに跨って取り付けられており、ホイールハウス5の車幅方向の内側に位置するサスペンションハウジング53の上部には、同図に示すように、不図示のダンパの上端部が取り付けられるサスペンション支持部(ダンパ支持部)としてのサストップ部53aが設けられている。
なお、サスペンションハウジング53は、当例ではホイールハウスインナ51の一部として別体で構成したがこれに限らず、一体に構成してもよい。
【0067】
図1図2に示すように、サイドシル6は、車体下端部の左右両端位置にて前後方向に延びており、車幅方向内側に開放した断面ハット状のサイドシルアウタ61と、車幅方向外側に開放した断面ハット状のサイドシルインナ62(図3参照)とを備え、内部に前後方向に延びる閉断面空間(図示省略)を構成している。
【0068】
サイドシル6の前部にはヒンジピラー1の下方程前後方向に末広がり状に形成された下部(付け根部分)が接合されている(図1図2参照)。
【0069】
当例では図1に示すように、サイドシル6は、ホイールハウスアウタ52の後下端に達するまでヒンジピラー1の前壁部12bよりも前方へ突き出すように形成されている。
【0070】
ところで本実施形態のように、フロントエンジン・リアドライブ方式(FR)を採用した自動車においては、一般に車体コントロール性の観点から車体の重心を前後方向における中心線上に極力集めることが好ましい。
【0071】
このため本実施形態の自動車は、エンジンルームE内において縦置きされた不図示のエンジンをホイールハウス5の中心位置よりも極力後方にレイアウトするために、ヒンジピラー1の前壁部12bとホイールハウスアウタ52の後壁部52Rとの車両前後方向の間隔が、エンジン横置きタイプの自動車と比して車両前後方向の間隔が長くなるように設定されている。
【0072】
図1に示すように、連結レイン20は、このように車両前後方向の間隔が長くなるように設定された、ヒンジピラー1とホイールハウス5との間に配設されている。
【0073】
連結レイン20は、ホイールハウス5の少なくとも後面周りを補強するホイールハウス補強部材21と、該連結レイン20の前壁部を構成する上述したホイールハウスアウタ52の後壁部52Rとで構成され、前方延出部11dとその前方のホイールハウスインナ51の各車幅方向外面とに対して、これらを前後方向に跨ぐように車幅方向外側から取り付けられている。
【0074】
これにより図1に示すように、連結レイン20は、車両側面視でヒンジピラー1の前側かつエプロンレイン前部4Fの下方のコーナー部において、ヒンジピラー1とエプロンレイン4とを筋交い状に連結するように配設されている。
【0075】
なお、連結レイン20は、その下端部(付け根部分)が、上述したようにヒンジピラー1に接合されるとともに、サイドシル6(サイドシルアウタ61)の車両前後方向における、ヒンジピラー1の前壁部12bよりも前方部分に相当する前方突出部分61Faにも上側から接合されている(図1参照)。
【0076】
また図3に示すように、連結レイン20は、内部(ホイールハウス補強部材21およびホイールハウスアウタ52の後壁部52R等の間)に閉断面空間20sが構成されており、ホイールハウス5の少なくとも後面周りを補強する閉断面構造として構成されている。閉断面空間20sは、連結レイン20の延在方向に対応してホイールハウスアウタ52の後壁部52Rに沿って上下方向に延びている。
【0077】
そして図3に示すように、連結レイン20の上下方向に延びる閉断面空間20sにおける、上下方向の中間部には、スモールオーバーラップ衝突時に前輪を含めたホイールハウス5等の後退ひいては車室Ca内への侵入量を低減するためのガセット30が設けられている。
【0078】
図1図3図6に示すようにガセット30は、ヒンジピラーインナ11の前方延出部11dとヒンジピラーアウタ12とのコーナー部に配設されており、これらに対してスポット溶接等により接合されている。
【0079】
具体的には図6に示すように、ガセット30は、車幅方向外側程後方に位置するように傾斜する前面としての傾斜壁部30aと、傾斜壁部30aの上端から車幅方向内側(後方)に延びる上壁部30bと、傾斜壁部30aの下端から車幅方向内側(後方)に延びる下壁部30c(図3参照)と、傾斜壁部30aの前端(車幅方向内端)から前方へ延出する前縁フランジ部30dと、傾斜壁部30aの後端(車幅方向外端)から後方へ延出する後縁フランジ部30eと、上壁部30bの車幅方向内端から上方へ延出する前上フランジ部30fと、上壁部30bの後端から上方へ延出する後上フランジ部30gと、下壁部30cの車幅方向内端から下方へ延出する前下フランジ部30hと、下壁部30cの後端から下方へ延出する後下フランジ部30iとで一体形成されている。
【0080】
そして、前縁フランジ部30dと前上フランジ部30fと前下フランジ部30hとは共に、ヒンジピラーインナ11の前方延出部11d(前方延出部ロア11dd)に接合されている。
なお、当例では、前上フランジ部30fと前下フランジ部30hの各後部は、ヒンジピラーアウタ12の前端フランジ部12dを介して前方延出部11dに接合されている。
【0081】
さらに、後上フランジ部30gと後下フランジ部30iは、共にヒンジピラーアウタ12の前壁部12bに接合され、後縁フランジ部30eは、ヒンジピラーアウタ12の車幅外側壁部12aに接合されている。
【0082】
すなわち、上記ガセット30は、その前部が前方延出部11dに対して車幅方向外側から接合されるとともに、その後部がヒンジピラーアウタ12に対して車幅方向外側および前側から接合され、これにより前方延出部11dとヒンジピラーアウタ12とに前後方向に跨って接合されている。
【0083】
また図3図6に示すように、ガセット30における傾斜壁部30aには、開口部31が開口形成されており、該開口部31の周縁部を含めて後端から前縁フランジ部30dに至るまで前後方向に延びるリブ32が形成されている。
【0084】
図3に示すように、ガセット30は、連結レイン20の閉断面空間20sに配設された状態において傾斜壁部30aが、連結レイン20の閉断面空間20sの一部を成す隙間空間20saを隔てて前方に位置するホイールハウスアウタ52の後壁部52Rと、連結レイン20の車幅方向外側に位置する側壁部21aとの夫々に対向する。
【0085】
隙間空間20saは、連結レイン20の閉断面空間20sの上下方向における直交断面視にて、ガセット30の傾斜壁部30aと、ホイールハウスアウタ52の後壁部52Rおよび側壁部21aとによって囲まれた略三角形状の閉断面空間を構成している。
【0086】
また、ガセット30は、ヒンジピラー1の車幅外側壁部12aに設けた下側のサイドドア取付け部13b(図1図2参照)、並びにヒンジピラー1の閉断面空間1sに備えた節部材111(図3参照)と略同じ高さに設けられている。
このように、ガセット30を、このようにヒンジピラー1に対して、その上下方向における節部材111と略同じ高さに取り付けることで、ガセット30は、節部材111と共にホイールハウス5等の後退をより効果的に抑制することができる。
【0087】
すなわち、節部材111は、ヒンジピラー1自体(サイドドア取付け部13b)の補強のみならず、ガセット30の補強部材としても兼用することができる。
【0088】
図1図3図5図8に示すように、上記ガセット30に対して、前方延出部11dを介して車幅方向内側には、傾斜壁部30aの車幅方向内側への変位を抑制する変位抑制構造としての閉断面部40が構成されている。
【0089】
閉断面部40は、ホイールハウスインナ51(図1参照)に対して下方に配設されており、ダッシュパネル2と補強クロスメンバ41とが協働して、これらの間に車幅方向に略水平かつ直線状に延びる閉断面空間40sを有するように構成している(図3図7図8参照)。
【0090】
補強クロスメンバ41は、前壁部41aと上壁部41bと下壁部41cと、上壁部41bおよび下壁部41cの各後端から上下方向の相反する方向へ突出するフランジ部41d,41eとを有して車幅方向の直交断面が車両後方へ向けて開口するハット形状に形成されている。
【0091】
閉断面部40は、補強クロスメンバ41の上下各フランジ部41d,41eをダッシュパネル2の前面にスポット溶接等により接合することで構成される。
【0092】
図2図5に示すように、補強クロスメンバ41の車幅方向内端は、上述したダッシュクロスメンバ15の車幅方向外端に接合され、これにより、補強クロスメンバ41とダッシュクロスメンバ15とは、車幅方向に連続して延びている。
【0093】
具体的には図5図6に示すように、補強クロスメンバ41の前壁部41a、上壁部41b、下壁部41c、上下各フランジ部41d,41eの夫々の車幅方向内端と、ダッシュクロスメンバ15の前壁部15a、上壁部15b、下壁部15c、上下各フランジ部15d,15eの夫々の車幅方向外端とが接合され、夫々の内部に有する閉断面空間40s,15sが車幅方向に連続して延びている。
【0094】
図2図5に示すように、補強クロスメンバ41とダッシュクロスメンバ15との接合部C(境界部)には、車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム3の後部が接合されている。すなわち接合部Cには、フロントサイドフレーム3の水平部131の後端部(基端部)が前方から、傾斜部132の上部が下方から夫々接合されている。
【0095】
具体的には図6に示すように、フロントサイドフレーム3の水平部131の基端部には、上壁部131aの後端から後方に延びる上壁フランジ部131jと、車幅外壁部131cの後端から車幅方向外側に延びる車幅外壁フランジ部131kを備えるとともに、傾斜部132には、上端から車幅方向外側に延びる上端フランジ部132aを備えている。
【0096】
図5図6に示すように、ダッシュクロスメンバ15と補強クロスメンバ41との接合部Cにおいて、上壁フランジ部131jは、夫々の上壁部15b,41bを車幅方向に跨ぐように接合され、図6に示すように、車幅外壁フランジ部131kは、補強クロスメンバ41の前壁部41aに、上端フランジ部132aは、補強クロスメンバ41の下壁部41cに夫々に接合されている。
一方図5に示すように、フロントサイドフレーム3の後部の車幅方向内側、すなわち水平部131の後端部とダッシュクロスメンバ15とのコーナー部には、これら水平部131とダッシュクロスメンバ15との接合部Cを車幅方向内側から補強するガセット135を備えている。
ガセット135は、フロントサイドフレーム3の水平部131とダッシュクロスメンバ15とを跨ぐようにしてこれらに接合されている。
【0097】
これにより、補強クロスメンバ41とダッシュクロスメンバ15との接合部Cには、フロントサイドフレーム3の後部(傾斜部132の上端部および水平部131の後端部)が接合されている。
【0098】
また、図2図3図6に示すように、閉断面部40は、車両側面視で上記ガセット30と一致する部位に配設されている。
具体的には図3図5図7図8に示すように、補強クロスメンバ41の車幅方向外端には、前壁部41aと下壁部41cと下端フランジ部41eにかけての部位から車両前方へ向けて突出する車幅外端フランジ部41fが設けられている。
【0099】
この補強クロスメンバ41は、閉断面空間40sをヒンジピラーインナ11の前方延出部11dによって車幅方向外側から閉塞するように車幅外端フランジ部41fと前方延出部11dとが車幅方向に接合されている。
【0100】
これにより、補強クロスメンバ41、すなわち閉断面部40は、前方延出部11dとフロントサイドフレーム3との間において車幅方向に延びており、車幅方向内側がフロントサイドフレーム3およびダッシュクロスメンバ15に、車幅方向外側(車幅外端フランジ部41f)が前方延出部11dに夫々接続されている。
【0101】
ここで図3図7に示すように、ガセット30と閉断面部40とは、夫々の内部に有する閉断面空間30s(図3参照),40s(図7参照)が車両側面視で少なくとも一部が略一致するとともに、図6図7に示すように、ガセット30の少なくとも前縁フランジ部30d、前上フランジ部30fおよび前下フランジ部30hと、補強クロスメンバ41の車幅外端フランジ部41fとの少なくとも一部が車両側面視で一致(オーバーラップ)するように前方延出部11dを隔てて配設される。
【0102】
当例では、補強クロスメンバ41の前方延出部11dへの複数の接合箇所のうち、前方延出部11dの前端に位置する接合箇所Sa1(図7図8参照)と、ガセット30の前方延出部11dへの複数の接合箇所のうち、前方延出部11dの前端に位置する接合箇所Sa2(図6参照)とが、車両側面視で一致する。
【0103】
この前方延出部11dの前端に位置する接合箇所(Sa1,Sa2)においては、ガセット30の前縁フランジ部30dと補強クロスメンバ41の車幅外端フランジ部41fとで前方延出部11dを挟み込むようにして、これら3枚が重合した状態でスポット溶接等により一体に接合(所謂3枚接合)されている。
【0104】
さらに図2図5図8に示すように、補強クロスメンバ41の上壁部41bには、車体に搭載される補機としてのバッテリトレイ(図示省略)を取付ける補機取付け座150(バッテリトレイ取付け座)が設けられている。
【0105】
補機取付け座150には、ボルトB等によって補機を取り付け可能に車幅方向に離間して一対が配設されている。
【0106】
図7図8に示すように、補強クロスメンバ41の上壁部41bに設けられた一対の補機取付け座150は、上壁部41bの下面側(閉断面空間40sの側)から補機取付け座補強部材70によって補強されている。
【0107】
図8に示すように、補機取付け座補強部材70は、一対の補機取付け座150を跨ぐように車幅方向に略水平に延びる上壁補強壁部71と、該上壁補強壁部71の前端から下方に延びる前壁補強壁部72と、上壁補強壁部71の後端から上方に延びる後端フランジ部73とを有して一体に形成している。
【0108】
そして、上壁補強壁部71が補強クロスメンバ41の上壁部41bに、その下面側から当接し、前壁補強壁部72が補強クロスメンバ41の前壁部41aに、その後面側から当接し、かつ、後端フランジ部73がダッシュパネル2と補強クロスメンバ41の上端フランジ部41dとの間に挟み込まれた状態で、夫々スポット溶接等により接合されている。
【0109】
なお、上壁補強壁部71の車両平面視における、上壁部41bの補機取付け座150に形成したボルト挿通孔41hに対応する部位にも、ボルト挿通孔71hが貫通形成されている。これらボルト挿通孔41h,71hは上下方向に連通し、下方からボルトBが挿通される。そしてこのボルトB等によって補機は、補機取付け座150に締結固定される。
【0110】
ここで、前壁補強壁部72と補強クロスメンバ41の前壁部41aとは、車幅方向に離間して複数箇所(Sb1~Sb3)(図8参照)にて溶接されている。これら複数の接合箇所(Sb1~Sb3)のうち、車幅方向内側の接合箇所Sb3においては、フロントサイドフレーム3の水平部131の後端に形成した車幅外端フランジ部13kと補強クロスメンバ41の前壁部41aとの接合箇所に一致する。
【0111】
すなわち、この接合箇所Sb3において、フロントサイドフレーム3側の車幅外壁フランジ部131kと前壁補強壁部72とによって、補強クロスメンバ41の前壁部41aを挟み込むようにして一体に接合(所謂3枚接合)している。
これにより、フロントサイドフレーム3の車幅外壁フランジ部131kと補強クロスメンバ41の前壁部41aとの接合箇所Sb3は、前壁補強壁部72によって車両後方から補強されている。
【0112】
上述したように、本実施形態の自動車の前部車体構造は、ヒンジピラー1と、該ヒンジピラー1に対して車両前方に離間して設けられた前輪とを備え、ヒンジピラー1が、ヒンジピラーアウタ12と、ヒンジピラーアウタ12よりも車幅方向内側に備えたヒンジピラーインナ11とを備え、これらの間に上下方向に延びる閉断面空間1sを構成する車両の前部車体構造であって、車両前後方向でヒンジピラー1と前輪との間に、車両後方ほど車幅方向外側に位置する傾斜壁部30aを有するガセット30を備え、ガセット30は、車両前後方向においてヒンジピラーインナ11とヒンジピラーアウタ12とに跨って固定されたものである(図1図3図6参照)。
【0113】
上記構成によれば、ガセット30の前部をヒンジピラーインナ11に、ガセット30の後部をヒンジピラーアウタ12に夫々固定することで、スモールオーバーラップ衝突時に、後退する前輪をガセット30の傾斜壁部30aによって受け止め時に、該ガセット30が後方へ変位しないように、ヒンジピラーアウタ12とヒンジピラーインナ11との双方の部材によって受け止めることができる。
【0114】
従って、ヒンジピラー1と前輪との間が比較的長い車両においても、ガセット30に備えた傾斜壁部30aによって、後退する前輪の確実なグランスオフを行うことができる。
【0115】
この発明の態様として、ガセット30における傾斜壁部30aよりも後部から後方へ延びる後縁フランジ部30eは、ヒンジピラーアウタ12の車幅外側壁部12a(車幅方向外側の面)に接合されたものである(同図参照)。
【0116】
上記構成によれば、ガセット30の後縁フランジ部30eは、ヒンジピラーアウタ12の車幅外側壁部12aに車幅方向において接合することができるため、これら後縁フランジ部30eと車幅外側壁部12aとの接合部分には、スモールオーバーラップ衝突時に、後退する前輪をガセット30によってグランスオフ時に、車両前後方向のせん断力が作用する。
【0117】
よって、接合部分は、このせん断方向の接合力にて車両前後方向荷重に抗することができるため、該接合部分によってガセット30が後方へ変位しないようにしっかりと受け止めることができる。
【0118】
この発明の態様として、ヒンジピラーインナ11の上下方向のガセット30に対応する部位には、閉断面空間1sの側へ迫り出して該閉断面空間1sを上下方向に分断する節部材111(節構造体)が構成されたものである(図3図4参照)。
【0119】
上記構成によれば、節部材111を、ヒンジピラーインナ11の上下方向のガセット30に対応する部位に構成したため、スモールオーバーラップ衝突時に、後退する前輪をガセット30によってグランスオフ時に、ガセット30が後方へ変位しないように受け止めるヒンジピラー1の強度を節部材111によって効果的に高めることができる。
【0120】
具体的には、ヒンジピラーインナ11の車幅外側壁部12aを車幅方向内側から補強することができるため、該車幅外側壁部12aによって車幅外側壁部12aに作用する車両前後方向のせん断荷重や、車幅方向内側への荷重をよりしっかりと受け止めることができる。
【0121】
さらに、上述した節部材111は、ヒンジピラー1の車幅外側壁部12aに設けた下側のサイドドア取付け部13bの補強部材として、すなわちヒンジピラー1自体の補強部材として機能させることができる。さらに、節部材111(の内部空間111s)は、車載用の補機(機能部品)として例えばオーディオスピーカ(図示省略)を格納する格納スペースとしても兼用することができる。
【0122】
すなわち、ヒンジピラー1自体の補強部材やオーディオスピーカ格納部といった既存の車両部材を利用してスモールオーバーラップ衝突時に、ガセット30が後方へ変位しないように受け止めることができ、これにより車両部品点数の削減に寄与することができる。
【0123】
この発明の態様として、ヒンジピラーインナ11の上下方向のガセット30に対応する部位には、ヒンジピラーアウタ12よりも車両前方へ延出する前方延出部11dが形成され、ガセット30は、前方延出部11dに車幅方向外側から固定されたものである(図1図3図6参照)。
【0124】
上記構成によれば、後退する前輪をガセット30によってグランスオフ時に、車幅方向内側へ変位しようとするガセット30をヒンジピラーインナ11の前方延出部11dによって車幅方向内側から受け止めることができる。
【0125】
従って、ガセット30に備えた傾斜壁部30aによって、後退する前輪のより確実なグランスオフを行うことができる。
【符号の説明】
【0126】
1…ヒンジピラー
1s…閉断面空間(閉断面)
11…ヒンジピラーインナ
11d…前方延出部
12…ヒンジピラーアウタ
12a…車幅外側壁部(車幅方向外壁)
30…ガセット
30a…傾斜壁
30b…上壁部
30c…下壁部
30e…後縁フランジ部
31…開口部
32…リブ
40…閉断面部
111…節部材(節構造体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8