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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】真空インタラプタおよび真空遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/662 20060101AFI20220114BHJP
   H02B 13/035 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H01H33/662 Z
H01H33/662 E
H02B13/035 301G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020104931
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021197321
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 安▲緒▼
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-131567(JP,U)
【文献】特開平02-082418(JP,A)
【文献】特開昭52-066960(JP,A)
【文献】特開2004-259633(JP,A)
【文献】特開2016-126952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/60-33/68
H02B 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の筒状本体を有し、当該筒状本体の軸心方向の一端側である固定側が固定側フランジにより封止され当該軸心方向の他端側である可動側が可動側フランジにより封止されている真空容器と、
固定側フランジ中央部において前記軸心方向のうち真空容器内側方向に延出している固定側通電軸と、
固定側通電軸の延出方向側の端部に支持されている固定電極と、
可動側フランジ中央部において前記軸心方向に貫通して当該軸心方向に延在し、当該軸心方向に伸縮自在なベローズを介して当該可動側フランジの真空容器内側に支持されて、当該軸心方向に移動自在な可動側通電軸と、
可動側通電軸の真空容器内側の端部に支持されて固定電極と対向し、当該可動側通電軸の移動に応じて固定電極と接離する可動電極と、
を備え、
固定側フランジおよび可動側フランジは、それぞれのフランジ中央部とフランジ外周縁部との間に、当該フランジ中央部の外周に沿って延在する環状で前記軸心方向のうち真空容器外側方向に膨出した形状の環状膨出部が、形成されており、
環状膨出部は、
当該環状膨出部において前記膨出方向の先端部からフランジ中央部側に位置し、当該膨出方向に近づくに連れて拡径された形状の内周側環状壁と、
当該環状膨出部において前記膨出方向の先端部からフランジ外周縁部側に位置し、当該膨出方向に近づくに連れて縮径された形状の外周側環状壁と、
を有していることを特徴とする真空インタラプタ。
【請求項2】
環状膨出部は、内周側環状壁と外周側環状壁との間の内角θが、90°~150°の範囲内であることを特徴とする請求項記載の真空インタラプタ。
【請求項3】
前記膨出方向の先端部における直径をL1とし、フランジ外周縁部の直径をLとした場合に、関係式0.5L≦L1≦0.7Lを満たすことを特徴とする請求項または記載の真空インタラプタ。
【請求項4】
請求項1~の何れかに記載の真空インタラプタを1個以上備えた真空遮断器であって、
前記真空インタラプタを収容し、内部に絶縁媒体ガスが充填されている密封容器と、
密封容器内に設けられ、前記真空インタラプタの可動側通電軸を前記軸心方向に移動自在に電気的接続しているリンク機構と、
密封容器の外周側に設けられ、リンク機構に接続されている絶縁性の操作棒を介して当該リンク機構を動作させる操作部と、
を備えていることを特徴とする真空遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば種々の電力設備等に適用されている真空遮断器等、および当該真空遮断器等に適用可能な真空インタラプタに係るものである。
【背景技術】
【0002】
電力設備等に適用されている真空遮断器等においては、電流遮断部品として真空インタラプタを内蔵したものが知られている。これら真空遮断器等および真空インタラプタは、近年、更なる高電圧電力系統への適応拡大が期待されており、例えば所望の諸特性(絶縁性能等)が得られるように、それぞれ種々の改善が検討されている(例えば特許文献1,2)。
【0003】
図6の符号9は、一般的に知られている真空インタラプタの一例を示すものであり、絶縁性の筒状本体90の軸心方向(以下、単に軸心方向と適宜称する)の一端側である固定側を固定側フランジ91aにより封止(図中では外周縁部96aを端面9aaにより支持して封止)し、当該軸心方向の他端側である可動側を可動側フランジ91bにより封止(図中では外周縁部96bを端面9bbにより支持して封止)した真空容器91が用いられている。
【0004】
筒状本体90は、それぞれ筒状の中間シールド(アークシールド)9c,固定側絶縁部9a,可動側絶縁部9bを有したものであって、当該固定側絶縁部9aおよび可動側絶縁部9bの間に中間シールド9cを挟んで同軸状に連設した構成となっている。
【0005】
固定側フランジ91aの中央部94aには、軸心方向のうち真空容器91内側方向に延出するように固定側通電軸92aが設けられ、その固定側通電軸92aの端部には固定電極93aが支持される。可動側フランジ91bには、当該可動側フランジ91bの中央部94bを軸心方向に貫通して当該軸心方向に延在する可動側通電軸92bが、設けられる。
【0006】
この可動側通電軸92bは、軸心方向に伸縮自在なベローズ92cを介して可動側フランジ91bの真空容器91内側に支持され、当該軸心方向に移動自在となっている。可動側通電軸92bの端部には可動電極93bが支持され、当該可動側通電軸92bの移動に応じて固定電極93aと接離する。
【0007】
真空インタラプタ9においては、中間シールド9cの他に、サブシールドと称される各種シールドを適宜配置し、電界特性の向上(例えばシールド端部の電界値の低減)を図ることが知られている。その一例としては、図示するような電界緩和シールド95a,95bやベローズシールド95cを配置することが挙げられる。
【0008】
以上のような真空インタラプタ9は、例えば絶縁媒体ガスが封入されている密封容器内に収容(例えば真空遮断器の接地タンク内に1個以上の真空インタラプタ9を収容)し、可動側通電軸92bを適宜操作(軸心方向に移動するように操作)して所望の特性(絶縁性能,遮断性能等)を発揮できるように、適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-259633号公報
【文献】特許第5255416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように絶縁媒体ガスが封入されている密封容器内に真空インタラプタ9を配置すると、真空容器91には、当該真空容器91内部と絶縁媒体ガスとの圧力差による外部圧力が作用する。そして、前記外部圧力が大きくなると、特に真空容器91の機械的強度が低い箇所においては変形や損傷が生じるおそれがあり、真空インタラプタ9の所望の特性を発揮できなくなることも考えられ得る。
【0011】
このような外部圧力に対抗する手法の一例としては、真空容器91の周壁を肉厚化したり補強部材を設けることにより、当該真空容器91の機械的強度を向上させることが挙げられる。しかしながら、これら手法を単に適用した場合、真空インタラプタ9のコスト増や大型化を招くおそれもある。
【0012】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みてなされたものであって、真空インタラプタの真空容器において外部圧力に対抗する機械的強度を向上し易くすることに貢献可能な技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係る真空インタラプタおよび真空遮断器は、前記の課題の解決に貢献できるものであり、当該真空インタラプタの一態様は、絶縁性の筒状本体を有し、当該筒状本体の軸心方向の一端側である固定側が固定側フランジにより封止され当該軸心方向の他端側である可動側が可動側フランジにより封止されている真空容器と、固定側フランジ中央部において前記軸心方向のうち真空容器内側方向に延出している固定側通電軸と、固定側通電軸の延出方向側の端部に支持されている固定電極と、可動側フランジ中央部において前記軸心方向に貫通して当該軸心方向に延在し、当該軸心方向に伸縮自在なベローズを介して当該可動側フランジの真空容器内側に支持されて、当該軸心方向に移動自在な可動側通電軸と、可動側通電軸の真空容器内側の端部に支持されて固定電極と対向し、当該可動側通電軸の移動に応じて固定電極と接離する可動電極と、を備える。そして、固定側フランジおよび可動側フランジは、それぞれのフランジ中央部とフランジ外周縁部との間に、当該フランジ中央部の外周に沿って延在する環状で前記軸心方向のうち真空容器外側方向に膨出した形状の環状膨出部が、形成されていることを特徴とする。
【0014】
前記一態様において、環状膨出部は、当該環状膨出部において前記膨出方向の先端部からフランジ中央部側に位置し、当該膨出方向に近づくに連れて拡径された形状の内周側環状壁と、当該環状膨出部において前記膨出方向の先端部からフランジ外周縁部側に位置し、当該膨出方向に近づくに連れて縮径された形状の外周側環状壁と、を有していることを特徴としても良い。
【0015】
また、環状膨出部は、内周側環状壁と外周側環状壁との間の内角θが、90°~150°の範囲内であることを特徴としても良い。また、前記膨出方向の先端部における直径をL1とし、フランジ外周縁部の直径をLとした場合に、関係式0.5L≦L1≦0.7Lを満たすことを特徴としても良い。
【0016】
真空遮断器の一態様は、前記真空インタラプタを1個以上備えた真空遮断器であって、前記真空インタラプタを収容し、内部に絶縁媒体ガスが充填されている密封容器と、密封容器内に設けられ、前記真空インタラプタの可動側通電軸を前記軸心方向に移動自在に電気的接続しているリンク機構と、密封容器の外周側に設けられ、リンク機構に接続されている絶縁性の操作棒を介して当該リンク機構を動作させる操作部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上示したように本発明によれば、真空インタラプタの真空容器において外部圧力に対抗する機械的強度を向上し易くすることに貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例による真空インタラプタ1A(1B)の概略構成を説明する概略図(真空容器1の軸心方向(図示左右方向)の縦断面図)。
図2】固定側フランジ11a(または可動側フランジ11b)の概略構成を説明する概略図(軸心方向の縦断面図)。
図3】真空インタラプタ1A,9を1/2対称モデルに簡略化した場合の3次元解析モデルD1,D2の構成図。
図4】解析モデルD1,D2の構造解析結果を示す変位特性図。
図5】実施例による真空遮断器7の概略構成を説明する概略図(接地タンク71の軸心方向(図示左右方向)の縦断面図)。
図6】一般的な真空インタラプタの一例を説明する概略図(真空容器91の軸心方向(図示左右方向)の縦断面図)。
図7】一般的な真空インタラプタに作用し得る外部圧力を説明する概略図((A)は外観図、(B)は固定側フランジ91a(または可動側フランジ91b)の軸心方向の縦断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態による真空インタラプタおよび当該真空インタラプタを備えた真空遮断器は、例えば図6に示すような構成において単に真空容器の周壁を肉厚化したり補強部材を設けたものとは、全く異なるものである。
【0020】
すなわち、本実施形態の真空インタラプタおよび真空遮断器は、固定側フランジおよび可動側フランジにおいて、それぞれフランジ中央部とフランジ外周縁部との間に、当該フランジ中央部の外周に沿って延在する環状で軸心方向のうち真空容器外側方向に膨出した形状の環状膨出部が、形成されているものである。
【0021】
ここで、図6に示した真空インタラプタ9において、絶縁媒体ガスが封入されている密封容器内に配置した場合について着目すると、図7(A)の白抜き矢印で示すように、当該真空容器91内部と絶縁媒体ガスとの圧力差による外部圧力が作用することが読み取れる。
【0022】
この場合、筒状本体90においては、外部圧力の作用方向に対向した凸のアーチ構造による力学的効果(以下、単にアーチ構造効果と適宜称する)が得られ、当該外部圧力は筒状本体90の周方向に分散され易い。
【0023】
しかしながら、固定側フランジ91aにおいては、図7(B)に示すように、フランジ中央部94a,94bとフランジ外周縁部96a,96bとの間が平坦構造であるため、前記のようなアーチ構造効果が得られない。これにより、固定側フランジ91aの機械的強度が低い場合には、例えば前記平坦構造の部分が図7(B)の黒抜き矢印で示す方向に変形し易くなる。このような現象は、可動側フランジ91bにおいても同様に起こり得る。
【0024】
一方、本実施形態の固定側フランジおよび可動側フランジにおいては、図6に示したような構成と比較すると、それぞれのフランジ中央部とフランジ外周縁部との間に形成されている環状膨出部により、アーチ構造効果が得られ易い。
【0025】
すなわち、本実施形態の真空インタラプタの真空容器においては、図6に示したような構成と比較して、外部圧力に対抗する機械的強度を向上し易くなる。そして、当該真空インタラプタにおいて、所望の特性(絶縁性能,遮断性能等)を発揮できるように貢献することが可能となる。
【0026】
本実施形態は、前述のように固定側フランジおよび可動側フランジそれぞれに環状膨出部が形成されており、アーチ構造効果が得られる構成であれば良く、種々の分野(真空遮断器分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能であり、その一例として以下に示す実施例が挙げられる。
【0027】
なお、以下の実施例では、便宜上、軸心方向のうち真空容器内側方向を単に軸心内側方向と適宜称し、当該軸心方向のうち真空容器外側方向を単に軸心外側方向(環状膨出部の膨出方向)と適宜称する。
【0028】
≪実施例≫
<真空インタラプタの構成例>
図1は、本実施形態の実施例である真空インタラプタ1Aの概略構成を説明するためのものである。この真空インタラプタ1Aにおいては、絶縁性の筒状本体10の軸心方向固定側を固定側フランジ11aにより封止し、当該軸心方向可動側を可動側フランジ11bにより封止した真空容器1が用いられている。
【0029】
筒状本体10は、後述の固定電極13aおよび可動電極13bの外周側を囲繞している筒状の中間シールド(アークシールド)20と、その中間シールド20の軸心方向固定側に連設されている固定側絶縁部21aと、当該中間シールド20の軸心方向可動側に連設されている可動側絶縁部21bと、を主として備えている。
【0030】
中間シールド20の中央部には、当該中央部から軸心方向固定側に延伸して固定側絶縁部21aの内周側と重畳している固定側延伸部20aと、当該中央部から軸心方向可動側に延伸して可動側絶縁部21bの内周側と重畳しているに沿って軸心方向可動側に延伸している可動側延伸部20bと、が設けられている。
【0031】
固定側フランジ11aの中央部3aには、柱状の固定側通電軸12aが、当該中央部3aから軸心内側方向に延出するように設けられている。この固定側通電軸12aの軸心内側方向の端部には、例えば平板状の固定電極13aが支持されている。固定側フランジ11aの外周縁部4aは、軸心内側方向に折曲された形状であり、固定側絶縁部21aの端面2aaに支持されている。
【0032】
固定側フランジ11aの中央部3aと外周縁部4aとの間においては、当該中央部3aの外周に沿って延在する環状で軸心外側方向に膨出した形状の環状膨出部5aが、形成されている。図1の環状膨出部5aの場合、当該環状膨出部5aにおいて膨出方向の先端部50aから中央部3a側に位置し当該膨出方向に近づくに連れて拡径された形状の内周側環状壁51aと、先端部50aから外周縁部4a側に位置し当該膨出方向に近づくに連れて縮径された形状の外周側環状壁52aと、を有した構成となっている。
【0033】
また、固定側フランジ11aの外周縁部4a側には、当該外周縁部4a側から軸心内側方向に延出した形状の筒状の固定側電界緩和シールド22aが、固定側通電軸12aの外周側を囲繞するように設けられている。
【0034】
可動側フランジ11bには、柱状の可動側通電軸12bが、当該可動側フランジ11bを軸心方向に貫通して当該軸心方向に延在するように、設けられている。この可動側通電軸12bは、軸心方向に伸縮自在で当該可動側通電軸12bと同軸状に配置された筒状のベローズ14を介して、可動側フランジ11bの真空容器1内側に支持されている。
【0035】
これにより、可動側通電軸12bは、当該軸心方向に移動自在となっている。図1の可動側通電軸12bの場合、ベローズ14の外周側を被覆して囲繞するように、筒状のベローズシールド14aが設けられている。
【0036】
また、可動側通電軸12bの真空容器1内側の端部には、例えば平板状の可動電極13bが支持されており、当該可動側通電軸12bの軸心方向の移動に応じて、固定電極13aと接離するようになっている。可動側フランジ11bの外周縁部4bは、軸心内側方向に折曲された形状であり、可動側絶縁部21bの端面2bbに支持されている。
【0037】
可動側フランジ11bの中央部3bと外周縁部4bとの間においては、当該中央部3bの外周に沿って延在する環状で軸心外側方向に膨出した形状の環状膨出部5bが、形成されている。図1の環状膨出部5bの場合、当該環状膨出部5bにおいて膨出方向の先端部50bから中央部3b側に位置し当該膨出方向に近づくに連れて拡径された形状の内周側環状壁51bと、先端部50bから外周縁部4b側に位置し当該膨出方向に近づくに連れて縮径された形状の外周側環状壁52bと、を有した構成となっている。
【0038】
また、可動側フランジ11bの外周縁部4b側には、当該外周縁部4b側から軸心内側方向に延出した形状の筒状の可動側電界緩和シールド22bが、可動側通電軸12bの外周側を囲繞するように設けられている。
【0039】
図1に示したような真空インタラプタ1Aによれば、固定側フランジ11a,可動側フランジ11bの各環状膨出部5a,5bによりアーチ構造効果が得られ、外部圧力に対抗する機械的強度を向上し易くなる。
【0040】
<固定側フランジ11a,可動側フランジ11bの構成例>
固定側フランジ11a,可動側フランジ11bにおいては、前述したように、それぞれ環状膨出部5a,5bが形成されアーチ構造効果が得られるものであれば、種々の態様を適用することが可能であり、例えば一般的な金属フランジ等に適用されている材料を適宜成形加工して得られるものが挙げられる。
【0041】
具体例としては、図2に示すように成形された固定側フランジ11a,可動側フランジ11bが挙げられるが、これに限定されるものではなく、適宜設計変形することも可能である。例えば、中央部3a,3bにおいては、それぞれ固定側延伸部20a,可動側絶縁部21bの形状等に応じて適宜設計することが挙げられる。
【0042】
環状膨出部5a,5bの形状等においても、それぞれ固定側フランジ11a,可動側フランジ11bの全体の形状等を考慮し、アーチ構造効果が得られるように適宜設計することが挙げられる。
【0043】
具体的に、内周側環状壁51a,51bと外周側環状壁52a,52bとの間の内角θは、90°~150°の範囲内となるように設計することが挙げられる。この内角θが大き過ぎると(例えば150°超)、アーチ構造効果が得られ難くなることが考えられる。一方、内角θが小さ過ぎると(例えば90°未満)、電気的特性に影響(例えば電界特性に対する影響)が生じるおそれがあるが、この場合には当該影響を抑制するように設計(例えば各種サブシールドを配置)することが挙げられる。
【0044】
また、先端部50a,50bそれぞれの直径L1は、外周縁部4a,4bそれぞれの直径Lの60%(すなわち、L1/L=0.6)程度となるようにすることが挙げられるが、下記式を満たす範囲内であれば、十分なアーチ構造効果が得られるものと考えられる。
【0045】
0.5L≦L1≦0.7L
図2に示したような構成によれば、外部圧力により内周側環状壁51a,51bに加わる負荷F1は、軸心内側方向の成分f11と外周縁部4a,4b側方向の成分f12とに分散されることとなる。すなわち、負荷F1のうち成分f12を外周側環状壁52a,52bによって支えることができるため、当該負荷F1に対抗し易くなる。
【0046】
同様に、外部圧力により外周側環状壁52a,52bに加わる負荷F2は、軸心内側方向の成分f21と中央部3a,3b側方向の成分f22とに分散されることとなる。すなわち、負荷F2のうち成分f22を内周側環状壁51a,51bによって支えることができるため、当該負荷F2に対抗し易くなる。
【0047】
<構造解析の一例>
次に、真空インタラプタ1A,9において、CAE解析により、それぞれ図3(A),(B)に示すような1/2対称モデルに簡略化した3次元解析モデルD1,D2を作成し、当該解析モデルD1,D2に負荷(外部圧力)を加えた場合の構造解析を行ったところ、図4(A),(B)に示すような結果が得られた。
【0048】
なお、解析モデルD1,D2の拘束条件としては、1/2対称面に対称モデル拘束条件を付与し、筒状本体10,90は簡略化した筒状セラミックスからなる構造で一部に完全固定条件を付与した。また、内角θは120°、L1/L=0.6を満たすものとした。
【0049】
材料物性としては、ヤング率およびポワソン比が必要となるため、固定側フランジ11a,91a、可動側フランジ11b,91b、固定側通電軸12a,92a、可動側通電軸12b,92bには、それぞれ無酸素銅の一般的な数値を適用し、筒状本体10,90には、実測値(290GPa)を適用した。
【0050】
また、固定側通電軸12a,92a、可動側通電軸12b,92bは、図3に示すような簡略化した構造を適用した。また、負荷においては、真空容器1,91の内外の差圧を考慮して、1.1MPaとした。
【0051】
まず、図4(B)によると、解析モデルD2においては、固定側通電軸92a,可動側通電軸92bおよび周辺において最も大きな変位を示し、その変位量は1.231mmであった。
【0052】
一方、図4(A)によると、解析モデルD1においては、解析モデルD2と同様に、固定側通電軸12a,可動側通電軸12bおよび周辺において最も大きな変位を示したが、その変位量は0.327mmであった。これにより、解析モデルD1は、解析モデルD2と比較して、約73%の応力緩和効果が得られていることが読み取れる。
【0053】
すなわち、真空インタラプタ1Aによれば、真空インタラプタ9と比較して、外部圧力に対抗する機械的強度が高くなることが判る。また、環状膨出部5a,5bの構造を最適化(例えば、内角θや、内周側環状壁51a,51bと外周側環状壁52a,52bの面積比等を最適化)することにより、機械的強度を更に向上できる可能性がある。
【0054】
<真空インタラプタの適用例>
真空インタラプタ1Aは、例えば真空遮断器等において絶縁媒体ガスが封入されている密封容器(後述の図5では接地タンク71)内に1個以上収容し、可動側通電軸12bを適宜操作して所望の特性(絶縁性能,遮断性能等)を発揮できる態様であれば、適宜適用することが可能である。その具体例としては、図5に示すような構成が挙げられる。
【0055】
図5は、実施例による真空遮断器7の概略構成を説明するためのものである。なお、図1に示すものと同様のものには、同一符号を付する等により、その詳細な説明を適宜省略する。例えば、後述の真空インタラプタ1Bは、真空インタラプタ1Aと同様の構成であるため、その詳細な説明を適宜省略する。
【0056】
真空遮断器7においては、接地タンク71と、その接地タンク71内に収納される一対の真空インタラプタ1A,1Bと、真空インタラプタ1A,1Bの間に介在して当該真空インタラプタ1A,1Bの開閉を行うリンク機構72と、を有している。
【0057】
接地タンク71は、例えば円筒状の金属容器を用いてなるものであって、真空インタラプタ1A,1Bの各可動側フランジ11bが対向した姿勢で、当該真空インタラプタ1A,1Bを同一直線状に延在させて収容可能な構造となっている。この接地タンク71内には、例えば絶縁媒体ガス(乾燥空気,窒素ガス,SF6等)が適宜充填される。
【0058】
リンク機構72は、リンク72a、リンク72b及びリンク72cを有し、リンク機構ケース72dに収納された構成となっている。リンク72aの一端部は、リンク機構ケース72d内に回転可能に支持され、当該リンク72aの他端部は、真空インタラプタ1Aの可動側通電軸12bに対し回転可能に支持されている。また、リンク72aにおいては、リンク72cの一端部が回転可能に設けられ、当該リンク72cの他端部は、真空インタラプタ1Aの開閉操作を行う絶縁操作棒73の一端部に回転可能に支持されている。
【0059】
同様に、リンク72bの一端部は、リンク機構ケース72d内に回転可能に支持され、当該リンク72bの他端部は、真空インタラプタ1Bの可動側通電軸12bに対し回転可能に支持されている。そして、リンク72bには、リンク72cの一端部が回転可能に支持され、リンク72cの端部は絶縁操作棒73の一端部に回転可能に支持される。
【0060】
リンク機構ケース72dは、リンク機構72を収納し、真空インタラプタ1A,1Bの各可動側通電軸12bを電気的に接続している。また、リンク機構ケース72dは、真空インタラプタ1A,1Bの各可動側フランジ11bの間に介在し、接地タンク71の内周面に設けられた支持碍管73aを介して支持されている。
【0061】
絶縁操作棒73は、リンク機構ケース72d、支持碍管73a及び接地タンク71の側部を挿通するようにして設けられている。接地タンク71の外周側であって絶縁操作棒73の挿通部には操作部74が設けられている。
【0062】
操作部74は、変換機構75を収納しており、当該変換機構75を介して、回転軸75aの回転動作を絶縁操作棒73の直線運動に変換できるように構成されている。回転軸75aの一端は、回転シール部75bを介して操作部74の外周側に露出している。これにより、操作部74の外部において、絶縁操作棒73の動作を行う操作機構(図示省略)及び他の相の絶縁操作棒(図示省略)を、回転軸75aと連動して駆動させることが可能となる。
【0063】
真空インタラプタ1Aにおいては、固定側フランジ11aの真空容器1外側に、固定側通電軸12aと導通している導体連結部76aが設けられており、その導体連結部76aが支持碍子77aを介して接地タンク71の内周面に支持されている。また、導体連結部76aには、導体金具78aを介して導体79aが接続されている。
【0064】
真空インタラプタ1Bにおいても、真空インタラプタ1A側と同様であり、固定側フランジ11aの真空容器1外側に、固定側通電軸12aと導通している連結導電体76bが設けられており、その連結導電体76bが支持碍子77bを介して接地タンク71の内周面に支持されている。また、連結導電体76bには、導体金具78bを介して導体79bが接続されている。
【0065】
導体79aは、接地タンク71内から当該接地タンク71外側に突出した状態で設けられ、当該導体79aの周囲にはブッシング80aが設けられている。ブッシング80aは、接地タンク71に支持されており、当該ブッシング80aの突出方向側の先端部には導体79aと導通するブッシング端子81aが設けられている。
【0066】
導体79bは、導体79a側と同様に、接地タンク71内から当該接地タンク71外側に突出した状態で設けられ、当該導体79bの周囲にはブッシング80bが設けられている。ブッシング80bは、接地タンク71に支持されており、当該ブッシング80bの突出方向側の先端部には導体79bと導通するブッシング端子81bが設けられている。
【0067】
真空インタラプタ1A,1Bの各固定側絶縁部21aの外周側には、当該固定側絶縁部21aの外周側を囲繞する筒状の外周側サブシールド82a,82bが、それぞれ設けられている。これら外周側サブシールド82a,82bは、それぞれ真空インタラプタ1A,1Bのうち自身が設けられている側の中間シールド20と、当該中間シールド20の径方向において重畳している。
【0068】
図5の真空遮断器7の投入動作においては、例えば所望の投入指令に基づいて、図外の駆動機構(例えば絶縁操作棒73に連結された駆動機構)により絶縁操作棒73が接地タンク71内部方向(図5では図示上方向)に移動することにより、実行される。すなわち、絶縁操作棒73の移動に応じてリンク72aに連結されたリンク72cが旋回しながら移動(図5では図示右旋回しながら上昇)する。このリンク72cの移動に応じて、リンク72aが、真空インタラプタ1Aの可動側通電軸12bを軸心方向に沿って固定電極13a側に移動させる。その結果、真空インタラプタ1Aの固定電極13aと可動電極13bとが電気的接続される。
【0069】
同様に、絶縁操作棒73の移動に応じて、リンク72bに連結されたリンク72cが旋回しながら移動(図5では図示左旋回しながら上昇)する。このリンク72cの移動に応じて、リンク72bが、真空インタラプタ1Bの可動側通電軸12bを軸心方向に沿って固定電極13a側に移動させる。その結果、真空インタラプタ1Bの固定電極13aと可動電極13bとが電気的接続される。
【0070】
一方、遮断動作においては、絶縁操作棒73が接地タンク71の外部方向(図5では図示下方向)に移動することにより、実行される。すなわち、前記投入動作とは逆の動作により、真空インタラプタ1Aの可動側通電軸12bが軸心方向に沿って当該真空インタラプタ1Aから引き離される方向に移動し、当該真空インタラプタ1Aの固定電極13aと可動電極13bとが離隔される。
【0071】
同様に、真空インタラプタ1Bの可動側通電軸12bが軸心方向に沿って当該真空インタラプタ1Bから引き離される方向に移動し、当該真空インタラプタ1Bの固定電極13aと可動電極13bとが離隔される。
【0072】
真空インタラプタ1A,1Bにおいては、前記のような投入動作や遮断動作をする場合に、それぞれの可動側通電軸12bが動いても、伸縮自在なベローズ14によって真空容器1内の真空は保たれることとなる。真空インタラプタ1A,1Bの各ベローズ14においては、外周側の真空と内周側の絶縁媒体ガスとの差圧にある程度耐え得る構造となっているものとする。
【0073】
図5に示したような構成によれば、接地タンク71内に収容されている真空インタラプタ1A,1Bにおいて外部圧力に対抗し得る機械的強度を持たせることができるため、例えば接地タンク71内の絶縁媒体ガスを高圧化することが可能となる。
【0074】
例えば、接地タンク71内に絶縁媒体ガス(例えば乾燥空気等)を充填して当該接地タンク71内を0.9MPa超に設定し、定格電圧145kV級の真空遮断器7を構成して動作させてみたところ、所望の特性を発揮することを確認できた。
【0075】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0076】
1A,1B…真空インタラプタ
1…真空容器
10…筒状本体
11a…固定側フランジ
11b…可動側フランジ
12a…固定側通電軸
12b…可動側通電軸
3a,3b…中央部
4a,4b…外周縁部
5a,5b…環状膨出部
7…真空遮断器
71…接地タンク
72…リンク機構
73…絶縁操作棒
74…操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7