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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】セラミック平膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/06 20060101AFI20220203BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20220203BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20220203BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20220203BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B01D69/06
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/02
C04B41/85 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020139729
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2021-08-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】土屋 達
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112527(JP,A)
【文献】特開2014-233686(JP,A)
【文献】特開2014-161817(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103623711(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107663088(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111420562(CN,A)
【文献】特開2004-283826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22,61/00-71/82
C02F 1/44
C04B 2/00-41/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスからなる板状の多孔質支持体と、
この多孔質支持体の外面に形成されるろ過膜と
を備え、
前記多孔質支持体の内部には、処理対象水が前記ろ過膜を透過して得られたろ過水が流通する複数の集水路が形成され、当該集水路の間隔が異なる領域が確保され、
膜洗浄用の空気の供給方向に沿う端部の近辺の領域での前記集水路の間隔は、当該近辺以外の領域での前記集水路の間隔よりも広いことを特徴とするセラミック平膜。
【請求項2】
前記供給方向に沿う中央部の前記集水路の間隔は、前記近辺以外の領域での他の前記集水路の間隔よりも広いことを特徴とする請求項に記載のセラミック平膜。
【請求項3】
前記近辺の領域での前記集水路は、当該近辺以外の領域での前記集水路よりも横断面が小さいことを特徴とする請求項またはに記載のセラミック平膜。
【請求項4】
前記多孔質支持体の一端部には、前記集水路の一端開口部から供された前記ろ過水を排出する排出部が固着されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のセラミック平膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理に適用される平膜状のセラミック膜(以下、セラミック平膜)の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック平膜は水処理においては固液分離の過程で利用される(特許文献1等)。例えば図15の矢印で示した処理対象水11に浸漬されたセラミック平膜1の排水側からポンプ等により吸引すると処理対象水11が膜表面から膜内部の集水路である集水チャンネル2に透過する。そして、この透過で得られた同図の矢印で示したろ過水12は前記吸引により集水チャンネル2の一端側から系外に移送される。また、セラミック平膜1の運用においては、ろ過水12を集水チャンネル2側から膜表面側に適時に逆流させることで膜表面の目詰まりが解消及び抑制される。さらには、図16(a)に示したようにセラミック平膜1の下方から膜洗浄用の空気13を連続的または間欠的に供給して膜表面において空気13の供給方向に沿う中央部で最大となる放物線状に分布する矢印方向のせん断力を生じさせて前記目詰まりの解消が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-28331号公報
【文献】特開2015-112527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミック平膜1の運用においては、膜表面に対する空気13の供給いわゆる散気により膜表面の目詰まりの解消及び抑制が図られるが、電力消費量の観点から空気13の供給量を最小化が求められる。セラミック平膜1の洗浄に必要なせん断力を生ずるためには所定の供給量の空気が必要となる。
【0005】
また、空気13の供給量の低減化を図ると、セラミック平膜1に生じるせん断力は空気13の供給方向に沿う中央部で極大となるが同方向に沿う端部側で極小となり(図16(b))、この中央部と端部側での洗浄効果の差が顕著となるので、安定な水処理が困難となる。
【0006】
さらに、セラミック平膜1を構成するセラミック基材は、物理的及び化学的に安定であるが、脆性材料に分類されるので、機械や設備の誤操作または天災等の不測の事態により、当該基材の機械的強度の許容値を超える応力が生じた際に破損するおそれがある。
【0007】
本発明は、以上の事情を鑑み、セラミック平膜の機械的強度の向上と水処理の安定化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明の一態様は、セラミック平膜であって、セラミックスからなる板状の多孔質支持体と、この多孔質支持体の外面に形成されるろ過膜とを備え、前記多孔質支持体の内部には、処理対象水が前記ろ過膜を透過して得られたろ過水が流通する複数の集水路が形成され、当該集水路の間隔が異なる領域が確保される。
【0009】
本発明の一態様は、前記セラミック平膜において、膜洗浄用の空気の供給方向に沿う端部の近辺の領域での前記集水路の間隔は、当該近辺以外の領域での前記集水路の間隔よりも広い。
【0010】
本発明の一態様は、前記セラミック平膜において、前記供給方向に沿う中央部の前記集水路の間隔は、前記近辺以外の領域での他の前記集水路の間隔よりも広い。
【0011】
本発明の一態様は、前記セラミック平膜において、前記近辺の領域での前記集水路は、当該近辺以外の領域での前記集水路よりも横断面が小さい。
【0012】
本発明の一態様は、前記セラミック平膜において、前記多孔質支持体の一端部には、前記集水路の一端開口部から供された前記ろ過水を排出する排出部が固着される。
【発明の効果】
【0013】
以上の本発明によれば、セラミック平膜の機械的強度の向上と水処理の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一態様である実施形態1のセラミック平膜の横断面図。
図2】実施形態1の膜表面に対する堆積物の付着状態を示した横断面図。
図3】本発明の一態様である実施形態2のセラミック平膜の横断面図。
図4】実施形態2の膜表面に対する堆積物の付着状態を示した横断面図。
図5】本発明の一態様である実施形態3のセラミック平膜の横断面図。
図6】実施形態3の膜表面に対する堆積物の付着状態を示した横断面図。
図7】実施形態3の膜内部における逆洗薬剤の浸透状態を示した横断面図。
図8】本発明の一態様である実施形態4のセラミック平膜の横断面図。
図9】膜表面と集水チャンネルとの間の厚みとろ過水の流速との関係の説明図。
図10】実施形態4の作用効果を説明したセラミック平膜の横断面図。
図11】(a)実施形態4における逆洗時の作用効果を説明したセラミック平膜の横断面図、(b)当該実施形態の膜内部における逆洗薬剤の浸透状態を示した横断面図。
図12】本発明の一態様である実施形態5のセラミック平膜の横断面図。
図13】本発明の一態様である実施形態6のセラミック平膜の横断面図。
図14】本発明の実施例と比較例の膜差圧の経時的な変化を示した特性図。
図15】セラミック平膜の内部構造を示した斜視図。
図16】(a)通常の洗浄風量によりセラミック平膜に生じるせん断力の分布図、(b)通常よりも少ない洗浄風量によりセラミック平膜に生じるせん断力の分布図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0016】
[実施形態1]
図1に示された実施形態1のセラミック平膜1は、図15に示したように、セラミックスから成る板状(例えば長板状)の多孔質支持体21と、この多孔質支持体21の外面に形成されるろ過膜22とを備える。
【0017】
多孔質支持体21の基材は、金属酸化物からなり、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、あるいはこれらの混合物等が適用される(特許文献2)。
【0018】
ろ過膜22を構成する無機材料は基材と改質材との多孔質複合体である。前記基材は例えばアルミナが、前記改質材は例えばチタニアが好適である(同文献)。
【0019】
また、多孔質支持体21の内部には、処理対象水11がろ過膜22を透過して得られたろ過水12が流通する集水路として集水チャンネル2が複数並列に形成される。さらに、前記内部には、集水チャンネル2の間隔が異なる領域が少なくとも2つ確保される。
【0020】
特に、図1のセラミック平膜1においては、膜洗浄用の空気13の供給方向(図16)に沿う端部3の近辺の領域A1(空気13の供給が比較的少ない領域)での集水チャンネル2の間隔D1が、前記近辺以外の領域A2(前記供給が比較的多い領域)での集水チャンネル2の間隔D2よりも広く設定される。
【0021】
そして、図16に示したように、セラミック平膜1の短手方向の少なくとも一端部には、集水チャンネル2の一端開口部から供されたろ過水12を排出する排出部としてヘッダー4が液密に固着される。一方、セラミック平膜1の短手方向の他端部には、集水チャンネル2の他端開口部を封止する封止部としてフッター5が液密に固着される。尚、ヘッダー4は、セラミック平膜1の短手方向の両端部に備えて、この両端部からろ過水12を排出してもよい。
【0022】
図1,2,15及び16を参照して本実施形態のセラミック平膜1の作用効果について説明する。
【0023】
ポンプ等による吸引により図15の処理対象水11がセラミック平膜1の膜表面20による固液分離に供されるとろ過膜22を透過して集水チャンネル2内にろ過水12が得られる。そして、ろ過水12はセラミック平膜1のヘッダー4から系外に排出される。
【0024】
一方、図16の処理対象水11に含まれる汚泥等の固形成分は、図2に示された集水チャンネル2に対応したセラミック平膜1の表面に堆積する。そして、このセラミック平膜1の前記固形成分の堆積物10は、図16のセラミック平膜1の下方に配置された散気管6から供給された膜洗浄用の空気13による気泡のせん断力により除去される。
【0025】
前述のようにセラミック平膜1の領域A1のせん断力は領域A2のせん断力と比べて弱くなる(同図)。これに対し、本態様のセラミック平膜1は、領域A1の集水チャンネル2の間隔D1が領域A2の集水チャンネル2の間隔D2よりも広く確保されたことで、領域A1での前記固形成分の堆積量が領域A2での当該堆積量よりも少なくなる(図2)。したがって、領域A1において領域A2よりも小さな前記気泡のせん断力による堆積物10の除去が可能となり、セラミック平膜1全体にわたって堆積物10を均一に除去できる。
【0026】
また、間隔D1が確保された領域A1は堆積物10が少ない領域となるので、セラミック平膜1と堆積物10との間に空気13の気泡が入り込みやすくなり、領域A1での洗浄効果が高まる。
【0027】
セラミック平膜1への過度な荷重により割れが生じる際、領域A1における応力集中が当該割れの起点となる。セラミック平膜1は、領域A1の集水チャンネル2の間隔D1が領域A2の集水チャンネル2の間隔D2よりも広く確保されたことで、領域A1のセラミック基材量が相対的に高くなり、セラミック平膜1の機械的強度の向上に繋がる。
【0028】
[実施形態2]
図3に示された実施形態2のセラミック平膜1は、領域A2での膜洗浄用の空気13の供給方向に沿う中央部Cの集水チャンネル2の間隔D1が領域A2での他の集水チャンネル2の間隔L2よりも広く設定されたこと以外は、実施形態1と同様の態様となる。
【0029】
以上のセラミック平膜1によれば、領域A2において中央部Cの集水チャンネル2の間隔D1が他の集水チャンネル2の間隔D2よりも広く確保されたことで、図4に示したように、堆積物の剥離の起点となるポイントを形成できる。したがって、実施形態1の効果に加えて、長期間安定的な固液分離が行える。また、空気13の気泡によるせん断力が最大となるセラミック平膜1のセラミック基材の部分(中央部C)が補強されるので、セラミック平膜1全体の機械的強度がさらに高まる。
【0030】
[実施形態3]
図5に示された実施形態3のセラミック平膜1は、領域A1での集水チャンネル2の横断面S1が領域A2での集水チャンネル2の横断面S2よりも小さいこと以外は、実施形態1と同様の態様となる。
【0031】
以上のセラミック平膜1の態様によれば、実施形態1と同様の作用効果が得られる。特に、実施形態1のセラミック平膜1よりも、端部3の近辺でのセラミック基材量が増加するので、セラミック平膜1の機械強度がさらに高まる(図6)。
【0032】
尚、本実施形態の集水チャンネル2の横断面S1,S2は、実施形態2のセラミック平膜1すれば、このセラミック平膜1の機械強度の向上を図ることができる。
【0033】
[実施形態4]
セラミック平膜1は、次亜塩素酸ナトリウム等の薬液を集水チャンネル2側から表面に送り出す洗浄方式(薬液逆洗)により、膜内部及び表面に付着した膜閉塞の原因物質が化学的に除去される。このとき、例えば図7に示された実施形態2のセラミック平膜1の内部においては、薬液の浸透部分A3と非浸透部分A4とが発生する。非浸透部分A4は、バイオフィルムが成長して膜閉塞によるろ過効率の低下を招くことがある。
【0034】
そこで、図8,9に示された実施形態4のセラミック平膜1は、薬液逆洗が適用されるセラミック平膜1において、膜表面20と集水チャンネル2との間の厚みが異なる領域を確保することで、高フラックスと機械強度の向上を図る。
【0035】
図9のセラミック平膜1は、集水チャンネル2が等間隔に形成される一方で領域A1での膜表面20と集水チャンネル2との厚みL4が領域A2での膜表面20と集水チャンネル2との厚みL3よりも大きく設定されたこと以外は、実施形態1と同様の態様となる。また、膜表面20に沿う領域A1,領域A2の集水チャンネル2の内径L2,L1は同値に設定される。
【0036】
集水チャンネル2は等間隔で形成されることが望ましいが、使用条件等によっては実施形態1と同様に、領域A1での集水チャンネル2の間隔D1を、端部3側以外の領域A2での集水チャンネル2の間隔D2よりも広く設定してもよい。
【0037】
図8~11を参照して本実施形態のセラミック平膜1の作用効果について説明する。
【0038】
図9に示されたように吸引ポンプ等により生じるろ過の駆動力である圧力差Pは集水チャンネル2の形状及びサイズに関わらず均等となる。一方、膜透過の抵抗Rは膜表面と集水チャンネル2との距離により異なる。そのため、集水チャンネル2の内径が小さく、膜表面20と集水チャンネル2との間の厚みが大きくなる場合、ろ過水の流速Qは小さくなる。同図の領域A1,A2の集水チャンネル2において、内径L2=内径L1且つ厚みL4>厚みL3の場合、流速Q1>流速Q2となる。流速Q1は、厚みL3の膜表面20,集水チャンネル2間のろ過水の流速を示す。流速Q2は、厚みL4の膜表面20,集水チャンネル2間のろ過水の流速を示す。つまり、セラミック平膜1の閉塞の程度は集水チャンネル2の形状に影響を受ける。
【0039】
以上のセラミック平膜1によれば、領域A1での膜表面20と集水チャンネル2との間の厚みL4が領域A2での膜表面20と集水チャンネル2との間の厚みL3よりも大きいので、領域A1と領域A2との間で処理量の差が生じる。図10に示したように処理対象水が多くろ過に供されるセラミック平膜1の領域A2はより多くの閉塞物質が堆積するが、散気による洗浄効果が高いため、安定的にろ過の継続が可能となる。特に、領域A1と領域A2との間で堆積物10の厚みに差が生じるので、同図のように堆積物10の段差部分が気泡による剥離の起点SPとなり、従来よりもろ過効率を向上させることができる。
【0040】
そして、逆洗時には、図11(a)に示したように領域A2の集水チャンネル2,膜表面20間の逆洗液の流速Q1が領域A1の集水チャンネル2,膜表面20間の逆洗液の流速Q2よりも多くなるので、逆洗浄の効果が大きくなる。このとき、局所的に存在する大きな集水チャンネル2を起点にフィルム状の閉塞物質が剥離して除去される。さらに、薬液逆洗時には、同図(b)に示したように逆洗液または薬液が集水チャンネル2の周辺領域A5に浸透してセラミック平膜1の全体に染みわたるので、洗浄効果が高まる。
【0041】
また、ろ過と逆洗の切り替え時は、装置や手順の不具合により、流速の急激な変化により管内圧力が過渡的に上昇または下降するウォータハンマー現象が発生する場合がある。この現象が生じると、セラミック平膜1に圧力がかかると同時に振動が発生し、発生する負荷の程度によりセラミック平膜1の破損原因になる場合がある。
【0042】
これに対し、本実施形態のセラミック平膜1は、膜表面20と集水チャンネル2との間の厚みが異なる領域が形成されることで、多孔質支持体21の内部に部分的な厚みが確保される。これにより、セラミック平膜1の機械的強度が向上し、ウォータハンマー現象によるセラミック平膜1の破損を防止できる。
【0043】
以上の実施形態4によれば、セラミック平膜1の散気洗浄(エア洗浄)に加えて逆圧洗浄(逆洗、薬液逆洗)の効率を高めることで、膜閉塞の原因物質が効率的に除去され、高フラックスの実現が可能となる。
【0044】
[実施形態5]
図12に示された実施形態5のセラミック平膜1は、領域A1での集水チャンネル2の横断面形状が円形となっていること以外は、実施形態4の同様の態様となっている。
【0045】
本実施形態によれば、領域A1の集水チャンネル2の断面積が領域A2の集水チャンネル2の断面積よりも小さくなるので、実施形態4と同様の作用効果が得られることが明らかである。特に、領域A1での集水チャンネル2が円形を成しているので、領域A1での機械的強度が向上し、外部負荷に強いセラミック平膜1が得られる。
【0046】
[実施形態6]
図13に示されたセラミック平膜1の集水チャンネル2の横断面が膜洗浄用の空気の供給方向に沿うセラミック平膜1(多孔質支持体21)の中央部Cから端部に近づくにつれて小さく設定されること以外は実施形態5のセラミック平膜1と同様の態様となっている。例えば、同図に示したように領域A1における領域A2寄りの集水チャンネル2の横断面はセラミック平膜1の厚み方向に対して非対称の形状(例えば、領域A1での集水チャンネル2の横断略長方形よりも横断面が小さい横断面D型)に形成される。
【0047】
本実施形態によれば、実施形態4,5と同様の作用効果が得られるが、散気風量に応じて集水チャンネル2の集水量を調整でき、より効率的にろ過が可能になる。
【実施例
【0048】
表1は、実施形態1~3に各々基づく実施例1~3のセラミック平膜1の機械的強度を従来技術に基づく比較例のセラミック平膜の機械的強度に対する相対値により示した。機械的強度は、セラミック平膜の破損に至る局所的な荷重の値を比較した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から明らかなように、実施例1~3によれば比較例よりも機械的強度が得られ、特に実施例3によれば機械的強度のさらなる向上が図れることが示された。
【0051】
また、図14に実施例1~3と比較例の膜差圧の経時的な変化を示した。
【0052】
実施例1~3及び比較例において、ろ過フラックスは1.27m/日、逆洗流速はろ過時の2倍、散気風量はろ過時の10倍、運転サイクルはろ過時間9.5分、逆洗時間0.5分に設定した。逆洗によるろ過水の戻りを含んだ正味の運転フラックスは1.08m/日とした。
【0053】
図14の膜差圧の経時変化によると、比較例の膜差圧は初期時から経時的に大幅に上昇する一方で実施例1~3の膜差圧は初期値から小幅な上昇で推移することが認められた。このことから、実施例1~3によればセラミック平膜を用いた固液分離による水処理の長期的な安定化が図られることが示唆される。
【0054】
以上の実施形態1~3のセラミック平膜1によれば領域A2よりも領域A1の前記固形成分の堆積物10の量を低減することが可能となり、散気によるセラミック平膜1の表面の洗浄効果が高まる。特に、膜洗浄用の空気13の供給方向に沿うセラミック平膜1の端部3付近での膜閉塞を防止できる。また、セラミック平膜1の領域A1(実施形態3の場合は領域A1及び中央部C)での機械的強度が高まり(表1)、機械や設備の誤操作や天災等の不測の事態によるセラミック平膜1の破損の危険性を低減できる。
【符号の説明】
【0055】
1…セラミック平膜
2…集水チャンネル(集水路)
3…端部
4…ヘッダー(排出部)
5…フッター(封止部)
6…散気管
10…堆積物
11…処理対象水
12…ろ過水
13…空気
20…膜表面
21…多孔質支持体
22…ろ過膜
A1,A2…領域
A3…浸透部分、A4…非浸透部分
A5…周辺領域
D1,D2…間隔
C…中央部
S1,S2…横断面
L1,L2…内径(膜表面に沿う内径)
L3,L4…厚み
Q1,Q2…流速
【要約】
【課題】セラミック平膜の機械的強度の向上と水処理の安定化を図る。
【解決手段】セラミック平膜1は、セラミックスからなる板状の多孔質支持体21と、この多孔質支持体21の外面に形成されるろ過膜22とを備える。多孔質支持体21の内部には、処理対象水がろ過膜22を透過して得られたろ過水が流通する複数の集水チャンネル2が形成される。また、この多孔質支持体21の内部には、集水チャンネル2の間隔が異なる領域が確保される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16