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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20220114BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H01L21/306 J
H01L21/304 648G
H01L21/304 642B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017206295
(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公開番号】P2019079954
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 真治
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆一
(72)【発明者】
【氏名】久保 靖
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-084954(JP,A)
【文献】特開2000-164550(JP,A)
【文献】特開2010-278386(JP,A)
【文献】特開平10-261613(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0361341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/3063
H01L 21/308
H01L 21/465-21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種以上の薬液及び純水を含む処理液に基板を浸漬させることで該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置であって、
前記基板に前記所定の処理を行うための前記処理液が貯留された処理槽と、
前記処理槽中の前記処理液のライフタイムが経過すると前記処理液を交換する処理液交換部と、
前記処理液における純水または他の所定成分の濃度を検出する検出部と、
前記ライフタイムが経過するまでの間、前記濃度を前記所定の処理に適した濃度範囲内に制御する濃度制御部と、
前記処理液交換部による前記処理液の交換を前記所定の処理の開始時まで延期する延期部と、を備え、
前記濃度制御部は、前記延期部によって前記処理液の交換が延期されている間も、前記濃度を前記所定の処理に適した濃度範囲内に制御することを特徴とする、
基板処理装置。
【請求項2】
前記所定の処理はバッチ制御により行われることを特徴とする、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記濃度制御部は、前記処理液の温度を前記所定の処理に適した温度範囲内に制御することを特徴とする、
請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液は、リン酸、硝酸、酢酸の少なくとも一つ及び、純水を含む混酸水溶液であり、
前記濃度制御部は、前記混酸水溶液に純水を供給することで前記混酸水溶液の純水濃度を前記所定の処理に適した濃度範囲内に制御することを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記濃度制御部は、所定間隔で所定量の純水を前記処理槽に供給することで、前記純水濃度を前記所定の処理に適した濃度範囲内に制御することを特徴とする、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記濃度制御部は、前記処理槽内の処理液の液面の高さが前記所定の処理に適した高さに満たない場合、前記処理液を前記処理槽に補充することを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記検出部によって検出された前記濃度が前記所定の処理に適した濃度範囲から逸脱した場合、前記所定の処理の開始を抑制する抑制部をさらに備え、
前記抑制部は、前記延期部が前記処理液の交換を延期している間は、前記所定の処理の開始を抑制する処理を実行しない、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
一種以上の薬液及び純水を含む処理液を処理槽に貯留し、前記処理液に基板を浸漬させることで該基板に対して所定の処理を行う基板処理方法であって、
前記処理槽中の前記処理液のライフタイムが経過すると前記処理液を交換する処理液交換工程と、
前記処理液における純水または他の所定成分の濃度を検出する検出工程と、
前記ライフタイムが経過するまでの間、前記濃度を前記所定の処理に適した濃度範囲内に制御する濃度制御工程と、
前記処理液交換工程における前記処理液の交換を前記所定の処理の開始時まで延期する延期工程と、を含み、
前記濃度制御工程は、前記延期工程において前記処理液の交換が延期されている間も、前記濃度を前記所定の処理に適した濃度範囲内に制御する処理を含むことを特徴とする、
基板処理方法。
【請求項9】
前記所定の処理はバッチ制御により行われることを特徴とする、
請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記濃度制御工程においては、前記処理液の温度を前記所定の処理に適した温度範囲内に制御することを特徴とする、
請求項8または9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記処理液は、リン酸、硝酸、酢酸の少なくとも一つ及び、純水を含む混酸水溶液であり、
前記濃度制御工程においては、前記混酸水溶液に純水を供給することで前記混酸水溶液の純水濃度を前記所定の処理に適した濃度範囲内に制御することを特徴とする、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記濃度制御工程においては、所定間隔で所定量の前記純水を前記処理槽に供給することで、前記純水濃度を前記所定の処理に適した濃度範囲内に制御することを特徴とする、
請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記濃度制御工程においては、前記処理槽内の処理液が規定量に満たない場合、前記処理液を前記処理槽に補充することを特徴とする、
請求項8乃至12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記検出工程によって検出された前記濃度が前記所定の処理に適した濃度範囲から逸脱した場合、前記所定の処理の開始を抑制する抑制工程をさらに含み、
前記抑制工程においては、前記延期工程において前記処理液の交換を延期している間は、前記抑制する処理を実行しないことを特徴とする、
請求項8乃至13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の基板を処理槽に貯留された処理液に浸漬させ、エッチング処理や洗浄処理を行う基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、半導体ウェハ等の基板を処理槽に浸漬させることにより、当該基板にエッチング処理や洗浄処理を施す工程が含まれる。このような工程は、複数の処理槽を含む基板処理装置により実行される。この基板処理装置の各処理槽における処理液の濃度は、時間の経過とともに、処理液構成成分の蒸発、分解等によって変化する場合がある。そのため、処理液の濃度を上記のエッチング処理や洗浄処理に適切な範囲内に維持するための濃度制御が行われている。
【0003】
基板処理装置は、さらに、処理液のライフタイムが経過すると処理槽内の処理液を交換する処理も行う。処理液のライフタイムとは、処理液の状態が変化し継続して当該処理液を使用し続けると処理自体が充分に行われなくなると判断される使用時間であり、予め実験等により定められる。
【0004】
処理液の交換から処理槽における基板への処理の開始までにある程度の期間がある場合、基板への処理の開始までの間に処理液の濃度が上記のエッチング処理や洗浄処理に適切な範囲から逸脱する可能性がある。そこで、ライフタイムが経過した場合でも直ちに処理液の交換を実施せず、基板への処理の開始時まで処理液の交換を延期する技術が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-046443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板への処理の開始時まで処理液の交換を延期する場合、延期している間に処理槽内の処理液の濃度が変化し、濃度が変化した処理液が基板処理装置の配管等に流入する。配管等に流入した処理液が処理槽内の処理液の交換時にも残存し、残存した処理液が処理槽内の処理液の濃度に影響を及ぼすことがある。近年、半導体デバイスの微細化・高度化の進展に伴い、基板の所定の処理、特にエッチング処理において、高いエッチング精度が求められている。より高精度に濃度制御する技術が求められている。
【0007】
そこで、開示の技術の1つの側面は、基板への処理の開始時まで処理液の交換を延期する基板処理装置において、処理液交換後における処理槽内の処理液の濃度の変動を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の1つの側面は、次のような基板処理装置によって例示される。本基板処理装置は、一種以上の薬液及び純水を含む処理液に基板を浸漬させることで該基板に対して所定の処理を行う。本基板処理装置は、基板に所定の処理を行うための処理液が貯留された処理槽と、処理槽中の処理液のライフタイムが経過すると処理液を交換する処理液交換部と、処理液における純水または他の所定成分の濃度を検出する検出部と、ライフタイムが経過するまでの間、濃度を所定の処理に適した濃度範囲内に制御する濃度制御部と、処
理液交換部による処理液の交換を所定の処理の開始時まで延期する延期部と、を備える。さらに、濃度制御部は、延期部によって処理液の交換が延期されている間も、濃度を所定の処理に適した濃度範囲内に制御する。
【0009】
これによれば、所定の処理開始時まで処理液の交換が延期される。さらに、処理液の交換が延期されている間も、濃度制御部によって処理液の濃度が維持されるため、濃度が変動した処理液が基板処理装置の配管等に流入することが抑制される。そのため、配管等に残留した処理液による交換後の処理槽内の処理液の濃度に対する影響が抑制される。その結果、処理液の交換後における処理槽内の処理液の濃度の変動が抑制される。なお、ここで処理液のライフタイムとは、処理液の状態が変化し継続して当該処理液を使用し続けると処理自体が充分に行われなくなると判断される使用時間であり、予め実験等により定められる。また、「ライフタイムが経過」とは、ライフタイムの経過時であっても良いし、ライフタイム経過時に対して若干前後する時点であってもよい。また、所定の処理は、例えば、基板を処理槽内の処理液に浸漬することで当該基板に対して行われるエッチング処理であり、例えばバッチ制御によって行われる。
【0010】
また、開示の技術においては、濃度制御部は、処理液の温度を所定の処理に適した温度範囲内に制御することを特徴としてもよい。これによれば、処理液の交換が延期されている間も処理液の温度が維持される。そのため、温度が変動した処理液が基板処理装置の配管等に流入することが抑制される。
【0011】
また、開示の技術においては、処理液は、リン酸、硝酸、酢酸の少なくとも一つ及び、純水を含む混酸水溶液であり、濃度制御部は、混酸水溶液に純水を供給することで混酸水溶液の純水濃度を所定の処理に適した濃度範囲内に制御することを特徴としてもよい。これによれば、純水の供給量や供給タイミングを変更するという簡単な動作によって、純水の濃度を処理に応じた適切な値に制御することが可能となる。
【0012】
また、開示の技術においては、濃度制御部による純水の供給では、所定間隔で所定量の純水を処理槽に供給することで、所定の処理に適した濃度範囲内に制御することを特徴としてもよい。ここで、所定量は、処理槽内の処理液における純水濃度を大幅に変動させない量である。これによれば、一回で供給する純水量が規定されているため、純水の濃度が許容範囲内より高くなることが抑制される。
【0013】
また、開示の技術においては、濃度制御部は、処理槽内の処理液の液面の高さが所定の処理に適した高さに満たない場合、処理液を処理槽に補充することを特徴としてもよい。これによれば、処理槽内の処理液の液面の高さを所定の処理に適した高さに維持できるため、処理液の濃度制御が容易になる。
【0014】
また、開示の技術においては、検出部によって検出された処理液の濃度が所定の処理に適した濃度範囲から逸脱した場合、所定の処理の開始を抑制する抑制部をさらに備え、抑制部は、延期部が処理液の交換を延期している間は、抑制する処理を実行しないことを特徴としてもよい。これによれば、延期部によって処理液の交換が延期されていないときには、所定の処理に適した濃度から逸脱した処理液による品質の低いエッチング処理が抑制される。また、延期部によって処理液の交換が延期されているときには、抑制する処理を実行しないことで、所定の処理の開始時に処理液の交換が可能となる。
【0015】
以上で開示した課題を解決するための手段は、基板処理方法の側面から把握することも可能である。また、以上で開示した課題を解決するための手段は、適宜組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本基板処理装置は、基板への処理開始時まで処理液の交換を延期する基板処理装置において、処理液交換後における処理槽内の処理液の濃度の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る基板処理装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る基板処理装置の機能ブロック図の一例である。
図3】実施形態に係る基板処理装置の処理部における各処理槽の処理液の制御に関わる構成の一例を示す図である。
図4図4は、処理槽内の混酸水溶液を全液交換するタイミングの一例を示す図である。
図5図5は、実施形態における混酸水溶液の濃度制御の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態の濃度制御において実施される純水の補充の一例を示す図である。
図7図7は、実施形態の濃度制御において実施される混酸の補充の一例を示す図である。
図8図8は、通常モードで稼働する基板処理装置において、混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲外になるとバッチの実行を抑制する処理の流れを例示する図である。
図9図9は、節約モードで稼働する基板処理装置において、混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲外になる場合にバッチの実行を抑制する処理の流れを例示する図である。
図10図10は、節約モードで稼働する基板処理装置において、混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲外になる場合にバッチの実行を抑制しない処理の流れを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。図1は実施形態に係る基板処理装置1の概略構成の一例を示す斜視図である。この基板処理装置1は、主として基板Wに対してエッチング処理や洗浄処理(以下、単に“処理”ともいう)を施すものである。基板処理装置1においては、図1において右奥側に、基板Wをストックするバッファ部2が配置され、バッファ部2のさらに右奥側には、基板処理装置1を操作するための正面パネル(不図示)が設けられている。また、バッファ部2における正面パネルと反対側には、基板搬出入口3が設けられている。また、基板処理装置1の長手方向における、バッファ部2の反対側(図1において左手前側)から、基板Wに対して処理を行う処理部5、7及び9が並設されている。
【0019】
各処理部5、7及び9は、各々二つの処理槽5a及び5b、7a及び7b、9a及び9bを有している。また、基板処理装置1には、複数枚の基板Wを各処理部5、7及び9における各処理槽の間でのみ図1中の短い矢印の方向及び範囲に対して移動させるための副搬送機構43が備えられている。また、この副搬送機構43は、複数枚の基板Wを処理槽5a及び5b、7a及び7b、9a及び9bに浸漬しまたは、これらの処理槽から引き上げるため、複数枚の基板Wを上下にも移動させる。各々の副搬送機構43には、複数枚の基板Wを保持するリフタ11、13及び15が設けられている。さらに基板処理装置1には、複数枚の基板Wを各処理部5、7及び9の各々に搬送するために、図1中の長い矢印の方向及び範囲で移動可能な主搬送機構17が備えられている。
【0020】
主搬送機構17は、二本の可動式のアーム17aを有している。これらのアーム17aには、基板Wを載置するための複数の溝(図示省略)が設けられており、図1に示す状態で、各基板Wを起立姿勢(基板主面の法線が水平方向に沿う姿勢)で保持する。また、主
搬送機構17における二本のアーム17aは、図1中の右斜め下方向から見て、「V」の字状から逆「V」の字状に揺動することにより、各基板Wを開放する。そして、この動作により、基板Wは、主搬送機構17とリフタ11、13及び15との間で授受されることが可能となっている。以下、本明細書において、複数枚の基板Wをバッファ部2から取り出し、取り出した基板Wに対して処理部5、7及び9による処理を行う一連の流れを、バッチとも称する。基板処理装置1は、繰り返しバッチを実行することで、バッファ部2にストックされた基板Wに対する処理を実行する。
【0021】
図2には、基板処理装置1の機能ブロック図の一例を示す。上述した主搬送機構17、副搬送機構43、処理部5、7、9は、制御部55によって統括的に制御されている。制御部55のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部55は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく磁気ディスク等を備えている。本実施形態においては、制御部55のCPUが所定のプログラムを実行することにより、基板Wを各処理部5、7、9に搬送し、プログラムに応じた処理を施すように各部を制御する。上記のプログラムは、記憶部57に記憶されている。
【0022】
図3は、基板処理装置1の処理部5、7、9における各処理槽5a、7a、9aの処理液の制御に関わる構成の一例を示す図である。図3においては、処理部5、7、9における各処理槽5a、7a、9aのうち、処理槽7aを例にとって説明する。以下の処理槽7aの処理液についての制御と同等または類似の制御が、他の処理槽5a及び9aについても適用される。
【0023】
ここで、半導体ウェハの製造工程においては、例えばシリコン等の単結晶インゴッドをその棒軸方向にスライスし、得られたものに対して面取り、ラッピング、エッチング処理、ポリッシング等の処理が順次施される。その結果、基板表面の上には異なる材料による複数の層、構造、回路が形成される。そして、処理槽7aにおいて行われる基板Wのエッチング処理は、例えば、基板Wに残ったタングステン等のメタルを除去する目的で行われ、基板Wを処理液としての混酸(リン酸、硝酸、酢酸、純水)水溶液などに所定時間浸漬することにより行われる。なお、上記のエッチング処理は「所定の処理」の一例である。また、混酸におけるリン酸、硝酸、酢酸は、「他の所定成分」の一例である。
【0024】
図3において、処理槽7aは、混酸水溶液中に基板Wを浸漬させる内槽50aおよび内槽50aの上部からオーバーフローした混酸水溶液を回収する外槽50bによって構成される二重槽構造を有している。内槽50aは、混酸水溶液に対する耐食性に優れた石英またはフッ素樹脂材料にて形成された平面視矩形の箱形形状部材である。外槽50bは、内槽50aと同様の材料にて形成されており、内槽50aの外周上端部を囲繞するように設けられている。
【0025】
また、処理槽7aには、前述のように、貯留された混酸水溶液に基板Wを浸漬させるためのリフタ13が設けられている。リフタ13は、起立姿勢にて相互に平行に配列された複数(例えば50枚)の基板Wを3本の保持棒によって一括して保持する。リフタ13は、副搬送機構43によって上下左右の方向に移動可能に設けられており、保持する複数枚の基板Wを内槽50a内の混酸水溶液中に浸漬する処理位置(図3の位置)と混酸水溶液から引き上げた受渡位置との間で昇降させるとともに、隣の処理槽7bへ移動させることが可能となっている。
【0026】
また、基板処理装置1は、混酸水溶液を処理槽7aに循環させる循環ライン20を備える。循環ライン20は、処理槽7aから排出された混酸水溶液を濾過・加熱して再び処理
槽7aに圧送還流させる配管経路であり、具体的には処理槽7aの外槽50bと内槽50aとを流路接続して構成されている。また、循環ライン20から分岐して排液ライン30が分岐しており、混酸水溶液を処理槽7aに戻さず排液する場合には、排液切換えバルブ26及び、排液バルブ27を開閉することにより、外槽50bから排出された混酸水溶液をそのまま排液ライン30を介して廃棄する。
【0027】
循環ライン20の経路途中には、バルブ類以外では、上流側から循環ポンプ21、温調器22、フィルタ23及び、検出部としての濃度計24が設けられている。循環ポンプ21は、循環ライン20を介して混酸水溶液を外槽50bから吸い込むとともに内槽50aに向けて圧送する。温調器22は、循環ライン20を流れる混酸水溶液を所定の処理温度にまで再加熱する。なお、処理槽7aにも図示省略のヒータが設けられており、処理槽7aに貯留されている混酸水溶液も所定の処理温度を維持するように加熱されている。フィルタ23は、循環ライン20を流れる混酸水溶液中の異物を取り除くための濾過フィルタである。
【0028】
また、濃度計24は、循環ライン20によって内槽50aに回収される混酸水溶液の成分のうち、純水濃度を測定する。この濃度計24によって測定される純水濃度が最適値となるように、処理槽7a内の混酸濃度が制御されている。ここで、濃度計24は、「検出部」の一例であり、濃度計24によって純水濃度が測定される処理は「検出工程」の一例である。また、処理槽7a内の混酸濃度が制御される処理は制御部55によって行われる。より具体的には、制御部55は、処理槽7a内の混酸水溶液の全液交換制御や、混酸水溶液の濃度のフィードバック制御、処理槽7a内の混酸水溶液が蒸発等によって減少した場合の純水または混酸水溶液の補充等に係る処理を行う。全液交換制御を行う制御部55は「処理液交換部」の一例であり、その処理は「処理液交換工程」の一例である。
【0029】
次に、上記構成を有する基板処理装置1の作用についてより詳細に説明する。まず、処理槽7aに貯留されている混酸水溶液中に基板Wが浸漬されているか否かに関わらず、循環ポンプ21は常時一定流量にて混酸水溶液を圧送している。循環ライン20によって処理槽7aに還流された混酸水溶液は内槽50aの底部から供給される。これによって、内槽50aの内部には底部から上方へと向かう混酸水溶液のアップフローが生じる。底部から供給された混酸水溶液はやがて内槽50aの上端部から溢れ出て外槽50bに流入する。外槽50bに流れ込んだ混酸水溶液は外槽50bから循環ライン20を介して循環ポンプ21に送られ、再び処理槽7aに圧送還流されるという循環プロセスが継続して行われる。
【0030】
このような循環ライン20による混酸水溶液の循環プロセスを実行しつつ、受渡位置にて複数の基板Wを受け取ったリフタ13が処理位置まで降下して内槽50a内に貯留された混酸水溶液中に基板Wを浸漬させる。これにより、所定時間の処理が行われ、処理が終了した後、リフタ13が再び受渡位置にまで上昇して基板Wを混酸水溶液から引き上げる。その後、リフタ13は水平移動及び降下して基板Wを隣の処理槽7bに浸漬させ、水洗処理が実施される。
【0031】
上記の他、基板処理装置1には、処理槽7aの混酸水溶液の濃度を制御するための濃度制御装置40が備えられている。この濃度制御装置40は、薬液供給源41と、薬液供給源41と処理槽7aとを結ぶ薬液ライン42と、純水供給源46と、純水供給源46と処理槽7aとを結ぶ純水ライン47とを有する。
【0032】
ここで、図示は省略するが、薬液供給源41には、混酸を構成するリン酸、硝酸、酢酸の各々を供給する供給源が独立に設けられており、薬液ライン42には、リン酸、硝酸、酢酸の各々を処理槽7aに導くラインが独立に設けられている。処理液を最初に生成する
ときは、供給速度が必要となるので太い配管から内槽50aに向けて処理液が投入されるが、処理液を補充するときは外槽50bに向けて補充され場合がある。薬液ライン42の各々のラインには、通過する薬液(リン酸、硝酸、酢酸)の流量を各々測定可能な薬液流量計44と、リン酸、硝酸、酢酸の各々の流量を調整可能な薬液補充バルブ45が備えられている。一方、純水ライン47には、純水ライン47を通過する純水の流量を測定する純水流量計48と、純水の流量を調整する純水補充バルブ49が備えられている。また、前述の制御部55が濃度計24の測定結果に基づいて薬液補充バルブ45及び、純水補充バルブ49を制御し、処理槽7a内の混酸水溶液の濃度を、処理に最適な濃度となるように制御する。以下、本明細書において、処理に最適な濃度の範囲を「規定濃度範囲」と称する。
【0033】
処理槽7aにおいて水分が時間とともに蒸発することで、混酸水溶液中の純水の濃度が低下する。そのため、濃度制御装置40は、例えば、適量(例えば、100ml)の純水を処理槽7aに供給することで純水濃度を上昇させ、このような制御を所定の間隔で繰り返す。この制御により、処理槽7aにおける混酸水溶液の濃度が所定値以上に維持される。また、一回で供給する純水量を規定しているため、純水濃度が許容範囲内より高くなることもない。また、濃度制御装置40は、基板Wの処理の繰り返しや混酸水溶液構成成分の蒸発等によって、処理槽7a内の混酸水溶液の量が規定量を下回ると、純水補充バルブ49を制御して純水を補充したり、薬液補充バルブ45を制御して薬液を補充したりする。
【0034】
基板Wのエッチング処理が繰り返されると、混酸水溶液内に基板Wから溶出した金属イオンの濃度が上昇するため、エッチング処理の品質に影響が及ぶことがある。そのため、エッチング処理の品質に影響が及ぶ前に処理槽7a内の混酸水溶液が全液交換される。全液交換の間隔は、例えば、予め実験等により定められる。この全液交換の間の期間が、基板処理装置1における混酸水溶液のライフタイムと考えることができる。基板処理装置1では、処理槽7a内の混酸水溶液は、ライフタイム中は制御部55が濃度制御装置40を制御して混酸水溶液の濃度制御を実施し、ライフタイムが経過すると制御部55は処理槽7a内の混酸水溶液の全液交換を実施する。
【0035】
図4は、処理槽7a内の混酸水溶液を全液交換するタイミングの一例を示す図である。基板処理装置1の制御部55は、通常、混酸水溶液のライフタイムが経過したときに処理槽7a内の混酸水溶液の全液交換を実施する(図4、通常モード)。しかしながら、全液交換を実施してから直ちに基板Wの処理が開始されない場合、基板Wの処理が開始されるまでの間に混酸水溶液の構成成分の蒸発、分解等によって混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲外となる可能性がある。さらには、全液交換を実施してから次のバッチが開始されるまでの間に混酸水溶液のライフタイムが経過してしまうと、当該混酸水溶液は基板Wの処理に用いられることなく全液交換されてしまうことも生じ得る。そこで、制御部55は、混酸水溶液のライフタイムが経過した場合、混酸水溶液の全液交換を次のバッチの処理開始時点まで延期する(図4、節約モードA、節約モードB)。図4の節約モードAでは、制御部55は、次のバッチが開始されるタイミングまで全液交換の実施を延期する。図4の節約モードBでは、制御部55は処理槽7aによる基板Wに対する処理が行われる直前のタイミングまで全液交換の実施を延期する。例えば、節約モードBでは、バッファ部2からの基板Wの取り出し時点では全液交換は実施されず、処理槽7aによる基板Wに対する処理が行われる直前に処理槽7aの全液交換が実施される。すなわち、節約モードAでは次のバッチ開始を契機として全液交換が実施され、節約モードBでは処理槽7aによる基板Wに対する処理を契機として処理槽7aの全液交換が実施される。以下、本明細書において、節約モードAと節約モードBとを区別しない場合、節約モードと称する。ライフタイムの経過から節約モードによって延期された全液交換が実施されるまでの期間を延期期間と称する。ライフタイムが経過するまでの期間を通常期間と称する。全液交換を延期す
る制御部55は、「延期部」の一例であり、その処理は「延期工程」の一例である。
【0036】
全液交換では処理槽7a内の混酸水溶液が規定濃度範囲内の濃度に調整された混酸水溶液に交換される。そのため、延期期間中は制御部55による処理槽7a内の混酸水溶液の濃度制御は不要とも考えられる。しかしながら、延期期間中に濃度制御が行われない場合、延期期間中に濃度が変動した混酸水溶液は循環ポンプ21によって処理槽7aから循環ライン20に圧送される。そのため、全液交換後にも、循環ライン20内には濃度が変動した混酸水溶液が残る可能性がある。循環ライン20内に残った混酸水溶液が処理槽7aに圧送されることにより、全液交換が実施された処理槽7a内の混酸水溶液の濃度が変動する可能性がある。さらには、濃度が変動した結果、処理槽7a内の混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲外となる可能性もある。
【0037】
そこで、実施形態に係る基板処理装置1では、延期期間中も、制御部55が濃度計24の測定結果に基づいて薬液補充バルブ45及び、純水補充バルブ49を制御し、処理槽7a内の混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲内となるように制御する。すなわち、制御部55は、通常期間において実施している濃度制御を、延期期間にも継続して実施する。通常期間において実施している濃度制御を、延期期間にも継続して実施する制御部55は、「濃度制御部」の一例であり、その処理は「濃度制御工程」の一例である。
【0038】
図5は、実施形態における混酸水溶液の濃度制御の一例を示す図である。図5に例示されるように、ライフタイムが経過するまでの間(図5の通常期間)、制御部55は、処理槽7a内の混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲内となるように制御する。さらに、制御部55は、全液交換を延期している間(図5の延期期間)も、処理槽7a内の混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲内となるように制御する。濃度の制御では、例えば、薬液補充バルブ45を制御して薬液を処理槽7aに補充する処理や純水補充バルブ49を制御して純水を処理槽7aに補充する処理が行われる。濃度制御における純水や薬液の補充では、例えば、所定のインターバルで適量の純水および薬液の少なくとも一方が補充されてもよいし、濃度計24の測定結果に基づいて処理槽7aに供給する純水および薬液の少なくとも一方の量が制御されてもよい。濃度制御では、さらに、温調器22や処理槽7aに設けられたヒーターによる、混酸水溶液を処理に好適な処理温度にまで再加熱処理する処理が行われる。また、延期期間中に実施する濃度制御の処理内容を基板処理装置1が備えるユーザインタフェースを介して、ユーザが選択できるようにしてもよい。例えば、延期期間中に実施する濃度制御の処理内容として、再加熱処理と所定のインターバルで純水を処理槽7aに補充する処理が選択され、選択された処理が延期期間中に実行されてもよい。
【0039】
図6は、実施形態の濃度制御において実施される純水の補充の一例を示す図である。図6の上段(間隔と表記された段)では純水が補充されるインターバル(間隔)が例示され、図6の下段(補充と表記された段)では補充される純水の量とタイミングが例示される。すなわち、図6では、所定のインターバル(間隔)で適量の純水が補充される様子が例示される。図6の点線箇所において、基板処理装置1は通常期間から延期期間に遷移しているが、その前後において純水を補充するインターバルおよび純水の補充量に変動はない。すなわち、実施形態に係る基板処理装置1の制御部55は、通常期間において実施する純水の補充を延期期間にも継続して実施する。
【0040】
図7は、実施形態の濃度制御において実施される混酸水溶液の補充の一例を示す図である。図7の上段(外槽定量レベルと表記された段)では処理槽7aの外槽50b内の混酸水溶液の液面の高さが所定の定量レベルに達しているか否かが示される。所定の定量レベルは、例えば、処理槽7aによる基板Wへの処理が好適に実施できる混酸水溶液の液面高さを基に決定される。換言すれば、液面の高さが定量レベルに達している場合、基板Wへの処理に好適な量の混酸水溶液が処理槽7aに貯留されていると判断できる。図7の「O
N」は所定の定量レベルに達している状態を例示し、「OFF」は所定の定量レベルに達していない状態を例示する。図7の下段(レベル補充と表記された段)では補充される混酸水溶液の量とタイミングが例示される。すなわち、図7では、外槽50bの混酸水溶液の液面の高さが定量レベルに達していない場合、定量レベルに達するまで混酸水溶液が内槽50aまたは外槽50bに対して補充される。図7の点線箇所において、基板処理装置1は通常期間から延期期間に遷移しているが、通常期間および延期期間のいずれにおいても外槽50b内の混酸水溶液の液面の高さが所定の定量レベルに達しなくなると内槽50aまたは外槽50bに対して混酸水溶液の補充が行われる。すなわち、実施形態に係る基板処理装置1の制御部55は、通常期間において実施する混酸水溶液の補充を延期期間にも継続して実施する。
【0041】
ところで、ライフタイムを経過したときのように混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲外となる場合、制御部55はバッチの実行を抑制する。このような処理によって、基板処理装置1は、基板Wに対するエッチング処理の品質低下を抑制できる。通常モードで稼働する基板処理装置1では、例えば、図8に例示されるように、混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲外となるとバッチの実行が抑制され、全液交換によって混酸水溶液の濃度が規定濃度範囲内になるとバッチの実行の抑制が解除される。
【0042】
しかしながら、節約モードにおいては、全液交換はバッチ開始後に実施される。そのため、延期期間中においてバッチの実行が抑制されると、図9に例示されるように、全液交換が実施されなくなり、混酸水溶液の濃度を規定濃度範囲内とすることが困難となる。そのため、基板Wの処理が停止してしまうおそれがある。そこで、図10に例示されるように、制御部55は、延期期間中においては、バッチの実行は抑制せずに濃度の異常を通知する。濃度の異常の通知は、例えば、基板処理装置1が備える表示装置への警告メッセージの出力、警報音の出力等によって行われる。濃度の異常の通知は、例えば、処理槽7a内の混酸水溶液が全液交換されることで解除される。このような処理とすることで、節約モードにおける基板Wの処理が停止されることを抑制できる。バッチの実行の抑制する制御部55は「抑制部」の一例であり、その処理は「抑制工程」の一例である。
【0043】
上記の実施形態においては、混酸水溶液の構成成分のうち、純水を供給することで純水濃度を制御する例について説明したが、混酸水溶液の他の所定成分すなわち、リン酸、硝酸、酢酸のうちのいずれかの成分を供給することで混酸の濃度制御を行っても構わない。また、上記の実施形態は処理液が混酸水溶液である場合について説明したが、開示の技術はリン酸など他の処理液にも適用可能である。
【0044】
また、上記の実施形態においては、濃度計24はインライン方式のものであったが、サンプリング方式のものを採用してもよい。また、混酸水溶液の濃度制御のために、純水などの成分の濃度ではなく、phや導電率など、濃度と相関の高い他のパラメータを検出することにより、濃度に換算してもよい。また、上記の実施形態においては純水の補充は処理槽7aの内槽50aに行っていたが、これを外槽50bに行うようにしてもよい。さらに、上記の実施形態では純水等の補充量の制御は純水補充バルブ49の開閉により行っていたが、これをポンプの制御により適量を補充するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0045】
1・・・基板処理装置
2・・・バッファ部
3・・・基板搬出入口
5,7,9・・・処理部
5a、5b、7a、7b、9a、9b・・・処理槽
11、13、15・・・リフタ
17・・・主搬送機構
20・・・循環ライン
24・・・濃度計
40・・・濃度制御装置
43・・・副搬送機構
50a・・・内槽
50b・・・外槽
55・・・制御部
57・・・記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10