(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】回転電機のステータ、回転電機、及び回転電機のステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20220114BHJP
H02K 3/38 20060101ALI20220114BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H02K3/34 B
H02K3/38 A
H02K3/18 J
(21)【出願番号】P 2018070058
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮田 知明
(72)【発明者】
【氏名】奥山 進一
(72)【発明者】
【氏名】堀場 達也
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰三
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204271861(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第102118075(CN,A)
【文献】特開平04-172955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から径方向に延在する複数のティースを有する環状のステータコアと、
前記ステータコアの軸線方向の端面に配置されるとともに前記ヨークと当接される円筒状のインシュレータ基部、及び前記インシュレータ基部の内周面から径方向に延在するとともに前記複数のティースに当接される複数のインシュレータ延在部を有する環状のインシュレータと、
前記複数のティース及び前記複数のインシュレータ延在部を集中巻きで巻回することで複数のコイルを形成するU相、V相、及びW相の巻線と、を備えた回転電機のステータであって、
前記インシュレータは、
前記インシュレータ基部の外周面において周方向に延びるよう設けられるとともに各相の前記巻線を前記ステータコアに最も近いU相からU相、V相、及びW相の順に前記軸線方向に並べつつ周方向に個別に案内する案内溝と、
前記インシュレータ基部を径方向に貫通しつつ前記案内溝を周方向に分断するとともに前記インシュレータ基部における前記ステータコアとは前記軸線方向で反対側の端面に開口し各相の前記巻線を径方向に個別に案内する貫通溝と、を有し、
前記巻線は、前記複数のコイルと、隣り合う前記コイル同士を繋ぐとともに前記案内溝及び前記貫通溝に案内されつつ前記インシュレータ基部の外周面に掛止される複数の渡り線を形成し、
前記貫通溝は、
同一の前記コイルを間に挟みつつ隣り合う
2つの前記渡り線の両方を案内する中部溝と、前記中部溝とは異なる端部溝とから構成され、
前記中部溝の内部には仕切りが設けられ、
前記中部溝に案内される2つの前記渡り線は、前記仕切りによって分割された溝にそれぞれ案内され、
前記端部溝は、周方向において、V相の端部溝が、U相の端部溝とW相の端部溝との間に位置するよう並んでいることを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項2】
ロータと、
請求項1に記載の回転電機のステータと、を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機のステータの製造方法であって、
前記巻線は、直列巻きの巻き始めとなる始端コイルと、巻き終わりとなる終端コイルと、を形成し、
前記端部溝は、前記始端コイルに繋がる前記渡り線を案内する始端溝と、前記終端コイルに繋がる前記渡り線を案内する終端溝と、からなり、
各相の前記巻線を前記インシュレータに巻回する巻線用ノズルは、前記始端溝が案内する各相の前記巻線を、W相の始端溝からV相の始端溝を越えてU相の始端溝へと向かう周方向に、前記案内溝に沿って同時に案内することを特徴とする回転電機のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のステータ、回転電機、及び回転電機のステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機のステータは、円筒状のヨーク、及びヨークの内周面から径方向に延在する複数のティースを有する環状のステータコアを備えている。また、ステータは、ステータコアの軸線方向の端面に配置される環状のインシュレータを備えているものがある。各インシュレータは、ステータコアの軸線方向でヨークと当接される円筒状のインシュレータ基部と、インシュレータ基部の内周面から径方向に延在するとともに複数のティースに当接される複数のインシュレータ延在部と、を有している。また、ステータは、例えば、ステータコアの複数のティース及び複数のインシュレータ延在部に集中巻きで巻回することで複数のコイルを形成するU相、V相、及びW相の巻線を備えている。各相のコイルは、ステータコアの周方向で2つ置きにそれぞれ配置されている。
【0003】
また、例えば特許文献1では、各相のコイルの巻線を各ティースに対して同時に巻き始め、それぞれ2つ置きに配置されるティースに対して巻線を巻回していき、各相のコイルの巻線が各ティースに対して同時に巻き終わる直列巻きにより、各相のコイルをそれぞれ形成している。これによれば、各相のコイルの巻線の巻回作業が効率良く行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、各相のコイルの巻線を各ティースに対して同時に巻き始め、それぞれ複数置きに配置されるティースへと巻線を巻回していく場合、各相のコイルの巻線や巻線用ノズルが他の相のコイルの巻線に干渉してしまう虞があり、各相のコイルの巻線をスムーズに巻回することが困難となる場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、各相のコイルの巻線をスムーズに巻回することができる回転電機のステータ、回転電機、及び回転電機のステータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する回転電機のステータは、円筒状のヨーク、及び前記ヨークの内周面から径方向に延在する複数のティースを有する環状のステータコアと、前記ステータコアの軸線方向の端面に配置されるとともに前記ヨークと当接される円筒状のインシュレータ基部、及び前記インシュレータ基部の内周面から径方向に延在するとともに前記複数のティースに当接される複数のインシュレータ延在部を有する環状のインシュレータと、前記複数のティース及び前記複数のインシュレータ延在部を集中巻きで巻回することで複数のコイルを形成するU相、V相、及びW相の巻線と、を備えた回転電機のステータであって、前記インシュレータは、前記インシュレータ基部の外周面において周方向に延びるよう設けられるとともに各相の前記巻線を前記ステータコアに最も近いU相からU相、V相、及びW相の順に前記軸線方向に並べつつ周方向に個別に案内する案内溝と、前記インシュレータ基部を径方向に貫通しつつ前記案内溝を周方向に分断するとともに前記インシュレータ基部における前記ステータコアとは前記軸線方向で反対側の端面に開口し各相の前記巻線を径方向に個別に案内する貫通溝と、を有し、前記巻線は、前記複数のコイルと、隣り合う前記コイル同士を繋ぐとともに前記案内溝及び前記貫通溝に案内されつつ前記インシュレータ基部の外周面に掛止される複数の渡り線を形成し、前記貫通溝は、前記コイルを間に挟みつつ隣り合う前記渡り線の両方を案内する中部溝と、前記中部溝とは異なる端部溝とから構成され、前記端部溝は、周方向において、V相の端部溝が、U相の端部溝とW相の端部溝との間に位置するよう並んでいる。
【0008】
各相のコイルの巻線を効率良く巻回するために、各相のコイルの巻線をティース及び各インシュレータ延在部に対して同時に巻き始め、それぞれ等間隔で複数置きに配置されるティース及び各インシュレータ延在部に対して巻線を巻回していくことが考えられている。このとき、同相であって周方向に最も近いコイル同士を接続する渡り線に関し、例えば、ある案内溝に配置される渡り線において、貫通溝から引き出される端部が、比較的ステータコアから離れて位置する他の案内溝を通る別相の渡り線の同様の端部よりも、案内される周方向において後に位置していたとする。この場合、前者の渡り線が2番目のティース及び各インシュレータ延在部に対して巻線を巻回する前に、案内される周方向において前に位置する貫通溝から引き出された後者の渡り線が、前者の渡り線が通るべき貫通溝を先に横切ってしまう。このため、前者の渡り線を取り回すための巻線用ノズル等の器具が貫通溝を通ってインシュレータの内側へと移動する際に、後者の渡り線に干渉してしまい、コイルの巻線を巻回することができなくなってしまう。
【0009】
そこで、各相の巻線をステータコアに最も近いU相からU相、V相、及びW相の順に軸線方向に並べるよう案内溝を設け、貫通溝は、コイルを間に挟みつつ隣り合う渡り線の両方が通る中部溝と、中部溝とは異なる端部溝とから構成され、端部溝は、周方向において、V相の端部溝が、U相の端部溝とW相の端部溝の間に位置するよう並べた。これによれば、各案内溝に各相の巻線を案内する際の周方向を適切に選択することで、前述のような、貫通溝を通る前に他の巻線が横切って防ぐことがない。例えば、軸線方向および周方向において、端部溝から案内されて引き出されたU相、V相、及びW相の巻線が夫々この順に並んでいれば、U相、V相、及びW相の巻線がインシュレータ外周側へ引き出される位置は、斜めに並ぶことになる。その中で、最もステータコア側に近い巻線を、他の巻線の引き出し位置から離れるように周方向に案内し、同時に他の巻線も同じ周方向に案内することで、前述のような、各巻線が貫通溝を通る前に他の巻線が横切って防ぐことがない。
【0010】
以上のことから、ティース及び各インシュレータ延在部に対して各相の巻線を同時に巻き始め、それぞれ等間隔で複数おきに配置されるティース及び各インシュレータ延在部に対して連続して巻回していく場合に、各相のコイルの巻線や巻線用ノズルが他の相のコイルの巻線に干渉することが無く、各相のコイルの巻線をスムーズに巻回することができる。
【0011】
上記課題を解決する回転電機は、ロータと、請求項1に記載の回転電機のステータと、を備える。
また、上記課題を解決する回転電機のステータの製造方法は、請求項1に記載の回転電機のステータの製造方法であって、前記巻線は、直列巻きの巻き始めとなる始端コイルと、巻き終わりとなる終端コイルと、を形成し、前記端部溝は、前記始端コイルに繋がる前記渡り線を案内する始端溝と、前記終端コイルに繋がる前記渡り線を案内する終端溝と、からなり、各相の前記巻線を前記インシュレータに巻回する巻線用ノズルは、前記始端溝が案内する各相の前記巻線を、W相の始端溝からV相の始端溝を越えてU相の始端溝へと向かう周方向に、前記案内溝に沿って同時に案内する。これによれば、各案内溝にU相,V相,及びW相の巻線を案内する際の周方向を適切に選択できる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、各相のコイルの巻線をスムーズに巻回することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ステータコア及びインシュレータを示す分解斜視図。
【
図4】巻線用ノズルとステータコアとの関係を模式的に示す図。
【
図5】インシュレータ及びティースの関係を模式的に示す図。
【
図6】インシュレータ、ティース及び巻線の関係を模式的に示す図。
【
図7】比較例におけるインシュレータ、ティース及び巻線の関係を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、回転電機のステータ、回転電機、及び回転電機のステータの製造方法を具体化した一実施形態を
図1~
図7にしたがって説明する。
図1に示すように、回転電機10は、筒状のステータ11と、ステータ11の内側に配置されるロータ12と、を備えている。ステータ11は、ロータ12を取り囲んでいる。ロータ12は、回転軸13が挿通された状態で回転軸13に固定されるとともに回転軸13と一体的に回転する。ロータ12は、回転軸13に止着された円筒状のロータコア12aを有している。
【0015】
図2及び
図3に示すように、ステータ11は、円環状のステータコア21を備えている。ステータコア21は、円筒状のヨーク22、及びヨーク22の内周面22aから径方向に延在する複数のティース23を有している。本実施形態において、ヨーク22の内周面22aからは、15本のティース23が延在している。複数のティース23は、ステータコア21の周方向に間隔をあけて配置されるとともにヨーク22の内周面22aからステータコア21の軸線に向けて延びている。各ティース23におけるヨーク22の内周面22aとは反対側の面23aは、ロータコア12aの外周面に沿った円弧状である。
【0016】
ステータコア21の軸線方向に位置するヨーク22の両端面22eは平坦面状である。ステータコア21の軸線方向に位置する各ティース23の両端面23eは平坦面状である。ステータコア21の軸線方向におけるヨーク22の長さとステータコア21の軸線方向における各ティース23の長さとは同じである。よって、ヨーク22の端面22e及び各ティース23の端面23eは同一平面上に位置している。ヨーク22の両端面22e及び各ティース23の両端面23eは、ステータコア21の軸線方向に位置する両端面21eを形成している。
【0017】
各ティース23は、ヨーク22の内周面22aから延在するティース延在部24と、ティース延在部24におけるヨーク22とは反対側の端部からステータコア21の周方向両側に突出する一対のティース鍔部25と、を有している。
【0018】
図1に示すように、ステータ11は、U相、V相、及びW相のコイル27U,27V,27Wを備えている。各相のコイル27U,27V,27Wの一部分は、ステータコア21の周方向で隣り合うティース23の間に形成された空間であるスロット28をそれぞれ通過している。本実施形態のステータ11は、スロット数が「15」である。
【0019】
ステータ11は、各スロット28に挿入されるスロット絶縁シート29を備えている。スロット絶縁シート29は、各スロット28を通過する各相のコイル27U,27V,27Wの一部分とステータコア21とを絶縁する。スロット絶縁シート29は、細長帯状のシートを短手方向に沿って略U字状に湾曲させた形状である。スロット絶縁シート29は、その長手方向がステータコア21の軸線方向に一致した状態でスロット28に挿入されている。
【0020】
スロット絶縁シート29は、スロット28を形成するヨーク22及びティース23に沿って延びている。また、スロット絶縁シート29は、ステータコア21の軸線方向の一端から他端にかけて延びている。スロット絶縁シート29は、ステータコア21の周方向で隣り合うティース鍔部25同士の隙間であるステータコア21のスロットオープン30に対してステータコア21の径方向で重なる部分に開口29aを有している。開口29aは、スロット絶縁シート29の長手方向の一端から他端にかけて延びている。よって、開口29aは、ステータコア21の軸線方向の一端から他端にかけて延びている。
【0021】
図2及び
図3に示すように、ステータ11は、ステータコア21の両端面21eにそれぞれ配置される円環状のインシュレータ31を備えている。各インシュレータ31は、各インシュレータ31の軸線方向がステータコア21の軸線方向に一致した状態で、ステータコア21の端面21eに配置されている。
【0022】
各インシュレータ31は、円筒状のインシュレータ基部32と、インシュレータ基部32の内周面32aから径方向に延在する複数のインシュレータ延在部33と、各インシュレータ延在部33におけるインシュレータ基部32とは反対側の端部からインシュレータ基部32の周方向両側に突出する一対のインシュレータ鍔部34と、を有している。
【0023】
インシュレータ基部32は、ステータコア21の軸線方向でヨーク22と対向する位置に配置されている。インシュレータ31の軸線方向に位置するインシュレータ基部32の両端面32eは平坦面状である。インシュレータ基部32の両端面32eの一方は、ヨーク22の端面22eに面接触している。よって、インシュレータ基部32は、ヨーク22と当接される。インシュレータ基部32の外径は、ヨーク22の外径よりも小さい。インシュレータ基部32の内径は、ヨーク22の内径と同じである。
【0024】
インシュレータ基部32の内周面32aからは、ティース延在部24と同数のインシュレータ延在部33が延在している。各インシュレータ延在部33におけるインシュレータ基部32の周方向の幅は、各ティース延在部24におけるステータコア21の周方向の幅と同じである。複数のインシュレータ延在部33は、インシュレータ基部32の周方向に間隔をあけて配置されるとともにインシュレータ基部32の内周面32aからインシュレータ基部32の軸線に向けて延びている。
【0025】
各インシュレータ延在部33は、ステータコア21の軸線方向で各ティース延在部24と対向する位置に配置されている。各インシュレータ延在部33は、インシュレータ基部32の内周面32aにおけるインシュレータ基部32の両端面32eの一方の端部から突出する柱状である。インシュレータ31の軸線方向に位置する各インシュレータ延在部33の両端面33eは平坦面状である。そして、各インシュレータ延在部33の両端面33eの一方は、インシュレータ基部32の両端面32eの一方と同一平面上に位置している。
【0026】
インシュレータ31の軸線方向において、各インシュレータ延在部33の両端面33eの一方側に位置する各インシュレータ鍔部34の端面34eは平坦面状であるとともに、インシュレータ基部32の両端面32eの一方と同一平面上に位置している。各インシュレータ延在部33の両端面33eの一方、及び各インシュレータ鍔部34の端面34eは、各ティース23の端面23eに面接触している。よって、各インシュレータ延在部33は、各ティース23に当接される。
【0027】
また、各インシュレータ31は、各インシュレータ鍔部34及び各インシュレータ延在部33におけるインシュレータ基部32とは反対側の端部に連続するとともにインシュレータ31の軸線方向においてインシュレータ基部32の両端面32eの他方側に張り出す薄板状の張り出し壁35を有している。各張り出し壁35におけるインシュレータ基部32の周方向の幅は、各インシュレータ鍔部34におけるインシュレータ基部32の周方向の幅と同じである。よって、インシュレータ基部32の周方向両側に位置する各張り出し壁35の縁部は、インシュレータ基部32の周方向に位置する各インシュレータ鍔部34の縁部に連続するとともにインシュレータ31の軸線方向に延びている。各インシュレータ鍔部34におけるインシュレータ基部32側の面34aと、各張り出し壁35におけるインシュレータ基部32側の面35aとは同一面上に位置している。
【0028】
各インシュレータ31は、インシュレータ基部32の周方向で隣り合うインシュレータ鍔部34及び張り出し壁35同士の隙間である開口36を有している。各インシュレータ31の各開口36は、ステータコア21のスロットオープン30とステータコア21の周方向で一致している。
【0029】
図3に示すように、ステータコア21の両端面21eからそれぞれ突出する各相のコイル27U,27V,27Wの各コイルエンド27eは、各インシュレータ31において、インシュレータ基部32の周方向で隣り合うインシュレータ延在部33の間に形成されたコイル挿通空間37(
図2参照)を通過している。また、各コイルエンド27eは、各インシュレータ31において、インシュレータ基部32の内周面32aと各張り出し壁35との間であって、且つ各インシュレータ延在部33の両端面33eの他方側(各インシュレータ延在部33におけるステータコア21とは反対側)に位置する空間を通過している。
【0030】
各コイルエンド27eは、各インシュレータ31のインシュレータ基部32に接触することによって、インシュレータ基部32における径方向外側への移動が規制されている。また、各コイルエンド27eは、各インシュレータ31において、各インシュレータ鍔部34におけるインシュレータ基部32側の面34a、及び各張り出し壁35におけるインシュレータ基部32側の面35aに接触することによって、インシュレータ基部32における径方向内側への移動が規制されている。各コイルエンド27eは、各インシュレータ31の各インシュレータ延在部33によって、ステータコア21の各ティース23と絶縁されている。
【0031】
図4に示すように、各相のコイル27U,27V,27Wは、例えば、巻線用ノズルN1を、各インシュレータ31の開口36、スロットオープン30、及びスロット絶縁シート29の開口29aを通過させながら、各ティース延在部24及び各インシュレータ31の各インシュレータ延在部33に巻線26を集中巻きで巻回することにより形成される。よって、ステータ11は、複数のティース23及び複数のインシュレータ延在部33を集中巻きで巻回することで複数のコイル27U,27V,27Wを形成するU相、V相、及びW相の巻線26を備えている。
【0032】
巻線用ノズルN1は、ステータコア21に対してステータコア21の軸線方向(
図4において矢印Z1で示す方向)、及びステータコア21の周方向(
図4において矢印θ1で示す方向)に相対的に移動可能である。
【0033】
図3に示すように、各相のコイル27U,27V,27Wは、ステータコア21の周方向で2つ置きにそれぞれ配置されている。本実施形態において、各相のコイル27U,27V,27Wは、それぞれ5つずつある。各スロット28においてステータコア21の周方向で隣り合うコイル27U,27V,27W同士は互いに異なる相である。
【0034】
図2に示すように、二つのインシュレータ31の一方には、巻線26の引き出し及び挿入の少なくとも一方が行われる複数の貫通溝としての第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wが形成されている。インシュレータ31には、第1貫通溝41U,第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wがそれぞれ5つずつ形成されている。第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wの数の合計は、ティース23の数と一致している。第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wは、インシュレータ基部32におけるステータコア21とは反対側の端面32eからインシュレータ31の軸線方向に延びるとともにインシュレータ基部32を径方向に貫通している。
【0035】
また、インシュレータ基部32の外周面32bには、U相、V相、及びW相の巻線26をそれぞれ周方向に個別に案内する案内溝としての第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wが形成されている。第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wは、インシュレータ基部32の外周面32bにおいて周方向に延びるように設けられるとともにインシュレータ基部32の外周面32bの全周に亘って延びている。第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wは、インシュレータ基部32の外周面32bにインシュレータ31の軸線方向に並んで設けられている。第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wは、インシュレータ基部32に対して非貫通である。
【0036】
インシュレータ基部32を側面視、つまり、インシュレータ基部32の径方向から第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wを見たとき、第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wは互いに平行に延びている。第1案内溝51Uは、第2案内溝51V及び第3案内溝51Wよりも、インシュレータ31の軸線方向でインシュレータ基部32におけるステータコア21とは反対側の端面32eから離間した位置に配置されている。第2案内溝51Vは、第3案内溝51Wよりも、インシュレータ31の軸線方向でインシュレータ基部32におけるステータコア21とは反対側の端面32eから離間した位置に配置されている。よって、第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wは、各相の巻線26をステータコア21に最も近いU相からU相,V相、及びW相の順に軸線方向に並べている。
【0037】
図5に示すように、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wにおけるインシュレータ基部32の端面32eからの長さL1,L2,L3は、それぞれ異なっている。第1貫通溝41Uの長さL1は、第2貫通溝41Vの長さL2及び第3貫通溝41Wの長さL3よりも長い。第2貫通溝41Vの長さL2は、第3貫通溝41Wの長さL3よりも長い。第1貫通溝41Uは、インシュレータ基部32の周方向において第2貫通溝41Vと第3貫通溝41Wとの間に配置されている。第2貫通溝41Vは、インシュレータ基部32の周方向において第1貫通溝41Uと第3貫通溝41Wとの間に配置されている。第3貫通溝41Wは、インシュレータ基部32の周方向において第1貫通溝41Uと第2貫通溝41Vとの間に配置されている。
【0038】
各第1貫通溝41Uは、インシュレータ基部32を径方向に貫通しつつ第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wを周方向に分断するとともにインシュレータ基部32におけるステータコア21とは軸線方向で反対側の端面32eに開口しU相の巻線26を径方向に個別に案内する。各第2貫通溝41Vは、インシュレータ基部32を径方向に貫通しつつ第2案内溝51V及び第3案内溝51Wを周方向に分断するとともにインシュレータ基部32におけるステータコア21とは軸線方向で反対側の端面32eに開口しV相の巻線26を径方向に個別に案内する。各第3貫通溝41Wは、インシュレータ基部32を径方向に貫通しつつ第3案内溝51Wを周方向に分断するとともにインシュレータ基部32におけるステータコア21とは軸線方向で反対側の端面32eに開口しW相の巻線26を径方向に個別に案内する。
【0039】
第1貫通溝41Uは、第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51W全てに連通している。第2貫通溝41Vは、第2案内溝51V及び第3案内溝51Wに連通している。第3貫通溝41Wは、第3案内溝51Wに連通している。
【0040】
図2に示すように、インシュレータ基部32の周方向で隣り合う第1貫通溝41Uと第2貫通溝41Vとの間隔は、インシュレータ基部32の周方向で隣り合うインシュレータ延在部33同士の間隔と同じである。また、インシュレータ基部32の周方向で隣り合う第2貫通溝41Vと第3貫通溝41Wとの間隔は、インシュレータ基部32の周方向で隣り合うインシュレータ延在部33同士の間隔と同じである。さらに、インシュレータ基部32の周方向で隣り合う第1貫通溝41Uと第3貫通溝41Wとの間隔は、インシュレータ基部32の周方向で隣り合うインシュレータ延在部33同士の間隔と同じである。
【0041】
インシュレータ31を軸線方向から見たとき、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wは、各インシュレータ延在部33に対してインシュレータ基部32の径方向で重なっている。よって、インシュレータ基部32の径方向から第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wをそれぞれ見たときに、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V,及び第3貫通溝41Wは、各ティース23の軸線L10(
図5参照)上に位置している。
【0042】
図6に示すように、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26を各ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻回する際には、例えば、巻線用ノズルN1を用いて、巻線26を各ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して同時に巻き始めていく。なお、
図6では、説明の都合上、ティース23のみを模式的に図示し、各インシュレータ延在部33の図示を省略している。そして、それぞれ2つ置きに配置されるティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻線26を巻回していき、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26は、ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して同時に巻き終わる。これにより、各相のコイル27U,27V,27Wは、ステータコア21の周方向で2つ置きにそれぞれ配置される。
【0043】
本実施形態のコイル27U,27V,27Wは直列巻きである。第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wに収納された巻線26の一部は、ステータコア21の周方向で2つ置きに配置されるコイル27U,27V,27W同士を接続する渡り線271U,271V,271Wである。
【0044】
よって、U相の巻線26は、複数のコイル27Uと、隣り合うコイル27U同士を繋ぐとともに第1案内溝51U及び第1貫通溝41Uに案内されつつインシュレータ基部32の外周面32bに掛止される複数の渡り線271Uを形成する。V相の巻線26は、複数のコイル27Vと、隣り合うコイル27V同士を繋ぐとともに第2案内溝51V及び第2貫通溝41Vに案内されつつインシュレータ基部32の外周面32bに掛止される複数の渡り線271Vを形成する。W相の巻線26は、複数のコイル27Wと、隣り合うコイル27W同士を繋ぐとともに第3案内溝51W及び第3貫通溝41Wに案内されつつインシュレータ基部32の外周面32bに掛止される複数の渡り線271Wを形成する。
【0045】
コイル27Uは、一つ目のティース23及び各インシュレータ延在部33に巻線26が巻回されて直列巻きの巻き始めとなる始端コイルとなるコイル27Uが形成された後、巻線26が、第1貫通溝41Uを介してインシュレータ基部32よりもインシュレータ基部32の径方向外側に渡り線271Uとして引き出される。第1貫通溝41Uから引き出された渡り線271Uは、第1案内溝51Uに向けて折り曲げられて、第1案内溝51Uに収納される。第1案内溝51Uに収納された渡り線271Uは、インシュレータ基部32の径方向外側でステータコア21の周方向に延び、インシュレータ基部32の周方向で次に存在する第1貫通溝41Uに挿入されてインシュレータ延在部33に向けて延びる。そして、二つ目のティース23及び各インシュレータ31の各インシュレータ延在部33に巻線26が巻回されてコイル27Uが形成される。これが繰り返し行われることにより、2つ置きに配置されるコイル27Uが形成される。そして、五つ目のティース23及び各インシュレータ31の各インシュレータ延在部33に巻線26が巻回されることにより、直列巻きの巻き終わりとなる終端コイルが形成される。したがって、第1貫通溝41Uは、コイル27Uを間に挟みつつ隣り合う渡り線271Uの両方を案内する中部溝411Uと、中部溝411Uとは異なる端部溝412Uとから構成されている。そして、端部溝412Uは、始端コイルに繋がる渡り線271Uを案内する始端溝と、終端コイルに繋がる渡り線271Uを案内する終端溝と、からなる。
【0046】
コイル27Vは、一つ目のティース23及び各インシュレータ延在部33に巻線26が巻回されて直列巻きの巻き始めとなる始端コイルとなるコイル27Vが形成された後、巻線26が、第2貫通溝41Vを介してインシュレータ基部32よりもインシュレータ基部32の径方向外側に渡り線271Vとして引き出される。第2貫通溝41Vから引き出された渡り線271Vは、第2案内溝51Vに向けて折り曲げられて、第2案内溝51Vに収納される。第2案内溝51Vに収納された渡り線271Vは、インシュレータ基部32の径方向外側でステータコア21の周方向に延び、インシュレータ基部32の周方向で次に存在する第2貫通溝41Vに挿入されてインシュレータ延在部33に向けて延びる。そして、二つ目のティース23及び各インシュレータ31の各インシュレータ延在部33に巻線26が巻回されてコイル27Vが形成される。これが繰り返し行われることにより、2つ置きに配置されるコイル27Vが形成される。そして、五つ目のティース23及び各インシュレータ31の各インシュレータ延在部33に巻線26が巻回されることにより、直列巻きの巻き終わりとなる終端コイルが形成される。したがって、第2貫通溝41Vは、コイル27Vを間に挟みつつ隣り合う渡り線271Vの両方を案内する中部溝411Vと、中部溝411Vとは異なる端部溝412Vとから構成されている。そして、端部溝412Vは、始端コイルに繋がる渡り線271Vを案内する始端溝と、終端コイルに繋がる渡り線271Vを案内する終端溝と、からなる。
【0047】
コイル27Wは、一つ目のティース23及び各インシュレータ延在部33に巻線26が巻回されて直列巻きの巻き始めとなる始端コイルとなるコイル27Wが形成された後、巻線26が、第3貫通溝41Wを介してインシュレータ基部32よりもインシュレータ基部32の径方向外側に渡り線271Wとして引き出される。第3貫通溝41Wから引き出された渡り線271Wは、第3案内溝51Wに向けて折り曲げられて、第3案内溝51Wに収納される。第3案内溝51Wに収納された渡り線271Wは、インシュレータ基部32の径方向外側でステータコア21の周方向に延び、インシュレータ基部32の周方向で次に存在する第3貫通溝41Wに挿入されてインシュレータ延在部33に向けて延びる。そして、二つ目のティース23及び各インシュレータ31の各インシュレータ延在部33に巻線26が巻回されてコイル27Wが形成される。これが繰り返し行われることにより、2つ置きに配置されるコイル27Wが形成される。そして、五つ目のティース23及び各インシュレータ31の各インシュレータ延在部33に巻線26が巻回されることにより、直列巻きの巻き終わりとなる終端コイルが形成される。したがって、第3貫通溝41Wは、コイル27Wを間に挟みつつ隣り合う渡り線271Wの両方を案内する中部溝411Wと、中部溝411Wとは異なる端部溝412Wとから構成されている。そして、端部溝412Wは、始端コイルに繋がる渡り線271Wを案内する始端溝と、終端コイルに繋がる渡り線271Wを案内する終端溝と、からなる。
【0048】
渡り線271Uは、ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻き終わって第1貫通溝41Uから引き出される巻線26側の第1端部E1と、第1貫通溝41Uに挿入されてティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻き始められる巻線26側の第2端部E2と、を有している。渡り線271Vは、ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻き終わって第2貫通溝41Vから引き出される巻線26側の第1端部E11と、第2貫通溝41Vに挿入されてティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻き始められる巻線26側の第2端部E22と、を有している。渡り線271Wは、ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻き終わって第3貫通溝41Wから引き出される巻線26側の第1端部E111と、第3貫通溝41Wに挿入されてティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻き始められる巻線26側の第2端部E222と、を有している。
【0049】
各相の渡り線271U,271V,271Wの第1端部E1,E11,E111から第2端部E2,E22,E222へ向かう方向は、ステータコア21の周方向でそれぞれ同一方向(
図6において矢印T1で示す方向)である。つまり、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26を各ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻回する際に用いられる各巻線用ノズルN1の進行方向は、ステータコア21の周方向でそれぞれ同一方向である。なお、ここでいう各巻線用ノズルN1の進行方向とは、各巻線用ノズルN1のステータコア21に対する相対移動方向であり、実際には、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26を各ティース延在部24及び各インシュレータ延在部33に対して巻回する際には、ステータコア21に対して巻線用ノズルN1が周方向に相対的に移動する。
【0050】
ここで、各相の渡り線271U,271V,271Wにおいて、一つ目のティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻き終わって第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、又は第3貫通溝41Wから引き出される巻線26側の第1端部E1,E11,E111の位置関係について着目する。この場合、渡り線271Uにおいて、第1貫通溝41Uから引き出される巻線26側の第1端部E1は、渡り線271V,271Wにおいて、第2貫通溝41V又は第3貫通溝41Wから引き出される巻線26側の第1端部E11,E111よりも第2端部E22,E222側に位置している。また、第2案内溝51Vに配置される渡り線271Vにおいて、一つ目のティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻き終わって第2貫通溝41Vから引き出される巻線26側の第1端部E11は、第3案内溝51Wに配置される渡り線271Wの第1端部E111よりも第2端部E222側に位置している。
【0051】
各相の端部溝412U,412V,412Wは、周方向において、V相の端部溝412Vが、U相の端部溝412UとW相の端部溝412Wとの間に位置するよう並んでいる。各相の巻線26をインシュレータ31に巻回する巻線用ノズルN1は、始端溝である端部溝412U,412V,412Wが案内する各相の巻線26を、W相の始端溝である端部溝412WからV相の始端溝である端部溝412Vを越えてU相の始端溝である端部溝412Uへと向かう周方向に、第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wに沿って同時に案内する。
【0052】
各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26の巻き始め側の端部である一端部は、対応する図示しない給電端子に電気的に接続されている。また、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26の巻き終わり側の端部である他端部は、図示しない中性点連結部において相互に電気的に接続されている。そして、各相のコイル27U,27V,27Wに電流が流れることによって、ロータ12と回転軸13とが一体的に回転する。
【0053】
次に、本実施形態の作用について説明する。
各相の渡り線271U,271V,271Wは、第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wにそれぞれ収納されているため、各相の渡り線271U,271V,271Wが互いに接触することが防止されている。よって、各相の渡り線271U,271V,271Wは、インシュレータ基部32の径方向外側で互いに接触することなく絶縁が確保されている。
【0054】
各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26を効率良く巻回するために、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26をティース23及び各インシュレータ延在部33に対して同時に巻き始め、それぞれ等間隔で二つ置きに配置されるティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻線26を巻回していくことが考えられている。
【0055】
図7に示すように、例えば、第1案内溝51Uに配置される渡り線271Uにおいて、第1貫通溝41Uから引き出される端部が、比較的ステータコア21から離れて位置する第2案内溝51V及び第3案内溝51Wを通る渡り線271V,271Wの同様の端部よりも、案内される周方向において後に位置していたとする。この場合、前者の渡り線271Uが2番目のティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻線26を巻回する前に、案内される周方向において前に位置する第2貫通溝41V及び第3貫通溝41Wから引き出された後者の渡り線271V,271Wが、前者の渡り線271Uが通るべき第1貫通溝41Uを先に横切ってしまう。このため、前者の渡り線271Uを取り回すための巻線用ノズルN1等の器具が第1貫通溝41Uを通ってインシュレータ31の内側へと移動する際に、後者の渡り線271V,271Wに干渉してしまい、コイル27Uの巻線26を巻回することができなくなってしまう。
【0056】
そこで、
図6に示すように、各相の端部溝412U,412V,412Wは、周方向において、V相の端部溝412Vが、U相の端部溝412UとW相の端部溝412Wとの間に位置するよう並んでいる。これによれば、第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wに各相の巻線26を案内する際の周方向を適切に選択することで、前述のような、第1貫通溝41Uを通る前に他の巻線26が横切って防ぐことがない。例えば、軸線方向および周方向において、端部溝412U,412V,412Wから案内されて引き出されたU相、V相、及びW相の巻線26が夫々この順に並んでいれば、U相、V相、及びW相の巻線26がインシュレータ31外周側へ引き出される位置は、斜めに並ぶことになる。その中で、最もステータコア21側に近い巻線26を、他の巻線26の引き出し位置から離れるように周方向に案内し、同時に他の巻線26も同じ周方向に案内することで、前述のような、各巻線26が第1貫通溝41Uを通る前に他の巻線26が横切って防ぐことがない。
【0057】
以上のことから、ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して各相の巻線26を同時に巻き始め、それぞれ等間隔で二つおきに配置されるティース23及び各インシュレータ延在部33に対して連続して巻回していく場合に、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26や巻線用ノズルN1が他の相のコイル27U,27V,27Wの巻線26に干渉することが無く、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26がスムーズに巻回される。
【0058】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)各相の端部溝412U,412V,412Wは、周方向において、V相の端部溝412Vが、U相の端部溝412UとW相の端部溝412Wとの間に位置するよう並んでいる。これによれば、ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して各相の巻線26を同時に巻き始め、それぞれ等間隔で二つおきに配置されるティース23及び各インシュレータ延在部33に対して連続して巻回していく場合に、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26や巻線用ノズルN1が他の相のコイル27U,27V,27Wの巻線26に干渉することが無い。よって、各相のコイル27U,27V,27Wの巻線26をスムーズに巻回することができる。
【0059】
(2)インシュレータ基部32の径方向から第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wをそれぞれ見たときに、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V,及び第3貫通溝41Wは、各ティース23の軸線L10上に位置している。これによれば、例えば、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V,及び第3貫通溝41Wが、各ティース23の軸線L10に対してずれている位置にある場合に比べると、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V,及び第3貫通溝41Wに挿入された巻線26を、ティース23及び各インシュレータ延在部33に対して巻回し易くすることができる。
【0060】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、インシュレータ基部32の径方向から第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wをそれぞれ見たときに、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V,及び第3貫通溝41Wが、各ティース23の軸線L10に対してずれている位置にあってもよい。
【0061】
○ 実施形態において、例えば、第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wが、インシュレータ基部32の外周面32bから突出するとともに周方向かつ軸線方向に並ぶ複数の突起の軸線方向の間隙によって形成されていてもよい。
【0062】
○ 実施形態において、第2貫通溝41V及び第3貫通溝41Wにおけるインシュレータ基部32の端面32eからの長さL2,L3が、第1貫通溝41Uにおけるインシュレータ基部32の端面32eからの長さL1と同じであってもよい。
【0063】
○ 実施形態において、各相の渡り線271U,271V,271Wにおけるインシュレータ31の軸線方向での位置関係は、適宜変更してもよい。
○ 実施形態において、二つのインシュレータ31の双方に、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、第3貫通溝41W、第1案内溝51U、第2案内溝51V、及び第3案内溝51Wが形成されていてもよい。そして、例えば、まず、二つのインシュレータ31の一方の第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wを介してティース延在部24及び各インシュレータ31の各インシュレータ延在部33に巻線26を巻回してコイル27U,27V,27Wを形成する。その後、二つのインシュレータ31の他方の第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wから巻線26が引き出されてもよい。
【0064】
○ 実施形態において、各相のコイル27U,27V,27Wの極数は2つ以上であれば特に限定されるものではない。
○ 実施形態において、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wそれぞれの周方向の間隔は不等でもよい。
【0065】
○ 実施形態において、第1貫通溝41U、第2貫通溝41V、及び第3貫通溝41Wそれぞれの内部に仕切りが設けられ、同一のコイル27U,27V,27Wに対する引き入れと引き出しの巻線26がそれぞれ別空間に設けられてもよい。
【0066】
○ 実施形態において、ステータコア21及びインシュレータ31は一体構造でなく分割構造でもよい。本実施形態においては、どちらの構造でも同様の巻線工法を実施できる。
【0067】
○ 実施形態で説明したU相、V相、及びW相は、3相モータの各相に対して設けた便宜上の名称に過ぎない。要は、3相モータの各相の始端コイルに繋がる巻線26について、インシュレータ31の外周側へ引き出される位置が斜めに並んでいればよい。
【符号の説明】
【0068】
N1…巻線用ノズル、10…回転電機、11…ステータ、12…ロータ、21…ステータコア、21e…端面、22…ヨーク、22a…内周面、23…ティース、26…巻線、27U,27V,27W…コイル、31…インシュレータ、32…インシュレータ基部、32b…外周面、32e…端面、33…インシュレータ延在部、41U…貫通溝としての第1貫通溝、41V…貫通溝としての第2貫通溝、41W…貫通溝としての第3貫通溝、51U…案内溝としての第1案内溝、51V…案内溝としての第2案内溝、51W…案内溝としての第3案内溝、271U,271V,271W…渡り線、411U,411V,411W…中部溝、412U,412V,412W…端部溝。