(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】オープンボアフィールドフリーライン磁性粒子イメージングシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0515 20210101AFI20220114BHJP
【FI】
A61B5/0515
(21)【出願番号】P 2019543207
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 TR2018050038
(87)【国際公開番号】W WO2018222162
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2019-10-24
(32)【優先日】2017-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519206302
【氏名又は名称】アセルサン エレクトロニック サナーイ ヴィエ ティカレット アノーニム スルキエティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】トップ、キャン バリス
(72)【発明者】
【氏名】グヴェン、フセイン エムレ
【審査官】▲瀬▼戸井 綾菜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0073264(US,A1)
【文献】特開2010-88683(JP,A)
【文献】特表2013-518657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/055
5/24-5/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積内のフィールドフリーライン(FFL)の電子的ステアリング及び回転を可能にするオープンボアコイルシステムであって、
第1コイルグループであって、
第1コイルと、第2コイルと、第3コイルと第4コイルとを有し、
前記第1コイルと、前記第2コイルと、前記第3コイルと、前記第4コイルとには、それぞれの第1電流(l1a)と、第2電流(l1b)と、第3電流(l1c)と第4電流(l1d)とが供給される、第1コイルグループと、
第2コイルグループであって、
第1コイルと、第2コイルと、第3コイルと第4コイルとを有し、
前記第1コイルと、前記第2コイルと、前記第3コイルと、前記第4コイルとには、それぞれの第1電流(l2a)と、第2電流(l2b)と、第3電流(l2c)と第4電流(l2d)とが供給される、第2コイルグループと
を備え、
それぞれの前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループにおける前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル及び前記第4コイルは、並んで配置されたコイルペアとして位置しており、交流電流が供給され、
前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループの前記第1コイル及び前記第2コイルは、第1コイルペアを形成し、前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループの前記第1コイルペアには、同じ方向の電流が供給されることにより、+z及び-zから成る群から選択された第1z方向に磁界が生成され、
前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループの前記第3コイルと前記第4コイルは、第2コイルペアを形成し、前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループの前記第2コイルペアには、前記第1コイルグループの前記第1コイル及び前記第2コイルに対して反対方向の電流が供給されることにより、+z及び-zから成る群から選択された第2z方向に磁界が生成され、前記第2z方向は、前記第1z方向の反対方向であって、前記第1z方向が+zである場合、前記第2z方向は-zであり、前記第1z方向が-zである場合、前記第2z方向は+zであり、
前記磁界のx成分及びy成分は、上部コイルペアと下部コイルペアとの間の平坦面又は非平坦面で消失し、前記上部コイルペアは、前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループの前記第1コイル及び前記第3コイルを含み、前記下部コイルペアは、前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループの第2コイル及び第4コイルを含み、
前記磁界のz軸成分は、前記第1コイルペアと前記第2コイルペアとの間の平坦面又は非平坦面で消失し、
前記第2コイルグループは、前記第1コイルグループに対して、シータ度の回転角で、z軸の周りを回転させられる、
オープンボアコイルシステム。
【請求項2】
前記シータ度の回転角は90度である、請求項1に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項3】
前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループの巻線は交互に配置されている、請求項1又は2に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項4】
コイル巻線の経路が長方形である、請求項1から3のいずれか一項に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項5】
コイル巻線の経路が半円形である、請求項1から3のいずれか一項に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項6】
コイルグループの数で除算された回転角度180度で、互いに対して各々が前記z軸の周りを回転させられる追加の1又は複数のコイルグループを更に備える、請求項1に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項7】
前記第2コイルグループの前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル及び前記第4コイルの設計は、前記第1コイルグループの前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル及び前記第4コイルの設計とは異なる、請求項1から6のいずれか一項に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項8】
前記第1コイルグループのみが励起され、前記第2コイルグループが励起されない場合、前記FFLはx軸上で、θ=0度で生成される、請求項1から7のいずれか一項に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項9】
前記第2コイルグループのみが励起され、前記第1コイルグループが励起されない場合、FFLはy軸上で、θ=90度で生成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項10】
前記FFLをx軸に対してθ度回転させるために、前記第1コイルグループにおける前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル及び前記第4コイルのための励起は、l1a=l1b=-l1c=-l1d=l1cos(phi)であり、前記第2コイルグループにおける前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル及び前記第4コイルの励起は、l2a=l2b=-l2c=-l2d=l2sin(phi)である、請求項1から9のいずれか一項に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項11】
前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループは、前記z軸上の異なる位置に配置される、請求項1から10のいずれか一項に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項12】
前記第1コイルグループ及び前記第2コイルグループにおける前記第1コイル、前記第2コイル、前記第3コイル及び前記第4コイルのすべてが電気回路的に並列である、請求項1から11のいずれか一項に記載のオープンボアコイルシステム。
【請求項13】
磁気粒子イメージングシステムであって、
コンピュータ制御部と、
第1選択フィールド送信ユニットと、
第2選択フィールド送信ユニットと、
第1選択フィールドコイルグループと、
第2選択フィールドコイルグループと
を備え、
前記第1選択フィールド送信ユニット及び前記第2選択フィールド送信ユニットは、z軸と直交する面上の所望のz軸位置にフィールドフリーライン(FFL)を生成して回転させるように適合させられ、
前記第1選択フィールド送信ユニットと前記第2選択フィールド送信ユニットの各々は、各々、送信回路と関連する複数の電源を有し、前記複数の電源及び関連する送信回路は、第1送信回路と関連する第1電源と、第2送信回路と関連する第2電源と、第3送信回路と関連する第3電源と、第4送信回路と関連する第4電源とを少なくとも含み、
前記第1選択フィールドコイルグループは、第1選択フィールドコイルと、第2選択フィールドコイルと、第3選択フィールドコイルと、第4選択フィールドコイルとを有し、前記第1選択フィールドコイルと、前記第2選択フィールドコイルと、前記第3選択フィールドコイルと、前記第4選択フィールドコイルとには、それぞれの第1電流(l1a)と、第2電流(l1b)と、第3電流(l1c)と第4電流(l1d)が供給され、
前記第2選択フィールドコイルグループは、第1選択フィールドコイルと、第2選択フィールドコイルと、第3選択フィールドコイルと、第4選択フィールドコイルとを有し、前記第1選択フィールドコイルと、前記第2選択フィールドコイルと、前記第3選択フィールドコイルと、前記第4選択フィールドコイルとには、それぞれの第1電流(l2a)と、第2電流(l2b)と、第3電流(l2c)と、第4電流(l2d)が供給され、
それぞれの前記第1選択フィールドコイルグループ及び前記第2選択フィールドコイルグループにおける前記第1選択フィールドコイル、前記第2選択フィールドコイル、前記第3選択フィールドコイル及び前記第4選択フィールドコイルは、並んで配置されたコイルペアとして位置しており、交流電流が供給され、
前記第1選択フィールドコイルグループ及び前記第2選択フィールドコイルグループの前記第1選択フィールドコイル及び前記第2選択フィールドコイルは、第1選択フィールドコイルペアを形成し、前記第1選択フィールドコイルグループ及び前記第2選択フィールドコイルグループの前記第1選択フィールドコイルペアには、同じ方向の電流が供給されることにより、+z及び-zから成る群から選択された第1z方向に磁界が生成され、
前記第1選択フィールドコイルグループ及び前記第2選択フィールドコイルグループの前記第3選択フィールドコイルと前記第4選択フィールドコイルは、第2選択フィールドコイルペアを形成し、前記第1選択フィールドコイルグループ及び前記第2選択フィールドコイルグループの前記第2選択フィールドコイルペアには、前記第1選択フィールドコイルグループの前記第1選択フィールドコイル及び前記第2選択フィールドコイルに対して反対方向の電流が供給されることにより、+z及び-zから成る群から選択された第2z方向に磁界が生成され、前記第2z方向は、前記第1z方向の反対方向であって、前記第1z方向が+zである場合、前記第2z方向は-zであり、前記第1z方向が-zである場合、前記第2z方向は+zであり、
前記コンピュータ制御部は、前記第1選択フィールドコイルグループ及び前記第2選択フィールドコイルグループの前記第1選択フィールドコイル、前記第2選択フィールドコイル、前記第3選択フィールドコイル及び前記第4選択フィールドコイルに印加される電流を制御及び監視するように適合させられ、
前記第1選択フィールドコイルグループの前記第1選択フィールドコイル及び前記第1選択フィールドコイルグループの前記第3選択フィールドコイルは、上部選択フィールドコイルであり、前記第1選択フィールドコイルグループの前記第2選択フィールドコイル及び前記第1選択フィールドコイルグループの前記第4選択フィールドコイルは、下部選択フィールドコイルであり、
前記第2選択フィールドコイルグループの前記第1選択フィールドコイル及び前記第2選択フィールドコイルグループの前記第3選択フィールドコイルは、上部選択フィールドコイルであり、前記第2選択フィールドコイルグループの前記第2選択フィールドコイル及び前記第2選択フィールドコイルグループの前記第4選択フィールドコイルは、下部選択フィールドコイルであり、
前記第1選択フィールドコイルグループの前記上部選択フィールドコイルの前記第1電流(l1a)及び前記第3電流(l1c)の大きさは等しく、一方で符号は反対であり、前記第1選択フィールドコイルグループの前記下部選択フィールドコイルの前記第2電流(l1b)及び前記第4電流(l1d)の大きさは等しく、一方で符号は反対である(l1a=-l1c、l1b=-l1d、l2a=-l2c、l2b=-l2d)、
システム。
【請求項14】
前記第1選択フィールドコイルグループの前記上部選択フィールドコイルは、前記第1送信回路を介して前記第1電源により供給され、前記第1選択フィールドコイルグループの前記下部選択フィールドコイルは、前記第2送信回路を介して前記第2電源により供給され、前記第2選択フィールドコイルグループの前記上部選択フィールドコイルは、前記第3送信回路を介して、前記第3電源により供給され、前記第2選択フィールドコイルグループの前記下部選択フィールドコイルは、前記第4送信回路を介して、前記第4電源により供給される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1選択フィールドコイルグループ及び前記第2選択フィールドコイルグループの前記第1選択フィールドコイル、前記第2選択フィールドコイル、前記第3選択フィールドコイル及び前記第4選択フィールドコイルの各々は、別個の電源により供給される、
請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記電源と送信回路は、z軸方向における前記FFLを変換/スキャンするために、時間変動する信号を生成するように適合させられる、請求項13から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
x軸とy軸により生成された前記面に平行な面上の前記FFLを変換/スキャンするように適合させられるドライブフィールド送信ユニットを更に備える、請求項13から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記ドライブフィールド送信ユニットは、x軸とy軸により生成された前記面に平行な前記面上の視野の中心をシフトするように適合させられるフォーカスフィールド生成器である、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記ドライブフィールド送信ユニットは、波長生成器と、ドライブフィールド送信回路と、少なくとも1つのドライブフィールド及び/又はフォーカスフィールドコイルを更に有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つのドライブフィールド及び/又はフォーカスフィールドコイルは、ヘルムホルツコイル構成を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
zドライブフィールドのSPIOナノ粒子を励起するために、z軸方向のFFLを変換/スキャンするように適合させられる第2ドライブフィールド送信ユニットを更に備える、請求項19又は20に記載のシステム。
【請求項22】
前記第2ドライブフィールド送信ユニットは、第1波長生成器と、第2波長生成器と、前記第1波長生成器と関連する第1ドライブフィールド送信回路と、前記第2波長生成器と関連する第2ドライブフィールド送信回路と、前記第1ドライブフィールド送信回路と関連する第1ドライブフィールドコイルと、前記第2ドライブフィールド送信回路と関連する第2ドライブフィールドコイルとを更に有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
SPIOにより生成された磁化信号を受信するための少なくとも1つの受信コイルを備える、請求項13から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記少なくとも1つの受信コイルを介して受信した前記磁化信号を増幅し、フィルタリングし、デジタル化するための受信回路を更に備える、請求項23に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、磁性粒子イメージングの分野に関し、特に、大容積内部のフィールドフリーライン(FFL)の電子的ステアリングや回転を可能にするオープンボアコイルシステムに関する。
【0002】
磁性粒子イメージング(MPI)は、対象容積内の超常磁性酸化鉄(SPIO)粒子の濃度をイメージングするイメージング方法である。SPIOナノ粒子は静脈内に注射されるか、患者/オブジェクトに経口投与される。SPIO は、血管造影、幹細胞追跡、腫瘍検出などの医療イメージングのためのいくつかの用途がある。
【0003】
MPI方法では、オブジェクトは、フィールドフリー領域(FFR)を含む磁界内に配置される。この領域では、磁界強度が非常に低いため、SPIOナノ粒子が存在する場合、磁化は飽和しない(つまり、磁化は、印加された磁界に平行に増減させることが可能である)。FFRを有するこのフィールドは、SPIO粒子が応答する空間内の領域を選択するために使用されるので、選択フィールド(SF)と呼ばれる。FFRを有するこの磁界は、交流電流が供給される2つの並列コイルを使用するか、または、同極が互いに向き合って、平行に配置された2つの永久磁石を使用して生成することが出来る。この構成で生成されたFFRは、楕円形状をしている。SPIO粒子の磁化曲線は、非線形であって、ランジュバン(Kangevin)関数によってモデル化出来る。この方法は最初、グレッチ(Gleich)とワイゼネッカー(Weizenecker)の「磁性粒子の非線形応答を利用したトモグラフィーイメージング」ネイチャー(Nature)、vol.435,2005,の中で説明されている。
【0004】
ナノ粒子の超常磁性特性のために、中程度の磁界強度レベルで、磁化を飽和させることが可能である。FFRの外側の磁界強度が高いので、FFR領域の外側の粒子は飽和している(つまり、FFRの外側の磁界強度は非常に高いので、磁界強度が増加しても、SPIOナノ粒子の磁化はそれ以上増加しない。)動的磁界(ドライブフィールド(DF)と呼ばれる)がSFに印加されると、FFR内の粒子は、印加された磁界に磁化を揃えることで応答する。反対に、飽和領域の粒子は、磁化はDFによって影響を受けないため、応答しない。FFRの中の磁化ベクトルが変化すると、受信コイル上に電圧が誘導される。誘導された電圧は、再構築可能な、FFR内の粒子濃度に線形に依存する。送信コイルから受信コイルへの結合信号は、受信したSPIO応答よりもはるかに大きくなる。しかし、粒子の磁化反応は非線形であるから、受信信号は、励起周波数の高調波を含んでいる。一般的に、基本周波数成分はフィルタで除去され、高調波周波数成分は粒子濃度の再構成のために使われる。
【0005】
FFRを3Dでスキャンして、3D SPIO濃度画像を得ることが出来る。これは3つの直交軸内のドライブフィールドを使って達成出来る。均一なDFは、同じ電流が供給される2つの並列コイルによって生成出来る(ヘルムホルツ構成)。あるいは、ソレノイド構造も使用することが出来る。ヘルムホルツコイルは、円形断面を有するチューブにコンフォーマルに配置することが出来る。
【0006】
DFの振幅と周波数は、安全な範囲内で選択されなければならない。生体組織に対するDFの適用には2つの効果、すなわち、末梢神経刺激(PNS)と加熱がある。PNSは、MPIのために一般的に使われる周波数帯域(25-50kHz)で、約15mTの磁界強度で観察出来るという報告がある(E.U.Sanitas et al.、「磁気粒子イメージングに於ける磁気刺激の範囲」、IEEE Trans. Med.Imag.、Vol.32、no.9、9月、2013)。加熱効果は、動的励起の持続期間と周波数に依存し、両変数に従って増加する。安全なDFの振幅レベルを使用する視野(FOV)は、ミリメートルオーダーである。オブジェクト内部のFFRを個々の位置でステアリングすることも、または均一なフィールドを使用して安全限界内の非常に低い周波数で連続してステアリングすることも可能である。この比較的高い振幅と低い周波数電界はフォーカスフィールド(FF)と呼ばれる。高周波数で、より低振幅のDFが、ステアリングされたFFRからの信号を得るために、このフィールド上部に加えられる。FFを形成するために特別なコイルを使うことが可能である。あるいは、FFを生成するためにSFまたはDFコイルを使用することが可能である。
【0007】
血管造影などの臨床応用に於いてMPI方法を利用するためには、医師や医療従事者は、そのプロセスを制御し管理するために患者に物理的にアクセス出来ることが必要である。最新のMPIシステムの大部分は、閉じたボアスキャナーを使用しており、オブジェクトは円筒形ボアの内部に置かれ、それ故に、オブジェクトにはアクセス出来ない。
【0008】
MPI方法のFFRは、また、フィールドフリーポイント(FFP)とも呼ばれるが、ミリメートルオーダーの寸法の楕円形をしている。受信した信号はこの領域内のナノ粒子によって誘導されるので、信号レベルは、FFRのサイズが増大するほど増加する。しかし、これは、FFRのサイズによって減少する画像解像度と矛盾する。FFPは3次元でスキャンする必要があるが、これは、特に、人体のような比較的大きなオブジェクトの場合には時間がかかる作業である。臨床環境では、リアルタイムイメージングを可能にし、患者の動きによる画像のゆがみを防止するために、イメージング継続時間を出来るだけ短くすべきである。
【0009】
要約すると、たとえ、MPI分野が急速に発達していても、最新のプロトタイプまたは製品は、小動物実験に適する程度の小さなFOVサイズを有するクローズドボアスキャナに限定される。クリニックでMPI方法を使用するためには、大きなFOVサイズを有する高速オープンボアスキャナが必要である。加えて、印加される磁界レベルは安全限界以下でなければならない。
【0010】
したがって、これらの臨床条件に合致する選択フィールド、フォーカスフィールド及びドライブフィールドを提供出来るコイルシステムに対するニーズが存在する。
【背景技術】
【0011】
現在の最先端技術で提供されるいくつかのオープンボア又は片面MPIシステムが存在する。
【0012】
米国特許9,008,749に、片面MPIシステムが提案されている。FFPは、反対方向に電流が供給される2つのサイズの異なる電磁コイル(一方のコイルが他方のコイルの内部に置かれている)を使用して生成される。DFとFFも、同じ側に置かれたコイルによって生成され、3D電子的FFPのステアリングを可能にしている。FOVサイズを拡大するために、送信機コイルアレイの使用が提供されている。
【0013】
米国特許公開番号2014/0266172では、オープンボアMPIシステムが提案されている。このシステムでは、磁界が2つの異なる周波数で加えられ、受信はこれらの周波数の相互変調積で行われる。画像はオブジェクトを機械的に移動することによって生成される。この方法は、低磁界レベルと高感度などの利点を有するが、オブジェクトは小さいことが必要で、また機械的にスキャンされなければならないので、臨床で使用するのは適さない。
【0014】
米国特許公開番号2014/0306698では、人間のイメージングに適当な大きなFOVを有するMPIコイルシステムが提案されている。このシステムでは、中央のプライマリーコイルグループと、そのプライマリーグループの外側に円形構成で置かれたセカンダリーコイルグループが存在する。中央コイルグループは、SFを生成して、FFPを垂直方向にスキャンする。セカンダリーグループは、FFPを水平方向にスキャンするために使われる。3つの異なるDFが3軸スキャン用に生成される。DFコイルは柔軟に作られ、患者の上に置かれて、側面から患者へのアクセスが可能にすると述べられている。
【0015】
上記のすべての方法は、FFRとして、FFPを使用する。米国特許9,044,160では、フィールドフリーライン(FFL)の使用が提案されている。フィールドフリーラインは、SPIOナノ粒子の磁化が飽和しないように、磁界が非常に低い楕円形、円筒形、あるいは任意な形状の断面を有する管状容積を画定する。実際には、この管状容積の中心経路は、線形、部分的に線形、あるいは非線形である。FFPよりもFFLの方が有利な点は、より高い感度とより短いイメージング時間である。FFLで画像を生成するために、必要な画像解像度に応じて、FFLを、ステップ毎に少なくとも180度カバーするように回転させ、イメージング面(あるいは容積)全体に各角度で変換することが必要である。米国特許第9,044,160に示した方法によれば、FFLは、オブジェクトの周りに円形に配置された8個のコイルを使用して生成される。FFLは、コイルの電流を調整することによって回転させ、追加のDFコイルを使用して変換させることが出来る。FFLは、永久磁石を使用して生成することも出来る(Konkle et al.「投影再構成磁性粒子イメージングシステム」IEEE Trans.Med.Imag, vol.32, no.2,2月、2013年、Murase K, Hiratsuka S, Song R、Takeuchi Y、ネオジウム磁石と磁気勾配計を使用した磁気粒子イメージングのためのシステムの開発、Jpn J Appl Phys. 2014、53(6)067001)しかし、FFLは、電子的に回転させることが出来ず、3Dイメージングにはオブジェクトの機械的回転が必要である。
【0016】
従来技術の片面MPIシステムは、患者へのアクセスと電子的FFRスキャンを可能にする。しかし、これらの方法はポイントフィールドフリー領域(すなわち、フィールドフリーポイント)それ故に、大容積の場合、感度とイメージング期間がこれらのシステムにとって問題になりうる。FFLを使うMPI方法は、これらの問題に対する解決法を提供する。しかしながら、提案されたFFLは、むしろ、オブジェクトのアクセスを防止するためのオブジェクトの回りに複数のコイルを必要とするか、臨床的に実行不可能な機械的な回転を必要とする。
【発明の概要】
【0017】
従って、本発明の目的は、高感度と高速イメージングのために、完全に電子的スキャンをされたFFLを使用して、イメージング中に介入するために患者/オブジェクトにアクセス出来るようにし、その結果、MPI方法を臨床現場での3Dイメージングに使用可能とするオープンボアコイルシステムを提供する。
【0018】
本発明の目的は、容認可能な安全限界の中で大きな視野のイメージングを達成するシステムを提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、MPI処理中に、患者/オブジェクトへのアクセスを提供することである。
【0020】
更に、オープンボア構成で、短時間に大きな容積をイメージングすることが目的である。
【0021】
それ故に、本発明によれば、FFLは2つの平行なコイルペアを並べて配置することによって生成される。これらの2つのコイルグループを使用して、FFLをコイル軸に直交する面内で回転させることが出来る。FFLは、他のコイルと共に同じ軸上に配置されたコイルペアを使用して、FFLの回転面で変換することが出来る。FFLは、非対称のコイル励起によって、直交する面で変換することが出来る。システムのすべてのコイルは平行であるから、イメージング中に、イメージング対象のオブジェクトに側面から到達することが出来る。
【0022】
本発明を特徴付ける新規性の様々な特性は、特に、本開示に添付されかつその一部を形成する特許請求の範囲で指摘されている。本発明と、その動作上の利点、その使用によって達成される特定の目的をより良く理解するために、添付された図面と、本発明の好適な実施形態を説明した説明事項を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下は図面の簡単な説明で、ここに開示された例示的実施形態を図示する目的で提示されており、それらを限定する目的ではない。
【0024】
【
図1】MPI用のフィールドフリーラインを生成し、回転し、変換することを可能にするコイルシステムとそれぞれの電流方向を示している。
【0025】
【
図2】
図1のコイルグループ(1)のx=0面の断面とx軸方向にFFLを生成するために使用されるそれぞれの磁力線を示す。
【0026】
【
図3a】
図2のx=0面で切断したコイルグループの磁界の強度とベクトルのシュミレーション結果を示す。
【0027】
【
図3b】
図2のz=0面で切断したコイルグループの磁界強度とベクトルの趣味レーション結果を示す。
【0028】
【
図4】z軸(5)から見た
図1のコイルシステムを示す。
【0029】
【
図5】FFLの角度で(a)0°,(b)15°,(c)30°,(d)45°,(e)60°,(f)75°,(g)90°,(h)105°、(i)120°、(j)135°、(k)150°、(l)165°について、
図4に示したコイルシステムによって生成されたFFLの様々な回転角度に対する磁界強度を示す。
【0030】
【
図6a】z軸から見て、x軸及びy軸によって生じる平面に平行な平面内のFFLをスキャン/変換させるために選択フィールドコイルシステムと統合されたドライブフィールドコイルの実施形態を示す。
【0031】
【
図6b】xから見て、x軸及びy軸によって生じる平面に平行な平面内のFFLをスキャン/変換させるために選択フィールドコイルシステムと統合されたドライブフィールドコイルの実施形態を示す。
【0032】
【
図7a】z軸から見て、FFL軸(12)に直交する任意の方向のFFLをスキャン/変換させるために選択フィールドコイルシステムと統合されたドライブフィールドコイルの実施形態を示す。
【0033】
【
図7b】z軸から見て、FFL軸(12)に直交する任意の方向のFFLをスキャン/変換させるために選択フィールドコイルシステムと統合されたドライブフィールドコイルの実施形態を示す。
【0034】
【
図8】y軸方向に磁界とそれぞれの磁力線を生成するためのドライブフィールドコイルの実施形態を示す。
【0035】
【
図9】y軸方向に磁界とそれぞれの磁力線を生成するためのドライブフィールドコイルグループの実施形態を示す。
【0036】
【
図10】提案されたコイルシステムが使われている臨床MPIシステムの実施形態を示す。
【0037】
【
図11】提案されたコイル設定の送受信システムの例を示す。
【0038】
【
図12】
図1に示したものと同様のDタイプコイルシステムと、MPI用の磁力線の生成、回転、変換を可能にするそれぞれの電流方向を示す。
【0039】
【
図13】
図12に示したコイルシステムのz軸方向の図を示す。
【0040】
【
図14】90度の扇形コイルから成り、MPI用の磁力線の生成、回転、変換を可能にする単層コイルシステムを示す。
【0041】
【
図15】
図14に示したコイルシステムのz軸方向の図を示す。
【0042】
【
図16】60度回転したDタイプコイルからなり、MPI用の磁力線の生成、回転、平行を可能にする3層コイルシステムのz軸方向の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
オープンボアFFL装置の為の提案されたコイルシステムの選択フィールドコイルは、2つのコイルグループ(1、2)より成る。コイル(1a)、(1b)、(1c)、(1d)がコイルグループ(1)を形成し、電流l1a, l1b、l1c、l1dそれぞれが供給される。コイル(2a)、(2b)、(2c)、(2d)がコイルグループ(2)を形成し、電流l2a, l2b、l2c、l2dそれぞれが供給される。1つのコイルグループ内のコイルは、隣り合って配置され、コイルペアとして位置しており、交流方向が供給される(
図1)。コイルグループ(1)の磁界分布は、
図2のy軸(4)とz軸(5)によって生じる平面上に示されている(この場合、コイルグループ(2)は励起されていない)。コイル(1a)、(1b)にz方向(6)に同一電流方向が供給され、z方向(6)に磁界が生成される。コイル(1c)、(1d)にはコイルペア(1a-1b)に対して反対の電流方向が供給され、-z方向(7)に磁界が生成される。磁界のx(3)成分、y(4)成分は、上部(1a、1c)と下部(1b、1d)コイルの中間面(x(3)軸とy(4)軸によって生じる面)で消失する。磁界のz軸成分は、コイルペア(1a-1b)と(1c-1d)の間の中間平面(x(3)軸とz(5)軸によって生じる面)で消失する。従って、FFL(8)が、x軸(3)と整列して生成される。そのような構成のコンピュータシュミレーションモデルを使用して得た磁界分布を
図3aに示す。
図3aは、y軸(4)とz軸(5)によって生じる平面上の磁界分布を示している。
図3bはx軸(3)とy軸(4)によって生じる平面上の磁界分布を示している。
【0044】
コイルグループ2(2)はコイルグループ(1)と同様の構成を有しているが、z軸(5)を中心にして90度回転させられている。
図4では、
図1のコイルシステムがz軸(5)に沿って示されている。FFLは、コイルグループ(1)、(2)の電流を調整することによって、x軸(3)とy軸(4)によって生じる平面上を、x軸(3)に対して任意の角度θまで回転させられ得る。
図4に於いて、(12)はFFLの方向を示し、(14)はFFL方向に直交する方向を示している。コイルグループ(2)が励起されていない場合、FFLはx軸(3)の上に生成され、θ=0度である。同様に、コイルグループ(1)が励起されていない場合、FFLはy軸(4)上に生成され、θ=90度である。一般的に、FFLをx軸(3)に対して、θ度(15)回転させるために、コイルグループ(1)のコイルの励起は、l1a=l1b=-l1c=-l1d=l
1cos(phi)であるべきである。同様に、コイルグループ(2)のコイルの励起は、l2a=l2b=-l2c=-l2d=l
2sin(phi)であるべきである。好適な実施形態では、電流の振幅l
1、l
2は、FFL)軸(14)に直交する磁界勾配が回転角度(15)とは独立しているように配置しなければならない。
【0045】
図5に於いて、FFLの回転が、
図4に示したものと同様の長方形コイルシステムのために15度ステップでシュミレートされている。図は、x軸(3)とy軸(4)によって生じる面(xy面)に示されている。白い実線は、コイルグループ(1)の位置を示しており、白の破線はコイルグループ(2)の位置を示している。黒の実線は、FFLが直線であり、位置の関数(FFL勾配)としての磁界の変化率がすべての回転角度で一定である容積を示している。これは、MPI(つまり、画像解像度、感度)の能力が最大となるプライマリー視野である。しかしながら、FFLは、より大きな容積に伸展し、イメージングは依然、実用的である。視野の範囲は、イメージングシステムの性能要件のためのFFL勾配の許容劣化に依存する。
【0046】
xy平面に2D画像を生成するためには、FFLを、時間変化するドライブフィールドを使って、回転角度(15)毎に、FFL(14)に直交する方向にスキャン/変換すべきである。このドライブフィールドは、以降の説明では、xyドライブフィールドと呼ばれる。電子的変換と回転を可能にする実施形態のためのz軸(5)とx軸(3)がそれぞれ
図6aと
図6bに示されている。x軸を切断した様子が、(11)によって描かれた面上に示されている。FFL軸(12)に直交するFFLを変換するために、均一な磁界が、z軸(5)上のヘルムホルツコイルペア(13a、13b)を使用して生成される。このコイルペアはまた、視野(16)(イメージングスペース)を拡大するために、つまり、フォーカスフィールド生成器として使うことが出来る。ドライブ磁界は、z軸(5)と平行であるから、SPIOナノ粒子の磁化もz軸方向である。それ故に、受信コイルは、ナノ粒子の応答を得るためにz軸方向において高感度であるべきである。(13)は受信コイルとして使うことが出来る。あるいは、オープンボア要件に反することなく、別々のドライブフィールド、フォーカスフィールド、受信コイルは、この軸方向で使用することが出来る。
【0047】
z軸(17)方向のイメージング平面の位置は、上部(1a、2a、1c、2c)と下部(1b、2b、1d、2d)選択フィールドコイルの励起振幅比を変化させることによって選択することが出来る。この比が1であった場合、FFLとイメージング平面は、上部コイル(1a、2a、1c、2c)と下部(1b、2b、1d、2d)コイルの間の中間面上にある。上部コイル(1a、2a、1c、2c)の励起振幅が、下部コイル(1b、2b、1d、2d)の励起振幅より高い場合には、イメージング面は、z軸(5)上の下部コイル(1b、2b、1d、2d)により接近している。上部コイル(1a,2a,1c,2c)の励起振幅が下部コイル(1b、2b、1d、2d)の励起振幅より低い場合には、イメージング面(17)はz軸(5)上の上部コイル(1a、2a、1c、2c)により接近している。この状況が
図6bに示されている。所望のイメージング面位置のための上部コイル(1a,2a,1c,2c)と下部コイル(1b、2b、1d、2d)の必要な励起振幅は、分析及び/または数値磁界計算方法を使って決定することが出来る。
図6bは、z軸(5)のスライス選択が、提案された構成で可能となる好適な実施形態を示す。選択フィールドコイル(1,2)は、FFLを生成して、そのFFLをz軸(5)の回りに回転して、z軸方向のFFLを変換するために使われる。ドライブフィールドコイル(13)を視野におけるSPIOナノ粒子を励起するために、x軸(3)とy軸(4)によって生じる面に平行な任意の面上でFFLを駆動するために使われる。これらのコイルは、イメージング容積を拡大するために、視野の中心をシフトするためにも使われる。
【0048】
z軸(5)上のイメージング面をスキャンして、電子的回転と変換によって、各々のイメージング面で2次元イメージングを実行することにより、3次元でのイメージングが可能となる。z軸(5)方向にはドライブフィールドが存在しないので、z軸(5)方向の画像解像度は、x軸(3)とy軸(4)によって生じる面の画像解像度よりも低い。z軸(5)方向の画像解像度は、時間変化するドライブフィールドを使ってz軸上のFFLをスキャンすることによって改善することが出来、これによって、FFLはz軸方向に変換する。本明細書の以下の部分では、このドライブフィールドはz軸フィールドと呼ぶことにする。これは、上部(1a,2a,1c,2c)と下部(1b、2b、1d、2d)選択フィールドコイルに交流電流を印加することによって達成可能である。この交流電流の振幅は静的(選択フィールド)磁界を生成するのに必要な電流よりはるかに小さい。別の実施形態は、選択フィールドコイルシステムと同様の外部z軸ドライブフィールドコイルシステムを使用している。この実施形態は、平面(11)のz軸(5)とx軸(3)から見た
図7aと
図7bに示されている。コイルグループ(9)、(10)は、z軸(5)方向のフィールドフリーラインのスキャンに必要なドライブフィールドを生成する。コイルグループ(9)、(10)の電流方向は、上部(9a,9c、10a,10c)と下部(9b,9d、10b,10d)コイルによって誘導された磁界が構造上視野に加わるように配置される。コイルグループ(9)は、y軸(4)方向に時間変化する磁界を生成する。これを
図8に示す。磁界(18)を生成するコイル電流方向を
図9に示す。同様に、コイルグループ(10)はx軸(3)方向に時間変化する磁界を生成する。コイルグループ(9)、(10)の励起振幅は、ドライブ磁界方向が、FFL方向(12)と平行になるように配置されるべき、つまり、z軸ドライブフィールド方向は、FFLの回転方向のために記述された同様の方法で、角度(15)に回転させられるべきである。本実施形態は、選択フィールドコイルがz軸フィールドを生成するために使われる場合に提供される低周波制限を解除するので好ましい。z軸ドライブフィールドは、上部コイル(9a,9c、10a,10c)又は下部コイル(9b,9d、10b,10d)だけを使用して生成することが出来る。この場合は、磁界振幅は反対側(ドライブコイルが存在しない側)に行くに従って減少し、コイル電流の振幅の要件が増加する。
【0049】
上記の方法を使用して、FFL(8)を、x軸(3)とy軸(4)によって生じる平面に平行な任意の平面上とz軸方向(5)に電子的に移動しスキャンすることが出来る。FFLは、機械的な回転の必要無しに、FOV(16)の内部で完全に電子的に回転させることも出来る。コイルは、当業者によって、必要な解像度とFOVサイズに従って最適化され得る。すべてのコイルが平行であるため、MPIのFFLデータ取得/イメージングプロセスの期間中、患者/オブジェクトにアクセス可能な側面には障害物がない。x軸(3)とy軸(4)によって生じる平面上にありかつ平行なイメージングシステムの視野は、コイルの設計に依存しており、人体のような大きい対象物に対応することが出来る。臨床的使用の実例が
図10に示してある。イメージングシステム(19a)と(19b)の上部(19a)と下部(19b)部分の間に患者は横になり、(19a)と(19b)は、コンピュータ制御装置(20)を使用して選択可能な視野をスキャンするために必要なコイルとハードウエアを備えている。
【0050】
記述したMPIシステムの好適な実施形態が
図11に示されている。コンピュータ制御装置(20)はイメージング容積とパラメータを選択するためのユーザーインターフェースを備えている。画像シーケンス計画も(20)によって実行される。選択フィールドは、選択フィールド送信ユニット(21)、(22)を使用して生成される。選択フィールド送信ユニットは、z軸(5)に直交する面上の所望のz軸位置でFFLを生成し回転するために使われる。各々の選択フィールド送信ユニットは、電源(23a、23b、23c、23d)と、フィルタや送信ワイヤなどの必要な構成要素を備える回路(24a、24b、24c、24d)と、選択フィールドコイルペア(25、26、27、28)を備えている。コンピュータ(20)は、選択フィールドコイル(1、2)に送信した電流を制御し、モニターする。上で説明し、かつ
図1に示すように、上部(あるいは下部)選択フィールドコイルの電流の大きさは等しいが、それぞれの符号は反対(l1a=l1c、l1b=l1d、l2a=l2c、l2b=l2d)である。それ故に、少なくとも2つの電源(23)がコイルグループ毎に必要である。好適な実施形態では、
図10で(25)で示されるコイルグループ1(1a、1c)の上部コイルペアには、送信回路(24a)を経由して電源(23a)によって電流が供給される。
図10の(26)で示されるコイルグループ1(1b、1d)の下部コイルペアには、送信回路(24b)を経由して電源(23b)によって供給される。
図10の(27)で示されるコイルグループ2(2a、2c)の上部コイルペアには、送信回路(24c)を経由して電源(23c)によって供給される。
図10の(28)で示されるコイルグループ1(1b、1d)の下部コイルペアには、送信回路(24d)を経由して電源(23d)によって供給される。あるいは、各々の選択フィールドコイルには別々の電源によって供給することも出来る。電源からの出力電流は、システムが正常に動いているか確認するためにモニターされる。これは起こり得る障害を検出するために必要である。
【0051】
xyドライブフィールド、zドライブフィールドは、ドライブフィールド送信ユニット(34)、(35)を使用して生成される。ドライブフィールド励起のタイミングと強度は、制御コンピュータ(20)を使ったイメージング手続きの前に計画される。ドライブフィールド送信ユニット(34)は、FFLが、視野の中のSPIOナノ粒子を励起するためにx軸(3)とy軸(4)によって生じる面に平行に位置している面上で、FFLを移動しスキャンするために使用される。(34)は、FFLがx軸(3)とy軸(4)によって生じる面に平行に位置している面上で、視野の中心をシフトさせるためのフォーカスフィールド生成器として使用することも出来る。ドライブフィールド送信ユニット(34)は、波形生成器(30a)と、ドライブフィールド送信回路(31a)とドライブフィールドコイル(29a)とを備える。ドライブフィールド送信回路(31a)は、ドライブフィールドに必要な電流を供給するために、アンプ、整合回路、フィルタなどの構成要素を備えている。波形生成器(30a)出力(波長、周波数、波形、等)は、必要なフィールドフリーライン(FFL)の方向と視野のために、制御装置(20)によって制御される。ドライブフィールドは、コイル(13a)、(13b)を使用して、
図6a、
図6b、
図7a及び
図7bに示すヘルムホルツコイル装置によって生成することが出来る。この場合、(29a)は(13a)と(13b)から成る。ドライブフィールド送信ユニット(35)は、視野(z軸フィールド)内のSPIOナノ粒子を励起するために、z軸(5)のFFLを変換/スキャンするのに使われる。波長生成器(30b)と(30c)は、ドライブフィールドコイル(29b)、(29c)をそれぞれ励起するために、時間と共に変化する電圧/電流を供給するために使われる。波長生成器(30b、30c)出力(振幅、周波数、波形、等)は、必要なフィールドフリーライン(FFL)方向と視野のために、制御装置(20)によって制御される。送信回路(31b)、(31c)は、ドライブコイル(29b)、(29c)に必要な電流を供給するためにアンプ、整合回路、フィルタなどの構成要素を備えている。
【0052】
受信機サイドでは、受信コイル(32)は、印加されたドライブフィールドに対するSPIOナノ粒子を検出するために使われる。受信機コイルは、FOVの回りに位置して、SPIOナノ粒子の時間変化する磁界をピックアップするような方向に向けられている。この装置では補助受信機を使うことが出来るが、ドライブフィールドコイル(29a、29b、29c)は受信機として使うことが出来る。受信機(32)で誘導された信号は、まず、増幅され、フィルタリングされ、受信器回路(33)を使用してアナログデジタルコンバータ(ADC)でデジタル化される。受信したデータは次にMPIイメージを生成するために処理される。
【0053】
受信データから画像を再構成するために、CTイメージングで使われるものと類似のラドン変換ベースのアルゴリズム(T.Knopp、M.Erbe、T.F.Sattel、S.Biederer及T.M.Buzug「フィールドフリーラインを使用した磁気粒子イメージングのためのフーリエ スライス」、Inverse Problems, vol27、no.9、p、095004、2011)を使うことが出来る。あるいは、システムマトリクス方法(J.Rahmer,J.Weizenecker、B.Gleich、及びJ.Borgert.「磁気粒子イメージングに於ける信号符号化:システム機能の属性」、BMC Med.Imag.,vol9, p4, 4月2009年)も使用することが出来る。ラドン変換ベースの方法では、FFLの勾配と直線性は、コイルの設計に制限が加えられるような、FFLの回転と変換の影響を受けることはないと仮定されている。システムマトリクス方法では、公知のナノ粒子濃度を有する小さいオブジェクトが、FOV容積全体にわたってスキャンされ、受信データは対象物の各位置で記録される。これによって、校正システムマトリクスが生成される。患者/オブジェクトのSPIO濃度は、このデータを使用して得られる。または、FFLの様々な回転角度と変換距離に関して、システムの磁界を測定し及び/又はシュミレートすることが出来、このデータを使って、ラドン変換を実行することが出来、FOV全体を通して、均一FFLの勾配と直線性に対する必要性を緩和することが出来る。大きなシステムマトリクスは必要なく、FFLの直線性と勾配に関する前提はないので、この方法はより効果的かつ正確かもしれない。
【0054】
この選択フィールドコイルグループは、異なる垂直位置で分離された分離コイルグループよりむしろ、交互配置巻線を備えることが可能である。
【0055】
矩形形状がこの明細書で使われているが、コイルのためにいかなる形状も使用可能である。事実、最小の電力消費で最良のFFLを得るには形状は最適にする必要がある。Dタイプのコイル(41、42)が使われているコイルシステムが
図12、13に示されている。
【0056】
重層化されたコイルグループを使うよりも、単一コイルアレイを使って、FFLは生成、回転、移動することが出来る。4つのコイルペアが使われている実施形態が
図14に示されている。各々のコイル(51a-d,52a-d)の電流を調整することにより、FFLは、いかなる方向にも生成することが出来る。コイルが等しい振幅と
図15に示す方向で励起された場合、FFLを、y軸(4)方向に生成することが出来る。x軸(3)方向の電流は互いに消し合うが、y軸(4)方向の電流は建設的に結合することに注意する必要がある。本実施形態の利点は、すべてのコイルが同じz軸平面(5)にあるので、
図1の実施形態と比較して低電力消費である。重層構成では、上層は、視野から離れているので、同じ磁界勾配を生成するためにより大きな電流を必要とする。しかし、フィールドの均一性のためのコイル(51、52)の厚さに関する制限がある。例えば、
図14、15のx軸(3)上の電流によって生成された磁界の打消し合いは、これらの電流を流すワイヤが接近している度合い依存する。
【0057】
所与の実施形態でも、コイルシステムは、水平面に於いて互いに90度回転された2つのコイルグループを備えている。一般的に、回転の関数として、FFLの勾配と直線性を増加するために、より多くのコイルグループ(例えば、互いに60度回転させた3つのコイルグループ)を使用することが出来る。水平面で互いに60度回転させた3つのコイルグループ(55a、55b、55c)を使用した例示的な実施形態を
図16に示す。
【0058】
建築選択フィールド及び/又はドライブフィールドブロックを使用して、FFL生成コイルシステム(
図2)である、本発明の、MPIのための多重FFLコイルシステムを実現することが可能である。
【0059】
本発明の原理の適用を示すために、本発明の特定の実施形態を図示し詳細に述べたが、本発明は、その原理から逸脱することなく、その他の方法で実施出来ることを理解されたい。