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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】防舷材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/26 20060101AFI20220203BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
E02B3/26 J
C08J3/24 Z CEQ
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017213932
(22)【出願日】2017-11-06
(65)【公開番号】P2019085755
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野尻 和紀
(72)【発明者】
【氏名】田島 啓
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康彦
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-103275(JP,A)
【文献】特開昭50-095995(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2009-0000376(KR,A)
【文献】実開昭58-092198(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/26
C08J 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを含むゴム組成物の架橋物からなる防舷材であって、前記防舷材の表面に沿って、当該表面の内方領域にジイソシアネート化合物の硬化物を含む硬化領域が形成され、前記表面上にはジイソシアネート化合物の硬化物は存在しない防舷材。
【請求項2】
前記ジイソシアネート化合物は、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート化合物である請求項1に記載の防舷材。
【請求項3】
防舷材の製造方法であって、ゴムを含むゴム組成物を、防舷材の形状に成形して架橋させる工程、架橋させた前記防舷材の表面に、少なくともジイソシアネート化合物を含む処理液を供給して、前記処理液を、前記表面から前記防舷材の内方へ含浸させる工程、前記防舷材の表面上に残った前記処理液を除去する工程、および含浸させた前記処理液中の前記ジイソシアネート化合物を硬化反応させることにより、前記防舷材の表面に沿って、当該表面の内方領域にのみジイソシアネート化合物の硬化物を含む硬化領域を形成する工程を含む防舷材の製造方法。
【請求項4】
前記処理液は、前記ジイソシアネート化合物と、溶解度パラメータが7.5以上、9.7以下の有機溶剤とを含む請求項3に記載の防舷材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、岸壁等に設置されて、船舶の接岸時や係留時等に生じる衝撃や摩擦から船舶や岸壁を保護するために用いられる防舷材と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防舷材としては、全体を弾性材料、とくに架橋性のゴムを含むゴム組成物の架橋物によって一体に形成したゴム製の防舷材が、構造が簡単でしかも壊れにくいため、広く普及している。
ゴム製の防舷材は、架橋性のゴムに、充填剤、架橋成分、添加剤その他を配合して調製したゴム組成物を、所定の防舷材の立体形状に成形するとともに、架橋させて製造される。
【0003】
しかし、ゴム製の防舷材は、岸壁に対して船舶がまっすぐに移動しながら接岸した場合には上記のように壊れにくいものの、船舶が斜め方向に移動しながら接岸した際等には、それ自体が破損したり、岸壁を破損したりしやすいという課題がある。
これは、ゴム製の防舷材の、表面の摩擦が大きいため、上述した船舶の動きに追従して防舷材が不規則に大きく変形され、それによって防舷材に局所的に過剰な応力が加わることが原因であると考えられる。
【0004】
そこで、防舷材の表面を、摩擦の小さい材料からなる表面層で被覆して、船舶に対する摩擦を小さくし、それによって船舶の動きによる防舷材の変形を抑制して、防舷材や岸壁の破損を生じにくくすることが検討されている。
たとえば、特許文献1では、表面層を、超高分子量ポリエチレンによって形成することが提案されている。また、特許文献2では、表面層を、ジエン系ゴムと結晶性ポリオレフィン樹脂とのポリマーブレンドによって形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-59711号公報
【文献】特開平11-36264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載された超高分子量ポリエチレンは、防舷材を形成するゴム組成物の架橋物とは異質の、当該架橋物と比較して硬く、かつ変形しにくい材料である。
そのため、超高分子量ポリエチレンからなる表面層は、防舷材の変形に十分に追従することができず、とくに防舷材を繰り返し変形させた際に、破損したり、防舷材から脱落したりしやすいという課題がある。
【0007】
また、超高分子量ポリエチレンはゴムに比べて高価であり、しかも、ゴム製品としては大型である防舷材の表面層を形成するためには多量の超高分子量ポリエチレンが必要である。そのため、表面層を含む分、防舷材の構造が複雑化することとあいまって、防舷材の大幅なコストアップの原因ともなる。
特許文献2に記載された、ジエン系ゴムと結晶性ポリオレフィン樹脂とのポリマーブレンド物を用いると、超高分子量ポリエチレンからなる表面層に比べて、表面層の柔軟性を向上することはできる。しかし、ゴムの割合が多くなるほど、相対的に表面層の表面の摩擦が大きくなることから、特許文献2では、結晶性ポリオレフィン樹脂の割合を50~80重量%と多めに設定している。
【0008】
そのため、摩擦を低減する効果は得られるものの、表面層は、依然として、防舷材を形成するゴム組成物の架橋物とは異質の、硬く、かつ変形しにくい状態であって、防舷材の変形には十分に追従することができない。そして、とくに防舷材を繰り返し変形させた際に、表面層が破損したり、防舷材から脱落したりしやすいという課題を解消することはできない。また、表面層を含む分、防舷材の構造が複雑化して、防舷材のコストアップにもなる。
【0009】
本発明の目的は、破損や脱落等を生じる表面層を形成せずに、全体をゴム組成物の架橋物によって一体に形成した簡単な構造を維持しながら、なおかつ表面の摩擦が低減され、船舶の動きによる不規則でかつ大きな変形が抑制されて、それ自体や岸壁の破損を生じにくい防舷材と、その製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ゴムを含むゴム組成物の架橋物からなる防舷材であって、前記防舷材の表面に沿って、当該表面の内方領域にジイソシアネート化合物の硬化物を含む硬化領域が形成され、前記表面上にはジイソシアネート化合物の硬化物は存在しない防舷材である。
また、本発明は、防舷材の製造方法であって、ゴムを含むゴム組成物を、防舷材の形状に成形して架橋させる工程、架橋させた前記防舷材の表面に、少なくともジイソシアネート化合物を含む処理液を供給して、前記処理液を、前記表面から前記防舷材の内方へ含浸させる工程、前記防舷材の表面上に残った前記処理液を除去する工程、および含浸させた前記処理液中の前記ジイソシアネート化合物を硬化反応させることにより、前記防舷材の表面に沿って、当該表面の内方領域にのみジイソシアネート化合物の硬化物を含む硬化領域を形成する工程を含む防舷材の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、破損や脱落等を生じる表面層を形成せずに、全体をゴム組成物の架橋物によって一体に形成した簡単な構造を維持しながら、なおかつ表面の摩擦が低減され、船舶の動きによる不規則でかつ大きな変形が抑制されて、それ自体や岸壁の破損を生じにくい防舷材と、その製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ゴムを含むゴム組成物の架橋物からなり、その表面に沿って、当該表面の内方領域にジイソシアネート化合物の硬化物を含む硬化領域が形成され、上記表面上にはジイソシアネート化合物の硬化物は存在しない防舷材である。
上記本発明の防舷材は、たとえば、下記の各工程を経る本発明の製造方法によって製造することができる。
【0013】
ゴムを含むゴム組成物を、防舷材の形状に成形して架橋させる工程。
架橋させた防舷材の表面に、少なくともジイソシアネート化合物を含む処理液を供給して、当該処理液を、記表面から防舷材の内方へ含浸させる工程。
防舷材の表面上に残った処理液を除去する工程。
含浸させた処理液中のジイソシアネート化合物を、たとえば、空気中の水分等によって硬化反応させることにより、防舷材の表面に沿って、当該表面の内方領域にのみジイソシアネート化合物の硬化物を含む硬化領域を形成する工程。
【0014】
上述したように、硬化領域は、防舷材の表面から内方へジイソシアネート化合物を含む処理液を含浸させ、含浸させたジイソシアネート化合物を硬化させて、防舷材の表層部、すなわち防舷材の表面より内方で、かつ当該表面の近傍のごく薄い領域に形成される。
形成された硬化領域は、防舷材の全体を形成するゴム組成物の架橋物中に、ジイソシアネート化合物の硬化物が混在した状態とされ、防舷材の表面において露出される。そのため、硬化領域に含まれるジイソシアネート化合物の硬化物によって、防舷材の表面の硬度を高めて、当該表面の摩擦を低減することができる。
【0015】
防舷材の、硬化領域よりさらに内方には、ゴム組成物の架橋物からなり、ジイソシアネート化合物が含浸されていない未含浸領域が形成される。未含浸領域は、ごく薄い硬化領域に対して、防舷材の体積の大部分を占める上、ゴム組成物の架橋物からなり、ゴムとしての良好な特性を維持している。そのため、防舷材の全体に、良好な緩衝性能を付与することができる。
【0016】
しかも、硬化領域および未含浸領域を含む防舷材の全体は、ゴムの架橋物によって一体に形成されるため、従来の、防舷材の表面に被覆される表面層のように、破損したり脱落したりすることがない。また、防舷材の構造が複雑化することもない。よって、防舷材の全体を、ゴム組成物の架橋物によって一体に形成した簡単な構造を維持しながら、なおかつ防舷材の表面の摩擦を小さくすることができる。
【0017】
したがって、種々の課題を生じる表面層を形成しない上述した簡単な構造を維持しながら、表面の摩擦が低減され、船舶の動きによる不規則でかつ大きな変形が抑制されて、それ自体や岸壁の破損を生じにくい防舷材と、その製造方法とを提供することができる。
《ジイソシアネート化合物》
ジイソシアネート化合物としては、空気中の水分等によって硬化反応する種々のジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0018】
ジイソシアネート化合物としては、たとえば、無変性のジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)や、ピュアMDIを変性したカルボジイミド変性MDI、ウレタン変性MDI等の変性MDI、あるいはトリレンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の1種または2種以上を用いることができる。
とくに、室温(15~35℃)で液状を呈するジイソシアネート化合物が好ましい。
【0019】
ピュアMDI等の、室温で固体であるジイソシアネート化合物を防舷材に含浸させるためには、融点以上に加熱して融液としたり、任意の溶剤に溶解して溶液としたりすればよい。
しかし、室温で固体であるジイソシアネート化合物の融液を防舷材の表面に供給すると、表面に残ったジイソシアネートは、急速に冷却されて固形化する。同様に、室温で固体であるジイソシアネート化合物の溶液を防舷材の表面に供給すると、表面に残ったジイソシアネートは、溶液が急速に乾燥されることで析出して固形化する。
【0020】
固形化したジイソシアネート化合物は、防舷材の表面に留まって、さらに内方へは含浸されない。そのため、室温で固体であるジイソシアネート化合物を用いた場合には、防舷材の表面から内方に含浸できる量が少なくなって、防舷材の表面を低摩擦化する効果が不足する傾向がある。
これに対し、室温で液状のジイソシアネート化合物は、それ自体が含浸性を有するため、たとえ溶液の状態で防舷材の表面に供給して、溶液が急速に乾燥されても、防舷材の内方へさらに含浸させることができる。そのため、防舷材の表層部に十分な量を含浸させて、防舷材の表面を良好に低摩擦化することができる。
【0021】
室温で液状を呈するジイソシアネート化合物としては、たとえば、カルボジイミド変性MDI、ウレタン変性MDI等の変性MDI、トリレンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。
中でも、より少量の含浸で、防舷材の表層部の硬度を高めて、防舷材の表面の摩擦を低減できる点で、分子構造の対称性が高いため結晶性の高い変性MDI、とくにカルボジイミド変性MDIが好ましい。
【0022】
《ゴム組成物》
〈ゴム〉
ゴムとしては、架橋性を有する種々のゴムを用いることができる。とくに、防舷材に良好な緩衝性能を付与するために、天然ゴムが好適に用いられる。天然ゴムとしては、たとえば、TSR-20、RSS#3等の各種グレードの天然ゴムが挙げられる他、脱蛋白天然ゴム等を用いることもできる。
【0023】
ゴムとしては、天然ゴムを単独で用いてもよいし、天然ゴムと他のゴムとを併用してもよい。
他のゴムとしては、たとえば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムの1種または2種以上が挙げられる。
【0024】
中でも、他のゴムとしてはIR、BR、SBR、IIR、NBR、CR、エピクロルヒドリンゴム等の極性ゴムが好ましい。極性ゴムの方が、非極性ゴムよりもジイソシアネート化合物および空気中の水分を取り込みやすいためである。すなわち、少なくとも極性ゴムを含むゴム組成物によって防舷材を形成することにより、当該防舷材の表層部に、適量のジイソシアネート化合物を含浸させて、硬化反応させることができる。そのため、防舷材の表層部に、適度の厚みを有し、表面を良好に低摩擦化しうる、連続した硬化領域を形成することができる。
【0025】
なお、とくに、架橋物のゴム物性を適度にバランスさせて、防舷材に良好な緩衝性能を付与することも併せ考慮すると、他のゴムとしては、SBRが好ましい。
SBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、本発明ではいずれのタイプのSBRを用いることもできる。
非油展タイプのSBRとしては、たとえば、JSR(株)製のJSR(登録商標)1500〔結合スチレン量:23.5%〕、JSR1502〔結合スチレン量:23.5%〕、JSR1503〔結合スチレン量:23.5%〕、JSR1507〔結合スチレン量:23.5%〕等の1種または2種以上が挙げられる。
【0026】
また、油展タイプのSBRとしては、たとえば、JSR(株)製のJSR1732〔結合スチレン量:23.5%、油量:27.3%〕、JSR0122〔結合スチレン量:37%、油量:25.4%〕、JSR1778〔結合スチレン量:23.5%、油量:27.3%〕、JSR1778N〔結合スチレン量:23.5%、油量:27.3%〕等の1種または2種以上が挙げられる。
【0027】
天然ゴムとSBRとを併用する場合、ゴムの総量100質量部中に占めるSBRの配合割合は10質量部以上、とくに20質量部以上であるのが好ましく、50質量部以下、とくに40質量部以下であるのが好ましい。
この範囲よりSBRが少ない場合には、SBRを併用することによる、前述した、防舷材の緩衝性能を向上する効果が十分に得られない場合がある。また、耐摩耗性が小さくなって、防舷材を繰り返し船舶の接岸に使用した際に損耗しやすくなるなど、防舷材の耐久性が不十分になる場合もある。
【0028】
一方、上記の範囲よりSBRが多い場合には、引裂き強度が小さくなって、たとえば、微小な傷などを生じた状態で防舷材を繰り返し船舶の接岸に使用した際にクラックを生じやすくなる場合がある。
なお、油展タイプのSBRを用いる場合、配合割合は、油展タイプのSBR中に含まれる固形分(ゴム)としてのSBR自体の割合とする。
【0029】
〈架橋成分〉
ゴム組成物には、ゴムを架橋させるため、従来同様に架橋成分を配合する。架橋成分としては、架橋剤、架橋促進剤が挙げられる。
(架橋剤)
架橋剤としては、たとえば、硫黄系架橋剤、過酸化物系架橋剤等が挙げられ、とくに硫黄系架橋剤が好ましい。
【0030】
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、オイル入り粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等の硫黄や、テトラメチルチウラムジスルフィド、N,N-ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物などが挙げられ、とくに硫黄が好ましい。
硫黄の配合割合は、任意に設定できるものの、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
【0031】
硫黄の配合割合がこの範囲未満では、ゴム組成物の全体での架橋速度が遅くなり、架橋に要する時間が長くなって、防舷材の生産性が低下する場合がある。
また、硫黄の配合割合が上記の範囲を超える場合には、架橋後の圧縮永久ひずみが大きくなったり、過剰の硫黄が防舷材の表面にブルームしたりする場合がある。
なお、たとえば、硫黄としてオイル入り粉末硫黄、分散性硫黄等を用いる場合、配合割合は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の割合とする。
【0032】
(架橋促進剤)
架橋促進剤としては、たとえば、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等の無機促進剤や、下記の各種の有機促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。
1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩等のグアニジン系促進剤。
【0033】
2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系促進剤。
N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系促進剤。
テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系促進剤。
【0034】
ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系促進剤。
N,N′-ジフェニルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、N,N′-ジエチルチオ尿素等のチオウレア系促進剤。
架橋促進剤の配合割合は、その種類によって任意に設定できるが、通常は、ゴムの総量100質量部あたり0.2質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
【0035】
〈その他〉
ゴム組成物には、さらに必要に応じて充填剤、老化防止剤、架橋助剤、可塑剤、ワックス、着色剤、粘着付与剤等を、任意の割合で配合してもよい。
(充填剤)
充填剤としては、たとえば、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。とくに、加工性やゴムに対する分散性等を考慮するとカーボンブラックが好ましい。
【0036】
カーボンブラックとしては、ゴムの補強剤、充填剤として機能しうる種々のカーボンブラックを用いることができる。
ただし、カーボンブラックは、ゴムの総量に対する配合割合と補強効果との兼ね合い等を考慮すると、ゴムの総量よりも少量の配合で架橋物のゴム硬さを大きくして、ゴム組成物の架橋物からなる防舷材の緩衝性能を、より一層効率よく向上できることが望ましい。そのため、カーボンブラックとしては、比較的粒径が小さく、かつストラクチャが発達した、表面積の大きいグレードのカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0037】
とくに、窒素吸着比表面積が50m/g以上、100m/g以下で、かつDBP吸油量が90cm/100g以上、110cm/100g以下であるカーボンブラックが好適に用いられる。
窒素吸着比表面積が50m/g未満であるカーボンブラックは粒径が大きすぎ、またDBP吸油量が90cm/100g未満であるカーボンブラックはストラクチャの発達が不十分である。そのため、このいずれのカーボンブラックを用いた場合にも、上述した補強効果が十分に得られず、架橋物のゴム硬さが小さくなりすぎて、防舷材に良好な緩衝性能を付与できない場合がある。
【0038】
一方、窒素吸着比表面積が100m/gを超えるカーボンブラックは粒径が小さすぎ、またDBP吸油量が110cm/100gを超えるカーボンブラックはストラクチャの発達が過剰である。そのため、このいずれのカーボンブラックを用いた場合にも、上述した補強効果が強くなりすぎる傾向がある。そして、架橋物のゴム硬さが大きくなりすぎたり、切断時伸びが小さくなりすぎたりして、やはり防舷材に良好な緩衝性能を付与できない場合がある。
【0039】
これに対し、窒素吸着比表面積およびDBP吸油量がともに上述した範囲であるカーボンブラックを選択的に用いることにより、適度の補強効果を確保して、防舷材に良好な緩衝性能を付与することができる。
これらの特性を満足するカーボンブラックとしては、たとえば、東海カーボン(株)製のシースト3〔HAF、窒素吸着比表面積:79m/g、DBP吸油量:101cm/100g〕、シーストN〔LI-HAF、窒素吸着比表面積:74m/g、DBP吸油量:101cm/100g〕等の少なくとも1種が挙げられる。
【0040】
カーボンブラックの配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり30質量部以上、とくに40質量部以上であるのが好ましく、90質量部以下、とくに80質量部以下であるのが好ましい。
カーボンブラックの配合割合がこの範囲未満では、十分な補強効果が得られず、架橋物のゴム硬さが小さくなりすぎて、防舷材に良好な緩衝性能を付与できない場合がある。また、とくに高温環境下で、経時変化による防舷材の緩衝性能の低下やクラック等を生じやすくなる場合もある。
【0041】
一方、カーボンブラックの配合割合が上記の範囲を超える場合には、補強効果が過剰になり、架橋物の切断時伸びが小さくなりすぎて、やはり防舷材に良好な緩衝性能を付与できない場合がある。
また、架橋物中で隣り合うカーボンブラック同士の距離が近すぎるため、防舷材を繰り返し変形させた際にカーボンブラックが摩耗しやすくなって、経時変化による防舷材の緩衝性能の低下やクラック等を生じやすくなる場合もある。
【0042】
さらに、ゴム組成物の混練性や加工性等が低下する場合もある。
これに対し、カーボンブラックの配合割合を上記の範囲とすることにより、混練性や加工性等を良好に維持しながら、カーボンブラックによる補強効果を適度の範囲に調整して、防舷材に良好な緩衝性能を付与することができる。また、経時変化による緩衝性能の低下やクラック等を生じにくくすることもできる。
【0043】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、耐候性老化防止剤、耐熱老化防止剤等の、主な機能によって分類される種々の老化防止剤の1種または2種以上が挙げられる。
老化防止剤の具体例としては、たとえば、N-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体等が挙げられる。
【0044】
とくに、日光亀裂、オゾン亀裂、および屈曲亀裂などの防止効果に優れたN-フェニル-N′-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンが好ましい。
老化防止剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
(架橋助剤)
架橋助剤としては、たとえば、酸化亜鉛等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の架橋助剤の1種または2種以上が挙げられる。
【0045】
架橋助剤の配合割合は、個別に、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
(可塑剤)
可塑剤としては、たとえば、オイルや液状ゴムが挙げられる。
このうちオイルとしては、たとえば、出光興産(株)製のダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW、NP、NS、NR、NM、AC、AH等の各種グレードのオイルの1種または2種以上が挙げられる。
【0046】
また液状ゴムとしては、たとえば、液状イソプレンゴム、水添液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム、あるいはこれらの末端変性物等の1種または2種以上が挙げられる。とくに、天然ゴムとの相溶性に優れた液状イソプレンゴムが好ましい。
液状イソプレンゴムとしては、たとえば、(株)クラレ製のクラプレン(登録商標)LIR-30(数平均分子量:28000)、LIR-50(数平均分子量:54000)等が挙げられる。
可塑剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり10質量部以上であるのが好ましく、30質量部以下であるのが好ましい。
【0047】
(ワックス)
ワックスとしては、たとえば、日本精蝋(株)製のオゾエース(登録商標)0355、大内新興化学工業(株)製のサンノック(登録商標)、サンノックN、サンノックP等が挙げられる。これらのワックスは、老化防止剤との併用によって日光亀裂、オゾン亀裂を防止するために機能する。
ワックスの配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、3質量部以下であるのが好ましい。
ゴム組成物は、たとえば、上記各成分のうち架橋成分以外の各成分を、まずバンバリミキサ等を用いて混練したのち、さらに架橋成分を加えて混練する等して調製できる。
【0048】
《防舷材》
調製したゴム組成物を用いて防舷材を作製する工程は、従来同様でよい。すなわち、作製する防舷材の大きさや形状に応じて成形、シート成形、組み立て、および架橋等の任意の工程を組み合わせて防舷材を作製することができる。
【0049】
作製した防舷材の表層部に硬化領域を形成して、本発明の防舷材を製造するためには、前述したように、防舷材の表面に、少なくともジイソシアネート化合物を含む処理液を供給して、上記表面から内方へ含浸させる。
処理液としては、たとえば、室温で固形のジイソシアネート化合物の場合、任意の有機溶剤によって希釈した溶液を用いればよい。一方、室温で液状のジイソシアネート化合物は、そのままで処理液として用いてもよいし、やはり任意の有機溶剤によって希釈した溶液の状態で、処理液として用いてもよい。
【0050】
ただし、防舷材を形成するゴムの種類等にもよるが、防舷材の表面に対する処理液の接触角を小さくして、処理液を迅速に含浸させるためには、液状のジイソシアネート化合物であっても、任意の有機溶剤によって希釈した溶液の状態で、処理液として用いるのが好ましい。
また、有機溶剤としては、1cm3の溶剤が蒸発するのに必要な蒸発熱の平方根で表される溶解度パラメータ(SP値)が7.5以上、9.7以下である有機溶剤を選択して用いるのが好ましい。
【0051】
SP値がこの範囲未満、またはこの範囲を超える有機溶剤を使用したのでは、防舷材の表面に対する処理液の接触角を小さくすることができないため、処理液を迅速に含浸させて表面の摩擦を低減する効果が十分に得られない場合がある。また、圧縮耐久試験を実施すると表面に、クラックの原因となる多数の傷を生じる場合もある。
これに対し、SP値が上記の範囲である有機溶剤は、SP値が7.9~9.0程度である天然ゴム、SBR、BR等のゴムとSP値が近いため、防舷材の表面に対する処理液の接触角を小さくし、処理液をより一層迅速に含浸させて、表面の摩擦をより一層良好に低減することができる。また、圧縮耐久試験を実施した際に、クラックの原因となる傷を生じにくくすることもできる。
【0052】
SP値が上記の範囲にあり、なおかつジイソシアネート化合物の良溶剤である有機溶剤としては、たとえばn-オクタン(SP値:7.6)、トルエン(SP値:8.9)、塩化メチレン(SP値:9.7)等が挙げられる。
処理液を防舷材の表面に供給するためには、たとえば、浸漬法やスプレー法等の、任意の塗布方法を採用することができる。
【0053】
含浸の条件は、とくに限定されないが、温度(環境温度およびジイソシアネート化合物の液温)は室温、すなわち15℃以上であるのが好ましく、35℃以下であるのが好ましい。これにより、ジイソシアネート化合物の急速な硬化反応の進行を抑制しながら、防舷材の表面から内方へ、処理液をできるだけ速やかに含浸させることができる。
また、ジイソシアネート化合物とゴムの組み合わせ等にもよるが、温度が室温で、かつ処理液として、ジイソシアネート化合物を有機溶剤で希釈した溶液を用いる場合、含浸の時間は、10分間以上であるのが好ましく、24時間以下であるのが好ましい。
【0054】
含浸の時間がこの範囲未満では、適量の処理液を含浸させて、適度の厚みを有し、防舷材の表面を良好に低摩擦化しうる、連続した硬化領域を形成できない場合がある。一方、含浸の時間を長くするほど、硬化領域の厚みを大きくして、防舷材の表面を良好に低摩擦化することができる。ただし、含浸の時間が上記の範囲を超える場合には、硬化領域の厚みが大きくなりすぎて、防舷材に、良好な緩衝性能を付与することができない場合がある。
【0055】
これに対し、含浸の時間を上記の範囲とすることにより、防舷材の良好な緩衝性能を維持しながら、適量の処理液を防舷材の表面から内方へ浸透させて、適度の厚みを有し、表面を良好に低摩擦化しうる、連続した硬化領域を形成することができる。
含浸の時間を調整するには、たとえば、浸漬法の場合、作製した防舷材を、ジイソシアネート化合物を含む処理液中に浸漬する時間を、上記の範囲に設定すればよい。また、たとえば、スプレー法の場合は、処理液を防舷材の表面に散布し続ける時間を、上記の範囲に設定すればよい。
【0056】
次いで、所定の含浸時間が経過した時点で、浸漬法の場合は、防舷材を処理液から引き上げ、スプレー法の場合は処理液の散布を停止したのち、防舷材の表面に付着した処理液を除去する。
防舷材の表面に付着した処理液を除去しない場合には、当該表面上に、連続した、または不連続の状態で残った処理液中のジイソシアネート化合物が硬化反応して硬化物が形成される。そのため、前述したように、防舷材の表面が局部的に硬くなったり、当該表面に、硬化物からなる硬い突起が形成されたりする。これに対し、防舷材の表面に付着した処理液を除去することで、これらの問題が生じるのを防止できる。
【0057】
防舷材の表面に付着した処理液を除去するためには、含浸が終了した防舷材の表面を、前述したように、たとえば、不織布製のワイパー等を用いて拭き取るなどすればよい。
そして、表面に付着した処理液を除去した防舷材を、たとえば、所定の温度、湿度環境下で静置して、防舷材の表面から内方へ含浸させたジイソシアネート化合物を、前述したように、空気中の水分等によって硬化反応させる。
【0058】
そうすると、防舷材の表面に沿って、当該表面の内方領域にジイソシアネート化合物の硬化物を含む硬化領域が形成され、前記表面上にはジイソシアネート化合物の硬化物が存在しない防舷材が製造される。
【実施例
【0059】
以下に、本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの実施例、比較例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(ゴム組成物の調製)
ゴムとしては、天然ゴム(TSR20品)80質量部と、非油展タイプのSBR〔前出のJSR(株)製のJSR1502、結合スチレン量:23.5%〕20質量部とを併用した。両ジエン系ゴムの総量100質量部を、下記表1に示す各成分のうち硫黄、およびスルフェンアミド系促進剤以外の各成分とともに、バンバリミキサを用いて混練した。そして、さらに硫黄とスルフェンアミド系促進剤とを加え、2軸オープンロールを用いて混練して、シート状のゴム組成物を調製した。
【0060】
【表1】
【0061】
表1中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部を示す。
カーボンブラック:HAF、前出の東海カーボン(株)製のシースト3、窒素吸着比表面積:79m/g、DBP吸油量:101cm/100g
オイル:前出の出光興産(株)製のダイアナ プロセスオイルNR26
老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、精工化学(株)製のオゾノン(登録商標)6C
ワックス:前出の日本精鑞(株)製のオゾエース0355
酸化亜鉛2種:架橋助剤、三井金属鉱業(株)製
ステアリン酸:架橋助剤、日油(株)製の商品名つばき
硫黄:架橋剤、鶴見化学工業(株)製の金華印5%油入微粉硫黄
スルフェンアミド系促進剤:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)NS-G
【0062】
(防舷材のモデルの製造)
調製したシート状のゴム組成物を、150℃×60分間プレス成形し、架橋させてシートを作製し、作製したシートの表面を、エタノールで拭いて乾燥させた。次いで、作製したシートを、カルボジイミド変性MDIを含む処理液に30分間浸漬したのち引き上げて、外周面に付着した余剰のカルボジイミド変性MDIを、ワイパーを用いて拭き取った。
【0063】
処理液としては、カルボジイミド変性MDI〔BASF INOACポリウレタン(株)製のルプラネート(登録商標)MM-103〕とトルエン(SP値:8.9)の、質量比1:1の溶液を用いた。
また、ワイパーとしては、キュプラ(登録商標)連続長繊維不織布を基布として形成された、旭化成(株)製のベンコット(登録商標)を用いた。
次いで、温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で24時間静置して、表面から内方に含浸させたカルボジイミド変性MDIを硬化反応させて硬化領域を形成して、防舷材のモデルとした。
【0064】
〈実施例2〉
ゴム組成物を架橋させて作製したシートを、ウレタン変性MDIを含む処理液に30分間浸漬したこと以外は実施例1と同様にして防舷材のモデルを製造した。
処理液としては、ウレタン変性MDI〔BASF INOACポリウレタン(株)製のルプラネートMP-102〕とトルエン(SP値:8.9)の、質量比1:1の溶液を用いた。
【0065】
〈実施例3〉
ゴム組成物を架橋させて作製したシートを、ピュアMDIを含む処理液に30分間浸漬したこと以外は実施例1と同様にして防舷材のモデルを製造した。
処理液としては、ピュアMDI〔BASF INOACポリウレタン(株)製のルプラネートMS〕とトルエン(SP値:8.9)の、質量比1:1の溶液を用いた。
〈実施例4〉
ゴム組成物を架橋させて作製したシートを、実施例1で使用したのと同じカルボジイミド変性MDIを含む処理液に20時間浸漬したこと以外は実施例1と同様にして防舷材のモデルを製造した。
【0066】
〈比較例1〉
ゴム組成物を架橋させて作製したシートを、ジイソシアネート化合物を含む処理液に浸漬しなかったこと以外は実施例1と同様にして防舷材のモデルとした。
〈摩擦試験〉
各実施例、比較例で作製した防舷材のモデルの、表面の動摩擦係数を、(株)トリニティーラボ製の摩擦摩耗測定機トライボマスターTL201Tsを用いて、下記の条件で測定した。
【0067】
測定環境:温度23±1℃、相対湿度55±1%
接触子:ボール接触子
荷重:10g
計測距離:10mm
移動速度:10mm/秒
以上の結果を、表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
表2の実施例1~4、比較例1の結果より、防舷材の表層部にジイソシアネート化合物を含浸させて硬化領域を形成することで、表面の摩擦を大幅に低減できることが判った。
また、実施例1~3の結果より、含浸させるジイソシアネート化合物としては、室温で液状である変性MDIを用いるのが、表面の摩擦を低減する効果の点で好ましいことが判った。
【0070】
さらに、実施例1、4の結果より、ジイソシアネート化合物を含浸させる時間は、10分間以上であるのが好ましく、24時間以下であるのが好ましいことが判った。
〈実施例5〉
処理液として、カルボジイミド変性MDI〔BASF INOACポリウレタン(株)製のルプラネート(登録商標)MM-103〕とn-オクタン(SP値:7.6)の、質量比1:1の溶液を用いたこと以外は実施例4と同様にして防舷材のモデルを製造した。
【0071】
〈実施例6〉
処理液として、カルボジイミド変性MDI〔BASF INOACポリウレタン(株)製のルプラネート(登録商標)MM-103〕と塩化メチレン(SP値:9.7)の、質量比1:1の溶液を用いたこと以外は実施例4と同様にして防舷材のモデルを製造した。
〈実施例7〉
処理液として、カルボジイミド変性MDI〔BASF INOACポリウレタン(株)製のルプラネート(登録商標)MM-103〕とn-ペンタン(SP値:7.0)の、質量比1:1の溶液を用いたこと以外は実施例4と同様にして防舷材のモデルを製造した。
【0072】
〈実施例8〉
処理液として、カルボジイミド変性MDI〔BASF INOACポリウレタン(株)製のルプラネート(登録商標)MM-103〕とn-ヘキサノール(SP値:10.7)の、質量比1:1の溶液を用いたこと以外は実施例4と同様にして防舷材のモデルを製造した。
【0073】
実施例5~8で作製した防舷材のモデルについて、前述した動摩擦係数の測定と、下記の圧縮耐久試験とを実施した。また、圧縮耐久試験は、先の実施例4、比較例1についても実施した。
【0074】
〈圧縮耐久試験〉
各実施例、比較例で作製した防舷材のモデルを3000回、繰り返し圧縮させたのち、表面の状態を観察して、下記の基準で傷の有無を評価した。
◎:傷はほとんど見られなかった。
○:◎より多く、△より少ない傷が見られた。
△:○より多く、×より少ない傷が見られた。
×:多数の傷が見られた。
結果を、表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
表3の実施例4~8の結果より、ジイソシアネート化合物を希釈して処理液を調製する有機溶剤としては、溶解度パラメータが7.5以上、9.7以下の有機溶剤を選択して用いるのが好ましいことが判った。