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特許7004204計測装置、蓄電装置、計測システム、オフセット誤差の計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】計測装置、蓄電装置、計測システム、オフセット誤差の計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20220114BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220114BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20220114BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220114BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
G01R19/00 N
H02J7/00 M
G01R35/00 E
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017232602
(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公開番号】P2019100878
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今中 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】高井 誠治
(72)【発明者】
【氏名】井村 雅行
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-19805(JP,A)
【文献】特開2013-209017(JP,A)
【文献】特開2007-192723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0086430(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 35/00
G01R 31/36
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷が接続される端子部に対して第1スイッチを介して接続された電気化学素子の電流を計測する計測装置であって、
前記第1スイッチのバイパス経路に設けられた電流制限部と、
前記電気化学素子の電流を計測する電流センサと、
処理部と、を備え、
前記電流制限部は、前記電気化学素子の電圧と前記端子部の電圧との電圧差が所定値以上の場合に、前記バイパス経路を通じた前記負荷へ電力供給を許容し、電圧差が所定値未満の場合に、前記バイパス経路を無電流とし、
前記処理部は、
前記第1スイッチのオフ後、前記負荷に並列接続された充放電素子の放電による前記端子部の電圧変化により前記電圧差が所定値になるまでの期間に、前記電流センサのオフセット誤差を計測する計測処理を行う、計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置であって、
前記電気化学素子は、電源遮断を許容しない車両負荷に対して電力を供給する蓄電素子であり、
前記処理部は、
車両の駐車中に、前記第1スイッチをオンからオフに切り換えて、前記計測処理を実行する、計測装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の計測装置であって、
前記バイパス経路に設けられ、前記電流制限部と直列に接続された第2スイッチを有する、計測装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の計測装置であって、
前記電流制限部は、ダイオードである、計測装置。
【請求項5】
蓄電装置であって、
電気化学素子である蓄電素子と、
前記蓄電素子を収容する収容体と、
前記収容体に設けられ、負荷が接続される端子部と、
前記収容体に収容され、前記蓄電素子と前記端子部との間に設けられた第1スイッチと、
前記収容体に収容された請求項1~請求項4に記載の計測装置と、を有する、蓄電装置。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電装置であって、
前記収容体に収容され、前記端子部に接続された充放電素子を有する、蓄電装置。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電装置であって、
前記蓄電装置は車両用であり、
前記充放電素子は、前記処理部が前記計測処理を行う期間、電源遮断を許容しない車両負荷に対して放電する、蓄電装置。
【請求項8】
計測システムであって、
電気化学素子と、
請求項1~請求項4に記載の計測装置と、を有する、計測システム。
【請求項9】
電流センサのオフセット誤差の計測方法であって、
端子部と電気化学素子とを接続する第1スイッチをオフした後、前記端子部に接続された負荷に対して並列接続された充放電素子から負荷への放電を行い、
前記第1スイッチのバイパス経路に設けられた電流制限部により、前記電気化学素子の電圧と前記端子部の電圧との電圧差が所定値となるまでの期間は、前記バイパス経路を無電流として、前記電流センサのオフセット誤差を計測する、オフセット誤差の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサのオフセット誤差を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるバッテリは、下記の特許文献1に記載があるように、電流センサにより検出した電流を積算することにより、SOCを推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-83256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電流センサは、真値がゼロの場合でも、ゼロ以外の数値を示すオフセット誤差がある。オフセット誤差は、電流を遮断した状態で、電流センサの計測値を検出することで、補正することが出来る。しかしながら、オフセット誤差を計測するため、電流を遮断すると、負荷への電力供給が途絶えてしまう。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、負荷への電力供給を維持しつつ、電流センサのオフセット誤差を計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
負荷が接続される端子部に対して第1スイッチを介して接続された電気化学素子の電流を計測する計測装置であって、前記第1スイッチのバイパス経路に設けられた電流制限部と、前記電気化学素子の電流を計測する電流センサと、処理部と、を備え、前記電流制限部は、前記電気化学素子の電圧と前記端子部の電圧との電圧差が所定値以上の場合に、前記バイパス経路を通じた前記負荷への電力供給を許容し、電圧差が所定値未満の場合に、前記バイパス経路を無電流とし、前記処理部は、前記第1スイッチのオフ後、前記負荷に並列接続された充放電素子の放電による前記端子部の電圧変化により前記電圧差が所定値となるまでの期間に、前記電流センサのオフセット誤差を計測する計測処理を行う。
【0006】
上記技術は、蓄電装置、計測システム、オフセット誤差の計測方法に適用することが出来る。オフセット誤差の計測プログラム、及びそれらプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0007】
本構成では、負荷への電力供給を維持しつつ、オフセット誤差を計測することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1における自動車の側面図
図2】バッテリの斜視図
図3】バッテリの分解斜視図
図4】バッテリの電気的構成を示すブロック図
図5】第1スイッチをオフした直後の車両ECUに対する電流経路を示す図
図6】ダイオードが導通した時の車両ECUに対する電流経路を示す図
図7】ダイオードが順方向電圧に到達した時の車両ECUに対する電流経路を示す図
図8】電流波形と電圧波形を示すグラフ
図9図8の一部を拡大した図
図10】オフセット誤差の計測フローに流れを示すフローチャート図
図11】バッテリの他の実施形態を示すブロック図
図12】バッテリの他の実施形態を示すブロック図
図13】バッテリの他の実施形態を示すブロック図
図14】バッテリの他の実施形態を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
負荷が接続される端子部に対して第1スイッチを介して接続された電気化学素子の電流を計測する計測装置であって、前記第1スイッチのバイパス経路に設けられた電流制限部と、前記電気化学素子の電流を計測する電流センサと、処理部と、を備え、前記電流制限部は、前記電気化学素子の電圧と前記端子部の電圧との電圧差が所定値以上の場合に、前記バイパス経路を通じた前記負荷への電力供給を許容し、電圧差が所定値未満の場合に、前記バイパス経路を無電流とし、前記処理部は、前記第1スイッチのオフ後、前記負荷に並列接続された充放電素子の放電による前記端子部の電圧変化により前記電圧差が所定値となるまでの期間に、前記電流センサのオフセット誤差を計測する計測処理を行う。
【0010】
この構成では、第1スイッチをオンからオフに切り換えると、主経路は非導通になり、電気化学素子から負荷への電流は遮断される。電気化学素子からの電流が遮断されると、並列に接続された充放電素子が放電し、負荷に電流が流れる。充放電素子が放電すると、端子部の電圧が変化する。端子部と電気化学素子との電圧差が所定値になるまでの期間は、電流制限部により、バイパス経路は無電流となる。そのため、バイパス経路が無電流となる期間に、電流センサのオフセット誤差を検出することが出来る。蓄電素子との電圧差が所定値に達すると、電流制限部により、バイパス経路を通じた負荷への電力供給が許容される。そのため、バイパス経路を通じて、電気化学素子から負荷への電力の供給が可能となる。
【0011】
本構成では、第1スイッチをオンからオフに切り換えて主経路を遮断しても、バイパス経路が設けられていることから、電気化学素子から負荷への電力供給経路は遮断されない。しかも、オフセット誤差の計測期間中は、バイパス経路は無電流となるが、充放電素子が負荷へ放電する。従って、パワーフェイル(負荷への電源遮断)を発生させず、オフセット誤差の計測を行うことが出来る。
【0012】
前記電気化学素子は、電源遮断を許容しない車両負荷に対して電力を供給する蓄電素子であり、前記処理部は、車両の駐車中に、前記第1スイッチをオンからオフに切り換えて、前記計測処理を実行する。
【0013】
エンジンの始動装置、EV用の駆動システムの起動装置、車両ECU等の電子制御装置、駆動部(エンジンやEV用のメインモータ)を稼働させるための補機類など、車両の安全性と関連性が高い車両負荷は、走行中や停車中だけでなく、駐車中もパワーフェイルを発生させないことが求められている。すなわち、車両の状態に拘わらず、電源遮断を許容しないこと(すなわち常に電力の供給があること)が求められている。本構成では、こうした電源遮断を許容しない車両負荷を、パワーフェイルを発生させずに、オフセット誤差の計測を行うことが出来るので、安全性を確保するという、ニーズに応えることが出来る。
【0014】
本構成では、オフセット誤差の計測を、走行中や停車中に比べて車両が危険事象に陥りにくい駐車中に行う。駐車中にオフセット誤差の計測を行うことで、走行中や停車中は、オフセット誤差の計測を行う必要がなくなるから、車両の高い安全性を確保することが出来る。また、走行中や停車中に比べて、駐車中は、車両負荷に流れる電流が小さい。そのため、定格容量の小さい電流制限部を使用することが出来る。
【0015】
前記バイパス経路に、前記電流制限部と直列に第2スイッチを設けるとよい。この構成では、オフセット誤差の非計測時に、第2スイッチをオフすることで、バイパス経路を遮断できる。非計測時に電流を遮断することで、電流制限部の故障を防止することが出来るため、オフセット誤差の計測精度を向上させることが出来る。
【0016】
前記電流制限部は、ダイオードが好ましい。ダイオードであれば、電圧差に応じて、通電、非通電が切り換わるので、電流制限素子として好適である。ダイオード両端の電圧差を検出することで、導通、非導通の判断が可能であり、非導通に期間に、計測処理を行うことで、オフセット誤差を精度よく計測することが出来る。
【0017】
<実施形態1>
1.バッテリの説明
図1は自動車の側面図、図2はバッテリの斜視図、図3はバッテリの分解斜視図、図4はバッテリの電気的構成を示すブロック図である。
【0018】
上位システムである自動車1はエンジンを搭載したエンジン駆動車である。図1に示すように、自動車1は、蓄電装置であるバッテリ20を備えている。バッテリ20は、図2に示すように、ブロック状の電池ケース21を有しており、電池ケース21内には、複数の二次電池B1~B4からなる組電池30や回路基板28が収容されている。電池ケース21は、本発明の「収容体」に相当する。
【0019】
電池ケース21は、図3に示すように、上方に開口する箱型のケース本体23と、複数の二次電池B1~B4を位置決めする位置決め部材24と、ケース本体23の上部に装着される中蓋25と、上蓋26とを備えて構成されている。ケース本体23内には、図3に示すように、各二次電池B1~B4が個別に収容される複数のセル室23AがX方向に並んで設けられている。
【0020】
位置決め部材24は、図3に示すように、複数のバスバー27が上面に配置されており、位置決め部材24がケース本体23内に配置された複数の二次電池B1~B4の上部に配置されることで、複数の二次電池B1~B4が、位置決めされると共に複数のバスバー27によって直列に接続されるようになっている。
【0021】
中蓋25は、図2に示すように、平面視略矩形状をなしている。中蓋25のX方向両端部には、図示しないハーネス端子が接続される一対の端子部22P、22Nが設けられている。一対の端子部22P、22Nは、例えば鉛合金等の金属からなり、22Pが正極側端子部、22Nが負極側端子部である。
【0022】
中蓋25の上面には、収容部25Aが設けられている。回路基板28は、中蓋25の収容部25Aの内部に収容されており、中蓋25がケース本体23に装着されることで、二次電池Bと回路基板28とが接続されるようになっている。また、上蓋26は、中蓋25の上部に装着され、回路基板28を収容した収容部25Aの上面を閉じるようになっている。
【0023】
図4を参照して、バッテリ20の電気的構成を説明する。バッテリ20は、車両用の12V系であり、組電池30と、第1スイッチ40と、計測装置50と、を有する。
【0024】
組電池30は、直列接続された4つのリチウムイオン二次電池B1~B4から構成されている。リチウムイオン二次電池B1~B4は、本発明の「電気化学素子(蓄電素子)」の一例である。
【0025】
組電池30の正極は、第1スイッチ40を介して、正極側の端子部22Pに接続されている。組電池30の負極は、電流検出抵抗61を介して、負極側の端子部22Nに接続されている。符号35Pは、組電池30の正極側の通電路、符号35Nは、組電池30の負極側の通電路である。
【0026】
第1スイッチ40は、組電池30の電流を遮断するスイッチであり、リレーやFETなどにより構成することが出来る。第1スイッチ40は、回路基板28上に配置されていて、電池ケース21内に収容されている。
【0027】
計測装置50は、組電池30の電流を計測する装置全体であり、電流センサ60と、並列回路70と、処理部100とを備えている。計測装置50は、回路基板28や回路基板28の近傍に配置されていて、電池ケース21内に収容されている。
【0028】
電流センサ60は、電流検出抵抗61と、AFE(Analog Front End)65とから構成されている。電流検出抵抗61は、電池ケース21の内部において、組電池30の負極側の通電路35Nに配置されている。電流検出抵抗61は、回路基板28上又は回路基板28の近傍に配置されている。
【0029】
AFE65は、電流検出抵抗61の両端電圧を検出し、アナログ値からディジタル値に変更する。AFE65は、信号線により処理部100に接続されている。AFE60は回路基板28上に配置されている。
【0030】
並列回路70は、第1スイッチ40のバイパス経路BP上にあって、第1スイッチ40と並列に接続されている。並列回路70は、第2スイッチ71と、ダイオード75とから構成されている。FET71とダイオード75は直列に接続されている。並列回路70は回路基板28上に設けられている。
【0031】
第2スイッチ71はPチャンネルの電界効果トランジスタであり、ソースを組電池30の正極に接続し、ドレインをダイオード75のアノードに接続している。ダイオード75は、組電池30の放電方向を順方向としており、アノードを第2スイッチ71のドレインに接続し、カソードを正極側の端子部22Pに接続している。図4に示す符号90は、第2スイッチ71を駆動する駆動回路90である。
【0032】
処理部100は、演算機能を有するCPU(central processing unit)101、メモリ103、ROM105、通信部107など備えており、回路基板28上に配置されている。
【0033】
CPU101は、第1スイッチ40や第2スイッチ71に指令を送り、第1スイッチ40、第2スイッチ71のオン、オフを制御する。「オン」はクローズ(閉路)の意味、「オフ」はオープン(開路)の意味である。
【0034】
CPU101は、AFE65の出力に基づいて、リチウムイオン二次電池B1~B4の電流Iを検出する処理と、検出した電流Iに基づいて、リチウムイオン二次電池B1~B4のSOCを推定する処理を行う。
【0035】
SOC(state of charge:充電状態)は、満充電容量に対する残存容量の比率であり、下記の(1)式にて表される。SOCは、下記の(2)式で示すように、電流Iの時間に対する積分値に基づいて推定することが出来る。電流の符号を、充電時はプラス、放電はマイナスとする。
【0036】
SOC=Cr/Co×100・・・・・・・・・・(1)
Coは二次電池の満充電容量、Crは二次電池の残存容量である。
【0037】
SOC=SOCo+100×∫Idt/Co・・・(2)
SOCoは、SOCの初期値、Iは電流である。
【0038】
ROM105には、SOCを推定するためのプログラムや、オフセット誤差εの計測フロー(図10に示すS10~S60)を実行するためのプログラムが記憶されている。プログラムはCD-ROM等の記録媒体に記憶して譲渡等することが出来る。プログラムは電気通信回線を用いて配信することも出来る。
【0039】
通信部107は、自動車1に搭載された車両ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)150との通信用として設けられている。車両ECU150は、走行中、停車中、駐車中など、車両の状態によらず、電源遮断を許容しない車両負荷である。車両への搭載後、通信部107は、信号線により、車両ECU150と接続され、処理部100は、エンジンの動作状態(停止や駆動)など車両に関する情報を、車両ECU150から受信できるようになっている。
【0040】
図4に示すように、バッテリ20には、電源ライン135P、135Nを介して、車両ECU150が接続されており、バッテリ20から車両ECU150に対して電力を供給する構成となっている。車両ECU150には、コンデンサ170が設けられている。コンデンサ170は、正極側の電源ライン135Pと負極側の電源ライン135Nの間にあって、車両ECU150と並列に接続されている。コンデンサ170は、車両ECU150の電源電圧を安定化させるために設けられている。コンデンサ170は、電流センサ60のオフセット誤差εを計測する期間に、車両ECU150に放電し、電力を供給する役割を果たす。コンデンサ170は、本発明の「充放電素子」に相当する。
【0041】
バッテリ20は、リチウムイオン二次電池B1~B4と、リチウムイオン二次電池B1~B4を収容する電池ケース21と、第1スイッチ40と、計測装置50と、を備えていることから、本発明の「蓄電装置」に相当する。バッテリ20のうちの組電池30と計測装置50は、本発明の「計測システム」に相当する。
【0042】
2.電流センサ60のオフセット誤差εと補正
電流センサ60は、真値がゼロの場合でも、ゼロ以外の数値を示すオフセット誤差εがある。オフセット誤差εは、組電池30の電流Iを遮断した状態で、電流センサ60の計測値(AFE65の出力値)を検出することで、計測することが出来る。しかしながら、オフセット誤差εを計測するため、電流Iを遮断すると、車両ECU150への電力供給が途絶えてしまう。
【0043】
本構成では、第1スイッチ40をオフした後、コンデンサ170は放電する。放電により、コンデンサ170の電圧が下がることから、端子部22Pの電圧V2が降下する。端子部22Pの電圧V2と組電池30の正極の電圧V1との電圧差ΔVが、所定値Vxになるまでの期間T23は、ダイオード75は非導通である。ダイオード75が非導通の期間T23は、組電池30の電流Iが遮断されることに着目して、電流センサ60のオフセット誤差εを計測する。
【0044】
以下、図4図9を参照してオフセット誤差εの計測方法を説明する。まず、処理部100は、通常時(オフセット誤差εの非計測時)、第1スイッチ40をオンの状態に制御し、第2スイッチ71をオフの状態に制御する。これにより、図4に示すように、組電池30から車両ECU150に対して、第1スイッチ40を経由する主経路L1にて電流が流れる。
【0045】
車両ECU150と並列に接続されたコンデンサ170は充電され、バッテリ20の正極側の端子部22Pの電圧V2は、組電池30の正極側の電圧V1と等しくなる(V2=V1)。
【0046】
処理部100は、オフセット誤差εを計測する場合、まず、第2スイッチ71をオフからオンに切り換え(図8に示す時刻t1)、その後、第1スイッチ40をオンからオフに切り換える(図8に示す時刻t2)。第2スイッチ71は、少なくとも、オフセット誤差εの計測時にオンであればよく、常時オンでもよい。
【0047】
図8に示す「I」は主経路L1に流れる電流、「I」はコンデンサ170の放電する電流、「I」は電流経路L3に流れる電流を示す。また、「I13」は「I」と「I」の合計電流であり、組電池30から車両ECU150への放電電流である。
【0048】
時刻t2にて、第1スイッチ40がオンからオフに切り換わると、主経路L1は遮断され、コンデンサ170が放電を開始する。そのため、車両ECU150に対して、図5に示す電流経路L2にてコンデンサ170から電流が流れる。コンデンサ170の電圧は、放電により降下するため、第1スイッチ40の切り換え後、図8図9に示すように、バッテリ20の正極側の端子部22Pの電圧V2は降下して、組電池30の正極側の電圧V1との間に電圧差Δが生じる。
【0049】
ΔV=V1-V2・・・・・・(3)
【0050】
図8図9に示す時刻t3にて、電圧差Δが所定値V(一例として0.55V)に達すると、ダイオード75が導通する。ダイオード75が導通すると、バイパス経路BPを通じた車両ECU150への電力供給が許容されることから、図6に示すように、車両ECU150に対して、コンデンサ170を電源とする電流経路L2と、組電池30から並列回路70(バイパス経路BP)を通る電流経路L3で、電流が流れる。
【0051】
ダイオード75の導通後、電圧差ΔVの増加に伴って電流経路L3に流れる電流は増加し、電流経路L2に流れる電流L2は減少する。図8の例では、電圧差ΔVがダイオード75の順方向電圧Vf(一例として0.6V)に達する時刻t4にて、電流経路L2の電流はゼロになり、それ以降は、ダイオード75を経由する電流経路L3により、車両ECU150に対する電力供給が行われる。
【0052】
時刻t2にて第1スイッチ40をオフに切り換えてから、時刻t3にてダイオード75が導通するまでの期間T23は、ダイオード75は非導通であり、組電池30からの電流出力は無い。この期間T23に、電流センサ60の計測値(AFE65の出力)を検出することで、電流センサ60のオフセット誤差εを計測することが出来る。
【0053】
ダイオード75は、電圧差ΔVが所定値Vx以上の場合に、導通してバイパス経路BPを通じた車両ECU150へ電力供給を許容し、電圧差ΔVが所定値Vx未満の場合、非導通となってバイパス経路BPを無電流とする。従って、ダイオード75は、本発明の「電流制限部」に相当する。
【0054】
図10は、オフセット誤差εの計測フローの流れを示す図である。計測フローは、S10~S60の6ステップから構成されている。計測フローの実行前において、CPU101により、第1スイッチ40はオンに制御され、第2スイッチ71はオフに制御されているものとする。
【0055】
CPU101は、まず、バッテリ20を搭載した車両1が駐車中であるか、否かを判断する(S10)。駐車中の判断は、車両ECU150との通信の状態により行うことが出来る。すなわち、車両1が走行中や停車中の場合、車両ECU150と処理部100との間において、所定周期で通信が頻繁に行われる。
【0056】
一方、車両1が駐車中の場合、車両ECU150は、通信を停止する。そのため、所定期間、車両ECU100との間で通信が途絶えている場合には、車両1は駐車中であると判断することが出来る。
【0057】
車両1が駐車中であると判断すると(S10:YES)、次にCPU101は、第2スイッチ71をオフからオンに切り換え、その後、第1スイッチ40をオンからオフに切り換える処理を行う(S20、S30)。
【0058】
次にCPU101は、第1スイッチ40をオフに切り換えてから、ダイオード75が導通するまでの期間T23に、電流センサ60のオフセット誤差εを計測する計測処理を行い、計測したオフセット誤差εを、メモリ103に記憶する(S40)。期間T23の長さは、コンデンサ170の容量と、コンデンサ170の放電電流と、ダイオード75が導通する電圧差Vxなどから求めることが出来る。実験値を使用することも出来る。
【0059】
続いてCPU101は、第1スイッチ40をオフからオンに切り換える処理を行い、その後、第2スイッチ71をオンからオフに切り換える処理を行う(S50、S60)。以上により、オフセット誤差εの計測フローは終了する。
【0060】
CPU101は、下記の(4)式で示すように、リチウムイオン二次電池B1~B4の電流計測時、電流センサ60の計測値をオフセット誤差εにより補正する補正処理を行う。
【0061】
このようにすることで、電流Iの計測精度を向上させることが可能であり、リチウムイオン二次電池B1~B4のSOCを精度よく推定することが可能となる。
【0062】
It=Io-ε・・・・・・(4)
Itは補正後の電流値、Ioは補正前の電流値、εはオフセット誤差である。(4)式において、電流、オフセット誤差の符号を、充電方向はプラス、放電方向はマイナスとする。
【0063】
図10は、オフセット誤差εの計測フローは、例えば、1週間おきなど、所定期間ごとに繰り返し実行して、オフセット誤差εを最新の値に更新することが好ましい。このようにすることで、温度変化等によって、オフセット誤差εが変化しても、その影響を小さくすることが可能であり、電流Iの計測精度及びSOCの推定精度をより一層、向上させることが可能である。
【0064】
並列回路70は、第1スイッチ40のクローズ故障の診断回路として、用いることが出来る。すなわち、並列回路70の第2スイッチ71をオンした状態で、第1スイッチ40をオンからオフに切り換えると、第1スイッチ40が正常に動作していれば、第1スイッチ40の両端電圧ΔV(=V1-V2)は、ダイオード75の順方向電圧Vとなる。一方、第1スイッチ40がクローズに固着している場合、両端電圧ΔVはゼロになる。従って、第1スイッチ40の両端電圧ΔVを検出することで、第1スイッチ40がクローズ故障しているか否かを診断することが出来る。
【0065】
4.効果説明
本構成では、第1スイッチ40をオンからオフに切り換えて主経路L1を遮断しても、バイパス経路BPが設けられていることから、組電池30から車両ECU150への電力供給経路は遮断されない。しかも、オフセット誤差εの計測期間中、バイパス経路BPのダイオード75は非導通となり、一時的に組電池30の電流Iは遮断される。しかし、電流Iが遮断された期間T23は、コンデンサ170が車両ECU150へ放電し、ダイオード75が導通すれば、それ以降は、組電池30からバイパス経路BPを介して電流Iが供給できる。そのため、電源遮断を許容しない車両ECU150への電力供給を維持しつつ、オフセット誤差εの計測を行うことが出来る。本構成では、こうした電源遮断を許容しない車両負荷を、パワーフェイルを発生させず、オフセット誤差εの計測を行うことが出来るので、安全性を確保するという、ニーズに応えることが出来る。
【0066】
処理部100は、走行中や停車中に比べて車両1が危険事象に陥りにくい駐車中に、第1スイッチ40をオンからオフに切り換えて、電流センサ60のオフセット誤差εを計測する。駐車中にオフセット誤差εの計測を行うことで、走行中や停車中は、オフセット誤差εの計測を行う必要がなくなるから、車両の高い安全性を確保することが出来る。また、走行中や停車中に比べて、車両ECU150の消費電流が少なく、導通した時に、ダイオード75に流れる電流が小さい。そのため、定格容量の小さいダイオード75を使用することが出来る。
【0067】
本構成では、オフセット誤差εの非計測時(T23以外の期間)は、CPU101にて、第2スイッチ71をオフに制御する。第2スイッチ71をオフすることで、バイパス経路BPを遮断できる。非計測時に電流を遮断することで、電流制限部であるダイオード75の故障を防止することが出来るため、オフセット誤差εの計測精度を向上させることが出来る。また、過放電など、組電池30に異常があった場合に、第2スイッチ71をオフにすることで、バイパス経路BPを介して流れる電流を遮断することが出来る。
【0068】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0069】
(1)実施形態1では、リチウムイオン二次電池B1~B4の電流を計測する計測装置50を例示した。本技術は、電流を計測する計測装置であれば、リチウムイオン二次電池B1~B4以外にも、電気化学素子であれば、広く適用することが出来る。電気化学素子は、二次電池、電気二重層キャパシタ等の蓄電素子、放電のみ行う一次電池、燃料電池、太陽電池等を含む。実施形態1では、リチウムイオン二次電池B1~B4を複数直列に接続した形態を例示したが、単セルの構成であってもよい。
【0070】
(2)実施形態1では、蓄電装置であるバッテリ20をエンジン駆動車に搭載した例を示した。バッテリ20の用途は、エンジン駆動車に限定されない。電気自動車、ハイブリッド電気自動車に搭載してもよい。本技術は、車両用以外にも、航空機や船舶、鉄道用の蓄電装置に適用することが出来る。特に、電源遮断を許容しない負荷用であることが好ましいが、電源遮断が一部において許容されている負荷用でもよい。
【0071】
(3)実施形態1では、組電池30から車両ECU150に電力を供給する構成としたが、電力の供給対象(車両負荷)は、車両ECU150に限定されない。エンジンを駆動するためのセルモータ、エンジンの補機類など、電源遮断を許容しない他の車両負荷であってもよい。
【0072】
(4)実施形態1では、第1スイッチ40と並列回路70を、組電池30の正極側に設ける一方、電流センサ60を、組電池30の負極側に設けた例を示した。構成を反転し、第1スイッチ40と並列回路70を、組電池30の負極側に設ける一方、電流センサ60を組電池30の正極側に配置してもよい。第1スイッチ40と並列回路70を負極に設けた場合、第1スイッチ40をオフすると、コンデンサ170の放電により、端子部22Nの電圧が変化して、負極側の端子部22Nと組電池30の負極との間に電圧差ΔVが生じる。発生した電圧差ΔVが所定値Vxに達するまでの間は、ダイオード75は非導通となることから、その期間に、電流センサ60のオフセット誤差εを計測することが出来る。第1スイッチ40と並列回路70を負極側に設けた場合、コンデンサ170の放電により、組電池30の負極よりも、端子部22Nの電圧が高くなる。そのため、ダイオード75は放電方向が順方向となるように、アノードを端子部22Nに接続し、カソードを組電池30の負極に接続する。
【0073】
(5)実施形態1では、コンデンサ170を、バッテリ外部に設けた構成を示した。コンデンサ170は、バッテリ内に配置されていてもよい。図11に示すバッテリ200は、電池ケース21の内部に、コンデンサ270を設けている。コンデンサ270の一端は、正極側の端子部22Pに接続され、他端は負極側の端子部22Nに接続されている。コンデンサ270は、組電池30により充電される。第1スイッチ40をオフして主経路L1を遮断すると、コンデンサ270が放電して、車両ECU150に電力を供給する。コンデンサ270の放電により、組電池30の正極の電圧V1と正極側の端子部V2の電圧差ΔVが所定値Vxに達するまでの期間T23は、ダイオード75は非通電でバイパス経路BPは無電流となる。従って、期間T23に、処理部100にて、電流センサ60のオフセット誤差εを計測することが出来る。この構成では、バッテリ20にコンデンサ270を内蔵していることから、車両1側にコンデンサ170が設けられていない場合でも、車両負荷150への電力の供給を継続しつつ、電流センサ60のオフセット誤差εを計測することが出来る。バッテリ20に内蔵したコンデンサ270は、処理部100がオフセット誤差εの計測処理を行う期間T23、車両負荷150に対して放電する役割を果たす。
【0074】
(6)コンデンサ170、270は、第1スイッチ40をオフした時に放電するものであればよく、例えば、二次電池などの充放電素子により、代用することが出来る。
【0075】
(7)実施形態1は、電流制限部の例として、ダイオード75を示した。電流制限部は、組電池30の電圧V1と端子部22Pの電圧V2の電圧差ΔVが所定値Vx以上の場合に
バイパス経路BPを通じた負荷へ電力供給を許容し、電圧差ΔVが所定値未満の場合に、バイパス経路BPを無電流とするものであれば、ダイオード以外でもよい。図12に示すバッテリ300では、電流制限部を、ダイオード接続したFET310により、構成している。ダイオード接続は、ゲートとソースを短絡させる接続である。ダイオード接続したFET310は、ダイオード75と同様に、電圧差が所定値以上になると導通し、それ以外は非導通であるため、ダイオード75に代用することが出来る。図12のバッテリ300は、第2スイッチ71を廃止している。
【0076】
(8)図13に示すバッテリ400は、電流制限部410を、第3スイッチ420と、コンパレータ430から構成している。コンパレータ430は、組電池30の正極の電圧V1と正極側の端子部22Pの電圧V2との電圧差ΔVを検出する。コンパレータ430は、電圧差ΔVが所定値以上の場合、第3スイッチ420をオンにする信号を出力し、電圧差ΔVが所定値未満の場合、第3スイッチ420をオフする信号を出力する。電流制限部410を、第3スイッチ420とコンパレータ430で構成した場合も、第1スイッチ40をオフにした後、電圧差ΔVが所定値になるまでの期間は、第3スイッチ420がオフしてバイパス経路BPが無電流になることから、その期間に、電流センサ60のオフセット誤差εを計測することが出来る。電流制限部410を、第3スイッチ420とコンパレータ430とから構成した場合、バイパス経路BPが非通電(第3スイッチ:オフ)から通電状態(第3スイッチ:オン)に切り換わる閾値(電圧差)を任意に設定できるというメリットがある。
【0077】
(9)図14に示すバッテリ500は、電流制限部に、降圧レギュレータ510を用いている。降圧レギュレータ510は、入力電圧(組電池の電圧V1)を降圧して出力する。バイパス経路BPは、正極側の端子部22Pの電圧V2が、降圧レギュレータ510の出力電圧V3よりも高い場合、無電流となる。そのため、第1スイッチ40をオフした後、コンデンサ170の放電により、正極側の端子部の電圧V2が、組電池30の正極の電圧V1から降圧レギュレータ510の出力電圧V3に下がるまでの期間に、電流センサ60のオフセット誤差εを計測することが出来る。端子部22Pの電圧V2が出力電圧V3まで下がると、それ以降、端子部22Pの電圧V2は、降圧レギュレータ510の出力電圧V3に維持され、バイパス経路BPを介して、車両負荷150への電力供給が可能となる。
【0078】
(10)実施形態1では、第1スイッチ40をオフに切り換えてから、ダイオード75が導通するまでの期間T23を、コンデンサ170の容量と、コンデンサ170の放電電流と、ダイオード75が導通する電圧差Vxなどから求めた。ダイオード75は、端子部22Pの電圧V2と組電池30の正極の電圧V1の電圧差ΔVが、所定値Vxよりも小さい場合は非導通で、所定値Vxに達すると導通する。そのため、第1スイッチ40をオフに切り換えた後、端子部22Pの電圧V2と組電池30の正極の電圧V1を検出して電圧差ΔVを求め、求めた電圧差ΔVが所定値Vxになるまでの期間に、オフセット誤差εを計測するようにしてもよい。このようにすれば、ダイオード75が非通電である期間に、計測を行うことが出来るので、オフセット誤差εの計測精度が向上する。また、電流制限部に降圧レギュレータ510を用いる場合も、端子部22Pの電圧V2を検出して、降圧レギュレータの出力電圧V3と比較することで、バイパス経路BPの無電流期間を判断するが可能である。
【0079】
(11)実施形態1は、車両1が駐車中であるか、否かを、車両ECU150との通信の状態により判断したが、組電池30の電流Iの大きさから判断してもよい。すなわち、電流Iが所定値以下の状態が一定時間継続した場合に、駐車と判断してもよい。または、所定時間以上の振動の有無から判断してもよい。振動の検出はセンサで行うとよい。
【0080】
(12)実施形態1では、オフセット誤差εに基づいて、リチウムイオン二次電池B1~B4の電流Iを補正する補正処理を実行した。これ以外に、電流Iの補正は行わず、SOCを補正するようにしてもよい。具体的には、SOCを算出するために行った電流Iの積算時間と、オフセット誤差εとに基づいて、SOCの誤差(電流センサ60のオフセット誤差εに起因するSOCの誤差)を補正してもよい。
【0081】
(13)計測装置50は、電流センサ60と、並列回路70と、処理部100とを含む構成であればよく、これらの部材60、70、80は、必ずしもバッテリ内に設けられていなくてもよい。実施形態1では、第1スイッチ40と並列回路70を、バッテリ20の内部に設けた構成を例示した。第1スイッチ40と並列回路70は、車載されていれば、バッテリ20の外部に設けられていてもよい。また、電流センサ60や処理部100も、同様に、車載されていれば、バッテリ20の外部に設けられていてもよい。すなわち、バッテリ20は、リチウムイオン二次電池B1~B4だけの構成とし、バッテリ外に設けた処理部100が、バッテリ外に設けられた電流センサ60から、期間T23に計測される計測値のデータを取得してオフセット誤差εを計測するようにしてもよい。
【0082】
(14)計測システムは、組電池30等の電気化学素子と計測装置50を含み、電気化学素子30の電流計測を計測装置50にて行うシステムであればよい。電気化学素子30や計測装置50が、どこに配置されているなど、物理的な構成は、いかなる構成でもよい。
【0083】
(15)実施形態1で開示した技術は、電流センサのオフセット誤差の計測プログラム、及びそれらプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現することができる。
【0084】
電流センサ60のオフセット誤差εの計測プログラムであって、端子部22Pと電気化学素子30とを接続する第1スイッチ40をオフした後、前記第1スイッチ40のバイパス経路BPに設けられた電流制限素子75が前記バイパス経路BPを無電流とする期間T23に、前記電流センサ60のオフセット誤差εを計測する計測処理(S40)を、コンピュータ40に実行させる計測プログラム。
【符号の説明】
【0085】
1...車両
20...バッテリ(本発明の「蓄電装置」に相当する)
30...組電池
40...第1スイッチ
60...電流センサ
61...電流検出抵抗
65...AFE
70...並列回路
71...第2スイッチ
75...ダイオード(本発明の「電流制限部」に相当する)
100...処理部
101...CPU
150...車両ECU(本発明の「車両負荷」に相当する)
170...コンデンサ(本発明の「充放電素子」に相当する)
B1~B4...リチウムイオン二次電池(本発明の「電気化学素子(蓄電素子)」に相当する)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14