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特許7004216オーバーコート材またはレジスト樹脂用共重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】オーバーコート材またはレジスト樹脂用共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/18 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
C08F20/18
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018081155
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019189693
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 諒介
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】円山 圭一
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-009415(JP,A)
【文献】特開昭63-213849(JP,A)
【文献】特開昭63-141048(JP,A)
【文献】特開平07-005320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44;C08F6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されることを特徴とする、重合性モノマー(A)と、他のモノマー(C)との共重合体であって、
前記他のモノマー(C)が、カルボキシル基を有するモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび芳香族ビニル化合物から選ばれる1種または2種以上のモノマーであり、
カルボキシル基を有する前記モノマーがアクリル酸またはメタクリル酸であり、
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ベンジルから選ばれる1種または2種以上のモノマーであり、
前記芳香族ビニル化合物がスチレンであり
重量平均分子量が5,000~50,000であることを特徴とする、オーバーコート材またはレジスト樹脂用共重合体

【化1】
(式(1)中、
は水素原子またはメチル基を示し、
は水素原子、メチル基またはメトキシ基を示し、
Vは炭素数1以上、炭素数10以下のアルキレン基であり、
Xは0または1を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーバーコート材またはレジスト樹脂用共重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水酸基含有モノマーを用いた重合体は、液晶材料、コーティング材料、塗料、フォトレジスト材料、オーバーコート材等、広い用途を有する化合物である。特にフォトレジスト材料やオーバーコート材では、高い反応性を示すことから感光性樹脂組成物の主剤として好適に用いられている。
【0003】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示素子において、感光性樹脂組成物により、電極保護膜、平坦化膜、絶縁膜等が形成されている。これらの膜には、高硬度であり、耐溶剤性に優れることなどが求められている。またこれら膜の形成プロセスにおいて、現像残膜率に優れることも求められる。ここで現像残膜率とは、感光性樹脂組成物によるパターン形成時の現像液による未溶解部分の膜厚の変化率のことであり、現像残膜率が高いほど、所望の膜厚を得ることができるため、好ましい。
【0004】
一方、近年、ウェアラブルデバイスやフレキシブルデバイスの登場により、従来では可撓性が求められていなかった電極保護膜、平坦化膜、絶縁膜等のオーバーコート材やフォトレジスト材料についても、可撓性が要求される場合もある。
【0005】
高硬度であり、耐薬品性に優れる硬化膜を形成できる感光性樹脂組成物として、特許文献1(特開2017-126074号公報)には、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤、カチオン重合性化合物、公知のアルカリ可溶性樹脂からなる感光性樹脂組成物が開示されている。
【0006】
また、耐薬品性に優れ、現像残膜率が高い感光性樹脂組成物として、特許文献2(特開2008-3532号公報)には、カルボキシル基またはフェノール性水酸基を有するレジスト樹脂と多官能のビニルエーテル化合物、多官能のブロックイソシアネート化合物等を配合する感光性樹脂組成物が開示されている。
【0007】
また、さらに耐薬品性に優れた塗膜が得られる方法として、特許文献3(特開2014-160202号公報)には、特定の構造のフェノール化合物を配合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-126074号公報
【文献】特開2008-3532号公報
【文献】特開2014-160202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように感光性樹脂組成物の配合組成により耐薬品等の特性の向上が図られているが、感光性樹脂組成物の主成分であるレジスト樹脂は公知のモノマーからなる重合体であり、レジスト樹脂の特性向上までには至っていなかった。
【0010】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、感光性樹脂組成物のオーバーコート材やレジスト樹脂として使用することにより、表面硬度、現像残膜率および耐薬品性に優れた塗膜となる重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決すべく検討した結果、アルコール性水酸基とフェノール性水酸基をともに有する特定構造のモノマーにより上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のものである。
下記一般式(1)で示されることを特徴とする、重合性モノマー(A)と、他のモノマー(C)との共重合体であって、
前記他のモノマー(C)が、カルボキシル基を有するモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび芳香族ビニル化合物から選ばれる1種または2種以上のモノマーであり、
カルボキシル基を有する前記モノマーがアクリル酸またはメタクリル酸であり、
前記(メタ)アクリル酸エステルモノマーが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルおよび(メタ)アクリル酸ベンジルから選ばれる1種または2種以上のモノマーであり、
前記芳香族ビニル化合物がスチレンであり
重量平均分子量が5,000~50,000であることを特徴とする、オーバーコート材またはレジスト樹脂用共重合体
【0013】
【化1】
(式(1)中、
は水素原子またはメチル基を示し、
は水素原子、メチル基またはメトキシ基を示し、
Vは炭素数1以上、炭素数10以下のアルキレン基であり、
Xは0または1を示す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の重合性モノマーは、アルコール性水酸基とフェノール性水酸基をともに有する特定の構造を有しており、このモノマーを重合することにより、例えば感光性樹脂組成物のオーバーコート材やレジスト樹脂として使用した際に、表面硬度、現像残膜率および耐薬品性に優れた塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔モノマー(A)について〕
本発明のモノマー(A)は、下記一般式(1)で示される。
【化2】

【0016】
式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、重合のしやすさの観点からメチル基が特に好ましい。
【0017】
は水素原子、メチル基またはメトキシ基であり、レジスト樹脂としての反応性の観点から水素原子が特に好ましい。Rの置換位置はオルト位、メタ位、パラ位のいずれでも良いが、オルト位またはメタ位が好ましい。
【0018】
Vは炭素数1以上、10以下のアルキレン基であり、Xは0または1である。レジスト樹脂としての観点からは、Vの炭素数は6以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0019】
レジスト樹脂とした際の塗膜の要求特性として表面硬度が求められる場合にはXが0であることが好ましい。塗膜に可撓性が求められる場合には、Xが1でありかつVの炭素数が1以上10以下であることが好ましく、Xが1でありかつVの炭素数が2以上4以下であることがより好ましい。
【0020】
フェノール性水酸基の置換位置はオルト位、メタ位、パラ位のいずれでも良いが、レジスト樹脂とした際の感度の観点から、メタ位またはパラ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
【0021】
モノマー(A)中には本発明の効果を損なわない範囲において式(2)に示す異性体を含んでもよい。モノマー(A)の合成において式(2)に示す異性体が20~80%生成することがある。
【0022】
【化3】


(式(2)中、
は水素原子またはメチル基を示し、
は水素原子、メチル基またはメトキシ基を示し、
Wは炭素数1以上、10以下のアルキレン基であり、
Yは0または1を示す。)
【0023】
〔重合体について〕
本発明の重合体は、以下のものであってよい。
(1) モノマー(A)を単独で重合させたホモポリマー
(2) モノマー(A)と、他のモノマー(C)の共重合体
【0024】
(その他のモノマー(C))
その他の共重合可能なモノマー(C)としては、1種または2種以上含んでも良いが、カルボキシル基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル化合物とする
【0025】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、アルカリ水溶液に対する溶解性及び入手の容易性からアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルまたは(メタ)アクリル酸ベンジルである。
【0027】
芳香族ビニル化合物としてはスチレンとする
【0028】
本発明の重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算で求めることができ、5,000~50,000とする
【0029】
〔モノマー(A)の製造方法〕
本発明のモノマー(A)は、アルコール性水酸基とフェノール性水酸基をともに有する構造である。上記モノマー(A)は例えば、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物とカルボキシル基とフェノール性水酸基を有する化合物の反応によって得ることができる。
【0030】
前記(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルが挙げられる。
【0031】
前記カルボキシル基とフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ-3-メチル安息香酸、4-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ-4-メチル安息香酸、3-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸、5-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸、3-ヒドロキシ-4-メトキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-メチルサリチル酸、4-メチルサリチル酸、5-メチルサリチル酸、3-メトキシサリチル酸、4-メトキシサリチル酸、5-メトキシサリチル酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0032】
前記(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物とカルボキシル基とフェノール性水酸基を有する化合物の反応は、両者を混合し、所望により温度を上げ、公知の方法で実施することができる。また必要に応じて、触媒を添加してもよい。
【0033】
前記反応の条件としては、温度は50~150℃が好ましく、70~110℃がさらに好ましい。温度が低いと、反応が充分進行しないことがあり、一方、温度が高いと、重合反応やゲル化を招くことがある。
【0034】
前記触媒としては、公知の触媒を使用することができるが、有機金属触媒、金属酸化物、金属水酸化物が好ましく、金属酸化物または金属水酸化物がより好ましい。有機金属触媒としては、例えば有機亜鉛化合物であるジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これら触媒の金属種としては触媒活性の点から、亜鉛、カルシウム、マグネシウムが好ましい。
【0035】
触媒の使用量は、フェノール性水酸基を有する化合物に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がさらに好ましい。触媒の使用量が少ないと、反応が充分進行しないおそれがあり、触媒の使用量が多いと、着色の懸念がある。
【0036】
また、前記反応時に、重合禁止効果のあるガスを反応系中に導入したり、重合禁止剤を添加したりしてもよい。例えば、ガスとしては空気が挙げられ、重合禁止剤としてはヒドロキノン、メトキノン、2,6-ジ-t-ブチルフェノール等が挙げられる。これら禁止剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。使用する禁止剤の量としては、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物に対して0.01~3質量%が好ましく、0.04~1質量%がさらに好ましい。重合禁止効果のあるガスを反応系中に導入する場合、シリカゲル等の乾燥剤により脱水処理しても良い。
【0037】
また、上記反応は溶剤を使用してもよく、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン等の存在下で行うことができる。
【0038】
前記反応で得られたモノマーをそのまま使用しても良く、結晶化、晶析等の公知の方法で精製してもよい。
【0039】
〔重合体の製造方法〕
次に、本発明の重合体を製造する方法について説明する。
本発明における重合体は、モノマーをラジカル重合させることにより得ることができる。重合は公知の方法で行うことができる。例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられるが、共重合体の重量平均分子量を上記範囲内に調整しやすいという面で、溶液重合が好ましい。
【0040】
重合開始剤は、公知のものを使用することができる。例えば、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系重合開始剤などを挙げることができる。これらの重合開始剤は1種類のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、用いるモノマーの組み合わせや、反応条件などに応じて適宜設定することができる。
【0041】
なお、重合開始剤を投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしてもよいし、一部を一括仕込みして残りを滴下してもよく、あるいは全量を滴下してもよい。また、前記モノマーとともに重合開始剤を滴下すると、反応の制御が容易となるので好ましく、さらにモノマー滴下後も重合開始剤を添加すると、単量体の残存を低減できるので好ましい。
【0042】
溶液重合の際に使用する重合溶媒としては、モノマーと重合開始剤が溶解するものを使用することができ、具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0043】
重合溶媒に対するモノマー(合計量)の濃度は、10~60質量%が好ましく、特に好ましくは20~50質量%である。モノマー混合物の濃度が低すぎると、モノマーが残存しやすく、得られる共重合体の分子量が低下するおそれがあり、モノマーの濃度が高すぎると反応温度を制御し難くなるおそれがある。
【0044】
モノマーを投入するに際しては、例えば、全量を一括仕込みしても良いし、一部を一括仕込みして残りを滴下しても良いし、あるいは全量を滴下しても良い。発熱の制御しやすさから、一部を一括仕込みして残りを滴下するか、または全量を滴下するのが好ましい。
【0045】
重合温度は、重合溶媒の種類などに依存し、例えば、50℃~110℃である。重合時間は、重合開始剤の種類と重合温度に依存し、例えば、重合開始剤としてジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを使用した場合、重合温度を70℃として重合すると、重合時間は6時間程度が適している。
【0046】
以上の重合反応を行なうことにより、本発明に係る重合体が得られる。得られた重合体は、そのまま用いてもよいし、重合反応後の反応液に、ろ取や精製を施して単離してもよい。
【実施例
【0047】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明にはこれらに限定されるものではない。
【0048】
〔実施例中の略号〕
MAA: メタクリル酸(株式会社クラレ製)
MMA: メタクリル酸メチル(三菱ガス化学株式会社製)
St: スチレン(NSスチレンモノマー株式会社製)
BzMA: メタクリル酸ベンジル(大阪有機株式会社製)
HEMA: メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(日油株式会社製「ブレンマーE」)
V-65: アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬株式会社製)
PM: プロピレングリコールモノメチルエーテル(KHネオケム株式会社製)
PGMEA: 酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(ダイセル化学株式会社製)
NQD: 6-ジアゾ-5,6-ジヒドロ-5-オキソ-1-ナフタレンスルホン酸(東洋合成工業株式会社製)
R-41: レべリング剤(大日本インキ化学工業株式会社製メガファックR-41)
17B-60P: 多官能ブロックイソシアネート化合物(旭化成株式会社製デュラネート17B-60P)
【0049】
構造の同定、各種測定および評価は以下の方法に従った。
〔モノマーの同定〕
下記条件にて、核磁気共鳴分光法(HNMR)により同定した。
測定装置:日本電子株式会社製FT-NMR AL400
測定溶媒:重クロロホルム
標準物質:テトラメトキシシラン
測定温度:25℃
〔重量平均分子量の測定〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件により、重量平均分子量(Mw)を求めた。
装置:東ソー(株)社製、HLC-8220
カラム:shodex社製、LF-804
標準物質:ポリスチレン
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0050】
〔感光性樹脂組成物の調製〕
固形分濃度20%の重合体溶液7.6gに、NQDを1.1g、R-41を4mg、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.25g、17B-60Pを0.65g、PGMEAを28.0g、それぞれ添加し、室温で6時間撹拌することでポジ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0051】
〔残膜率の評価〕
感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、120℃で120秒間ホットプレート上でプリベイクし膜厚2.5μmの塗膜を形成した。この膜を0.4質量%TMAH水溶液に60秒間浸漬した後、純水で20秒間洗浄した。得られた膜の膜厚を測定することで、現像前の膜厚に対する現像後の膜厚の変化度合いを以下の基準で評価した。

◎: 98%以上100%
○: 95%以上98%未満
×: 95%未満
【0052】
〔耐薬品性の評価〕
感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、120℃で120秒間ホットプレート上でプリベイクし膜厚2.5μmの塗膜を形成した後、UV照射(365nm、500mJ)し、150℃で30分ポストベイクすることで硬化膜を調製した。得られた硬化膜をN-メチル-2-ピロリドンに40℃または室温で15分間浸漬させ、膨潤、剥離等の外観の変化を目視で以下の基準で評価した。

◎: 40℃、室温ともに変化のないもの
○: 40℃でわずかに変化するが室温で変化のないもの
△: 40℃で変化がみられるが室温で変化のないもの
×: 室温で変化のあるもの
【0053】
〔表面硬度、可撓性評価用試料の調製〕
厚さ100μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製 KEL86W)に感光性樹脂組成物をバーコーターで塗工し、120℃で120秒間ホットプレート上でプリベイクし膜厚5.0μmの塗膜を形成した後、UV照射(365nm、500mJ)し、130℃で60分ポストベイクすることで硬化膜を調製した。
【0054】
〔表面硬度の評価〕
JIS K5600に準拠し、以下の基準で評価した。

◎: 3H以上
○: 2H
×: H以下
【0055】
〔可撓性の評価〕
直径10mmおよび15mmのSUS製の棒に硬化膜を巻きつけ、外観の変化を目視により以下の基準で評価した。

◎: 10mm、15mmともに塗膜の剥がれ、ひび割れがない。
○: 15mmでは塗膜の剥がれ、ひび割れがない。
×: 10mm、15mmともに塗膜の剥がれがある、またはひび割れがある。
【0056】
下記の表1に、モノマー(A)の構造と略号を示す。
【表1】

【0057】
(合成例1:モノマーA1)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び空気導入管を取り付けた1Lフラスコに、メタクリル酸グリシジル(日油株式会社製「ブレンマーGH」)51.3g、4-ヒドロキシ安息香酸(東京化成株式会社製)50.0g、メトキノン0.02gを仕込んだ。酸化マグネシウム2.4gを添加し、フラスコ内に空気を導入しながら、70℃で10時間反応させた。反応液に酢酸エチル100gを加え、0.1M炭酸水素ナトリウム水溶液、水で順次洗浄した。酢酸エチル溶液にヘプタンを加え析出物をろ過で除去し、ろ液を濃縮した。残渣をエタノールに溶解させ、結晶化することでモノマーA1を得た。
【0058】
モノマーA1をHNMR(400MHz,CDCl)を用いて測定し、下記スペクトルより構造を同定した。
7.77~7.83(m,2H,Ph),
6.79~6.84(m,2H,Ph),
6.04(br-s,1H,CH=C),
5.62~5.68(m,1H,CH=C),
5.02(br-s,1H,Ph-O),
3.75~3.79(m,1H,COOCH),
3.30~3.52(m,5H,C and C OPh)
【0059】
(合成例2:モノマーA2)
4-ヒドロキシ安息香酸を4-ヒドロキシ-3-メチル安息香酸に、酸化マグネシウムを水酸化カルシウムに変更した以外は合成例1と同様の方法によりモノマーA2を合成した。
【0060】
(合成例3:モノマーA3)
4-ヒドロキシ安息香酸を3-ヒドロキシ安息香酸に変更した以外は合成例1と同様の方法によりモノマーA3を合成した。
【0061】
(合成例4:モノマーA4)
メタクリル酸グリシジルを4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成株式会社製、商品名:4HBAGE)へ変更した以外は合成例1と同様の手法によりモノマーA4を合成した。
【0062】
(重合例1:重合体1)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素導入管を取り付けた1LセパラブルフラスコにPM350gを仕込み、フラスコ内を窒素置換して、窒素雰囲気下にした。モノマーA1
147.8g、MAA 9.1g、MMA21.1g、St22.0gを混合したモノマー溶液、及びPM50gとV-65 1.8gを混合した重合開始剤溶液をそれぞれ調製した。
【0063】
反応容器内を75℃まで昇温し、モノマー溶液及び重合開始剤溶液を同時にそれぞれ3時間かけて滴下した。その後、75℃で3時間反応させた後、固形分濃度が20%となるようにPMを加え濃度調整することで重合体1のPM溶液を得た。
【0064】
(重合例2:重合体2)
モノマー溶液をモノマーA2 87.1g、MAA8.5g、BzMA104.4に、V-65の添加量を4.9gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で重合体2を得た。
【0065】
(重合例3:重合体3)
モノマー溶液をモノマーA3 34.5g、MAA10.6g、MMA24.7、BzMA130.2gに、V-65の添加量を6.1gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で重合体3を得た。
【0066】
(重合例4:重合体4)
モノマー溶液をモノマーA4 94.1g、MAA8.0g、BzMA98.0gに、V-65の添加量を4.6gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で重合体4を得た。
【0067】
(重合例5:重合体5)
モノマー溶液をMAA15.1g、MMA70.4g、HEMA114.4gに、V-65の添加量を8.7gに変更したこと以外は重合例1と同様の手法で重合体5を得た。
各例の組成および測定結果を表2、表3に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
(結果)
実施例1~4では、本発明のモノマー(A)の共重合体を作製しているつが、現像残膜率、耐薬品性、表面硬度、可撓性がともに優れていた。
【0071】
比較例1では、モノマー(C)を重合させているが、耐薬品性に加えて現像残膜率も劣化していた。