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特許7004225バックアップ電源装置およびバックアップシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】バックアップ電源装置およびバックアップシステム
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/12 20100101AFI20220114BHJP
   F16H 61/32 20060101ALI20220114BHJP
   F16H 63/34 20060101ALI20220114BHJP
   F16H 63/40 20060101ALI20220114BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H61/32
F16H63/34
F16H63/40
B60T17/22 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020166682
(22)【出願日】2020-10-01
(62)【分割の表示】P 2019188345の分割
【原出願日】2016-07-19
(65)【公開番号】P2020204410
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 恭兵
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-57728(JP,A)
【文献】特開2008-304010(JP,A)
【文献】特開2008-180250(JP,A)
【文献】特開2006-33906(JP,A)
【文献】特開2008-133931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00- 61/12
F16H 61/16- 61/24
F16H 61/66- 61/70
F16H 63/40- 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトバイワイヤ装置を搭載した車両に設けられ、バックアップ電源から、前記シフトバイワイヤ装置に含まれるシフト制御部にバックアップ電力を供給するバックアップ電源装置であって、
バッテリからの電力供給が失われるバッテリ失陥を検出した際に、検出信号を生成する失陥検出部と、
前記失陥検出部により前記バッテリ失陥が検出された場合に、パーキングレンジへのシフト指示を検出した際に、指示信号を生成するモニタ部と、
通常時、前記バックアップ電源から前記シフト制御部への電力供給は行われておらず、前記モニタ部からの前記指示信号を受け取った場合に、前記バックアップ電源から前記シフト制御部への前記バックアップ電力の供給を開始するバックアップ制御部と、を備える、バックアップ電源装置。
【請求項2】
前記失陥検出部と前記モニタ部と前記バックアップ制御部とは、一個のASICで構成されている、請求項1に記載のバックアップ電源装置。
【請求項3】
前記モニタ部は、前記パーキングレンジへの移行を示すパーキングレンジスイッチ、前記車両のドアの開閉を示すドアスイッチ、およびプッシュスタートスイッチをモニタする、請求項1または請求項2に記載のバックアップ電源装置。
【請求項4】
前記バックアップ制御部は、前記指示信号を受け取った場合に、前記シフト指示がなされたと判定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のバックアップ電源装置。
【請求項5】
前記バックアップ制御部は、前記検出信号を受け取った場合に、前記バッテリ失陥が検出されたと判定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のバックアップ電源装置。
【請求項6】
前記バックアップ制御部は、前記失陥検出部から前記検出信号を受け取っているが前記モニタ部から前記指示信号を受け取っていない場合に、前記バックアップ電源から前記シフト制御部への電力供給を禁止する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のバックアップ電源装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のバックアップ電源装置と、
前記シフト制御部を含むシフトバイワイヤ装置と、
両のドアの開閉を示すドアスイッチが接続されるボディコントロールモジュールと、を備え、
前記バックアップ制御部は、前記モニタ部からの前記指示信号を受け取った場合に、前記シフト制御部に前記パーキングレンジへの移行を指示する移行指示処理を実行し、
前記シフト制御部は、前記バックアップ制御部からの前記パーキングレンジへ移行する指示にしたがって、前記パーキングレンジへの移行処理を実行する、バックアップシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、バックアップ電源装置およびバックアップシステムに関し、詳しくは、バッテリ失陥時に、車両に設けられた、モータの駆動力によって自動変速機のシフトレンジを切り換える、いわゆるシフトバイワイヤ装置に含まれるシフト制御部にバックアップ電力を供給する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記、車両に設けられたシフトバイワイヤ(SBW)装置に含まれるシフト制御部にバックアップ電力を供給する技術として、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、車両に設けられたバッテリなどの電源、または電源供給系統などの配線に異常が生じた際に、すなわち、バッテリからの電力供給が失われるバッテリ失陥が発生した際に、キャパシタ(バックアップ電源)からバックアップ電力をSBW-ECU(シフト制御部)に供給する技術が開示されている。同文献に開示された技術では、SBW-ECUによって自動変速機のシフトレンジをパーキンングレンジ(Pレンジ)に切り換えることによって車両を安全に駐車させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-180250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献にも記載されているように、バッテリ失陥時に車両を所定の場所に駐車させるために、車両のユーザがシフトレンジをパーキンングレンジ(Pレンジ)に切り換える時期を指定したい場合がある。その場合、上記文献の技術では、バッテリ失陥時からパーキンングレンジ(Pレンジ)に切り換えるまでの間、バックアップ電源からSBW-ECUに電力を供給する必要があり、バックアップ電源の容量が大きくなるという不都合が生じる。
【0005】
また、設計上の都合等により、キャパシタ等のバックアップ電源からSBW-ECU(シフト制御部)への電力供給を制御するバックアップ電源装置を、シフト制御部とは別個に設ける場合が考えられる。そのため、バッテリ失陥時に、ユーザの指示に従ってシフトレンジをパーキンングレンジに切り換える場合であって、且、そのようなバックアップ電源装置がシフト制御部とは個別に設けられる場合において、バックアップ電源を効率的に利用できる技術が所望されていた。
【0006】
本明細書に開示される技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、バッテリ失陥時にユーザの指示に従ってシフトレンジをパーキンングレンジに切り換える際に、シフト制御部に対するバックアップ電源を効率的に利用できるバックアップ電源装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示されるバックアップ電源装置は、モータの駆動力によって自動変速機のシフトレンジを切り換えるシフトバイワイヤ装置が搭載される車両に設けられ、バッテリからの電力供給が失われるバッテリ失陥の発生時に、前記シフトバイワイヤ装置に含まれるシフト制御部にバックアップ電力を供給するバックアップ電源装置であって、前記バックアップ電力の供給源であるバックアップ電源と、前記バッテリ失陥を検出する失陥検出部と、前記失陥検出部によって前記バッテリ失陥が検出された際に、パーキングレンジへのシフト指示を行うシフト指示部のユーザによる操作をモニタし、前記シフト指示部の前記操作に応じて指示信号を生成するモニタ部と、バックアップ制御部と、を備え、前記バックアップ制御部は、前記バッテリ失陥が検出されたか否かを判定するバッテリ失陥判定処理と、前記バッテリ失陥判定処理において前記バッテリ失陥が検出されたと判定した際に、前記モニタ部から生成される前記指示信号に基づいて、前記シフト指示がなされたか否かを判定するシフト指示判定処理と、前記シフト指示判定処理において前記シフト指示がなされたと判定した場合、前記バックアップ電源から前記シフト制御部への電力供給を開始するとともに、前記シフト制御部に前記パーキングレンジへの移行を指示する移行指示処理と、を実行する。
【0008】
本構成によれば、バックアップ制御部は、バッテリ失陥時に、ユーザによるパーキングレンジへのシフト指示がなされたと判定した際に、シフト制御部への電力供給を開始するとともに、シフト制御部にパーキングレンジへの移行を指示する。そのため、バッテリ失陥時からユーザによるパーキングレンジへのシフト指示がなされるまでの期間においては、バックアップ電源からシフト制御部への電力供給がおこなわれない。それによって、バックアップ電源からシフト制御部への不要な電力供給がなされない。そのため、本構成によるバックアップ電源装置によれば、バッテリ失陥時にユーザの指示に従ってシフトレンジをパーキンングレンジに切り換える際に、シフト制御部に対するバックアップ電源を効率的に利用できる。それによって、バックアップ電源の容量を低減でき、バックアップ電源を小型・軽量化できる。なお、ここで「バッテリ失陥」には、バッテリ上がり、バッテリに接続される電源線がバッテリから離脱すること、あるいは電源線が途中で切断されること等が含まれる。
【0009】
上記バックアップ電源装置において、前記モニタ部は、前記車両に設けられた、前記シフト指示部としての前記パーキングレンジへの移行を示すパーキングレンジスイッチ、および前記シフト指示部としての前記車両のドアの開閉を示すドアスイッチをモニタし、前記バックアップ制御部は、前記シフト指示判定処理において、前記パーキングレンジスイッチがオンされたことを示す指示信号、または前記ドアスイッチがオンされたことを示す指示信号を受け取った場合に、前記シフト指示がなされたと判定するようにしてもよい。
本構成によれば、バッテリ失陥時のユーザによるパーキングレンジへのシフト指示を示すシフト指示部として、車両に設けられるパーキングレンジスイッチおよびドアスイッチを利用できる。そのため、新たにシフト指示のための構成を車両に設ける必要がない。
また、上記バックアップ電源装置において、前記バックアップ制御部は、前記バッテリ失陥判定処理において前記バッテリ失陥が検出されたと判定した際に、前記バックアップ電源から前記シフト制御部への電力供給を禁止する禁止処理をさらに実行するようにしてもよい。
本構成によれば、バッテリ失陥と同時にバックアップ電源からシフト制御部への電力供給が開始されることを、確実に防止できる。
【0010】
また、上記バックアップ電源装置において、前記バックアップ電源は、キャパシタによって構成されるようにしてもよい。
【0011】
また、本明細書に開示されるバックアップシステムは、上記の何れかに記載のバックアップ電源装置と、シフト制御部を含むシフトバイワイヤ装置と、前記シフト指示部としての車両のドアの開閉を示すドアスイッチが接続されるボディコントロールモジュールと、を備え、前記シフト制御部は、前記バックアップ制御部からの前記パーキングレンジへ移行する指示にしたがって、前記パーキングレンジへの移行処理を実行する。
本構成によれば、バッテリ失陥時にユーザの指示に従ってシフトレンジをパーキンングレンジに切り換える際に、シフト制御部に対するバックアップ電源を効率的に利用できるバックアップシステムを構築できる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書に開示されるバックアップ電源装置によれば、バッテリ失陥時にユーザの指示に従ってシフトレンジをパーキンングレンジに切り換える際に、シフト制御部に対するバックアップ電源の容量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態のバックアップシステムを示す概略的なブロック図
図2】バックアップ電源供給処理の概略的なフローチャート
図3】バックアップ電源供給処理を示す概略的なシーケンス図
図4】バックアップ電源供給処理の比較例を示す概略的なシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態に係るバックアップシステム1を、図1から図3を参照しつつ説明する。
【0015】
1.バックアップシステムの構成
バックアップシステム1は、車両に搭載され、バックアップ電源装置10、シフトバイワイヤ(SBW)装置20、ボディコントロールモジュール(BCM)30、およびバッテリBa等を含む。なお、車両は、ガソリンエンジン自動車であってもよいし、ガソリンエンジンとモータ駆動併用のHV車であってよいし、モータ駆動専用のEV車であってもよい。要は、車両は、シフトバイワイヤ装置を搭載した車両であればよい。
【0016】
シフトバイワイヤ装置20は、シフト制御ECU21、モータ22、自動変速機23、およびパーキングレンジスイッチ(以下、「Pレンジスイッチ」と記す)24等を含む。シフト制御ECU21は、例えばCPUを含み、モータ22を制御して、モータ22の駆動力によって自動変速機23のシフトレンジを切り換える。シフトレンジは、例えば、ドライブレンジ(Dレンジ)、バックレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、およびパーキングレンジ(以下、「Pレンジ」と記す)等を含む。シフト制御ECU21は、「シフト制御部」の一例である。
【0017】
Pレンジスイッチ24は、通常、駐車時にユーザによって押圧されることによって自動変速機23のシフトレンジがPレンジに切り換えられる。また、バッテリBaの失陥時には、後述するように、ユーザによるPレンジへのシフト指示として使用される。また、車両のドアに設けられ、BCM30に接続されたドアスイッチ31は、同様に、バッテリBaの失陥時には、後述するように、ユーザによるPレンジへのシフト指示として使用される。ここで、Pレンジスイッチ24およびドアスイッチ31は、ユーザの操作によってPレンジへのシフト指示を行う「シフト指示部」の一例である。
【0018】
また、イグニッション(IG)スイッチ32は、リレー33のコイルに接続されている。IGスイッチ32がオンされるとコイルが励磁されて、接点が導通して、12Vのバッテリ電圧Vbが、後述するバックアップ電源装置10の失陥検出回路12に印加される。
【0019】
2.バックアップ電源装置の構成
バックアップ電源装置10は、シフトバイワイヤ装置20が搭載される車両に設けられる。バックアップ電源装置10は、シフトバイワイヤ装置20に含まれるシフト制御ECU21に対して個別に設けられ、車両に設けられたバッテリBaからの電力供給が失われるバッテリ失陥が生じた際に、シフト制御ECU21にバックアップ電力を供給する。
【0020】
バックアップ電源装置10は、図1に示されるように、CPU11、失陥検出回路12、モニタ回路13、充電回路14、放電回路15、キャパシタ16、電源回路17、およびROM18等を含む。
【0021】
CPU11は、ROM18に格納されたプログラムにしたがってバックアップ電源装置10全体を制御する。また、バッテリ失陥時には、CPU11は、後述するバッテリ失陥時のバックアップ処理を実行する。
【0022】
バックアップ処理においては、CPU11は、具体的には、バッテリ失陥が検出されたか否かを判定するバッテリ失陥判定処理と、バッテリ失陥判定処理においてバッテリ失陥が検出されたと判定した際に、モニタ回路13からの指示信号Spに基づいて、シフト指示がなされたか否かを判定するシフト指示判定処理と、シフト指示判定処理においてシフト指示がなされたと判定した場合、キャパシタ16からシフト制御ECU21への電力供給を開始するとともに、シフト制御ECU21にPレンジへの移行を指示する移行指示処理と、を実行する。CPU11は、さらに、バッテリ失陥判定処理においてバッテリ失陥が検出されたと判定した際に、キャパシタ16からシフト制御ECU21への電力供給を禁止する禁止処理をさらに実行する。CPU11は、「バックアップ制御部」の一例である。
【0023】
失陥検出回路12は、バッテリ失陥を検出する。具体的には、本実施形態では、図1に示されるように、バッテリBaから直接のバッテリ電圧Vb(12V)と、リレー33を介してのバッテリ電圧Vbとをモニタし、両方のバッテリ電圧Vbが検出されない場合に、バッテリ失陥の検出信号Sdを生成し、検出信号SdをCPU11に供給する。なお、バッテリBaからの直接のバッテリ電圧Vbを検出し、リレー33を介してのバッテリ電圧Vbを検出しない場合は、バッテリ失陥ではなく、単にIGスイッチ32がオフされただけなので、失陥検出回路12は検出信号Sdを生成しない。失陥検出回路12は、「失陥検出部」の一例である。失陥検出回路12は、電圧検出回路、AND回路等の周知の回路によって構成される。
【0024】
モニタ回路13は、失陥検出回路12よってバッテリ失陥が検出された際に、パーキングレンジへのシフト指示を行うPレンジスイッチ24、および車両のドアの開閉を示すドアスイッチ31をモニタし、Pレンジスイッチ24あるいはドアスイッチ31の操作に応じて、それぞれ指示信号Spを生成する。本実施形態では、具体的には、モニタ回路13の検出端子は、図1に示されるように、例えば、Pレンジスイッチ24およびドアスイッチ31に、プルアップされて接続されている。そして、バッテリ失陥時にユーザによってPレンジスイッチ24またはドアスイッチ31がオン操作されて、モニタ回路13の検出端子がプルダウンされることによって、モニタ回路13は、ユーザによるPレンジへのシフト指示を検出し、指示信号Spを生成する。なお、ドアスイッチ31は、ユーザによってドアが開けられることによってオン操作される。指示信号SpはCPU11に供給される。モニタ回路13は、「モニタ部」の一例である。
【0025】
充電回路14は、12Vのバッテリ電圧Vbを受け取り、例えば、11Vの電圧に変換する。そして、キャパシタ16の充電状況に応じて充電電流を制御する。
放電回路15は、例えば、半導体スイッチ回路(図示せず)を含み、バッテリ失陥時にCPU11の指令に従ってスイッチ回路をオンし、キャパシタ16からの電力をシフト制御ECU21に供給する。通常時、スイッチ回路はオフされており、キャパシタ16からシフト制御ECU21への電力供給は行われない。
【0026】
キャパシタ16は、バッテリ失陥時に、CPU11等のバックアップ電源装置10の内部回路、およびシフト制御ECU21に電力を供給する。すなわち、キャパシタ16は、バックアップ電力の供給源である。そのため、キャパシタ16は、バッテリ失陥時に、少なくともシフト制御ECU21によってシフトレンジがPレンジに切り換え可能な蓄電容量を有する。キャパシタ16の容量は、バッテリ失陥時からPレンジの切り換え時までの経過時間(図3のK1参照)の設定値や、バッテリ失陥時の負荷の容量等に応じて、適宜、事前に実験等によって決定される。キャパシタ16は、「バックアップ電源」の一例である。なお、「バックアップ電源」はキャパシタ16に限られず、例えば、二次電池等であってもよい。
【0027】
電源回路17は、例えば、図1に示されるように、それぞれダイオードを介してバッテリBaとキャパシタ16とに接続される。電源回路17には、通常時はバッテリBaから電力が供給され、バッテリ失陥時には自動的にキャパシタ16から電力が供給される。電源回路17は、受け取った電圧を所定の電源電圧Vddに変換して、電源電圧Vddをバックアップ電源装置10の各部に供給する。
【0028】
3.バッテリ失陥時のバックアップ処理
次に、図2および図3を参照して、所定のプログラムに基づいてCPU11によって実行される「バッテリ失陥時のバックアップ処理」について説明する。なお、図3において、時刻t1と時刻t2、時刻t2と時刻t4、および時刻t3と時刻t4とは、ほぼ同時刻であるが説明の都合上、間隔を空けて記載されている。なお、図2に示すフローチャートに示される処理順序を一例を示すものである。
【0029】
図3の時刻t0において、ユーザによってIGスイッチ32がオンされると、CPU11は、失陥検出回路12を介してバッテリ電圧Vbをモニタする(図2のステップS10)。モニタした際に、CPU11は、失陥検出回路12によってバッテリ失陥が検出されたか否かを判定する(ステップS20:バッテリ失陥判定処理)。具体的には、失陥検出回路12からバッテリ失陥の検出信号Sdを受け取ったか否かを判定する。バッテリ失陥が検出されていない、すなわち、検出信号Sdを受け取っていないと判定した場合(ステップS20:NO)、ステップS10の処理に戻る。すなわち、ステップS10、S20の処理は、所定時間毎に繰り返されるループ処理である。
【0030】
一方、ステップS20において、バッテリ失陥が検出された、すなわち、検出信号Sdを受け取ったと判定した場合(ステップS20:YES)、ステップS30の処理に移行する。この場合は、図3の時刻t1に相当する。すなわち、図3の時刻t1において、例えば電力配線がバッテリBaから離脱してバッテリ失陥が発生したとする。すると、このとき、CPU11は、放電回路15のスイッチ回路のオフ状態を維持し、キャパシタ16からシフト制御ECU21への電力供給を禁止する(禁止処理)。すなわち、図3の時刻t1において、シフト制御ECU21、Pレンジスイッチ24、およびドアスイッチ31への電力供給は遮断される。
【0031】
また、時刻t1に近い時刻t2おいて、CPU11は、モニタ回路13を介してPレンジスイッチ24およびドアスイッチ31に電力を供給して、Pレンジスイッチ24およびドアスイッチ31の状態のモニタを開始する(ステップS30)。モニタした際に、CPU11は、ユーザによってPレンジへのシフト指示がなされたか否かを判定する(ステップS40:シフト指示判定処理)。具体的には、モニタ回路13から指示信号Spを受け取ったか否かを判定する。Pレンジへのシフト指示がなされていない、すなわち、指示信号Spを受け取っていないと判定した場合(ステップS40:NO)、ステップS30の処理に戻る。すなわち、ステップS30、S40の処理は、所定時間毎に繰り返されるループ処理である。
【0032】
一方、ステップS40において、Pレンジへのシフト指示がなされた、すなわち、指示信号Spを受け取ったと判定した場合(ステップS40:YES)、ステップS50の処理に移行する。この場合は、図3の時刻t3あるいは時刻t4に相当する。すなわち、図3の時刻t3において、ユーザによってPレンジスイッチ24がオンされ、図3の時刻t4において、ユーザによってドアが開けられ、ドアスイッチ31がオンされたとする。
【0033】
すると、CPU11は、ユーザによってPレンジへの移行の指示がなされたと判断する(時刻t5に相当)。そして、CPU11は、ステップS50において、キャパシタ16からシフト制御ECU21への電力供給(バックアップ電源の供給)を開始するとともに、バックアップモードの開始をシフト制御ECU21に通知する、すなわち、Pレンジへの移行を指示する(移行指示処理)。
【0034】
それによって、シフト制御ECU21は、バックアップモードが開始され、Pレンジへの移行の必要があると判断して、モータ22を駆動して自動変速機23のシフトレンジをPレンジに切り換える(移行処理)。それによって、バッテリ失陥時に車両を安全に駐車させることができる。
【0035】
4.比較例
図4には、シフト制御ECU21に対してバックアップ電源装置10が個別に設けられる場合の比較例が示される。比較例では、バッテリ失陥時にキャパシタ16からシフト制御ECU21に電力が供給されることは本実施形態と同様であるが、供給方法が異なる。すなわち、比較例では、図4の時刻t1においてバッテリ失陥が発生したとすると、時刻t1において自動的にキャパシタ16からシフト制御ECU21への電力供給が開始される。これは、例えば、上記したバッテリ失陥時にバックアップ電源装置10の電源回路17にキャパシタ16から電力供給が開始される方法と同様に、二個のダイオードを用いて行われる。
【0036】
そして、比較例では、シフト制御ECU21がユーザによってPレンジへの移行指示をモニタし、移行指示があったと判定した際に、Pレンジに移行する(時刻t5)。すなわち、比較例では、バッテリ失陥が検出された時刻t1からPレンジ移行時の時刻t5までの期間K1中、キャパシタ16からシフト制御ECU21への電力供給が継続される。この期間K1には、例えば車両の運転中であれば、ユーザがバッテリ失陥に気づき、車両を安全な場所に移動して車両を停止させ、Pレンジスイッチ24を押すまで、あるいはドアを開けるまでの時間が含まれる。期間K1は、例えば数分間となる。
【0037】
それに対して、本実施形態では、図3に示されるように、期間K1の間、キャパシタ16からシフト制御ECU21への電力供給が行われない。そのため、本実施形態では、比較例と比べて、バッテリ失陥時にシフト制御ECU21に供給する電力量を低減でき、それによってキャパシタ16の容量を小さく、すなわち、キャパシタ16を小型・軽量化することができる。
【0038】
5.本実施形態の効果
本実施形態では、CPU11は、バッテリ失陥時に、ユーザによるPレンジへのシフト指示がなされたと判定した際に(ステップS40:YES)、シフト制御ECU21への電力供給を開始するとともに、シフト制御ECU21にPレンジへの移行を指示する。そのため、バッテリ失陥時(時刻t1)からユーザによるパーキングレンジへのシフト指示がなされ、シフト制御ECU21への電力供給が開始される(時刻t5)までの期間K1においては、キャパシタ16からシフト制御ECU21への電力供給が行なわれない。それによって、キャパシタ16からシフト制御ECU21への不要な電力供給が行われない。そのため、本実施形態によるバックアップ電源装置10によれば、バックアップ電源装置10がシフト制御ECU21とは個別に設けられる場合において、バッテリ失陥時にユーザの指示に従ってシフトレンジをPレンジに切り換える際に、シフト制御ECU21に対するキャパシタ16を効率的に利用できる。それによって、キャパシタ16の容量を低減でき、キャパシタ16を小型・軽量化できる。
【0039】
また、バッテリ失陥時のユーザによるパーキングレンジへのシフト指示を示すシフト指示部として、車両に設けられるPレンジスイッチ24およびドアスイッチ31を利用できる。そのため、新たにシフト指示のための構成を車両に設ける必要がない。
【0040】
また、本実施形態では、バッテリ失陥時にユーザの指示に従ってシフトレンジをPレンジに切り換える際に、シフト制御ECU21に対するキャパシタ16を効率的に利用できるバックアップシステム1を構築できる。
【0041】
なお、車両は、電動パーキングブレーキ(EPB)を搭載した車両であることが好ましい。バッテリ失陥時には、電動パーキングブレーキが使用できなくなり、本実施形態のようにPレンジで駐車できることの有用性が増大するからである。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0043】
(1)上記実施形態では、バックアップ制御部をCPU11で構成し、失陥検出回路12、モニタ回路13、放電回路15、ROM18等を個別に構成する例を示したが、これに限られない。例えば、CPU11、失陥検出回路12、およびモニタ回路13を一個のASIC(特定用途用IC)で構成するようにしてもよい。すなわち、バックアップ制御部に、失陥検出部、およびモニタ回路の機能を含めるようにしてもよい。あるいは、CPU11、失陥検出回路12、モニタ回路13、放電回路15、およびROM18を一個のASICで構成するようにしてもよい。さらには、バックアップ制御部は、CPUによらずに、複数の論理回路によって構成され、複数の論理回路による論理構成によって各処理が実行されるようにしてもよい。
【0044】
(2)上記実施形態では、バッテリBaの失陥時にユーザによるPレンジへのシフト指示として使用されるシフト指示部を、Pレンジスイッチ24およびドアスイッチ31で構成する例を示したが、これに限られない。例えば、これらに、さらに、プッシュスタートスイッチを追加するようにしてもよい。あるいは、新たに、バッテリ失陥時専用のシフト指示部を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…バックアップシステム
10…バックアップ電源装置
11…CPU(バックアップ制御部)
12…失陥検出回路
13…モニタ回路
16…キャパシタ(バックアップ電源)
20…電力線の一端部
21…シフト制御ECU(シフト制御部)
24…Pレンジシフトスイッチ(シフト指示部)
30…ボディコントロールモジュール
31…ドアスイッチ(シフト指示部)
Ba…バッテリ
図1
図2
図3
図4