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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】配線モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20220114BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220114BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20220114BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20220114BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20220114BHJP
   H01M 50/569 20210101ALI20220114BHJP
【FI】
H01M50/204 401D
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/284
H01M50/569
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021530562
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 JP2020024022
(87)【国際公開番号】W WO2021005999
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2019125848
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】平光 宏臣
(72)【発明者】
【氏名】董 雪清
(72)【発明者】
【氏名】筒木 正人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悠人
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-027831(JP,A)
【文献】特表2014-503943(JP,A)
【文献】特開2018-059902(JP,A)
【文献】中国実用新案第205621791(CN,U)
【文献】特開2016-122577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/204
H01M 50/569
H01M 10/48
H01M 50/209
H01M 50/284
H01M 50/519
H01M 50/505
H01M 50/249
H01M 50/284
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子を有する複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、
前記電極端子に接続されるバスバーと、可撓性を有する可撓性基板と、を有し、
前記バスバーは前記可撓性基板に向けて延びる延出部を有し、前記延出部は貫通孔を有し、前記貫通孔のうち前記可撓性基板側は前記可撓性基板によって塞がれており、前記可撓性基板は対象物の温度を検知するための第1導電路を有し、前記第1導電路にはサーミスタが接続されており、
前記サーミスタは前記貫通孔内に配されており、前記貫通孔内には樹脂が充填されており、前記樹脂によって前記サーミスタが覆われており、
前記貫通孔内に充填された前記樹脂は、前記延出部のうち前記可撓性基板によって塞がれた側と反対側の面と同じか、または、前記反対側の面よりも盛り上がっている配線モジュール。
【請求項2】
前記延出部と前記可撓性基板との間は液密状態である請求項1に記載の配線モジュール。
【請求項3】
前記バスバーから前記可撓性基板に延びる連結部を有し、
前記連結部は、前記可撓性基板に形成された接続用ランドに接続されている請求項1または請求項2に記載の配線モジュール。
【請求項4】
前記可撓性基板は前記蓄電素子の電圧を検知する第2導電路を有し、前記接続用ランドは前記第2導電路に接続されている請求項3に記載の配線モジュール。
【請求項5】
前記サーミスタが前記可撓性基板に取り付けられた状態における前記サーミスタの前記可撓性基板からの突出高さ寸法は、前記延出部の前記貫通孔が前記可撓性基板に塞がれた状態における前記延出部の前記可撓性基板からの突出高さ寸法以下である請求項1から請求項4いずれか1項に記載の配線モジュール。
【請求項6】
車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであって、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極および負極の電極端子を有する複数の単電池が並べられてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールとして特開2017-27831号公報に記載されたものが知られている。この電池配線モジュールは、複数の単電池の隣接する単電池の正極および負極の電極端子を接続する複数の接続部材と、複数の接続部材を介して複数の単電池の電圧を検知する複数の電圧検知線を有するフレキシブルプリント基板とを備える。各電圧検知線の途中には、当該電圧検知線に過電流が流れた場合に電圧検知線の温度上昇を検知して電圧検知線に流れる電流を制限するサーミスタが設けられ、サーミスタは、絶縁樹脂によってオーバーコートされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-27831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、サーミスタの周囲には、カバーレイ層が剥離された開口部が形成されている。しかしながらカバーレイ層は比較的に薄いので、サーミスタを絶縁樹脂で覆う際に絶縁樹脂が開口部からあふれ出すことにより、サーミスタを覆う絶縁樹脂の量がばらつくことが懸念される。すると、サーミスタと絶縁樹脂とを含む全体的な熱容量が各サーミスタごとにばらついてしまうので、サーミスタの測温精度が低下することが懸念される。
【0005】
本開示は、サーミスタの測温精度が向上された配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、本開示は、電極端子を有する複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、前記電極端子に接続されるバスバーと、可撓性を有する可撓性基板と、を有し、前記バスバーは前記可撓性基板に向けて延びる延出部を有し、前記延出部は貫通孔を有し、前記貫通孔のうち前記可撓性基板側は前記可撓性基板によって塞がれており、前記可撓性基板は対象物の温度を検知するための第1導電路を有し、前記第1導電路にはサーミスタが接続されており、前記サーミスタは前記貫通孔内に配されており、前記貫通孔内には樹脂が充填されており、前記樹脂によって前記サーミスタが覆われている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、サーミスタの測温精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1にかかる蓄電モジュールが搭載された車両を示す模式図である。
図2図2は、実施形態1にかかる蓄電モジュールを示す斜視図である。
図3図3は、配線モジュールを示す一部拡大斜視図である。
図4図4は、配線モジュールを示す一部拡大平面図である。
図5図5は、配線モジュールにおいて樹脂が充填される前の状態を示す平面図である。
図6図6は、配線モジュールにおいて樹脂が充填される前の状態を示す斜視図である。
図7図7は、図4におけるVI-VI線断面図である。
図8図8は、実施形態2にかかる配線モジュールにおいて、樹脂に埋設された状態のサーミスタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様が列挙されて説明される。
【0010】
(1)本開示は、電極端子を有する複数の蓄電素子に取り付けられる配線モジュールであって、前記電極端子に接続されるバスバーと、可撓性を有する可撓性基板と、を有し、前記バスバーは前記可撓性基板に向けて延びる延出部を有し、前記延出部は貫通孔を有し、前記貫通孔のうち前記可撓性基板側は前記可撓性基板によって塞がれており、前記可撓性基板は対象物の温度を検知するための第1導電路を有し、前記第1導電路にはサーミスタが接続されており、前記サーミスタは前記貫通孔内に配されており、前記貫通孔内には樹脂が充填されており、前記樹脂によって前記サーミスタが覆われている。
【0011】
可撓性基板によって塞がれた貫通孔の内側の領域には所定の体積の樹脂を充填することができる。このため、貫通孔の内部に充填された樹脂の量が変動することが抑制される。この結果、サーミスタと、サーミスタを覆う樹脂の熱容量が変動することが抑制されるので、サーミスタの測温精度を向上させることができる。
【0012】
(2)前記延出部と前記可撓性基板との間は液密状態であることが好ましい。
【0013】
延出部と可撓性基板との間が液密状態になっていることにより、可撓性基板によって塞がれた貫通孔内に充填された樹脂が、延出部と可撓性基板との間に形成された隙間から外部に漏洩することが抑制される。これにより、貫通孔内に充填された樹脂の量が変動することを更に抑制できるので、サーミスタの測温精度をさらに向上させることができる。
【0014】
(3)本開示は、前記バスバーから前記可撓性基板に延びる連結部を有し、前記連結部は、前記可撓性基板に形成された接続用ランドに接続されていることが好ましい。
【0015】
バスバーと可撓性基板とが連結部によって接続されているので、バスバーと可撓性基板とが接続された部分の機械的強度を向上させることができる。
【0016】
(4)本開示は、前記可撓性基板は前記蓄電素子の電圧を検知する第2導電路を有し、前記接続用ランドは前記第2導電路に接続されていることが好ましい。
【0017】
連結部を介して蓄電素子の電圧を検知することができるので、連結部と異なる部材によって蓄電素子の電圧を検知する場合に比べて部品点数を削減できる。
【0018】
(5)前記サーミスタが前記可撓性基板に取り付けられた状態における前記サーミスタの前記可撓性基板からの突出高さ寸法は、前記延出部の前記貫通孔が前記可撓性基板に塞がれた状態における前記延出部の前記可撓性基板からの突出高さ寸法以下であることが好ましい。
【0019】
貫通孔内に樹脂が充填された後、延出部の上面をスキージ、ドクターブレード等でならすことにより、貫通孔から溢れ出た樹脂が除去される。これにより貫通孔内に充填される樹脂の量が均一化されるので、樹脂の熱容量も均一化される。これによりサーミスタの測温精度を向上させることができる。
【0020】
(6)配線モジュールは、車両に搭載されて用いられる車両用の配線モジュールであってもよい。樹脂によってサーミスタが覆われているので、配線モジュールは耐水性に優れる。このため、本開示にかかる配線モジュールは、湿度が変化する環境下で使用される車両に好適に用いることができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態が説明される。本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<実施形態1>
本開示を車両1に搭載される蓄電パック2に適用した実施形態1が図1から図7を参照しつつ説明される。蓄電パック2は、電気自動車、またはハイブリッド自動車等の車両1に搭載されて、車両1の駆動源として用いられる。以下の説明においては、複数の部材については一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0023】
[全体構成]
図1に示されるように、車両1の中央付近には蓄電パック2が配設されている。車両1の前部にはPCU3(Power Control Unit)が配設されている。蓄電パック2とPCU3とは、ワイヤーハーネス4によって接続されている。蓄電パック2とワイヤーハーネス4とは図示しないコネクタによって接続されている。蓄電パック2は複数の蓄電素子11を備えた蓄電モジュール10を有する。
【0024】
図2に示されるように、蓄電モジュール10は、電極端子13を有する複数の蓄電素子11と、複数の蓄電素子11に取り付けられた配線モジュール20と、を備える。以下では、矢線Zで示される方向を上方とし、矢線Yで示される方向を前方とし、矢線Xで示される方向を左方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0025】
[蓄電素子11]
蓄電素子11(対象物の一例)は前後方向に扁平な直方体形状をなしている。蓄電素子11の上面には、左端部と右端部のそれぞれから、電極端子13が上方に突出している。1つの蓄電素子11に形成された2つの電極端子13のうち、一方が正極で他方が負極となっている。
【0026】
[配線モジュール20]
配線モジュール20は、複数の蓄電素子11の上面の、左端部寄りの部分と、右端部寄りの部分とに配設される。図2においては、複数の蓄電素子11の左端部側に配された配線モジュール20が省略されている。
【0027】
配線モジュール20は、複数のバスバー21と、可撓性基板30とを備える。可撓性基板30の下方には、絶縁性の合成樹脂からなる絶縁プロテクタ40が配されている。図2においては、配線モジュール20に配された複数のバスバー21のうち一部のバスバー21が示され、他は省略されている。
【0028】
[バスバー21]
図3および図4に示されるように、バスバー21は、金属板材を所定の形状にプレス加工して形成される。バスバー21を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等、任意の金属を適宜に選択できる。バスバー21は、上方から見て前後方向に長い長方形状をなす本体部22と、本体部22の左側縁の後端部寄りの位置から左方に延びる延出部23と、を有する。
【0029】
バスバー21は、異なる蓄電素子11の隣り合う電極端子13同士に接続される。バスバー21の前後方向の長さ寸法は、隣り合う電極端子13を上方から覆う程度に設定されている。バスバー21と電極端子13とを接続する手法は、レーザー溶接、半田付け等、特に限定されない。本実施形態においては、バスバー21と電極端子13とはレーザー溶接されている。バスバー21には上方から見て円形状をなす溶接痕24が形成されている。溶接痕24の形状は限定されず、直線状でもよい。
【0030】
図5に示されるように、延出部23には、上下方向に貫通する貫通孔25が形成されている。貫通孔25は上下方向から見て、角の丸められた四角形状に形成されている。
【0031】
[可撓性基板30]
図5におよび図6に示されるように、本実施形態にかかる可撓性基板30は、フレキシブルプリント基板(FPC)である。可撓性基板30は、絶縁フィルムからなる支持基板35の上面または下面に銅製の導体箔によって第1導電路31および第2導電路32が形成されており、第1導電路31および第2導電路32がカバーレイ層(図示せず)によって覆われている。第1導電路31および第2導電路32は、公知のプリント配線技術により支持基板35上に形成された銅箔がパターニングされることにより形成される。
【0032】
第1導電路31にはサーミスタ26が直列に接続されている(図4参照)。図5に示されるように、第1導電路31には、サーミスタ26が接続される部分に、一対の測温ランド33が形成されている。サーミスタ26は直方体形状をなしており、サーミスタ26の長手方向の両端部はリード端子27されている。このリード端子27がそれぞれ一対の測温ランド33に接続されている。サーミスタ26のリード端子27と測温ランド33とは、半田付け等の公知の手法により接続されている。
【0033】
第2導電路32の端部には、電圧検知ランド34(接続用ランドの一例)が形成されている。電圧検知ランド34には、連結部28が接続されている。電圧検知ランド34と連結部28とは、半田付け等の公知の手法により接続されている。
【0034】
連結部28は金属板材が所定の形状にプレス加工されてなる。連結部28を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金等、必要に応じて任意の金属を選択できる。
【0035】
連結部28の一方の端部はバスバー21の左端縁のうち前端部寄りの部分に接続されており、連結部28の他方の端部は可撓性基板に形成された電圧検知ランド34に接続されている。連結部28とバスバー21とは、リフロー半田付け、レーザー溶接等の公知の手法により接続されている。
【0036】
[絶縁プロテクタ40]
図2に示されるように、絶縁プロテクタ40は、前後方向に細長く延びて形成されている。絶縁プロテクタ40の左右方向の幅寸法は、可撓性基板30の左右方向の幅寸法よりも大きく形成されている。絶縁プロテクタ40の上面には可撓性基板30が取り付けられている。絶縁プロテクタ40と可撓性基板30とを固定する手段は特に限定されず、例えば、接着剤によって接着されていてもよく、ネジ、クリップ等の別部材によって固定されていてもよく、熱溶着によって固定されていてもよい。
【0037】
絶縁プロテクタ40の右側縁には右方に突出する複数の仕切壁41が間隔を空けて形成されている。仕切壁41は、バスバー21が可撓性基板30に接続された状態で、バスバー21の前方と、後方に位置するようになっている。これにより、前後方向について隣り合うバスバー21同士が仕切壁41によって隔てられるようになっている。
【0038】
絶縁プロテクタ40の左側縁には、左方に突出する複数の仕切壁42が前後方向に間隔を空けて形成されている。配線モジュール20が複数の蓄電素子11に取り付けられた状態で、仕切壁42は、隣り合う蓄電素子11の間に位置して隣り合う蓄電素子11同士を仕切るようになっている。
【0039】
[樹脂29]
図5および図6に示されるように、可撓性基板30の上面にバスバー21の延出部23が載置された状態で、貫通孔25の下側(可撓性基板30側)は、可撓性基板30によって塞がれている。延出部23の貫通孔25内には、サーミスタ26と、測温ランド33と、第1導電路31の一部が位置するようになっている。貫通孔25の内形状は、サーミスタ26の外形状よりも大きく形成されている。上下方向について、バスバー21の延出部23の厚さ寸法は、サーミスタ26の高さ寸法と実質的に同じに設定されている。実質的に同じとは、同じである場合と含むとともに、同じでない場合であっても同じと認定しうる場合を含む。
【0040】
図7に示されるように、貫通孔25内にサーミスタ26が位置した状態で、貫通孔25内には、樹脂29が充填されている。樹脂29によって、バスバー21と可撓性基板30とが固定される。
【0041】
樹脂29は合成樹脂を含有し、貫通孔25内に充填されるときには流動状態にあり、貫通孔25内に充填された後に固化する性質を有する。樹脂29は溶媒を含有してもよく、また、酸化防止剤等の添加物等を含有してもよい。樹脂29としては、いわゆるポッティング材、接着剤等、公知の材料を適宜に選択できる。樹脂29としては、熱伝導率が比較的に高い材料が好ましい。延出部23からサーミスタ26へ迅速に熱が伝達されるからである。
【0042】
樹脂29は、貫通孔25内において、少なくともバスバー21の上端部が樹脂29によって覆われる程度に満たされている。これによりサーミスタ26は樹脂29に埋設されている。本実施形態においては、樹脂29は、バスバー21の上端部よりも上方に盛り上がるように充填されている。これにより樹脂29は、貫通孔25の孔縁から外方に流れ出た状態になっている。貫通孔25内に樹脂29が充填された状態において、樹脂29は、上方から見て円形状をなしているようになっている。
【0043】
延出部23と可撓性基板30との間は液密状態になっている。延出部23と可撓性基板30とが密着した状態で貫通孔25内に樹脂29が充填されることにより、延出部23と可撓性基板30とが液密状態で固定される構成となっていてもよく、また、延出部23と可撓性基板30との隙間に樹脂29が侵入した後に固化することによって延出部23と可撓性基板30とが液密状態になっていてもよい。これにより、貫通孔25の内部の空間は液密状態にされている。
【0044】
[実施形態の製造工程]
続いて、本実施形態にかかる配線モジュールの製造工程の一例について説明される。配線モジュールの製造工程は以下の記載に限定されない。
【0045】
可撓性基板30にプリント配線技術により、第1導電路31および第2導電路32が形成される。可撓性基板30の下面に絶縁プロテクタ40が接着される。測温ランド33にサーミスタ26が載置されて測温ランド33とサーミスタ26のリード端子27とが半田付けされるとともに、電圧検知ランド34に連結部28が載置されて電圧検知ランド34と連結部28とが半田付けされる。
【0046】
バスバー21の延出部23に形成された貫通孔25内にサーミスタ26が位置するように、バスバー21が可撓性基板30の上面に載置される。貫通孔25内に、公知のディスペンサ等により液体状の樹脂29が充填される。このとき、上方から治具で延出部23を可撓性基板30に押圧することにより、延出部23と可撓性基板30とを密着させた状態で樹脂29が充填されるようにしてもよい。樹脂29は、貫通孔25の内側の体積よりもやや多く充填される。これにより配線モジュール20が完成する。
【0047】
複数の蓄電素子11が前後方向に沿って並べられる。複数の蓄電素子11の上面に配線モジュール20が載置される。バスバー21と、蓄電素子11の電極端子13とがレーザー溶接される。これにより蓄電モジュール10が完成する。
【0048】
[本実施形態の作用効果]
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態は、電極端子13を有する複数の蓄電素子11に取り付けられる配線モジュール20であって、電極端子13に接続されるバスバー21と、可撓性を有する可撓性基板30と、を有し、バスバー21は可撓性基板30に向けて延びる延出部23を有し、延出部23は貫通孔25を有し、貫通孔25のうち可撓性基板30側は可撓性基板30によって塞がれており、可撓性基板30は対象物の温度を検知するための第1導電路31を有し、第1導電路31にはサーミスタ26が接続されており、サーミスタ26は貫通孔25内に配されており、貫通孔25内には樹脂29が充填されており、樹脂29によってサーミスタ26が覆われている。
【0049】
通電時に、蓄電素子11で発生した熱は電極端子13を介してバスバー21へと熱伝達される。バスバー21に伝達された熱はバスバー21内を熱伝導して延出部23へと伝わる。延出部23に伝わった熱は、貫通孔25内に充填された樹脂29へと熱伝達される。樹脂29に伝わった熱は樹脂29の内部へと熱伝導され、サーミスタ26へと熱伝達される。これにより、蓄電素子11の温度をサーミスタ26によって測定することができる。
【0050】
サーミスタ26を覆う樹脂29の量がばらつくと、樹脂29の熱容量もばらつくので、サーミスタ26の測温性能が低下することが懸念される。
【0051】
本実施形態によれば、可撓性基板30によって塞がれた貫通孔25の内側の領域には所定の体積の樹脂29を充填することができる。このため、貫通孔25の内部に充填された樹脂29の量が変動することが抑制される。この結果、サーミスタ26と、サーミスタ26を覆う樹脂29の熱容量が変動することが抑制されるので、サーミスタ26の測温精度を向上させることができる。
【0052】
本実施形態によれば、延出部23と可撓性基板30との間は液密状態である。
【0053】
延出部23と可撓性基板30との間が液密状態になっていることにより、可撓性基板30によって塞がれた貫通孔25内に充填された樹脂29が、延出部23と可撓性基板30との間に形成された隙間から外部に漏洩することが抑制される。これにより、貫通孔25内に充填された樹脂29の量が変動することを更に抑制できるので、サーミスタ26の測温精度をさらに向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態にかかる配線モジュール20は、バスバー21から可撓性基板30に延びる連結部28を有し、連結部28は、可撓性基板30に形成された電圧検知ランド34に接続されている。
【0055】
バスバー21と可撓性基板30とが連結部28によって接続されているので、バスバー21と可撓性基板30とが接続された部分の機械的強度を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、可撓性基板30は蓄電素子11の電圧を検知する第2導電路32を有し、電圧検知ランド34は第2導電路32に接続されている。
【0057】
連結部28を介して蓄電素子11の電圧を検知することができるので、連結部28と異なる部材によって蓄電素子11の電圧を検知する場合に比べて部品点数を削減できる。
【0058】
本実施形態にかかる配線モジュール20は車両1に搭載されて用いられる車両用の配線モジュール20である。本実施形態においては、樹脂29によってサーミスタ26が覆われているので、配線モジュール20は耐水性に優れる。このため、本実施形態にかかる配線モジュール20は、湿度が変化する環境下で使用される車両1に好適に用いることができる。
【0059】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2について、図8を参照しつつ説明する。本実施形態にかかる配線モジュール50においては、上下方向について、サーミスタ26が可撓性基板30の上面に取り付けられた状態におけるサーミスタ26の可撓性基板30の上面からの突出高さ寸法は、延出部23の貫通孔25が可撓性基板30に塞がれた状態における延出部23の可撓性基板30の上面からの突出高さ寸法以下に設定されている。
【0060】
貫通孔25内に充填された樹脂59の上面と、延出部23の上面との相対的な位置関係は特に限定されない。例えば、貫通孔25内に充填された樹脂59の上面は、延出部23の上面と面一に形成されていてもよく、延出部23の上面よりも上方に盛り上がっていてもよく、また、延出部23の上面よりも下方に凹んでいてもよい。
【0061】
本実施形態では、上下方向について、貫通孔25内に充填された樹脂59の上面の高さ位置は、延出部23の上面の高さ位置と実質的に同じに設定されている。実質的に同じとは、同じである場合を含むと共に、同じでない場合であっても実質的に同じと認定しうる場合も含む。
【0062】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0063】
本実施形態においては、貫通孔25内に公知のディスペンサ等により液体状の樹脂59が充填される。その後、延出部23の上面に、スキージ、ドクターブレード等を接触させながら移動させる。これにより貫通孔25から溢れ出た樹脂59が除去され、樹脂59の上面が、延出部23の上面と面一にならされる。この結果、貫通孔25内に充填される樹脂59の量が均一化されるので、樹脂59の熱容量も均一化される。これによりサーミスタ56の測温精度を向上させることができる。
【0064】
<他の実施形態>
(1)延出部23に形成された貫通孔25の内形状は、上方から見て、三角形状、五角形状等の多角形状としてもよく、円形状、長円形状としてもよい。
【0065】
(2)本実施形態においては、連結部28はバスバー21と別部材としたが、これに限られず、バスバー21と一体に形成される構成としてもよく、例えば、バスバー21から可撓性基板30の電圧検知ランド34に向かって延出された構成とすることができる。また、連結部28は省略してもよい。
【0066】
(3)上記した実施形態では、可撓性基板30はフレキシブルプリント基板としたが、これに限られず、例えばフレキシブルフラットケーブル(FFC)であってもよい。
【0067】
(4)バスバー21は、1つ、または3つ以上の電極端子13に接続される構成としてもよい。
【0068】
(5)蓄電素子11は二次電池でもよく、また、キャパシタでもよい。
【0069】
(6)実施形態1では、サーミスタ26とバスバー21の延出部23とは実質的に同じ高さ寸法とし、実施形態2では、サーミスタ56はバスバー21の延出部23よりも低い高さ寸法としたが、これに限られず、サーミスタの可撓性基板の上面からの突出高さ寸法は、延出部の貫通孔が可撓性基板に塞がれた状態における延出部の可撓性基板の上面からの突出高さ寸法よりも高く設定されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1:車両
2:蓄電パック
3:PCU
4:ワイヤーハーネス
10: 蓄電モジュール
11: 蓄電素子
13: 電極端子
20、50: 配線モジュール
21: バスバー
22: 本体部
23: 延出部
24: 溶接痕
25: 貫通孔
26、56: サーミスタ
27: リード端子
28: 連結部
29、59: 樹脂
30: 可撓性基板
31: 第1導電路
32: 第2導電路
33: 測温ランド
34: 電圧検知ランド
35: 支持基板
40: 絶縁プロテクタ
41: 仕切壁
42: 仕切壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8