(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】車両のドア開口部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20220114BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220114BHJP
B60R 21/02 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B62D25/06 A
B60J5/04 Z
B60R21/02
(21)【出願番号】P 2017172236
(22)【出願日】2017-09-07
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】飛沢 孝男
(72)【発明者】
【氏名】カセムワッタナー パニタン
【審査官】米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-170012(JP,U)
【文献】特開2015-151834(JP,A)
【文献】特開昭57-44075(JP,A)
【文献】米国特許第6059352(US,A)
【文献】特開2005-254891(JP,A)
【文献】特開2000-280744(JP,A)
【文献】登録実用新案第3066863(JP,U)
【文献】実開昭58-8614(JP,U)
【文献】実開昭57-159514(JP,U)
【文献】特開2013-132985(JP,A)
【文献】特開2013-124075(JP,A)
【文献】特開2003-285697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
B60J 5/04
B60R 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に設けられた1つのドア開口を観音開き式の2つのドアによって開閉する車両のドア開口部構造であって、
前記車両のルーフパネルの外縁部に沿って延びて前記ドア開口の上方を区画するルーフレールと、
前記2つのドアのうちの少なくとも第1ドアの自由端側の上端部に設けられるロック機構と、
前記ルーフレール
に固定される
固定部と、前記固定部よりも下方で前記ルーフレール及び前記固定部から離間して配置される入力部と、を有するストライカブラケットと、
前記ストライカブラケットに固定され、前記第1のドアを閉止した際に前記ロック機構にロックされるストライカと、を備え、
前
記第1ドアの
前記自由端側の上面は、前記第1ドアを閉止した状態で
前記ストライカブラケットの前記入力部が上方から対向する対向領域を有し、
前記
ストライカブラケットの前記入力部は、前記第1ドアを閉止した状態で
、前記第1ドアの前記上面の前記対向領域の上方近傍に配置され
、前記ルーフレールに対して上方からの荷重が入力して前記ルーフレールが下方へ変形した際に、前記第1ドアの前記上面の前記対向領域に当接して上方からの荷重を前記第1ドアの前記自由端側へ入力する
ことを特徴とする車両のドア開口部構造。
【請求項2】
傾動規制部材を備える請求項1に記載のドア開口部構造であって
、
前記ルーフレールは、前記ドア開口の開口幅方向に延びるとともに、少なくとも前記第1ドアを閉止した状態で前記第1ドアの前記自由端側の前記上端部に上方から対向する中間領域を有し、
前記ストライカは、前記ルーフレールの前記中間領域の下端よりも下方に配置され前記開口幅方向に延びるストライカ本体部を有し、前記第1ドアを閉止した際に前記ロック機構が車室外側から前記ストライカ本体部と係合して前記ロック機構にロックされ、
前記傾動規制部材は、前記ルーフレールの前記中間領域に固定される固定部と、前記固定部から前記ストライカ本体部よりも下方へ延びる延長部と、前記延長部の下端から車室外側へ延びる下端部と、を有し、
前記傾動規制部材の
前記下端部は、前記
第1ドアを閉止した状態で、前記ロック機構と前記ストライカ
本体部との係合部よりも下方で前記
第1ドアの前記上端部の車室側の内側面に近接する
ことを特徴とする車両のドア開口部構造。
【請求項3】
請求項2に記載のドア開口部構造であって、
前記傾動規制部材の前記下端部に取り付けられる保護部材を備える
ことを特徴とする車両のドア開口部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観音開き式のドアを有する車両のドア開口部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フロントドアとリヤドアとで構成されるサイドドアが設けられ、フロントドアの前端部とリヤドアの後端部とに、それぞれヒンジ部が設けられたフリースタイル構造(観音開き構造)の車両のサイドドアが記載されている。このフリースタイル構造のドアは、フロントドアが優先して開放され、リヤドアはフロントドアの開放後において、その開閉が許容されるように構成している。各ドアはセンターピラーレスの単一のドア開口部を開閉可能に覆うもので、フロントドアの後端部にはロック部材を設け、このロック部材がリヤドアの前端部中間に設けられたストライカでロックされ、リヤドアの前端部上下にはロック部材を設け、これら各ロック部材はドア開口部の上辺部に設けたボディ側のストライカおよびドア開口部の下辺部に設けたボディ側のストライカで、それぞれロックされるように構成している。リヤドアの前端上部のロック部材のラッチを係合するストライカは、ルーフパネルのサイド部で車両の前後方向に延びるルーフサイドレールのルーフサイドレールインナに締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両は、フロントドア及びリヤドアに覆われるセンターピラーレスの単一のドア開口部を有する。このように、2つの観音開き式のドアに対して単一のドア開口部を有する車両では、2つのドアの間にピラーを有さないので、車両の上方からルーフサイドレールに荷重が入力した際に、ルーフサイドレール(ルーフレール)が下方へ変形して、乗員の生存空間を狭めてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、観音開き式のドアを有する車両において、ルーフレールに上方から荷重が入力した際のルーフレールの変形を抑えて、乗員の生存空間を確保することが可能な車両のドア開口部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、車体側に設けられた1つのドア開口を観音開き式の2つのドアによって開閉する車両のドア開口部構造であって、ルーフレールとロック機構とストライカブラケットとストライカとを備える。ルーフレールは、車両のルーフパネルの外縁部に沿って延びてドア開口の上方を区画する。ロック機構は、2つのドアのうちの少なくとも第1ドアの自由端側の上端部に設けられる。ストライカブラケットは、ルーフレールに固定される固定部と、固定部よりも下方でルーフレール及び固定部から離間して配置される入力部と、を有する。ストライカは、ストライカブラケットに固定され、第1のドアを閉止した際にロック機構にロックされる。第1ドアの自由端側の上面は、第1ドアを閉止した状態でストライカブラケットの入力部が上方から対向する対向領域を有する。ストライカブラケットの入力部は、第1ドアを閉止した状態で、第1ドアの上面の対向領域の上方近傍に配置され、ルーフレールに対して上方からの荷重が入力してルーフレールが下方へ変形した際に、第1ドアの上面の対向領域に当接して上方からの荷重を第1ドアの自由端側へ入力する。
【0007】
上記構成では、ストライカブラケットの入力部が、2つのドアのうちの第1ドアを閉止した状態で、ルーフレールの下面と上下に対向する第1ドアの自由端側の上面の対向領域の上方近傍に配置されて対向領域に上方から対向するので、ルーフレールが下方へ変形した際に、ストライカブラケットの入力部を、ルーフレールよりも先に第1ドアの自由端側の上面に当接させることができる。また、ストライカブラケットの入力部は、第1ドアを閉止した状態でルーフレールが下方へ変形した際に、第1ドアの上面の対向領域に当接して上方からの荷重を第1ドアの自由端側へ入力する。このため、上方からの荷重を早期に第1ドアの自由端側へ伝達することができるので、ルーフレールに入力する荷重を、第1ドアを介して早期に下方(例えば、フロアパネル側)へ伝達することができ、ルーフレールの変形を抑えて、乗員の生存空間を確保することができる。
【0008】
また、第1ドアの自由端側は、上下方向に延び、上下方向の荷重に対する剛性が高いので、ルーフレールからの荷重を効果的に下方へ伝達することができる。
【0009】
従って、観音開き式のドアを有する車両において、ルーフレールに上方からの荷重が入力した際のルーフレールの変形を抑えて、乗員の生存空間を確保することができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のドア開口部構造であって、傾動規制部材を備える。ルーフレールは、ドア開口の開口幅方向に延びるとともに、少なくとも第1ドアを閉止した状態で第1ドアの自由端側の上端部に上方から対向する中間領域を有する。ストライカは、ルーフレールの中間領域の下端よりも下方に配置され開口幅方向に延びるストライカ本体部を有し、第1ドアを閉止した際にロック機構が車室外側からストライカ本体部と係合してロック機構にロックされる。傾動規制部材は、ルーフレールの中間領域に固定される固定部と、固定部からストライカ本体部よりも下方へ延びる延長部と、延長部の下端から車室外側へ延びる下端部と、を有する。傾動規制部材の下端部は、第1ドアを閉止した状態で、ロック機構とストライカ本体部との係合部よりも下方で第1ドアの上端部の車室側の内側面に近接する。
【0011】
上記構成では、傾動規制部材の下端部は、第1ドア(ロック機構が設けられるドア)を閉止した状態で、ロック機構とストライカ本体部との係合部よりも下方で第1ドアの上端部の車室側の内側面に近接するので、ルーフレールに上方からの荷重が入力して、ロック機構とストライカ本体部との係合部を中心としてルーフレールが車室側の下方へ傾動する際に、傾動規制部材の下端部が第1ドアの上端部の内側面に当接する。このため、ルーフレールに上方からの荷重が入力した際に、傾動規制部材の下端部と第1ドアとの当接によってルーフレールの上記傾動を抑えることができ、且つドア側への効率的な荷重伝達を行うことにより、ルーフレールの変形を抑えて乗員の生存空間を確保することができる。例えば、ロック機構がドアのレインフォースに対して固定されている場合には、ルーフレールに上方から荷重が入力した際に、ドアのレインフォースへの効率的な荷重伝達を行うことにより、ルーフレールの変形を抑えて乗員の生存空間を確保することができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様のドア開口部構造であって、保護部材を備える。保護部材は、傾動規制部材の下端部に取り付けられる。
【0013】
上記構成では、傾動規制部材の下端部に取り付けられる保護部材を備えるので、乗員がドア開口から車両に乗降する際に、乗員の頭部がストライカよりも下方へ延びる傾動規制部材に衝突しても、保護部材によって乗員の頭部を保護することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、観音開き式のドアを有する車両において、ルーフレールに上方から荷重が入力した際のルーフレールの変形を抑えて、乗員の生存空間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るドア開口部構造を適用した車両の概略側面図である。
【
図3】第1実施形態に係るリアドア用ストライカ及びストライカブラケットの斜視図である。
【
図4】他の実施形態に係るドア開口部構造の説明図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るドア開口部構造の概略断面図である。
【
図6】第2実施形態に係るリアドア用ストライカ及びストライカブラケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るドア開口部構造を適用した車両1では、車体2側に設けられた1つのドア開口3を観音開き式の2つのドア11,12によって開閉する。ドア開口3は、車体2の側部で開口して車室8と車外とを連通する。ドア開口3の上方は、車両1のルーフパネル4の後述するルーフサイドレール(ルーフレール)13に区画され、ドア開口3の下方は、車両1の車幅方向外側の下部で前後方向に延びるサイドシル部5に区画される。
【0018】
2つのドア11,12のうちの前側のフロントドア11は、その前辺部11aがドア開口3の前方の車体2側にフロントヒンジ6を介して回転自在に連結され、後端(自由端)11b側が車体2の側面に沿った閉止位置と、後端11b側が閉止位置よりも車幅方向外側の前方の開放位置との間を傾動可能である。後端11b側が閉止位置に配置されたフロントドア11は、ドア開口3のうちの前側の領域を閉止する閉止状態となる。後端11b側が開放位置に配置されたフロントドア11は、ドア開口3の前側の領域を開放する開放状態となる。
【0019】
2つのドア11,12のうちの後側のリアドア(第1ドア)12は、その後辺部12aがドア開口3の後方の車体2側にリアヒンジ7を介して回転自在に連結され、前端(自由端)12b側が車体2の側面に沿った閉止位置と、前端12b側が閉止位置よりも車幅方向外側の後方の開放位置との間を傾動可能である。前端12b側が閉止位置に配置されたリアドア12は、ドア開口3のうちの後側の領域を閉止する閉止状態となる。前端12b側が開放位置に配置されたリアドア12は、ドア開口3の後側の領域を開放する開放状態となる。
【0020】
ドア開口3の全域を閉止する際には、リアドア12を閉止状態にしてからフロントドア11を閉止状態にする。一方、ドア開口3の全域を開放する際には、フロントドア11を開放状態にしてからリアドア12を開放状態にする。
【0021】
図1に示すように、車体2側には、上下一対のリアドア用ストライカ14,15がルーフサイドレール13及びサイドシル部5に固定される。リアドア12の前端12b側の上端部及び下端部には、リアロック機構16,17が設けられる。リアロック機構16,17は、リアドア用ストライカ14,15と係合するフック部(図示省略)を有する。リアロック機構16,17には、リアドア用ストライカ14,15が挿入される挿入口(図示省略)が車幅方向内側へ向かって開放されるように形成されており、リアロック機構16,17は、リアドア12が開放位置側から閉止位置へ移動したとき、挿入孔に挿入されたリアドア用ストライカ14,15とフック部とが係合してリアドア12の開放を規制するロック状態に設定される。また、リアロック機構16,17は、リアドア12に設けられる操作部(図示省略)を操作することによって、リアロック機構16,17のフック部とリアドア用ストライカ14,15との係合が解除され、リアドア12の開放を許容する開放許容状態に設定される。
【0022】
フロントドア11の後端11b側の上下方向の中間部には、フロントロック機構18が設けられる。また、リアドア12の前端12b側の上下方向の中間部には、フロントドア用ストライカ19が設けられる。フロントドア11のフロントロック機構18は、フロントドア用ストライカ19と係合するフック部(図示省略)を有する。フロントロック機構18には、フロントドア用ストライカ19が挿入される挿入口(図示省略)が車幅方向内側へ向かって開放されるように形成されており、フロントロック機構18は、フロントドア11が開放位置側から閉止位置へ移動したとき、挿入孔に挿入されたフロントドア用ストライカ19とフック部とが係合してフロントドア11の開放を規制するロック状態に設定される。また、フロントロック機構18は、フロントドア11に設けられる操作部(図示省略)を操作することによって、フロントロック機構18のフック部とフロントドア用ストライカ19との係合が解除され、フロントドア11の開放を許容する開放許容状態に設定される。
【0023】
図2に示すように、リアドア12は、車幅方向外側のリアドアアウタパネル20と、車幅方向内側のリアドアインナパネル21と、リアドア12を補強するレインフォース33とを有する。リアドアアウタパネル20とリアドアインナパネル21とは、その周縁部分同士が接合され、接合されたパネル20,21は、内部に空間22を区画形成する。リアドアアウタパネル20とリアドアインナパネル21との間の空間22には、レインフォース33が配置される。上下のリアロック機構16,17のうち上側のリアロック機構(ロック機構)16(以下、単にリアロック機構16という。)は、リアドア12の前端12b側の上端部のリアドアアウタパネル20とリアドアインナパネル21との間の空間22に配置され、レインフォース33に固定される。リアロック機構16の上面16aは、リアドア12の上方に露出し、リアドア12の上面23の一部を構成する。リアドア12の前端12b側の上面23は、リアドア12の閉止状態で、後述するルーフサイドレール13の下面13aと上下に対向する対向領域26を有する。本実施形態では、リアドア12の前端12b側の上面23の対向領域26は、リアドア12の車幅方向の中央よりも車幅方向内側のリアロック機構16の上面16aに設定される。
【0024】
図1及び
図2に示すように、ルーフサイドレール13は、閉断面状に形成され、ルーフパネル4の車幅方向の外縁部で前後方向に延びる。ルーフサイドレール13は、複数のパネルが重なった状態で接合されたフランジ部27を有する。フランジ部27は、ルーフサイドレール13の下面13aよりも下方へ突出し、その下端が閉止状態のリアドア12の上面23から上方に離間した位置に配置される。ルーフサイドレール13は、その内部空間24にレインフォース28を有する。ルーフサイドレール13は、その断面形状や補強部材(レインフォース28を含む)等によって所定の剛性を確保している。
【0025】
図2及び
図3に示すように、上側のリアドア用ストライカ14(以下、単にリアドア用ストライカ14という。)は、ストライカブラケット(伝達部材)25を介してルーフサイドレール13に対して固定される。
【0026】
ストライカブラケット25は、上下方向と交叉して、ルーフサイドレール13の下面13aに固定される固定板部25aと、固定板部25aから車幅方向外側の下方へ延びる延設部25bとを有し、一枚の鉄板をプレス加工等によって曲折して形成される。固定板部25aは、ルーフサイドレール13の下面13aのうち車幅方向内側に配置され、ルーフサイドレール13の下面13aに下方から面接触した状態でボルト29によって締結固定される。延設部25bは、固定板部25aの車幅方向外端縁から車幅方向外側の下方へ傾斜して延びる傾斜部30と、傾斜部30の下端から曲折して車幅方向外側へ略水平に延びる入力部31とを有する。リアドア12が閉止状態のとき、入力部31は、ルーフサイドレール13のフランジ部27よりも下方、且つリアドア12の上面23の対向領域26の上方近傍に配置される。本実施形態では、リアロック機構16の上面16aがリアドア12の上面23の対向領域26に含まれ、入力部31は、リアロック機構16の上面16aの上方近傍に配置される。
【0027】
リアドア用ストライカ14は、ストライカブラケット25の固定板部25aから下方へ延びてから曲折して車幅方向外側へ延びる略L字状の一対の脚部14a,14bと、前後方向に延びて前後の脚部14a,14bの車幅方向外端部同士を連結するストライカ本体部14cとを有する。前後の脚部14a,14bは、互いに前後に離間して配置される。
【0028】
リアドア12の閉止状態では、リアドア用ストライカ14のストライカ本体部14cとリアロック機構16のフック部とが係合する。閉止状態のリアドア用ストライカ14のストライカ本体部14cとリアロック機構16のフック部との係合部32(以下、リアドア用ストライカ14とリアロック機構16との係合部32と称する。)は、ルーフサイドレール13の車幅方向の中心部よりも車幅方向外側の下方に位置する。ストライカブラケット25の入力部31は、車両1に対する前後方向の位置が、リアドア用ストライカ14とリアロック機構16との係合部32と略同じである。
【0029】
上記のように構成された車両1のドア開口部構造では、リアドア12が閉止状態のとき、ストライカブラケット25の入力部31は、ルーフサイドレール13のフランジ部27よりも下方、且つリアドア12の上面23の対向領域26の上方近傍に配置される。このため、ルーフサイドレール13に上方から荷重が入力して、リアドア用ストライカ14が変形するなどして、ルーフサイドレール13が下方へ移動した際に、ストライカブラケット25の入力部31を、ルーフサイドレール13よりも早期にリアドア12の上面23に当接させることができる。ストライカブラケット25の入力部31は、リアドア12の上面23に当接した際に上方からの荷重をリアドア12の自由端側へ入力する。このように、上方からの荷重を早期にリアドア12の自由端側へ伝達することができるので、ルーフサイドレール13に入力する上方からの荷重を、リアドア12の自由端側を介して早期に下方(例えば、フロアパネル側のサイドシル部5)へ伝達することができ、ルーフサイドレール13の変形を抑えて、乗員の生存空間を確保することができる。
【0030】
また、リアドア12の自由端側は、上下方向に延び、上下方向の荷重に対する剛性が高いので、ルーフサイドレール13からの荷重を効果的に下方へ伝達することができる。また、2つのドア11,12を閉止した状態では、両ドア11,12の自由端側が互いに隣接して上下方向に延び、フロントドア11の自由端側のフロントロック機構18とリアドア12の自由端側のフロントドア用ストライカ19とによって、両ドア11,12の自由端側が互いに連結される。このように、互いに隣接して連結される2つのドア11,12の自由端側が上下方向に延びて、上下方向の荷重に対する剛性が高いので、ルーフサイドレール13からの荷重を更に効果的に下方へ伝達することができる。
【0031】
従って、観音開き式のドア11,12を有する車両において、ルーフサイドレール13に上方からの荷重が入力した際のルーフサイドレール13の変形を抑えて、乗員の生存空間を確保することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、ストライカブラケット25に入力部31を設け、ストライカブラケット25を伝達部材として機能させたが、伝達部材はこれに限定されるものではない。例えば、ストライカブラケット25とは別体の円柱体や直方体等の構造体(伝達部材)をルーフサイドレール13に固定し、この構造体の下端部(入力部)をルーフサイドレール13のフランジ部27よりも下方、且つリアドア12の上面23の対向領域26の上方近傍に配置してもよい。
【0033】
また、本実施形態では、ストライカブラケット25の入力部31を、閉止状態のリアドア12の自由端側の上面23の対向領域26の上方近傍に配置したが、入力部31を配置する位置は、これに限定されるものではない。例えば、
図4に示すように、閉止状態のフロントドア11の後端(自由端)11b側の上方のルーフサイドレール13に伝達部材53を固定し、閉止状態のフロントドア11の後端11b側の上面51のうち、ルーフサイドレール13の下面13aに対向する対向領域52の上方近傍に、伝達部材53の下端部(入力部)54を配置してもよい。この場合であっても、ルーフサイドレール13の上方からの荷重を早期にフロントドア11の自由端側へ伝達することができるので、ルーフサイドレール13に入力する上方からの荷重を、ルーフサイドレール13の自由端側を介して早期に下方(例えば、フロアパネル側のサイドシル部5)へ伝達することができ、ルーフサイドレール13の変形を抑えて、乗員の生存空間を確保することができる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のドア開口部構造は、ストライカブラケット41の形状及び機能が第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0035】
図5及び
図6に示すように、上側のリアドア用ストライカ(ストライカ)40(以下、単にリアドア用ストライカ40という。)は、ストライカブラケット(伝達部材、傾動規制部材)41を介してルーフサイドレール13に対して固定される。
【0036】
ストライカブラケット41は、上下方向と交叉して、ルーフサイドレール13の下面13aに固定される上板部41aと、上板部41aから車幅方向外側の下方へ延びる延設部41bと、上板部41aの下面から下方へ延びる縦板部41cと、縦板部41cの下端縁から曲折して車幅方向外側へ延びる下板部(下端部)41dとを有する。上板部41aは、ルーフサイドレール13の車幅方向の内部側に配置され、ルーフサイドレール13の下面13aに下方から面接触した状態でボルト29によって締結固定される。延設部41bは、上板部41aの車幅方向外端縁から車幅方向外側の下方へ傾斜して延びる傾斜部42と、傾斜部42の下端から曲折して車幅方向外側へ略水平に延びる入力部43とを有する。リアドア(一方のドア)12が閉止状態のとき、入力部43は、ルーフサイドレール13のフランジ部27よりも下方、且つリアドア12の上面23の対向領域26の上方近傍に配置される。本実施形態では、リアロック機構(ロック機構)16の上面16aがリアドア12の上面23の対向領域26に含まれ、入力部43は、リアロック機構16の上面16aの上方近傍に配置される。縦板部41cは、車幅方向と交叉する板体であって、閉止状態のリアドア12のリアロック機構16から車幅方向内側へ離間した位置に配置される。縦板部41cのうち閉止状態のリアドア12のリアロック機構16の挿入口に対応する位置には、上面視略U状のリアドア用ストライカ40が固定され、リアドア用ストライカ40が縦板部41cの車幅方向外側面から車幅方向外側へ突出している。下板部41dは、ストライカブラケット41の下端部に配置されて上下方向と交叉する板体であって、その車幅方向外端部が、閉止状態のリアドア12のリアドアインナパネル21のうち、リアロック機構16の車幅方向内側に配置される領域44の車幅方向内側面(車室8側の内側面)45に近接する位置に配置される。下板部41dには、カバー部材(保護部材)47が下板部41dの先端(車幅方向外端)を車幅方向外側から覆うように取り付けられる。
【0037】
カバー部材47は、ストライカブラケット41の下板部41dの車幅方向外端のエッジを覆う樹脂製のカバーであって、車両1への乗員の乗降時に乗員の頭部をストライカブラケット41の下板部41dから保護する。カバー部材47の車幅方向外端部と閉止状態のリアドア12のリアドアインナパネル21の車幅方向内側面45との間には、隙間が設けられる。なお、カバー部材47は、ゴム等の弾性部材であってもよい。また、カバー部材47の形状や素材は、上記に限定されるものではなく、乗員の頭部を保護可能な様々な形状や素材を適用することができる。
【0038】
リアドア用ストライカ40は、ストライカブラケット41の縦板部41cから車幅方向外側へ突出する前後一対の脚部40a,40bと、前後方向に延びて前後の脚部40a,40bの車幅方向外端部同士を連結するストライカ本体部40cとを有する。前後の脚部40a,40bは、略同じ高さ位置で互いに前後に離間して配置される。
【0039】
リアドア12の閉止状態では、リアドア用ストライカ40のストライカ本体部40cとリアドア12側のリアロック機構16のフック部とが係合する。閉止状態のリアドア用ストライカ40のストライカ本体部40cとリアロック機構16のフック部との係合部46(以下、リアドア用ストライカ40とリアロック機構16との係合部46と称する。)は、ルーフサイドレール13の車幅方向の中心部よりも車幅方向外側の下方に位置する。ストライカブラケット41の入力部43は、車両1に対する前後方向の位置が、リアドア用ストライカ40とリアロック機構16との係合部46と略同じである。ストライカブラケット41の下板部41dの車幅方向外端部は、リアドア用ストライカ14とリアロック機構16との係合部46よりも下方且つ車幅方向内側に配置される。
【0040】
上記のように構成された車両1のドア開口部構造では、リアドア12が閉止状態のとき、ストライカブラケット41の入力部43は、ルーフサイドレール13のフランジ部27よりも下方、且つリアドア12の上面23の対向領域26の上方近傍に配置される。このため、ルーフサイドレール13に上方から荷重が入力して、リアドア用ストライカ40が変形するなどして、ルーフサイドレール13が下方へ移動した際に、ストライカブラケット41の入力部43を、ルーフサイドレール13よりも早期にリアドア12の上面23に当接させることができる。ストライカブラケット41の入力部43は、リアドア12の上面23に当接した際に上方からの荷重をリアドア12の自由端側へ入力する。このように、上方からの荷重を早期にリアドア12の自由端側へ伝達することができるので、ルーフサイドレール13に入力する上方からの荷重を、リアドア12の自由端側を介して早期に下方(例えば、フロアパネル側のサイドシル部5)へ伝達することができ、ルーフサイドレール13の変形を抑えて、乗員の生存空間を確保することができる。
【0041】
また、ストライカブラケット41の下板部41dの車幅方向外端部は、閉止状態のリアドア12のリアドアインナパネル21の車幅方向内側面45に近接する位置に配置される。このため、ルーフサイドレール13に上方(外側(本実施形態では、車幅方向の外側)の上方を含む)から荷重が入力して、リアドア用ストライカ40とリアロック機構16との係合部46を中心としてルーフサイドレール13が下方(内側(本実施形態では、車幅方向の内側)の下方を含む)へ傾動するように変形すると、ストライカブラケット41の下板部41dの車幅方向外端部がリアドア12のリアドアインナパネル21の車幅方向内側面45に早期に当接する。ルーフサイドレール13からの荷重は、リアドアインナパネル21からリアロック機構16を介してリアドア12のレインフォース33へ伝達される。このように、ルーフサイドレール13に上方から荷重が入力した際に、ストライカブラケット41の下板部41dとリアドア12との当接によって早期にルーフサイドレール13の傾動を抑えることができ、且つリアドア12側への効率的な荷重伝達を行うことにより、ルーフサイドレール13の変形を抑えて乗員の生存空間を確保することができる。
【0042】
従って、観音開き式のドア11,12を有する車両において、ルーフサイドレール13に上方からの荷重が入力した際のルーフサイドレール13の変形を抑えて、乗員の生存空間を確保することができる。
【0043】
また、ストライカブラケット41の下板部41dの車幅方向外端部に樹脂製のカバー部材47が取り付けられ、カバー部材47がストライカブラケット41の下板部41dの車幅方向外端のエッジを覆うので、乗員がドア開口3から車両1に乗降する際に、乗員の頭部がリアドア用ストライカ40よりも下方へ延びるストライカブラケット41の下板部41dに衝突しても、カバー部材47によって乗員の頭部を保護することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、リアドア用ストライカ40をストライカブラケット41の縦板部41cに固定し、縦板部41cから車幅方向外側へ突出させたが、これに限定されるものではない。例えば、上記第1実施形態と同様に、ルーフサイドレール13の下面13aに固定される平板状のストライカブラケットから下方へ延びる略L字状の一対の脚部と、前後方向に延びて前後の脚部の車幅方向外端部同士を連結するストライカ本体部とを有するリアドア用ストライカであってもよい。
【0045】
また、本実施形態では、ストライカブラケット41の下板部41dを、閉止状態のリアドア12のリアドアインナパネル21の車幅方向内側面45に近接させることによって、ストライカブラケット41を、傾動規制部材として機能させたが、これに限定されるものではない。例えば、ストライカブラケットとは別体の傾動規制部材をルーフサイドレール13に対して固定し、この傾動規制部材の下端部を、リアドア用ストライカ40よりも下方に配置して、閉止状態のリアドア12のリアドアインナパネル21の車幅方向内側面45に近接させてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、本発明に係る車両のドア開口部構造を、リアドア12側に適用したが、これに限定されるものではなく、フロントドア11の自由端側の上端部にロック機構を設ける場合には、フロントドア11側に適用してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、ストライカブラケット41の下板部41dの車幅方向外端部にカバー部材47を設けたが、カバー部材47を設けなくてもよい。
【0048】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0049】
例えば、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、本発明に係る車両のドア開口部構造を、車両の側部のドア開口3を観音開き式のドア11,12によって開閉する車両1に適用したが、これに限定されるものではなく、車両の後面部のドア開口を観音開き式のドアによって開閉する車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:車両
2:車体
3:ドア開口
4:ルーフパネル
8:車室
11:フロントドア
12:リアドア(第1ドア、一方のドア)
12b:リアドアの前端(自由端)
13:ルーフサイドレール(ルーフレール)
13a:ルーフサイドレールの下面
16:上側のリアロック機構(ロック機構)
23:リアドアの上面
25:ストライカブラケット(伝達部材)
26:対向領域
31,43:入力部
40:リアドア用ストライカ(ストライカ)
41:ストライカブラケット(伝達部材、傾動規制部材)
41d:ストライカブラケットの下板部(下端部)
45:リアドアの車幅方向内側面(車室側の内側面)
46:係合部
47:カバー部材(保護部材)