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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】車両のマッドガード構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/16 20060101AFI20220114BHJP
   B62D 25/18 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B62D25/16 C
B62D25/18 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018015111
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131044
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 悠滋
(72)【発明者】
【氏名】木島 健
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164013(JP,A)
【文献】実開平07-031575(JP,U)
【文献】実開昭55-015157(JP,U)
【文献】特開2015-020607(JP,A)
【文献】特開2008-132823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/16
B62D 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側のマッドガードアッパと下側のマッドガードロアとに分割して構成され、タイヤを後上方から覆うマッドガードと、
前記マッドガードアッパを車体側に取付けるためのマッドガードアッパブラケットと、を備え、
前記マッドガードロアは、前記タイヤのトレッド面と対向するロアカバー部と、前記ロアカバー部の車幅方向外側に設けられるロアアウタ部とを有し、前記マッドガードアッパブラケットを介さずに前記車体側に固定され、
前記マッドガードアッパブラケットは、前記マッドガードロアの前上方に設けられた車体側のマッドガードアッパ被取付部に固定されるブラケット上部と、前記ブラケット上部の下方に配置されるブラケット下部と、前記ブラケット上部と前記ブラケット下部とを連結するブラケット中間部と、前記ブラケット下部から後下方へ延びる板状のアッパカバー部とを有し、
前記マッドガードアッパは、前記ロアカバー部の前上方で前記ブラケット下部に取付けられて前記タイヤの前記トレッド面と対向するアッパインナ部と、前記アッパインナ部の車幅方向外側に設けられて後下方へ延びるアッパアウタ部とを有し、
前記マッドガードロアが車体側に固定され、前記ブラケット上部が前記マッドガードアッパ被取付部に固定され、前記アッパインナ部が前記ブラケット下部に取付けられたマッドガード取付状態では、前記アッパアウタ部の下端部は、前記ロアアウタ部の上端部と近接又は接触し、前記アッパインナ部の下端縁部は、前記ロアカバー部の上端縁部から離間し、前記アッパカバー部は、前記アッパインナ部の下端縁部と前記ロアカバー部の上端縁部との間を閉止するように前記ロアカバー部の上端縁部と近接又は接触して、前記タイヤの前記トレッド面と対向する
ことを特徴とする車両のマッドガード構造。
【請求項2】
請求項1に記載のマッドガード構造であって、
前記マッドガードアッパブラケットは、アッパブラケット本体とカバー部材とに分割して構成され、
前記アッパブラケット本体は、前記ブラケット上部と前記ブラケット下部と前記ブラケット中間部とを一体的に有し、
前記カバー部材は、前記ブラケット下部に固定されるカバー上部と、前記カバー上部から延びる前記アッパカバー部とを一体的に有する
ことを特徴とする車両のマッドガード構造。
【請求項3】
請求項2に記載のマッドガード構造であって、
前記アッパブラケット本体は、前記アッパカバー部の表面に沿うように前記ブラケット下部から線状又は細板状に延びて前記アッパカバー部を支持するカバー部材支持部を一体的に有する
ことを特徴とする車両のマッドガード構造。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のマッドガード構造であって、
車載部品を取付けるために前記マッドガードロアの上方に配置されて車体側に固定される他のブラケットを備え、
前記マッドガードロアと前記マッドガードアッパ被取付部と距離が前記マッドガード取付状態よりも短く、前記アッパインナ部が前記マッドガードアッパブラケットを介さずに前記マッドガードアッパ被取付部に直接取り付けられた第2のマッドガード取付状態では、前記アッパアウタ部の下端部は、前記ロアアウタ部の上端部と近接又は接触し、前記アッパインナ部の下端縁部は、前記ロアカバー部の上端縁部から離間し、前記他のブラケットは、前記アッパインナ部の下端縁部と前記ロアカバー部の上端縁部との間を閉止するように前記ロアカバー部の上端縁部と近接又は接触して、前記タイヤの前記トレッド面と対向する
ことを特徴とする車両のマッドガード構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のマッドガード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マッドガードアッパと、マッドガードアッパとは別体のマッドガードロアとによって構成されて上下に分割されたマッドガードが記載されている。マッドガードアッパとマッドガードロアとは、サイドフレームに対してそれぞれ個別に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-164011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにマッドガードアッパとマッドガードロアとに上下に二分割されたマッドガードにおいて、マッドガードアッパが固定される車体側の取付部(マッドガードアッパ被取付部)とタイヤ(マッドガードロア)との距離が車両の仕様等によって相違する場合がある。この場合、マッドガードロアとマッドガードアッパ被取付部との距離(アッパ設定距離)が短い仕様(低仕様)に合わせた形状にマッドガードアッパを形成すると、アッパ設定距離が長い仕様(高仕様)において、マッドガードアッパとマッドガードロアとが離間して開口部(非カバー部)が発生し、マッドガードとしての機能が低下する。一方、高仕様に合わせた形状にマッドガードアッパを形成すると、低仕様ではマッドガードアッパの下部がマッドガードロアに干渉してしまい、マッドガードアッパを取付けることができない。
【0005】
係る不都合は、アッパ設定距離の相違に対応した形状の複数種類(低仕様と高仕様の場合には2種類)のマッドガードアッパを使い分けることによって解消することが可能である。しかし、アッパ設定距離に応じて形状が相違する複数種類のマッドガードアッパを用意しなければならず、煩雑である。
【0006】
そこで、本開示は、マッドガードとしての機能を低下させることなく、マッドガードアッパ被取付部の位置の変更に柔軟に対応することが可能なマッドガード構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様に係る車両のマッドガード構造は、上側のマッドガードアッパと下側のマッドガードロアとに分割して構成され、タイヤを後上方から覆うマッドガードと、マッドガードアッパを車体側に取付けるためのマッドガードアッパブラケットと、を備える。
【0008】
マッドガードロアは、タイヤのトレッド面と対向するロアカバー部と、ロアカバー部の車幅方向外側に設けられるロアアウタ部とを有し、マッドガードアッパブラケットを介さずに車体側に固定される。マッドガードアッパブラケットは、マッドガードロアの前上方に設けられた車体側のマッドガードアッパ被取付部に固定されるブラケット上部と、ブラケット上部の下方に配置されるブラケット下部と、ブラケット上部と前記ブラケット下部とを連結するブラケット中間部と、ブラケット下部から後下方へ延びる板状のアッパカバー部とを有する。マッドガードアッパは、ロアカバー部の前上方でブラケット下部に取付けられてタイヤのトレッド面と対向するアッパインナ部と、アッパインナ部の車幅方向外側に設けられて後下方へ延びるアッパアウタ部とを有する。
【0009】
マッドガードロアが車体側に固定され、ブラケット上部がマッドガードアッパ被取付部に固定され、アッパインナ部がブラケット下部に取付けられたマッドガード取付状態では、アッパアウタ部の下端部は、ロアアウタ部の上端部と近接又は接触し、アッパインナ部の下端縁部は、ロアカバー部の上端縁部から離間し、アッパカバー部は、アッパインナ部の下端縁部とロアカバー部の上端縁部との間を閉止するようにロアカバー部の上端縁部と近接又は接触して、タイヤのトレッド面と対向する。
【0010】
上記構成では、マッドガードアッパ被取付部の位置が車両の仕様の変更等に起因して上方又は下方へ移動し、マッドガードロアとマッドガードアッパ被取付部との距離(アッパ設定距離)が増大又は減少する場合、マッドガードアッパの形状を変更することなく、アッパ設定距離の増大又は減少に応じてブラケット中間部の長さを伸長又は短縮した形状のマッドガードアッパブラケットを用いてマッドガードアッパを車体側に取付ける。このように、アッパ設定距離の増減(マッドガードアッパ被取付部の位置の変動)をマッドガードアッパブラケットの形状の変更によって吸収することにより、マッドガードアッパ及びマッドガードロアを共通部品とすることができる。従って、マッドガードとしての機能を低下させることなく、マッドガードアッパ被取付部の位置の変更に柔軟に対応することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様のマッドガード構造であって、マッドガードアッパブラケットは、アッパブラケット本体とカバー部材とに分割して構成される。アッパブラケット本体は、ブラケット上部とブラケット下部とブラケット中間部とを一体的に有する。カバー部材は、ブラケット下部に固定されるカバー上部と、カバー上部から延びるアッパカバー部とを一体的に有する。
【0012】
上記構成では、マッドガードアッパブラケットを、ブラケット上部とブラケット下部とブラケット中間部とを有するアッパブラケット本体と、アッパカバー部を有するカバー部材とに分割して構成したので、アッパブラケット本体とカバー部材とを、各々に要求される剛性(強度)に応じた材料によって形成することができ、マッドガードアッパブラケットの軽量化を図ることができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第2の態様のマッドガード構造であって、アッパブラケット本体は、アッパカバー部の表面に沿うようにブラケット下部から線状又は細板状に延びてアッパカバー部を支持するカバー部材支持部を一体的に有する。
【0014】
上記構成では、アッパブラケット本体のカバー部材支持部によってカバー部材が補強されるので、剛性を確保しつつカバー部材の薄肉化によるマッドガードアッパブラケットの軽量化を図ることができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1~第3の何れかの態様のマッドガード構造であって、車載部品を取付けるためにマッドガードロアの上方に配置されて車体側に固定される他のブラケットを備える。
【0016】
マッドガードロアとマッドガードアッパ被取付部と距離が第1の態様のマッドガード取付状態よりも短く、アッパインナ部がマッドガードアッパブラケットを介さずにマッドガードアッパ被取付部に直接取り付けられた第2のマッドガード取付状態では、アッパアウタ部の下端部は、ロアアウタ部の上端部と近接又は接触し、アッパインナ部の下端縁部は、ロアカバー部の上端縁部から離間し、他のブラケットは、アッパインナ部の下端縁部とロアカバー部の上端縁部との間を閉止するようにロアカバー部の上端縁部と近接又は接触して、タイヤのトレッド面と対向する。
【0017】
上記構成では、第2のマッドガード取付状態では、マッドガードアッパブラケットを省略し、車載部品を取付けるための他のブラケットをアッパカバー部と同等に機能させるので、第2のマッドガード取付状態に応じた形状のマッドガードアッパブラケットを用意する必要がなく、用意するマッドガードアッパブラケットの種類を削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、マッドガードとしての機能を低下させることなく、マッドガードアッパ被取付部の位置の変更に柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るマッドガード構造を備えた車両の側面図である。
図2】本実施形態のマッドガード構造の要部を後方から視た背面図である。
図3図2のIII-III矢視断面図である。
図4図2のマッドガードアッパブラケットの斜視図である。
図5図2の斜視図である。
図6図5の側面図である。
図7】低仕様時のマッドガード構造の斜視図である。
図8図7の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、矢印FRは車両の前方を、矢印UPは上方を、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両の前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るマッドガード10を備える車両は、キャブ2が概ねエンジン(図示省略)の上方に配置されるキャブオーバー型のトラック1であって、車体フレーム3と、キャブ2の下方の車幅方向両側に配置される左右1対の前タイヤ(タイヤ)4とを有する。図1では右側の前タイヤ4のみを図示している。マッドガード10は、車体フレーム3に対して固定され、左右の前タイヤ4の後方に配置される。なお、左右のマッドガード10は、トラック1の左右に対称的に設けられて、ほぼ同様の構成を有するため、以下では右側について説明し、左側の説明を省略する。
【0022】
車体フレーム3は、車幅方向両側でトラック1の前後に亘って延びる左右のサイドフレーム5と、車幅方向に沿って延びて左右のサイドフレーム5を連結する複数のクロスフレーム(図示省略)とを有する。図1では右側のサイドフレーム5のみを図示している。
【0023】
キャブ2は、キャブ2の前端下部が車体フレーム3の前端部にフロントキャブマウント(図示省略)を介して回転自在に支持される。キャブ2は、キャブ2の後端下部がリアキャブマウント(図示省略)にロックされて車体フレーム3に支持された非チルト状態(図1参照)と、リアキャブマウントによるロックが解除されてキャブ2の後端下部が前上方へ傾動したチルト状態(図示省略)とに設定可能である。非チルト状態では、キャブ2の下面の車幅方向外端部は、前タイヤ4を収納するホイールハウス6の上方を区画する。また、キャブ2の車幅方向外側面の下部には、ホイールハウス6の上方で前後方向に延びるフェンダー7が設けられる。なお、以下の説明において、特に説明のない限りキャブ2の上下方向や前後方向は非チルト状態での上下方向や前後方向を意味する。
【0024】
図2図6に示すように、本実施形態のマッドガード構造は、マッドガード10とマッドガードアッパブラケット30とエアクリーナブラケット(他のブラケット)50とを備える。
【0025】
マッドガード10は、上側のマッドガードアッパ11と、マッドガードアッパ11とは別体の下側のマッドガードロア21とによって上下に分割して構成されている。マッドガード10は、前タイヤ4を後上方から覆い、トラック1の走行時に前タイヤ4に跳ね上げられた泥水等の後方及び車幅方向外側への飛散を防止する。マッドガード10の下端縁部(マッドガードロア21の下端縁部)には、可撓性を有するラバー製のマッドフラップ8が固定されて垂下している(図1参照)。
【0026】
マッドガードロア21は、硬質樹脂製のマッドカバーロア本体22と、ラバー製のロア弾性カバー23とを備える。
【0027】
マッドカバーロア本体22は、前タイヤ4のトレッド面4aと対向する板状のロアインナ部24と、ロアインナ部24の車幅方向外側に設けられるロアアウタ部25とを一体的に有し、マッドガードアッパブラケット30を介さずに車体側の車体フレーム3に対して固定される。ロアアウタ部25は、前タイヤ4の車幅方向外側に配置され、ロアインナ部24よりも上方へ延びる。
【0028】
ロア弾性カバー23は、ロアインナ部24の上端部にボルト等によって固定され、後上方へ延びて前タイヤ4のトレッド面4aと対向する。ロアインナ部24とロア弾性カバー23とはロアカバー部26を構成し、ロア弾性カバー23の上端縁部がロアカバー部26の上端縁部となる。
【0029】
エアクリーナブラケット50は、金属製の板材であり、マッドガードロア21の上方に配置され、マッドガードアッパブラケット30を介さずに車体側の車体フレーム3に対して固定される。エアクリーナブラケット50は、略水平に配置される平板状のクリーナブラケット本体51と、クリーナブラケット本体51の前端縁から前上方へ曲折して延びる平板状のマッドガードアッパ被取付部52とを一体的に有する。マッドガードアッパ被取付部52は、マッドガードロア21の前上方に配置され、クリーナブラケット本体51には、エアクリーナ(車載部品)9が載置されて取付けられる。なお、マッドガードアッパ被取付部52を、エアクリーナブラケット50以外に設けてもよい。
【0030】
マッドガードアッパブラケット30は、アッパブラケット本体31と、アッパブラケット31とは別体のカバー部材41とを備える。アッパブラケット本体31とカバー部材41とは、何れも金属製の板材である。なお、アッパブラケット本体31とカバー部材41とを一体的に形成してもよい。
【0031】
アッパブラケット本体31には、ブラケット上部32とブラケット下部33とブラケット中間部34と2箇所のカバー部材支持部35とが一体形成されている。ブラケット上部32は、マッドガードアッパ被取付部52の前面に面接触した状態でボルトによって締結固定され、ブラケット中間部34は、ブラケット上部32の後端縁から前下方へ曲折して延びる。ブラケット下部33は、ブラケット中間部34の下端縁から後下方へ曲折して延び、ブラケット上部32の下方に配置される。このように、ブラケット上部32とブラケット下部33とは、ブラケット中間部34によって連結されている。カバー部材支持部35は、ブラケット下部33の左右の端部から前方へそれぞれ延びる。
【0032】
カバー部材41には、ブラケット下部33の上面に面接触した状態で溶接等により固定されるカバー上部42と、カバー上部42から後下方へ延びるアッパカバー部43とが一体形成されている。すなわち、アッパカバー部43は、ブラケット下部33から後下方へ延びる。本実施形態のアッパカバー部43は、後述するマッドガードアッパ11のアッパアウタ部13の上面の階段形状に合わせてクランク状に曲折されている。なお、アッパカバー部43の形状はクランク状に限定されず、任意な形状に設定可能である。
【0033】
アッパブラケット本体31のカバー部材支持部35は、ブラケット下部33から細板状に延びてアッパカバー部43の表面(下面)に沿うように曲折し、アッパカバー部43に固着されて、アッパカバー部43を下方から支持する。なお、カバー部材支持部35を線状(棒状)としてもよい。
【0034】
マッドガードアッパ11は、硬質樹脂製であり、ロアカバー部26の前上方でブラケット下部33の下面に面接触した状態でボルト等によって固定されて前タイヤ4のトレッド面4aと対向するアッパインナ部12と、アッパインナ部12の車幅方向外側に設けられたアッパアウタ部13とを一体的に有する。アッパアウタ部13は、前タイヤ4の車幅方向外側に配置され、アッパインナ部12よりも下方へ延びる。アッパアウタ部13の上面は、車幅方向外側から視て前方に向かって高くなる階段形状である。
【0035】
図3図5及び図6に示すように、マッドガードロア21が車体側に固定され、ブラケット上部32がマッドガードアッパ被取付部52に固定され、アッパインナ部12がブラケット下部33に取付けられたマッドガード取付状態(第1のマッドガード取付状態)では、アッパアウタ部13の下端部は、ロアアウタ部25の上端部と近接又は接触し、アッパインナ部12の下端縁部は、ロア弾性カバー23の上端縁部から離間し、アッパカバー部43は、アッパインナ部12の下端縁部とロア弾性カバー23の上端縁部との間を閉止するようにロア弾性カバー23の上端縁部と近接又は接触して、前タイヤ4のトレッド面4aと対向する。なお、ロアアウタ部25の上端面には、アッパアウタ部13との間の密閉性を高めるための弾性シート27が固着され、アッパアウタ部13の下端部は、弾性シート27を巻き込むようにロアアウタ部25の車幅方向内側に入り込む。
【0036】
また、図7及び図8に示すように、マッドガードロア21とマッドガードアッパ被取付部52と距離が第1のマッドガード取付状態よりも短い所定距離の場合、マッドガードアッパブラケット30を介さずにアッパインナ部12をマッドガードアッパ被取付部52に直接取付ける。係る第2のマッドガード取付状態では、アッパアウタ部13の下端部は、ロアアウタ部25の上端部と近接又は接触し、アッパインナ部12の下端縁部は、ロア弾性カバー23の上端縁部から離間し、エアクリーナブラケット50のクリーナブラケット本体51は、アッパインナ部12の下端縁部とロア弾性カバー23の上端縁部との間を閉止するようにロア弾性カバー23の上端縁部と近接又は接触して、前タイヤ4のトレッド面4aと対向する。
【0037】
本実施形態によれば、第1のマッドガード取付状態において、マッドガードアッパ被取付部52の位置が車両の仕様の変更等に起因して上方又は下方へ移動し、マッドガードロア21とマッドガードアッパ被取付部52との距離(アッパ設定距離)が増大又は減少する場合(例えば、車体フレーム3に対するエアクリーナ9の設置高さが変更され、これに伴ってエアクリーナブラケット50の設定位置が変更される場合)、マッドガードアッパ11の形状を変更することなく、アッパ設定距離の増大又は減少に応じてブラケット中間部34の長さを伸長又は短縮した形状のマッドガードアッパブラケットを用いてマッドガードアッパ11を車体側に取付けることができる。このように、アッパ設定距離の変動をマッドガードアッパブラケット30の形状の変更によって吸収することにより、マッドガードアッパ11及びマッドガードロア21を共通部品とすることができる。従って、マッドガード10としての機能を低下させることなく、マッドガードアッパ被取付部52の位置の変更に柔軟に対応することができる。
【0038】
マッドガードアッパブラケット30を、ブラケット上部32とブラケット下部33とブラケット中間部34とを有するアッパブラケット本体31と、アッパカバー部43を有するカバー部材41とに分割して構成したので、アッパブラケット本体31とカバー部材41とを、各々に要求される剛性(強度)に応じた材料によって形成することができ、マッドガードアッパブラケット30の軽量化を図ることができる。
【0039】
アッパブラケット本体31のカバー部材支持部35によってカバー部材41が補強されるので、剛性を確保しつつカバー部材41の薄肉化によるマッドガードアッパブラケット30の軽量化を図ることができる。
【0040】
また、アッパ設定距離が第1のマッドガード取付状態から所定距離まで短縮された第2のマッドガード取付状態では、マッドガードアッパブラケット30を省略し、エアクリーナ9を取付けるためのエアクリーナブラケット50をアッパカバー部43と同等に機能させることができるので、第2のマッドガード取付状態に応じた形状のマッドガードアッパブラケットを用意する必要がなく、用意するマッドガードアッパブラケットの種類を削減することができる。このため、例えば第1のマッドガード取付状態となる第1の仕様の車種と、第2のマッドガード取付状態となる第2の仕様の車種とを製造する場合、1種類のマッドガードアッパブラケット30によって対応することができる。
【0041】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、左右のマッドガード10をトラック1の左右に対称的に設けたが、トラック1の左右のいずれか一方のみに上記実施形態に係るマッドガード10を設けてもよい。また、対象のタイヤは前タイヤ4に限定されず、後タイヤ60であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、マッドガードを備える車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:トラック(車両)
2:キャブ
3:車体フレーム
4:前タイヤ(タイヤ)
6:ホイールハウス
7:フェンダー
9:エアクリーナ(車載部品)
10:マッドガード
11:マッドガードアッパ
12:アッパインナ部
13:アッパアウタ部
21:マッドガードロア
22:マッドカバーロア本体
23:ロア弾性カバー
24:ロアインナ部
25:ロアアウタ部
26:ロアカバー部
27:弾性シート
30:マッドガードアッパブラケット
31:アッパブラケット本体
32:ブラケット上部
33:ブラケット下部
34:ブラケット中間部
35:カバー部材支持部
41:カバー部材
42:カバー上部
43:アッパカバー部
50:エアクリーナブラケット(他のブラケット)
51:クリーナブラケット本体
52:マッドガードアッパ被取付部
60:後タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8