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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】作業服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20220114BHJP
   A44B 19/26 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A41D13/00 105
A41D13/00 107
A44B19/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017234464
(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公開番号】P2019099963
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】516311674
【氏名又は名称】株式会社チロル
(74)【代理人】
【識別番号】100084630
【弁理士】
【氏名又は名称】澤 喜代治
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】穐吉 俊行
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0293696(US,A1)
【文献】特開2000-054208(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211063(JP,U)
【文献】実開昭62-053012(JP,U)
【文献】実開昭51-107404(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00-13/12
A44B 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所作業用のハーネス型安全帯を着用した上から着る作業服であって、
背中側布地の中央部縦方向に沿って設けられたスリットと、
前記スリットを開閉するためのファスナーと、
を具備してなり、
前記ファスナーが、第一スライダ及び第二スライダを具備する頭合わせ式となされ、
更に、前記第一スライダと前記第二スライダとの間に、前記ファスナーのジップティースに沿って摺動する環状体が設けられてなることを特徴とする作業服。
【請求項2】
請求項1に記載の作業服において、
前記スリットの長さが30cm以上となされた作業服。
【請求項3】
請求項2に記載の作業服において、
前記環状体が、前記第一スライダ又は前記第二スライダのいずれか一方又は両方に連結されてなる作業服。
【請求項4】
請求項2に記載の作業服において、
前記環状体が、前記第一スライダ又は前記第二スライダのいずれか一方又は両方と一体化されてなる作業服。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項に記載の作業服において、
前記環状体の開口部を塞ぐようにしてシートが設けられてなり、前記シートに前記ハーネス型安全帯のフックを通すためのフック穴が設けられてなる作業服。
【請求項6】
請求項5に記載の作業服において、
前記フック穴が、ベンツ構造となされた作業服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業用のハーネス型安全帯を着用した際に着る作業服に関する。
【背景技術】
【0002】
2m以上の高所作業時においては、墜落を防止するため足場等の作業床の設置が必要となり、前記作業床の設置が困難な場合にあっては、安全帯を使用する旨が労働安全衛生規則で義務付けられている。
【0003】
前記安全帯には、腰に装着して使用する「胴ベルト型安全帯」と、複数のベルトを肩部、腿部等に装着して使用する「ハーネス型安全帯」とがあり、いずれの安全帯もランヤード(命綱)を取り付けて使用する。
【0004】
前記胴ベルト型安全帯は、腰部に巻き付ける胴ベルトと、前記同ベルトに設けられたフック(D環)とにより構成されており、高所作業時には、腰部に位置するフックにランヤードを取り付ける使用態様となる。
【0005】
一方、前記ハーネス型安全帯は、肩ベルト、腿ベルトなどで身体を支持する構造となされており、高所作業時には、背中側に位置するフックにランヤードを取り付ける使用態様となる。
【0006】
ところで、実際の作業現場においては、防寒の目的で前記安全帯を着用した上から作業服を着用することがある。又、作業現場の気温が高いときには、熱中症を予防すべく、ファンによって作業服内に空気を取り入れるファン付き作業服を着用することがある。
【0007】
この場合、前記ハーネス型安全帯のフックを作業服の背面側布地を通じて露出させる必要があるため、このような作業服には背面側布地にフックを通すための穴が設けられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017‐14644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、作業者の体格は様々で、背面に位置させたフックが、作業服に設けられた穴と一致しない場合がある。この場合、前記ハーネス型安全帯のフックの位置をずらすこともできるが、背中側に存するフックの位置を手探りで変える手間は煩雑といえる。
【0010】
本発明は、前記技術的課題に鑑みて完成されたものであり、ハーネス型安全帯着用時におけるフックの挿通が容易となる新規な作業服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記技術的課題を解決する本発明の作業服は、高所作業用のハーネス型安全帯を着用した際に着る作業服であって、背中側布地の中央部縦方向に沿って設けられたスリットと、前記スリットを開閉するためのファスナーと、を具備してなり、前記ファスナーが、第一スライダ及び第二スライダを具備する頭合わせ式となされたことを特徴とする(以下、「本発明作業服」と称する。)。
【0012】
前記本発明作業服においては、更に、前記第一スライダと前記第二スライダとの間に、前記ファスナーのジップティースに沿って摺動する環状体が設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0013】
前記本発明作業服においては、前記環状体が、前記第一スライダ又は前記第二スライダのいずれか一方又は両方に連結されてなるものが好ましい態様となる。
【0014】
前記本発明作業服においては、前記環状体が、前記第一スライダ又は前記第二スライダのいずれか一方又は両方と一体化されてなるものが好ましい態様となる。
【0015】
前記本発明作業服においては、前記環状体の開口部を塞ぐようにしてシートが設けられてなり、前記シートに前記ハーネス型安全帯のフックを通すためのフック穴が設けられてなるものが好ましい態様となる。
【0016】
前記本発明作業服においては、前記フック穴が、ベンツ構造となされたものが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハーネス型安全帯着用時におけるフックの挿通が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)は、実施形態1に係る本発明作業服の背面図であり、図1(b)は、前記本発明作業服のファスナー部分を拡大して示す斜視図である。
図2図2(a)は、ハーネス型安全帯を着用した作業者を示す背面図であり、図2(b)は、更に、前記本発明作業服を着た作業者を示す背面図である。
図3図3は、実施形態2に係る本発明作業服の背面図である。
図4図4(a)は、環状体を示す斜視図であり、図4(b)は、前記環状体を取り付けたファスナー部分を拡大して示す斜視図である。
図5図5は、ハーネス型安全帯を着用した上から前記本発明作業服を着た作業者を示す背面図である。
図6図6(a)は、実施形態3に係る本発明作業服の背面図であり、図6(b)は、環状体を示す斜視図である。
図7図7は、ハーネス型安全帯を着用した上から前記本発明作業服を着た作業者を示す背面図である。
図8図8は、実施形態4に係る本発明作業服の背面図である。
図9図9は、環状体を示す分解斜視図(a)と、正面図(b)と、側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
[実施形態1]
‐本発明作業服1‐
図1に、実施形態1に係る本発明作業服1を示す。前記本発明作業服1は、スリット2と、前記スリット2に沿って備えられたファスナー3と、を具備する。
【0021】
‐スリット2‐
前記スリット2は、前記本発明作業服1の背中側布地の中央部縦方向に沿って設けられる。本実施形態においては、後襟の下から裾方向に向かって40cmのスリット2を設けた。
【0022】
‐ファスナー3‐
前記ファスナー3は、前記スリット2を開閉するために備えられる。前記ファスナー3は、いわゆる「頭合わせ式(頭合わせファスナー)」であり、一対のジップティース(務歯)30と、第一スライダ31と、第二スライダ32と、を具備する。
【0023】
前記ジップティース30は、前記スリット2の両縁に沿って縫い付けられたジップテープ33を介して前記スリットに固定されている。本実施形態では、前記ジップティース30として金属製のエレメントを用いた。
【0024】
前記第一スライダ31及び前記第二スライダ32は、前記ジップティース30の噛み合わせを閉じ開くための機械要素である。本実施形態では、前記第一スライダ31及び前記第二スライダ32として、いずれもロック機能を有さない金属製の自由スライダ(ノンロックスライダ)を用いた。
【0025】
図2に示すように、前記構成を有する前記本発明作業服1は、高所作業用のハーネス型安全帯Hを着用した上から着るものである。前記本発明作業服1を着た作業者Sは、前記ファスナー3によって前記スリット2の一部を開いた穴から、前記ハーネス型安全帯HのフックDを通し、前記フックDにランヤードRを連結する。
【0026】
この際、本発明作業服1は、前記ファスナー3によって形成される穴の位置と大きさを、前記第一スライダ31と前記第二スライダ32によって適宜調節することができる。そのため、作業者Sの体格差にかかわらず、前記ハーネス型安全帯HのフックDが存する位置に、前記スリット2の穴を形成することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、前記スリット2の長さを40cmとしたが、前記スリットの長さは、特に限定されない。前記スリット2の長さとしては、30cm以上(より好ましくは、35~50cm)とすることが好ましい。
【0028】
又、本実施形態においては、前記ファスナー3としていわゆる「金属製ファスナー」を用いたが、前記ファスナー3の種類は特に限定されない。前記ファスナー3としては、例えば、「樹脂製ファスナー」や「ビスロンファスナー」を用いても良い。
【0029】
更に、本実施形態においては、前記第一スライダ31及び前記第二スライダ32として、金属製の自由スライダを用いたが、ロック機能を有するオートマチックスライダ(ロックスライダ)を用いても良い。又、前記第一スライダ31及び前記第二スライダ32は、樹脂製でも良く、互いの種類を統一する必要もない。
【0030】
[実施形態2]
‐本発明作業服1‐
図3に、実施形態2に係る本発明作業服1を示す。前記本発明作業服1は、前記第一スライダ31と前記第二スライダ32との間に、前記ファスナー3のジップティース30に沿って摺動する環状体4が設けられている点以外は、前記実施形態1と同様である。
【0031】
‐環状体4‐
図4に示すように、本実施形態においては、前記環状体4として、平行関係にある一対の対向する辺(以下、「対向辺」と称する。)41を有する六角形状のものを用いた。前記環状体4には、六角形の開口部40が設けられており、前記環状体4の周縁には溝42が設けられている。前記溝42につき、更に詳しく説明すると、前記対向辺41に設けられた溝42には、内側に向かう爪部43が設けられており、その他の辺に設けられた溝42には爪部44が設けられていない。前記環状体4は、前記ファスナー3のジップティース30に前記対向辺の溝42を嵌合させた状態で取り付けられ、前記ジップティース30に沿って摺動する(図4(b)参照)。
【0032】
図5に示すように、前記構成を有する前記本発明作業服1は、前記環状体4の開口部40から、ハーネス型安全帯HのフックDを通し、前記フックDにランヤードRを連結する。この際、前記ファスナー3のジップティース30や各スライダ(31、32)は、前記環状体4によって保護され、前記フックDやランヤードRは、前記ファスナー3に接触しない。そのため、前記ファスナー3に破損が生じ難くなる。
【0033】
なお、本実施形態においては、前記環状体4を前記ファスナー3と別体としているが、前記環状体4につき、前記第一スライダ31又は前記第二スライダ32のいずれか一方又は両方に連結し得る構造や、前記第一スライダ31又は前記第二スライダ32のいずれか一方又は両方と一体化された構造とすれば、取り扱い性が向上する。
【0034】
又、本実施形態においては、前記環状体4として六角形状のものを用いているが、前記環状体4の形状は、特に限定されない。前記環状体4のその他の形状としては、例えば、円形、楕円形、四角形などを上げることができる。又、前記環状体4の素材も特に限定されない。
【0035】
その余は、前記実施形態1と同様であり、繰り返しを避けるべくここでは説明を省略する。
【0036】
[実施形態3]
図6に、実施形態3に係る本発明作業服1を示す。前記本発明作業服1は、前記環状体4の開口部40を塞ぐようにしてシート5が設けられている点以外は、前記実施形態2と同様である。
【0037】
‐シート5‐
前記シート5には、フック穴50が設けられる。本実施形態においては、前記シート5となる二枚の布(51、52)の端部を重ねることによって、ベンツ構造となされた前記フック穴50を形成している(図6(b)参照)。
【0038】
図7に示すように、前記構成を有する前記本発明作業服1は、前記シート5のフック穴50から、ハーネス型安全帯HのフックDを通し、前記フックDにランヤードRを連結する。この際、前記シート5によって前記本発明作業服1内の気密性が高められる。
【0039】
これより、寒所作業時においては、前記本発明作業服1の保温性が高められる。又、前記本発明作業服1につき、服内へ風を送り込むファンが取り付けられたファン付き作業服とした場合、送り込んだ風が漏れることを極力防ぐことができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、前記フック穴50をベンツ構造としているが、前記フック穴50の構造は特に限定されない。但し、前記フック穴50をベンツ構造とすれば、前記本発明作業服1の気密性がより高まる。又、前記フック穴50は、雨やほこりが入り難くなるように、開口方向を下向とすることが好ましい。
【0041】
その余は、前記実施形態2と同様であり、繰り返しを避けるべくここでは説明を省略する。
【0042】
[実施形態4]
図8に、実施形態4に係る本発明作業服1を示す。前記本発明作業服1は、前記環状体4と、前記シート5の構造が異なる以外は、前記実施形態3と同様である。
【0043】
‐環状体4‐
図9に示すように、前記環状体4は、上フレーム4Aと下フレーム4Bとからなる。各フレーム(4A、4B)はエラストマー製であり、互いに同径の円形となされている。又、前記上フレーム4Aには、二個のスナップフック(60、61)が対称の位置に設けられている。
【0044】
‐シート5‐
図9に示すように、前記シート5は、上シート5Aと下シート5Bとからなる。各シート(5A、5B)は、いずれも2mmの厚みとなされたエラストマー製の半円形の芯材(53、54)に布(51、52)が張り付けられた構造となされている。又、前記布(51、52)の端部は、3cmずつ前記芯材(53、54)から張り出している。
【0045】
前記シート5は、芯材(53、54)同士の端部を突き合せた状態で、前記布(51、52)の端部を重ね合わせ、上下から前記環状体4の上フレーム4Aと下フレーム4Bとによって挟まれる。この際、前記上フレーム4Aと前記芯材53とが接着され、前記したフレーム4Bと前記布(51、52)とが接着される。
【0046】
これにより、前記シート5には、ベンツ構造のフック穴50が形成される(図9(b)参照)。又、前記環状体4の周縁には、前記上フレーム4Aと前記したフレーム4Bによって挟まれた溝42が形成される(図9(c)参照)。
【0047】
前記シート5を備えた前記環状体4は、前記溝42を前記ファスナー3のジップティース30にあてがわせた状態で、各スナップフック(60、61)をそれぞれ前記第一スライダ31と前記第二スライダ32に掛止させることによって、前記第一スライダ31と前記第二スライダ32との間に取り付けられる。これより、前記環状体4は、前記ファスナー3のジップティース30に沿って摺動することができる。
【0048】
その余は、前記実施形態4と同様であり、繰り返しを避けるべくここでは説明を省略する。
【0049】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ハーネス型安全帯着用時に使用する作業服として好適に利用される。
【符号の説明】
【0051】
1 本発明作業服(作業服)
2 スリット
3 ファスナー
30 ジップティース
31 第一スライダ
32 第二スライダ
4 環状体
40 開口部
5 シート
50 フック穴
D フック
H ハーネス型安全帯
R ランヤード
S 作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9