(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】電子部品の取り外し方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/34 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
H05K3/34 510
(21)【出願番号】P 2020004443
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2021-10-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500327625
【氏名又は名称】株式会社エイム
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】古家 功一
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-87263(JP,U)
【文献】特開平9-83129(JP,A)
【文献】特開平11-186709(JP,A)
【文献】実開昭61-152380(JP,U)
【文献】特開昭56-2698(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0135257(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K1/00―3/08
H05K1/00―3/46,13/00―13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第一面と、前記第一面に半田付けされた電子部品と、の間の空隙に、前記電子部品が前記第一面から離れるような付勢力を生じさせる付勢部材を配置する工程と、
前記第一面が下方となるように前記基板を支持する工程と、
直接的又は間接的に前記半田を加熱する工程と、
を備え、
前記付勢部材は、一枚の折り曲げられた金属片から構成されており、
前記配置する工程において、前記折り曲げられた付勢部材を前記電子部品と前記第一面の間で反発力が生じるように前記空隙に配置することで、前記付勢部材は、前記電子部品と前記第一面の間に支持され、
前記加熱する工程において、前記半田が溶解した際に前記支持が解除され、前記付勢部材は、前記電子部品と共に落下するように構成されていることを特徴とする電子部品の取り外し方法。
【請求項2】
前記加熱する工程では、加熱装置内で前記半田を間接的に加熱し、
前記基板は、前記加熱する工程の開始から
所定時間で前記基板が前記加熱装置内から外部に移動するように設定された移動装置に支持されており、
前記所定時間は、前記加熱する工程において前記半田が溶解してから、前記付勢部材が配置されていない場合に前記電子部品が前記溶解した半田の表面張力に抗して落下するより前の時間であることを特徴とする
請求項1に記載の電子部品の取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に半田付けされた電子部品の取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品が重力方向を向くようにプリント基板を配置し、はんだを加熱・溶解させてプリント基板から電子部品を落下させることで、物理的な外力を作用させる装置を用いずにプリント基板から電子部品を取り外す方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法では、電子部品は、溶解した半田の表面張力により容易には落下せず、電子部品や基板は長時間の加熱に晒されることとなるため、再利用を視野に入れた電子部品や基板に対する取り外し方法としては適していない。
【0005】
また、上記方法では、耐熱性の両面テープにより電子部品に重り(連結板)を固定して電子部品の落下を助長させているが、この方法の場合、適切なサイズの重りを選択して固定するという労力が生じると共に、落下時の衝撃も大きくなってしまうため、再利用を視野に入れた電子部品や基板に対する取り外し方法としては、やはり適していない。
【0006】
そこで、本発明は、電子部品及び基板の品質の劣化を抑制しながらも、基板に半田付けされた電子部品を容易に取り外すことの可能な電子部品の取り外し方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板の第一面と、前記第一面に半田付けされた電子部品と、の間の空隙に、前記電子部品が前記第一面から離れるような付勢力を生じさせる付勢部材を配置する工程と、前記第一面が下方となるように前記基板を支持する工程と、直接的又は間接的に前記半田を加熱する工程と、を備えたことを特徴とする電子部品の取り外し方法を提供している。
【0008】
このような構成によれば、電子部品は、電子部品と基板を接続していた全ての半田が溶解した瞬間に落下することとなるので、電子部品や基板を長時間の加熱に晒すことなく、電子部品を基板から容易に取り外すことが可能となる。特に、基板上に多数の電子部品が半田付けされている場合には効果的であり、各電子部品に対して付勢部材を配置してしまえば、半田が溶解するまでの時間だけで全ての電子部品を取り外すことが可能となる。また、表面張力は、溶解した半田から電子部品の一部を遠ざけるだけで極端に小さくなるので、電子部品と基板の間には、付勢部材を一つでも配置すれば良く、付勢部材の配置作業に労力を要しない。また、付勢部材は、溶解した半田から電子部品の一部を遠ざけるだけの小さな付勢力を生じさせる簡易な構造で済むため、小さな金属片等により安価かつ大量に製造することが可能である。
【0009】
また、前記付勢部材は、前記加熱する工程によって前記半田が溶解した際に、前記電子部品と共に落下するように構成されていることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、半田溶解後の付勢部材を支持する構造が不要である。また、安価かつ大量に製造することが可能な小さな金属片等を付勢部材として使用することができるので、経済的であり、かつ、電子部品の落下時の衝撃を軽減することが可能となる。
【0011】
また、前記加熱する工程では、加熱装置内で前記半田を間接的に加熱し、前記基板は、前記加熱する工程の開始から所定時間経過後に前記基板が前記加熱装置内から外部に移動するように設定された移動装置に支持されていることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、基板が加熱装置内から外部に移動するまでに半田が溶解しているように、加熱装置内の移動距離を考慮して、加熱装置による加熱温度、及び、移動装置の移動速度を設定しておけば、電子部品及び基板を加熱に晒す時間及び加熱温度を必要最小限にすることが可能となり、電子部品及び基板の品質の劣化を抑制することが可能となる。また、電子部品及び基板が直接的に加熱されないので、電子部品及び基板の品質の劣化は更に抑制される。更に、基板は、加熱装置内でその全体が加熱されるので、基板が収縮して反ってしまうことも抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子部品の取り外し方法によれば、電子部品及び基板の品質の劣化を抑制しながらも、基板に半田付けされた電子部品を容易に取り外すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態による電子部品及び基板の概略外観図
【
図3】本発明の実施の形態による電子部品の取り外し方法のフローチャート
【
図4】本発明の実施の形態による加熱装置の内部の説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による電子部品の取り外し方法について、
図1-
図4を参照して説明する。
【0016】
本実施の形態による電子部品の取り外し方法は、基板2に半田付けされた電子部品1を取り外すためのものである。
【0017】
本実施の形態では、
図1に示すように、電子部品1として、ICパッケージを採用した例を用い、電子部品1には一又は複数の部品側接続部11が、基板2の第一面21には電子部品1の部品側接続部11に対応した基板側接続部22が、それぞれ形成されており、互いに半田付けされている。部品側接続部11としては、リード、ピン、BGAのボール端子等が考えられ、基板側接続部22としては、ランドやスルーホール等が考えられる。
【0018】
半田付けされた電子部品1と基板2との間には、
図1(b)の側面図に示すように、僅かな空隙Sが生じており、本実施の形態による電子部品の取り外し方法を行う際には、空隙Sに付勢部材3が配置される。
図1(a)の平面図では、電子部品1の部品側接続部11が存在しない位置から付勢部材3が差し込まれた例が示されている。
【0019】
付勢部材3は、電子部品1が基板2(第一面21)から離れるような付勢力を生じさせるものであり、本実施の形態では、付勢部材3として、
図2(a)に示すように、薄い金属片を折り曲げたものを採用し、
図2(b)に示すように、閉じた状態の一対の開放端31を空隙Sに差し込むものとする。付勢部材3が付勢力を生じさせるためには、
図2(a)に示すように、空隙Sに差し込まれていない状態では、一対の開放端31間に多少の空間が残っている必要がある。このようにして配置された付勢部材3は、他の支持部材によって支持されることなく、自らの付勢力によって電子部品1と基板2(第一面21)の間に支持されることとなる。
【0020】
付勢部材3の素材としては、半田と接合されない(されにくい)ステンレス等の金属が好ましい。付勢部材3は、
図2に示すものに限定されないが、対象となる電子部品1の周辺にある他の部品などに干渉しないサイズ・形状であることが好ましい。
【0021】
続いて、
図3のフローチャートを用いて、本実施の形態による電子部品の取り外し方法について説明する。
【0022】
まず、電子部品1と基板2との間の空隙Sに付勢部材3を配置する(S1)。本実施の形態では、
図2(b)に示すように、閉じた状態の一対の開放端31を差し込む。
【0023】
続いて、基板2を加熱装置4内の支持部41に、第一面21が下方となるように支持させる(S2)。
【0024】
加熱装置4としては、
図4に示すように、内部にベルトコンベア等の移動装置5が設けられたリフロー装置等が考えられる。
【0025】
支持部41は、移動装置5上に配置され、基板2は、支持部41上に載置される。基板2が支持部41上に略水平に載置された状態で、基板2(電子部品1)と移動装置5の搬送面との間には、電子部品1が落下するための空間が設けられている。
【0026】
最後に、加熱装置4による間接的な加熱、及び、移動装置5の移動を開始させる(S3)。
【0027】
この際、基板2が加熱装置4内から外部に移動するまでに半田が溶解しているように、加熱装置4内の移動距離を考慮して、加熱装置4による加熱温度、及び、移動装置5の移動速度を設定することが好ましい。
【0028】
ここで、電子部品1が重力方向を向くように基板2を配置して加熱するだけでは、電子部品1(特に表面面積の大きい電子部品)は、溶解した半田の表面張力により容易には落下せず、電子部品1及び基板2は長時間の加熱に晒されることとなるため、再利用を視野に入れた電子部品1及び基板2に対する取り外し方法としては適していない。
【0029】
しかしながら、本実施の形態では、半田付けされた電子部品1と基板2との間の空隙Sに付勢部材3が配置されている。このような構成により、電子部品1は、電子部品1と基板2を接続していた全ての半田が溶解した瞬間に落下するので、電子部品1や基板2を長時間の加熱に晒すことなく、電子部品1を基板2から容易に取り外すことが可能となる。なお、この際、付勢部材3は、電子部品1と共に落下することとなる。
【0030】
本願の発明者の実験によると、従来のリワーク装置で電子部品を1つずつ取り外していくと、1個当たり10分程度の時間がかかるところ、上記方法によれば、付勢部材3を配置してしまえば(数秒程度)、半田が溶解するまでの時間(5分程度)で電子部品1を取り外すことができた。特に、基板2上に多数の電子部品1が半田付けされている場合、従来のリワーク装置では、約10分×電子部品の個数分の時間がかかるところ、上記方法によれば、電子部品1の個数に限らず、5分程度の時間で全ての電子部品1を取り外すことができた。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態による電子部品の取り外し方法では、電子部品1と基板2(第一面21)の間の空隙Sに付勢部材3を配置し、第一面21が下方となるように基板2を支持した上で、半田を加熱する。
【0032】
このような構成によれば、電子部品1は、電子部品1と基板2を接続していた全ての半田が溶解した瞬間に落下することとなるので、電子部品1や基板2を長時間の加熱に晒すことなく、電子部品1を基板2から容易に取り外すことが可能となる。特に、基板2上に多数の電子部品1が半田付けされている場合には効果的であり、各電子部品1に対して付勢部材3を配置してしまえば、半田が溶解するまでの時間だけで全ての電子部品1を取り外すことが可能となる。また、表面張力は、溶解した半田から電子部品1の一部を遠ざけるだけで極端に小さくなるので、電子部品1と基板2の間には、付勢部材3を一つでも配置すれば良く、付勢部材3の配置作業に労力を要しない。また、付勢部材3は、溶解した半田から電子部品1の一部を遠ざけるだけの小さな付勢力を生じさせる簡易な構造で済むため、小さな金属片等により安価かつ大量に製造することが可能である。
【0033】
また、本実施の形態による電子部品の取り外し方法では、付勢部材3は、半田が溶解した際に、電子部品1と共に落下するように構成されている。
【0034】
このような構成によれば、半田溶解後の付勢部材3を支持する構造が不要である。また、安価かつ大量に製造することが可能な小さな金属片等を付勢部材3として使用することができるので、経済的であり、かつ、電子部品1の落下時の衝撃を軽減することが可能となる。
【0035】
また、本実施の形態による電子部品の取り外し方法では、基板2は、加熱の開始から所定時間経過後に基板2が加熱装置4内から外部に移動するように設定された移動装置5に支持されている。
【0036】
このような構成によれば、基板2が加熱装置4内から外部に移動するまでに半田が溶解しているように、加熱装置4内の移動距離を考慮して、加熱装置4による加熱温度、及び、移動装置5の移動速度を設定しておけば、電子部品1及び基板2を加熱に晒す時間及び加熱温度を必要最小限にすることが可能となり、電子部品1及び基板2の品質の劣化を抑制すること可能がとなる。また、電子部品1及び基板2が直接的に加熱されないので、電子部品1及び基板2の品質の劣化は更に抑制される。更に、基板2は、加熱装置4内でその全体が加熱されるので、基板2が収縮して反ってしまうことも抑制される。
【0037】
尚、本発明の電子部品の取り外し方法は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0038】
例えば、上記実施の形態では、付勢部材3として、薄い金属片を折り曲げたものを採用したが、電子部品1が基板2から離れるような付勢力を生じさせるものであれば、他の形状であっても良い。
【0039】
例えば、
図5(a)に示すように、金属片に2つのスリットを入れて、付勢力を生じさせるように曲げたものを採用しても良い。また、リードが半田付けされた電子部品1の場合、一方向からの付勢力だけでは、半田が溶解するまでの間にリードが曲がってしまう可能性があるので、複数個所に付勢部材3を配置することが考えられる。その場合には、
図5(b)に示すように、一つの付勢部材3で複数個所に付勢力を配置させるような構造のものを準備しても良い。これは、既定サイズの電子部品1には特に効果的である。
【0040】
また、上記実施の形態では、空隙Sに付勢部材3を配置した後に基板2を支持したが、基板2を支持した後に空隙Sに付勢部材3を配置しても良い。
【0041】
また、上記実施の形態では、基板2は、支持部41上に略水平に載置されたが、略水平に限らず、半田が溶解した際に電子部品1が落下すれば、その他の角度であっても良い。
【0042】
また、上記実施の形態では、電子部品1として、ICパッケージを例に説明したが、基板2(第一面21)との間に空隙Sが生じていれば、他の電子部品に対しても適用可能である。
【0043】
また、上記実施の形態では、加熱装置4による加熱と、移動装置5の移動と、を同時に開始したが、電子部品1及び基板2を加熱に晒す時間を短くできれば、必ずしも同時でなくても良い。
【0044】
上記実施の形態では、リフロー装置を用いて半田を間接的に加熱したが、他の装置を用いても良く、また、直接的に加熱することを除外するものでもない。
【0045】
また、上記実施の形態では、半田が接合されない(されにくい)金属として、ステンレスを挙げたが、例えば、半田が鉛フリーのステンレス用のものの場合、他の金属を使用することが好ましい。
【符号の説明】
【0046】
1 電子部品
2 基板
3 付勢部材
4 加熱装置
5 移動装置
11 部品側接続部
21 第一面
22 基板側接続部
31 開放端
41 支持部
S 空隙