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  • 特許-オストメイト及び健常者共用の便座 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】オストメイト及び健常者共用の便座
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A47K13/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017128304
(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2019010275
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】598030847
【氏名又は名称】さつき株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】安久津 敏宏
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3155983(JP,U)
【文献】特開2014-233460(JP,A)
【文献】米国特許第04233696(US,A)
【文献】特開2016-198419(JP,A)
【文献】特開2012-052286(JP,A)
【文献】中国実用新案第2905927(CN,Y)
【文献】登録実用新案第3179421(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/00-17/02
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口幅が後方に比べて前方が広くなるように形成された開口を備えるオストメイト及び健常者共用便座であって、該開口の後方において便座の内周縁部分が座面から開口内側へと迫り出して迫り出し部が形成され、該迫り出し部により後方の開口幅が前方の開口幅に対して狭くなっているとともに、該迫り出し部の上面が他の座面部分よりも開口内側へ下がり傾斜となるように形成されており、
前記便座は便器後方に備え付けられている洗浄装置に対して回動自在に取り付けられ、前記座面側では他の座面部分よりもやや平坦になるように着座面が形成され、前記洗浄装置側ではそのケーシングの天面部よりもやや平坦になるように着座面が形成され、これらの着座面により略面一なオストメイト着座部が形成されていることを特徴とするオストメイト及び健常者共用便座。
【請求項2】
前記迫り出し部の上面の傾斜角度は、前記座面の傾斜角度に比べて大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のオストメイト及び健常者共用便座。
【請求項3】
前記迫り出し部の先端部は便座の裏面よりも下方へ位置するように形成されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のオストメイト及び健常者共用便座。
【請求項4】
前記座面の天面と前記内周縁部分との境部分を所定の範囲で窪ませた凹陥部を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のオストメイト及び健常者共用便座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸癌や膀胱癌または炎症性腸疾患などのため、便や尿の排泄経路を変更して人工肛門や人工膀胱などのストーマ増設により排泄口を腹部や下腹部に設けた患者(以下、「オストメイト」という)用の便座に関し、更に詳細には、オストメイトと健常者が共用可能な便座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オストメイトが洋式便器を使用する場合、腹部のストーマに装着したパウチの口を開放することで排泄を行なう。かかる作業は、便器の前に立ってかがんで中腰で行う場合や、床に膝を付き便器を抱える形で行う場合もあるが、体力的な理由や衛生面に問題があるので、便座に着座した状態での作業が好ましい。
【0003】
着座した状態での作業の場合、便座の開口をなるべく広く使えるように、便座の奥側に座って行う必要がある。ところが、一般的なタイプの便座の場合、便座の奥側には極めて座りにくく、また、便座に奥行きがない場合は座ることが困難な場合もあった。さらに、開口も狭いため、オストメイトが作業を行うには不便であった。
【0004】
そこで、かかる課題を解決すべく、特許文献1、2には、便座の開口の開口幅を後方に対して前方が広くなるようにして、オストメイトが使用する際に奥側で安定して座ることができ、且つ、前側には処理するための余裕ある空間ができ、排便や排尿処理作業が容易に行えるようにしたオストメイト対応型便座が開示されている。
【0005】
これらの便座は、オストメイトのみならず、健常者も使用することが前提とされているが、健常者が通常の便座と同様に使用する際に、以下の問題が生じていた。すなわち、これらのオストメイト用便座の場合、開口幅が狭く形成されている便座の後方において、座面の内周縁部の角が出っ張って着座姿勢によっては座骨等に当たるため、違和感を覚えることがあった。
【0006】
しかし、かかる座面の内側縁部の出っ張りを取ると、前方のみならず後方においても開口幅が一様に広くなってしまい、臀部が開口内に落ち込むのではないかという不安感や恐怖心を感じて使用に際して心理的な抵抗感もある。そこで、従来のオストメイト用便座のように前方のみ開口幅を広くすることで安心して使用することができ、さらに、健常者にとっての使用感も普通の便座と異なるところがないオストメイト対応型便座が求められていた。
【0007】
【文献】特開2016-198419
【文献】実用新案登録第3166553号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、従来のオストメイト及び健常者共用便座のかかる欠点を克服し、前方に十分な作業スペースを確保可能であり、さらに、健常者が使用する際にも違和感がないオストメイト及び健常者共用便座の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、開口幅が後方に比べて前方が広くなるように形成された開口を備えるオストメイト及び健常者共用便座であって、該開口の後方において便座の内周縁部分が座面から開口内側へと迫り出して迫り出し部が形成され、該迫り出し部により後方の開口幅が前方の開口幅に対して狭くなっているとともに、該迫り出し部の上面が他の座面部分よりも開口内側へ下がり傾斜となるように形成されていることを特徴とするオストメイト及び健常者共用便座である。
【0010】
また、本発明は、前記便座は便器後方に備え付けられている洗浄装置に対して回動自在に取り付けられ、前記座面側では他の座面部分よりもやや平坦になるように着座面が形成され、前記洗浄装置側ではそのケーシングの天面部よりもやや平坦になるように着座面が形成され、これらの着座面により略面一なオストメイト着座部が形成されていることを特徴とするオストメイト及び健常者共用の洗浄機能付き便座である。
【0011】
また、本発明は、座面の天面と内周側立ち上がりとの境部分を所定の範囲で窪ませた凹陥部を設けたことを特徴とするオストメイト及び健常者共用の洗浄機能付き便座である。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるオストメイト及び健常者共用便座は、便座の左右の内周縁部分が座面から開口内側へと迫り出して形成された迫り出し部により後方の開口幅が前方の開口幅に対して狭くなっており、該迫り出し部の上面が他の座面部分よりも開口内側へ下がり傾斜となるように形成されているため、着座時に迫り出し部が直接健常者の臀部や腿等に接することが少ない。このことにより、健常者が普通に使用する場合も違和感がない。
【0013】
また、本発明にかかるオストメイト及び健常者共用便座で略面一なオストメイト着座部が形成されたものは、使用時に該オストメイト着座部に安定して座ることができるため、便座開口を広く使用することができ、オストメイトにとって排便等の作業が容易になる。
【0014】
また、本発明にかかるオストメイト及び健常者共用便座で、座面の天面と内周側立ち上がりとの境部分を所定の範囲で窪ませた凹陥部を設けたものは、開口の前側で行われる検尿や導尿などの作業がより容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のオストメイト及び健常者共用便座の斜視図
図2】本発明のオストメイト及び健常者共用便座の平面図
図3】本発明のオストメイト及び健常者共用便座の底面図
図4】本発明のオストメイト及び健常者共用便座の正面図
図5】本発明のオストメイト及び健常者共用便座の側面図
図6】本発明のオストメイト及び健常者共用便座のA-A端面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のオストメイト及び健常者共用便座の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0017】
図に示すように、便座1は環状に形成された座面11を備える。そして、便座1の開口12は、オストメイトが便座に座ったままでパウチの中身を便器内に排出する際の作業スペースをより広く確保するために、前方が後方に比べて開口幅が広くなるように形成されている。
【0018】
より詳しくは、開口12は前方の開口幅が通常の便座よりも幅広に形成されており、その後方において、便座1の内周縁部分が座面11から開口内側へと迫り出して迫り出し部13が形成されることにより、後方の開口幅が前方の開口幅に対して狭くなっている。
【0019】
迫り出し部13は、便座1の内周縁の一部が開口12内へと膨出するようにして座面11と一体に形成されている。図2に示すように、迫り出し部13は開口12の前端から後方へ開口縦径の1/3ないし1/2にあたる座面11の内周縁からその膨出を開始し、開口12内へと迫り出し幅が増えるように膨出しながら後方へと延伸し、開口幅を狭窄する領域を形成する。そして、その狭窄する領域より後方には、左右から対向する迫り出し部13が略平行に延伸して開口幅が略同一の領域が形成される。そして、かかる略同一の領域を過ぎてから、その迫り出し幅を減少させながら弧を描いて座面11に近接し、最終的には開口12の後端部付近の座面11へ収束する。
【0020】
迫り出し部13の座面11からの迫り出し幅は任意であるが、その最も迫り出している部分の幅Wは30mm~50mmの範囲が好ましい。なお、ここで「幅」というとき、後述する座面11と上面131の傾斜や凹凸面については考慮せず、あくまでも、座面11と上面131の平面視における幅方向の長さを指す。
【0021】
図6に示すように、迫り出し部13は、断面形状では座面11の裏側にあたる裏面14は略水平に設けられ、それに対して座面11は開口内側へと緩やかな下がり傾斜に設けられている。そして、座面11から膨出する迫り出し部13は、その上面131が座面11よりも更に開口内側へと下がり傾斜になるように形成され、その裏面133も裏面14よりも開口内側へと下がり傾斜になるように形成されている。そして、迫り出し部13の厚さは座面11部分よりも全体的に肉薄に形成されている。さらに、迫り出し部13の先端部132は、座面11の裏面14よりも下方へ位置するように設けてもよい。
【0022】
A-A端面における上面131の傾斜角度θ1は、座面11の傾斜角度θ2に比べて大きくなるように形成されている。具体的には、上面131の傾斜角度θ1は30°~45°の範囲が好ましく、また、座面11の傾斜角度θ2は10°が好ましい。なお、ここで「傾斜角度」というとき、後述する座面11の凸面や上面131の凹面の凹凸については考慮せず、あくまでも、座面11と上面131それぞれの最外周側と最内周側とを結んだ仮想直線の水平線に対する傾斜角度を指す。
【0023】
また、上面131は断面視で緩やかに窪んだ凹曲面状に形成してもよく、座面11は断面視で緩やかに盛り上がる凸曲面状に形成してもよい。さらに、上面131と座面11の境界部分は滑らかな曲面状に形成することで、両者の間に連続性を設けることが好ましい。
【0024】
便座1は座面11と裏面14を一体に成形してもよいが、座面11と裏面14をそれぞれ別々に成形し、それらの端縁部を振動溶着等の公知の溶着方法で接着してもよい。なお、接着方法はこれに限定されず、その他の公知の接着手段を用いることができる。
【0025】
本実施態様の便座1は、便器後方に備え付けられている洗浄装置2に対して回動自在に取り付けられている。かかる洗浄装置2は一般的なものを利用することができるが、例えば、本実施態様のように、側面視で略三角形に形成されたケーシング本体21と、その上部に設けられ、給水管等を内蔵するとともに便座1や蓋部が取り付けられるケーシング22からなる洗浄装置本体2を利用することができる。このケーシング22は、ケーシング本体21の傾斜する天面部211に設けられ、ケーシング本体21の天面部と略平行に形成された天面部221と、該天面部221から更に半円状に突出する突出部222とを備える。
【0026】
そして、洗浄装置2と座面11には、オストメイトが着座可能な略面一な連続面であるオストメイト着座部15を設けることが好ましい。すなわち、座面11は、前方から後方に行くにつれてケーシング22方向へ上り傾斜に形成され、同じく上り傾斜に形成されているケーシング22の天面部221と連続する傾斜面を形成する。かかる連続面において、座面11側では座面後端辺111から開口12側へと緩やかな弧状に張り出す着座面151が他の座面11部分よりもやや平坦になるよう形成されている。
【0027】
さらに、ケーシング22側では、着座面151と略同一の横幅に形成され、ケーシング22の後方へと張りだすとともに、突出部222まで達するように着座面152が形成されている。この着座面152は、傾斜している他の天面部221よりもやや平坦になるように形成されている。かかる着座面151と着座面152により略面一な連続面であるオストメイト着座部15が形成される。このように、オストメイト着座部15を設けることにより、オストメイトが便座1の後方に着座するときの目安となるとともに、面一の連続面に安定して座ることができる。
【0028】
そして、本実施態様のように、着座部152の上辺部の一部が突出部222に接するように形成するとともに、かかる着座部152の上辺部の形状に合わせて突出部222の前面の一部に凹部223を形成してもよい。かかる凹部223により、着座時に臀部に突出部222が当たることの違和感や不快感を和らげることができる。なお、本実施態様のようにオストメイト着座部15の輪郭を直線ではなく曲線で構成することにより、見た目においても柔らかい印象を与えることができて好ましい。
【0029】
さらに、便座1の前端部近傍の内周縁部において、座面11の天面と内周側立ち上がりとの境部分を所定の範囲で窪ませた凹陥部17を形成してもよい。このように、便座1の内周縁部の一部に凹陥部17を設けることにより、開口12の前側で行われる検尿や導尿などの作業がより容易となる。
【0030】
次に、本発明の便座1の使用方法について説明する。健常者が本発明の便座を使用する場合、通常の便座を使用する場合と異なるところはない。すなわち、座面11に座って使用すれば良いが、このとき、健常者の体重はもっぱら迫り出し縁部13近傍の座面11に加重される。しかしながら、本発明の便座1は迫り出し部13が座面11に対して下がり傾斜に形成されているため、迫り出し部13が直接健常者の臀部や腿等に接することが少ない。このことにより、健常者も違和感なく使用することができる。
【0031】
本発明の便座1をオストメイトが使用する場合は、健常者よりも後方に座って作業する。すなわち、オストメイトは座面11の後方に設けたオストメイト着座部15に体重がかかるようにして座ることで、面一の連続面に臀部が安定して載置する。これにより、作業時に臀部がズレたりせずに、良好な使用感を得ることができる。
【0032】
なお、本実施態様の便座1は、座面11の後方よりオストメイト着座部15へと緩やかに隆起するように連続的に形成されているため、使用者は座る前後位置を自分の体格に合わせて任意に選択することができる。すなわち、使用者の身長が低い場合、あまり奥に座ると足が床に届かなくなり、更に股をひろげるためにズボンやスカートを足先まで降ろす必要が生じる。したがって、小柄な体格のオストメイトは、オストメイト着座部15より前方の座面11に座って使用すれば、かかる問題は生じない。
【符号の説明】
【0033】
1 … … 便座
2 … … 洗浄装置
3 … … ボウル
4 … … 便蓋
5 … … タンク
11 … … 座面
12 … … 開口
13 … … 迫り出し部
14 … … 裏面
15 … … オストメイト着座部
16 … … 内周立ち上がり面
17 … … 凹陥部
21 … … ケーシング
22 … … 突出部
131 … … 最前部
132 … … 最後部
133 … … 上面
134 … … 先端部
135 … … 裏面
151 … … 着座部
152 … … 着座部
211 … … 天面部
221 … … 天面部
222 … … 突出部
223 … … 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6