(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】減音装置
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20220128BHJP
E21F 17/00 20060101ALI20220128BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20220128BHJP
【FI】
G10K11/16 120
E21F17/00
E04B1/86 J
G10K11/16 100
(21)【出願番号】P 2018104068
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】河井 康人
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-168172(JP,A)
【文献】特開平06-167982(JP,A)
【文献】特許第6377868(JP,B1)
【文献】特開2015-083756(JP,A)
【文献】特開平09-049656(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02574555(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00-13/00
E04B 1/86
E21F 17/00-17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝搬音の伝搬方向と交差する方向に沿って互いに対向して配置された少なくとも3枚の仕切り板を備え、
前記伝搬音の前記交差する方向の粒子速度が増大する粒子速度増大領域が、前記仕切り板のエッジに沿って現れ、
前記粒子速度増大領域の前記交差する方向の粒子速度に基づく振動エネルギを熱エネルギに変換するために、少なくとも前記エッジに配置された吸音層をさらに備え
、
前記吸音層の面密度及び流れ抵抗が、前記伝搬音の抑制しようとする最小の周波数に対応する波長を表す抑制最小周波数波長に基づいて設定されることを特徴とする減音装置。
【請求項2】
伝搬音の伝搬方向と交差する方向に沿って互いに対向して配置された少なくとも3枚の仕切り板を備え、
前記伝搬音の前記交差する方向の粒子速度が増大する粒子速度増大領域が、前記仕切り板のエッジに沿って現れ、
前記粒子速度増大領域の前記交差する方向の粒子速度に基づく振動エネルギを熱エネルギに変換するために、少なくとも前記エッジに配置された吸音層をさらに備え、
前記伝搬音が管状空間を伝搬し、
前記仕切り板が、前記管状空間を形成する内壁に交差する方向に沿って互いに対向して設けられ
、
前記管状空間がトンネルを含み、
前記伝搬音が、トンネル工事において発生する発破音を含むことを特徴とする減音装置。
【請求項3】
伝搬音の伝搬方向と交差する方向に沿って互いに対向して配置された少なくとも3枚の仕切り板を備え、
前記伝搬音の前記交差する方向の粒子速度が増大する粒子速度増大領域が、前記仕切り板のエッジに沿って現れ、
前記粒子速度増大領域の前記交差する方向の粒子速度に基づく振動エネルギを熱エネルギに変換するために、少なくとも前記エッジに配置された吸音層をさらに備え、
多角形状の底面パネルと、前記底面パネルの各辺から立設される複数の立面パネルと、前記立面パネルにより形成される開口を覆う吸音パネルとを有する減音ボックスの前記立面パネルが前記仕切り板を構成し、前記吸音パネルが前記吸音層を構成するように前記減音ボックスが複数個配列されることを特徴とする減音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝搬音の粒子速度に基づく振動エネルギを熱エネルギに変換する吸音層を用いた減音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの掘り方の代表的な方法の一つに山岳工法がある。山岳工法では、ダイナマイトによる発破等を用いてトンネルが横方向に掘られる。この場合、岩盤の発破音が環境問題になる場合がある。
【0003】
この発破音は数百Hzよりも低い周波数成分が多い。発破作業によって民家等の窓ガラスが振動し、苦情になることがある。その原因の多くは低周波音によるものである。
【0004】
トンネル掘削時の発破音は音源近くでは衝撃的な爆発音であるが、坑口に設置された防音扉などにより中・高周波数領域の音は減衰し、低周波領域の音波が主になる。この低周波領域の振動数が窓ガラス、建具等の固有振動周波数と関係し、建具等の振動、がたつきの原因になることがある。
【0005】
このため、発破音の低周波領域に着目した減音装置が要望されている。低周波音は、通常の多孔質の吸音材料、遮音材料では大きな効果を期待できない(非特許文献1)。
【0006】
そこで、このような減音装置として、位相干渉・共鳴器などの音響原理を応用し、100Hz程度以下の発破音の減音装置が開発されている(非特許文献2-4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】井上 保雄,「トンネル発破音対策の動向」騒音制御 Vol.41, No.6(2017) pp.253-257
【文献】小林 真人 他,「トンネル発破で発生する超低周波音の消音装置」騒音制御 Vol.41, No.6(2017) pp.258-261
【文献】本田 泰大 他,「音響管を用いたトンネル発破音消音器の開発および適用事例」騒音制御 Vol.41, No.6(2017) pp.262-265
【文献】角田 普相 他,「開管の共鳴現象を用いた消音装置」騒音制御 Vol.41, No.6(2017) pp.266-267
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような位相干渉・共鳴器などを応用した減音装置は、低周波領域の特定の周波数の音をピンポイントでしか低減することができず、低周波数領域の音を広い範囲で低減することができないので発破音を減音することができないという問題があり、減音効果についても満足できるものではない。
【0009】
また、トンネル工事の発破音のみならず、例えばオフィスビルの天井又は空中に設けられるダクト管内を伝搬する伝搬音についても、所望の周波数領域の伝搬音を広い範囲で低減したいという要望が強い。
【0010】
本発明の一態様は、所望の周波数領域の伝搬音を広い範囲で大きく低減することができる減音装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る減音装置は、伝搬音の伝搬方向と交差する方向に沿って互いに対向して配置された少なくとも3枚の仕切り板を備え、前記伝搬音の前記交差する方向の粒子速度が増大する粒子速度増大領域が、前記仕切り板のエッジに沿って現れ、前記粒子速度増大領域の前記交差する方向の粒子速度に基づく振動エネルギを熱エネルギに変換するために、少なくとも前記エッジに配置された吸音層をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、所望の周波数領域の伝搬音を広い範囲で大きく低減することができる減音装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は実施形態1に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図である。
【
図2】(a)は上記減音装置の管内粒子速度振幅分布の数値解析条件を示す正面模式断面図であり、(b)はその側面図である。
【
図3】(a)(b)は、上記数値解析条件に基づく数値解析結果を示すグラフである。
【
図4】(a)~(c)は、上記数値解析条件を変更した数値解析結果を示すグラフである。
【
図5】(a)~(d)は、比較例に係る数値解析条件及び数値解析結果を示すグラフである。
【
図6】(a)~(d)は、変形例に係る数値解析条件及び数値解析結果を示すグラフである。
【
図7】(a)~(d)は、他の比較例に係る数値解析条件及び数値解析結果を示すグラフである。
【
図8】(a)~(d)は、他の変形例に係る数値解析条件及び数値解析結果を示すグラフである。
【
図9】(a)は減音装置に設けられた吸音層に関する音圧、平均流速、及び振動速度を説明するための図であり、(b)は理論解析に用いる管状領域と薄い剛板と薄い吸音層を示す図である。
【
図10】上記減音装置による伝搬音のレベルの減衰量を示すグラフであり、(a)は吸音層の面密度が1kg/m
2の場合を示し、(b)は上記吸音層の流れ抵抗が1600Ns/m
3の場合を示す。
【
図11】(a)は比較例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記比較例に係る減音装置による伝搬音のレベルの減衰量を示すグラフである。
【
図12】(a)は変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記変形例に係る減音装置による伝搬音のレベルの減衰量を示すグラフである。
【
図13】(a)は他の変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記他の変形例に係る減音装置による伝搬音のレベルの減衰量を示すグラフである。
【
図14】(a)はさらに他の変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記さらに他の変形例に係る減音装置による伝搬音のレベルの減衰量を示すグラフである。
【
図15】(a)はさらに他の変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記さらに他の変形例に係る減音装置による伝搬音のレベルの減衰量を示すグラフである。
【
図16】(a)はさらに他の変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記さらに他の変形例に係る減音装置による伝搬音のレベルの減衰量を示すグラフである。
【
図17】(a)は実施形態2に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその平面図であり、(c)は上記減音装置による伝搬音のレベルの減衰量を示すグラフである。
【
図18】(a)は実施形態3に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記減音装置による伝搬音のレベルの減衰量を示すグラフである。
【
図20】(a)は実施形態4に係る減音装置に設けられた減音ボックスの外観を示す斜視図であり、(b)は上記減音ボックスの配列例を示す斜視図であり、(c)は上記減音ボックスが設置されたトンネルの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
〔概要〕
伝搬音が伝搬する空間において、 伝搬方向と直交する仕切り板等で区切られた適切な大きさの複数の窪みの並びがある場合、この窪みの開口面を形成する仕切り板付近で開口面の法線方向に大きな粒子速度の領域が集中して現れる。このことは、仕切り板と窪みとによって、伝搬方向と直交する振動速度成分が生み出されることを意味している。そして、その伝搬方向と直交する振動速度成分の大きさは、窪みの寸法等にもよるが、空間を伝搬する伝搬音の振動速度成分よりも5倍以上大きくなることもある。
【0016】
この伝搬方向と直交する振動速度成分の振動エネルギが集中している領域付近に、適切な物理特性と通気性とを有する薄い多孔質吸音層(以下、「吸音層」と呼ぶ)を設置する。これにより、吸音層の法線方向(伝搬音の伝搬方向と直交する方向)に振動する空気の粒子が吸音層を通過する時に、吸音層の繊維の表面あるいは空隙壁との摩擦によって、音のエネルギ(空気粒子の振動)が熱エネルギに変換される。この結果、伝搬音を効果的に抑制できることが数値解析によって示される。
【0017】
本願の各実施形態では、従来の気柱共鳴やヘルムホルツの共鳴等は用いていない。また、空調ダクト系の消音によく用いられている吸音材を内張りする方法などが従来から存在する。
【0018】
しかしながら、本願の各実施形態は、仕切り板と適切な大きさの窪みとの組み合わせにより、窪みの開口部を形成する仕切り板付近に伝搬方向と直交する振動速度成分の振動エネルギを集中させ、適切な物理特性を持った伝搬方向に平行な吸音層で効果的に伝搬音を吸収するという点で、上記従来の方法と異なる新しい考え方に基づいている。そして、本願の各実施形態によれば、上記従来の方法よりも減音性能を大きく向上させることができるし、使用する吸音材の量も上記従来の内張り方法よりもはるかに少なくなる。
【0019】
位相干渉や共鳴器により音を打ち消す従来の方法では、特定の狭い周波数帯域でのみしか効果が得られないのに対して、本願の各実施形態は、低周波数帯域を含む広い周波数帯域で高い減音性能を発揮することも大きな特徴である。
【0020】
後述する実施形態1に係る減音装置は、特にトンネル掘削工事における低い周波数の発破音等の消音にも大きな効果が期待できる。上記減音装置は、組み立てや解体が容易なパネル状部材で構成できるので、トンネル掘削が進むに連れて頻繁な設置や撤去が要求される工事現場にも適している。また、解体後はコンパクトに保管でき、運搬等も容易に行える利点がある。
【0021】
また、後述する実施形態2に示すように、平坦な面に沿って伝搬する音に対しても、同様な装置を設置することで中高域の伝搬音が抑制できる。
【0022】
〔実施形態1〕
(減音装置1の構成)
図1(a)は実施形態1に係る減音装置1の正面模式断面図であり、(b)はその側面図である。減音装置1は、断面矩形状の管状体9の内部に形成される管状空間4を伝搬する伝搬音10の伝搬方向(x方向)と直交し管状体9の内壁11から互いに対向して突出する6枚の枠状の仕切り板2を備える。隣接する仕切り板2と内壁11とにより環状の凹部6が並んで5個形成される。
【0023】
本明細書において「管状体」とは、管状の構造体を意味する。その断面は、円形に限定されず、矩形、その他の形状であっても良いものとする。また、軸心方向に沿って断面が一定でなく変化しているものも「管状体」に含まれるものとする。そして、トンネルその他の構造物も「管状体」に含まれるものとする。
【0024】
凹部6により形成される窪みの開口面の法線方向(
図1ではy方向)に沿った伝搬音10の粒子速度が非常に増大する粒子速度増大領域7が、内壁11から突出する各仕切り板2の先端(エッジ)に沿って現れる。
【0025】
減音装置1には、粒子速度増大領域7に対応する上記窪みの開口面の法線方向の粒子速度に基づく振動エネルギを熱エネルギに変換するために、断面矩形の筒状の吸音層3が、6枚の仕切り板2のそれぞれの先端を繋いで5個の環状の凹部6を覆うように設けられる。
【0026】
各凹部6の幅d及び深さhは、伝搬音10の抑制しようとする最小の周波数に対応する波長を表す抑制最小周波数波長λに基づいて設定される。凹部6の幅dは、λ/5以下であることが好ましい。凹部6の深さhは、λ/30以上であることが好ましい。
【0027】
仕切り板2の枚数は3枚以上設け、凹部6が2個以上形成されれば良い。凹部6は3個以上形成されることが好ましい。伝搬音10を大きく減衰させるためには、凹部6は多い程良い。
【0028】
吸音層3の面密度M及び流れ抵抗rsも、上記抑制最小周波数波長λに基づいて設定される。吸音層3の面密度Mは、伝搬音10の抑制しようとする周波数帯域に応じて、0.25~20kg/m2の範囲で、概ね波長に比例して大きくとる必要がある。また、流れ抵抗rsは、1000Ns/m3前後で広い帯域で効果が得られるが、その1/4~4倍程度の範囲内の値を適切に選択すれば、抑制したい周波数帯域に対して大きな効果がある。
【0029】
吸音層3は仕切り板2の先端を繋いで凹部6を覆うように設けられれば良く、凹部6の内部を吸音材で埋める必要が無い。上記窪みの開口面の法線方向の粒子速度が非常に増大する粒子速度増大領域7は仕切り板2の先端に集中して現れるので、この先端付近にだけ吸音層3を設ければ良く、凹部6の内部を吸音材で埋める必要が無い。従って、非常に少ない吸音材で効率的に伝搬音10を減音することができる。
【0030】
吸音層3を構成する吸音材は、例えば、布、グラスウール、多孔質材料、アルミニウム焼結材、アルミニウム繊維材を使用することができる。
【0031】
仕切り板2は管状体9の内壁11から突出して設けられなくても良い。例えば、内壁11との間に隙間が形成されるように6枚の仕切り板2を設け、径方向の外方に向かって開口する5個の凹部を形成してもよい。この場合、吸音層3は、仕切り板2の内壁11側の先端を繋いで、径方向の外方に向かって開口する5個の凹部を覆うように設けられる。さらに、径方向の内方に向かって開口する5個の凹部と、径方向の外方に向かって開口する5個の凹部とを設け、仕切り板2の内壁11とは反対側の先端を繋いで、径方向の内方に向かって開口する5個の凹部を覆う吸音層3と、仕切り板2の内壁11側の先端を繋いで、径方向の外方に向かって開口する5個の凹部を覆う吸音層3とを取り付けるように構成しても良い。
【0032】
仕切り板2は、管状体9の矩形断面の四辺から突出するように設けられなくても良く、矩形断面の少なくとも一辺から突出するように設けられても良い。
【0033】
管状体9は、断面矩形状でなくても良く、例えば断面円形状でもよい。
【0034】
複数の仕切り板2、複数の凹部6、及び吸音層3(パネル)の集合体で構成される減音装置1を直列に多段で用いることにより、伝搬音10の一層大きな減衰効果が得られる。また、直列に多段で用いる集合体の減音装置1毎に異なる減衰特性を持たせるように構成することにより、抑制しようとする周波数帯域が広がるので、減音装置1の適用分野をより一層広げることが可能となる。
【0035】
減音装置1の仕切り板2及び吸音層3は、いずれもパネル状に分解することができる。従って、減音装置1は、分解すると非常に小型になるので、位相干渉・共鳴器などを応用した従来の減音装置と異なり、移動、保管が容易になる。
【0036】
(管内粒子速度振幅分布の数値解析)
図2(a)は減音装置1の管内粒子速度振幅分布の数値解析条件を示す正面模式断面図であり、(b)はその側面図である。
図3(a)(b)は、上記数値解析条件に基づく数値解析結果を示すグラフである。説明の便宜上、先に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0037】
管状空間4を伝搬する伝搬音10に基づくy方向の粒子速度振幅分布の数値解析を、
図2(a)に示されるX-Y平面(Z=0)内の数値解析領域Rを対象にして行った。数値解析は、波動方程式及び境界条件に基づいて行い、実際の1/10~1/20程度のオーダーの寸法数値で実施した。例えば、管状体9の断面の横寸法a=0.5m、縦寸法b=0.5m、凹部6の深さh=0.1m、凹部6の幅d=0.1mの寸法数値で数値解析を行った。
【0038】
伝搬音10の周波数が250Hzである場合、y方向の非常に大きな粒子速度が、
図3(a)に示すように、6枚の仕切り板2のエッジ付近の位置に対応して6個現れた。伝搬音10の周波数が500Hzである場合も、
図3(b)に示すように、y方向の非常に大きな粒子速度が同様の傾向で現れた。
【0039】
このように粒子がy方向に激しく振動している仕切り板2のエッジ付近に、例えば表面積の大きな繊維材等を含む吸音層3(
図1)をx方向に沿って配置してやると、y方向の粒子速度に比例して摩擦力が発生し、y方向の粒子速度に基づく振動エネルギを効率的に熱エネルギに変換することができると考えられる。
【0040】
図4(a)~(c)は、上記数値解析条件を変更した数値解析結果を示すグラフである。
仕切り板2を4枚にして凹部6の数を3個にすると、
図4(a)に示すように、y方向の大きな粒子速度が、4枚の仕切り板2の位置に対応して4個現れた。凹部6の数を5個にすると、
図4(b)に示すように、y方向の大きな粒子速度が、6枚の仕切り板2の位置に対応して6個現れた。凹部6の数を8個にすると、
図4(c)に示すように、y方向の大きな粒子速度が、9枚の仕切り板2の位置に対応して9個現れた。伝搬音10の周波数は、いずれも500Hzであった。
【0041】
このように、複数枚設置された仕切り板2のエッジに沿って、y方向の粒子速度振幅の非常に大きな領域が現れた。
【0042】
図5(a)~(d)は、比較例に係る数値解析条件及び数値解析結果を示すグラフである。説明の便宜上、先に説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0043】
図5(a)(b)に示すように、仕切り板2を2枚にして、2枚の仕切り板2の間を区画化せずに凹部6の数を1個にすると、
図5(c)(d)に示すように、仕切り板2の位置に対応するy方向の大きな粒子速度は殆ど現れなかった。このため、2枚の仕切り板2の間にさらに仕切り板2を設けて区画化し、凹部6の数を複数個にすることによって、y方向の非常に大きな粒子速度が仕切り板2のエッジ付近の位置に現れてくると考えられる。
【0044】
図6(a)~(d)は、変形例に係る数値解析条件及び数値解析結果を示すグラフである。
図6(a)に示すように、隣接する仕切り板2の間隔を
図2に示す例の1/2にしても、
図6(c)(d)に示すように、y方向の大きな粒子速度が同様の傾向で仕切り板2の位置に対応して現れた。伝搬音10の周波数は500Hzであった。
【0045】
図7(a)~(d)は、他の比較例に係る数値解析条件及び数値解析結果を示すグラフである。隣接する仕切り板2の間隔を
図6の例と同様に1/2にし、さらに、凹部6の深さを
図6の例の1/2にすると、
図7(a)(b)に示すように、仕切り板2の位置に対応するy方向の大きな粒子速度は現れなかった。このように、凹部6の深さ寸法が小さいと、位相差が小さくなり、y方向の非常に大きな粒子速度は生じない。このため、y方向の非常に大きな粒子速度を発生させるためには、抑制しようとする伝搬音10の周波数に対応する波長との関係で、凹部6の適切な深さが必要であると考えられる。
【0046】
図8(a)~(d)は、他の変形例に係る数値解析条件及び数値解析結果を示すグラフである。隣接する仕切り板2の間隔を
図8(a)に示すように不等間隔にしても、
図8(c)(d)に示すように、y方向の大きな粒子速度が同様の傾向で仕切り板2の位置に対応して現れた。幅d=0.1m、幅d1=0.05m、幅d2=0,07m、幅d3=0.03m、幅d4=0.05m、幅d5=0.12m、幅d6=0.08m、で数値解析を行った。このように、仕切り板2の配置が等間隔でない場合でも、y方向の大きな粒子速度が仕切り板2の位置に対応して現れる傾向は同じであった。
【0047】
(吸音層3の理論的取扱い)
図9(a)は減音装置1に設けられた吸音層3に関する音圧、平均流速、及び振動速度を説明するための図であり、(b)は理論解析に用いる管状領域と薄い剛板と薄い吸音層を示す図である。y方向の粒子速度に基づく振動エネルギを熱エネルギに変換する吸音層3の理論的取り扱いを説明する。
【0048】
図9(a)において、吸音層3は通気性の薄い多孔質層である。吸音層3の両面に働く音圧をp
1、p
2とする。そして、吸音層3を通過する伝搬音の粒子の平均流速をv
sとする。吸音層3の振動速度をv
mとする。
【0049】
図9(a)に示すような、波長に比べて十分薄く、厚さを無視できて通気性を有する多孔質の吸音層3において、流れ抵抗をrs、吸音層3の両面の音圧をそれぞれp
1、p
2、吸音層3を通過する空気粒子の速度をv
sとすると、
【0050】
【0051】
なる関係がある。また、吸音層3も両面に働く音圧p1と音圧p2との間の音圧差によって励振させられる。Mを吸音層3の面密度、vmを振動速度とし、時間項としてexp(-iωt)を使用すると次式を得る。
【0052】
【0053】
従って、吸音層3の表面の粒子速度vは空気粒子の速度vs及び振動速度vmの両者の和で表され、
【0054】
【0055】
となる。-(p1-p2)/v=Zr(吸音層3のインピーダンス)と置くと、
【0056】
【0057】
図9(b)を参照すると、理論解析に用いる管状領域Ωと、管状領域Ω内に存在する薄い剛板Bと、薄い吸音層Cとが示されている。
【0058】
管の両端は無反射端A(インピーダンスがρc)であり、軸に直交する平面に等間隔に配置された複数の点音源Psと、面の向きn(法線)とが
図9(b)に示されている。
【0059】
図9(b)に示すように、複数の点音源Psと、薄い剛板Bと、薄い吸音層Cとを含む管状領域Ωにおいて、管の両端の無反射端Aは入射した音波が反射しないように、インピーダンスがρcである境界とする。ただし、ρは空気の密度、cは音速である。また、軸に直交する平面内に均等に配置した複数の点音源Psによって、管内で近似的に平面波を発生している。
【0060】
管状領域Ωに波動方程式から導かれた積分公式を適用すると、速度ポテンシャルφは、
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
なお、上記法線微分型の方程式に係る文献1)は、「T. terai: On calculation of sound fields around three dimensional objects by interal equation methods, J. Sound & Vib.,69, 71-100, 1980」である。
【0066】
(9)式で、Pを面A或いは面S上に収束させた積分方程式と(11)式、(12)式の積分方程式とを連立させて解けば、境界上のφ及びΦが求められる。空間の点の音圧分布は、解かれた境界上の値を(9)式に、また、粒子速度は(10)式に代入すれば求めることができる(npをx、y、z方向の単位ベクトルとすることでそれぞれの成分が求められる)。断面変化の無い直管で、管の途中に減音装置等の物体が無い場合には、音源から管の両方向に放射された音はそのまま減衰せず無反射端Aに到達する。無反射端Aを通過する音の時間平均エネルギ流Iは、上記で求められた境界の無反射端A上の音圧p、粒子速度vを用いて、
【0067】
【0068】
と表せる。ただし、S
Aは管断面積、*は複素共役を表す。
図9(b)に示すように、管の途中に吸音層Cを備えた物体を設置した場合、その物体(減音装置)の効果は、設置前後の右側の無反射端Aを通過するエネルギを比較することで求めることができる。
【0069】
境界積分方程式の数値的な解法は種々考えられるが、ここでは境界要素法を用いた。
【0070】
(伝搬音10のレベルの減衰量)
図10は、減音装置1による伝搬音10のレベルの減衰量を示すグラフであり、(a)は吸音層3の面密度Mが1kg/m
2の場合を示し、(b)は吸音層3の流れ抵抗rsが1600Ns/m
3の場合を示す。横軸は伝搬音10の周波数を示し、縦軸は伝搬音10のレベルの減衰量を示す。
【0071】
減音装置1に設けられた吸音層3の面密度Mが1kg/m
2の場合に、吸音層3の流れ抵抗rsを100Ns/m
3、200Ns/m
3、400Ns/m
3、800Ns/m
3、1600Ns/m
3、3200Ns/m
3、及び6400Ns/m
3、と変化させたときの伝搬音10のレベルの減衰量が
図10(a)に示されている。
【0072】
そして、減音装置1に設けられた吸音層3の流れ抵抗rsが1600Ns/m
3の場合に、吸音層3の面密度Mを16kg/m
2、8kg/m
2、4kg/m
2、2kg/m
2、1kg/m
2、0.5kg/m
2、及び0.25kg/m
2、と変化させたときの伝搬音10のレベルの減衰量が
図10(b)に示されている。
【0073】
図10(a)(b)のいずれにおいても、
図1に示される実施形態1の減音装置1により、レベルが10dB~15dB程度も低周波数領域の広い範囲に渡って減衰していることが見てとれる。
【0074】
図11(a)は比較例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記比較例に係る減音装置による伝搬音10のレベルの減衰量を示すグラフである。
【0075】
図11(a)(b)は
図5(a)(b)で前述した区画化しない凹部6の構成に対応する。この仕切り板2を2枚にして、2枚の仕切り板2の間を区画化せずに凹部6の数を1個にする構成では、凹部6を区画化した
図10(a)の場合の減衰性能と比較して、
図11(c)に示されるように減衰性能が大きく低下した。
【0076】
図12(a)は変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記変形例に係る減音装置による伝搬音10のレベルの減衰量を示すグラフである。
【0077】
図12(a)(b)は
図6で前述した仕切り板2の間隔を狭くした凹部6の構成に対応する。仕切り板2の間隔を
図1に示される構成より狭くしても、
図12(c)に示されるように減衰特性はほぼ同じであった。
【0078】
図13(a)は他の変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記他の変形例に係る減音装置による伝搬音10のレベルの減衰量を示すグラフである。
【0079】
図13(a)(b)は
図8(a)(b)で前述した仕切り板2の配置を不等間隔にした凹部6の構成に対応する。仕切り板2の配置を
図1に示される等間隔から不等間隔に変更しても、
図13(c)に示されるように減衰特性に大きな変化は無かった。
【0080】
図14(a)はさらに他の変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記さらに他の変形例に係る減音装置による伝搬音10のレベルの減衰量を示すグラフである。
【0081】
図14(a)(b)は、トンネル内での使用を考慮して、仕切り板2が左右の内壁11及び上側の内壁11からのみ突出する形状に変更されたさらに他の変形例の構成を示している。トンネル内での使用を考慮した形状に仕切り板2を変更しても、
図14(c)に示されるように、吸音層3の物理特性を適切に選べば、広い周波数範囲で大きな減衰が得られる。例えば、管状空間4はトンネルであり、伝搬音10はトンネル工事において発生する発破音である。
【0082】
図15(a)はさらに他の変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記さらに他の変形例に係る減音装置による伝搬音10のレベルの減衰量を示すグラフである。
【0083】
凹部6は、
図15(a)(b)に示されるように、内壁11よりも半径方向の外方に形成してもよい。管状体9Bは、内壁11よりも半径方向の外方に形成される内壁11Bを有する。この内壁11Bから半径方向の内方に向かって4枚の仕切り板2Bが内壁11に対応する位置まで突出するように設けられる。4枚の仕切り板2Bと、管状体9Bの内壁11と内壁11Bとの間の段差とにより、5個の凹部6が形成される。この場合も、
図15(c)に示されるように、吸音層3の物理特性を適切に選べば、広い周波数範囲で大きな減衰が得られる。
【0084】
図16(a)はさらに他の変形例に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記さらに他の変形例に係る減音装置による伝搬音10のレベルの減衰量を示すグラフである。
【0085】
図1及び
図2に示す条件で、スケールを10倍にして数値解析を行うと、面密度Mが、
図10(a)に示す例の10倍の10.0kg/m
2の場合で、
図16(c)に示すように、
図10(a)とほぼ同じ減衰特性が得られた。横軸の伝搬音10の周波数の値は
図10(a)に示す例の(1/10)倍である。
【0086】
破線C1は、
図16(a)に示すように、一番左側の仕切り板2と一番右側の仕切り板2との間の区間幅の凹部6に吸音材93(グラスウール32kg/m
3)を充填した場合の予測計算値を表す。
【0087】
図16(c)に示されるように、本実施形態は、破線C1により示される通常の多孔質の吸音材93を用いる方法と比較して、発破音等の抑制に重要な周波数帯域で優れた効果を発揮する。また、本実施形態は、使用する吸音材の量も、上記破線C1により示される方法よりもはるかに少ない。
【0088】
実施形態1に係る減音装置1の管状空間4は例えばトンネルであり、伝搬音10は例えばトンネル工事において発生する発破音である。
【0089】
実施形態1に係る減音装置1は、例えば、自動車のエアコン、マフラーに設けられるダクト内を伝搬する伝搬音の減音にも適用することができる。
【0090】
また、減音装置1は、トンネル内に突入した高速列車により発生した圧縮波がトンネル内を伝搬して反対側の出口からパルス状の圧力波に基づく破裂的な空気音となって外部に放射される微気圧波を低減するために、高速列車が通過する通路部を有するトンネルの出入り口に適用することもできる。
【0091】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0092】
図17(a)は実施形態2に係る減音装置1Aの正面模式断面図であり、(b)はその平面図であり、(c)は上記減音装置1Aによる伝搬音10のレベルの減衰量を示すグラフである。
【0093】
前述した実施形態1では、仕切り板2を管状体9の内部に配置する例を示した。しかしながら本発明はこれに限定されない。平坦な面に沿って伝搬する伝搬音10に対しても、
図17(a)(b)に示すような仕切り板2Cを設置することで、
図17(b)に示すように、伝搬音10の中高域を抑制することができる。
【0094】
減音装置1Aは、点音源Psから平坦面12に沿って伝搬する伝搬音10の伝搬方向と直交する方向に向かって平坦面12から突出して設けられる複数枚の矩形状の仕切り板2Cを備える。複数枚の仕切り板2Cの一部は、平坦面12に平行で且つ伝搬音10の伝搬方向に垂直な方向に沿って配置され、複数枚の仕切り板2Cの残りの一部は、伝搬音10の伝搬方向に沿って複数枚の仕切り板2Cの一部のそれぞれと直交するように配置される。このように、複数の仕切り板2Cは格子状に配置される。
【0095】
そして、複数枚の仕切り板2Cのそれぞれの先端と、隣接する仕切り板2Cにより囲まれた複数個の凹部6のそれぞれとを覆う吸音層3Aが減音装置1Aに設けられる。
【0096】
従って、減音装置1Aは、平坦な地表面に沿って伝搬する伝搬音10を抑制することができる。そして、減音装置1Aによれば、遮音壁を設置しなくても、伝搬音10が伝搬してくる方向を見通せる状態にしながら、伝搬音10を減衰させることができる。
【0097】
そして、複数の仕切り板2Cが格子状に配置されるので、平坦面12に沿った任意の方向に伝搬する伝搬音を抑制することができる。
【0098】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0099】
図18(a)は実施形態3に係る減音装置の正面模式断面図であり、(b)はその側面図であり、(c)は上記減音装置による伝搬音10のレベルの減衰量を示すグラフである。
図19は上記減音装置の外観を示す図である。
【0100】
前述した実施形態1及び2で実施した数値解析結果を実証するための模型実験を実施した。
図18(a)に示すように、実施形態1で前述した減音装置1の-x方向に、吸音材を充填して伝搬音10を発生させるための16cm径のスピーカ14が配置され、減音装置1のx方向に、伝搬音10の音圧を測定するためのマイク15と、無反射端として働く吸音層16とが配置される。
【0101】
薄い吸音層3には、流れ抵抗rs=506Ns/m3、面密度M=0.32kg/m2のインド綿を使用した。測定は、スピーカ14から発生する伝搬音10によりM系列信号を生成し、このM系列信号による相関法を用い、実施形態1の減音装置1に係る抑制構造の有無による伝搬音10のレベル差を測定した。
【0102】
図18(c)に示すように、測定結果を表す曲線C2は、数値解析結果を表す曲線C3とよく似た傾向を示している。管状体9の両端での若干の反射波による定在波の影響が無視できないことや、1kHzを超える周波数では平面波伝搬の近似が成立しにくいことを考慮すると、測定結果と数値解析結果とは良い一致を示していると考えられる。
【0103】
〔実施形態4〕
前述した実施形態では仕切り板を内壁から突出させる構成の例を示したが、本発明はこれに限定されない。トンネル等の大規模空間では、例えば、矩形パネルで箱状のものを作成し、その一面が吸音パネルのユニットを水平方向、垂直方向に多数並べるように構成してもよい。
【0104】
図20(a)は実施形態4に係る減音装置に設けられた減音ボックス13の外観を示す斜視図であり、(b)は上記減音ボックス13の配列例を示す斜視図であり、(c)は上記減音ボックス13が設置されたトンネルの模式断面図である。
【0105】
実施形態4に係る減音装置は、立方体状の減音ボックス13を備える。減音ボックス13は、正方形状の底面パネル24と、底面パネル24の四辺から立設される正方形状の4枚の立面パネル25と、立面パネル25により形成される開口を覆う吸音パネル26とを有する。
【0106】
このように構成された減音ボックス13は、例えば
図20(b)に示されるように、立面パネル25が仕切り板2を構成し、吸音パネル26が吸音層3を構成するようにマトリックス状に配置される。
【0107】
トンネル発破工事が実施されるトンネルには、
図20(c)に示されるように、搬入・搬出用通路17が断面略半円状の内壁19に覆われるように中央に配置され、通気用ダクト18が内壁19の近くに配置される。そして、減音ボックスクラスター27が、吸音層3を内側に向けて搬入・搬出用通路17と対向するように複数個配列され、吸音層3を外側に向けて内壁19と対向するように複数個配列される。
【0108】
(まとめ)
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る減音装置は、伝搬音の伝搬方向と交差する方向に沿って互いに対向して配置された少なくとも3枚の仕切り板を備え、前記伝搬音の前記交差する方向の粒子速度が増大する粒子速度増大領域が、前記仕切り板のエッジに沿って現れ、前記粒子速度増大領域の前記交差する方向の粒子速度に基づく振動エネルギを熱エネルギに変換するために、少なくとも前記エッジに配置された吸音層をさらに備えることを特徴とする。
【0109】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記伝搬音が管状空間を伝搬し、前記仕切り板が、前記管状空間を形成する内壁に交差する方向に沿って互いに対向して設けられることが好ましい。
【0110】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記吸音層が、少なくとも前記仕切り板の先端の端面に配置されることが好ましい。
【0111】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記吸音層が、前記仕切り板のそれぞれのエッジを繋ぐように設けられることが好ましい。
【0112】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記内壁と隣接する前記仕切り板とにより形成される凹部の幅及び深さが、前記伝搬音の抑制しようとする最小の周波数に対応する波長を表す抑制最小周波数波長に基づいて設定されることが好ましい。
【0113】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記吸音層の面密度及び流れ抵抗が、前記伝搬音の抑制しようとする最小の周波数に対応する波長を表す抑制最小周波数波長に基づいて設定されることが好ましい。
【0114】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記管状空間がトンネルを含み、前記伝搬音が、トンネル工事において発生する発破音を含むことが好ましい。
【0115】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記仕切り板が、前記管状空間の内壁から半径方向の外方に向かって窪んで形成される窪み空間に配置され、
前記仕切り板の半径方向の内方の先端が、前記管状空間の内壁に沿って配置されることが好ましい。
【0116】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記伝搬音が平坦面に沿って伝搬し、前記仕切り板が、前記平坦面と交差する方向に突出して設けられることが好ましい。
【0117】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記仕切り板が、前記平坦面から窪んで形成される窪み空間に配置され、前記仕切り板の先端が、前記平坦面に沿って配置されることが好ましい。
【0118】
本発明の一態様に係る減音装置は、前記伝搬音の伝搬方向と交差する方向から見て前記仕切り板が格子状に配置されることが好ましい。
【0119】
本発明の一態様に係る減音装置は、多角形状の底面パネルと、前記底面パネルの各辺から立設される複数の立面パネルと、前記立面パネルにより形成される開口を覆う吸音パネルとを有する減音ボックスの前記立面パネルが前記仕切り板を構成し、前記吸音パネルが前記吸音層を構成するように前記減音ボックスが複数個配列されることが好ましい。
【0120】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0121】
1 減音装置
2 仕切り板
3 吸音層
4 管状空間
6 凹部
7 粒子速度増大領域
9 管状体
10 伝搬音
11 内壁
12 平坦面
13 減音ボックス
24 底面パネル
25 立面パネル
26 吸音パネル
27 減音ボックスクラスター
93 吸音材
λ 抑制最小周波数波長
v 粒子速度
M 面密度
rs 流れ抵抗
d 幅
h 深さ
R 数値解析領域