(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ケイ酸塩を含有するウコギ科植物用肥料
(51)【国際特許分類】
C05D 9/00 20060101AFI20220114BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220114BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20220114BHJP
A01G 22/00 20180101ALI20220114BHJP
A61K 36/25 20060101ALI20220114BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220114BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220114BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220114BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C05D9/00
A01G7/00 601A
A01G31/00 601C
A01G22/00
A01G31/00 612
A61K36/25
A61P3/00
A61P9/12
A61P17/18
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2018549090
(86)(22)【出願日】2017-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2017039842
(87)【国際公開番号】W WO2018084274
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2016216817
(32)【優先日】2016-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516325626
【氏名又は名称】株式会社パークフォレスト
(74)【代理人】
【識別番号】100183461
【氏名又は名称】福島 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】パク チョン ホ
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101984783(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102701880(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105732192(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2002-0087705(KR,A)
【文献】特開2016-034243(JP,A)
【文献】特開2012-170361(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0062253(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105168285(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0077936(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1513509(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05D 9/00-9/02
A01G 7/00-7/06
A01G 31/00-31/06
A01G 22/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸塩を含有するウコギ科
トチバニンジン属植物用肥料
であって、
前記ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム10水和物であり、
ウコギ科トチバニンジン属植物中のジンセノサイドの含有量が増大でき、
前記ジンセノサイドが、ジンセノサイドF1、ジンセノサイドF2、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2(S)、及びジンセノサイドRh1(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種のジンセノサイドであり、
ウコギ科トチバニンジン属植物の茎の長さが抑制でき、かつ、
ウコギ科トチバニンジン属植物の茎の太さが増大できる、
水耕栽培に用いるためのウコギ科トチバニンジン属植物用肥料。
【請求項2】
前記ジンセノサイドが、ジンセノサイドF2、ジンセノサイドRf、及びジンセノサイドRg2(S)からなる群より選ばれる少なくとも1種のジンセノサイドである、請求項1に記載のウコギ科トチバニンジン属植物用肥料。
【請求項3】
少なくとも下記A)~C)の何れかの条件を満たすウコギ科トチバニンジン属植物が得られる、請求項1又は2に記載のウコギ科トチバニンジン属植物用肥料。
前記A)ウコギ科トチバニンジン属植物中に含まれるジンセノサイドF2含有量が0.1mg以上/生体重1g、
前記B)ウコギ科トチバニンジン属植物中に含まれるジンセノサイドRg2(S)含有量が0.05mg以上/生体重1g、
前記C)ウコギ科トチバニンジン属植物中に含まれるジンセノサイドRf含有量が0.05mg以上/生体重1gである。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか一項に記載の
ウコギ科トチバニンジン属植物用肥料を
水耕栽培に用いる手段を備える、ウコギ科
トチバニンジン属植物の
水耕栽培システム。
【請求項5】
さらに、超音波噴霧手段
及び光照射手段を備える、請求項
4に記載の
水耕栽培システム。
【請求項6】
前記光照射手段が
(1)紫色光を照射する手段、及び
(2)赤色光を照射する手段を備え、並びに
該(2)赤色光の強度が、(1)紫色光の強度1に対して、3~30の範囲であり、
前記(1)紫色光が、380~450nmの波長域にピークを有し、
前記(2)赤色光が、620~750nmの波長域にピークを有する、請求項
5に記載の
水耕栽培システム。
【請求項7】
請求項1~
3の何れか一項に記載の
ウコギ科トチバニンジン属植物用肥料を、
水耕栽培でウコギ科
トチバニンジン属植物に施用する工程を備える、ウコギ科
トチバニンジン属植物の
水耕栽培方法。
【請求項8】
さらに、超音波噴霧工程
及び光照射工程を備える、請求項
7に記載のウコギ科
トチバニンジン属植物の
水耕栽培方法。
【請求項9】
前記光照射工程が
(1)紫色光を照射する工程、及び
(2)赤色光を照射する工程を備え、並びに
該(2)赤色光の強度が、(1)紫色光の強度1に対して、3~30の範囲であり、
前記(1)紫色光が、380~450nmの波長域にピークを有し、
前記(2)赤色光が、620~750nmの波長域にピークを有する、
請求項
8に記載のウコギ科
トチバニンジン属植物の
水耕栽培方法。
【請求項10】
請求項1~
3の何れか一項に記載の
ウコギ科トチバニンジン属植物用肥料、請求項
4~
6の何れか一項に記載の
水耕栽培システム、又は請求項
7~
9の何れか一項に記載の
水耕栽培方法によって得られたウコギ科
トチバニンジン属植物組成物。
【請求項11】
請求項
10に記載のウコギ科
トチバニンジン属植物
組成物であって、少なくとも下記A)~C)の何れかの条件を満たすことを特徴とするウコギ科
トチバニンジン属植物組成物。
A)収穫物中に含まれるジンセノサイドF2含有量が0.1mg以上/生体重1g、
B)収穫物中に含まれるジンセノサイドRg2(S)含有量が0.05mg以上/生体重1g、
C)収穫物中に含まれるジンセノサイドRf含有量が0.05mg以上/生体重1g。
【請求項12】
請求項
10又は
11に記載のウコギ科
トチバニンジン属植物組成物を含む加工品。
【請求項13】
請求項
10又は
11に記載のウコギ科
トチバニンジン属植物組成物の抽出物。
【請求項14】
請求項
13に記載のウコギ科
トチバニンジン属植物組成物の抽出物を製造する方法であって、
前記ウコギ科
トチバニンジン属植物
組成物を
、ケイ酸ナトリウム10水和物を含む水溶液で抽出する工程を含む
、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ酸塩を含有するウコギ科植物用肥料に関する。
【背景技術】
【0002】
高麗人蔘(コウライニンジン)は、朝鮮人蔘(チョウセンニンジン)、御種人蔘(オタネニンジン)とも呼ばれ、古くから薬用又は食用に用いられているウコギ科の多年草植物である。例えば、新芽の高麗人蔘は、韓国の伝統料理の一つである参鶏湯(サムゲタン)に加え、薬膳料理として利用されており、高麗人蔘の根だけでなく、茎及び葉も食べることができる。
【0003】
高麗人蔘に含まれる主要な有用成分は、ジンセノサイド(Ginsenoside)と呼ばれる人蔘サポニン群であり、このジンセノサイドには、抗酸化作用、血圧促進作用、抗炎症作用等の様々な働きがあることが知られており、近年、高麗人蔘は、韓国だけでなく、世界各国で注目されている。
【0004】
高麗人蔘に含まれるジンセノサイドには、F1、F2、Rc、Rb1、Rb2、Rb3、Rc、Rd等20種以上の種類が知られている。そして、各種ジンセノサイドごとに、興味深い生理活性を有することが分かってきている(特許文献1)。
【0005】
高麗人蔘の露地栽培は、通常、播種から収穫までに少なくとも4~6年程度の栽培期間が必要であり、病害虫に弱いため、栽培が非常に難しく、また、収穫後は土地の栄養が失われることから、連作が難しいことが知られている。
【0006】
そこで、これまでにも、高麗人蔘の効率的な栽培方法の研究が盛んに行われている。例えば、特許文献2には、播種から収穫まで、特定の栽培条件で制御する栽培方法が開示されている。
【0007】
高麗人蔘は、根の大きさも重要であるが、中でも、茎が細くて長いものは品質が落ちると判断されることから、茎が太くて短い高麗人蔘の栽培方法が求められている。
【0008】
しかしながら、これら高麗人蔘の栽培方法としては未だに十分ではなく、また、特定のジンセノサイドを多く含む高麗人蔘を、効率的に栽培する方法の確立が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-015462号公報
【文献】国際公開第2015/093607号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ジンセノサイドの含有量を増大させ、品質がよく、かつ、栽培期間を短くすることができるウコギ科植物用肥料の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ケイ酸塩を用いることによって、ウコギ科植物中の特定のジンセノサイドの含有量を増大できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に示すウコギ科植物用肥料、栽培システム、栽培方法等に関する。
項1.
ケイ酸塩を含有するウコギ科植物用肥料。
項2.
前記ケイ酸塩が水溶性である、項1に記載の肥料。
項3.
前記ケイ酸塩がケイ酸アルカリ金属塩又はその水和物である、項1又は2に記載の肥料。
項4.
前記ケイ酸塩がケイ酸ナトリウム10水和物である、項1~3の何れか一項に記載の肥料。
項5.
ウコギ科植物中のジンセノサイドの含有量が増大できる、項1~4の何れか一項に記載の肥料。
項6.
前記ジンセノサイドが、ジンセノサイドF1、ジンセノサイドF2、ジンセノサイドF5、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2(S)、ジンセノサイドRh1(S)、及びジンセノサイドRh1(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種のジンセノサイドである、項5に記載の肥料。
項7.
前記ウコギ科植物が、トチバニンジン属である、項1~6の何れか一項に記載の肥料。
項8.
ウコギ科植物の茎の長さが抑制できる、項1~7の何れか一項に記載の肥料。
項9.
ウコギ科植物の茎の太さが増大できる、項1~8の何れか一項に記載の肥料。
項10.
項1~9の何れか一項に記載の肥料を用いる手段を備える、ウコギ科植物の栽培システム。
項11.
さらに、超音波噴霧手段を備える、項10に記載の栽培システム。
項12.
さらに、光照射手段を備える、項10又は11に記載の栽培システム。
項13.
前記光照射手段が
(1)紫色光を照射する手段、及び
(2)赤色光を照射する手段を備え、並びに
該(2)赤色光の強度が、(1)紫色光の強度1に対して、3~30の範囲である、項12に記載の栽培システム。
項14.
前記(1)紫色光が、380~450nmの波長域にピークを有する、項13に記載の栽培システム。
項15.
前記(2)赤色光が、620~750nmの波長域にピークを有する、項13又は14に記載の栽培システム。
項16.
前記(2)赤色光の強度が、(1)紫色光の強度1に対して、3.2~10の範囲である、項13~15の何れか一項に記載の栽培システム。
項17.
項1~9の何れか一項に記載の肥料を、ウコギ科植物に施用する工程を備える、ウコギ科植物の栽培方法。
項18.
さらに、超音波噴霧工程を備える、項17に記載の栽培方法。
項19.
さらに、光照射工程を有する、項17又は18に記載の栽培方法。
項20.
前記光照射工程が
(1)紫色光を照射する工程、及び
(2)赤色光を照射する工程を備え、並びに
該(2)赤色光の強度が、(1)紫色光の強度1に対して、3~30の範囲である、項19に記載の栽培方法。
項21.
前記(1)紫色光が、380~450nmの波長域にピークを有する、項20に記載の栽培方法。
項22.
前記(2)赤色光が、620~750nmの波長域にピークを有する、項20又は21に記載の栽培方法。
項23.
前記(2)赤色光の強度が、(1)紫色光の強度1に対して、3.2~10の範囲である、項20~22の何れか一項に記載の栽培方法。
項24.
項1~9の何れか一項に記載の肥料、項10~16の何れか一項に記載の栽培システム、又は項17~23の何れか一項に記載の栽培方法によって得られたウコギ科植物組成物。
項25.
項24に記載のウコギ科植物組成物であって、少なくとも下記A)~C)の何れかの条件を満たすことを特徴とするウコギ科植物。
A)収穫物中に含まれるジンセノサイドF2含有量が0.1mg以上/生体重1g、
B)収穫物中に含まれるジンセノサイドRg2(S)含有量が0.05mg以上/生体重1g、
C)収穫物中に含まれるジンセノサイドRf含有量が0.05mg以上/生体重1g
項26.
項24又は25に記載のウコギ科植物組成物を含む加工品。
項27.
項24又は25に記載のウコギ科植物組成物の抽出物。
項28.
項27に記載のウコギ科植物組成物の抽出物を製造する方法であって、
前記ウコギ科植物を水溶液で抽出する工程を含む、前記製造方法。
項29.
前記水溶液がケイ酸塩水溶液である、項28に記載の製造方法。
項30.
ウコギ科植物を、ケイ酸塩水溶液で抽出する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウコギ科植物中の特定のジンセノサイドの含有量を著しく増大させることができる。
【0014】
本発明によれば、品質が良く、茎が太くかつ短いウコギ科植物を栽培することができる。
【0015】
また、従来の露地栽培では1年程度かかるところ、本発明によれば、約20~30日程度で新芽の高麗人蔘を栽培することができる。
【0016】
このように、従来のウコギ科薬用植物の栽培期間に比べて、短くすることができるため、生産効率が飛躍的に向上し、安価にウコギ科植物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明のウコギ科植物用肥料(実施例1及び2)で栽培された高麗人蔘(25日目)、及び比較例1の従来の栽培方法によって得られた高麗人蔘の比較写真である。
【
図2】
図2は、比較例1の肥料で各栽培期間(50日後、70日後、90日後、及び115日後)で栽培された後の高麗人蔘の写真である。
【
図3】
図3は、本発明のウコギ科植物用肥料(実施例1及び2)で25日間栽培された後の高麗人蔘の写真である。
【
図4】
図4は、本発明の肥料を用いた栽培システム(隔離ベッド土耕栽培)の模式図である。
【
図5】
図5は、比較例1の肥料を用いた栽培システム(噴霧手段を採用した栽培)の模式図である。
【
図6】
図6は、本発明の肥料を用いた栽培システム(LED光照射手段及び超音波噴霧手段を採用した栽培)の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のウコギ科植物用肥料について詳細に説明する。
【0019】
ウコギ科植物用肥料
本発明のウコギ科植物用肥料は、ケイ酸塩を含有する。該ケイ酸塩としては、特に限定はなく、例えば、ケイ酸アルカリ金属塩又はその水和物;ケイ酸アルカリ土類金属塩又はその水和物等が挙げられる。中でも、ケイ酸塩としては、水溶性のケイ酸塩(水溶性ケイ素という場合もある。)が好ましく、ケイ酸アルカリ金属塩又はその水和物がより好ましく、ケイ酸アルカリ金属塩の水和物がさらに好ましい。
【0020】
ケイ酸アルカリ金属塩としては、特に限定はなく、例えば、Na2SiO3、Na4SiO4、Na2Si2O5、Na2Si4O9等のケイ酸ナトリウム;K2SiO3、K4SiO4、K2Si2O5, K2Si4O9等のケイ酸カリウム等の式:m(M2O)・n(SiO2)(式中のm及びnは正の整数を表し、Mはアルカリ金属原子を示す。)が挙げられる。
【0021】
ケイ酸アルカリ金属塩の水和物としては、その水和物の数に限定はなく、上記ケイ酸アルカリ金属塩の1水和物、2水和物、3水和物、4水和物、5水和物、6水和物、7水和物、8水和物、9水和物、10水和物、11水和物等が挙げられる。中でも、ケイ酸ナトリウム10水和物(Na2SiO3・10H2O)が好ましい。
【0022】
Na2SiO3・10H2Oは、市販品を、又は例えば、水晶(石英)を高温(約1,650℃以上)で8時間以上かけて燃焼溶解させ、不要な成分を分解処理した結晶(KR10-0361045又はKR10-415594に記載の方法)を用いることができる。
【0023】
ケイ酸アルカリ土類金属塩としては、特に限定はなく、例えば、式:2CaO・xSiO2(式中、1<x<2である。)等のケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
【0024】
ケイ酸アルカリ土類金属塩の水和物としては、その水和物の数に限定はなく、上記ケイ酸アルカリ金属塩の1水和物、2水和物、3水和物、4水和物、5水和物、6水和物、7水和物、8水和物、9水和物、10水和物、11水和物等が挙げられる。
【0025】
ケイ酸塩は、一種単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0026】
ケイ酸塩は、固体(結晶、顆粒、粉末等)の形態で用いることができ、又は、該固体を、例えば、水、エタノール等の溶媒で溶解した水溶液を用いることができる。
【0027】
該水溶液の濃度としては、特に限定はなく、例えば、0.001~20000ppmの範囲が挙げられる。具体的に、本発明の肥料の使用形態としては、固体のケイ酸塩を水で溶解し、濃縮溶液タイプ(例えば、5000ppm~20000ppm)を製造し、該濃縮溶液を実際に肥料として使用する場合に、水等で適宜希釈して用いることができる。
【0028】
本発明の肥料は、上記ケイ酸塩(又はその水和物)のみからなるものでもよいが、上記ケイ酸塩以外の公知の肥料を含有することができる。
【0029】
公知の肥料としては、上記ケイ酸塩以外の肥料成分であれば特に限定はなく、無機肥料(化学肥料)、有機肥料等の肥料が挙げられる。
【0030】
無機肥料としては、例えば、窒素質肥料(石灰窒素;尿素;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機酸アンモニウム塩;硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩);リン酸質肥料(過リン酸石灰、重過リン酸石灰、熔成リン肥、焼成リン肥等のリン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩);カリ質肥料(炭酸カリ、塩化カリ、硫酸カリ、ケイ酸カリウム等);複合リン酸カリ肥料(例えば、リン酸一カリウム、リン酸ニカリウム等);珪酸質肥料(例えば、珪酸カルシウム等);マグネシウム質肥料(例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等);亜鉛質肥料(例えば、硫酸亜鉛、亜鉛等);カルシウム質肥料(例えば、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム等);マンガン質肥料(例えば、硫酸マンガン、硫酸苦土マンガン等);ホウ素質肥料(例えば、ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等);含鉄肥料(例えば、キレート鉄(エチレンジアミン四酢酸鉄錯体:EDTA-Fe)、鉄鋼スラグ等);銅肥料(例えば、硫酸銅等);モリブデン肥料(例えば、モリブデン酸ナトリウム等)などの肥料取締法に定められる普通肥料(複合肥料を含む)が挙げられる。
【0031】
有機肥料としては、例えば、タンパク質又はその分解物、アミノ酸、アンモニア等の有機態窒素を含むものであればよい。該有機肥料の具体例としては、堆肥、緑肥、ぼかし肥、落葉等の有機質肥料;魚粉、油粕、オカラ、生ゴミ、米糠等の食品残渣又はこれらから得られる抽出物若しくは濃縮物;家畜糞尿、イナワラ等の有機性廃棄物、並びにこれら有機物を含む廃水などが挙げられる。
【0032】
公知の肥料は、一種単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0033】
本発明の肥料中に公知の肥料を添加する場合、その添加量としては、特に限定はなく、例えば、ケイ酸塩100質量部に対して、通常0.001~10000質量部、好ましくは0.01~1000質量部、より好ましくは0.1~500質量部程度である。
【0034】
また、本発明の肥料には、本発明の効果を損なわない程度に、さらに、生理活性物質(例えば、生育促進剤、生育抑制剤等の生育調整剤等)、微生物資材抽出液、農薬(例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤、殺線虫剤等)、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、両性界面活性剤等)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1、ビタミンB6、ニコチン酸アミド、コリン塩類等)、腐敗防止剤(例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、プロピオン酸等)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸又はその塩;クエン酸又はその塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等))、pH調整剤、沈殿防止剤、展着剤、着色剤等のその他の成分を加えることができる。
【0035】
その他の成分を使用する場合、その使用量は、ケイ酸塩100質量部に対して、通常0.001~10000質量部、好ましくは0.01~1000質量部、より好ましくは0.1~500質量部程度である。
【0036】
その他の成分は、一種単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0037】
本発明の肥料中における珪酸イオンの含有量としては、特に限定はなく、例えば、SiO2換算で20質量%以下であり、好ましくは10質量%であり、より好ましくは5質量%である。また、上記珪酸イオンの含有量の下限としては、0.001質量%が好ましく、0.01質量%がより好ましく、0.1質量%がさらに好ましい。
【0038】
栽培システム
本発明の肥料は、ウコギ科植物の栽培システム(以下、「本発明の栽培システム」ということもある)に適用することができる。
【0039】
本発明の栽培システムは、上記ケイ酸塩を含有するウコギ科植物用肥料を用いる手段を備えている。さらに、超音波噴霧手段及び/又は光照射手段を備えることができる。そのほか、本発明の栽培システムには、植物工場で用いられる公知の栽培手段を採用することもできる。
【0040】
超音波噴霧手段
超音波噴霧手段としては、特に限定はなく、公知の又は市販の超音波噴霧装置を用いることができる。液体肥料の噴霧時間当たりの噴霧量、噴霧時間、噴霧間隔等の条件としては、特に限定はない。
【0041】
光照射手段
光照射手段としては、特に限定はなく、例えば、(1)紫色照明光を当てる手段、及び/又は(2)赤色照射光を当てる手段が挙げられる。
【0042】
中でも、(1)紫色光を照射する手段、及び(2)赤色光を照射する手段を備え、並びに該(2)赤色光の強度が、(1)紫色光の強度1に対して、3~30の範囲であることが好ましい。
【0043】
紫色光としては、380~450nmの波長域にピークを有し、中でも、好ましくは400~445nmであり、より好ましくは420~440nmである。
【0044】
赤色光としては、620~750nmの波長域にピークを有し、中でも、好ましくは700~740nmであり、より好ましくは710~730nmである。
【0045】
光照射手段としては、特に限定はなく、例えば、(1)紫色照明光を当てる手段、及び)赤色照射光を当てる手段が挙げられる。
【0046】
(2)赤色照射光の強度は、(1)紫色照明光の強度1に対して、好ましくは3.2~10、より好ましくは1:3.5~8、特に好ましくは3.8~4.2の範囲であることが好ましい。
【0047】
紫色照明光及び赤色照射光は、同時に又は別個に(交互に)照射する手段が挙げられ、同時に照射する手段が好ましい。紫色光及び赤色光の波長は上記波長域の範囲内でそれぞれ変化させることができる。
【0048】
光量(強度)
紫色光照明光及び赤色光照明光の光量(強度)は、特に限定はなく、例えば、光合成光量子束密度(Photosynthetic Photon Flux Density:PPFD)でそれぞれ1~1000μmol/m2s、好ましくは10~500μmol/m2s、特に好ましくは20~250μmol/m2s程度である。なお、該PPFDとしては、光源から約30cmの距離の光量を、一般的な光量子計を用いて測定することができる。
【0049】
また、上記紫色光照明光及び赤色光照明光の光量(強度)比は、例えば「紫色:赤色」で1:3~30であり、好ましくは1:3.2~10、より好ましくは1:3.5~8、特に好ましくは3.8~4.2の範囲である。紫色光照明光及び赤色光照明光の光量は上記範囲内で変化させることができる。
【0050】
照射時間
LED光照射の時間は、最長で栽培全期間である。また、最短の時間は、本発明の効果が奏される限りにおいて任意に設定できる。
【0051】
光照射部には、紫色光又は赤色光を放射する光源が含まれる。紫色光及び赤色光の光源には、従来公知の光源を単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0052】
光源には、波長選択が容易で、有効波長域の光エネルギーの占める割合が大きい光を放射する発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等の光半導体素子を用いることが好ましい。また光源として、エレクトロルミネッセンス(EL)を用いる場合、ELは有機であっても無機であってもよい。
【0053】
光半導体素子は、小型で寿命が長く、材料によって特定の波長で発光して不要な熱放射がないためエネルギー効率が良く、植物に近接照射しても葉焼け等の障害が起こらない。このため、光半導体素子を光源に用いることで、他の光源に比べて、より低電力コストで、より省スペースで栽培を行うことが可能となる。
【0054】
栽培方法
本発明の肥料は、ウコギ科植物を栽培する方法(以下、「本発明の栽培方法」ということもある。)に用いることができる。本発明の栽培方法は、さらに、超音波噴霧工程、及び/又は光照射工程を有することができる。
【0055】
本発明の肥料の形態(形状)としては、特に限定はなく、例えば、粉末状、粒状、糊状、スラリー状、懸濁状、溶液状等の一般に知られている肥料のいかなる形態が使用可能である。中でも、本発明の肥料は、農業上許容可能な溶媒又は担体で所望の濃度に希釈して、液体肥料とすることが好ましい。
【0056】
農業上許容可能な溶媒とは、水(滅菌水、脱イオン水、超純水を含む)、又はそれ以外の農業上許容し得る水溶液が挙げられる。該水溶液としては、例えば、リン酸塩緩衝液等の緩衝剤、液体培地が挙げられる。
【0057】
農業上許容可能な担体とは、上記その他の成分等が挙げられる。本発明の肥料が水溶液である場合、その水溶液中におけるケイ酸塩の濃度としては、特に限定はなく、通常、0.001~200000ppmであり、好ましくは0.01~150000ppmであり、より好ましくは0.1~100000ppmである。
【0058】
本発明の肥料の施用方法としては、特に限定はなく、一般的な肥料の施用方法と同様の方法を用いることができる。例えば、本発明の肥料が、液体肥料である場合、該液体肥料を土壌に散布又は潅注する方法;該液体肥料を作物の葉面等に散布する方法;液体肥料を点滴灌水する方法;該液体肥料を水耕栽培する方法;該液体肥料を噴霧耕栽培する方法等が挙げられる。
【0059】
本発明の植物栽培方法によれば、ウコギ科植物の栽培における栽培コストを抑えることができる。特に、水耕栽培のような人工培地栽培法又は噴霧耕栽培において、電力コスト及び肥料コストを抑えることで、安価な栽培植物を提供することができる。
【0060】
本発明の栽培方法は、本発明の上記肥料を、ウコギ科植物に施用する工程を備えている。施用方法については、土、ウコギ科植物の種類等によって適宜選択することができる。例えば、本発明の肥料を、栽培土壌、好ましくは対象作物の主な根群域の相当する部分に混和、散布、潅注等により施用できる。本発明の栽培方法としては、特に限定はなく、例えば、上記肥料を、隔離ベッド土耕栽培、水耕栽培、露地栽培等に適用できる。
【0061】
本明細書において「隔離ベッド土耕栽培」とは、隔離された栽培容器(ベッド)に培養土(床土、まさ土、バーク、ココナッツ培養土、ピートモス、パーライト等)を加え、養液を点滴又は潅水し、作物を栽培する方法である。
【0062】
本明細書において「水耕栽培」とは、栽培植物の根の全部又は一部が水耕液に浸漬した状態で行う栽培方法であり、例えば、底面潅水方式、バブリング方式、噴霧(ミスト)方式等が挙げられる。底面潅水方式は、再培養器の底面に水又は養液を満たすことにより、植物へ水又は養液を供給して栽培する方法である。バブリング方式は、植物の地下部へ空気バブル含有の水又は養液を供給して栽培する方法である。噴霧方式は、植物の地下部へ水又は養液を噴霧して栽培する方法である。
【0063】
本明細書において「噴霧耕栽培」とは、例えば、ミスト状にして噴霧する方法が挙げられる。かかる噴霧方式としては、高圧気体を使用した霧吹きタイプ、超音波噴霧(超音波ミスト)等が挙げられる。該超音波噴霧としては、植物栽培において行われている公知の超音波噴霧であれば特に限定はない。
【0064】
噴霧耕栽培としては、ウコギ科植物中の特定の成分を増大される点、又はウコギ科植物の成長を促進させる点で、超音波噴霧方式が好ましい。
【0065】
本発明の栽培方法としては、さらに、LED光照射工程を有することができる。本発明の栽培方法は、植物工場、特に完全制御型の植物工場に適用できる。ここで「完全制御型の植物工場」とは、ビル屋内のような閉鎖空間内において、光、湿度、温度等の気象条件、培地の供給又は交換等が完全にシステム化され、また、コンピューター制御された人工環境下で植物の栽培を行う工場を意味している。植物工場では、一般に、管理面、衛生面、労力面等の観点から、水耕栽培形態が採用されている。
【0066】
通常の水耕栽培では、水耕液のみで栽培されるが、本明細書における水耕栽培では、水耕液に植物の足場としての支持体を充填することができる。支持体には、例えば、ウレタン、ロックウール、砂、礫、バーミキュライト、パーライト等の無機材;おが屑、籾殻、やし殻、バークチップ、床土、まさ土、バーク、ココナッツ培養土、ピートモス、寒天等の天然有機材;又はそれらの組み合わせを使用することもできる。
【0067】
植物工場における明暗時間(光照射時間及び暗時間)、気温、湿度等を含む気象条件、及び生育期間等の栽培条件は、栽培植物に関して当該分野で公知の条件を適用することができる。中でも、本発明の栽培方法は、上記超音波噴霧工程、及びLED光照射工程を有することが好ましい。
【0068】
ウコギ科植物(又はウコギ科植物組成物)
本発明の肥料、栽培システム又は栽培方法によって得られたウコギ科植物(以下、「本発明によって得られたウコギ科植物」ということもある。)は、ジンセノサイドを含有している。中でも、ジンセノサイドとしては、ジンセノサイドF1、ジンセノサイドF2、ジンセノサイドF5、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2(S)、ジンセノサイドRh1(S)、及びジンセノサイドRh1(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有している。
【0069】
本発明によって得られたウコギ科植物は、少なくとも下記A)~C)
A)収穫物中に含まれるジンセノサイドF2含有量が0.1mg以上/生体重1g、
B)収穫物中に含まれるジンセノサイドRg2(S)含有量が0.05mg以上/生体重1g、
C)収穫物中に含まれるジンセノサイドRf含有量が0.05mg以上/生体重1gを含有している。
【0070】
本発明の肥料、栽培システム又は栽培方法によって、ウコギ科植物中のジンセノサイドの含有量を増大させることができる。
【0071】
ジンセノサイドとは、例えば、高麗人蔘に含まれる特有のサポニン群であり、その種類は、20種類以上存在しており、抗酸化作用、血行促進作用等の各種生理活性を有することが知られている。
【0072】
ジンセノサイドとしては、例えば、プロトパナキサジオール型ジンセノサイド[例えば、Rb1、Rb2、Rc、Rd、(20R)Rg3、(20S)Rg3、Rh2]、プロトパナキサトリオール型ジンセノサイド[例えば、Re、Rf、Rg1、Rg2、Rh1]、及びオレアノール酸型ジンセノサイド[例えば、RO]に分類できる。中でも、本発明の肥料、栽培システム及び栽培方法では、ウコギ科植物中のジンセノサイドF1、ジンセノサイドF2、ジンセノサイドF5、ジンセノサイドRb1、ジンセノサイドRb2、ジンセノサイドRc、ジンセノサイドRd、ジンセノサイドRe、ジンセノサイドRf、ジンセノサイドRg1、ジンセノサイドRg2(S)、ジンセノサイドRh1(S)、及びジンセノサイドRh1(R)からなる群より選ばれる少なくとも1種のジンセノサイドの含有量を増大することができる。本発明のケイ酸塩を含む肥料を添加して栽培した新芽(若芽)人蔘には、ケイ酸塩を添加しないで栽培した新芽には含まれない栄養成分(ジンセノサイドRf、Rg2s、F2等)が含まれる。例えば、ジンセノサイドF2は、アトピー性皮膚炎を予防又は治療できる効果等の生理活性が近年注目されている成分である(特許文献1)。
【0073】
本発明の肥料、栽培システム又は栽培方法により、ウコギ科植物の茎の長さを抑制すること、又はウコギ科植物の茎の太さを増大することができる。ウコギ科植物には、根等の地下部、葉、茎、花等の地上部があるが、本発明の肥料を用いる栽培方法によれば、通常の栽培方法と比べて、ウコギ科植物の茎が太く、かつ、短いまま栽培することができる。このような特徴により、上記ジンセノサイドの含有量が増大していることと推察される。
【0074】
ウコギ科植物としては、特に限定はなく、例えば、タラノキ、ウド等のタラノキ属、ウコギ、コシアブラ等のウコギ属、タカノツメ等のタカノツメ属、ヤツデ等のヤツデ属、アメリカニンジン、オタネニンジン、サンシチニンジン、トチバニンジン等のトチバニンジン属等が挙げられる。中でも、ウコギ科植物としては、ウコギ科薬用植物であるトチバニンジン属が好ましく、高麗人蔘(朝鮮人蔘、オタネ人蔘)がより好ましい。なお、野菜のニンジンは、セリ科であり、ウコギ科植物とは全く別の種である。
【0075】
高麗人蔘の種類としては、特に限定はなく、例えば、花旗参(米国参)、田七参(中国参)、竹節人蔘(日本参)等が挙げられる。また、これら高麗人蔘は、通常の乾燥工程により、白参、紅参、黒参等の加工物を製造することができる。
【0076】
加工品
本発明の肥料、栽培システム又は栽培方法によって得られたウコギ科植物は、抽出物、粉末状、顆粒状、粒状、錠剤状、カプセル状、ゲル状、液状等の種々の加工品に加工することができる。これら加工品への加工方法としては、公知の加工技術を用いることができる。このように得られた加工品を、そのままで、又は、さらにその他の成分を含有することで、例えば、生体調節機能性を増強した食品又は医薬品等を製造することができる。
【0077】
抽出物
抽出物とは、ウコギ科植物を、水、エタノール等の溶媒で抽出したものを意味する。中でも、抽出物としては、上記ケイ酸塩又はその水和物を含む溶媒(溶液)で抽出したものが好ましい。
【0078】
抽出に用いられるウコギ科植物の部位としては、例えば、葉、茎、根等を用いることができる。本発明のウコギ科植物のケイ酸塩抽出物は、ウコギ科植物の上記部位の全て(葉、茎、及び根)又は一部を用いて抽出することができる。中でも、製造が簡便である点、又は多くの種類の有効成分を含む点で、ウコギ科植物の上記部位全体をまるごと抽出することが好ましい。
【0079】
抽出方法としては、特に限定はなく、例えば、ウコギ科植物又はその各部位をそのまま、あるいは切断又は粉砕したもの、乾燥したもの、乾燥後粉砕したもの、圧搾抽出した搾汁等を、ケイ酸塩を溶解した溶媒中に浸漬、攪拌、加熱等を組み合わせた抽出方法;超臨界流体抽出法等が挙げられる。
【0080】
ケイ酸塩又はその水和物を含む溶媒(溶液)としては、一般に抽出物を得る際に用いる溶媒であれば特に限定はなく、例えば、水;エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等の低級アルコール系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒等の有機溶媒が挙げられる。溶媒は、これらを単独で、又は、2種以上を組み合わせて用いることができる。組み合わせる場合、複数の溶媒の混合物を用いて抽出操作を行う、又は、異なる溶媒で順番に多段階で抽出操作を行うことができる。上記溶媒の中では、操作性、安全性及び環境性の点から、水、エタノールを用いるのが好ましく、水が特に好ましい。本発明においては、ケイ酸塩水溶液を用いることで、ウコギ科植物の抽出物の量を増加させ、抽出速度を大幅に向上させることができる。
【0081】
抽出する際の溶媒の量としては、特に限定はなく、例えば、ウコギ科植物100質量部に対して、水1~10000質量部であり、好ましくは、5~1000質量部であり、より好ましくは10~500質量部である。
【0082】
ケイ酸塩の水溶液を用いる場合、ケイ酸塩の濃度としては、特に限定はなく、例えば、0.1ppm~200000ppmであり、好ましくは1ppm~100000ppmであり、より好ましくは10~50000ppmである。
【0083】
ケイ酸塩の量としては、特に限定はなく、例えば、ウコギ科植物100質量部に対して、1~10000質量部であり、好ましくは、50~1000質量部であり、より好ましくは100~500質量部である。
【0084】
抽出する際に、加熱、又は加圧・加熱して抽出することができる。加圧する場合、その圧力としては、特に限定はなく、例えば、1.01~5MPaの範囲で選ばれる。加熱する場合、その温度としては、室温以上であればよく、60℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。
【0085】
抽出時間としては、特に限定はなく、例えば、1~24時間、好ましくは2~18時間、より好ましくは3~12時間の範囲である。
【0086】
次いで、抽出物及び残渣を含む混合物を、必要に応じて濾過又は遠心分離等に供し、残渣である固形成分を除去して抽出物を得る。なお、除去した固形成分を再度、抽出操作に供することもでき、さらにこの操作を何回か繰り返すことができる。本発明において、上記抽出工程は、1回で行うこともできるが、2回以上に分けて抽出することもできる。2回以上の抽出を行う場合は、それぞれ異なる抽出条件を用いることもできる。
【0087】
このようにして得られた抽出物(又は抽出液)をそのまま用いてもよく、さらに必要に応じて、濃縮、凍結乾燥、スプレードライ等の方法により乾燥し、粉末化したものとして使用してもよい。
【実施例】
【0088】
以下、実施例、比較例及び試験例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
光照射手段の光源
<光源1>
光源1には、下記のLEDを用いた。
・紫色LED(中心波長:430nm):赤色LED(中心波長:720nm)
・上記赤色光の強度は、紫色光の強度1に対して、約4となる光源を用いた。
・PPFD:220μmol/m2 sec(光源からの距離30cm)
・使用電圧:24V/28.8W
・600mA定電流方式/30W級高出力LED
<光源2>
光源2には、下記のLEDを用いた。
・LED(中心波長:450nm):LED(中心波長:660nm)
・上記赤色光の強度は、紫色光の強度1に対して、約2となる光源を用いた。
・PPFD:200μmol/m2 sec(光源からの距離30cm)
・使用電圧:24V/28.8W
・600mA定電流方式/30W級高出力LED。
【0090】
栽培システム:隔離ベッド土耕栽培方式
隔離ベッド土耕栽培システムは、
図4に示すように、1.パイプ(FRP又は鉄製)、2.支柱パイプ、3.不織布、4.ポリエチレン(PE)フィルムトンネル、5.栽培ベッド、6.点滴ホース、7.苗、8.黒PEフィルム、9.ストローフォームベッド、10.園芸用床土、11.籾殻、12.黒PEフィルム、13.排水溝、及び14.コースターパイプを有している。
【0091】
栽培システム:噴霧耕栽培方式
該噴霧耕栽培システムは、
図5に示すように、15.パイプ(FRP又は鉄製)、16.不織布、17.ビニールトンネル、18.鉄材支柱、19.栽培ベッド、20.苗、21.固定用スポンジ、22.ベッド天板、23.供給管、24.排水溝、25.噴射ノズル((株) エムテックウィン社製、製品名:MH-106A (6区)、加湿方式超音波式、消費電力: 240W、最大噴霧量: 2,800 ± 200 (約 3000cc)/hr、水方法: 自動給水方式、使用水圧: 0.2~6.8 bar、使用面積約30坪、外形寸法: 516 (横) × 270 (縦) × 284 (高さ))、及び26.不織布を有している。
【0092】
栽培システム:超音波噴霧耕栽培方式
噴霧耕栽培においては、根圏酸素が不足することがあるため、それを解決する手段として超音波噴霧耕栽培が有用である。
図6に示すように、LEDを用いた光照射手段、及び超音波噴霧手段を用いた栽培システムは、27.LED、28.霧噴射ノズル、29.ビニールカバー、30.高麗人蔘、31.栽培ベッド天板、32.栽培ベッド、33.超音波スプレーポンプ、34.パイプ、及び35.固定用スポンジを有している。
【0093】
HPLC分析の条件
超高速液体クロマトグラフィー装置:LaChromUltra L-2000 Uシリーズ(日立ハイテクノロジーズ製)
該装置は、溶離液のリザーバ、HPLCポンプ(L-2160U)、自動注入システム(L-2200U)及び紫外線検出器(L-2400U)を備えている。
【0094】
カラム: LaChromUltra C18 short-length column(2mm i.d., 50mm L、2μm;日立ハイテクノロジーズ製)、LaChromUltra C18 middle-length column(2mm i.d., 100mm L、2μm;日立ハイテクノロジーズ製)
溶離液A:20%アセトニトリル水溶液、溶離液B:80%アセトニトリル水溶液
カラム温度:30℃
検出: Varian 380-LC
注入量: 5.0μL
グラジェント:A/B=100/0→0/100(10min);流量:0.2mL/min。
【0095】
[実施例1]
<肥料1>
ケイ酸塩 (Na2SiO3-10H2O)の結晶500g(KOSIBIO Co., Ltd製)を水50リットルで溶解して、本発明の液体肥料1(10,000ppm)を調製した。
【0096】
[参考例1]
肥料A
下記1~4を含む肥料溶液1 (500ml、DAEYU Co., Ltd)。
1.硝酸カルシウム 20g
2.硝石 30g
3.キレート鉄 2.5g
4.水 約470cc
【0097】
[参考例2]
肥料B
下記1~8を含む肥料溶液2(100ml、DAEYU Co., Ltd)。
1.第1リン酸マグネシウム 4.5g
2.硫酸マグネシウム 12.5g
3.ホウ素、又はホウ酸150mg
4.マンガン 100mg
5.亜鉛 10mg
6.銅 5mg
7.モリブデン酸ナトリウム 1mg
8.水 約93cc
【0098】
[参考例3]
肥料C
上記液体肥料A(500g)と液体肥料B(100g)と水(50L)とを一緒に混ぜて、よく撹拌し、下記1~10の成分を含む液状肥料C(50600g)を準備した。
1.硝酸カルシウム(Ca(NO3)2・4H2O) 4g、
2.硝酸カリウム(KNO3) 6g、
3.キレート鉄(エチレンジアミン四酢酸鉄錯体:EDTA-Fe) 0.5g、
4.第1リン酸アンモニウム(NH4・H2PO4) 0.9g、
5.硫酸マグネシウム(MgSO4・4H2O) 2.5g、
6.ホウ素(B)又はホウ酸(H3BO3) 0.03g、
7.マンガン(MnSO4・4H2O) 0.02g、
8.亜鉛(ZnSO4・4H2O) 0.005g、
9.銅(CuSO4・5H2O) 0.002g、
10.モリブデン酸ナトリウム(NaMoO4・2H2O) 0.001g。
【0099】
[実施例2]
<肥料2>
ケイ酸ナトリウム10水和物(50g)と上記液体肥料C(50600g)一緒に混ぜて、ケイ酸塩を含む液体肥料2(50650g)を調製した。
【0100】
[比較例1]
<肥料3>
上記液体肥料Cを肥料3として用いた。
【0101】
[比較試験例1]
(水耕栽培;噴霧耕栽培方式)
栽培天板ベッドに、上記高麗人蔘の1年苗を、等間隔(約4cm)に配置し、地下部に上記噴霧スプレー(超音波ではない)及び地上部にLEDランプ(光源2)を配置した(
図5)。上記光源2のLEDを用いて光を照射しながら、上記肥料3を噴霧して、栽培を行った。
【0102】
比較試験例1で栽培した高麗人蔘の成分を分析し、中でも、ジンセノサイドの各成分量の結果を表1及び表2に示す。
【0103】
[試験例1]
(土耕栽培;隔離ベッド栽培方式)
上記高麗人蔘の1年苗を、隔離ベッド(
図4)の培土に等間隔(約4cm)に植えた。本発明の上記肥料1を用いて、上記LED光照射下で、高麗人蔘の土耕栽培方式の栽培を行った。
【0104】
試験例1で栽培した高麗人蔘の成分を分析し、中でも、ジンセノサイドの各成分量の結果を表1に示す
【0105】
【0106】
<栽培結果>
比較例1の肥料は、高麗人蔘の着床から採取まで、通常60~90日程度の栽培期間を要するが、これに対して、実施例1の肥料は、25日という栽培期間で早く育成することができ、生産効率が飛躍的に向上した。
また、表1の結果から明らかなように、本発明の肥料1を用いて栽培した高麗人蔘は、従来の比較例1の肥料を用いて栽培した高麗人蔘と比べて、ジンセノサイドの含有量がそれぞれ大幅に増大した。
図1に示すように、本発明の肥料を用いた栽培して高麗人蔘の茎Aは、従来の比較例1の肥料を用いて栽培した高麗人蔘の茎Bと比べて、茎が短くかつ太いことから、本発明によって、品質が高いとされる高麗人蔘が収穫できた。
【0107】
[試験例2]
(水耕栽培;超音波噴霧耕栽培方式)
栽培天板ベッドに、上記高麗人蔘の1年苗を、等間隔(約4cm)に配置し、地下部に上記超音波噴霧スプレー及び地上部にLEDランプ(光源1)を配置した(
図6)。本発明の上記肥料2を用いて、上記LED光照射下で、高麗人蔘の超音波噴霧耕方式の栽培を行った。
【0108】
試験例2で栽培した高麗人蔘の成分を分析し、中でも、ジンセノサイドの各成分量の結果を表2に示す。
【0109】
【0110】
<栽培結果>
比較例1の肥料は、高麗人蔘の着床から採取まで、通常60~90日程度の栽培期間を要するが、これに対して、実施例2の肥料は、25日という栽培期間で早く育成することができ、生産効率が飛躍的に向上した。
また、表2の結果から明らかなように、本発明の肥料を用いて栽培した高麗人蔘は、従来の比較例1の肥料を用いて栽培した高麗人蔘と比べて、ジンセノサイドの含有量がそれぞれ大幅に増大した。
図1に示すように、本発明の肥料を用いた栽培して高麗人蔘の茎Aは、従来の比較肥料1を用いて栽培した高麗人蔘の茎Bと比べて、茎が短くかつ太いことから、本発明によって、品質が高いとされる高麗人蔘が収穫できた。
【0111】
[実施例3(ウコギ科植物ケイ素水抽出物1の製造方法)]
上記試験例1の栽培システム又は栽培方法によって得られた高麗人蔘を90℃で10時間乾燥し、その乾燥物(水分量12~14%)60g、ケイ酸ナトリウム10水和物の結晶100g、及び水3Lを圧力鍋に入れ、85℃~125℃で約6時間加熱し、焦げ茶色の高麗人蔘ケイ素水抽出物(2970g、高麗人蔘濃度2%)を得た。なお、該高麗人蔘ケイ素水抽出物には、約100~120gの固形成分が沈殿している。水で抽出する場合に比べて、ケイ酸ナトリウム10水和物水溶液を用いる場合、その抽出スピードが早くなることがわかった。なお、ケイ酸ナトリウム10水和物の結晶100gを加えない以外は、上記実施例1と同様の栽培システム又は栽培方法によって得られた高麗人蔘を水3Lのみで抽出を行ったが、抽出はうまく行かなかった。したがって、ケイ素水を用いることが重要であることが分かった。
【0112】
[実施例4(ウコギ科植物ケイ素水抽出物2の製造方法)]
試験例1及び2の栽培システム又は栽培方法によって得られた高麗人蔘を凍結乾燥し、その乾燥物60gを圧力鍋に入れ、さらに上記実施例1及び2で使用したケイ酸ナトリウム10水和物水溶液(10000ppm)3Lを加え、85℃~125℃で約6時間加熱し、焦げ茶色の抽出物を得た(2970g)。水で抽出する場合に比べて、ケイ酸ナトリウム10水和物水溶液を用いる場合、その抽出スピードが早くなることがわかった。
【0113】
[実施例5(ウコギ科植物ケイ素水抽出物3の製造方法)]
試験例1及び2の栽培システム又は栽培方法によって得られた高麗人蔘を凍結乾燥し、その乾燥物60g、ケイ酸ナトリウム10水和物の結晶100g、及び水3Lを圧力鍋に入れ、85℃~125℃で約6時間加熱し、焦げ茶色の抽出物(2970g)を得た。該抽出物には、約100~120gの固形成分が沈殿している。水で抽出する場合に比べて、ケイ酸ナトリウム10水和物水溶液を用いる場合、その抽出スピードが早くなることがわかった。
【符号の説明】
【0114】
1.パイプ(FRP又は鉄製)、2.支柱パイプ、3.不織布、4.PEフィルムトンネル、5.栽培ベッド、6.点滴ホース、7.苗、8.黒PEフィルム、9.ストローフォームベッド、10.園芸用床土、11.籾殻、12.黒PEフィルム、13.排水溝、14.コースターパイプ、15.パイプ(FRP又は鉄製)、16.不織布、17.ビニールトンネル、18.鉄材支柱、19.栽培ベッド、20.苗、21.固定用スポンジ、22.ベッド天板、23.供給管、24.排水溝、25.噴射ノズル(超音波でない)、26.不織布、27.LED、28.霧噴射ノズル、29.ビニールカバー、30.高麗人蔘、31.栽培ベッド天板、32.栽培ベッド、33.超音波スプレーポンプ、34.パイプ、35.固定用スポンジ