(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20220114BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220114BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20220114BHJP
A61Q 3/00 20060101ALI20220114BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20220114BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220114BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220114BHJP
A61Q 5/04 20060101ALI20220114BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20220114BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20220114BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20220114BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/04
A61Q3/00
A61Q3/02
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/04
A61Q5/06
A61Q5/10
A61Q5/12
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018545610
(86)(22)【出願日】2017-03-03
(86)【国際出願番号】 KR2017002358
(87)【国際公開番号】W WO2017150950
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2016-0025765
(32)【優先日】2016-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0100599
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0100603
(32)【優先日】2016-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0002301
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0027721
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0027863
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0027902
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スン-ヒョン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ソル-フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ネ-ギュ・カン
(72)【発明者】
【氏名】オ-ゲネ・ホ
(72)【発明者】
【氏名】ソ-ヨン・キム
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055323(JP,A)
【文献】国際公開第2011/089709(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/088034(WO,A1)
【文献】特開2012-087256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C08B 1/00-37/18
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体と、水相と、を含む組成物であって、
前記水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、バイオセルロースのアルコール基が0.8mmol/g以上カルボキシル基に置換されたセルロース微細繊維の分散体であり、かつ、前記水相中に三次元網状構造ネットワークを形成して均一に分散されており、
前記組成物の総重量に対する水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体の含量は、0.0001~0.05乾燥重量%であり、
前記組成物は化粧料組成物または医薬外品組成物であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体は、数平均直径が30~60nmであり、最大直径が60~100nmであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体が、肌安着性、水分吸収増進能、弾力増進能または柔らかさ改善能を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
微細粉塵遮断用組成物であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ケラチン構造体保護用組成物であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
水分吸収増進用または弾力増進用組成物であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
人体に適用して水分吸収または弾力を増進するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成
物。
【請求項8】
人体に適用して微細粉塵を遮断するための、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成
物。
【請求項9】
人体に適用してケラチン構造体を保護するための、 請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記人体が、爪、足爪及び体毛からなる群より選択されることを特徴とする請求項9に記載の
組成物。
【請求項11】
シャンプー前組成物、シャンプー、リンス、トリートメント、ワックス、ゲル、スプレー、ムース、ヘアローション、ヘアーパック、ヘアーエッセンス、ヘアクリーム、永久染毛剤、一時染毛剤、パーマ剤、不織布及びシートからなる群より選択された1以上に剤形化
されていることを特徴とする
、毛髪に適用してケラチン構造体を保護するための、請求項10に記載の
組成物。
【請求項12】
爪整え用または保護用のベース、マニキュア、トップコート、栄養剤、強化剤及びジェルからなる群より選択された1以上に剤形化
されていることを特徴とする
、爪または足爪に適用してケラチン構造体を保護するための、請求項10に記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース水分散体、その製造方法、及びそれを含む組成物に関する。
【0002】
本出願は、2016年3月3日出願の韓国特許出願第10-2016-0025765号、2017年1月6日出願の韓国特許出願第10-2017-0002301号、2017年3月3日出願の韓国特許出願第10-2017-0027863号、2016年8月8日出願の韓国特許出願第10-2016-0100599号、2017年3月3日出願の韓国特許出願第10-2017-0027902号、2016年8月8日出願の韓国特許出願第10-2016-0100603号及び2017年3月3日出願の韓国特許出願第10-2017-0027721号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
肌は外部環境から有害な物質を遮断し、水分の損失を防止する機能を果たす。肌に適用する天然高分子、合成高分子及び有機高分子などを含む高分子は、外部から肌を保護し、有効成分を肌に伝達し、水分損失を防止するためのバリアーの役割を果たす。これら高分子のうちセルロース、キトサン及び多糖類などの天然高分子は生体適合性、生分解性に優れ、肌に保湿、弾力、肌保護などの役割を果たす。
【0004】
現在人体に用いられるセルロースとしては、天然セルロース、セルロース誘導体、バイオセルロースなどがある。そのうち天然セルロースは、数十マイクロメートル大きさの粉末状であって水に溶けず、主にスクラブ剤、ピーリングジェルなどに使用される。セルロース誘導体は、セルロースのヒドロキシアルコール基を置換して得られるが、セルロース自体が水に溶けないため、水に溶解できるように置換したヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが含まれる。このような水溶性セルロースは高分子形態であり、主に増粘剤として使用される。バイオセルロースは、バクテリアセルロースから合成されたセルロース微細繊維であり、植物由来セルロースに比べて厚さが薄く、高い結晶化度、高い物理的強度を有するが、ゲル状又はシート状に合成されるため、主にマスクパックシートに用いられ、化粧品剤形に適用し難いという短所がある。
【0005】
セルロース系原料を人体に適用しようとして多様な試みがあった。その一環として韓国特許公開第10-2012-0123371号公報(特許文献1)及び日本特許公開第2010-037199号公報(特許文献2)には、最大繊維径が1000nm以下であり、数平均繊維径が2~150nmであるセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を備え、またセルロース分子中のグルコース単位(glucose unit)のC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基及びカルボキシル基に変性されているセルロースが開示され、該当セルロースを化粧料用、増粘剤/ゲル化剤用、スプレー用組成物として使用できると記載されている。しかし、特許文献1及び特許文献2に開示されたセルロースは、増粘剤/ゲル化剤用として使用されて組成物内で保形性能、分散安定性、耐塩性を向上できるものの、セルロースに基づいた長所を肌で発現するには適しない。特許文献1には、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリンター、コットンリントなどの綿系パルプ、藁パルプ、バガスパルプなどの非木材系セルロースを使用することが望ましいと開示され(段落[0082])、実施例ではパルプを使用している。また、特許文献2では実施例で針葉樹パルプを使用している。化粧料組成物としてセルロースを使用するためには長さをマイクロメートル以上に維持しなければならず、水に分散した後も繊維同士のネットワークを維持しなければならない。しかし、このような非木材系セルロース又は木材系セルロースの微細化のためには、トップダウン(top-down)方式の前処理過程が必須であり、この過程でセルロースの長さが無作為に切断されるため、最終的なセルロース繊維が化粧料に含まれた場合、肌への浸透の恐れがある。また、ネットワークを形成し難いため、増粘剤又は剤形安定化剤としての使用は可能であるが、化粧料組成物としての使用には限界がある。
【0006】
一方、微細粉塵は、粒子の大きさによって直径が10μm以下である微細粉塵(PM10)と、直径が2.5μm以下である超微細粉塵(PM2.5)とに分類される。微細粉塵は、燃焼作用によって発生する硝酸塩、アンモニウム、硫酸塩などのイオン成分、及び炭素化合物、金属化合物などからなる。空気中の微細粉塵に繰り返して長期間晒されれば、心臓まひ、喘息、気管支炎、肺炎、肺癌など深刻な疾病にかかる恐れがある。また、微細粉塵に肌が露出すれば、肌乾燥症、アトピー、皮膚炎などの深刻な問題をもたらす。特に、微細粉塵が表皮障壁の機能を損傷させ、アトピー皮膚炎を悪化させるだけでなく、しわと色素斑が増加する肌老化と直接的な関連があることが明らかになっている。
【0007】
したがって、微細粉塵から肌を保護するため、多様な試みがなされている。微細粉塵を除去するために最も多く用いられる方法はクレンジングによる除去であるが、微細粉塵はクレンジングによってある程度は除去できるものの、細かいほど吸着力が強いため、毛穴に深く入り込んだ微細粉塵を一般的なクレンジングで完璧に除去することは不可能であると言える。
【0008】
したがって、微細粉塵が直接肌に吸着する前に微細粉塵を遮断して、肌に吸着しないようにする化粧料組成物が求められている。
【0009】
一方、体毛(毛髪を含む)・手足の爪・肌などはケラチン(keratin)という構造タンパク質からなっているため、これら組織をケラチン構造体とも称する。従来はこれら組織のケラチンを保護するため、シリコーンなどの原料を用いて表面を覆うか、または、揮発性有機溶剤などを用いてマニキュアのように表面をコーティングする方法が広く使用されてきた。しかし、このような方法はケラチン構造体の最外側表面に鱗のように形成されているキューティクル層の特性を考慮しなかった処方であって、キューティクル層は非常に弱いため、ケラチンを保護しようとして使用した原料がケラチンの表面から分離されるとき却ってキューティクル層を損傷させる場合が多かった。したがって、ケラチン構造の表面から、ケラチンを保護しながらもキューティクル層を損傷させないケラチン構造体ケア組成物が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0123371号公報
【文献】特開2010-037199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、肌浸透の恐れのないセルロース微細繊維の長さ及び直径を有しながら、水分散型組成物に剤形化してもネックワーク構造を維持でき、水分吸収能及び弾力増進能に優れたセルロース微細繊維分散体を提供することである。
【0012】
また、本発明が解決しようとする課題は、肌浸透の恐れのないセルロース微細繊維の長さ及び直径を有しながら、水分散型組成物に剤形化してもネックワーク構造を維持でき、微細粉塵だけでなく超微細粉塵まで遮断する効果を有するセルロース微細繊維分散体を提供することである。
【0013】
また、本発明が解決しようとする課題は、ケラチン構造体に適用して、ケラチンを保護しながらもキューティクル層に損傷を与えないケラチン構造体保護用バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物及びその製造方法を提供することである。
【0014】
また、本発明が解決しようとする課題は、上述したセルロース微細繊維分散体の水分吸収及び弾力増進用途、微細粉塵遮断用途、またはケラチン構造体保護用途を提供することである。
【0015】
また、本発明が解決しようとする課題は、上述したセルロース微細繊維分散体を人体に適用して水分を吸収し且つ弾力を増進する方法、微細粉塵を遮断する方法、またはケラチン構造体を保護する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決するため、本発明は、バイオセルロースのアルコール基がカルボキシル基に置換され、望ましくは前記分散体内の個別微細繊維の最大直径が60~100nm、数平均直径が30~60nmであり、原料として使用されたバイオセルロースの長さが維持され、水相でネットワークを形成しながら分散することを特徴とする水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体、その製造方法、その組成物、分散体及び組成物の用途、そして分散体及び組成物を人体に適用する方法を提供する。
【0017】
本発明者等は、セルロース原料としてバイオセルロースを選択して、前記バイオセルロースを酸化させてバイオセルロースのアルコール基をカルボキシル基に置換し、バイオセルロースの直径及び長さを制限してバイオセルロース微細繊維ネックワーク分散体を収得し、収得したバイオセルロース微細繊維ネックワーク分散体が、酸化前のバイオセルロースと類似の長さとネットワーク構造を維持して水相に分散し、人体に有利な特徴である、例えば、肌安着性、高い水分保有能、弾力増加、肌摩擦力の減少及び増粘力を有することを見つけた。そこで、バイオセルロース微細繊維ネックワーク分散体の人体に対する適用用途、例えば化粧料又は医薬外品としての有用性に基づいて本発明の完成に至った。
【0018】
また、本発明者等は、セルロース原料としてバイオセルロースを選択して、前記バイオセルロースを酸化させてバイオセルロースのアルコール基をカルボキシル基に置換し、バイオセルロースの直径及び長さを制限してバイオセルロース微細繊維ネックワーク分散体を収得し、収得したバイオセルロース微細繊維ネックワーク分散体が、酸化前のバイオセルロースと類似の長さと緻密なネットワーク構造を維持して水相に分散し、肌に浸透しないものの微細粉塵及び超微細粉塵の浸透は防止でき、水相に分散して多様な剤形の組成物に剤形化できることを確認して本発明の完成に至った。
【0019】
本発明者等は、セルロース原料としてバイオセルロースを選択して、前記バイオセルロースを酸化させてバイオセルロースのアルコール基をカルボキシル基に置換し、バイオセルロースの直径及び長さを制限したとき、水相で酸化前のバイオセルロースと類似の長さと緻密なネットワーク構造を維持し、肌に浸透しないもののケラチン構造は保護でき、また除去過程でキューティクル層を損傷させず、水相に分散して多様な剤形の組成物に剤形化できることを確認して本発明の完成に至った。
【発明の効果】
【0020】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、バイオセルロース原料の長さを維持し、組成物に剤形化した後にも繊維ネットワークを維持して、肌に形成された微細繊維が優れた肌安着性、水分吸収及び弾力を増進させる効果があり、柔らかさを改善する効果があるため、医薬外品及び化粧料として非常に有用に活用することができる。
【0021】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】aは比較例1のセルロース微細繊維の写真であり、bは実施例1の化学処理後の水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体の写真である。
【
図2】a、bは0.05、0.015%濃度の比較例2の木質系セルロース分散体の写真であり、c、dは0.05、0.015%濃度の実施例1の水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体の写真である。
【
図3】実施例1を塗布する前と後の豚皮膚のSEM写真である。
【
図4】aは実施例及び比較例によるセルロースを塗布した豚皮膚において、時間の経過による水接触角の変化を示したグラフであり、bは初期接触角の顕微鏡写真である。
【
図5】実施例1を肌に塗布した後、測定した摩擦力データを示したグラフである。
【
図6】エッセンス剤形(比較例5、実施例2及び3)の粘度データを示したグラフである。
【
図7】比較例5及び実施例2を塗布した豚皮膚において、時間の経過による水接触角の変化を示したグラフである。
【
図8】(a)は比較例6を塗布した豚皮膚のSEM写真であり、(b)は0.01乾燥重量%の実施例1を塗布した豚皮膚のSEM写真であり、(c)及び(d)は0.05乾燥重量%の実施例1を塗布した豚皮膚のSEM写真である。
【
図9】(a)は0.05乾燥重量%の実施例1を豚皮膚に塗布した後、その上に微細粉塵を塗布したSEM写真あり、(b)は比較例6を豚皮膚に塗布した後、その上に微細粉塵を塗布したSEM写真である。
【
図10】aは比較例6を豚皮膚に塗布した後、その上に代替微細粉塵を塗布したSEM写真(上)及び蛍光顕微鏡写真(下)であり、bは0.05乾燥重量%の比較例7を豚皮膚に塗布した後、その上に代替微細粉塵を塗布したSEM写真(上)及び蛍光顕微鏡写真(下)であり、cは0.05乾燥重量%の実施例1を豚皮膚に塗布した後、その上に代替微細粉塵を塗布したSEM写真(上)及び蛍光顕微鏡写真(下)である。
【
図11】実施例6によって製造したバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク含有O/W乳化剤形のエッセンスをヒトの毛髪表面に処理した後、乾燥して走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
【
図12】実施例6によって製造したバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク含有O/W乳化剤形のエッセンスをヒトの爪表面に処理した後、乾燥して走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体、及び前記水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体を含む組成物は、以下のような特徴を有する。
【0024】
水相でネットワークを形成する。前記「ネットワーク」とは、セルロース微細繊維間の三次元網状構造を意味する。前記「水相」とは、溶媒に水を含む相(phase)を意味し、溶媒に水が含まれていれば、水の外に他の溶媒が含まれることを制限しない。例えば、水溶液も含まれる。
【0025】
優れた肌安着性を有する。前記「肌安着性」とは、水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体が微細繊維の構造的、物理化学的特徴及び/または水分散性を維持しながら肌の表面上で適用されることを意味する。
【0026】
高い水分保有能を有する。前記「水分保有能」とは、水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体の周辺の水分を引き寄せる力又は能力、及び/または、周辺の水分を保持する力又は能力を意味する。水分保有能と水分吸収能又は保湿能とは相互比例する。したがって、高い水分吸収能又は保湿能を有する。
【0027】
弾力増進効果を有する。前記「弾力」とは、加えられる外力に対する抵抗力を意味し、「復元力」と同じ意味であって、表面構造の緻密性が反映される。水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体の膜形成能、及び水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体が適用された対象において、外力に対する抵抗力が増加、向上または改善されることを意味する。
【0028】
増粘力を有する。前記「増粘力」とは、粘度上昇能力を意味する。水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体が、微細繊維の構造的、物理化学的特徴を維持しながら、粘度を上昇させる能力を有することを意味する。
【0029】
摩擦力を減少させる。前記「摩擦力」とは、接触面に触れる対象の動きを妨害する力であり、肌摩擦力は肌粗さの影響を受ける。水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体が適用された接触面に触れた対象の動きを妨害する程度が減少することであり、柔らかさの増加、改善または向上、若しくは、粗さの減少を意味する。
【0030】
微細粉塵を遮断する。前記「微細粉塵」とは、直径10μm以下の粒子状物質を意味し、直径2.5μm以下の超微細粉塵を含む。「微細粉塵を遮断する」とは、肌に直接微細粉塵が付着または吸着すること、若しくは、肌内に微細粉塵が浸透することを防止または抑制することを意味し、それにより微細粉塵が容易に除去されることを意味する。
【0031】
ケラチン構造体を保護する効果がある。前記「ケラチン構造体」とは、ケラチン(keratin)という構造タンパク質からなる人体の器官または組織であり、例えば爪、足爪、体毛などが含まれる。「ケラチン構造体を保護する」とは、ケラチン構造体がケラチン構造体外部の任意の原因によって物理的、化学的に損傷または脱落することを保護すること、損傷したケラチン構造体が再生、回復、治療される間に外部の物理的、化学的な否定的影響から保護すること、及びケラチン構造体から本発明の分散体またはそれを含む組成物が除去される過程で、ケラチン構造体を含む人体組織、特にキューティクル層に損傷を与えずに保護することなどを意味する。水分散バイオセルロース微細繊維は、特にケラチン構造体の表面でネットワークを形成して表面ケラチン層の脱落を防止する役割をし、ケラチンの表面に安定的に結合するため、除去されるときにもケラチンの表面に損傷を与えずに脱落する。
【0032】
上述した水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体の特徴は、水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体を含む組成物で維持されるか又は向上する。
【0033】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、セルロース原料としてバイオセルロースを使用する。
【0034】
本発明で使用される「バイオセルロース」とは、バクテリア培養を通じて直接セルロース微細繊維を合成するバクテリアセルロースを意味する。各種の木材由来のクラフト(craft)紙または亜硫酸パルプ、これらを高圧ホモジナイザー(homogenizer)またはミル(mill)などで粉砕した粉末セルロース、若しくは、これらを酸加水分解などの化学処理によって精製した微結晶セルロース粉末、外に、ケナフ(kenaf)、麻、稲、バカス、竹などの植物由来のセルロースとは区分される。使用可能なバクテリアには、例えばアセトバクター属(Acetobacter)、リゾビウム属(Rhizibium)及びアグロバクテリウム(Agrobacterium)が含まれ、バクテリア培養のための栄養源が含まれた培地内で培養すれば、培養液の界面にバクテリアセルロースが形成される。培養方法としては、静置培養法(Static cultivation)と振とう培養法(Agitated cultivation)がある。静置培養法は、先にバクテリアを培地に移植した後、フラスコで略10日間棚などにそのまま置いて培養する方法である。また、他の方法である振とう培養は、液体培地を用いて振とう培養器(shaking incubator)で継続的に一定速度で撹拌しながら培養する方法である。前記バクテリア培養を用いず、市販のバイオセルロースを使用することもできる。バイオセルロースは三次元ネットワークを有し、高い結晶化度(84~89%)及び十分な空隙を有する。バイオセルロースの長さは数~数十マイクロメートルであり、一定の、すなわち均一な長さ分布の直径を有する。
【0035】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体において、本発明によるバイオセルロースのアルコール基はカルボキシル基に置換される。
【0036】
バイオセルロースに含まれた全体アルコール基のうち0.8mmol/gセルロース以上、より望ましくは1.0mmol/gセルロース以上がカルボキシル基に置換される。
【0037】
バイオセルロースのアルコール基をカルボキシル基に置換するには当業界の多様な方法が用いられ、例えばN-オキシル化合物を溶解した蒸留水に酸化剤及びバイオセルロースを一緒に添加して撹拌する過程を通じて行われ得る。
【0038】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体において、バイオセルロースのアルコール基はカルボキシル基に置換されるため、カルボキシル基によって負の電荷を帯びる。例えば、-30mV以下の負電荷を帯び、望ましくは-50mV以下、より望ましくは-60mV以下の負電荷を帯びる。最も望ましくは-60mV~-90mVの負電荷を帯びる。
【0039】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体の負電荷が微細粉塵の負電荷と反発して微細粉塵の付着を減少させる。
【0040】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体内の個別微細繊維の数平均直径は、0.1~200nm、望ましくは1~150nm、より望ましくは20~100nm、最も望ましくは30~60nmである。上記の範囲であるとき、人体適用に有利であり、例えば化粧料組成物及び医薬外品組成物への活用に有利であり、特に30~60nmであるとき、ネットワーク構造を形成しながらも塗布時によれず、固有の機能を発現可能な長所があって、肌に浸透することなく微細粉塵を効果的に遮断する効果がある。
【0041】
さらに、本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体内の個別微細繊維の最大直径は、0.1~200nm、望ましくは1~150nm、より望ましくは20~100nm、最も望ましくは60~100nmである。このとき、ネットワーク構造を形成しながらも塗布時によれず、固有の機能を発現可能な長所があって、肌に浸透することなく微細粉塵を効果的に遮断する効果がある。上記の範囲であるとき、人体適用に有利であり、例えば化粧料組成物及び医薬外品組成物への活用に有利である。200nmを超えれば、塗布時によれる恐れがある。
【0042】
また、本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体内の個別微細繊維の長さは、原料として使用されたバイオセルロースの長さと同様である。換言すれば、本発明による微細繊維は、原料として使用されたバイオセルロースの長さが維持される。ここで、「長さは…長さと…同様である」または「長さが維持される」とは、原料として使用されたバイオセルロースの長さと実質的に差がないことを意味し、「実質的に差がない」とは長さの差が±10%以下、±5%以下、±1%以下、±0.1%以下、最も望ましくは±0.01%以下であることを意味する。本発明による分散体の製造過程では、微細繊維を切断する工程が含まれず、したがって原料であるバイオセルロースの長さがほぼ維持される。
【0043】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、水溶液に添加したとき、微細繊維としての構造的、物理化学的特徴及び/または水分散性を維持し、特にバイオセルロース本来のネックワークを維持して安定的に分散する特徴を有する。
【0044】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、水分散型組成物に剤形化することができる。
【0045】
前記「水分散型組成物」とは、溶媒として水を含む組成物であって、水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体が水相に分散する組成物を意味する。組成物は水相単独であっても良く、油中水型、水中油型、または多重エマルションであっても良く、これらに制限されない。
【0046】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、当業界で公知された多様な方法で製造でき、特定の方法に制限されない。ただし、バイオセルロースを原料として用いるため、微細化のためのトップダウン方式の前処理過程を必要としない。例えば、微細繊維を切断する工程が含まれない。
【0047】
望ましくは、以下の段階を含んで製造することができる。
水にN-オキシル化合物を溶解する段階;
溶解物にバイオセルロース及び酸化剤を添加して撹拌する段階:及び
洗浄過程を通じて反応物を除去する段階。
【0048】
本発明で使用可能な「N-オキシル化合物」は触媒剤であって、本発明における酸化反応を促進するために使用する。N-オキシル化合物としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-オキシラジカル(TEMPO);4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-オキシラジカル(4-ヒドロキシTEMPO)の水酸基をアルコールでエーテル化するか、若しくは、カルボン酸またはスルホン酸でエステル化して適当な疎水性を与えた4-ヒドロキシTEMPO誘導体;或いは、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルのうち1種以上を選択でき、最も望ましくは、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-オキシラジカル(TEMPO)を使用することができる。N-オキシル化合物の使用量は、バイオセルロースを微細繊維化可能な触媒量であれば、特に制限されない。例えば、1gのセルロース系乾燥原料に対して、0.01~100mmol、望ましくは0.01~50mmol、特に望ましくは0.05~30mmol程度を使用することができる。
【0049】
本発明で使用可能な「酸化剤」として、望ましくは、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはその塩、ハロゲン酸化物、ハロゲン過酸化物などが挙げられるが、ハロゲンの中でも塩素を使用することが望ましく、例えば塩素、次亜塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸またはその塩、塩素酸化物、塩素過酸化物が望ましく、最も望ましくは次亜塩素酸ナトリウムを使用することができる。次亜塩素酸ナトリウムは微細繊維の生産コスト面で経済的であるため、現在の工業プロセスで最も汎用されており、安価であって環境負荷が小さいため特に望ましい。酸化剤の使用量は酸化反応を促進可能な範囲で選択することができる。例えば、1gのセルロース系乾燥原料に対して0.5~500mmol、望ましくは0.5~50mmol、特に望ましくは2.5~25mmol程度を使用することができる。
【0050】
本発明によるバイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体の製造方法において、臭化物は実質的に使用しない。
【0051】
ここで、「実質的に使用しない」とは、1gのバイオセルロース乾燥原料に対して0.1mmol以下、望ましくは0.01mmol以下、より望ましくは0.001mmol以下を使用することを意味する。臭化物、例えば、塩化臭素は気管支や肺器官に毒性問題をもたらし得、取り扱いの際に安全性の問題と廃棄時に重金属による環境汚染の恐れがあるため、本発明では実質的に使用しない。臭化物を使用しなくても、本発明によれば、優れた効能の水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体を製造することができる。
【0052】
本発明による水分散バイオセルロース分散体の製造方法は、15~30℃程度の室温の緩やかな条件下でも酸化反応を円滑に進ませることができる。
【0053】
酸化反応の進行によってバイオセルロースの構造中にカルボキシル基が生成されるため、反応液のpHが低下する。したがって、効率的な酸化反応のためにはアルカリ性溶液を持続的に添加することで、反応液のpHを8~12、より望ましくは10~11程度に維持しなければならない。酸化反応の反応時間は適宜設定でき、特に制限されないが、例えば0.5~60時間、望ましくは1~50時間、特に望ましくは24~48時間程度である。
【0054】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、多様な用途の組成物として活用でき、特に化粧料組成物及び医薬外品組成物として使用することができる。また、本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、肌付着性に優れるものの肌内には浸透しないため、人体、望ましく肌に適用する化粧料組成物及び医薬外品組成物として使用することができる。
【0055】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、水相でネットワークを形成し分散する特徴があるため、水相を含む組成物で特に有用である。
【0056】
より具体的に、本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、肌安着性、水分保有能、弾力増加、増粘力、柔らかさ改善能を有するため、これらに基づいた用途で使用することができる。本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物は、水分増進または弾力増進用で使用することができる。
【0057】
より具体的に、本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、肌付着性に優れるものの肌内には浸透せず、微細粉塵の遮断に優れた効果を有するため、これに基づいた用途で使用することができる。本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物は、微細粉塵遮断用で使用することができる。
【0058】
より具体的に、本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体は、肌付着性に優れるものの肌内には浸透せず、ケラチン構造体の保護に優れた効果を有するため、これに基づいた用途で使用することができる。本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物は、ケラチン構造体保護用で使用することができる。
【0059】
本発明は、バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体として、望ましくは最大直径60~100nm、数平均直径30~60nm、水相でネットワークを形成しながら分散することを特徴とする水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体を含む化粧料組成物を提供する。
【0060】
本発明の化粧料組成物は、機能性化粧品としても使用することができる。
【0061】
本発明において「機能性化粧品(cosmedical、cosmeceutical)」とは、化粧品に医薬品の専門的な治療機能が導入され、一般化粧品と違って生理活性的な効能、効果が強調された専門的な機能性を有する製品であって、例えば、肌の美白に役立つ製品、肌しわの改善に役立つ製品、肌をきれいにタンニングするか又は紫外線から肌を保護するのに役立つ製品など韓国保健福祉部令が定める化粧品を意味する。
【0062】
本発明の化粧料組成物は、化粧分野における通常の補助剤、例えば、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤 、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、脂質小胞だけでなく、化粧品に通常使用される任意の他の成分のような化粧品学または肌科学分野で通常使用される補助剤とともに、一般化粧品または機能性化粧品の構成要素として使用することができる。
【0063】
本発明による化粧料組成物を含む化粧品は、当業界で通常製造される如何なる剤形にも製造でき、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレーなどに剤形化できるが、これらに制限されない。より詳しくは、柔軟化粧水、収れん化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、水分クリーム、水分ジェルクリーム、ローション、ゲル、エッセンス、アイクリーム、ピールオフマスクパック、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、軟膏、スチック、パッチ、スプレーまたはパウダーの剤形に製造することができる。
【0064】
本発明による水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体は、化粧料組成物の総重量対比0.0001~10、望ましくは0.0001~5、より望ましくは0.0005~5乾燥重量%を含むことができる。
【0065】
本発明は、バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体として、望ましくは最大直径60~100nm、数平均直径30~60nm、水相でネットワークを形成しながら分散することを特徴とする水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体を含む医薬外品組成物を提供する。
【0066】
本発明において「医薬外品」とは、ヒトや動物に危害な症状を治療、軽減、処置または予防することを目的で使用されるもの、人体に対する作用が弱いか又は人体に直接作用せず、器具または機械ではないものやそれと類似するもの、感染予防のために殺菌、殺虫及びそれと類似の用途で使用される製剤の1つに該当する物品であって、ヒトや動物の疾病を診断、治療、軽減、処置または予防することを目的で使用する物品のうち器具、機械または装置ではないもの、及びヒトや動物の構造と機能に薬理学的影響を与えることを目的で使用する物品のうち器具、機械または装置ではないものを除いた物品を意味し、皮膚外用剤及び個人衛生用品も含む。
【0067】
本発明において「皮膚外用剤」とは、油脂類、ワセリン、ラノリン、グリセロールなどの多様な基材に薬品を混合して肌に塗布し易くした固形、半固形または液状の外用薬を意味する。外用剤形は、特に限定されないが、例えば、パウダー、ゲル、軟膏、クリーム、液体またはエアロゾル剤形を含むことができる。
【0068】
本発明による水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体は、医薬外品組成物の総重量対比0.0001~10、望ましくは0.0001~5、より望ましくは0.0005~5乾燥重量%を含むことができる。
【0069】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物は、肌安着性、水分保有能、弾力増加、増粘力、柔らかさ改善能を有するため、これらに基づいて有用な方法で使用することができる。
【0070】
より具体的に、本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物を人体に適用して、水分を増進させるか又は弾力を増加させる方法として使用することができる。
【0071】
ここで、「人体」には、望ましくは、肌が含まれる。
【0072】
また、「適用」とは、人体に直間接的に影響を及ぼす方式であれば制限なく含むが、例えば人体に塗布する方式を含むことができる。
【0073】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物は、微細粉塵遮断能を有するため、これらに基づいて有用な方法で使用することができる。
【0074】
より具体的に、本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物を人体に適用して、微細粉塵を遮断する方法として使用することができる。
【0075】
ここで、「人体」には、望ましくは、肌が含まれる。
【0076】
また、「適用」とは、人体に直間接的に影響を及ぼす方式であれば制限なく含むが、例えば人体に塗布する方式を含むことができる。
【0077】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物は、ケラチン構造体保護能を有するため、これらに基づいて有用な方法で使用することができる。
【0078】
より具体的に、本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物を人体に適用して、ケラチン構造体を保護する方法として使用することができる。
【0079】
ここで、「人体」には、望ましくは、肌が含まれる。
【0080】
また、「適用」とは、人体に直間接的に影響を及ぼす方式であれば制限なく含むが、例えば人体に塗布する方式を含むことができる。
【0081】
本発明による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体またはそれを含む組成物は、多様なケラチン構造体の保護のために使用でき、例えば、毛髪に適用する場合は、シャンプー前(pre-shampoo)組成物、シャンプー、リンス、トリートメント、ワックス、ゲル、スプレー、ムース、ヘアローション、ヘアーパック、ヘアーエッセンス、ヘアクリーム、永久染毛剤、一時染毛剤、パーマ剤、不織布及びシートからなる群より選択された1以上に剤形化することができる。また、例えば、爪または足爪に適用する場合、爪整え用または保護用のベース、マニキュア、トップコート、栄養剤、強化剤及びジェルからなる群より選択された1以上に剤形化することができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の理解を助けるため、実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が後述される実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0083】
(製造例1:バイオセルロースの化学的処理)
バイオセルロースの化学的処理のため、バイオセルロース(Ezcostec、未打孔シート)、次亜塩素酸ナトリウム及び2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシラジカル(以下、TEMPO)触媒を使用した。100gの蒸留水に10mgのTEMPO触媒を溶かした後、5gのバイオセルロースシートを入れて次亜塩素酸ナトリウム8gを加えた後、常温でpHを10以上に維持しながら12~24時間撹拌して、バイオセルロースシートが水に分散した微細繊維状に製造した(
図1のb、
図8の(b))。製造された水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体を精製及び洗浄過程を通じて調剤した後、常温に保管した。このようにして得られたバイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体(実施例1)内の微細繊維の直径は、最大直径60~100nm、数平均直径30~60nmであり、長さはバイオセルロース(Ezcostec、未打孔シート)の長さが維持された。
【0084】
合成した実施例1が微細繊維ネットワーク構造を有するか否かを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて確認した。その結果、水分散バイオセルロースが微細繊維ネックワークの形態を有することを確認した(
図1のb、
図8の(b)、
図8の(c)、(d))。
【0085】
(実験例1~実験例7で用いられる実施例及び比較例は、以下のようである。)
実施例1は、上述した製造例1によって製造されたバイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体である。
比較例1は、蒸留水にバイオセルロースシートを入れて撹拌して製造した。
比較例2は、木質系セルロースを実施例1のような方法で合成した。SEM写真は
図1のa、
図2のa、bに示した。
比較例3は、化粧料に通常使用される水溶解性セルロースであるカルボキシメチルセルロースを蒸留水に入れて撹拌して製造した。
比較例4は、化粧料に通常使用される水溶解性セルロースであるヒドロキシエチルセルロースを蒸留水に入れて撹拌して製造した。
比較例5は、実施例1を含まないエッセンス剤形である。
実施例2は、実施例1による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体を0.015乾燥重量%含むエッセンス剤形である。
実施例3は、実施例1による水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体を0.03乾燥重量%含むエッセンス剤形である。
【0086】
(実験例1:水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体と木質系セルロース分散体との比較)
水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体と木質系セルロースを酸化させた分散体との構造を比較するための実験を行った。木質系セルロース原料(Whatman、フィルター紙、1005-110)を製造例1のような方法で合成した結果物である比較例2をSEMで確認した。
【0087】
比較例2を0.05乾燥重量%に希釈したものを
図2のaに示し、0.015乾燥重量%に希釈したものを
図2のbに示した。
図2のa及びbから分かるように、針状構造を見せてネットワークを形成しない。
【0088】
一方、同じ濃度の実施例1を0.05乾燥重量%に希釈したものを
図2のcに示し、0.015乾燥重量%に希釈したものを
図2のdに示した。
図2のc及びdから分かるように、実施例1は数平均直径が30~60nmでありながらも長さが数~数十マイクロメートルを維持して、低い濃度でも繊維間ネットワークを形成する構造を見せることが確認できた。このことから、木質系セルロースとバイオセルロースとはネットワーク形成の側面でその構造が相違し、それによる機能も相違することが確認できた。
【0089】
(実験例2:水分散バイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体の肌安着の確認)
0.03乾燥重量%の実施例1を肌に塗布したとき、肌への安着如何を確認するため、豚皮膚(2cm×2cm)に塗布した後、乾燥してSEMで確認した。
図3から分かるように豚皮膚の表面にセルロース微細繊維ネットワーク分散体が安定的に塗布されていることが確認でき、それを通じて肌表面に微細繊維が形成されて安着していることが証明された。
【0090】
(実験例3:水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体の水分保有能の確認)
水分保有能を確認するため、比較例2、3、4及び実施例1を0.5乾燥重量%で豚皮膚に塗布し乾燥した後、水を落として接触角を測定した結果を表1に示した。初期接触角は比較例4>比較例2>比較例3>実施例1の順であって、接触角が小さいほど親水性を呈することを意味する。
【0091】
さらに、時間の経過による接触角の変化を
図4に示した。実施例1の場合、接触角が急激に減少するが、これは水分散セルロース微細繊維が水を素早く引き寄せることを意味し、このことから水分散セルロース微細繊維の水分保持力の増加による優れた保湿能力を確認できた。
【0092】
【0093】
(実験例4:水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体の肌摩擦力の確認)
0.015乾燥重量%の水分散セルロース分散体を肌に塗布し、30分後、フリクションメーターを用いて肌摩擦力を測定した。その結果、塗布前に比べて肌摩擦力が10%減少したことが確認され(
図5)、肌に残留しているセルロース微細繊維ネットワーク分散体が肌を柔らかくすることが証明された。
【0094】
(実験例5:水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体含有剤形の増粘力の確認)
表2に示した配合でエッセンス剤形を製造して評価した(単位:重量%)。製造後得られた肌化粧料の粘度を測定した結果、実施例1の比率が増加するほど粘度が増加する現象が現れた(
図6)。このことから微細繊維の構造を維持しながらもセルロースが本来持っている増粘力を共に有することを確認できた。
【0095】
【0096】
(実験例6:水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体含有剤形の水分保持力の確認)
水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体剤形の水分保持力を確認するため、セルロース微細繊維分散液の有/無別にエッセンス剤形(比較例5、実施例2)を製造した後(重量%は表2と同じ)、豚皮膚に塗布し乾燥した後、水を落として接触角を測定した。その結果、時間が経過するにつれて実施例1を含有した剤形における接触角の減少幅が大きいことが確認された(
図7)。これはセルロース微細繊維が剤形内に含まれていても、水を引き寄せて吸収する特性を維持しているためであると分析される。
【0097】
(実験例7:水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体の弾力増加効能の評価)
合成された実施例1の効能を確認するため、弾力測定実験を行った。ウェルプレートに一定濃度のゼラチンを溶かした後固めてゲルを作り、水分散セルロース微細繊維ネットワーク分散体を塗布して、万能物性分析機(texture analyser)を用いて弾力を測定した。万能物性分析機にゼラチンゲルの面積より小さい試片を載せて、一定速度でゼラチンゲルを押下してその圧力を測定する方法を用いた。弾力が増加する場合、表面の構造が緻密になるため、一定の力で押下したときの抵抗力が強まる原理を用いた。次いで、In-vitro弾力評価方法を通じて比較例2及び0.03乾燥重量%の実施例1を測定したとき、実施例1を処理した場合が比較例2を処理した場合に比べて約20%弾力が増加することを確認した。これは塗布されたセルロース微細繊維が膜を形成して弾力効果を増加させるためであると把握される。また、一般人10名を対象にして弾力改善度を確認した結果、有意に増加したことが確認された。
【0098】
(-実験例8~実験例12で用いられる実施例及び比較例は、以下のようである。)
実施例1は、上述した製造例1によって製造されたバイオセルロース微細繊維ネットワーク分散体である。
比較例6は、蒸留水である。
比較例7は、水溶性高分子であるキサンタンガムである。
比較例8は、実施例1を含まないエッセンス剤形である。
比較例9は、実施例1を含まないスキン剤形である。
実施例4は、0.05乾燥重量%の実施例1を含むエッセンス剤形である。
実施例5は、0.05乾燥重量%の実施例1を含むスキン剤形である。
【0099】
(実験例8:バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物の肌安着の確認)
合成した実施例1が本来の微細繊維構造を維持するか否かを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて確認した。その結果、セルロースが微細繊維状を維持することを確認した。(
図8の(b)、
図8の(c)、(d)、及び
図9の(a))。
【0100】
0.01、0.05乾燥重量%の実施例1を肌に塗布したときの肌への安着如何を確認するため、豚皮膚(2cm×2cm)に塗布した後、乾燥してSEMで確認した。
図1から分かるように豚皮膚の表面にもバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物が塗布されていることが確認され、これを通じて肌表面に微細繊維を形成して安着されていることが証明された。また、0.05乾燥重量%の実施例1が肌にどの位覆っているかを確認するため、塗布された部分と塗布されていない部分との境界面を測定した結果、塗布された部分は全てバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物で覆われていることが確認された。このことから、バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物を肌に塗布するとき、殆どの肌を覆って微細粉塵の肌への付着を防止できることを確認できた。
【0101】
(実験例9:バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物の電荷の確認)
実施例1の電荷を確認するため、表3に示されたエッセンス剤形を製造して、比較例8及び実施例1、実施例4のゼータ電位を測定した。実施例1、4、比較例8の表面電荷値を表4に示した。実施例1の場合、表面電荷値が-77.5mVと負電荷を帯び、実施例2の場合にも-70.7mVと安定的な負電荷を帯びた。しかし、比較例8の場合、-7.1mVであった。ゼータ電位測定の場合、-20mV~+20mVの値は安定的な電荷を有すると言えないため、比較例8の場合は負電荷を帯びると言えない。したがって、バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物のカルボキシル基が負電荷を帯びるため、剤形に適用されたときも安定的な負電荷を帯びるようになることが確認できた。
【0102】
【0103】
【0104】
(実験例10:バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物の微細粉塵付着の確認)
豚皮膚に0.05乾燥重量%の実施例1、比較例6、0.05乾燥重量%の比較例7を塗布した後、処理していない対照群とともに1~5μmの代替微細粉塵を塗布し乾燥した後、SEMと蛍光顕微鏡で代替微細粉塵が肌の表面に直接接触するか否かを確認した。蛍光顕微鏡の場合、代替微細粉塵は赤色蛍光処理し、肌は緑蛍光処理し、塗布した水溶性高分子とバイオセルロース微細繊維水分散体は蛍光処理しないことで、塗布した物質によって赤色粒子が緑肌に直接触れるか否かを確認した。
【0105】
図9及び
図10から分かるように、蒸留水を処理した場合、微細粉塵が肌に直接触れることが確認され(
図9の(b)及び
図10のa)、水溶性高分子を塗布したときも微細粉塵が水溶性高分子を浸透して肌に直接触れることが確認された(
図10のb)。一方、バイオセルロース微細繊維水分散体の場合、緻密なネットワーク構造(微細繊維同士の間隔が10nm以下)が微細粉塵を肌と直接触れないように遮断することが分かった(
図9の(a)、
図10のc)。
【0106】
(実験例11:バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物の微細粉塵付着率の確認)
表4に示した配合でバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物が含まれたスキン剤形を製造し、微細粉塵の付着程度を確認した。PMMAプレートに1.3mg/cm2の量で人工皮脂を塗布し乾燥した後、同量の試験製品を乾燥した人工皮脂上に塗布して乾燥した。その後、1~5μmの代替微細粉塵に5分間晒し、PMMAプレート上に付着した微細粉塵イメージを確認して評価した。
【0107】
その結果、試験製品を塗布しない比較例6に付いた微細粉塵付着率を100%としたとき、比較例9は94%、実施例5は70%と微細粉塵付着率が減少することが確認された。このことから、バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物自体が含んでいる負電荷が微細粉塵の負電荷と反発し、微細粉塵がバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物が含まれた剤形に付着することを防止すると言える。
【0108】
【0109】
【0110】
(実験例12:バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物剤形の微細粉塵洗浄効果)
表3に示した配合でエッセンス剤形を製造して評価した(単位:重量%)。微細粉塵が肌に直接付着すれば、毛穴やしわの間に入り込んで洗浄し難くて洗浄効率も減少する。したがって、一定量のバイオセルロース微細繊維ネットワーク水分散体、及びバイオセルロース微細繊維ネットワーク水分散体を含む組成物を含む剤形を肌に塗布し、1~5μmの代替微細粉塵をその上に塗布して微温水で洗い落し、類似微細粉塵の塗布前、塗布後、洗浄後のイメージを撮影して微細粉塵洗浄率を評価した。
【0111】
その結果、試験製品を塗布していない比較例6は58%、剤形評価の場合、比較例9は85%、実施例5は99%と微細粉塵洗浄率が増加することが確認された。このことから、バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物が肌上に微細網を形成し、微細粉塵が肌に直接吸着することを減少させて洗浄時に容易に微細粉塵が除去されると言える。
【0112】
(製造例2:バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク含有O/W乳化剤形エッセンス(100g)の製造)
製造例1で製造したバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワークを含むO/W乳化剤形のエッセンスを下記表7の組成及び含量で製造した。
【0113】
精製水にバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワークを計量して十分濡らした後、分散機を用いて1500rpmで30分以上均一に分散させた。次いで、原料2~5を添加して60℃に加熱し、予め計量して60℃に加熱しておいた原料7~8と混合してホモミキサーで4500rpm、10分間混合した。その後、脱泡、濾過、冷却させて剤形を完成した。
【0114】
【0115】
(実験例13:バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物のケラチン表面処理)
実施例6で製造したバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク含有O/W乳化剤形のエッセンスをヒトの毛髪と爪の表面に処理して乾燥した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて毛髪及び爪の表面を観察した。
図11及び
図12に示されたように、毛髪と爪の表面でバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワークが網状のネットワークを形成して表面を覆っていることが確認できた。
【0116】
(実験例14:バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物処理前後の毛髪断面積の比較)
実験例1の毛髪サンプルを対象に、実施例6で製造したバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク含有O/W乳化剤形のエッセンスの処理前後の毛髪断面積を測定し、その結果を表8に示した。10本の毛髪サンプルの断面積平均は、エッセンス処理前の約4012μm2からエッセンス処理後に約4350μm2に約8%ほど増加した。したがって、エッセンス剤形が毛髪の表面で乾燥した後にもバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワークが安定的に塗布されていることが確認でき、それによる毛髪の太さ増加も確認できた。
【0117】
【0118】
(実験例15:バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク組成物処理前後の爪の評価)
実施例6で製造したバイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク含有O/W乳化剤形のエッセンスを、ジェルネイル除去用アセトンを1日1回総5日間爪に処理して爪に損傷を与えた被験者2名の爪に1日2回、2週間使用した。その後、爪のつや程度をSkin-glossymeter GL200(Courage+Khazaka Electronic GmbH)を用いて測定し、その結果を表9に示した。バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワーク含有エッセンスを使用した場合、如何なる処理もしていない対照群に比べて爪のつやが格段に改善された。これは、アセトンなどの有機溶媒の使用により、爪が乾燥し表面のキューティクル層が剥がれて損傷された爪の表面で、バイオセルロース微細繊維水分散体ネットワークが保護網を形成して爪表面のケラチン層の脱落を防止することで、爪の回復を補助し、その結果をつやの増加によって確認したものである。
【0119】