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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】流体タービン装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 1/05 20060101AFI20220114BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20220114BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20220114BHJP
   F01D 15/06 20060101ALI20220114BHJP
   F02C 1/02 20060101ALI20220114BHJP
   F01D 1/06 20060101ALI20220114BHJP
   B05B 5/04 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A61C1/05 A
F16C33/58
F16C19/16
F01D15/06
F02C1/02
F01D1/06
B05B5/04 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017208485
(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公開番号】P2019080621
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】306037229
【氏名又は名称】株式会社 空スペース
(72)【発明者】
【氏名】河島 壯介
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-256152(JP,A)
【文献】特開2017-145834(JP,A)
【文献】特開2016-094972(JP,A)
【文献】特開2014-095442(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073475(WO,A1)
【文献】米国特許第05749660(US,A)
【文献】特表2015-509015(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104363855(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/05
F16C 33/58
F16C 19/16
F01D 15/06
F02C 1/02
F01D 1/06
B05B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道を有する外輪と、前記内輪軌道と 前記外輪軌道との間に介在する複数の転動体により構成される転がり軸受の、前記外輪軌道の一部領域で前記転動体が接触する際の有効半径を小さくした接触点変化路を形成することにより、前記接触点変化路から出る前記転動体と、その後継の前記転動体との間に間隔を作る“自律分散式転がり軸受”の構成を備えた転がり軸受と、外部から流体を導入し前記転がり軸受の前記転動体に向けて噴出するノズルを備え、前記ノズルからの流体の吐出圧力によって前記転動体に公転力を発生せしめ、係る公転力により前記内輪と前記外輪との間に回転トルクを与えることを特徴とする流体タービン装置。
【請求項2】
前記流体、または粉流体の中心位置を、前記転がり軸受の前記接触点変化路よりも前記転動体の公転方向の前方としたことを特徴とする請求項1の流体タービン装置。
【請求項3】
前記ノズルを前記転がり軸受の回転中心に対し点対称に複数個配置したことを特徴とする請求項1の流体タービン装置。
【請求項4】
請求項1に記載の流体タービンを備えたことを特徴とする歯科用ハンドピース。
【請求項5】
請求項1に記載の流体タービンを備えたことを特徴とする静電塗装用エアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体や液体圧を動力源とするタービン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の歯科用ハンドピース1の側面断面図である。
図4に示すように、工具5はヘッド部3内の回転軸7に装着されている。回転軸7には、一対の転がり軸受30,30の内輪36,36が、それぞれ軸方向に並んで外挿されている。一対の転がり軸受30,30の外輪31,31は、それぞれヘッド部3のハウジング8に装着されている。これにより、回転軸7および工具5は、ヘッド部3のハウジング8に、一対の転がり軸受30,30を介して回転自在に支持されている。
【0003】
回転軸7の外周面には、一対の転がり軸受30,30の間にタービン翼9が設けられている。回転軸7、工具5および一対の転がり軸受30,30の内輪36,36は、タービン翼9に対して高圧の空気を噴射することにより、中心軸O回りに回転する。(例えば、特許文献1)
【0004】
図5は従来の静電塗装用エアモータの側面断面図である。その構成は図4に対してタービン翼106を一対の転がり軸受108,110の外側に配している点が異なるが、回転軸を転がり軸受で支持し、別途設けたタービン翼に流体を当てて回転トルクを得る点では共通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-95442号公報
【文献】再表2012-073475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の歯科用ハンドピースは治療時間の短縮のため、工具を高速で回転させることが重要であり、高速化の方策は、空気圧の増加やヘッド内空気の整流化が考えられる。しかしながら高圧化は空圧チューブの肉厚化を招き、整流化はヘッドの大型化が必要となって治療作業性の低下をもたらすため限界があった。
【0007】
また、従来の静電塗装用エアモータにおいても主軸の高速化は塗装時間の短縮や塗粒の微細化をもたらすことより主要な開発テーマであるが、タービンに衝突させる圧縮空気の速度は音速(340m/s)が限界であった。
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、低い流体圧力で超高速回転を可能とする流体タービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の流体タービン装置は外周面に内輪軌道を有する内輪と、内周面に外輪軌道を有する外輪と、内輪軌道と 外輪軌道との間に介在する複数の転動体により構成される転がり軸受の、外輪軌道の一部領域で転動体が接触する際の有効半径を小さくした接触点変化路を形成することにより、接触点変化路から出る転動体と、その後継の転動体との間に間隔を作る“自律分散式転がり軸受”の構成を備えた転がり軸受と、外部から流体を導入し転がり軸受の転動体に向けて噴出するノズルを備え、ノズルからの流体の吐出圧力によって転動体を直接押圧して転動体に公転力と自転力を発生せしめ、係る公転力と自転力により内輪と外輪との間に回転トルクを与えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流体タービンは、流体圧で軸受の転動体を駆動し、係る転動体が自転と公転を行うことによって軸受の内輪(又は外輪)を増速駆動するので、低い流体速度で高速回転の出力を得ることが出来る。また、保持器で転動体が拘束された転がり軸受でこれを行うと、保持器が転動体と強く摩擦する問題があるが、自律分散式転がり軸受の構成としているので流体圧は基本的に自転運動を阻害せずに転動体に公転力を与えることが出来る。よって増速に伴う損失が極小化出来る。
【0010】
さらに転動体の自転中、すなわち流体タービン動作中は、マグヌス効果によって転動体表面を流れる流体は転動体の自転を促進する方向に向きを変えて転動体に自転力も与える。よってさらに駆動効率が改善される。
また、別途タービンを設ける必要が無いので、装置を小型軽量化し安価にすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施例、歯科用ハンドピースの断面図である。
図2】第二実施例、歯科用ハンドピースの断面図である。
図3】第三実施例、静電塗装用エアモータの断面図である。
図4】歯科用ハンドピースの従来例の断面図である。
図5】静電塗装用エアモータの従来例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、流体タービンの高速化と小型軽量化を実現するという目的に対し、支持軸受の転動体をタービン翼として兼用することで、増速機構の組込みと部品点数の削減を同時に実現した。
なお、流体タービンの流体は、空気やガス等の気体、水や消毒液等の液体、及びこれらの混合体、を指し、潤滑に供するナノダイヤモンド等の微量の個体の含有を排除しないものとする。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。ただし、図面はもっぱら解説のためであって、本発明の記述範囲を限定するものではない。
【実施例
【0013】
図1は本発明の第一実施例、流体タービンを歯科用ハンドピースに適用した例である。 (A)は、ヘッド部3の中心軸Oを含む側面の部分断面図、(B)は、そのX-X断面図である。
図1に示すように、工具5はヘッド部3内の回転軸7に装着されている。回転軸7には 、一対の転がり軸受30,30の内輪36が、それぞれ軸方向に並んで外挿され、内輪36の外側両端面で止め輪9によって固定されている。
【0014】
一対の転がり軸受の外輪31は、それぞれヘッド部3のハウジン グ8に装着されている。これにより、回転軸7および工具5は、ヘッド部3のハウジング 8に、一対の転がり軸受30を介して回転自在に支持されている。一対の転がり軸受の外輪31は、ウェブワッシャ10と間座11によって転がり軸受の軸方向間隔を広げる方向にばね予圧があたえられ、背面組合せのスピンドルを構成している。
【0015】
また、一対の転がり軸受の外輪31は、図示の位相bにおいて玉39の接触半径を小さくした接触点変化路を形成することにより、接触点変化路から出る玉39と、その後継の玉39との間に間隔を作る“自律分散式転がり軸受”の構成を備えている。
さらに、間座11の側面より一対の転がり軸受の間に相通されたノズル12、12の先端は回転軸の軸心方向に二股に分岐し、各々の吐出口12aが個々の転がり軸受30の玉39の図示の位相bより前方に位置する位相aに向けて斜め前方に開口している。
【0016】
続いて、第一実施例に係る歯科用ハンドピースの作用について説明する。
外部よりノズルへ供給された加圧空気は吐出口より噴出流となって、位相aの直近前方の玉を前方に押圧する。玉39がウェブワッシャ10による予圧で内外輪の軌道より押圧されており、かつ外輪31はハウジングにより固定されていることにより、押圧された玉39は内輪36を前方に回転させながら自身が自転と公転を行う。他の玉も内輪36の回転に駆動され一斉に自転と公転を行う。
【0017】
自律分散式転がり軸受の構成を持っているので各玉39は、位相bで公転速度を緩め、先行する玉との間に隙間を作り、先行する玉は前後の玉との間に隙間を保った状態で位相aで噴出流から駆動力を得る。なお、噴出流により位相A付近の圧力は他の部分より高くなるので、位相b付近の玉は転がり軸受の回転方向Ffとは逆向きの力Fbを受けて減速し、先行する玉との間の隙間生成を促進する効果も得られる。
【0018】
玉39の公転速度Ncに対し、内輪36のが滑りを生じずに転がり運動した場合の回転数Niは、公知の 数1、数2 により計算され、一般的な軸受を使用した場合の概算はNi≒3Nc、よって工具5は噴出流速の約3倍に増速される。
【数1】
【数2】
【0019】
図2は本発明の第二実施例、第一実施例の流体タービンの軸方向中央位置を中心軸O方向から見た断面図である。第一実施例に対して以下の点が異なっている。
1)外輪31の接触点変化路を2箇所(位相b、及びCb)設けている。
2)ノズル12の玉39への吐出口12aを2箇所(位相a、及びCa)設けている。
3)回転軸7に多数のタービン翼7aを追加している。
4)ノズル12のタービン翼7aへの吐出口を2箇所(位相c、及びCc)設けている。
【0020】
以上の構成により本実施例は、玉39への駆動力を2倍にする他、接触点変化路での玉の挙動変化や玉への吐出圧による加振が、回転中心に対し点対称の配置により相殺され易い。
また、タービン翼7aへの噴流は玉への噴流と異なり増速作用を持たないが、その分回転トルクが増加する。よって使用者が治療の状況に合わせて、玉とタービン翼との噴流の量を切替調整できるゲート弁(図中不記)を設けることにより、回転数優先かトルク優先か、選択が可能となる。
【0021】
図3は本発明の第三実施例の静電塗装用エアモータである。第一実施例との大きな相違は、本実施例では転がり軸受を外輪回転で使用していることにある。固定軸21に設けられた動力空気導入口21aは内輪間座20に設けられたノズル12の吐出口12aに連通しており、駆動空気は吐出口12aより転がり軸受の玉39に向けて周方向(図面では奥行方向)に角度を付けて噴出され、玉39を押圧する。押圧された玉39は外輪31を回転させながら自身が自転と公転を行う。他の玉も外輪31の回転に駆動され一斉に自転と公転を行う。
転がり軸受は自律分散式転がり軸受の構成を持っているので各玉39は、接触点変化路で公転速度を緩め、先行する玉との間に隙間を作り、先行する玉は前後の玉との間に隙間を維持しつつハウジング22を回転自在に案内する。
【0022】
また本例は静電塗装用エアモータとしての塗料通路を有する。具体的には、固定軸21に設けられた塗料導入口21bは外輪と一体回転するベアリング蓋23内の空間23aからベル24にに連通しており、導入された塗料は軸受外輪31の回転による遠心力によってベル外径端(図中不記)から噴霧される。
【0023】
玉39の公転速度Ncに対し、外輪31が滑りを生じずに転がり運動した場合の回転数Neは、公知の 数3、数2により計算される。(Dw:玉直径(mm)、Dpw:玉ピッチ円径(mm)、α:接触角)
一般的な軸受を使用した場合の概算はNe≒1.5Nc、よって塗装ベルは噴出流速の約1.5倍に増速される。
【数3】
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、歯科用ハンドピースや静電塗装用エアモータ等の流体タービンとして広く産業用に使用される。
【符号の説明】
【0025】
30・・・・・転がり軸受
31・・・・・外輪
36・・・・・内輪
39・・・・・玉
12・・・・・ノズル
図1
図2
図3
図4
図5