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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】乗降板構造
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B66B23/00 Z
B66B23/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020019134
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021123475
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2020-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大志万 真理子
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-134817(JP,A)
【文献】特開2012-188268(JP,A)
【文献】実開平01-174384(JP,U)
【文献】登録実用新案第3223303(JP,U)
【文献】登録実用新案第3214141(JP,U)
【文献】米国特許第05372231(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベアの乗降部に形成された開口部を覆うベースプレートと、
前記ベースプレートに載置される珪藻土プレートと、
前記珪藻土プレートの上面の少なくとも一部を露出させた状態で前記珪藻土プレートを覆うカバープレートと、
を備え
前記カバープレートは、前記珪藻土プレートの一部を前記カバープレートの表面より突出させた状態で露出させる、乗降板構造。
【請求項2】
前記カバープレートは、前記珪藻土プレートの露出領域と非露出領域とを交互に配列する、請求項に記載の乗降板構造。
【請求項3】
前記ベースプレートは、前記珪藻土プレートの表裏方向に通過した液体を外部に排出するために排出部を備える、請求項1または請求項2に記載の乗降板構造。
【請求項4】
前記珪藻土プレートは、複数の小形プレートの集合体である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗降板構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗降板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベアであるエスカレータや移動歩道(所謂、動く歩道)等は、通常、屋外を歩いた乗客が靴を履いたまま利用する。そのため、屋外が濡れている場合、例えば降雨や降雪の場合、または、水溜まりを通過してきた場合等は、靴底が濡れたままである場合が多々ある。靴底が濡れた状態で、エスカレータに乗車する場合、乗降時に滑ってしまう場合がある。また、エスカレータが屋外に設置されている場合は、乗降口が直接、雨水等に晒されるので、同様な問題が生じ得る。そこで、滑り対策として、エスカレータの乗降口にヒータや送風装置等を備え、水分除去(例えば、乾燥)する構造を有するエスカレータや、乗降口に設置される乗降板に凹凸を設けて滑りにくくする構造を有するエスカレータ等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-24023号公報
【文献】特開昭64-2991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ヒータや送風装置等を備える場合、ランニングコストやメンテナンスコスト等が増加してしまうという問題がある。また、乗降板に凹凸を設ける場合、雨水等は存在したままであり、根本的な解決には至らない。そこで、ヒータや送風装置等を用いることなく、乗降板に持ち込まれる水分(例えば雨水等)の除去ができる乗降板構造が提供できれば、ランニングコストやメンテナンスコスト等の増加を抑制しつつ、滑る等の問題を軽減可能となり、有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の乗降板構造は、例えば、ベースプレートと、珪藻土プレートと、カバープレートと、を備える。ベースプレートは、乗客コンベアの乗降部に形成された開口部を覆う。珪藻土プレートは、ベースプレートに載置される。カバープレートは、珪藻土プレートの上面の少なくとも一部を露出させた状態で珪藻土プレートを覆う。そして、カバープレートは、珪藻土プレートの一部をカバープレートの表面より突出させた状態で露出させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態の乗降板構造を適用可能な乗客コンベアの一例としてのエスカレータについて、下階から上階を見上げた状態を示す例示的かつ模式的な図である。
図2図2は、実施形態の乗降板構造を適用可能な乗客コンベアの上階側の乗降部において、乗降板構造を取り外した状態を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
図3図3は、実施形態の乗降板構造を構成するベースプレートを表面側から見た場合の例示的かつ模式的な図な斜視図である。
図4図4は、実施形態の乗降板構造を構成するベースプレートを裏面側から見た場合の例示的かつ模式的な図な部分斜視図である。
図5図5は、実施形態の乗降板構造を構成する珪藻土プレートを表面側から見た場合の例示的かつ模式的な図な斜視図である。
図6図6は、実施形態の乗降板構造を構成するカバープレートを表面側から見た場合の例示的かつ模式的な図な斜視図である。
図7図7は、実施形態の乗降板構造が組み立てられた状態を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
図8図8は、実施形態の乗降板構造が組み立てられた状態を示す例示的かつ模式的な上面図である。
図9図9は、実施形態の乗降板構造が組み立てられた状態を示す例示的かつ模式的な断面図である。
図10図10は、実施形態の乗降板構造をエスカレータの開口部に設置した場合の、余剰水分の排出を説明する例示的かつ模式的な部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態に係る乗降板構造を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0008】
図1は、実施形態の乗降板構造Tを適用可能な乗客コンベアの一例としてのエスカレータ10について、下階から上階を見上げた状態を示す例示的かつ模式的な図である。また。図2は、エスカレータ10の上階側の乗降部12において、本実施形態の乗降板構造Tを取り外した状態を示す例示的かつ模式的な斜視図である。
【0009】
図1図2において、エスカレータ10は、複数の踏段14を無端状に連結して、これを周回駆動させることで移動路16を構成している。この移動路16に対する乗降部12(移動路16の進行方向前方(上階側)の床面及び後方(下階側)の床面)には、当該乗降部12に形成された開口部Sa(図2参照)、すなわち、床下空間Sを覆うように、乗降板構造Tが設けられている。なお、図1図2の場合、本実施形態の乗降板構造Tを複数枚(例えば、2枚)用いて開口部Saを覆う例を示している。別の実施形態では、大型の乗降板構造Tを用いて、1枚の乗降板構造Tで乗降部12の開口部Sa全体を覆うようにしてもよい。また、従来の乗降板(単純な金属板等)と乗降板構造Tとを併用してもよい。
【0010】
乗降部12の床下、すなわち、床下空間Sには、踏段14を周回駆動するための駆動機構Mが収容されている。なお、床下空間Sは、上階側から下階側まで連通している。例えば、図2に示される上階側の床下空間Sには、駆動機構Mの一部として、モータ、減速機、駆動側のスプロケット等が収容され、不図示の下階側の床下空間には、従動側のスプロケット等が収容されている。そして、駆動側のスプロケットと従動側のスプロケットとの間に掛け渡される駆動チェーンには複数の踏段14が連結されている。モータの駆動により駆動チェーンが周回駆動することで踏段14が移動状態となり、踏段14に乗る乗客や荷物を上階と下階との間で運搬する。
【0011】
この駆動機構Mを収容する床下空間S(機械室ともいう)は、建物の上下階に渡って設けられるトラス(構造フレーム)に固定される機械室フレームSFによって画成されている。そして、駆動機構M等は、機械室フレームSFやトラス等により支持及び固定されている。なお、乗降板構造Tは、乗降部12の部分で開口した開口部Saを覆う状態で、例えばボルト等で固定され、開口部Saを閉塞している。乗降板構造Tは、例えば、エスカレータ10のメンテナンス等の際で、エスカレータ10の運行が中止されている場合に取り除かれ、床下空間Sの一部が露出され、モータ等のメンテナンス作業等が実行可能になる。
【0012】
前述したように、屋外が濡れている場合、例えば降雨や降雪の場合、または、水溜まり等を乗客が通過してきた場合は、靴底が濡れたままである場合が多々ある。その結果、靴底が濡れた状態で、エスカレータ10に乗車する場合、乗降時に滑ってしまう場合がある。また、後続の乗客の滑りの原因となる雨水等を乗降部12に残してしまう場合がある。同様にエスカレータ10が屋外に設置されている場合には、降雨や降雪等により乗降部12が濡れてしまう場合がある。そこで、本実施形態の乗降板構造Tは、当該乗降板構造T自体が乗降部12に持ち込まれた液体を吸収し、雨水等の液体を乗降板構造Tの表面に残留させにくい構造を備える。乗降板としての強度を備えるとともに、雨水等の液体を吸収(保水)または表裏方向に通過可能な材質として、例えば珪藻土を用いた部材で乗降板構造Tを構成する。このような機能を実現するために、本実施形態の乗降板構造Tは、例えば、図3図4に示すようなベースプレート18と、図5に示すような珪藻土プレート20と、図6に示すようなカバープレート22と、を備える。なお、図7は、ベースプレート18、珪藻土プレート20、カバープレート22から構成される乗降板構造Tが組み立てられた状態を示す例示的かつ模式的な斜視図である。また、図8は、乗降板構造Tが組み立てられた状態を示す例示的かつ模式的な上面図であり、図9は、乗降板構造Tが組み立てられた状態を示す例示的かつ模式的な断面図(図8における矢印A-A断面図)である。
【0013】
図3図4に示されるように、ベースプレート18(乗降板枠)は、エスカレータ10の乗降部12に形成された開口部Sa(図2参照)を覆う部材である。ベースプレート18は、底部18aの四方を壁部18bで囲んで形成された凹部24を備える。ベースプレート18は、凹部24に珪藻土プレート20を載置し収容する収容部材として機能する。図3に示すベースプレート18は、エスカレータ10の幅方向が長辺で、移動路16の沿う方向が短辺となるような、例えば矩形形状である。また、ベースプレート18は、壁部18bの上端面で、珪藻土プレート20を覆う平面状のカバープレート22を支持する支持部材しても機能する。ベースプレート18は、珪藻土プレート20を表裏方向に通過した雨水等の液体を一時的に受ける受皿となるため、耐腐食性を備えることが望ましい。また、載置する珪藻土プレート20および支持するカバープレート22の重量および乗降板構造Tを通過(通行)する乗客や搬送物等の重量に耐え得る強度を備える必要がある。したがって、ベースプレート18は、例えば、ステンレス鋼や耐腐食処理が施された鋼板等で形成されることが望ましい。
【0014】
なお、ベースプレート18の底部18aには、珪藻土プレート20の保水容量を超えた過剰水分を乗降板構造T(ベースプレート18)の外部に排出する排出部として、例えば排出口18cを少なくとも一つ備える。図3図4の場合、底部18aの短辺に沿った縁部に複数の排出口18cが形成されている。排出口18cから排出される液体(雨水等)は、後述するが、エスカレータ10の駆動機構M等で余剰となったオイル(駆動チェーン等に供給されるオイル等)とともに、オイルパン等へ集められて、廃棄される。なお、排出口18cの形成数および形成位置は、適宜変更可能である。例えば、床下空間Sにおいて、雨水やオイルをオイルパンに導く液体流路(樋等)の形成位置等に応じて、排出口18cの形成数や形成位置は変更可能である。なお、図4に示されるように、底部18aの裏面側には、ベースプレート18(乗降板構造T)を乗降部12に装着する際に、機械室フレームSFに着座させるための脚部18dが、底部18aの例えば短辺方向沿って設けられている。
【0015】
珪藻土プレート20は、ベースプレート18の凹部24に載置され収容されるため、図5に示されるように、凹部24の形状に対応する、例えば矩形形状の部材である。珪藻土プレート20は、後述するように、堆積層から切り出されたり、焼結物として形成されたりするため、プレート状になった場合、曲げ荷重に弱い。そのため、珪藻土プレート20の底面側は、凹部24と実質的に密着するように扁平に加工されている。
【0016】
珪藻土プレート20を構成する珪藻土は、植物性プランクトン類の化石・珪藻殻の堆積物によって形成された地層から採取可能な多気孔質の物質で、無数の小さな穴が水分を吸収し、吸収容量以上の水分は排出(例えば、下面側に排出)できる。つまり、珪藻土プレート20の表面側には、水分(雨水等の液体)を残留させないようにすることができる。また、珪藻土プレート20は、大気の湿度に応じて、保水した水分を適宜放出することができる。したがって、例えば、大気の湿度が、珪藻土プレート20の内部湿度より低下した際には、保水していた水分を大気に放出して、自己乾燥が可能となる。したがって、長期間、珪藻土プレート20の内部に水分が保水されることが回避しやすく、例えば、カビ等の発生を抑制することができる。
【0017】
また、珪藻土プレート20の表面20aには、切削加工等により複数の凸部26が形成されている。凸部26は、図5に示されるように、例えば、露出領域と非露出領域とが交互に規則的に配列された格子配置(例えば市松模様の配置)とすることができる。図5の場合、一つの凸部26を、例えば、移動路16の進行(通行)する方向と直行する方向に平行に並べた複数(例えば2個)の小形凸部26aで構成する例を示している。珪藻土プレート20の表面20aに形成された凸部26の高さは、図9に示されるように、珪藻土プレート20の表面20a側にカバープレート22が装着された場合に、カバープレート22の表面22aに形成された露出穴28から所定量(例えば、5mm程度)突出するように設定されている。したがって、図8に示されるように、カバープレート22の表面22aに形成された露出穴28からは、珪藻土プレート20に一定の間隔で格子状に配置された凸部26が突出することになる。その結果、格子状に突出する凸部26は、移動路16、すなわち乗降板構造T上を通過(通行)する乗客の靴に対して滑り止めとして機能する。また、図5に示されるように、凸部26をさらに細かい複数の小形凸部26aで構成することにより、滑り止め効果をさらに向上させることができる。
【0018】
珪藻土プレート20の凸部26は、上述したように、直接乗客からの外力を受けることになるため、事前の試験等により容易に破損しない程度の強度が確保できるように大きさ(上面視した際の面積)と高さ(表面22aからの突出高さ)を決定することが望ましい。
【0019】
なお、珪藻土プレート20の凸部26は、上述したように破損し難い大きさに設定できるものの、乗客の靴底等との接触により摩耗する。したがって、凸部26による滑り止め効果を維持するためには、凸部26の摩耗程度(凸部26の突出量の低下)が所定の閾値を超えた場合には、凸部26が閾値以上突出する珪藻土プレート20と交換することが望ましい。この場合、珪藻土プレート20は、ベースプレート18とカバープレート22との間に挟持される状態で設置されるため、珪藻土プレート20は、カバープレート22を外すのみで容易に交換可能である。このように、珪藻土プレート20は、凸部26が摩耗した際や珪藻土プレート20や凸部26が破損した際には、容易に一括交換することができる。
【0020】
また、乗降部12(乗降板構造T)を通行(通過)する乗客の通過位置は、概ね同じである。例えば、移動路16において踏段14の左側に乗ろうとする乗客は、乗降部12の左側から乗り込む傾向がある。同様に、踏段14の右側に乗ろうとする乗客は、乗降部12の右側から乗り込む傾向がある。乗客量が多い場合、この傾向がさらに出やすい。したがって、珪藻土プレート20の凸部26の摩耗は乗込位置や乗客量に応じて偏りが生じることがある。そこで、乗降板構造Tを、図5に示されるように、複数(図5の場合8枚)の小形プレート20Aを配列した集合体として構成しておき、摩耗量の大きい小形プレート20Aと、摩耗量が小さい小形プレート20Aとの配置位置を入れ替るようにしてもよい。その結果、新たな乗降板構造Tと交換することなく、摩耗部分の小形プレート20Aの入れ替えを行うことで、乗客通過頻度の高い位置の小形プレート20Aの滑り止め効果をより長く維持することができるとともに、乗降板構造Tの全体としての利用期間(寿命)を長くすることが可能になる。また、摩耗の激しい小形プレート20Aは、単独で新規の小形プレート20Aと交換可能であるため、ランニングコストの低減に寄与できる。小形プレート20Aの配置数(乗降板構造Tの分割数)は適宜選択可能であり、例えば、2枚の小形プレート20Aで構成してもよいし、2枚以上で構成しても同様の効果を得ることができる。また、小形プレート20Aは、配列した際に全体として乗降板構造Tの形状が実現できればよく、例えば、矩形である必要はない。また、各小形プレート20Aを同じ形状とした場合、前述したように摩耗部分と非摩耗部分とで入れ替えが可能になり、有利であるが、必ずしも各小形プレート20Aが同じ形状である必要はない。
【0021】
なお、上述の例では、プレート状の珪藻土に切削加工を施して、凸部26を形成する例を示したが、粉末状の珪藻土を型で形状決めして焼結することで、凸部26を備える乗降板構造Tを形成してもよい。また別の例では、焼結により形成したプレートに切削加工を施し、凸部26を備える乗降板構造Tを形成してもよい。
【0022】
カバープレート22は、図6に示されるように、ベースプレート18に載置され収容された珪藻土プレート20の表面20aを覆う化粧板として機能するとともに、珪藻土プレート20の表面20aの少なくとも一部、具体的には、凸部26を露出させる、板状の部材である。カバープレート22は、例えば、ステンレス鋼や耐腐食処理が施された金属板等で構成されている。カバープレート22は、表面22aに、珪藻土プレート20の凸部26の形成位置に対応するとともに、凸部26の大きさに対応する複数の露出穴28が形成されている。露出穴28は、珪藻土プレート20の凸部26が小形凸部26aで構成されている場合、小形凸部26aに対応する小形露出穴28aで構成される。
【0023】
図6に示されるように構成されるカバープレート22と、図3に示されるように構成されるベースプレート18とで、珪藻土プレート20を支持する、図7に示すような挟持構造の乗降板構造Tを形成することで、金属等に比べて脆い珪藻土プレート20の保護を容易に行うことができる。なお、カバープレート22は、ベースプレート18に対して珪藻土プレート20を挟み保護できればよく、図9に示されるように、カバープレート22の露出穴28が形成されていない領域の裏面側と、珪藻土プレート20の非露出領域の上面とは密着していてもよいし、非密着としてもよい。なお、カバープレート22は、ベースプレート18に対してボルト等の締結手段(不図示)によって、珪藻土プレート20を挟持した姿勢で固定される。この場合、ベースプレート18を固定するボルトは、乗降板構造Tを乗降部12に固定するためにボルトとは異なるようにすることができる。その結果、組み立てられた乗降板構造Tは、一体構造化され、運搬等が容易であり、また運搬時や保管時において珪藻土プレート20の保護を行うことができる。また、図2に示されるように、床下空間Sを露出させる場合には、ベースプレート18、珪藻土プレート20、カバープレート22は、一体化された乗降板構造Tとして取り外し可能となるので、駆動機構M等のメンテナンス作業時にも、扱いが容易であるとともに、ベースプレート18およびカバープレート22によって珪藻土プレート20の保護が可能となり、珪藻土プレート20の破損回避を容易に行うことができる。
【0024】
なお、前述したように、凸部26の摩耗等により珪藻土プレート20の交換が必要になった場合は、乗降板構造Tは、例えば開口部Saを覆った状態のまま、カバープレート22のみを取り外し可能であり、珪藻土プレート20の交換作業を容易に行うことができる。また、乗降板構造Tを開口部Saから取り外し、他の場所(例えば、平坦な場所)に移動して、カバープレート22を取り外して、珪藻土プレート20の交換作業を行うこともできる。
【0025】
このように構成される乗降板構造Tを乗降部12に形成された開口部Saに装着した状態(開口部Saを覆った状態)を図10に示す。なお、図10は、乗降板構造Tの利用状態において、カバープレート22に持ち込まれた水分が凸部26(珪藻土プレート20)に吸収され、珪藻土プレート20で保水しきれない余剰水分が、ベースプレート18に形成された排出口18cから排出される様子を示す例示的かつ模式的な斜視図である。図10において、ベースプレート18に形成される排出口18cは、図3図4で示した位置と異なる位置に形成されている例が示されている。図10における排出口18cは、例えば、長手方向に壁部18bの一部に形成されている。
【0026】
図10に示されるように、乗降板構造Tの脚部18dは、建物の上下階に渡って設けられるトラスFに固定される機械室フレームSFに設置される。この状態で、乗降板構造Tは、図示を省略したボルト等の締結部材によって、機械室フレームSF等に固定されている。
【0027】
図10に示されるように、乗降板構造Tにおいて、カバープレート22から突出した凸部26(小形凸部26a)によって吸水された水分(雨水等)は、珪藻土プレート20の内部に保水され、その保水容量を超えた余剰水分が排出口18cから排出される。図10の場合、排出口18cの直下の位置に、排出口18cから排出される水分を受け取る排水ダクト30が配置されている。排水ダクト30は、例えば、金属板を曲げ加工した樋であり、図示しない排水トレイ(例えば、オイル溜めと共用されるオイルパン)に連通している。なお、排出口18cにホース等の誘導部材を接続し、水分の排出位置を調整または変更することもできる。この場合、床下空間Sにおける他の構造物との関係で、排出口18cの直下に排水ダクト30を配置できない場合でも、排出口18cから排出される余剰水分を排水ダクト30に導くことができる。また、他の実施形態では、排出口18cに接続したホース等の誘導部材を排水トレイやオイルパンまで延長し、直接排出するようにしてもよい。
【0028】
ベースプレート18から余剰水分を排出する場合、当該余剰水分が効率的に排出口18cに到達するように、排出口18cが底部18aの最下点になるように、例えば、底部18aを水平に対して傾けてもよい。なお、底部18aに余剰水分が溜まった場合でも、前述したように、外気の湿度が珪藻土プレート20の内部湿度より低くなると、珪藻土プレート20から余剰水分が大気に放出される。つまり、底部18aに溜まった余剰水分は、排出口18cから排出される一方、大気の湿度状態に応じて、逆に珪藻土プレート20によって吸い上げられ、大気に放出される。その結果、長時間、珪藻土プレート20が高い湿度状態となってしまうことが回避され、カビ等の発生が抑制できる。また、珪藻土プレート20の表面20aに持ち込まれた水分の吸水効果が低下してしまうことを抑制することができる。
【0029】
上述した実施形態では、カバープレート22の表面22aから突出する凸部26は、上面視で、矩形形状(長方形)で、格子状に配列された例を示したが、凸部26の上面視の形状は、適宜変更可能である。例えば、凸部26の上面視の形状を円形や三角形等にした場合でも同様の効果を得ることができる。また、凸部26は、全て同じ形状にする必要はなく、例えば、乗降板構造Tの中央部と、側方部とで異なる形状にしてもよいし、配置密度を変更してもよい。例えば、乗客が多く通過する部分の凸部26の配置密度を高くして、吸水効果を高めるようにしてもよい。また、凸部26の配列パターンを変更することで、凸部26で特定の意匠を形成してもよい。例えば、注意を喚起するメッセージや、商業メッセージ等を凸部26の配置態様や形状で表現してもよい。なお、水分を吸水した凸部26は、乾燥時と異なる色になりやすい。したがって、水分が吸収されていること、吸収により乗降部12が滑り難い状態であることを、乗客(利用者)に認識させ易くことができる。
【0030】
このように、本実施形態の乗降板構造Tによれば、ヒータや送風装置等を用いることなく、乗降部12に持ち込まれる水分(例えば雨水等)を珪藻土プレート20の吸水作用によって除去ができる。したがって、ランニングコストやメンテナンスコスト等の増加を抑制しつつ、乗降部12が滑る等の問題を軽減可能となる。なお、乗降部12の部分で、乗客の靴底に付着した水分は、珪藻土プレート20(凸部26)によって、実質的に吸収(除去)されるので、移動路16を移動する踏段14に水分が持ち込まれにくくなり、移動路16での滑り等の発生も軽減できる。また、踏段14が移動端で反転して、床下空間Sに進入する際にも床下空間Sに水分が持ち込まれることが抑制できる。
【0031】
上述した乗降板構造Tは、エスカレータ10に適用する場合を説明した。他の実施形態としては、乗客コンベアの他の形態、例えば移動歩道(所謂、動く歩道)に、上述した乗降板構造Tを適用することも可能で、同様の効果を得ることができる。また、移動路16の一部で踏段14が水平に移動したり、移動路16の途中で上りと下りが混在したりするよう乗客コンベアにも適用可能であり、同様効果を得ることができる。
【0032】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
10…エスカレータ、12…乗降部、14…踏段、16…移動路、18…ベースプレート、18a…底部、18b…壁部、18c…排出口、18d…脚部、20…珪藻土プレート、20A…小形プレート、20a、22a…表面、22…カバープレート、24…凹部、26…凸部、26a…小形凸部、28…露出穴、28a…小形露出穴、30…排水ダクト、M…駆動機構、T…乗降板構造。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10