(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】エスカレータ
(51)【国際特許分類】
B66B 29/00 20060101AFI20220114BHJP
B66B 31/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B66B29/00 Z
B66B31/00 Z
(21)【出願番号】P 2020019323
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2020-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇山 騰
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-199588(JP,A)
【文献】特開2018-043864(JP,A)
【文献】特開2015-182837(JP,A)
【文献】特開2000-177972(JP,A)
【文献】特開2000-016745(JP,A)
【文献】特開2013-067488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/00
B66B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラス内に設けた送風機と、
前記トラス内に設けて前記送風機に接続した送風ダクトと、
前記ステップ内に設けて前記送風ダクトから風を受ける風洞と、を備え、
前記風洞は隣り合う前記ステップに向けて風を吹き出すステップ側吹出口を有し、
前記ステップ側吹出口から吹き出した風は、隣合う
前記ステップ間から上方に向けて風を吹き出すエスカレータ。
【請求項2】
前記ステップとスカートガードとの間から上方に向けて風を吹き出す請求項1に記載のエスカレータ。
【請求項3】
前記風洞は、スカートガードに向けて風を吹き出すスカートガード側吹出口を有し、前記ステップと前記スカートガードとの間から上方に向けて風を吹き出す
請求項1に記載のエスカレータ。
【請求項4】
前記送風ダクトは、前記ステップが移動しているときに、隣合う
前記ステップのデッキ面どうしの段差が小さくなり始める位置から段差がなくなるまでの間に設けてある
請求項1に記載のエスカレータ。
【請求項5】
前記風洞は、前記ステップ側吹出口及び前記スカートガード側吹出口の少なくとも一方側ほど通風路の面積を狭めている
請求項3に記載のエスカレータ。
【請求項6】
前記ステップ側吹出口を有する
案内部材を有し、前記案内部材は前記ステップに固定してあると共に前記風洞に連通してある
請求項1に記載のエスカレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータに関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータのスカートガードからステップに向けて風を吹き出すことで、スカートガードとステップ間の摩擦抵抗を低減することが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、エスカレータでは、乗客のロングスカート、ドレスやコート等の足元まである衣類がステップ間等に巻き込まれるおそれがあった。
【0005】
そこで、乗降客の衣類が巻き込まれるのを防止できるエスカレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るエスカレータは、隣合うステップ間から上方に向けて風を吹き上げるエスカレータである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態にかかる下降エスカレータの概略構成を示す縦断面である。
【
図2】
図1に示すエスカレータの降り口付近の縦断面図である。
【
図4】
図1に示すエスカレータの降り口付近の風の流れを示す斜視図である。
【
図5】第2の実施形態にかかる昇りエスカレータの概略構成を示す縦断面である。
【
図6】
図5に示すエスカレータの降り口付近の縦断面図である。
【
図7】第3の実施形態にかかるエスカレータであって、隣合うステップの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下、実施形態に係るエスカレータ1について、添付図面を参照して説明するが、まず
図1~
図4を参照して第1の実施形態にかかるエスカレータについて説明する。
図1に示すように、第1の実施形態にかかるエスカレータ1は、下降エスカレータであり、多数のステップ3と、手摺ベルト5とを互い同期させて駆動している。
多数のステップ3はトラス6内に設けた無端チェーン7により相互に連結されており、駆動スプロケット9と従動スプロケット11とにより循環移動する構成としてある。
【0009】
トラス6内には、送風機13と、送風機13に接続された送風ダクト15とが設けてあり、各ステップ3には送風ダクト15から風を受ける風洞17(
図2参照)が設けてある。
この第1の実施形態では、送風機13及び送風ダクト15はエスカレータ1の降り口側(下側)に設けてあり、
図2に示すように、送風ダクト15は、隣合うステップ3のデッキ面4aどうしの段差Hが小さくなり始めてから段差がなくなる位置までの間に延出している。
また、送風ダクト15は、エスカレータ1の左右に間隔をあけて2つ配置されている(
図3参照)。各送風ダクト15はそれぞれ一つの送風機13に対して分岐されて接続されているが、各送風ダクト15に送風機13を設けても良い。
送風ダクト15には、ダクト側面の上側に、複数の送風孔19が間隔をあけて形成されており、上方に向けて風を送風している。
【0010】
各ステップ3には、ステップ3のデッキ面4aの下のステップ内空間2に、風洞17が設けられている。この風洞17はステップ3の左右方向全体に亘って設けられている。
風洞17は、送風ダクト15の送風孔19から送風された風を受けると共に受けた風を圧縮して吹き出すものである。
図3に示すように、風洞17は、袋状の風洞本体17aを有し、風洞本体17aには、その上部21aの側面にステップ側吹出口17bとスカートガード側吹出口17cが形成されており、下面21bには、送風ダクト15から空気を取り込む風取込口23が形成されている。
【0011】
図2に示すように、ステップ側吹出口17bは、隣合うステップ3a(3)、3b(3)において下側のステップ3a(3)が上側のステップ3b(3)に向けて風を吹き出す位置、即ちエスカレータ1の傾斜の上側に形成されている。尚、本明細書では、隣合うステップ3について、上側のステップと下側のステップを分けて説明する場合には、下側ステップに3aの符号を付し、上側ステップに3bの符号を付して説明する。
図3に示すように、ステップ側吹出口17bが形成されているステップ側吹出部24と下面21bとの間には、下面21bから上方に向けて風洞本体17a内の送風通路を狭める側面視円弧状の通路狭小壁26が形成されている。
スカートガード側吹出口17cは、左右の各スカートガード25(
図4参照)に向けて風を吹き出すものであり、風洞本体17aにおいて、その上部21aの左右に形成されている。
各ステップ側吹出口17b及びスカートガード側吹出口17cは、それぞれ風洞本体17aの上部側面に所定間隔をあけて並んで形成されている。
【0012】
風取込口23は、風洞本体17aの下面21bに形成されている。風取込口23は左右の送風ダクト15に対応して2つ設けてあり、風取込口23は各送風ダクト15の送風孔19より大きな面積であり、送風ダクト15に沿って長い長方形形状に形成されている。
【0013】
次に、本実施形態にかかるエスカレータ1の作用を説明する。
図1に示すように、エスカレータ1において、ステップ3が下降してくると、傾斜に沿って移動している途中では、隣合うステップ3a(3)、3b(3)のデッキ面4a間の段さH(
図2参照)は一定である。
図2に示すように、降り口付近では、隣合うステップ3a(3)、3b(3)のデッキ面4a間の段差Hが次第には小さくなり始める。
一方、送風機13はエスカレータ1の駆動と同時に常時駆動しており、送風ダクト15から風を吹き出している。
【0014】
デッキ面4a間の段さHが次第には小さくなり始める位置から段差Hがなくなるまで、換言すれば、下から3段目又は4段目のステップ3の位置からコム27の位置までの間では、送風ダクト15の送風孔19から送風された空気は、
図3に示すように、風洞17の下面21bに位置する風取込口23から風洞本体17a内に取り込まれ、風洞本体17aの上部21aに向けて吹き込まれる。
風洞本体17aでは、上部21a側ほど通路狭小壁26により空気通路の断面積を小さくしているので、上部21a側の風が圧縮されつつ、上部21aの側面に形成されたステップ側吹出口17b及びスカートガード側吹出口17cから吹き出される。
【0015】
図2に示すように、下段のステップ3aのステップ側吹出口17bから吹き出された風は、上段のステップ3bの前側壁4bに当てられた後、前側壁4bに沿って上昇し、下段のステップ3a(3)と上段のステップ3b(3)との間から吹上風K1(
図4参照)として上方に吹き出される。
一方、スカートガード側吹出口17cから左右のスカートガード25(
図4参照)に向けて吹き出された風はスカートガード25(
図4参照)の側面に突き当てられた後、スカートガード25の側面に沿って吹上風K2(
図4参照)として上方に吹き出される。
このようにして、
図4に示すように、下降エスカレータの降り口付近では、隣合うステップ3a(3)、3b(3)間からの吹上風K1及び、ステップ3とスカートガード25との間からの吹上風K2が吹き出される。
【0016】
第1の実施形態にかかるエスカレータ1の効果について説明する。
図4に示すように、本実施形態によれば、隣合うステップ3a(3)、3b(3)間からの吹上風K1が吹き出されるので、乗客が足元付近まで長いスカートやコート等の衣類を着用している場合、これらの裾等が吹き上げられるので、ステップ3a、3b間に衣類が巻き込まれるのを防止できる。
図1に示すように、降り口付近に及び送風ダクト15を設ければ済むので、エスカレータ1の傾斜領域全体に亘って設ける場合に比較して、送風ダクト15の設置領域を少なくできると共に、送風機13の出力を最小限度に抑えることができる。
また、ステップ3とスカートガード25との間からも吹上風K2が吹き出されるので、ステップ3とスカートガード25間に対しても衣類が巻き込まれることも防止できる。
【0017】
特に、下降するエスカレータ1では、降り口付近では次第に上下のステップ3a、3bのデッキ面4a間の段差Hが次第に小さくなるので、ステップ間に衣類の裾が噛みやすいがかかる衣類の噛みを有効に防止できる。
また、降り口付近でステップ3a、3b間から風が吹き出すことで、風が乗客の足元に当たるので、降り口付近で乗客に足元の注意を促すことができる。
風洞17は、送風ダクト15からの風を受ける風洞本体17aの上部にステップ側吹出口17bとスカートガード側吹出口17cを形成することで、ステップ間からの吹上風K1とステップとスカートガード間からの吹上風K2を得ることができるから、構成が簡易である。
風洞17は、ステップ3のステップ内空間2に設けているので場所をとらず、コンパクトに収めることができる。
風洞本体17aは、ステップ側吹出口17bとスカートガード側吹出口17cが形成されている上部21aの通風路断面が次第に小さくなるように通路狭小壁26を設けているので、風を圧縮して強くした風を吹き出すことができる。これにより、送風機13の出力を低減し、エネルギーの削減を図ることができる。
【0018】
以下に、本発明の他の実施形態を説明するが、以下に説明する実施形態において、上述した第1の実施形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では第1の実施形態と主に異なる点を説明する。
【0019】
(第2の実施形態)
図5及び
図6を参照して、第2の実施形態について説明する。
図5に示すように、第2の実施形態では、エスカレータ1は、昇りエスカレータであり、降り口付近に送風機13と送風ダクト15が設けてあることが上述した第1の実施形態と異なっている。
その他の構成は、上述した第1の実施形態と同様である。
図6に示すように、この第2の実施形態でも、ステップ3は、隣合うステップ3a(3)、3b(3)の段差Hが小さくなり始める位置から段差がなくなるコム27の位置まで、送風ダクト15からステップ3のステップ内空間2に設けた風洞本体17aに風が送られて、
図3に示すように、風洞本体17aのステップ側吹出口17bとスカートガード側吹出口17cから風が吹き出されることで、ステップ3、3間からの吹上風K1とステップ3とスカートガード25間からの吹上風K2(
図4参照)を得ることができる。
この第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0020】
(第3の実施形態)
図7及び
図8に第3の実施形態を示す。
この第3の実施形態では、第1の実施形態において、
図7に示すように、風洞17ではデッキ面4aの下面に風洞本体17aの風を案内する案内部材35を取り付け、案内部材35の案内片35a、35aを風洞本体17aに挿入してある。
ステップ側吹出口17bは案内部材35に形成してあり、案内部材35を
図8に示す風洞本体17aに形成した上開口37に挿入して、案内部材35の案内片35a、35a間からステップ側吹出口17bに風を案内して吹き出している。
風洞本体17aには、ステップ側吹出口17bを形成しないで済むので、風洞本体17aの構成を簡易にできる。
なお、案内部材35はスカートガード側吹出口17cを形成し、案内部材35の案内片35a、35a間からスカートガード側吹出口17cに風を案内してもよい。
その他の構成は、第1の実施形態の形態と同様である。
この第3の実施形態でも上述した第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0021】
上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、上述の第1及び第2の実施形態において、送風ダクト15は、エスカレータ1の傾斜の中間位置まで設けても良く、その設置長さは限定されない。
また、上述の第3の実施形態の風洞17の構成を第2の実施形態に適用しても良い。
【符号の説明】
【0022】
1…エスカレータ、3、3a、3b…ステップ、13…送風機、15…送風ダクト、17…風洞、17a…本体、17b…スカートガード側吹出口、25…スカートガード、35…案内部材、H…段差、K1…ステップ間からの吹上風、K2…ステップとスカートガード間からの吹上風。