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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】エレベータ群管理システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20220114BHJP
   B66B 1/18 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B1/18 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020090743
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021187559
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2020-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 径
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024881(JP,A)
【文献】特開2011-162272(JP,A)
【文献】特開2003-054847(JP,A)
【文献】実開昭55-176268(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の乗りかごを含むエレベータ群の乗場に設置され、行先呼びが登録される登録部と、
前記登録された行先呼びと係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する推定部と、
前記推定された利用人数に応じて、前記複数の乗りかごのうちから前記登録された行先呼びに応答させる乗りかごを割り当てる制御部と、
乗りかごの利用人数を検出する検出部と、
前記推定された利用人数の前記検出された利用人数からの乖離に応じて、行先呼びを登録していない利用者が他の利用者の行先呼びに便乗して乗りかごへ乗る現象である便乗乗車の属性のパターン、又は、行先呼びを登録した利用者が乗りかごへ乗らない現象である無駄呼びの属性のパターンを抽出する抽出部と、
前記登録された行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンに該当するか否か判定する判定部と、
を備え、
前記登録された行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンに該当する場合、前記推定部は、前記係数の値を基準値から変更し、前記登録された行先呼びの個数に前記変更された係数を乗算して、乗りかごの利用人数を推定する
エレベータ群管理システム。
【請求項2】
前記登録された行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターンに該当する場合、前記推定部は、前記登録された行先呼びと利用人数が増加するように変更された係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する
請求項1に記載のエレベータ群管理システム。
【請求項3】
前記登録された行先呼びの属性のパターンが無駄呼びの属性のパターンに該当する場合、前記推定部は、前記登録された行先呼びと利用人数が減少するように変更された係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する
請求項1に記載のエレベータ群管理システム。
【請求項4】
前記登録された行先呼びの属性のパターンが無駄呼びの属性のパターンに該当する場合、前記制御部は、前記割り当てを特定の乗りかごに集中させる
請求項1に記載のエレベータ群管理システム。
【請求項5】
便乗乗車の属性のパターンは、便乗乗車の傾向を示す複数の属性の組み合わせを含み、
無駄呼びの属性のパターンは、無駄呼びの傾向を示す複数の属性の組み合わせを含む
請求項1から4のいずれか1項に記載のエレベータ群管理システム。
【請求項6】
前記属性は、呼びの出発階、呼びの行先階、呼びの発生日時、乗りかごの混雑状況、乗りかご及び乗場を含む物件の識別情報、前記登録部からの呼びの発生間隔、前記物件を含む地域の識別情報、及び乗りかごの利用者の識別情報の少なくとも1つを含む
請求項1から5のいずれか1項に記載のエレベータ群管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、エレベータ群管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の乗りかごを含むエレベータ群を管理するエレベータ群管理システムでは、管理の方式として、DCS(Destination Control System)を採用することがある。DCSでは、直接行先階を指定可能なHDC(Hall Destination Controller)が乗場に設けられ、乗場にて利用者がHDCに行先階を登録する。エレベータ群管理システムは、HDCに登録された行先呼びに応じて、乗りかごの利用人数を推定する。エレベータ群管理システムは、推定された利用人数に応じて、複数の乗りかごのうち行先呼びに応答させる乗りかごを割り当てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/129011号
【文献】国際公開第2014/171296号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、行先呼びを登録していない利用者が他の利用者の行先呼びに便乗して乗りかごへ乗る便乗乗車が発生すると、予想より多い人数がかごに乗車してしまい、他階でかごを待つ利用者が乗車できない積み残しが発生する可能性がある。また、行先呼びを登録した利用者が乗りかごへ乗らない無駄呼びが発生すると、乗りかごを無駄呼びに応答させてしまい、予想より少ない人数がかごに乗車することになるため、運行効率が低下する可能性がある。
【0005】
一つの実施形態は、乗りかごの利用人数の推定精度を向上できるエレベータ群管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態によれば、登録部と推定部と制御部と検出部と抽出部と判定部とを有するエレベータ群管理システムが提供される。登録部は、複数の乗りかごを含むエレベータ群の乗場に設置される。登録部は、行先呼びが登録される。推定部は、登録された行先呼びと係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する。制御部は、推定された利用人数に応じて、複数の乗りかごのうちから登録された行先呼びに応答させる乗りかごを割り当てる。検出部は、乗りかごの利用人数を検出する。抽出部は、推定された利用人数の検出された利用人数からの乖離に応じて、便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンを抽出する。便乗乗車は、行先呼びを登録していない利用者が他の利用者の行先呼びに便乗して乗りかごへ乗る現象である。無駄呼びは、行先呼びを登録した利用者が乗りかごへ乗らない現象である。判定部は、登録された行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンに該当するか否か判定する。登録された行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンに該当する場合、推定部は、係数の値を基準値から変更し、登録された行先呼びの個数に変更された係数を乗算して、乗りかごの利用人数を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態にかかるエレベータ群管理システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施形態における乗場及び乗りかごの構成を示す図である。
図3図3は、実施形態における便乗乗車の属性パターン又は無駄呼びの属性パターンを含むルールを示す図である。
図4図4は、実施形態における利用人数の推定に用いる係数を示す図である。
図5図5は、実施形態にかかるエレベータ群管理システムの動作を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態の第1の変形例にかかるエレベータ群管理システムの構成を示す図である。
図7図7は、実施形態の第2の変形例における乗場及び乗りかごの構成を示す図である。
図8図8は、実施形態の第3の変形例における便乗乗車の予想が外れた場合の動作を示す図である。
図9図9は、実施形態の第4の変形例における無駄呼びの予想が外れた場合の動作を示す図である。
図10図10は、実施形態の第5の変形例における利用人数の推定に用いる係数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるエレベータ群管理システムを詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施形態)
実施形態にかかるエレベータ群管理システムは、複数の乗りかごを含むエレベータ群を管理する。エレベータ群管理システムでは、エレベータ群の管理の方式として、DCS(Destination Control System)を採用する。DCSでは、直接行先階を指定可能なHDC(Hall Destination Controller)が乗場に設けられ、乗場にて利用者がHDCに行先階を登録する。DCSでは、エレベータ利用者全員がエレベータ乗車前に「出発階―行先階」の組の行先呼びをHDCに登録する想定である。例えば、エレベータ群管理システムは、次の数式1、数式2により、乗りかごの乗車人数・降車人数を推定することがある。
(行先呼び応答時の乗車人数)=(登録された行先呼びの出発階個数)・・・数式1
(行先呼び応答時の降車人数)=(登録された行先呼びの行先階個数)・・・数式2
【0010】
エレベータ群管理システムは、数式1、数式2で推定された乗車人数・降車人数に応じて、複数の乗りかごのうち行先呼びに応答させる乗りかごを割り当てる。DCSでは、運行中の各乗りかご内の乗車人数、各階の乗車人数・降車人数が計算できる想定である。
【0011】
ただし、実際には、呼び登録をせずに便乗乗車する人や、誤操作やいたずらで無駄呼びの登録をする人がいると、乗りかご内の乗車人数・降車人数が推定と違ってしまうことがある。便乗乗車とは、行先呼びを登録していない利用者が他の利用者の行先呼びに便乗して乗りかごへ乗る現象である。無駄呼びは、行先呼びを登録した利用者が乗りかごへ乗らない現象である。
【0012】
例えば、呼び登録の個数から乗車人数・降車人数を推定し乗りかごの割当制御をするため、便乗乗車が発生すると、予想より多い人数がかごに乗車してしまい、他階でかごを待つ利用者が乗車できない積み残しが発生する可能性がある。また、呼び登録の個数から乗車人数・降車人数を推定し乗りかごの割当制御をするため、無駄呼びが発生すると、乗りかごを無駄呼びに応答させてしまい、予想より少ない人数がかごに乗車することになるため、運行効率が低下する可能性がある。
【0013】
そこで、本実施形態では、エレベータ群管理システムにおいて、便乗乗車又は無駄呼びの属性のパターンを求めておき、登録された行先呼びの属性のパターンがそれらの属性のパターンに該当するときに、便乗乗車又は無駄呼びに対応して変更された係数で利用人数を推定することで、乗りかごの利用人数の推定精度の向上を目指す。
【0014】
具体的には、エレベータ群管理システムは、登録された行先呼びと係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する。例えば、エレベータ群管理システムは、登録された行先呼びの個数に基準値の係数を乗算して乗りかごの利用人数を推定する。エレベータ群管理システムは、推定された利用人数に応じて、複数の乗りかごのうち登録された行先呼びに応答させる乗りかごを割り当てる。エレベータ群管理システムは、乗りかごが着床し利用者が乗り込んだら、乗りかごの利用人数を検出する。エレベータ群管理システムは、推定された利用人数の検出された利用人数からの乖離に応じて、便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンを抽出する。すなわち、エレベータ群管理システムは、行先呼びの属性を取得するととともに、推定された利用人数の実際の利用人数からの乖離に応じて、便乗乗車又は無駄呼びが発生したか否かを判断する。エレベータ群管理システムは、便乗乗車が発生した場合、その行先呼びの1以上の属性の組み合わせを便乗乗車の属性のパターンとして抽出し、無駄呼びが発生した場合、その行先呼びの1以上の属性の組み合わせを無駄呼びの属性のパターンとして抽出する。そして、エレベータ群管理システムは、行先呼びが登録された際に、行先呼びの属性を取得し、行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンに該当するか否か判定する。エレベータ群管理システムは、行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターンに該当する場合、登録された行先呼びと便乗乗車に対応して変更された係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する。例えば、エレベータ群管理システムは、利用人数が増加するように基準値から変更された係数を行先呼びの個数に乗算して乗りかごの利用人数を推定する。また、エレベータ群管理システムは、行先呼びの属性のパターンが無駄呼びの属性のパターンに該当する場合、登録された行先呼びと無駄呼びに対応して変更された係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する。例えば、エレベータ群管理システムは、利用人数が減少するように基準値から変更された係数を行先呼びの個数に乗算して乗りかごの利用人数を推定する。これにより、便乗乗車又は無駄呼びが発生したと予想できる場合に、乗りかごの利用人数の推定値を実際の利用人数に近づけることができ、乗りかごの利用人数の推定精度を向上できる。
【0015】
より具体的には、エレベータ群管理システム1は、図1に示すように構成され得る。図1は、エレベータ群管理システム1の構成を示す図である。
【0016】
エレベータ群管理システム1は、データセンター20及び複数のDCS制御装置10-A~10-Bを有する。データセンター20は、無線通信回線及び/又は有線通信回線を介して、複数のDCS制御装置10-A~10-Bと通信可能に接続され、各DCS制御装置10から情報を受信したり、各DCS制御装置10へ情報を送信したりする。複数のDCS制御装置10-A~10-Bは、複数の物件BD-A~BD-Bに対応する。各DCS制御装置10は、対応する物件BDに設けられている。これにより、データセンター20は、複数のDCS制御装置10を介して、複数の物件BDを統括的に管理することができる。
なお、データセンター20は、本実施形態で例示されるデータセンターに限定されず、例えば複数の記憶装置と計算機能とを有する任意の装置が使用可能である。複数の記憶装置は、複数のデータベースとして機能するものであれば使用可能である。
また、データベースとしての記憶装置の設置場所は、データセンター内に限定されず、例えばDCS制御装置10内であってもよい。
【0017】
例えば、各DCS制御装置10は、行先呼びに関する情報(行先階、登録階、登録時間、未応答時間、かご乗車人数、かご荷重、時間帯毎の呼び発生頻度など)、および物件IDをデータセンター20に送付する。データセンター20では、複数の物件から集まった行先呼びの情報と、物件IDに紐づくあらかじめ登録された物件情報(基準階、階床・台数構成、所在地、営業時問、入居テナント情報)の各情報から呼び登録個数に対してかご乗車人数が一定以上多いケース(便乗乗車発生)、および呼び登録個数に対してかご乗車人数が一定以上少ないケース(無駄呼び発生)を抽出し、これらのケースに一定比率以上の割合で現れる共通の属性パターンを抽出し、便乗乗車・無駄呼びの発生ルールを作成する。データセンター20は、このルールを各DCS制御装置10に送信する。各DCS制御装置10は、発生ルールに応じて便乗乗車を推定した場合には、推定利用人数を増加させる。各DCS制御装置10は、発生ルールに応じて無駄呼びを推定した場合には、推定利用人数の減少させる、また行先呼びを複数かごでなく敢えて特定のかごに集中させ、無駄呼び応答による群効率低下を防ぐ。すなわち、エレベータ群管理システム1では、複数の物件における、行先呼び登録情報とかご利用人数データとに応じて、便乗乗車・無駄呼びが発生するパターンを学習により発見し、利用人数の推定値を実際の利用人数に近づけるようにする。
【0018】
データセンター20は、受信部21、呼び情報データベース(呼び情報DB)22、物件情報データベース(物件情報DB)23、検出情報データベース(検出情報DB)24、パターン抽出部25、ルール抽出部26、及び送信部27を有する。
【0019】
各物件BDは、例えば、ビル等の建物であり、図2に示すように、複数階(例えば、1F~6F)の乗場5-1~5-6が設けられ、複数台(例えば、8台)の乗りかご2-1~2-8が設置されている。図2は、各物件BDにおける乗場5及び乗りかご2の構成を示す図である。
【0020】
各階の乗場5-1~5-6にはHDC(Hall Destination Controller)4-1~4-6が設けられ、乗場5にて利用者がHDC4に行先階を登録することができる。DCS制御装置10は、複数階のHDC4-1~4-6が接続され、行先呼びが登録されたHDC4から行先呼びの情報を取得可能である。
【0021】
図1に示す各乗りかご2-1~2-8が単体制御部(単体C/P)3-1~3-8を介してDCS制御装置10に接続され、DCS制御装置10は、単体制御部3-1~3-8を介して各乗りかご2-1~2-8を監視及び制御することができる。
【0022】
例えば、各乗りかご2-1~2-8には操作盤2a、荷重検出器2b、カメラ2cが設けられ、乗りかご2内で利用者が操作盤2aに行先呼びを登録でき、荷重検出器2bが乗りかご2内の荷重を検出でき、カメラ2cが乗りかご2内の様子を撮像できる。単体制御部3は、操作盤2aに行先呼びを登録された際に、登録された行先呼びの情報を取得してDCS制御装置10へ供給する。これに応じて、DCS制御装置10は、乗りかご2内の行先呼びに応じて、駆動機構(図示せず)を介して、乗りかご2-1~2-8を複数階の乗場5の間を昇降移動可能である。
【0023】
単体制御部3は、DCS制御装置10からの制御に応じて、又は、自律的に、荷重検出器2bで検出された乗りかご2内の荷重の情報を取得してDCS制御装置10へ供給する。単体制御部3は、DCS制御装置10からの制御に応じて、又は、自律的に、カメラ2cで撮像された乗りかご2内の画像の情報を取得してDCS制御装置10へ供給する。
【0024】
各DCS制御装置10は、推定部11、制御部12、検出部13、判定部14、送信部15、及び受信部16を有する。
【0025】
制御部12は、行先呼びが登録されたHDC4から行先呼びの情報を取得すると、登録された行先呼びの情報を、推定部11へ供給する。また、制御部12は、行先呼びの情報を物件IDとともに、送信部15を介してデータセンター20へ送信する。行先呼びの情報は、行先階、登録階、登録時間、未応答時間、かご乗車人数、かご荷重、時間帯毎の呼び発生頻度などの情報を含む。データセンター20では、受信部21は、行先呼びの情報及び物件IDを受信すると、行先呼びの情報を物件IDに関連付けて呼び情報データベース22へ追加的に格納する。呼び情報データベース22は、物件IDを用いて物件情報データベース23から物件情報を取得し、呼び情報データベース22に格納された行先呼びの情報に物件情報をさらに関連付ける。物件情報は、基準階、階床・台数構成、所在地、営業時間、入居テナントなどの情報を含む。
【0026】
推定部11は、登録された行先呼びと係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する。例えば、推定部11は、次の数式3により、乗りかごの乗車人数を推定し、次の数式4により、乗りかごの降車人数を推定する。
(乗りかごの推定乗車人数)=(登録された行先呼びの出発階個数)×(係数)・・・数式3
(乗りかごの推定降車人数)=(登録された行先呼びの行先階個数)×(係数)・・・数式4
【0027】
数式3、数式4において、推定部11は、通常時であれば、係数として基準値(例えば、1)を用いる。推定部11は、推定乗車人数及び推定降車人数の情報を制御部12へ供給する。
【0028】
制御部12は、推定乗車人数及び推定降車人数の情報に応じて、複数の乗りかご2-1~2-8のうち登録された行先呼びに応答させる乗りかご2を割り当てる。制御部12は、各乗りかご2-1~2-8の現在の乗車人数を把握しており、出発階で推定乗車人数を加算したり行先階で推定降車人数を減算したりして、運行時の乗車人数が満員以下に維持される乗りかご2を特定し、特定された乗りかご2を行先呼びに応答させる乗りかご2として割り当てる。
【0029】
検出部13は、乗りかご2が着床し利用者が乗り込んだら、乗りかご2の乗車人数及び降車人数を検出する。例えば、検出部13は、荷重検出器2bで検出された乗りかご2内の荷重の情報を取得し、乗りかご2内の荷重を平均的な1人当たりの体重で除算することなどにより、乗りかご2内の乗車人数及び降車人数をそれぞれ検出可能である。あるいは、検出部13は、カメラ2cで撮像された乗りかご2内の画像の情報を取得し、乗りかご2内の画像に対して人間のテンプレート画像とのマッチングを行うことなどにより、乗りかご2内の乗車人数及び降車人数をそれぞれ検出可能である。検出部13は、検出された乗車人数(検出乗車人数)及び検出された降車人数(検出降車人数)を制御部12へ供給する。
【0030】
制御部12は、検出部13から検出乗車人数及び検出降車人数の情報を取得すると、検出乗車人数及び検出降車人数の情報を物件IDとともに、送信部15を介してデータセンター20へ送信する。検出乗車人数及び検出降車人数の情報は、検出乗車人数、検出降車人数、DCS制御装置10の識別情報などを含む。データセンター20では、受信部21は、検出乗車人数及び検出降車人数の情報、及び物件IDを受信すると、検出乗車人数及び検出降車人数の情報を物件IDに関連付けて検出情報データベース24へ追加的に格納する。
【0031】
データセンター20において、パターン抽出部25は、呼び情報データベース22を参照し、物件IDごとに、登録された行先呼びの出発階個数を求め、数式3により、乗りかごの推定乗車人数を求める。パターン抽出部25は、呼び情報データベース22を参照し、物件IDごとに、登録された行先呼びの行先階個数を求め、数式4により、乗りかごの推定降車人数を求める。また、パターン抽出部25は、検出情報データベース24を参照し、物件IDごとに、検出乗車人数及び検出降車人数を取得する。パターン抽出部25は、物件IDごとに、推定乗車人数の検出乗車人数からの乖離と推定降車人数の検出降車人数からの乖離とに応じて、便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンを抽出する。
【0032】
パターン抽出部25は、推定乗車人数に対して検出乗車人数が多く、その超過人数(=「推定乗車人数」-「検出乗車人数」)が超過閾値(例えば、+1人)以上である場合に、便乗乗車ありと判断できる。また、パターン抽出部25は、推定降車人数に対して検出降車人数が多く、その超過人数が超過閾値(例えば、+1人)以上である場合に、便乗乗車ありと判断できる。
【0033】
例えば、図2に示す物件(建物)の1Fにて、「1F→4F」、「1F→5F」、「1F→6F」の行先呼びが登録されて、乗りかご2-1が1Fから出発する3個の呼びに対して予約応答されたとする。このとき、乗車人数について、パターン抽出部25は、乗りかご2-1が1Fで応答した時、「3人」の乗車を検出したら便乗乗車無しと判断し、乗りかご2-1が1Fで応答した時、「6人」の乗車を検出したら便乗乗車有りと判断する。また、降車人数について、パターン抽出部25は、6Fを行先階とする1個の呼びに対して、乗りかご2-1が6Fに到着したとき、「1人」の降車を検出したら6Fを行先とする呼びに便乗乗車無しと判断し、乗りかご2-1が6Fに到着した時、「3人」の降車を検出したら6Fを行先とする呼びに便乗乗車有りと判断する。すなわち、パターン抽出部25は、推定乗車人数の実際の乗車人数からの乖離と推定降車人数の実際の降車人数からの乖離とを併用することで「**F→**Fへの行先呼び」で便乗乗車が発生したと推定する。
【0034】
なお、便乗乗車ありと判断するための乖離の基準は、超過人数が超過閾値以上であることである代わりに、(推定乗車人数)/(検出乗車人数)<α(0より大きく1より小さい定数)であってもよく、(推定降車人数)/(検出降車人数)<β(0より大きく1より小さい定数)であってもよい。
【0035】
図1に示すパターン抽出部25は、推定乗車人数に対して検出乗車人数が0または少なく、その不足人数(=「推定乗車人数」-「検出乗車人数」)が不足閾値(例えば、-1人)以下である場合に、無駄呼びありと判断できる。また、パターン抽出部25は、推定降車人数に対して検出降車人数が0または少なく、その不足人数が不足閾値(例えば、-1人)以下である場合に、無駄呼びありと判断できる。
【0036】
例えば、図2に示す物件(建物)の1Fにて、「1F→4F」、「1F→5F」、「1F→6F」の行先呼びが登録されて、乗りかご2-1が1Fから出発する3個の呼びに対して予約応答されたとする。このとき、乗車人数について、パターン抽出部25は、乗りかご2-1が1Fで応答した時、「3人」の乗車を検出したら無駄呼び無しと判断し、乗りかご2-1が1Fで応答した時、「1人」の乗車を検出したら無駄呼び有りと判断する。また、降車人数について、パターン抽出部25は、4Fを行先階とする1個の呼びに対して、乗りかご2-1が4Fに到着したとき、「1人」の降車を検出したら4Fを行先とする呼びに無駄呼び無しと判断し、乗りかご2-1が4Fに到着した時、「0人」の降車を検出したら4Fを行先とする呼びに無駄呼び有りと判断する。同様に、パターン抽出部25は、「1F→4F」、「1F→5F」、「1F→6F」の行先呼びが登録されて、乗りかご2-1が「5F」で降車し「4F」「6F」で降車しなければ、「1F→4F」「1F→6F」の呼びは無駄呼びと判断する。すなわち、パターン抽出部25は、推定乗車人数の実際の乗車人数からの乖離と推定降車人数の実際の降車人数からの乖離とを併用することで「**F→**Fへの行先呼び」で無駄呼びが発生したと推定する。
【0037】
なお、無駄呼びありと判断するための乖離の基準は、不足人数が不足閾値以下であることである代わりに、(推定乗車人数)/(検出乗車人数)>γ(1より大きい定数)であってもよく、(推定降車人数)/(検出降車人数)>δ(1より大きい定数)であってもよい。
【0038】
パターン抽出部25は、便乗乗車ありと判断した場合、その行先呼びの情報を便乗乗車の属性のパターンとしてルール抽出部26へ供給する。パターン抽出部25は、無駄呼びありと判断した場合、その行先呼びの情報を無駄呼びの属性のパターンとしてルール抽出部26へ供給する。
【0039】
ルール抽出部26は、パターン抽出部25で抽出された便乗乗車の属性のパターン及び無駄呼びの属性のパターンに応じて、便乗乗車又は無駄呼びの発生の予想に用いるルールを生成する。
【0040】
例えば、物件(ビル)の各フロアの入居者ごと、物件(ビル)ごと、その所在する地方ごとに、利用者によるHDC4の使い方の傾向がある程度分かれると想定される。また、乗りかご2の混雑状況(混雑・閑散)によっても、HDC4の使い方や便乗乗車・無駄呼びの発生率が変わるものと想定される。便乗乗車・無駄呼びの発生率に影響する属性は、「出発階→行先階」・「呼び発生日時」・「エレベータ利用時の混雑状況」・「ビル」・「同一の登録装置からの呼びの発生間隔」・「地域」・「利用者の個人ID」などが考えられる。
【0041】
ルール抽出部26は、便乗乗車の属性のパターンを所定数以上の行先呼びについて集めて、それらに共通する1以上の属性の組み合わせを便乗乗車の属性パターンとしてルールに含める。ルール抽出部26は、無駄呼びの属性のパターンを所定数以上の行先呼びについて集めて、それらに共通する1以上の属性の組み合わせを無駄呼びの属性パターンとしてルールに含める。
【0042】
ルールは、便乗乗車又は無駄呼びの発生を予想するために用いられ、1以上の便乗乗車の属性パターンと1以上の無駄呼びの属性パターンとを含み得る。ルールは、図3に示すように構成され得る。図3は、便乗乗車の属性パターン又は無駄呼びの属性パターンを含むルールを示す図である。ルールは、便乗乗車又は無駄呼びの現象を識別するための情報と属性パターンを識別するための情報と1以上の属性の組み合わせの情報とが対応付けられている。
【0043】
例えば、「ビルA」(物件A)で「6F」を行先とする場合に便乗乗車が所定数以上多く、6Fの入居者は相乗りする人が多いことがその要因であるとする。ルール抽出部26は、呼びの行先階「6F」と物件の識別情報「ビルA」との組み合わせに属性パターン番号「1」を付与し現象「便乗乗車」の属性パターンとしてルールに含める。
【0044】
「ビルA」の「平日8:00~8:15」の「混雑」時に発生した行先呼びで便乗乗車が所定数以上多く、混雑時は呼び登録に時間がかかるため便乗乗車が多いことがその要因であるとする。ルール抽出部26は、呼びの発生日時「平日8:00~8:15」と乗りかごの混雑状況「混雑」と物件の識別情報「ビルA」との組み合わせに属性パターン番号「2」を付与し現象「便乗乗車」の属性パターンとしてルールに含める。
【0045】
「ビルB」(物件B)の「火曜日 10:00~10:15」で「5F」に行く呼びで無駄呼びが所定数以上多く、この時間に来る来客は操作に慣れていないことがその要因であるとする。ルール抽出部26は、呼びの行先階「5F」と呼びの発生日時「火曜日 10:00~10:15」と乗りかごの混雑状況「混雑」と物件の識別情報「ビルB」との組み合わせに属性パターン番号「3」を付与し現象「無駄呼び」の属性パターンとしてルールに含める。
【0046】
「ビルB」の「ゲストID」での呼び利用時に無駄呼びが所定数以上多く、ゲストのためDCSの利用に慣れていないことがその要因であるとする。ルール抽出部26は、物件の識別情報「ビルB」と利用者の識別情報「ゲストID」との組み合わせに属性パターン番号「4」を付与し現象「無駄呼び」の属性パターンとしてルールに含める。
【0047】
「混雑」時に同一のHDCからの呼びの発生間隔が「極端に短い」場合に無駄呼びが所定数以上多く、混雑時の待ちの長さによりいたずらの操作が発生しやすいことがその要因であるとする。ルール抽出部26は、乗りかごの混雑状況「混雑」と同一のHDCからの呼びの発生間隔「極端に短い」との組み合わせに属性パターン番号「5」を付与し現象「無駄呼び」の属性パターンとしてルールに含める。
【0048】
なお、属性パターンは、上記で例示したような経験則を元に予め設定するか、ビル運用開始後に運行データを自動又は手動で解析して設定することが考えられる。
【0049】
ルール抽出部26は、図3に例示するようなルールの情報を生成して送信部27へ供給する。送信部27は、ルールの情報を各物件BD-A,BD-Bへ送信する。
【0050】
各物件BDにおいて、受信部16は、ルールの情報を受信すると判定部14へ供給する。判定部14は、HDC4に行先呼びが登録された際に、行先呼び及びその属性パターンの情報をHDC4から制御部12経由で受ける。判定部14は、ルールの情報と行先呼び及びその属性パターンの情報とに応じて、登録された行先呼びの属性パターンが便乗乗車の属性パターン又は無駄呼び属性のパターンに該当するか否か判定する。判定部14は、判定部14は、行先呼びの属性パターンがルールに含まれた便乗乗車の属性パターンに一致すれば、行先呼びの属性パターンが便乗乗車の属性パターンに該当すると判定する。判定部14は、行先呼びの属性パターンがルールに含まれた無駄呼びの属性パターンに一致すれば、行先呼びの属性パターンが無駄呼び属性のパターンに該当すると判定する。判定部14は、行先呼びの属性パターンがルールに含まれたいずれの属性パターンにも一致しなければ、行先呼びの属性パターンが便乗乗車及び無駄呼びのいずれの属性のパターンにも該当しないと判定する。判定部14は、判定結果を制御部12へ供給する。
【0051】
推定部11は、判定部14の判定結果を制御部12経由で取得する。判定部14の判定結果に応じて、行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンに該当する場合、便乗乗車又は無駄呼びの発生が予想される。推定部11は、便乗乗車又は無駄呼びの発生が予想されることに応じて、登録された行先呼びと便乗乗車又は無駄呼びに対応して変更された係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する。
【0052】
すなわち、推定部11は、登録された行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターンに該当する場合、登録された行先呼びと利用人数が増加するように変更された係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する。例えば、推定部11は、図4に示すような係数の情報を有していてもよい。図4は、利用人数の推定に用いる係数を示す図である。推定部11は、行先呼びの属性のパターンが便乗乗車の属性のパターンに該当する場合、図4の係数の情報に応じて、係数の値を通常時用の基準値「1」から便乗乗車用の値「2」に変更する。推定部11は、登録された行先呼びと変更後の係数「2」とを用いて、数式3により、乗りかごの乗車人数を推定し、数式4により、乗りかごの降車人数を推定する。これにより、便乗乗車の発生が予想される場合に、推定乗車人数・推定降車人数をそれぞれ増加させて実際の乗車人数・降車人数に近づけることができる。
【0053】
推定部11は、録された行先呼びの属性のパターンが例えば、無駄呼びの属性のパターンに該当する場合、登録された行先呼びと利用人数が減少するように変更された係数とに応じて、乗りかごの利用人数を推定する。例えば、推定部11は、行先呼びの属性のパターンが無駄呼びの属性のパターンに該当する場合、図4の係数の情報に応じて、係数の値を通常時用の基準値「1」から無駄呼び用の値「0.2」に変更する。推定部11は、登録された行先呼びと変更後の係数「0.2」とを用いて、数式3により、乗りかごの乗車人数を推定し、数式4により、乗りかごの降車人数を推定する。これにより、例えば、無駄呼びの発生が予想される場合に、推定乗車人数・推定降車人数をそれぞれ減少させて実際の乗車人数・降車人数に近づけることができる。
【0054】
推定部11は、推定乗車人数及び推定降車人数の情報を制御部12へ供給する。制御部12は、推定乗車人数及び推定降車人数の情報に応じて、複数の乗りかご2-1~2-8のうち登録された行先呼びに応答させる乗りかご2を割り当てる。このとき、推定乗車人数及び推定降車人数を実際の乗車人数・降車人数に近づけることができるので、制御部12は、行先呼びによる乗りかご2の割り当てを適切に行うことができる。
【0055】
あるいは、制御部12は、判定部14の判定結果に応じて、登録された行先呼びの属性のパターンが無駄呼びの属性のパターンに該当する場合、行先呼びに対する乗りかご2の割り当てを特定の乗りかごに集中させる。これにより、無駄呼び以外の呼びを特定の乗りかご以外の乗りかごに効率的に割り当てることができ、乗りかごを無駄呼びに応答させることによる運行効率の低下を抑制できる。
【0056】
次に、エレベータ群管理システム1の動作について図5を用いて説明する。図5は、エレベータ群管理システム1の動作を示すフローチャートである。図5では、データセンター20及び1つのDCS制御装置10の動作について例示的に説明するが、データセンター20及び他のDCS制御装置10の動作についても同様である。
【0057】
ルールの情報(図3参照)が、データセンター20から送信され(S21)、DCS制御装置10で受信されると(S1)、DCS制御装置10は、行先呼びがHDC4に登録されるまで待機する(S2でNo)。DCS制御装置10で行先呼びがHDC4に登録されると(S2でYes)、行先呼びの情報が、DCS制御装置10から送信され(S3)、データセンター20で受信される(S22)。
【0058】
行先呼びの情報の送信後、DCS制御装置10は、S1で受信されたルールを参照し(S4)、S2で登録された行先呼びの属性パターンが便乗乗車の属性のパターン又は無駄呼びの属性のパターンに該当するか否か判定する(S5)。
【0059】
DCS制御装置10は、行先呼びの属性パターンが便乗乗車の属性のパターンに該当する場合(S5で「便乗乗車」)、利用人数の推定に用いる係数を、利用人数が増加するように基準値から変更された増加方向の係数に変更する(S6)。例えば、DCS制御装置10は、図4の係数の情報に応じて、係数の値を通常時用の基準値「1」から便乗乗車用の値「2」に変更する。
【0060】
DCS制御装置10は、行先呼びの属性パターンが無駄呼びの属性のパターンに該当する場合(S5で「無駄呼び」)、利用人数の推定に用いる係数を、利用人数が減少するように基準値から変更された減少方向の係数に変更する(S6)。例えば、DCS制御装置10は、図4の係数の情報に応じて、係数の値を通常時用の基準値「1」から無駄呼び用の値「0.2」に変更する。
【0061】
DCS制御装置10は、行先呼びの属性パターンが便乗乗車の属性のパターン及び無駄呼びの属性のパターンのいずれにも該当しない場合(S5で「該当なし」)、係数を基準値にしたまま、処理をS8へ進める。
【0062】
DCS制御装置10は、登録された行先呼びと係数とに応じて、乗りかご2の乗車人数及び降車人数を推定する(S8)。例えば、S5で「便乗乗車」の場合、便乗乗車用の値「2」の係数を用いて、数式3、数式4により、乗りかご2の乗車人数及び降車人数を推定する。S5で「無駄呼び」の場合、無駄呼び用の値「0.2」の係数を用いて、数式3、数式4により、乗りかご2の乗車人数及び降車人数を推定する。S5で「該当なし」の場合、基準値の係数を用いて、数式3、数式4により、乗りかご2の乗車人数及び降車人数を推定する。
【0063】
DCS制御装置10は、S8で推定された乗車人数及び降車人数に応じて、複数の乗りかご2-1~2-8のうちから行先呼びに応答させる乗りかご2を割り当てる(S9)。DCS制御装置10は、乗りかご2が着床し利用者が乗り込んだら、乗りかご2の乗車人数及び降車人数を検出し(S10)、検出乗車人数及び検出降車人数を含む検出情報を生成する。
【0064】
検出情報が、DCS制御装置10から送信され(S11)、データセンター20で受信されると(S23)、データセンター20は、S8と同様にして、乗りかご2の乗車人数及び降車人数を推定し、推定乗車人数及び推定降車人数を求める。データセンター20は、推定乗車人数の検出乗車人数からの乖離と推定降車人数の検出降車人数からの乖離とに応じて、便乗乗車又は無駄呼びが発生したか否かを判断し、判断の結果に応じて、便乗乗車及び無駄呼びの属性パターンを抽出する(S24)。すなわち、データセンター20は、便乗乗車が発生した場合、その行先呼びの1以上の属性の組み合わせを便乗乗車の属性のパターンとして抽出し、無駄呼びが発生した場合、その行先呼びの1以上の属性の組み合わせを無駄呼びの属性のパターンとして抽出する。
【0065】
データセンター20は、S24で抽出された属性のパターンを複数の行先呼びについて集め、複数の行先呼びに共通する属性パターンをルールとして抽出又は更新する(S25)。すなわち、データセンター20は、ルールが未作成であれば、図3に示すようなルールのフォーマットを作成する。データセンター20は、便乗乗車の属性のパターンを所定数以上の行先呼びについて集めて、それらに共通する1以上の属性の組み合わせを便乗乗車の属性パターンとしてルールに含める。データセンター20は、無駄呼びの属性のパターンを所定数以上の行先呼びについて集めて、それらに共通する1以上の属性の組み合わせを無駄呼びの属性パターンとしてルールに含める。
【0066】
抽出又は更新されたルールの情報は、データセンター20から送信され(S21)、DCS制御装置10で受信されると(S1)、DCS制御装置10でS1以降の処理が再び行われ、データセンター20でS21以降の処理が再び行われる。
【0067】
以上のように、本実施形態では、エレベータ群管理システム1において、便乗乗車又は無駄呼びの属性のパターンを求めておき、登録された行先呼びの属性のパターンがそれらの属性のパターンに該当するときに、便乗乗車又は無駄呼びに対応して変更された係数で利用人数を推定する。これにより、便乗乗車又は無駄呼びの発生が予想できる場合に、乗りかごの利用人数の推定精度を向上でき、乗りかごの利用人数に基づく乗りかごの割り当てを適切に行うことができる。すなわち、便乗乗車に起因する利用者の積み残しを減少することができ、無駄呼びによる群管理効率の低下を防ぐことができる。
【0068】
なお、S5で「無駄呼び」の場合、図5に点線で示すように、S7,S8をスキップし、DCS制御装置10は、行先呼びに対する乗りかご2の割り当てを特定の乗りかごに集中させてもよい(S9)。これによっても、無駄呼び以外の呼びを特定の乗りかご以外の乗りかごに効率的に割り当てることができ、乗りかごを無駄呼びに応答させることによる運行効率の低下を抑制できる。
【0069】
また、S8で、DCS制御装置10は、推定乗車人数・推定降車人数の情報をデータセンター20へ送信してもよい。これにより、データセンター20は、S24でS8と同様の処理を行うことを省略でき、S24の処理を効率化できる。
【0070】
あるいは、エレベータ群管理システム1iは、図6に示すように、データセンター20が省略された構成であってもよい。図6は、実施形態の第1の変形例にかかるエレベータ群管理システム1iの構成を示す図である。
【0071】
エレベータ群管理システム1iは、DCS制御装置10(図1参照)に代えて、DCS制御装置10iを有する。DCS制御装置10iは、1つの物件BDに対応し、1つの物件BDにおけるHDC4-1~4-6及び単体制御部3-1~3-8がそれぞれ接続されている。DCS制御装置10iは、呼び情報データベース(呼び情報DB)16i、検出情報データベース(検出情報DB)17i、パターン抽出部18i、ルール抽出部19iを有する。呼び情報データベース16i、検出情報データベース17i、パターン抽出部18i、ルール抽出部19iの機能は、それぞれ、実施形態における呼び情報データベース22、検出情報データベース24、パターン抽出部25、ルール抽出部26と同様である。
【0072】
あるいは、エレベータ群管理システム1iは、図7に示すように、ハイブリッドDCSタイプのシステムであってもよい。図7は、実施形態の第2の変形例における乗場及び乗りかごの構成を示す図である。
【0073】
各階の乗場5-1~5-6にはHDC4-1,4j-2,・・・,4j-6のうち、基準階である1FのHDC4-1は、実施形態と同様に行先呼びを登録可能であるが、他の階である2F~6FのHDC4j-2~4j-6は、行先呼びを登録する機能が無く、代わりに、上下呼びが登録可能である。この場合、基準階以外の階のHDC4jについては、押された回数を近似的に出発階個数として、数式3により推定乗車人数を求めてもよい。
【0074】
あるいは、便乗乗車/無駄呼びの発生を予想したが、外れてしまう場合も考えられる。例えば、便乗乗車の発生の予想が外れた場合、呼び応答後のかご荷重が予想より少なくなる事態が発生する。このとき、DSC制御装置10iは、乗場5で登録された行先呼びに応答した後の乗りかご2の荷重から、推定乗車人数に対する検出乗車人数の超過人数が閾値(例えば、+1人)未満であれば、便乗乗車の発生の予想が外れたと判断する。この場合、DSC制御装置10iは、応答後の乗りかご2の荷重から再度乗りかご2の乗車余力(乗車可能な人数)を計算し、乗車余力に応じて新規割当を受け付けることとする。また、DSC制御装置10iは、元々は満員で出発する予想が外れ、満員で、なくなった場合には、新規割当抑制の解除を行う。DSC制御装置10iは、上下呼びのハイブリッドDCSの場合には、長待ち等による割当変更を受け付けてもよい。
【0075】
例えば、DSC制御装置10iは、図8に示すような制御を行ってもよい。図8は、実施形態の第3の変形例における便乗乗車の予想が外れた場合の動作を示す図である。DSC制御装置10iは、応答前に、図8(a)に示すように、4回上下呼びが登録され、4×2=8人が乗車すると推定し、4人乗っている乗りかご2を乗車後に満員(=定員14人)になると予想して割り当てるとともに、この乗りかご2に対する新規割当を抑制する。そして、DSC制御装置10iは、応答後に、図8(b)に示すように、4人しか乗車しなかった場合、便乗乗車の発生の予想が外れたと判断し、この乗りかご2の乗車余力(乗車可能な人数)を計算し、新規割当の抑制を解除し、乗車余力に応じて新規割当を受け付ける。
【0076】
あるいは、無駄呼びの発生の予想が外れた場合、想定より多い人数が乗りかご2に乗車する事態が発生する。DSC制御装置10iは、応答時に、乗りかご2の荷重を把握し、推定乗車人数に対する検出乗車人数の不足人数が不足閾値(例えば、-1人)より大きければ、無駄呼びの発生の予想が外れたと判断する。この場合、DSC制御装置10iは、閾値(例えば、1人)以上の人数が乗りかご2に乗車した場合、積み残しによる再登録対応のために、フリーの乗りかご2を呼び発生階に移動させることとする。
【0077】
例えば、DSC制御装置10iは、図9に示すような制御を行ってもよい。図9は、実施形態の第4の変形例における無駄呼びの予想が外れた場合の動作を示す図である。DSC制御装置10iは、応答前に、図9(a)に示すように、無駄呼びを検知し、その呼びを特定の乗りかご2に割り当てる。そして、DSC制御装置10iは、応答中、特定の乗りかご2への利用者の乗車を検知し、無駄呼びの予想が外れたと判断し、フリーの乗りかご2をその呼びの発生階に移動させる。これにより、無駄呼びの予想が外れたことによる積み残しを抑制できる。
【0078】
あるいは、DSC制御装置10iは、便乗乗車又は無駄呼びの発生の予想外れが多い場合、便乗乗車又は無駄呼び用の利用人数推定のための係数を調整してもよい。例えば、図10に示すように、DSC制御装置10iは、ルールに含まれる属性パターン1~5のそれぞれについて部分的に係数を異ならせてもよい。図10は、実施形態の第5の変形例における利用人数の推定に用いる係数を示す図である。
【0079】
例えば、初期状態において、属性パターン1及び属性パターン2の係数は、便乗乗車の属性パターン用に、図4と同様の値である「2」にしておき、属性パターン3~属性パターン5の係数は、無駄呼びの属性パターン用に、図4と同様の値である「0.2」にしておく。その後、DSC制御装置10iは、属性パターン1で便乗乗車の発生の予想外れが閾値頻度以上(例えば、10回中5回以上)多い場合に、利用人数推定のための係数を増加方向に対して緩和(例えば2→1.5に)してもよい。また、DSC制御装置10iは、属性パターン1で便乗乗車の発生の予想外れが閾値頻度以上(例えば、10回中5回以上)多い場合に、利用人数推定のための係数を減少方向に対して緩和(例えば0.2→0.5に)してもよい。これにより、便乗乗車又は無駄呼びが発生したと予想できる場合に、便乗乗車又は無駄呼びの発生頻度を考慮しながら、乗りかごの利用人数の推定値を実際の利用人数に近づけることができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1,1i エレベータ群管理システム、2,2-1~2-8 乗りかご、3,3-1~3-8 単体制御部、4,4-1~4-6,4j-2~4j-6 HDC、5,5-1~5-6 乗場、10,10-A,10-B DCS制御装置、11 推定部、12 制御部、13 検出部、14 判定部、15 送信部、16 受信部、20 データセンター、21 受信部、22 呼び情報データベース、23 物件情報データベース、24 検出情報データベース、25 パターン抽出部、26 ルール抽出部、27 送信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10