(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】レバー支持構造
(51)【国際特許分類】
B66B 29/06 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B66B29/06 A
(21)【出願番号】P 2020132219
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 竜
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-300092(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142308(WO,A1)
【文献】特開平05-201673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に接続された複数の踏段が走行する乗客コンベアの移動路の始端および終端に設けられた乗降口に配置された乗降板を支持する梁部材と、
前記梁部材の前記移動路側の端部で、前記乗降板の下面側に対して前記踏段が進入または進出する位置に設けられ、櫛部を備える、前記踏段の幅方向に延在するコムプレートと、
前記梁部材の下面側に配置され、前記コムプレートと前記踏段との間に異物が進入した場合に、当該異物によって前記踏段の進入方向に沿って移動し検知部を作動させることができる、前記幅方向に延在する異物検出レバーと、
前記梁部材の上面側に固定される第一の部分と、前記異物検出レバーの上面側から下面側に回り込み前記異物検出レバーを支持し、前記梁部材の下面側に固定される第二の部分を有するレバー支え部材と、
を備える、レバー支持構造。
【請求項2】
前記レバー支え部材の前記第二の部分の端部は、前記異物検出レバーの支持面から前記第一の部分の方向に折れ曲がった返し部を備え、当該返し部が前記梁部材の一部に付勢態様で固定される、請求項1に記載のレバー支持構造。
【請求項3】
前記レバー支え部材の前記第二の部分の端部は、前記梁部材の下面に沿って延設され、前記梁部材の下面の一部に締結部材で固定される、請求項1に記載のレバー支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レバー支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアにおいて、踏段が進出、または、進入する部分には、コムプレート(単に「コム」という場合もある)が設けられている。このコムプレートは、乗降板の先端に設けられた、例えば合成樹脂製の部品で、その先端には複数の櫛歯からなる櫛部が設けられている。この櫛部は、踏段に乗った異物、例えば、小石等が、乗客コンベアの乗降板の下方の空間に形成された機械室内部に入るのを防止するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなコムプレートは、乗客コンベアの運用中等に荷物等との接触が原因で破損(例えば櫛歯の欠落)が発生する場合がある。この場合、従来、進入や挟み込みが防止できていた小石や、利用者の靴や衣服等がコムプレート(の破損部分)と踏段の間に進入してしまう場合がある。従来の乗客コンベアには、このような場合に、当該乗客コンベアの運行を停止する安全装置が備えられている場合がある。例えば、コムプレートと踏段の間の空間に、コムプレートの幅方向(踏段の幅方向)に延びる検出レバーを配置し、その検出レバーに異物が接触したことを検出することで、乗客コンベアの運行を停止させることが考えられる。このような、幅方向に長尺の検出レバーは、コムプレートと踏段の間の空間に支え部材等を用いて吊り下げ姿勢で固定されるが、検出レバーの自重により支え部材が開いてしまう場合がある。このような場合、支え部材や検出レバーが、移動する踏段や踏段とともに移動してくる異物と接触し、破損や異音の原因になる場合があった。そこで、容易な構成で、支え部材の開き変形を抑制し、検出レバーや支え部材の破損や接触による異音の発生を防止できる、レバー支持構造が提供できれば、乗客コンベアの品質向上が図れて有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のレバー支持構造は、梁部材と、コムプレートと、異物検出レバーと、レバー支え部材と、を備える。梁部材は、無端状に接続された複数の踏段が走行する乗客コンベアの移動路の始端および終端に設けられた乗降口に配置された乗降板を支持する。コムプレートは、梁部材の移動路側の端部で、乗降板の下面側に対して踏段が進入または進出する位置に設けられる。このコムプレートは、櫛部を備え、踏段の幅方向に延在する。異物検出レバーは、梁部材の下面側に配置され、コムプレートと踏段との間に異物が進入した場合に、当該異物によって踏段の進入方向に沿って作動可能で、幅方向に延在する。レバー支え部材は、梁部材の上面側に固定される第一の部分と、異物検出レバーの上面側から下面側に回り込み異物検出レバーを支持し、梁部材の下面側に固定される第二の部分を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態のレバー支持構造を適用可能な乗客コンベアの一例としてのエスカレータの構造を示す例示的かつ模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のレバー支持構造とともに利用されるコムプレートの詳細を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のレバー支持構造を説明する例示的かつ例示的かつ模式的な側面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のレバー支持構造を説明する例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態のレバー支持構造で支持される異物検出レバーを示す例示的かつ模式的な平面図である。
【
図6】
図6は、実施形態のレバー支持構造で異物検出レバーを支持するレバー支え部材の例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態のレバー支持構造を説明する例示的かつ模式的な拡大断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態のレバー支持構造の他の構造を説明する例示的かつ模式的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態に係るレバー支持構造を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0008】
図1は、実施形態のレバー支持構造を適用可能な乗客コンベアの一例としてのエスカレータ10の構造を示す例示的かつ模式的な側面図である。
【0009】
エスカレータ10は、無端状に連結された複数の踏段12を周回(循環)移動させて作動することで利用者や荷物等の物体を搬送する移動路14を構成する。
図1において、建造物(建築物)の上階側階床UF(乗降板16)と下階側階床DF(乗降板16)の間にトラスTが設置されている。トラスT上にはデッキ18が設置され、欄干Wを構成する欄干パネル20が支持されている。また、欄干パネル20の上端部の欄干デッキには手摺ベルト22が設けられている。
【0010】
エスカレータ10の乗降部(乗降板16)の床下、すなわち、床下空間Sには、踏段12を周回駆動するための駆動機構が収容されている。なお、床下空間Sは、上階側から下階側まで連通している。エスカレータ10の駆動機構は、主として、駆動源としてのモータ24と、減速機26と、駆動チェーン28と、駆動スプロケット30と、従動スプロケット32と、踏段チェーン34とを備えている。モータ24と減速機26とは、駆動装置36を構成する。モータ24は、例えば、上階側に設けられている。モータ24の出力軸には、減速機26が取り付けられている。減速機26は、モータ24の回転を減速させ、モータ24の回転トルクを増幅させる。減速スプロケット38は、減速機26の出力軸に設けられ、複数の歯を有する。駆動チェーン28は、無端状に形成され、減速スプロケット38と駆動スプロケット30とに亘って掛けられている。駆動チェーン28は、減速機26を介して伝達されたモータ24の駆動力によって、駆動スプロケット30と減速スプロケット38との周りを循環走行することで、駆動スプロケット30を回転させる。すなわち、駆動チェーン28は、減速機26を介して伝達されたモータ24の駆動力を駆動スプロケット30に伝達する。駆動スプロケット30は、踏段チェーン34に噛み合う複数の歯を有し、駆動装置36からの駆動力により回転する。
【0011】
エスカレータ10は、駆動スプロケット30と従動スプロケット32との間に掛け渡された踏段チェーン34を駆動させることで、無端状に連結された複数の踏段12を周回移動させて作動する。これにより、踏段チェーン34は、複数の踏段12を走行させる。
【0012】
エスカレータ10が下降方向に稼動する場合、上階側乗降口UEの乗降板16の先端部分において、複数の踏段12の中で進行方向に向けて隣接する踏段12同士が水平状でトラスT内から進出される。そして、上部遷移カーブにおいて、隣接する踏段12間の段差が拡大されて、複数の踏段12は、階段状に遷移される。中間傾倒部において、複数の踏段12は、階段状で下降される。続いて、下部遷移カーブにおいて、隣接する踏段12間の段差が縮小されて、複数の踏段12は、水平状に遷移される。下階側乗降口DEの乗降板16の先端部分において、複数の踏段12は、再び水平状となってトラスT内に進入する。複数の踏段12は、トラスT内に進入された後に上下が反転され、帰路側を踏段12の踏み面を水平状にして上昇される。その後、駆動スプロケット30の位置で複数の踏段12は再度反転されて、上階側乗降口UEの乗降板16の先端部分において、トラスT内から進出される。上昇方向に稼動するエスカレータ10では上述の作動の逆の作動となる。このように、上階側乗降口UEおよび下階側乗降口DEの乗降板16の先端部分において、踏段12は、利用者を乗せる上面の踏み面を水平状として、トラスT内から進出し、またはトラスT内へ進入する。なお、乗降板16の移動路14側の端部で、乗降板16の下面側に対して踏段12が進入または進出する位置には、櫛部を備え、踏段12の幅方向に延在するコムプレート40が設けられている。コムプレート40の詳細は後述する。
【0013】
エスカレータ10は、複数の踏段12の進行方向における両脇に一対の欄干Wを備える。欄干Wは、主として、スカートガードパネル42と、内デッキ44と、欄干パネル20と、欄干パネル20の外縁部に設けられた欄干デッキに支持された手摺レール上に設けられた手摺ベルト22と、から構成されている。スカートガードパネル42は、複数の踏段12の走行方向(エスカレータ10が稼働する例えば下降方向および上昇方向)に対して直交する方向(幅方向)の両側において近接して、かつ、上階側乗降口UEと下階側乗降口DEとの間に亘って設けられている。スカートガードパネル42の上側には、内デッキ44が取り付けられている。内デッキ44の上側には、例えば、ガラス板等の透明または半透明の部材やステンレス等の金属板で構成される欄干パネル20が取り付けられている。欄干パネル20の外周に取り付けられた手摺レールには、手摺ベルト22が移動可能に嵌め込まれている。手摺ベルト22は、踏段チェーン34と同期して周回駆動する移動手摺駆動チェーンによって周回移動し、例えば下階側のインレット46から進出し、上階側のインレット46に進入する。踏段12と手摺ベルト22とは同方向に同期した状態で周回移動する。
【0014】
このようなエスカレータ10の作動は、例えば、トラスT内の床下空間Sに設置される制御盤(制御装置)48によって、減速機26やモータ24を制御することで実現される。制御盤48は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)などを有するコンピュータで実現される。制御盤48において実行される機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとでエスカレータ10内の各種装置を作動させるとともに、RAMやROMにおけるデータの読み出し、書き込みを行うことで実現される。なお、
図1の場合、下階側乗降口DE側のスカートガードパネル42には、運転操作装置50が配置されている。運転操作装置50では、利用者の利用状況や利用時間帯等に応じて、エスカレータ10の運転方向や運転速度等の切替操作等が可能である。
【0015】
図2は、実施形態のレバー支持構造とともに利用されるコムプレート40の詳細を示す例示的かつ模式的な上面図である。
【0016】
図2に示すように、コムプレート40は、例えば、合成樹脂材料とで構成され、乗降板16にねじ等の締結部材で固定されている。コムプレート40は、コム本体部40Aと、当該コム本体部40Aから複数の櫛歯40bが前方(乗降板16から離れるX2方向)に等間隔で突出し、櫛部40Bを形成している。この櫛歯40bは、
図3に示すように、先端に行くほど下方に屈曲し、かつ、その先端は、
図2に示すように、丸みをおびて細くなっている。
【0017】
図2に示すように、踏段12の上面のクリート面12Aには、踏段12の移動方向(X1-X2方向)に沿って延びる山部12aと谷部12bとが交互に等間隔で形成されている。
【0018】
踏段12は、金属製で、
図3に示すように、側面形状が略三角形のフレーム12F、当該フレーム12Fの上面に設けられたクリート面12A、フレーム12Fの後面側(X2方向側)に設けられたライザ面12Bより形成されている。フレーム12F、クリート面12A、ライザ面12Bは、例えば一体に鋳造されている。
【0019】
フレーム12Fの前端部(X1方向の端部)には左右一対の前輪12Cが設けられ、フレーム12Fの後部下端(X2方向端部下端)、すなわち、ライザ面12Bの下端には左右一対の後輪12Dが設けられている。踏段12は、前輪12Cの位置で、無端の踏段チェーン34によって連結されている。後輪12DはトラスTに固定された後案内レールRを走行する。
【0020】
前述したように、クリート面12Aの上面には、X1-X2方向(前後方向)に沿って延びる山部12aと、谷部12bが交互に形成されている。そして、クリート面12Aの谷部12bに、コムプレート40の櫛歯40bが進入する。その結果、クリート面12Aに異物が存在する場合、その異物が櫛歯40bによって移動を制限され、乗降板16の下部、すなわち床下空間Sに進入することが抑制される。
【0021】
コムプレート40は、
図3に示されるように、複数の踏段12が走行する移動路14(
図1参照)の始端および終端に設けられた乗降口(上階側乗降口UE、下階側乗降口DE)に配置された乗降板16を支持する梁部材52にねじ等の締結部材によって固定されている。具体的には、梁部材52の移動路14側の端部で、乗降板16の下面側に対して踏段12が進入または進出する位置に配置されている。
【0022】
ところで、上述したようにコムプレート40は、合成樹脂材料等で形成されているため、踏段12に載って移動してくる荷物等の一部(例えば、スーツケース等のキャスタ等)との接触によって、櫛歯40bの破損等欠落が発生する場合がある。このような場合、踏段12に小石等の異物が載っていた場合、コムプレート40と踏段12との間に入り込み、周辺の構造物と接触し異音の発生や踏段12の破損の原因になる場合があった。また、コムプレート40をさらに破損させる原因にもなり得る。そのため、本実施形態のエスカレータ10の場合、コムプレート40と踏段12との間に所定の大きさ以上、例えば、周辺の構造物と接触して異音や破損の原因になり得るような大きさの異物が進入した場合に、進入した異物を検知し、エスカレータ10を緊急停止させる安全機構を備える。
【0023】
図4は、コムプレート40と踏段12との間に異物が進入した場合に作動する安全機構を説明するための例示的かつ模式的な斜視図である。具体的には、コムプレート40と踏段12との間に異物が進入した場合に、当該異物によって踏段12の進入方向に沿って移動(スライド)して、機械式スイッチ等の検知部を作動させる異物検出レバー54を備える。
【0024】
図3、
図4に示されるように、異物検出レバー54は、梁部材52の下面側(乗降板16を支持する面とは逆側の面)に、例えば,クリップ形状の複数のレバー支え部材56によって、固定支持される。なお、コムプレート40は、踏段12の幅方向の全領域を覆うように延在するが、
図4においては、コムプレート40を半分のみ図示して、本来コムプレート40に覆われる位置に存在するレバー支え部材56を露出させている。レバー支え部材56はコムプレート40によって隠されているが、踏段12の幅方向に等間隔で例えば、3個配置されている(
図4では1つのみ図示されている)。
【0025】
図5は、異物検出レバー54の形状を示す例示的かつ模式的な平面図である。異物検出レバー54は、レバー本体部54a、連結アーム部54b、作動子54c、ブラケット54dとで構成される。異物検出レバー54は、例えば、平板状の金属材料で形成される。
【0026】
レバー本体部54aは、コムプレート40と踏段12との間に進入してきた異物等と接触する部分で、踏段12の幅方向(W方向)に延設される細長い部品である。
図3に示されるように、レバー本体部54aは、梁部材52のX2方向の端部に形成された切欠き部52aに配置されている。レバー本体部54aは、図示を省略したばね等の付勢部材によって、X2方向に付勢されて、異物と接触していない状態で、レバー本体部54aの先端側(X2方向の端部)が、梁部材52の端部から突出している。また、レバー本体部54aの他端側(X1方向の端部)は、付勢部材による付勢状態で、切欠き部52a内部で隙間SSを空けた状態で静止している。そして、コムプレート40と踏段12との間に異物が進入した場合で、踏段12のX1方向の移動に伴い、異物が移動してレバー本体部54aに接触した場合、当該レバー本体部54aがX1方向に押圧され、隙間SS内をX1方向に摺動する。つまり、隙間SSは、異物検出レバー54の作動時のストロークを確保する空間となる。
【0027】
連結アーム部54bは、レバー本体部54aのW方向の両端部に接続され、X1方向(コムプレート40から離れる方向)に延びる部品である。連結アーム部54bは、コムプレート40と踏段12との間に異物が進入し、レバー本体部54aがX1方向に隙間SS内を摺動した場合、その移動量をX1方向に伝達する。
【0028】
連結アーム部54bのX1方向の先端部には、
図4に示されるように、異物検出レバー54の表面側(乗降板16を支持する面)に配置された検出部58(例えば、スナップアクション機構付きの機械式スイッチ)を作動させる作動子54cを支持するブラケット54dを備える。作動子54cは、梁部材52に形成された開口部52bに挿通され、梁部材52の裏面側(レバー本体部54aが設けられた側)から表面側に突出する。作動子54cは、検出部58のノーマルオープンのスイッチバーに接触した位置または所定量離間した位置に配置される。
【0029】
このように構成される異物検出レバー54は、コムプレート40と踏段12との間に異物が進入し、レバー本体部54aがX1方向に隙間SS内を摺動した場合、その移動量が連結アーム部54bを介して伝達され、ブラケット54dに支持されて、梁部材52の表面側に突出した作動子54cをX1方向に移動させる。その結果、検出部58のスイッチバーを押込み、ONする。すなわち、コムプレート40と踏段12との間に進入して、異音の発生やコムプレート40や踏段12の破損の原因になり得る異物の検出を行うことができる。検出部58がONした場合、例えば、制御盤48は、エスカレータ10を緊急停止させるたり、異物が存在すことを管理センタ等に通知し、緊急停止時の対応やメンテナンスのための対応を促すことができる。
【0030】
上述したように異物検出レバー54は、梁部材52の下面側に摺動可能に吊り下げ姿勢で配置される。本実施形態では、異物検出レバー54の吊り下げ姿勢での支持を実現するため、レバー支え部材56を用いている。
【0031】
レバー支え部材56は、
図6に例示的かつ模式的に示されるように、板金等を曲げ加工して形成される部品である。レバー支え部材56は、梁部材52の上面側に固定される第一の部分56aと、異物検出レバー54の上面側から下面側に回り込み、異物検出レバー54を支持する第二の部分56bを有する。レバー支え部材56は、例えば、開口部56cを介して、ねじ等の締結部材により梁部材52に固定される。レバー支え部材56は、異物検出レバー54のレバー本体部54aが上述したように異物によって押圧された場合に摺動可能なように、異物検出レバー54を遊嵌状態で支持することができる。
【0032】
このように構成されるレバー支え部材56を用いて、異物検出レバー54を吊り下げ支持する場合、レバー支え部材56の加工精度や取付状態等が原因の一つとなり、また、異物検出レバー54の自重等によりレバー支え部材56(第二の部分56b)が下方に開いてしまう場合がある。その結果、コムプレート40と踏段12との間を通過してしまったとしても、異音の発生や踏段12等の破損の原因になり得ない小形の異物が、正規の位置から下方に垂れ下がったレバー本体部54aやレバー支え部材56に接触してしまう可能性が生じる。つまり、従来、エスカレータ10の運行に影響しなかった小形の異物が異音の発生や破損の原因になってしまう虞があった。
【0033】
なお、エスカレータ10は、利用時間や利用客の数に応じて、踏段12の移動方向(運転方向)を逆方向に切り替える場合がある。
図4において、踏段12がX1方向に移動することにより異物が踏段12とコムプレート40との間に進入した場合、異物は垂れ下がった第二の部分56bに接触し、異音を発生する可能性があるものの通過することができる場合がある。一方、異物が、梁部材52の下面位置で留まっていたり、一度通過した異物が踏段12の逆方向への運転切り替えによりX2方向に移動したりした場合、垂れ下がった第二の部分56bに接触する可能性がある。この場合、垂れ下がった第二の部分56bをX2方向に押圧してさらに垂れ下がり量を増加させてしまう(さらに開く方向に変形させてしまう)場合があり、状況の悪化を招いてしまう場合がある。
【0034】
そこで、本実施形態のレバー支え部材56の第二の部分56bは、梁部材52の下面側に固定する固定構造を備える。
図6に示すレバー支え部材56の場合、第二の部分56bの開放側の先端に、異物検出レバー54の支持面(第二の部分56b)から第一の部分56aの方向に折れ曲がった返し部60が形成されている。この返し部60は、梁部材52の一部に付勢態様で固定される。
【0035】
図7は、返し部60を備えるレバー支え部材56を用いて異物検出レバー54を支持しつつ、梁部材52に固定されている状態を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【0036】
図6、
図7に示す返し部60を備えるレバー支え部材56は、例えば、バネ鋼で形成されている。そして、レバー支え部材56の返し部60が、
図7に示すように、切欠き部52a(隙間SS)に装着された状態で、自身のバネ性によりX1方向の切欠き壁部52cを付勢する。レバー支え部材56は、返し部60の付勢力により、異物検出レバー54の自重に耐えうる保持力を確保し、異物検出レバー54およびレバー支え部材56自身が下方に垂れ下がること、つまり、レバー支え部材56の開き変形を抑制している。また、レバー支え部材56は、第一の部分56a側がねじ等の締結部材62により梁部材52に固定されているので、返し部60のバネ性による付勢状態を長期間維持することができる。なお、
図7の場合、締結部材62は、梁部材52にコムプレート40を固定する場合にレバー支え部材56の第一の部分56aを共締めすることで、部品点数の削減を行っている。別の実施例では、レバー支え部材56の第一の部分56aは、コムプレート40とは、別に梁部材52に固定されてもよい。
【0037】
さらに、第二の部分56bの梁部材52(切欠き壁部52c)に対する固定は、返し部60の付勢力のみにより行われる。そのため、梁部材52に対する装着作業が容易である。また、仮に、異物検出レバー54の交換や位置調整等が必要になった場合でも、レバー支え部材56を容易に取り外し、異物検出レバー54の交換や位置調整を容易に行うことができるため、作業性の向上にも寄与することができる。なお、返し部60は、レバー本体部54aとは接触しないため、異物によりレバー本体部54aがX1方向に移動する場合でも、その移動を妨げない。また、クリップ状の小片であるレバー支え部材56は、レバー本体部54a(異物検出レバー54)の幅方向(
図4におけるW方向)に間欠的に例えば3箇所で配置される。その結果、異物検出レバー54は、異物が進入した場合に異物と接触しやすく、敏感に反応(X1方向への移動)することが可能であり、検出精度の向上にも寄与できる。なお、レバー支え部材56の設置数や設置間隔は、異物検出レバー54のW方向の長さ等に応じて適宜変更することができる。
【0038】
このように、レバー支え部材56が容易な構造の返し部60を備えることで、レバー支え部材56の支持強度を容易に向上させることできる。その結果、レバー支え部材56の開き変形を抑制し、異物検出レバー54やレバー支え部材56の破損や接触による異音の発生を防止できる。
【0039】
図8は、レバー支持構造の他の構造を説明する例示的かつ模式的な拡大断面図である。
図8に示すレバー支え部材56Aは、第二の部分56bの端部が、梁部材52の下面に沿って、延設された延設部64を備え、この延設部64が梁部材52の下面の一部にねじ等の締結部材66で固定される。
【0040】
この場合、レバー支え部材56Aは、第一の部分56aが梁部材52の上面側で固定され、異物検出レバー54(レバー本体部54a)を第二の部分56bで吊り下げ支持した後、延設部64に形成された開口部64aに締結部材66を用いて固定される。なお、締結部材66は、ねじ頭部が踏段12側に突出しないように、例えば、皿ねじ等を利用することが望ましい。
【0041】
レバー支え部材56Aの場合、締結部材66を用いて梁部材52に固定されるため、
図7に示す返し部60を備えるレバー支え部材56より、強固に梁部材52に固定可能であり、異物検出レバー54の支持品質を向上することができる。また、延設部64は、第二の部分56bを延在させるのみの構造であるため、構造がシンプルで、かつ、
図7に示すレバー支え部材56のようにバネ鋼を用いる必要がないため、製造コストの低減にも寄与できる。
【0042】
このように、レバー支え部材56Aが容易な構造の延設部64を備えることで、レバー支え部材56Aの支持強度を容易に向上させることできる。その結果、レバー支え部材56Aの開き変形を抑制し、異物検出レバー54やレバー支え部材56の破損や接触による異音の発生を防止できる。
【0043】
なお、
図6、
図7に示した例では、返し部60は、第二の部分56bに対して第一の部分56aに向かい略直角に立ち上げた形状としているが、例えば、返し部60の先端を、さらにX1方向に曲げ、切欠き壁部52cに食い込むような爪形状を備えてもよい。この場合、切欠き壁部52cの面に凹凸や線条部を設けておくことにより、返し部60のバネ性による固定強度に加え、爪形状による切欠き壁部52cへの食いつきにより係合強度をさらに向上させることが可能であり、支持(固定)強度の向上に寄与できる。
【0044】
また、
図8に示すレバー支え部材56Aの場合、締結部材66は、抜け防止として、例えば、樹脂等により被覆してもよい。
【0045】
なお、上述した実施形態において、乗客コンベアの一例として、
図1に示すような上階側乗降口UEと下階側乗降口DEとを傾斜する移動路14で接続する一般的なエスカレータ10を示した。別の実施形態では、例えば、移動路14の途中で踏段12が一旦水平状態に遷移した後、再び段差状態に遷移するようなエスカレータに本実施形態のレバー支持構造を適用してもよい。この場合も、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。また、上階側乗降口UEと下階側乗降口DEとを結ぶ移動路14や同一階床の入口側と出口側を結ぶ移動路14を移動する各踏段12が段差を形成することなく、平面状態で移動する、いわゆる「動く歩道」に本実施形態のレバー支持構造を適用してもよい。この場合も、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
10…エスカレータ(乗客コンベア)、12…踏段、14…移動路、16…乗降板、40…コムプレート、40A…コム本体部、40B…櫛部、40b…櫛歯、52…梁部材、52a…切欠き部、54…異物検出レバー、54a…レバー本体部、54b…連結アーム部、54c…作動子、54d…ブラケット、56,56A…レバー支え部材、56a…第一の部分、56b…第二の部分、58…検出部、60…返し部、64…延設部、66…締結部材。
【要約】
【課題】容易な構成で、支え部材の開き変形を抑制し、検出レバーや支え部材の破損や接触による異音の発生を防止できる、レバー支持構造を提供する。
【解決手段】レバー支持構造の梁部材は、無端状に接続された複数の踏段が走行する乗客コンベアの移動路の始端および終端に設けられた乗降口に配置された乗降板を支持する。コムプレートは、梁部材の移動路側の端部で、乗降板の下面側に対して踏段が進入または進出する位置に設けられる。このコムプレートは、櫛部を備え、踏段の幅方向に延在する。異物検出レバーは、梁部材の下面側に配置され、コムプレートと踏段との間に異物が進入した場合に、当該異物によって踏段の進入方向に沿って作動可能で、幅方向に延在する。レバー支え部材は、梁部材の上面側に固定される第一の部分と、異物検出レバーの上面側から下面側に回り込み異物検出レバーを支持し、梁部材の下面側に固定される第二の部分を有する。
【選択図】
図7