(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】立体自動倉庫
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B65G1/04 555A
B65G1/04 511
(21)【出願番号】P 2016131684
(22)【出願日】2016-07-01
【審査請求日】2019-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2015214778
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】星 俊臣
(72)【発明者】
【氏名】篠原 啓樹
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/049987(WO,A1)
【文献】特開昭62-126003(JP,A)
【文献】実公昭49-011830(JP,Y1)
【文献】特開2015-042589(JP,A)
【文献】特開平08-310609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00 - 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦横方向に棚が多段に積層された複数の保管ラックから構成される保管倉庫部と、入出庫部と、前記保管ラックの物品の格納面の脇に設けられた通路を走行する搬送機構とを設けた立体自動倉庫において、
前記保管ラックに格納される前記物品が搭載される
前記立体自動倉庫における保管スペースの表面と前記物品
の底面との間に生じる最大静止摩擦力が、前記物品に対して微振動が与えられても前記物品が動かずに安定して定位置に保管されることを可能にするものであり、
前記搬送機構が前記通路を走行する方向と直交する方向に伸縮可能な伸縮式弾性機構を該伸縮方向の左右側に備え、
前記伸縮式弾性機構は、少なくともその基端及び先端に収められたフックが前記伸縮方向と直交する内側方向に突出して前記保管ラックに保管し得る全ての前記物品に当接することによって該物品を保管位置に押し込む動作または保管位置から引き出す動作を可能とするための多段の弾性構造物
であって弾性部であるタイミングギア、タイミングベルト、ベルトの連続体を備える多段の弾性構造物で構成されるかもしくは多段の剛性構造物と該剛性構造物間に介される弾性変形可能な構造物とで構成され、
前記搬送機構は、保管のために任意の位置に設置される前記物品を移動する際の外力である押出しもしくは引き出し力が加わった初期には前記伸縮式弾性機構の持つ弾性力により前記伸縮式弾性機構が変形することで前記伸縮式弾性機構にエネルギーが蓄えられ
るために前記物品に対する衝撃が緩和された後に、前記伸縮式弾性機構に蓄えられたエネルギーが発散されて前記最大静止摩擦力を越える力が瞬間的に発生される
ために前記物品が動き出される機構を有する
ことを特徴とする立体自動倉庫。
【請求項2】
前記搬送機構が、前記保管ラックに保管し得る全ての前記物品に対し、多段で構成される前記伸縮式弾性機構を有する1台の前記搬送機構により保管または取出しを行う運搬機構を備えた搬送方式であることを特徴とする請求項1に記載の立体自動倉庫。
【請求項3】
前記搬送機構が、
前記搬送機構が走行する方向に対して直角方向に伸縮可能であって、多段の剛性および/または弾性材で構成される伸縮式弾性機構を有し、
前記搬送機構から突出するフック部を有する運搬機構を備えた搬送方式であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の立体自動倉庫。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の立体自動倉庫において、前記入出庫部の入庫部および/または出庫部の近くに集品容器提示部が設けられていることを特徴とする立体自動倉庫。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の立体自動倉庫において、前記入出庫部の入庫部および/または出庫部に物品または物品収納容器提示部が設けられ、前記物品または物品収納容器提示部の近くに集品容器提示部が設けられていることを特徴とする立体自動倉庫。
【請求項6】
前記物品または物品収納容器提示部に延長搬送手段が接続されていることを特徴とする請求項5に記載の立体自動倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦横方向に多段に積層された複数の保管ラックで構成される立体自動倉庫に係り、入出庫部と保管ラック間の通路を走行する運搬機構とを有し、物品または物品収納容器(以下、「物品」という。)の移動において保管ラック間の通路を介さずに隣り合う保管ラックにスムーズな移動を行うことを可能とした運搬機構を有する搬送方式を備えた立体自動倉庫に関する。ここで、立体倉庫における隣り合う保管ラックは、高さ方向について同一階にあり、運搬機構は、前記保管ラックに保管し得る全ての物品を保管および取出し可能とするものである。
【0002】
更に、本発明は、出庫部以降の物品の処理を効率的に行うことが可能な搬送方式を備えた立体自動倉庫に関する。
【背景技術】
【0003】
立体自動倉庫には、例えば特許文献1に記載される搬送方式を備えたものが知られている。これは、複数段の棚から構成される立体自動倉庫において、左右一対の保管ラック間に水平方向に走行する搬送機構が高さ方向の各段に配置されているものである。
【0004】
それによると、物品が、入庫部から搬送機構に搭載されて必要箇所へ保管され、必要時には必要箇所から搬送機構に搭載されて出庫部に移動されるように、この搬送機構は、左右方向に位置する保管ラックの双方に物品を出し入れ可能なピッキング機構を有している。更に、このピッキング機構は、搬送機構が有する移動フレームならびに前記移動フレームに装着されており、物品が搬送機構と保管ラックとの間を移動するに際し、移動フレームの移動範囲における任意の方向に物品を移動させることができる機能を有している。そして、物品が搬送機構と保管ラック間を移動する場合は、搬送機構の底部表面に位置する荷物載置部から保管ラックの棚部表面へ移動するか、もしくはその逆方向に移動することになる。
【0005】
特許文献2における立体自動倉庫においても、物品が入庫部から搬送機構に搭載されて必要箇所へ保管され、必要時には必要箇所から搬送機構に搭載されて出庫部に移動されるように、この搬送機構は、左右方向に位置する保管ラックの双方に物品を出し入れ可能なピッキング機構を有しており、上記同様、物品が搬送機構と保管ラック間を移動する場合は、搬送機構の底部表面に位置する荷物載置部から保管ラックの棚部底部表面へ移動するか、もしくはその逆方向に移動することになる。
【0006】
従って、特許文献1および特許文献2に係る搬送方式においては、搬送機構および保管ラックと接触する物品の表面、物品と接触する搬送機構の表面、および、物品と接触する保管ラックの表面の状態が、物品の搬送や保管に大きな影響を及ぼす。
【0007】
まず、倉庫における保管ラックの保管スペース部に関しては、物品を安定して定位置に保管することが重要である。しかしながら、前記立体自動倉庫には複数の搬送機構や入出庫のためのコンベアやリフト等の搬送手段機構が常に稼働しているために、構造物として一体化されている保管ラックの保管スペース部は常に搬送手段機構の動きに伴う微振動を生じている。そのため、その微振動によって物品が動かずに安定して定位置に配置・保管するためには、移動防止のための突起部を設けるか前記保管スペースの表面と前記物品の底面との間の摩擦力が充分に大きいことが必要となる。
【0008】
逆に、必要時には必要箇所から搬送機構に搭載され出庫部に移動する等、移動を容易に且つスムーズに行うためには、保管ラックの保管スペース部と物品との間に生じる摩擦力は極力小さくする必要がある。
【0009】
即ち、安定した保管のためには突起部や大きな摩擦力が必要である一方で、スムーズな移動のためには平坦で摩擦力を極力小さくする必要があり、相矛盾した要件を同時に満足させる必要が生じることになる。
【0010】
そのため、物品を定位置に安定して保管するためには前述のような保管領域の外周部に突起や突き当て部を設ける等の手法もあるが、物品の移動が困難であり、要件を満たすためには複雑な構造が必要となるので、現状では平坦な表面を設けているのが実情である。しかし、次のような問題がある。
【0011】
一般的に、静止状態から物体を移動させる際には、移動物体と接触面との間に固有の摩擦係数による摩擦力が生じ、外力が最大静止摩擦力を越えた時点で初めて物体が動き出し、その後は最大静止摩擦力より小さな動摩擦力の範囲で移動することが知られているが、立体自動倉庫が設置される環境状態や、日常的に多数の物品が様々な環境状態から出入りすることを考慮すると、相互に接触する表面の状態が、濡れや汚れ等によって最大静止摩擦力が予想以上に大きくなる場合がある。その際は、物品が動き始まるまでの微妙な時間ロスが積算されることになると同時に、物品に無理な力が掛ることになり物品の変形や装置への過大な負荷による悪影響を及ぼしかねない。
【0012】
また、前記の如く予想を超える最大静止摩擦力を想定して、充分に大きな力を有する駆動装置を設けて、それにより前記物品を移動することになるが、衝撃力を大きくすることにもつながる。この衝撃力を緩和させる方法として、移動速度を遅らせることも可能だが、全体システムの効率が低下することになる。更に新たな様々の機能を付加することもできるが、複雑な構造になるので経済的な課題が加わることになる。
【0013】
このように、立体自動倉庫全領域の物品のスムーズな移動、特に、背面で隣接する保管ラック間のスムーズな移動ができ、立体自動倉庫における物流効率を低下することがないと同時に、物品もしくは搬送機構の構造への負荷を増加させることがない簡便な搬送方式を備えた立体自動倉庫は、何れの文献にも開示されておらず、いまだ実現されていない。従って、従来の立体自動倉庫は、格納棚間および隣接する格納棚を1組とする格納設備間のZ軸方向の物品の自在な移動が困難で、倉庫内での仕分けができないので、予め設定された順序通りに出庫させる順出しを行うためには、時間調整や仕分けするためのコンベアを配備しなければならず、出庫部付近を中心とした大きなスペースが必要であるという問題がある。
【0014】
また、従来の入出庫作業が自動化された立体自動倉庫においては、出庫作業における物品の処理、例えば、物品の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類、保管庫内の物品の再配置、整理・整頓、処分等の仕分け作業を効率的に行うことができる搬送方式に着目した技術は認められない。特に、上記立体自動倉庫の課題が解決された場合、背面で隣接する保管ラック間の物品移動による立体自動倉庫内での物品の仕分けが可能となり、予め設定された順序通りに出庫させる順出し機能が向上するため、時間調整や仕分けするためのコンベアが不要となると共に、出庫処理能力を大幅に向上させることができる。従って、従来方式ではこれらの問題を解決する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特許第3358920号
【文献】国際公開第2010/049987号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記背景技術を鑑み、立体自動倉庫内全領域、特に、背面で隣接する保管ラック間の物品のスムーズな移動を効率的に行うためには複雑で高価な運搬機構を必要としていたという従来技術の問題点を解決し、物品をスムーズに移動することができ、立体自動倉庫の物流効率を低減すると同時に、物品もしくは関連する装置への負荷を低減する運搬機構を有する搬送方式を備えた立体自動倉庫の提供を目的とする。
【0017】
また、本発明は、上記運搬機構を有する搬送方式を備えた立体自動倉庫において、出庫された物品の処理を効率的に行うことができる搬送方式を備えた立体自動倉庫の提供を目的とする。特に、立体自動倉庫内での物品の仕分けが可能となる上記立体自動倉庫において生じる出庫処理能力の不足という課題を解決することができる立体自動倉庫の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
立体自動倉庫においては、運搬ユニットを安定して保管スペースに保管し、移動が必要な際には、スムーズな移動が必要である。しかし、前者の為には運搬ユニットと保管スペース間の摩擦が大きなことが必要であり、後者に対してはその摩擦が小さいことが望まれるという矛盾した課題を同時に解決する必要がある。本発明者らは、瞬間的に静止摩擦力を再々生じさせる構造、具体的には、弾性変形可能な構造を搬送機構に付加することでその矛盾を解決した。
【0019】
すなわち、運搬ユニットを移動する搬送機構に弾性変形可能な構造を付加することで、最大静止摩擦力を越える力を容易に得られる構造を導入することによって、上記課題を解決した。
【0020】
本発明の一態様は、請求項1に記載の通り、縦横方向に棚が多段に積層された複数の保管ラックから構成される保管倉庫部と、入出庫部と、保管ラックの物品の格納面の脇に設けられた通路を走行する搬送機構とを設けた立体自動倉庫において、その搬送機構が、保管ラックに保管し得る全ての物品を保管または取出し可能とするための多段の弾性構造物で構成されるかもしくは多段の剛性構造物間に弾性変形可能な構造物を介して構成される伸縮式弾性機構と、保管のために任意の位置に設置される物品を移動する際に、伸縮式弾性機構により駆動力および緩急の変化を組み合せた押出しもしくは引き出し力が、保管の位置の構造物表面と前記物品との間に生じる最大静止摩擦力を越える力を発生させる機構とから構成される運搬機構を有する搬送方式であることを特徴とする立体自動倉庫である。
このような運搬機構は、伸縮式弾性機構が多段の弾性構造物で構成されるかもしくは多段の剛性構造物間に弾性変形可能な構造物を介して構成されているので、保管のために任意の位置に設置される物品を移動する際に、伸縮式弾性機構による押出しもしくは引き出し力が、保管の位置の構造物表面と前記物品との間に生じる最大静止摩擦力を越える力を再々発生させることができ、物品が保管ラックに設置される構造物表面と前記物品間に生じる摩擦による上記課題を解決し、物品の安定した保管と同時にスムーズで確実な動きが得られるようになる。
【0021】
すなわち、伸縮式弾性機構を含むことによって瞬間的に最大摩擦力を越える大きな力を得ることが可能となるので、スムーズで確実な動きが得られる。同時に、保管すべき物品が微振動等で不用意に場所が移動しない程度の凹凸部やある程度大きな摩擦部を設定することも可能となるので、物品の安定した保管ができる。
【0022】
また、このような伸縮式弾性機構の作用効果は次の通りである。複数のリンク機構を組み合せる等で得られる伸縮機構の一部に、機構の伸縮方向に対して伸縮可能な弾性材を設けることによって、初期の物品に対する衝撃を緩和し、かつ、弾性材が圧縮された後最大摩擦力に到達した時点で物品が動き出し、その瞬間に物品とその保管構造物表面との摩擦が、静止摩擦から動摩擦に変わるので、抵抗が小さく、柔らかな物品の移動を与えることになる。ここで、初期の物品を押す力が、物品の動きに対して時間的に追従しない場合は、弾性材の復元力で物品に追従するか、または、若干の時間を経て柔らかに物品を押すことになる。一方、初期の物品を押す力が、物品の動きに対して時間的に追従する場合は、衝撃力なく物品を押すことができ、柔らかな動きを与えることになる。
【0023】
更に請求項2に記載の通り、本発明は、搬送機構が、保管ラックに保管し得る全ての物品に対し、多段で構成される伸縮式弾性機構を有する1台の搬送機構により保管または取出しを行うことを特徴とする立体自動倉庫であり、効率的な移動ルートを通過することができ、全体可動時間の短縮化による効率化が図れることになる。
【0024】
即ち、伸縮式弾性機構の伸縮方向に対する保管ラックの全ての領域を1台の搬送機構のみで物品を保管もしくは取出すことになるので、1台の搬送機構が位置する通路の両側に配置される保管ラックの全ての領域に対し、一連の動作で物品を取出し、移動、保管が可能となるのである。
【0025】
また請求項3に記載の通り、搬送機構が有する伸縮式弾性機構は、多段の剛性および弾性材で構成され、前記伸縮式弾性機構から突出する複数のフック部の所定の1箇所のフックにより、物品を伸縮方向に移動するための力を加えることが可能な運搬機構を備えていることを特徴とし、このような運搬機構により最大静止摩擦力を越える力を容易に得ることができる。
【0026】
即ち、前記物品の大きさが複数種混在する場合や、物品を前記保管ラックの奥深い位置に保管する場合や手前側に保管する場合等さまざまな状況に対し、前記物品の保管もしくは取出しを効果的に実行するために、伸縮方向の複数個所にフックを設け、前記の最大静止摩擦力を越える力を物品に加えることができるようにしたものである。
【0027】
また、本発明は、これまでに記載した運搬機構を有する搬送方式を備えた立体自動倉庫において、その入出庫部の入庫部および/または出庫部の近くに、集品容器提示部を設けたことを特徴とする立体自動倉庫である。そして、その入出庫部の入庫部および/または出庫部に物品が供給される物品提示部を設置し、その近くに集品容器提示部が備えられていることがより好ましい。更に、入出庫部に延長搬送手段を介して物品提示部が設置されることより更に好ましい。
【0028】
この入出庫部は、物品の搬入と搬出に係わる装置全体をいい、特に出庫部は、物品の処理、例えば、物品を品種別、送付先方面別、顧客別等に分ける仕分け、保管庫内の物品の再配置、整理、処分等を行うために、物品が供給される移載装置であれば限定されるものではないが、入庫部がこの物品が供給される移載装置を兼ねることも可能である。特に、このような移載装置として、入庫部および/または出庫部に物品が提示される物品提示部を設けることが好ましい。この場合には、物品提示部の近くに集品容器提示部を設ける。この物品提示部を設けることによって、立体自動倉庫の物品の出庫作業における物品の仕分け作業、並びに、倉庫内の物品の仕分け作業の自由度を高めることができる。そのため、上記物品が供給される移載装置およびこの物品提示部を構成する移載装置は、必要に応じ、一時貯留機構(アキュムレーションコンベア)、速度制御機構、正逆搬送機構、分岐搬送機構、合流搬送機構、および、停止機構の少なくとも一つ以上の機構を有するコンベアで構成されている。
【0029】
ここで、入出庫部あるいは物品提示部を構成する移載装置と集品容器提示部との位置関係を示す「近く」とは、作業者またはロボット等(以下、「作業者」という。)が実質的に移動することなく、入出庫部あるいは物品提示部に供給されてきた物品を取り出し、その取り出した物品を集品容器に投入しうることが可能であることを意味する。
【0030】
上記入出庫部あるいは上記物品提示部を構成する移載装置の近くに設けられる集品容器提示部は、作業者が実質的に移動することなく、入出庫部や物品提示部に供給されてきた物品を処理できる手段であって、段ボール箱やオリコン等の集品容器や袋やハンガー等の箱状でない容器を順次供給および搬出するコンベアゾーンであれば、特に限定されるものではない。また、物流効率の観点から、集品容器提示部には、種々の集品容器の供給部および搬出部に接続されていることが好ましい。
【0031】
更に、上記物品提示部は、倉庫の省スペース化や適正なレイアウトおよび動線の構築等の種々の目的に応じて、作業者による物品の処理を保管ラックの近辺で行う必要はなく、保管ラックから離れたところで行う方が好ましい場合には、すなわち、集品容器提示部を保管ラックから離れたところに設置する方が好ましい場合には、延長搬送手段を介して設けることができる。また、同様に、作業者による物品の処理を、保管ラックと同一階で行う必要はなく、保管ラックの階下あるいは階上で行うことが好ましい場合には、すなわち、集品容器提示部を保管ラックの階下あるいは階上に設置する方が好ましい場合には、物品提示部を階下あるいは階上に設置することができる。つまり、物品提示部及び集品容器提示部は、保管棚が設けられる全ての階及び保管棚のない階においても設置することができる。このような場合には、昇降手段やコンベア等の移載搬送装置を用いた物品の上下搬送を利用することが好ましい。
【0032】
このような出庫作業を効率的に行える搬送方式を、上記運搬機構を有する搬送方式を備えた立体自動倉庫に更に付与すれば、立体自動倉庫のどこからでも所望の物品を搬出入することができるという上記本発明の特徴を生かして、立体自動倉庫全領域の物品が入出庫部あるいは物品提示部に搬送されるので、それらの近くに設けられた集品容器提示部を用いると、作業者が実質的に移動することなく、効率的な物品の処理、例えば、物品の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類、保管庫内の物品の再配置、整理、処分等を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上、本発明の立体自動倉庫によれば、立体自動倉庫全領域の物品のスムーズな移動、特に、背面で隣接する保管ラック間のスムーズな移動ができ、立体自動倉庫における物流効率を低下することがないと同時に、物品もしくは搬送機構の構造への負荷を増加させることがない簡便な搬送が可能となる。この結果、立体自動倉庫内での物品の仕分けが可能となり、予め設定された順序通りに出庫させる順出し機能が向上するため、時間調整や仕分けするためのコンベアが不要となるので、立体自動倉庫の省スペース化を図ることができると共に、出庫処理能力を大幅に向上させることができる。
【0034】
また、本発明の立体自動倉庫によれば、出庫作業における物品の処理、例えば、物品の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類、保管庫内の物品の再配置、整理・整頓、処分等の仕分け作業を効率的に行うことができる。特に、上記物品のスムーズな移動が可能な立体自動倉庫の順出し機能に対応した出庫処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図3】一般的な立体自動倉庫における荷物の流れ概念図である。
【
図6】搬送機構の伸縮式弾性機構の例を示す斜視図である。
【
図7】搬送機構における摺動式弾性機構の具体的構造の例である。
【
図9】摺動式弾性機構が一方向に伸びた状態の例である。
【
図10】搬送機構における蛇腹式弾性構造の具体的構造の例である。
【
図11】摺動式弾性機構における内部面の構造例である。
【
図12】搬送機構から物品を押し出す状態の例である。
【
図13】搬送機構から物品を最大長に押し出す状態の例である。
【
図14】搬送機構が物品を最大長の位置から引き出す状態の例である。
【
図16】本発明の一実施態様である、入出庫部の搬出入コンベアの近くに集品容器提示部を設けた出庫搬送方式およびその物品の流れを示す概念図である。
【
図17】本発明の一実施態様である、入出庫部に物品提示部を設け、その近くに集品容器提示部を備えた出庫搬送方式を備えた立体自動倉庫およびその物品の流れを示す概念図である。
【
図18】本発明の一実施態様である、入出庫部に延長コンベアおよび物品提示部を設け、その近くに集品容器提示部を備えた出庫搬送方式およびその物品の流れを示す概念図である。
【
図19】本発明の一実施態様である、保管ラックから離れた位置に物品提示部を設け、その近くに集品容器提示部を備えた出庫搬送方式およびその物品の流れを示す概念図である。
【
図20】本発明の一実施態様である、保管ラックの階下に物品提示部や集品容器提示部等を備えた出庫搬送方式を示す概念図である。
【
図21】本発明の一実施態様である、保管ラックの直下に物品提示部や集品容器提示部等を備えた出庫搬送方式を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を、図面に示した一実施形態を用いてより詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0037】
図1は、保管ラック2の構造を概念的に描いたもので、縦横複数段並んだ保管スペース21を示し、ここでは縦3段、横6列の18か所の保管スペース21を有した例を示しているが、実際は更に多段のものが想定される。
【0038】
図2は、一般的な立体自動倉庫1の概念図であり、複数の保管ラック2が並列配置された倉庫部11と一部を描いた入出庫部12で構成され、図示しない物品の入庫~保管~出庫が管理された指示によって行われる構図を示している。入出庫部12は、例えば、第1のコンベア12aから第4のコンベア12d等の複数の水平方向に移動する手段と、例えば、リフト12e等の上下方向に移動する手段との組合せにより構成され、任意の位置の保管ラック2の任意の階に、物品を搬送する。一方、倉庫部11は、保管ラック2間に設けられる通路3の領域を図示しない搬送機構が走行することで、入出庫部12から搬送された物品を任意の保管スペース21に配置する、もしくは任意の保管スペース21から取出し移動し、入出庫部12に搬送する構成としている。
【0039】
図3は、前項で述べた立体自動倉庫1における物品7の流れの概念図であり、例えば、図中下方の破線矢印の流れでは、物品7が入出庫部12における第1のコンベア12aから第2のコンベア12bを経て、リフト12eにより所定の階に搬送され、搬送機構4を介して倉庫部11の<4>列目の保管ラック2の所定の位置に保管される流れを示している。また、図中上方の破線矢印の流れの例では、倉庫部11の<1>列目に保管されている物品7が搬送機構4を介して入出庫部12の複数のコンベアとリフト12eを介して第1のコンベア12aへ移動する流れを示している。因みに、立体自動倉庫1においては、物品7に対する入出庫指示並びに保管場所等の指示は全て集中管理され、その指示によって適宜稼働することになるが、本案に直接係らない内容に関しては省略している。
【0040】
図4は、保管ラック2における物品7を搬送する状態の図であり、
図3における4つの列に配置された保管ラック2の横方向に隣り合う保管スペース21が二列に並ぶ部分のみを描き、保管ラック2の配置が<2>と<3>列で描かれる位置において、物品7を<2>と<3>列の全領域で保管もしくは移動する状態の例を示している。ここで、図中左側の状態においては、搬送機構4に設置される二か所の伸縮式弾性機構5の先端に位置するフック6により、伸縮式弾性機構5を矢印で示す方向に最大限に伸ばし、物品7が伸縮方向の領域における如何なる位置にも送り込まれる状態を示している。一方、図中右側においては、搬送機構4に設置される二か所の伸縮式弾性機構5の先端に位置するフック6により、伸縮式弾性機構5を矢印方向に縮めることで物品7が搬送機構4の本体側に引き寄せる状態を示している。
【0041】
図5は、搬送機構4の上面図を示し、保管ラック2における通路3側の端部に位置するガイドレール22に沿って走行ホイール41の駆動力によって移動する搬送機構4の内側部には、二箇所の伸縮式弾性機構5が構成され、伸縮式弾性機構5は、例えば固定部42と一体化されて図示しない駆動部によって伸縮式弾性機構5の伸縮部が移動する機能を有する構造としている。ここで、伸縮式弾性機構5の最内側の面には、物品7を移動するための突出可能に変位する複数個のフック6が設置されることで、搬送対象となる物品7の大きさや、保管位置に押し込むかもしくは保管位置から引き出す等の動作に対し、所定のフック6で対応することを可能としている。
【0042】
更に
図5においては、複数個設置されるフック6が4段で配置される場合の例を示しており、図中上方をA側とし下方をB側として、4段のフック6が、上方からA側端部フック61a、A側内側フック62a、B側内側フック62b、B側端部フック61bの順に配置されている。ここに、搬送機構4から矢印A方向の保管ラック2に物品7を送り出すか引き出す際には、物品7の大きさもしくは配置位置によってA側端部フック61aもしくはA側内側フック62aによる突起部を利用し、矢印B方向の保管ラック2に対しては、同様にB側端部フック61bもしくはB側内側フック62bによる突起部を利用することで効果的に移動が可能となる。
【0043】
図6は、伸縮式弾性機構5の例を示した斜視図で、保管ラック2に取付けられた2本のガイドレール22上を走行する搬送機構4において、走行方向に対して直角方向に伸縮可能な伸縮式弾性機構5が二箇所に装備されている。因みに、この二箇所の伸縮式弾性機構5の内側間隔は、一連の自動倉庫に保管される物品7の最大幅に対する操作が可能な幅を有している。
【0044】
図7は、搬送機構4における伸縮式弾性機構5の具体的構造例として、摺動式伸縮弾性機構51を示しており、
図6におけるX-X方向の側面図に相当し、搬送機構4から第1の摺動部54aと第2の摺動部54bが伸縮する構図を示している。ここでは、図示しない駆動部によって第1の摺動部54aが例えば図中右側に移動すると共に第2の摺動部54bが同方向に移動している状態を示している。
【0045】
図8は、搬送機構4における伸縮式弾性機構5の具体的構造例として、摺動式伸縮弾性機構51を示しており、
図6におけるY-Y方向の側面図に相当し、摺動式伸縮弾性機構51が定位置にある状態を示す図である。この図は、摺動式伸縮弾性機構51として、固定部42、歯車機構を有するタイミングギア510、タイミングギア510に連動して回転可能で表裏面にタイミングギア510の凹凸ピッチと等しい凹凸ピッチを有したタイミングベルト511、タイミングベルト511に接する側にタイミングベルト511と等しい凹凸ピッチを有する第1の摺動部54a、第1の摺動部54aと連接する第2の摺動部54b、第2の摺動部54bに備えられたプーリー512、並びに、第1の摺動部54aと第2の摺動部54bを駆動するための第1のベルト513aおよび第2のベルト513bから構成される一例である。
【0046】
図9は、
図8の構造における第1の摺動部54aと第2の摺動部54bが一方向に伸びた状態の例を示し、タイミングギア510を一方向に回転することでタイミングベルト511が連動すると共に第1の摺動部54aが一方向に移動し、それと同時にプーリー512を介した二本の第1および第2のベルト513a、513bの張力のバランスを取ることで図示する方向に伸長する状態を示している。因みに逆方向に伸縮する場合は、タイミングギア510を前記の方向と逆方向に回転することで実現する。
【0047】
図10は、搬送機構4における伸縮式弾性機構5の具体的構造例として、複数本の梁をクロスさせて組み合わせたラチス式伸縮弾性機構52を示しており、
図6におけるX-X方向の側面図に相当する。この場合、伸長時の長さが長くなる場合でも自重による撓みをなくすために、また、物品7を押し出す際に軸力方向の力が分力とならぬように、ラチス式伸縮式弾性機構52の先端部底面に、ほぼ無視し得る滑り摩擦力となる例えば回転体53の如くの構造体を取付けると有効である。これについては、上述した摺動式伸縮弾性機構51についても同様である。
【0048】
図11は、摺動式伸縮弾性機構51において搬送機構4の内側に向いた面の構造例を示し、前述の
図8における第2の摺動部54bの表面に構成されるフック6の構成例を描いている。フック6は、図示しない物品7を、入庫時には搬送機構4に搭載し、保管時には必要位置に送り込み、出庫時には搬送機構4に一時搭載した後に次の位置に送り込むために使用され、通常時は第2の摺動部54bの表面から突出することなく収まり、物品7を移動する際には、必要箇所のフック6が表面部より突出することで物品7の一部に当接し、伸縮式弾性機構5全体が伸縮することで任意の位置に物品7を移動することを可能としている。
【0049】
このフック6は、左右対称位置に置かれる二つの伸縮式弾性機構5の内側に複数個配置され、ここでは、その前後両端にA側およびB側端部フック61aおよび61b、並びにそれらに挟まれる領域の、ここでは62aおよび62bを備えた例を示しているが、これに限定されるものではない。また、その構造は、例えばZ部拡大図に示すように回転軸55を中心に略90度回転する等の構造で、第2の摺動部54bの表面から突出する機能を有している。
【0050】
図12から
図14は、伸縮式弾性機構5が弾性変形を伴いながら伸縮する際の物品7との具体的な関係を示している。
【0051】
図12は、搬送機構4から物品7に対しB側端部フック61bを介して押し出す状態を示しており、物品7が大きく、保管ラック2の通路3側寄りに配置する場合の例を示している。
【0052】
図13は、搬送機構4から物品7に対しA側端部フック61aを介して押し出す状態で、保管ラック2の奥行きに対して、伸縮機構
5の最大伸長長さを要する時の状態を示す。因みにこの状態に至る前には、搬送機構4の略中央部に置かれた物品7に対し、伸縮式弾性機構5は、先ず図中の矢印方向と逆方向に移動し、A側端部フック61aが物品7を押し出し可能位置に到達したところでA側端部フック61aを表面から突出させることで物品7に当接して図中矢印で示す押出し方向に移動し、本図の状態に至るのである。
【0053】
図14は、搬送機構4から物品7に対しA側端部フック61aを介して最大長の位置から引き出す状態を示している。
図13でも示したような、保管ラック2の奥行きに対して伸縮機構4の最大伸長長さを要する位置に物品7が保管されている場合に引き込む場合の例である。
【0054】
図15は本構造における静止摩擦と運動摩擦の関係図を示している。一般的に、或る摩擦係数を有する平板に置かれた物体が外力によって移動し始める場合、図の実線で示す如く、最初は物体と平板固有の摩擦係数に依存する摩擦力に相当する外力が掛り、最大静止摩擦力f
0の力以上の力が掛った時に初めて物体が動き出し、その後はその力より小さな動摩擦力f’の力によって連続した動きをすることになる。
【0055】
ここに、保管スペース21の表面や物品7の底面等の表面状態において、何らかの理由によって汚れや濡れ等によって予想以上に大きな摩擦を生じる可能性がある。仮にそのような状態で物品7を移動させるとした時に、摩擦が大きいために容易に動かないとしたら、物品7の外装部にダメージを与えるか、搬送機構4の駆動部等に大きな負荷が掛ることになり、それらが繰り返されることによって故障の原因になることも考えられる。
【0056】
そのようなダメージを極力なくすために、
図6から
図10における構造例のような弾性特性を利用した伸縮式弾性機構5を設けることによって、例えば、最初に搬送機構4の伸縮式弾性機構5を伸ばそうとする外力が加わった時には、上述した構造例の一連の弾性部、例えば
図8および
図9におけるタイミングギア510、タイミングベルト511、ベルト513の連続体は引っ張られる方向に変形するために、当初は、物品に対する衝撃が緩和されるが、次第に力を増して最大静止摩擦力f
0を超えた力に到達し、物品が動き出すことになる。これらの伸縮式弾性機構による弾性力は、一連の弾性体が引張応力となる初期の外力によって変形した結果、エネルギーが蓄えられるが、外力として瞬時に発散され、瞬時に初期に設定された安定した外力に落ち着かせることができる能力がある。ここでは、
図8および
図9での構造との関係を述べたが、伸縮式弾性機構5の構造の一部にでも弾性体を含む場合は同様の挙動が得られることは言うまでもなく、且つ引張変形のみならず圧縮変形でも同様の挙動が得られることになる。
【0057】
次に、搬送機構に特徴を有する本発明の上記立体自動倉庫において、入出庫部の入庫部および/または出庫部の近くに、あるいは、入庫部および/または出庫部に設けた物品提示部の近くに、集品容器提示部を設けたことを特徴とする出庫搬送方式を図面により詳細に説明する。
【0058】
図16は、本発明の一実施態様である、入出庫部の入庫部および/または出庫部の近くに集品容器提示部を設けた出庫搬送方式およびその物品の流れを示す概念図である。図中の2本の通路3a、3bのうち、通路3aの両側には保管ラック2の<1>、<2>が設けられており、もう一本の通路3bの両側には保管ラック2の<3>、<4>が設けられている。
【0059】
入出庫部12には、物品7を入出庫する第1のコンベア12aが設けられている。この第1のコンベア12aは、通常のコンベアでもよいが、必要に応じ、一時貯留機構(アキュムレーションコンベア)、速度制御機構、正逆搬送、分岐搬送、合流搬送、および、停止の少なくともいずれか一つ以上の機能が付与されたコンベアから構成されていることが好ましい。
【0060】
そして、物品を入出庫する第1のコンベア12aに隣接するように集品容器提示部81a、81bが設けられており、作業者84a、84bは、第2のコンベア12bを経て第1のコンベア12aに供給される物品7を取扱う。
【0061】
ここで、第1のコンベア12aと集品容器提示部81a、81bとの位置関係は、作業者が実質的に移動することなく、例えば、第1のコンベア12aに供給されてきた物品を取り出し、その取り出した物品を集品容器8に投入しうる距離や場所のことである。なお、取り出し作業は作業者84a、84bによる場合だけではなく、ロボット等のマテハン装置を用いる場合もある。
【0062】
また、第1のコンベア12aの破線で示した領域12fa’、12fb’は、作業者84a、84bが集品作業を行うための物品が提示される、いわゆる、後述する物品提示部の機能を果たしている。
【0063】
更に、空の集品容器8を集品容器提示部81a、81bへと供給するための、周知のローラーコンベアと分岐機構等からなる集品容器供給部82と、集品された集品容器8を次工程へと搬出するための、周知のローラーコンベアと合流機構等を備える集品容器搬出部83が設けられている。ただし、このような集品容器供給部82および集品容器搬出部83の装置や方式は特に限定されるものではない。
【0064】
次に、このような構成の立体自動倉庫における物品は、次のように搬送される。通路3aの搬送機構4aを用いて保管ラック2の同一階の<1>と<2>との間は、物品を移動でき、同様に通路3bの搬送機構4bを用いて保管ラック2の同一階の<3>と<4>との間も物品を移動することができる。更に、
図4で説明したように、保管ラック2の同一階の<2>と<3>との間も伸縮式弾性機構5によって、自在に移動できる。このように、保管ラック2の同一階の<1>から<4>までの全領域で、物品7の移動が可能である。更に、リフト12eを使用することによって、本発明の立体自動倉庫の全領域にある物品7を自在に移動させ、立体自動倉庫内で仕分けすることができる。
【0065】
そこで、まず物品の入庫を、例えば、第1のコンベア12aを用いて搬送されてきた物品7cについて説明すると、物品7cが、第2のコンベア12b、第3のコンベア12c、第4のコンベア12dを経由し、通路3bの搬送機構4bを用いて、保管ラック2の同一階の<3>と<4>の指定された保管ラック、例えば、7c-1の位置に入庫される。更に、リフト12eを使用することによって、別の階の保管ラックにも入庫することができる。
【0066】
次いで、ある仕向け先への特定の物品7を集品する場合、本発明の立体自動倉庫の全域にある物品7から、搬送機構4、伸縮式弾性機構5、および、リフト12eを用いて、その仕向け先への特定の物品7を集品容器提示部81a、81bと同一階の<1>または<2>の保管ラック2に移動させておく。例えば、
図16では、その特定の物品7aを7a-1の位置に移動させた場合である。ここに移動された物品7aは、搬送機構4aによって取出され、第4のコンベア12d、第3のコンベア12c、第2のコンベア12bを経由して、第1のコンベア12aに移動する。ここで、第1の集品容器提示部81aが、第1のコンベア12aに隣接して設けられているため、作業者84aが、実質的に移動することなく物品7aを処理することができる。物品7aから集品されるものがある場合には、(図示されていない)表示器に従って、作業者84aが、移動することなく集品容器供給部82から供給される集品容器8に物品7aの一部を移載し、指示された範囲の数量で集品容器8に収容されたことを確認した後、集品容器搬出部83に送り出される。そして、第1の集品容器提示部81aに、集品容器供給部82より次の空の集品容器8が供給される。一方、物品7aは、次の集品作業に備え、再度保管ラック2に整理して保管されるため、7a-2の位置に戻される。
【0067】
同様に、別の仕向け先への特定の物品7bを7b-1に移動させて、作業者84bが集品作業を行うが、例えば、物品7bの全てが集品された場合には、物品7bを搬出するため、7b-2の位置に搬出される。
【0068】
集品する物品は、その保管ラックが、集品容器提示部81a、81bと同一階の場合は、搬送機構4aを用いて、順次、その仕向け先への物品を搬送し、リフト12eを介することなく入出庫部12の端部にある第1のコンベア12aへと搬送される。そして、集品する物品の保管ラックが、集品容器提示部81a、81bと同一階にない場合は、第3のコンベア12cからリフト12eを介して、入出庫部12の端部にある第2のコンベア12bから第1のコンベア12aへと搬送される。しかし、上述したように、本発明の立体自動倉庫では、ある仕向け先への特定の物品7を集品する場合、立体自動倉庫全域にある物品7から、搬送機構4、伸縮式弾性機構5、および、リフト12eを用いて、その仕向け先への特定の物品7を集品容器提示部81a、81bと同一階の保管ラック2に仕分けしておくように制御される。
【0069】
このような特定の物品7の移動は、集積されたデータに基づいて、各種コンベヤ、搬送機構、表示器、集品容器等を連動、統括する一般的な立体自動倉庫の(図示しない)制御部によって実行される。
【0070】
なお、ここで、入出庫部12における物品の搬送順は、立体自動倉庫の制御部によって、同一仕向け先のものとなるように整列されてもよいが、もちろん、同一仕向け先かどうかに限らず配送順が指定されている場合には、そのような順番に物品を並べ直して搬送することが自在にできる。
【0071】
一方、保管ラック2は<1>から<4>までの4ゾーンに限定されず、通路3も通路3a、3bの2通路に限定されず、更に多数のゾーンや通路であってもよく、同様の機構により、ゾーン間の自在な移動を実現することができる。
【0072】
また、集品容器供給部82、集品容器提示部81aおよび81b、集品容器搬出部83は、ローラーコンベア等によるとしたが、ローラー以外のコンベア、例えばベルトコンベアや、モノレール、リフト等、コンベア以外の手段であってもよい。
【0073】
更に、集品容器8としては、段ボール箱やオリコン等の容器が好ましいが、それに限定せず、袋やハンガー等の箱状でない容器や、容器のないコンベアのゾーン等であってもよい。
【0074】
このようにして、作業者は、その位置を実質的に移動する必要がなく、目の前に搬送されてくる物品7を集品容器8へと移載すればよく、効率的な集品および出庫作業ができる。
【0075】
図17は、入出庫部12端部に第2のコンベア12bから物品が供給される物品提示部12fa、12fbを設け、それに隣接するように集品容器8を集品のために提示する集品容器提示部81a、81bを配備したことを特徴とする本発明の一実施形態である。ここでも、物品提示部12fa、12fbと集品容器提示部81a、81bとの位置関係は、作業者が実質的に移動することなく、例えば、出庫部12fa、12fbに供給されてきた物品を取り出し、その取り出した物品を集品容器8に投入しうる距離や場所にあることである。
【0076】
この物品提示部12fa、12fbは、
図16における第1のコンベア12aの破線の領域12fa’、12fb’と同様の機能を果たすものである。しかし、
図17に示す物品提示部12fa、12fbを設けることによって、立体自動倉庫の物品の入出庫、出庫作業における物品の処理、例えば、物品の品種別、送付先方面別、顧客別等の分類、更には、保管庫内の物品の再配置、整理・整頓、処分等の仕分け作業の自由度を高めることができる。従って、物品提示部12fa、12fbは、必要に応じ、一時貯留機構(アキュムレーションコンベア)、速度制御機構、正逆搬送機構、分岐搬送機構、合流搬送機構、および、停止機構の少なくとも一つ以上の機構を有するコンベアで構成される。
【0077】
更に、
図18は、
図17の第2のコンベア12bと物品提示部12fa、12fbとの間に延長コンベア12
ga、12
gbを設けたことを特徴とする本発明の一実施形態である。この延長コンベアによって、作業者84a、84bの作業環境およびスペース、集品容器供給部82や集品容器搬出部83等が自在に配置できるようになる。
【0078】
特に、
図19に示すように、延長コンベア12
ga、12
gbを長くすると、立体自動倉庫敷地内において、保管ラックと出庫作業場とが、同一の建屋であっては、建屋内で自由な配置が可能であり、同一建屋内にある必要もない。
【0079】
また、第1の物品提示部12faと第1の集品容器提示部81aとから構成される出庫搬送方式および第2の物品提示部12fbと第2の集品容器提示部81bとから構成される出庫搬送方式が保管ラック2と同一階にない場合の一実施形態として、
図20に示したような構成とすることもできる。
【0080】
図20は、
図17において、第1の物品提示部12faと第1の集品容器提示部81aとから構成される出庫搬送方式および第2の物品提示部12fbと第2の集品容器提示部81bとから構成される出庫搬送方式を保管ラック2の階下に配設した場合の、切断線I付近における断面の概念図である。例えば、処理される物品7が、7b-1の位置に保管されている場合、搬送機構4で搬送された物品7が、第4のコンベア12d、第3のコンベア12cを経て、リフト12eを介して、階下の第3のコンベア12c-1、階下の第2のコンベア12b-1に移載され、階下の第2の物品提示部12fbへと搬送される。ここで、階下の第3のコンベア12c-1、階下の第2のコンベア12b-1は、
図17の切断線Iにあるものではなく、保管ラック<3>の階下にあるものを便宜上図示した。そして、作業者84bによって、これに隣接した第2の集品容器提示部81bへ物品の処理が行われる。これは、物品提示部と集品容器提示部とからなる出庫搬送方式をある保管ラックの階下に置いた例であるが、階上に配設することも可能である。
【0081】
更に、立体自動倉庫の省スペース化を図るために、保管ラックの直下に物品提示部と集品容器提示部とからなる出庫搬送方式を配設した、本発明の一実施形態の断面の概念図を図21に示す。このように、第2の物品提示部12fb、第2の集品容器提示部81b、集品容器供給部82、集品容器搬出部83を保管ラック2の直下に配設することによって、立体自動倉庫のスペースが大幅に削減可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、倉庫全域に保管されているものが自在かつ効率的に移載され、それが作業者やロボット等によって処理、すなわち、仕分け作業ができる搬送方式を備えた立体自動倉庫であるため、単なる物品および物品収納容器等に限定されるものではなく、車、書籍、部品、完成品等のあらゆる保管管理システムに適用することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 立体自動倉庫
11 倉庫部
12 入出庫部
12a 第1のコンベア
12b 第2のコンベア
12b-1 階下の第2のコンベア
12c 第3のコンベア
12c-1 階下の第3のコンベア
12d 第4のコンベア
12e リフト
12fa 第1の物品提示部
12fa’ 第1の物品提示部と同じ機能を果たす領域
12fb 第2の物品提示部
12fb’ 第2の物品提示部と同じ機能を果たす領域
12ga 第1の延長コンベア
12gb 第2の延長コンベア
2 保管ラック
21 保管スペース
22 ガイドレール
23 保管ラックの床面
3 通路
4、4a、4b、 搬送機構
41 走行ホイール
42 固定部
5 伸縮式弾性機構
51 摺動式伸縮弾性機構
510 タイミングギア
511 タイミングベルト
512 プーリー
513a 第1のベルト
513b 第2のベルト
52 ラチス式伸縮弾性機構
53 回転体
54a 第1の摺動部
54b 第2の摺動部
55 回転軸
6 フック
61a A側端部フック
61b B側端部フック
62a A側内部フック
62b B側内部フック
7 物品
7a、7b 移載される物品
7a-1、7b-1、 移載される物品の保管されていた位置
7a-2、7b-2、 物品が移載された後の物品の位置
7c 保管される物品
7c-1 物品が保管される位置
8 集品容器
81a 第1の集品容器提示部
81b 第2の集品容器提示部
82 集品容器供給部
83 集品容器搬出部
84a、84b 作業者
9 支柱
F 摩擦に対して動かそうとする力
f 摩擦力(Fの反力)
f0 最大静止摩擦力
f’ 動摩擦力
N 物品の重さ(mg)に対する垂直抗力
t 時間
I 切断線