(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】改善された電気的連続性を備えたチューブ状全ワイヤ緯編みメッシュスリーブ
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20220114BHJP
D04B 1/14 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H05K9/00 E
D04B1/14
(21)【出願番号】P 2019570453
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(86)【国際出願番号】 US2018038619
(87)【国際公開番号】W WO2018237086
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-02-06
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519299717
【氏名又は名称】エーシーエス インダストリーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】グリーンウッド、ジョージ
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-040973(JP,A)
【文献】特開2004-152871(JP,A)
【文献】特開平08-322134(JP,A)
【文献】米国特許第05294270(US,A)
【文献】特表2004-531898(JP,A)
【文献】特開2008-251892(JP,A)
【文献】特開2013-110053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
D04B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ワイヤガスケットスリーブであって、
複数の導電性ワイヤフィラメントから編まれた緯編みチューブ状スリーブと、
前記
緯編みチューブ状スリーブ
の緯編みパターンに織り込まれた導電性バスワイヤと、
を有し、
前記
緯編みチューブ状スリーブは平坦化され、前記
導電性バスワイヤ
がジグザグパターンで前記平坦化されたスリーブに付着され、
前記導電性バスワイヤが損傷あるいは前記緯編みチューブ状スリーブから巻き出されたりすることなしに前記
導電性バスワイヤ
と前記緯編みチューブ状スリーブを弛緩状態から軸方向に15%伸張可能に
するものであ
り、
前記導電性バスワイヤは、前記緯編みパターンとは異なるパターンで前記緯編みチューブ状スリーブに編み込まれるものである、
全ワイヤガスケットスリーブ。
【請求項2】
請求項1記載の全ワイヤガスケットスリーブにおいて、前記
導電性バスワイヤは、軸方向に2つのループを、また半径方向に1つのループをスキップし、繰り返しのジグザグパターンを形成するように前記緯編みパターンに編みこまれるものである、全ワイヤガスケットスリーブ。
【請求項3】
請求項1記載の全ワイヤガスケットスリーブにおいて、
前記
導電性バスワイヤは、ジグザグパターンで前記平坦化スリーブを通して縫い付けられて、弛緩状態から軸方向に15%伸張可能となる、全ワイヤガスケットスリーブ。
【請求項4】
請求項1記載の全ワイヤガスケットスリーブにおいて、
前記
導電性バスワイヤは、ジグザグパターンで前記平坦化されたスリーブに溶接され、前記
導電性バスワイヤがその弛緩状態から軸方向に15%伸張することを可能にする、全ワイヤガスケットスリーブ。
【請求項5】
請求項1記載の全ワイヤガスケットスリーブにおいて、
前記導電性ワイヤフィラメントは
、0.075mm
~0.1mmのワイヤ直径
、70~125KSIの引張強度、および少なくとも12%の伸びを有するものである、全ワイヤガスケットスリーブ。
【請求項6】
請求項1記載の全ワイヤガスケットスリーブにおいて、
前記
導電性バスワイヤは、3つの平行バスワイヤフィラメントを有するものであり、前記平行バスワイヤフィラメントの各々は
、0.075mm
~0.1mmの間のワイヤ直径
、70~ら125KSIの間の引張強度、および少なくとも12%の伸びを有するものである、全ワイヤガスケットスリーブ。
【請求項7】
請求項
5記載の全ワイヤガスケットスリーブにおいて、
前記
導電性バスワイヤは、3つの平行バスワイヤフィラメントを有するものであり、前記平行バスワイヤフィラメントの各々は
、0.075mm
~0.1mmの間のワイヤ直径
、70~125KSIの間の引張強度および少なくとも12%の伸びを有するものである、全ワイヤガスケットスリーブ。
【請求項8】
請求項1記載の全ワイヤガスケットスリーブにおいて、
前記ワイヤフィラメントの各々が、30%の銅と70%のニッケルの合金を有するものである、全ワイヤガスケットスリーブ。
【請求項9】
請求項1記載の全ワイヤガスケットスリーブにおいて、
前記
導電性バスワイヤは、2以上の平行バスワイヤフィラメントを有するものであり、前記平行バスワイヤフィラメントの各々は
、0.075mm
~0.1mmの間のワイヤ直径
、70~125KSIの間の引張強度および少なくとも12%の伸びを有するものである、全ワイヤガスケットスリーブ。
【請求項10】
請求項9記載の全ワイヤガスケットスリーブにおいて、
前記ワイヤフィラメントの各々が、30%の銅と70%のニッケルの合金を有するものである、全ワイヤガスケットスリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ワイヤメッシュEMIシールド製品に関し、より具体的には、改善された電気的連続性を有する新規の全ワイヤ横編チューブ状スリーブに関する。
発明の背景
【背景技術】
【0002】
メッシュガスケットまたはスリーブは、さまざまな電子システムおよび製品で使用されている。従来技術のメッシュガスケットは、張力と圧縮の両方でフィラメント間の接続が切断される可能性があり、それによりスリーブ長に沿った連続的な電気接続が切断されるため、電気的連続性または信頼性が低い。さらに、従来技術のスリーブは、破損する前に引張強度または圧縮を含む不十分な機械的特性から問題が生じる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2002/0195260号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2007/0243356号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2014/0251651号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2008/0135119号明細書
(特許文献5) 米国特許第5,512,709号明細書
(特許文献6) 米国特許出願公開第2007/0275199号明細書
(特許文献7) 米国特許第4,784,886号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、改善された機械的特性を備えた様々な構成で改善された電気的連続性を有する改善されたチューブ状メッシュスリーブが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、平坦化されたリボン形状への良好な圧縮を示すと同時に、シールドのための改善された端から端までの導電性を示す改善されたシールドガスケットまたはスリーブを提供する。本発明の全ワイヤシールドガスケットは、複数の導電性ワイヤフィラメントからのチューブ状スリーブとして緯編み可能である。有利には、導電性バスワイヤを緯編みパターンに織り交ぜてチューブ状スリーブを形成し、ガスケットの全長に沿って改善された電気接触を提供することができる。例示的な一実施形態では、バスワイヤは、スリーブの緯編みパターンに直接編むことができる。たとえば、バスワイヤは、スリーブが編まれる間またはチューブ状に編まれた後に、2つのループを軸方向に、また1つのループを半径方向にスキップして、ジグザグパターンを繰り返すステッチパターンを持つことができる。別の実施形態では、バスワイヤは、平坦化された前記チューブ状スリーブにジグザグパターンで縫い付けることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のバスワイヤを前記スリーブに縫い付けることができる。さらに他の実施形態では、前記バスワイヤは、平坦化された後の前記チューブ状スリーブの表面にジグザグパターンで溶接することも可能である。すべての実施形態において、前記バスワイヤを破損することなく、前記スリーブの少なくとも15%の軸方向の伸張を可能にすることができる。例示的な一実施形態では、前記導電性ワイヤフィラメントは、約0.075mm~約0.1mmのワイヤ直径、約70~125KSIの引張強度、および少なくとも12%の伸びを有する銅/ニッケル合金であり得る。更に、各バスワイヤは、2つ以上(好ましくは3つ)の平行なバスワイヤフィラメントの束を有することができる(2つ以上のワイヤフィラメントが一緒に束ねられる)。各ワイヤは、約0.075mm~約0.1mmのワイヤ直径、約70~125KSIの引張強度、および少なくとも12%の伸びを有する銅/ニッケル合金であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本明細書は、本発明の特定の実施形態を特定し、明確に請求する特許請求の範囲で終了するが、本発明の様々な実施形態は、添付の図面と併せて読むことにより、本発明の様々な実施形態の以下の説明からより容易に理解および認識され得る。
【
図1】
図1は、バスワイヤを緯編みパターンに組み込む第1の例示的な実施形態の緯編みステッチパターンの概略図である。
【
図2】
図2は、編み込みおよび平坦化後の緯編みステッチパターンの概略図である。
【
図3】
図3は、距離ΔLだけ引き伸ばされた緯編みチューブの概略図である。
【
図4】
図4は、先行技術の遮蔽材料と比較した、
図2の緯編みスリーブの好ましい実施形態の性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ここで図面を参照すると、本発明のスリーブまたはガスケットの第1の例示的な実施形態が
図1および
図2に詳細に示され説明される。
【0007】
全ワイヤガスケットスリーブ100は、複数の導電性ワイヤフィラメント110からチューブ状スリーブとして編まれる。いくつかの実施形態では、全ワイヤチューブ状スリーブガスケット100はEMIシールドガスケットとして使用され得る。
【0008】
編み材料は、一般に、蛇行する経路またはコースをたどる単一または複数の導電性ワイヤまたはフィラメントを有し、ワイヤの平均経路の上下に対称的なループの行を形成する。各ステッチが次のステッチから吊り下げられる一連のステッチは、一般に、行104a、104b、104cに示されるウェールと呼ばれる。緯編みパターンでは、各ウェールにステッチを追加し、ラスタースキャンのように布地を横切って移動することにより、布地全体を糸110の単一ストランドまたは複数のストランドから製造することができる。あるいは、スリーブを経編みパターンで縫うまたは編むことができる。スリーブ100は、手または機械で編むことができる。一実施形態では、緯編みスリーブ100は、単一供給の8針(8N)編機で編むことができる。一実施形態では、スリーブ110は、48Nから70Nのニードルカウントを有する機械で製造することができる。好ましくは、チューブまたはスリーブ100は、約6mmから約24mmの間の直径を有することができる。一実施形態では、チューブ100は、約15mmの直径および24mmの平坦化された幅を有することができる。いくつかの実施形態では、チューブ100は、編み長さ25mm当たり約10~12個の開口部を有することができる。他の構成も考えられる。
【0009】
例えば、15mmの直径(W1)および24mmの平坦化された幅(W2)を有する例示的な実施形態のチューブ100では、少なくとも48Nのニードルカウントを使用して、1mmの開口部を有するメッシュを作成できる。代替実施形態では、70Nヘッドは、15mmの直径(W1)、24mmの平坦化された幅(W2)、及び0.68mmの開口部を有するチューブ100を作成することができる。チューブ100は、スリーブがチューブ形状であるときに幅W1よりも大きい幅W2を有するように平坦化できる連続長のストックに編むことができる。平坦化すると、チューブ100は半径方向に伸びて、より大きな幅W2を作り出すことができる。一実施形態では、平坦化されたチューブ状スリーブ100は、約10mmから15mm以上の幅W2を有することができる。いくつかの実施形態では、チューブ100は、連続的に編まれ、平坦化され、以下で説明するようにそれにバスワイヤ120を取り付けることが可能である。チューブ100が作られているとき、その後の使用のためにそれをスプールすることができる。例えば、バスワイヤ120を備えた平坦化されたチューブ100の所望の長さは、必要に応じてスプールから切断することができる。
例示的な実施形態では、チューブ100は、約0.075mmから約0.1mmの間のワイヤ直径、約70から125KSIの間の引張強度、及び少なくとも12%の伸びを有する銅/ニッケル合金であり得る導電性ワイヤフィラメント110を使用して編むことができる。1つの好ましい実施形態では、合金は、MONELtm(MONELはSpecial Metals Corpの商標である)などの30%銅70%ニッケル合金である。その他の可能な材料には、430ステンレス鋼の導電性フィラメントまたはMUMETALtmなどのニッケルベースの合金が含まれます(MUMETALはMagentic Shield Corporationの商標です)。
【0010】
引き続き
図1および
図2を参照すると、上述のように、少なくとも1つの導電性バスワイヤ120は、スリーブ100の全長Lに沿って改善された電気接触を提供するために、チューブ状スリーブ100の緯編みパターンに織り交ぜられ、織られ、または縫い付けられる。例示的な実施形態では、バスワイヤ120は、軸方向に2つのループ104a、104bおよび周方向に1つのループ102aをスキップし、繰り返しのジグザグパターンを形成して、緯編みパターンに編むことができる。ステッチの丈に使用されるバスワイヤ120の長さは、ステッチ自体の長さよりも長い。つまり、1本のステッチを作成するために、ステッチが長い場合よりも長いバスワイヤが使用される。少なくとも
図2に示すように、1つまたは複数のバスワイヤのステッチ122は、第1位置124aから軸方向に第1列104aから2行、第2行104bを通って第3行104cへ下方に第2の場所124bまで延びることができる。ステッチ122は、第1の列102aから第2の列102bまで周方向に横方向に続き、第3の行104cから第2の行まで軸方向に1行上に第3の位置124cまで続くことができる。第3の位置124cから、ステッチ122は、軸方向に3行および横方向に1列に続き第4の位置124dに戻ることができる。このパターンは、チューブ状スリーブ100の長さで継続できる。
バスワイヤ120は、好ましい実施形態では、約0.075mmから約0.1mmの間のワイヤ直径、約70~125 KSIの強度と少なくとも12%の伸びを有する30%銅/70%ニッケル合金(MONELTM)をそれぞれ含む3つの平行バスワイヤフィラメントを含むことができる。3本の平行なバスワイヤフィラメントを単一のバスワイヤ120として束ねて、チューブワイヤ100とバスワイヤ120との間に追加の幅と表面接触面積を与え、スリーブ100の全長に沿って導電性を改善することができる。言い換えれば、バスワイヤ120は、単一のワイヤフィラメント、または2つ以上の束ねられたワイヤフィラメントから構成されることが可能である。実際に、バスワイヤ120は、チューブ100の全長に延びることができ、ウェールを構成する編まれたワイヤ110が破損した場合に、ウェール間の導電性を確実化する。ジグザグパターンのため、バスワイヤ120の特定のステッチは、バスワイヤ120が破損したりスリーブ100から巻き出されたりすることなく、スリーブ100を軸方向に最低15%引き伸ばすことができる。別のジグザグパターンも本開示の範囲内にあると考えられる。
【0011】
別の実施形態では、バスワイヤ120は、チューブ状スリーブが平坦化された後、ジグザグパターンでチューブ状の全ワイヤ緯編みスリーブ100に長手方向に縫い付けることができる。この例示的な実施形態は、約10mmから約15mmの平坦化された幅W2を有する。他のサイズおよび構成も考えられる。引き続き
図2を参照すると、代替実施形態では、バスワイヤ120は、平坦化された後のチューブ状スリーブ100の表面にジグザグパターンで、追加で縫い込まれるか、または縫う代わりに溶接することができる。完成すると、
図2及び3に示されるように、ニットガスケット100のすべての実施形態は、バスワイヤ120を第1の長さL1から第2の長さL2まで破損することなく少なくとも15%軸方向に伸ばすことができる。
【0012】
別の代替実施形態では、2つ以上の平行バスワイヤ120(それぞれ3本のフィラメントを含む)は、スリーブが平坦化される前または後にチューブ状スリーブ100に編み込み、縫い込みされ、または溶接され得る。ガスケット内のバスワイヤ120の特定の周方向の位置は、機能にとって重要ではない。スリーブを形成するために、環状経糸編みなどの他の編み方法も考えられる。
【0013】
図4を参照すると、インスタントガスケット100は、従来技術のシールド材料(フォイルテープ、従来のメッシュ、およびフォイルテープを備えた従来のメッシュ)と比較した場合、性能が向上していることが分かる。テストでは、導電性ワイヤを、フォイルテープ、メッシュスリーブ、フォイルテープを使用したメッシュスリーブ、およびバスワイヤ付き緯編みメッシュで同軸シールドしてある。
図4は、x軸のヘルツ(Hz)の周波数でy軸のdBの吸収があるこれらの材料の性能をグラフで示したものである。本ガスケット100(バスワイヤを備えた緯編メッシュチューブ)は、約500KHzから約30MHzの間で優れた遮蔽性能を示し、これは多くの電子用途にとって望ましい動作範囲である。
【0014】
したがって、例示的な実施形態は、改善された導電性および遮蔽効果を有する新規で進歩性を有する電磁遮蔽ガスケットを提供することがわかる。いくつかの例示的な実施形態では、チューブ状スリーブは複数の用途を有することができる。たとえば、スリーブを従来のEMIシールドガスケットの代わりに使用して、ガスケットの長さに沿って電気的連続性を強化できる。別の用途では、ガスケット100を表面に設置して、近接センサーとして使用することも可能である。
【0015】
本明細書では本発明の様々な実施形態を具体化する特定の特定の構造が示され、説明されているが、基礎となる発明概念の精神および範囲から逸脱することなく、構成要素の様々な修正および再配置を行うことができることは当業者には明らかであろう。そして、同じことは、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除いて、本明細書に示され説明された特定の形態に限定されない。