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特許7004483光起電力セル及びその製造方法、光起電力モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】光起電力セル及びその製造方法、光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
H01L31/04 260
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021084934
(22)【出願日】2021-05-19
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】202110454156.7
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519095533
【氏名又は名称】ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】張彼克
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン シン ウ
(72)【発明者】
【氏名】金井昇
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-312813(JP,A)
【文献】特開2016-103642(JP,A)
【文献】特開2012-094518(JP,A)
【文献】特開2011-103301(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0065446(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0063266(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第104638033(CN,A)
【文献】特許第5019397(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の第1表面に位置するエミッタ及び第1パッシベーション構造と、第1電極と、第1共融体とを備え、
前記エミッタは前記基板と前記第1パッシベーション構造との間に位置し、
前記第1電極は前記第1パッシベーション構造を貫通して前記エミッタと接触し、
前記第1共融体は、前記第1電極と前記エミッタとの間に位置し、前記第1共融体には、前記第1電極の材料と前記エミッタの材料が含まれ、前記第1電極の一部は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触し、
前記第1電極は、第1結晶体構造及び第2結晶体構造を含み、前記第2結晶体構造は前記第1結晶体構造の派生構造であり、前記第1共融体の少なくとも一部は前記エミッタと前記第1結晶体構造との間に位置し、前記第2結晶体構造は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触し、
前記第2結晶体構造の形態構造は、多分岐構造であることを特徴とする光起電力セル。
【請求項2】
一部の前記第1結晶体構造は前記エミッタ内に位置し、前記第2結晶体構造は、前記エミッタ内に位置する一部の前記第1結晶体構造の派生構造であり、
前記第2結晶体構造は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触していることを特徴とする請求項に記載の光起電力セル。
【請求項3】
前記第1電極は、ガラスフリット層をさらに含み、前記ガラスフリット層は、前記エミッタと前記第1結晶体構造との間に位置し、前記第1結晶体構造の一部は前記ガラスフリット層内に位置し、前記第1共融体は前記ガラスフリット層と前記エミッタとの間に位置し、前記第2結晶体構造は前記ガラスフリット層と前記第1共融体を順次貫通して前記エミッタと接触していることを特徴とする請求項に記載の光起電力セル。
【請求項4】
前記基板の第2表面に位置する第2パッシベーション構造及び第2電極をさらに備え、前記第2電極は前記第2パッシベーション構造を貫通して前記基板に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光起電力セル。
【請求項5】
第2共融体をさらに備え、前記第2共融体は、前記第2電極と前記基板との間に位置し、前記第2共融体には、前記第2電極の材料と前記基板の材料が含まれ、
前記第2電極は、第3結晶体構造及び第4結晶体構造を含み、前記第4結晶体構造は前記第3結晶体構造の派生構造であり、前記第2共融体は前記第3結晶体構造と前記基板との間に位置し、前記第4結晶体構造は前記第2共融体を貫通して前記基板と接触していることを特徴とする請求項に記載の光起電力セル。
【請求項6】
複数の請求項1~5のいずれかに記載の光起電力セルを接続することで形成される電池列と、
前記電池列の表面を覆うための封止用接着フィルムと、
前記封止用接着フィルムの前記電池列から離れた表面を覆うための蓋板とを備えることを特徴とする光起電力モジュール。
【請求項7】
基板、前記基板の第1表面に順次設置されたエミッタと第1パッシベーション構造を提供することと、
第1電極を形成することであって、前記第1電極は前記第1パッシベーション構造を貫通して前記エミッタと接触し、一部の前記第1電極の材料と一部の前記エミッタの材料とは混合して第1共融体を構成し、前記第1共融体は、前記第1電極と前記エミッタとの間に位置し、前記第1電極の一部は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触することと、を含み、
前記第1電極を形成する工程のステップは、
導電性ペーストに対して焼結処理を行うことにより、第1電極の第1結晶体構造を形成することであって、前記第1結晶体構造は、前記第1パッシベーション構造を貫通して前記エミッタと接触し、接触した一部の前記第1電極の材料と一部の前記エミッタの材料とは前記第1共融体を構成し、前記第1共融体は、前記第1結晶体構造と前記エミッタとの間に位置することと、
外部電源により前記第1結晶体構造にパルス電圧を印加することで、前記第1結晶体構造から派生した第2結晶体構造を形成することであって、前記第2結晶体構造は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触し、前記第1結晶体構造と前記第2結晶体構造とは前記第1電極を構成することと、を含むことを特徴とする光起電力セルの製造方法。
【請求項8】
前記第2結晶体構造を形成する前に、一部の前記第1結晶体構造が前記エミッタ内に位置し、前記第2結晶体構造は、前記エミッタ内に位置する一部の前記第1結晶体構造の派生構造であり、前記第2結晶体構造は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触していることを特徴とする請求項に記載の光起電力セルの製造方法。
【請求項9】
前記パルス電圧は、三角波パルス電圧、矩形波パルス電圧、のこぎり波パルス電圧及び三角関数波パルス電圧のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項に記載の光起電力セルの製造方法。
【請求項10】
第2電極及び第2パッシベーション構造を形成することをさらに含み、前記第2パッシベーション構造は前記基板の第2表面に位置し、前記第2電極は、前記第2パッシベーション構造を貫通して前記基板に電気的に接続されることを特徴とする請求項に記載の光起電力セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、光起電力の分野に関し、特に、光起電力セル(photovoltaic cell)及びその製造方法、光起電力モジュール(photovoltaic module)に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的に、スクリーン印刷工程を用いてパッシベーション層の表面に導電性ペーストをコーティングし、その後、焼結処理により導電性ペーストがパッシベーション層を貫通してエミッタとオーミック接触を形成することで、正面電極を形成する。
【0003】
実験の結果から明らかになるように、焼結処理の過程における導電性材料の析出過程の制御不可能性のため、正面電極と基板との間に多数の空隙が存在し、空隙の存在により、正面電極と基板の表面との接触面積を減少させ、正面電極の電流収集能力を弱め、同時に、正面電極の表面の欠陥を増加させ、キャリアの界面の再結合率を高めてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例には、光起電力セル及びその製造方法、光起電力モジュールが提供され、光起電力モジュールの光電変換効率を向上させることに有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明の実施例には、光起電力セルが提供され、前記光起電力セルは、基板と、前記基板の第1表面に位置するエミッタ及び第1パッシベーション構造と、第1電極と、第1共融体とを備え、前記エミッタは前記基板と前記第1パッシベーション構造との間に位置し、前記第1電極は前記第1パッシベーション構造を貫通して前記エミッタと接触し、前記第1共融体は、前記第1電極と前記エミッタとの間に位置し、前記第1共融体には、前記第1電極の材料と前記エミッタの材料が含まれ、前記第1電極の一部は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触している。
【0006】
また、前記第1電極は、第1結晶体構造及び第2結晶体構造を含み、前記第2結晶体構造は前記第1結晶体構造の派生構造であり、前記第1共融体の少なくとも一部は前記エミッタと前記第1結晶体構造との間に位置し、前記第2結晶体構造は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触している。
【0007】
また、一部の前記第1結晶体構造は前記エミッタ内に位置し、前記第2結晶体構造は、前記エミッタ内に位置する一部の前記第1結晶体構造の派生構造である。
【0008】
また、前記第1電極は、ガラスフリット層をさらに含み、前記ガラスフリット層は、前記エミッタと前記第1結晶体構造との間に位置し、前記第1結晶体構造の一部は前記ガラスフリット層内に位置し、前記第1共融体は前記ガラスフリット層と前記エミッタとの間に位置し、前記第2結晶体構造は前記ガラスフリット層と前記第1共融体を順次貫通して前記エミッタと接触している。
【0009】
また、第2結晶体構造の形態構造は、クラスター構造、無分岐単根構造または多分岐構造のうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
また、光起電力セルは、前記基板の第2表面に位置する第2パッシベーション構造及び第2電極をさらに備え、前記第2電極は前記第2パッシベーション構造を貫通して前記基板に電気的に接続されている。
【0011】
また、光起電力セルは、第2共融体をさらに備え、前記第2共融体は、前記第2電極と前記基板との間に位置し、前記第2共融体には、前記第2電極の材料と前記基板の材料が含まれ、前記第2電極は、第3結晶体構造及び第4結晶体構造を含み、前記第4結晶体構造は前記第3結晶体構造の派生構造であり、前記第2共融体は前記第3結晶体構造と前記基板との間に位置し、前記第4結晶体構造は前記第2共融体を貫通して前記基板と接触している。
【0012】
それに対応して、本発明の実施例には、光起電力モジュールがさらに提供され、前記光起電力モジュールは、複数の上記のいずれか一項に記載の光起電力セルを接続することで形成される電池列と、前記電池列の表面を覆うための封止用接着フィルムと、前記封止用接着フィルムの前記電池列から離れた表面を覆うための蓋板とを備える。
【0013】
それに対応して、本発明の実施例には、光起電力セルの製造方法がさらに提供され、前記光起電力セルの製造方法は、基板、前記基板の第1表面に順次設置されたエミッタと第1パッシベーション構造を提供することと、第1電極を形成することであって、前記第1電極は前記第1パッシベーション構造を貫通して前記エミッタと接触し、一部の前記第1電極の材料と一部の前記エミッタの材料とは混合して第1共融体を構成し、前記第1共融体は、前記第1電極と前記エミッタとの間に位置し、前記第1電極の一部は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触することと、を含む。
【0014】
また、前記第1電極を形成する工程のステップは、導電性ペーストに対して焼結処理を行うことにより、第1電極の第1結晶体構造を形成することであって、前記第1結晶体構造は、前記第1パッシベーション構造を貫通して前記エミッタと接触し、接触した一部の前記第1電極の材料と一部の前記エミッタの材料とは前記第1共融体を構成し、前記第1共融体は、前記第1結晶体構造と前記エミッタとの間に位置することと、外部電源により前記第1結晶体構造にパルス電圧を印加することで、前記第1結晶体構造から派生した第2結晶体構造を形成することであって、前記第2結晶体構造は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触し、前記第1結晶体構造と前記第2結晶体構造とは前記第1電極を構成することと、を含む。
【0015】
また、前記第2結晶体構造を形成する前に、一部の前記第1結晶体構造が前記エミッタ内に位置し、前記第2結晶体構造は、前記エミッタ内に位置する一部の前記第1結晶体構造の派生構造である。
【0016】
また、前記パルス電圧は、三角波パルス電圧、矩形波パルス電圧、のこぎり波パルス電圧及び三角関数波パルス電圧のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
また、光起電力セルの製造方法は、第2電極及び第2パッシベーション構造を形成することをさらに含み、前記第2パッシベーション構造は前記基板の第2表面に位置し、前記第2電極は、前記第2パッシベーション構造を貫通して前記基板に電気的に接続される。
【発明の効果】
【0018】
従来技術と比べて、本発明の実施例に提供された技術考案は以下の利点を有する。
【0019】
上記の技術考案において、第1電極の一部は、第1共融体を貫通してエミッタと接触しており、第1共融体を介して基板とオーミック接触を形成することと比較して、第1電極がエミッタと直接に接触することで、第1電極とエミッタとの間の接触電気抵抗を低減させ、第1電極の電流収集能力を向上させることに有利であり、それと共に、キャリアが第1共融体を介さずに直接第1電極まで到達することができるため、第1共融体の表面の欠陥及び内部の欠陥に起因するキャリアの再結合率を低下させ、光電変換効率を向上させることに有利である。
【0020】
また、第2結晶体構造がエミッタ内に位置する一部の第1結晶体構造の派生構造であるため、第2結晶体構造は、第1共融体を貫通する部分を除いて、他の部分いずれもエミッタと接触可能である。このように、第1電極とエミッタとの接触面を増加させ、第1電極の電流収集能力を向上させ、第2結晶体構造の延長された長さまたは底面の半径に対する要求を低下させ、構造の複雑さを低減させることに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
1つ又は複数の実施例を対応する添付図面の図によって例示的に説明する。特に説明しない限り、添付図面の図は比例的制限を構成しない。
【0022】
図1図1は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの構成を示す図である。
図3図3は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの構成を示す図である。
図4図4は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの構成を示す図である。
図5図5は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの構成を示す図である。
図6図6は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの構成を示す図である。
図7図7は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの製造方法のステップに対応する構成を示す図である。
図8図8は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの製造方法のステップに対応する構成を示す図である。
図9図9は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの製造方法のステップに対応する構成を示す図である。
図10図10は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの製造方法のステップに対応する構成を示す図である。
図11図11は、本発明の実施例に提供されたの光起電力セルの製造方法のステップに対応する構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施例の目的、技術考案及び利点をより明確にするために、以下、本発明の各実施例について図面を組み合わせて詳細に説明する。しかしながら、当業者が理解できるように、読者に本願をよりよく理解させるために、本発明の各実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部及び以下の各実施例に基づく種々の変更や修正がなくても、本願が保護を求めようとする技術考案を実現することができる。
【0024】
図1を参照して、光起電力セルは、基板10と、基板10の第1表面に位置するエミッタ11及び第1パッシベーション構造12と、第1電極13と、第1共融体171とを備え、エミッタ11は基板10と第1パッシベーション構造12との間に位置し、第1電極13は第1パッシベーション構造12を貫通してエミッタ11と接触し、第1共融体171は、第1電極13とエミッタ11との間に位置し、第1共融体171には、第1電極13の材料とエミッタ11の材料が含まれ、第1電極13の一部は第1共融体171を貫通してエミッタ11と接触している。
【0025】
なお、本出願には、複数の実施可能な光起電力構造が含まれ、図1に示される光起電力セルの構造は、そのうちの1つの実施例に過ぎず、本明細書では、図1に示される構造を例として複数の並列の実施例の共通点を説明し、図2図6により複数の並列の実施例の間の相違点を説明する。なお、図示を簡素化するために、図1には、基板10とエミッタ11のテクスチャ面が描画されていない。
【0026】
基板10は、対向する第1表面と第2表面とを有し、幾つかの実施例において、第1表面は受光面であり、第2表面は第1表面と対向する基板の表面である。幾つかの実施例では、基板10の第1表面を前面と呼び、基板10の第2表面を後面と呼ぶ。さらに、片面電池の場合、第1表面は受光面であり、第2表面はバックライト面であり、両面電池の場合、第1表面と第2表面の両方を受光面とすることができる。
【0027】
幾つかの実施例では、基板10の材料は、シリコン基板材料であり、単結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコンまたは微結晶シリコンの一種または複数種を含むことができる。他の実施例では、基板の材料は、炭素単体、有機材料または多元系化合物であってもよい。多元系化合物としては、ペロブスカイト、ガリウムヒ素、テルル化カドミウム、セレン化銅インジウム等の材料を含むことができるが、これらに限らない。
【0028】
基板10とエミッタ11とはPN接合を形成する。例えば、基板10がP型ドーピング元素(例えば、ホウ素、ガリウム等)を含む場合、エミッタ11は、N型ドーピング元素(例えば、リン、ヒ素等)を含み、基板10がN型ドーピング元素を含む場合、エミッタ11は、P型ドーピング元素を含む。幾つかの実施例において、上記のエミッタ11は、基板10の一部と見なすことができる。なお、エミッタ11の表面での光の反射を低減し、光の吸収利用率を高め、光起電力セルの変換効率を向上させるように、エミッタ11の表面をピラミッドテクスチャ面として設定することができる。
【0029】
第1パッシベーション構造12の膜層構造及び膜層材料は、実際の必要に応じて調整することができ、例えば、光起電力セルのセルの種類に応じて調整することができる。一般的な電池としては、PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)セル、TOPCON(Tunnel Oxide Passivated Contact)セル等が含まれるが、ここでPERCセルを例として説明する。第1パッシベーション構造12は、単層構造であってもよいし、基板10の表面に垂直な方向に順次設置された多層構造であってもよい。一般的な第1パッシベーション構造は、窒化ケイ素の単層構造、酸化アルミニウム/窒化ケイ素の二重積層構造、または窒化ケイ素-酸窒化ケイ素-窒化ケイ素の多層積層構造を含み、多層積層構造の膜層数は3以上とすることができる。幾つかの実施例において、第1パッシベーション構造12は、エミッタ11の表面に形成された二酸化ケイ素層をさらに含むことができる。
【0030】
第1電極13の材料は、実際の必要に応じて調整することができ、第1電極13は、銀電極、アルミニウム電極または銀アルミニウム電極等を含むことができ、それに対応して、第1共融体171の材料は、第1電極13の材料及びエミッタ11の材料に応じて調整することができる。本明細書では、第1電極13が銀電極を含み、エミッタ11の材料がケイ素であり、第1共融体171が銀シリコン共融体であることを例として説明する。
【0031】
第1電極13は、ガラスフリット層16をさらに含み、ガラスフリット層16は、第1パッシベーション構造12とエミッタ11との間に位置する。銀電極は、団塊電極(焼結された銀電極)、ナノ銀粒子及び銀微結晶に分けられることができる。団塊電極は、ガラスフリット層16のエミッタ11から離れた側に位置し、かつガラスフリット層16内に延在し、または、ガラスフリット層16を貫通してエミッタ11内に延在し、ナノ銀粒子はガラスフリット層16内に位置し、銀微結晶(図示せず)はガラスフリット層16と第1共融体171との間に位置する。第1電極13を形成する過程において、エミッタ11の表面に析出した銀原子の一部がエミッタ11の材料と混合して第1共融体171を形成し、他の部分が混合に関与しなく、完全に冷却された後に銀微結晶の形で残されている。即ち、第1共融体171は、エミッタ11と団塊電極との間に位置するだけでなく、ガラスフリット層16とエミッタ11との間にも位置する。
【0032】
そのうち、ガラスフリット層16の素材は、ガラスであり、金属ガラス粒子、テルル粉末含有ガラス粒子、鉛含有ガラス粒子、または無鉛ガラス粒子のうちの少なくとも1つを含む。一般的に使用されるガラスフリットは、鉛含有ガラスフリットであり、例えば、Pb-Al-B-SiOガラスフリットは一般的に使用される鉛含有ガラスフリットの1つであり、また、例えば、Pb-Sn-V-O、Pb-B-V-O等はいずれも使用できる。無鉛ガラスフリットには、P-Zn-O系,V-Ba-P-O系、B-V-O系、Sn-B-Si-O系及びBi-B-Si-O系等が挙げられる。
【0033】
幾つかの実施例では、第1電極13は、第1結晶体構造131及び第2結晶体構造132(太い黒線で示される)を含み、第2結晶体構造132は第1結晶体構造131の派生構造であり、ガラスフリット層16は第1結晶体構造131とエミッタ11との間に位置し、第1共融体171の少なくとも一部は第1結晶体構造131とエミッタ11との間に位置し、第2結晶体構造132は第1共融体171を貫通してエミッタ11と接触している。ここで、第2結晶体構造132が第1結晶体構造131の派生構造であることは、第2結晶体構造132が結晶粒の再成長及び再結晶により第1結晶体構造131に形成されたことである。
【0034】
派生構造としての第2結晶体構造132の形態構造は、クラスター構造、無分岐単根構造または多分岐構造のうちの少なくとも1つを含む。例えば、図1には、多分岐構造(太い黒線で示される)を例として示され、図2には、無分岐構造(太い黒線で示される)を例として示され、図3には、クラスター構造(斜線で塗りつぶされる)を例として示されている。なお、無分岐構造及び多分岐構造において、通常、延長された長さを使用して成長の状況を表し、クラスター構造において、底面の半径を使用して成長の状況を表す。
【0035】
派生構造として、第2結晶体構造132を設置することで、第1結晶体構造131の内部の空隙及び第1結晶体構造131とエミッタ11との間の空隙を充填することに有利であり、第1結晶体構造131とエミッタ11との間の接続電気抵抗を低減させ、第1結晶体構造131の電流収集能力を向上させ、かつ、構造の空隙に起因する構造安定性の欠陥を回避する。同時に、第2結晶体構造132が第1共融体171の一部のみを貫通するため、第1共融体171及び他の膜層の構造を破壊する必要がなく、このように、第2結晶体構造132により電流を収集することができるし、第2結晶体構造132を設置することによって第1共融体171等の隣接膜層を損傷させてしまうことを回避することができ、第1共融体171等の隣接膜層の構造欠陥、例えば、応力集中に起因する応力欠陥や構造の亀裂に起因する構造安定性の欠陥を減少させる。また、第2結晶体構造132の長さを長くしたり、第2結晶体構造132の底面の半径を拡大したりすることにより、第1電極13とエミッタ11との接触面積をさらに拡大し、第1電極の電流収集の上限を上げる。
【0036】
具体的には、第1結晶体構造131の側壁に垂直な方向において、クラスター構造の高さは0.2~2μm、例えば0.5μm、1μmまたは1.5μmであり、底面の半径は0.2μm~10μm、例えば0.5μm、1μm、4μmまたは7μmであり、結晶体構造は、(111)、(200)、(220)、(311)及び(222)等の多結晶面から複合構成される半球状粒子であり、無分岐単根構造の直径は、20~200nm、例えば50nm、100nmまたは150nmであり、長いは0.2~5μm、例えば0.5μm、0.8μm、1.2μmまたは3μmであり、結晶体構造は(110)面を主要な結晶面とし、他の結晶面XRD(X線回折)の信号強度はこの結晶面の5%未満であり、多分岐構造の主分岐構造及びその結晶面は無分岐構造と同じで、主分岐構造を基礎として形成された二次分岐構造の直径は10~50nmであり、例えば、15nm、30nm又は35nmであり、長さは0.1~1μm、例えば0.2μm、0.4μm、0.6μmまたは0.8μmであり、二次分岐構造の結晶体構造は主分岐構造の結晶体の構造と同じである。
【0037】
なお、ナノ線状の構造において、(110)結晶面を主なものとする主要な原因は、他の界面活性剤がない場合に、当該結晶面の成長速度が他の結晶面よりも遥かに速いことである。
【0038】
幾つかの実施例では、一部の第1結晶体構造131はエミッタ11内に位置し、第2結晶体構造132は、エミッタ11内に位置する一部の第1結晶体構造131の派生構造である。第2結晶体構造132がエミッタ11内に位置する一部の第1結晶体構造131の派生構造であるため、第2結晶体構造132は、第1共融体171を貫通する部分を除いて、他の部分はいずれもエミッタ11と接触可能である。このように、第1電極13とエミッタ11との接触面積を増加させ、第1電極13の電流収集能力を向上させ、第2結晶体構造132の延長された長さまたは底面の半径に対する要求を低下させ、かつ、第2結晶体構造132の数の要求を低下させ、構造の複雑さを低減させることに有利である。
【0039】
なお、図1には、第1結晶体構造131の1つの突起部のみが示されており、当該突起部はガラスフリット層16を貫通してエミッタ11内に延在し、実際、第1結晶体構造131は複数の突起部を有し、隣接する突起部の間に空隙がある。第2結晶体構造132は隣接する突起部の間の空隙を充填することができ、このように、第2結晶体構造132の隣接する膜層の構造特性に対する影響を削減することに有利であり、また、空隙を充填することにより、光起電力セルの構造安定性を向上させることができ、第1電極13とエミッタ11との接触面積を増加させ、第1電極13の電流収集能力を向上させ、光起電力セルの光電変換効率を向上させることができる。
【0040】
幾つかの実施例では、図4に示されるように、第1結晶体構造131の一部はガラスフリット層16内に位置し、第1共融体171はガラスフリット層16とエミッタ11との間に位置し、第2結晶体構造132はガラスフリット層16と第1共融体171を順次貫通してエミッタ11と接触している。このように、第1結晶体構造131のアブレーション深さの要求を低下させ、光起電力セルの複雑さを低減させることに有利であり、それと共に、アブレーション深さが深すぎることに起因する内部の欠陥を減少させ、内部の欠陥に起因するキャリアの再結合を低減させ、光起電力セルの光電変換効率を向上させることに有利である。
【0041】
なお、第1結晶体構造131がガラスフリット層16を貫通してエミッタ11内に延在しても、第2結晶体構造132は依然としてガラスフリット層16内に位置する第1結晶体構造131を基礎とした派生構造とすることができる。幾つかの実施例において、図5に示されるように、第1共融体171はエミッタ11側のみに位置し、第1結晶体構造131の底面は第1共融体171と接触し、第2結晶体構造132は第1結晶体構造131の底面から延び、第1共融体171を貫通してエミッタ11と接触しているが、ガラスフリット層16を貫通していない。
【0042】
幾つかの実施例では、光起電力セルは、基板10の第2表面に位置する第2パッシベーション構造14及び第2電極15をさらに備え、第2電極15は第2パッシベーション構造14を貫通して基板10に電気的に接続されている。
【0043】
幾つかの実施例では、光起電力セルがPERCセルである場合、第2パッシベーション構造14は、順次設置された酸化アルミニウム層141及び水素ドープ窒化ケイ素層142を含み、第2電極15は一般的にアルミニウム電極であり、第2電極15は、水素ドープ窒化ケイ素層142と酸化アルミニウム層141を順次貫通して基板10と接触する。
【0044】
さらに、図1に示されるように、光起電力セルは、第2共融体172をさらに備え、第2共融体172は、第2電極15と基板10との間に位置し、第2共融体172には、第2電極15の材料と基板10の材料が含まれ、第2電極15は、第3結晶体構造151及び第4結晶体構造152を含み、第4結晶体構造152は第3結晶体構造151の派生構造であり、第2共融体172は第3結晶体構造151と基板10との間に位置し、第4結晶体構造152は第2共融体172を貫通して基板10と接触している。このように、PERCセルにおける第2電極15の電流収集能力を向上させ、光起電力セルの光電変換効率を向上させる。
【0045】
幾つかの実施例では、光起電力セルがTOPCONセルである場合、図6を参照して、第2パッシベーション構造24は、順次設置された界面パッシベーション層241、フィールドパッシベーション層242及び反射防止層243を含み、界面パッシベーション層241の材料は、一般的に二酸化ケイ素であり、フィールドパッシベーション層242の材料は、一般的にドープドポリシリコンであり、反射防止層243の材料は、一般的に窒化ケイ素であり、第2電極25は、一般的に銀電極であり、第2電極25は、反射防止層243を貫通してフィールドパッシベーション層242内に延び、フィールドパッシベーション層242と接触しかつ基板20との電気的接続を実現する。
【0046】
さらに、光起電力セルは、第2共融体272をさらに備え、第2共融体272は、第2電極25とフィールドパッシベーション層242との間に位置し、第2共融体172には、第2電極25の材料とフィールドパッシベーション層242の材料が含まれ、第2電極25は、第3結晶体構造251及び第4結晶体構造252を含み、第4結晶体構造252は第3結晶体構造251の派生構造であり、第2共融体272は第3結晶体構造251とフィールドパッシベーション層242との間に位置し、第4結晶体構造252は第2共融体272を貫通してフィールドパッシベーション層242と接触する。このように、TOPCONセルにおける第2電極25の電流収集能力を向上させ、光起電力セルの光電変換効率を向上させる。
【0047】
本実施例において、第1電極の一部は、第1共融体を貫通してエミッタと接触しており、第1共融体を介して基板とオーミック接触を形成することと比較して、第1電極がエミッタと直接に接触することで、第1電極とエミッタとの間の接触電気抵抗を低減させ、第1電極の電流収集能力を向上させることに有利であり、それと共に、キャリアが第1共融体を介さずに直接第1電極まで到達することができるため、第1共融体の表面の欠陥及び内部の欠陥に起因するキャリアの再結合率を低下させ、光電変換効率を向上させることに有利である。
【0048】
本発明の実施例には、光起電力モジュールがさらに提供され、前記光起電力モジュールは、受け取った光エネルギーを電気エネルギーに変換することに用いられる。前記光起電力モジュールは、電池列、封止用接着フィルム及び蓋板を備え、前記電池列は、複数の光起電力セルを接続することで形成され、前記光起電力セルは、上記のいずれかの光起電力セルであってもよく(図1図6に示される光起電力セルを含むが、これらに限らない)、前記封止用接着フィルムは、EVA(Ethylene-Vinyl Acetate、エチレン酢酸ビニルコポリマー)またはPOE(Polyolefin Elastomer、ポリオレフィンエラストマー)等の有機封止用接着フィルムであってもよく、前記封止用接着フィルムは前記電池列の表面を覆って封止するものであり、前記蓋板は、ガラス蓋板またはプラスチック蓋板等であってもよく、前記蓋板は前記封止用接着フィルムの前記電池列から離れた表面を覆っている。幾つかの実施例において、入射光の利用率を高めるために、前記蓋板には、光トラッピング構造が設置されている。前記光起電力モジュールは、高い電流収集能力及び低いキャリア再結合率を有し、高い光電変換効率を図ることができる。
【0049】
それに対応して、本発明の実施例には、光起電力セルの製造方法がさらに提供される。図7図8は、本発明の実施例に提供された光起電力セルの製造方法の各ステップに対応する構成を示す図であり、光起電力セルの製造方法は、以下のステップを含む。
【0050】
図7を参照すると、基板10、基板10の第1表面に順次設置されたエミッタと第1パッシベーション構造12、及び、基板10の第2表面に位置する第2パッシベーション構造14を提供する。
【0051】
具体的には、N型またはP型初期半導体基板を提供し、初期基板を洗浄し、かつ湿式化学エッチング法によりピラミッドテクスチャ面(図示せず)を製造する。また、テクスチャ面を製造するには、成熟した生産ラインのアルカリ性テクスチャリング(alcali texturing)工程を使用して、45度の正ピラミッドテクスチャ面を形成することができる。
【0052】
両面をテクスチャリングした後、初期基板の第1表面に対しドーピング元素拡散処理を行い、エミッタ11を形成し、エミッタ11は、初期基板が太陽に向かう側の表層空間の一部を占め、残りの初期基板は基板10として機能し、エミッタ11と基板10とはPN接合を構成する。
【0053】
エミッタ11を形成した後、基板10の第2表面に対し平坦化処理を行い、平坦化処理により、平坦な表面を形成して、必要な第2パッシベーション構造14を堆積させることができる。光起電力セルがPERCセルである場合、初期基板はP型であり、第2パッシベーション構造14は一般的に酸化アルミニウム層141及び水素ドープ窒化ケイ素層142を含み、光起電力セルがTOPCONセルである場合、図8を参照して、初期基板はN型であり、第2パッシベーション構造24は、順次積層された界面パッシベーション層241、フィールドパッシベーション層242及び反射防止層243を含む。
【0054】
そのうち、水素ドープ窒化ケイ素層142の形成には、一般的に以下のの2つのステップを含む:第一、窒化ケイ素層を堆積して形成すること、第二、窒化ケイ素層に水素イオンを注入すること。第1パッシベーション構造12に窒化ケイ素層が含まれる場合、同一工程のステップにおいて、第1表面に位置する一層の窒化ケイ素層及び第2表面に位置する一層の窒化ケイ素層を形成することができ、第1表面の窒化ケイ素層は、第1パッシベーション構造12または第1パッシベーション構造12のうちの一層の膜層として機能し、第2表面の窒化ケイ素層は、水素ドープ窒化ケイ素層142を形成することに用いられる。
【0055】
初期基板がN型である場合、P型エミッタ21を形成するように、一般的にホウ素を使用して拡散処理を行う。ホウ素拡散処理により、初期基板の第1表面、第2表面及び側面に不必要なホウケイ酸ガラスが同時に生成され、ホウケイ酸ガラスはエミッタ21及び基板20に対し一定の保護作用を有し、ある工程プロセスにて初期基板の表面を損傷させてしまうことを回避できる。換言すれば、不必要なホウケイ酸ガラスは保護層として機能することができ、平坦化工程を行う過程において、第2表面のホウケイ酸ガラスを合わせて除去する。
【0056】
二酸化ケイ素層を界面パッシベーション層とする場合、化学気相成長法により二酸化ケイ素を堆積形成することができるし、シリコン基板にイン・サイチュ(in situ)生成法を利用して二酸化ケイ素を形成することもできる。イン・サイチュ生成法は、熱酸化法、硝酸パッシベーション法及び自然酸化法等を含む。界面パッシベーション層241を形成した後、界面パッシベーション層241の表面に真性ポリシリコンを堆積させ、イオン注入及び源拡散の方式でドーピングイオンをドープし、ドープドポリシリコンを形成し、これにより、フィールドパッシベーション層242を形成する。フィールドパッシベーション層242を形成した後、続いて反射防止層243を形成し、反射防止層243を窒化シリコン層として設置することができる。
【0057】
堆積工程を用いて界面パッシベーション層241及びフィールドパッシベーション層242を形成する場合、第1表面において、ホウケイ酸ガラスをマスク層として基板20の第1表面を保護するため、堆積工程を行う際にマスクにより堆積領域を第2表面に限定する必要がなく、後て、同じ工程を用いて第1表面のホウケイ酸ガラス及び第1表面に堆積した酸化ケイ素及びポリシリコンを同時に除去することができる。このように、別のマスクを設置する必要がなく、工程のステップ数を削減し、工程のプロセスを短縮させ、工程コストを削減することに有利である。
【0058】
第2パッシベーション構造14を形成した後、かつ第1パッシベーション構造12を形成する前に、エミッタ11を露出させるように、エミッタ11の第1表面の周りにめっきされた余分な材料を除去する必要があり、エミッタ11を露出させた後に、セルのタイプ及び実際な必要に応じて第1パッシベーション構造12を形成する。
【0059】
図9を参照して、導電性ペーストをコーティングして焼結処理を行い、第1電極13の第1結晶体構造131及び第2電極15の第3結晶体構造を形成する。
【0060】
第1パッシベーション構造12及び第2パッシベーション構造14を形成した後、スクリーン印刷工程を用いて第1パッシベーション構造12の表面及び第2パッシベーション構造14の表面に導電性ペーストをコーティングすることができ、導電性ペーストを高温で焼結することにより、第1パッシベーション構造12を貫通してエミッタ11と接触する第1結晶体構造131と、基板10に電気的に接続された第3結晶体構造151とを形成する。
【0061】
接触した一部の第1結晶体構造131の材料と一部のエミッタ11の材料とは混合して第1共融体171を構成し、第1共融体171は、少なくとも一部がエミッタ11と第1結晶体構造131との間に位置する。PERCセルについては、第2電極15を形成する前に、第2パッシベーション構造14を貫通するスロットが形成され、スロットにより基板10の第2表面を露出させ、続いて形成される第3結晶体構造151は第2パッシベーション構造14を貫通して基板10と接触し、接触した一部の第3結晶体構造151の材料と一部の基板10の材料とは混合して第2共融体172を構成し、第2共融体は第3結晶体構造151と基板10との間に位置する。TOPCONセルについては、図10を参照して、第3結晶体構造251は反射防止層243を貫通してフィールドパッシベーション層242と接触し、接触した一部の第3結晶体構造251の材料と一部のフィールドパッシベーション層242の材料とは混合して第2共融体272を構成し、第2共融体は第3結晶体構造251とフィールドパッシベーション層242との間に位置し、第3結晶体構造251はフィールドパッシベーション層242と界面パッシベーション層241を介して基板20に電気的に接続されている。
【0062】
幾つかの実施例では、赤外線チェーン型焼結炉を用いて第1電極13及び第2電極15の急速焼結を行う。具体的には、導電性ペーストをコーティングした半製品電池セルを徐々に異なる空間に送り込み、異なる空間の温度及び空間内の滞留時間を制御することで、焼結された第1電極13及び第2電極15の電気的接触効果を調整する。
【0063】
具体的には、導電性ペーストにおける成分は、主に有機担体、導電性粒子及びガラスフリットという三種類であり、本明細書では、導電性粒子を銀原子とし、第1パッシベーション構造12を窒化ケイ素単層構造とし、エミッタ11の材料をケイ素としたことを例として焼結処理の工程のプロセスを詳細に説明する。焼結処理は、次の段階に分けられることができる。
(1)乾燥段階:主に有機担体における有機溶媒を揮発させることであり、温度が高いほど、揮発の速度が速くなり、一般的に200℃ほどに制御される。
(2)燃焼段階:主に有機担体における有機物を燃焼させることであり、例えば、増粘剤、チキソトロープ剤、界面活性剤、分散剤等であり、温度は一般的に300~400℃に制御される。
(3)焼結段階:この段階において、まず、ガラスフリットを軟化させ(温度がガラスフリットの軟化点よりも大きい)、銀原子を溶解した溶融ガラスフリットが第1パッシベーション構造12の表面に堆積し、PbO(一酸化鉛)の作用の下で窒化ケイ素層を腐食させ、チャネルを開いて銀原子をエミッタ11と接触させ、同時に、溶融ガラスフリットの作用の下で、銀原子は、再配列、凝集、電極収縮等の過程が経験する。
(4)冷却段階:ガラスフリットを硬化させることで温度を室温まで下げ、この段階では、主に、再生銀結晶粒がエミッタ11の表面に成長し、銀シリコン接触界面の銀原子とシリコン原子が互いに拡散して銀シリコン共融体を形成し、第1電極13とエミッタ11のオーミック接触及び電気伝導を実現する。
【0064】
そのうち、焼結段階はさらに複数のサブステージに分けられることができ、異なるサブステージの温度及び持続時間は以下の通りである。
1.アブレーション段階、550°C<焼結温度<700°C、持続時間が10~15s(秒)であり、この段階では、焼結温度が上昇するにつれて、ガラスフリットの成分が溶解し始め、流動性が向上し、ガラスフリットは、銀ナノ粒子を溶解しながら窒化ケイ素層と接触して腐食し始め、同時に、溶融液体ガラスフリットの助けを借りて、銀粒子が再配列され、グリッド線の密度が増加する。
2.接続段階、700°C<焼結温度<850°C、持続時間が10~20sであり、この段階では、再生銀粒子が成長し始め、銀粒子がエミッタ11と接触して銀シリコン共融体を形成し、銀シリコン共融体は導電性を有し、第1電極13の電流収集を実現でき、同時に、銀粒子は、再配列、凝集、電極収縮等の過程が経験し続ける。
3.予冷段階、温度を850°Cから450°Cまで徐々に冷却し、持続時間が30~40sであり、この段階では、ガラスフリットに溶解した銀原子はエミッタ11の表面に徐々に析出され、逆ピラミッド状の銀微結晶を呈する。逆ピラミッド状の銀微結晶は、第1結晶体構造131に属し、第1共融体171は、逆ピラミッド状の銀微結晶とエミッタ11とを離間させる。溶融液体ガラスフリットを硬化させることによりガラスフリット層を生成する。
【0065】
幾つかの実施例では、第1結晶体構造131は、第1パッシベーション構造12を貫通し、かつその一部がエミッタ11内に位置し、第1共融体171はエミッタ11内にも位置する。幾つかの実施例において、図11を参照すると、第1結晶体構造131はガラスフリット層16内に位置し、第1共融体171はエミッタ11の表面のみを覆い、即ち第1共融体171はエミッタ11内に位置していない。
【0066】
図1を参照して、外部電源により第1結晶体構造131と第3結晶体構造151にパルス電圧を印加することで、第1結晶体構造131から派生した第2結晶体構造132を形成し、かつ第3結晶体構造151から派生した第4結晶体構造152を形成し、第2結晶体構造132は第1共融体171を貫通してエミッタ11と接触し、第1結晶体構造131と第2結晶体構造132とは第1電極13を構成する。PERCセルについては、第4結晶体構造152は第2共融体172を貫通して基板10と接触し、第3結晶体構造151と第4結晶体構造152とは第2電極15を構成する。
【0067】
外部電源は、正極または負極のうちの一方を第1電極13の第1結晶体構造131に接続し、かつ正極または負極の他方を第2電極15の第3結晶体構造151に接続することで、第1結晶体構造131及び第3結晶体構造151に同時に電圧を印加することができ、これにより、第1結晶体構造131と第3結晶体構造151の材料原子を再成長かつ再結晶化させて、派生した第2結晶体構造132と第4結晶体構造152を形成する。
【0068】
幾つかの実施例では、第2結晶体構造132を形成する前に、一部の第1結晶体構造131がエミッタ11内に位置し、第2結晶体構造132は、エミッタ11内に位置する一部の第1結晶体構造131の派生構造である。幾つかの実施例において、一部の第1結晶体構造がエミッタ内に位置し、第2結晶体構造はガラスフリット層内に位置する一部の第1結晶体構造の派生構造である。幾つかの実施例において、第1結晶体構造はガラスフリット層内のみに位置し、エミッタまで延在しておらず、第2結晶体構造はガラスフリット層内に位置する第1結晶体構造の派生構造であり、第2結晶体構造は、ガラスフリット層及び第1共融体を順次貫通してエミッタと接触してもよいし、第1共融体のみを貫通してエミッタと接触してもよい。
【0069】
幾つかの実施例では、光起電力セルはTOPCONセルであり、第3結晶体構造は反射防止層を貫通してフィールドパッシベーション層に電気的に接続されており、第2共融体は第3結晶体構造とフィールドパッシベーション層との間に位置し、第4結晶体構造は第2共融体を貫通してフィールドパッシベーション層と接触する。
【0070】
幾つかの実施例では、第1結晶体構造131及び第3結晶体構造151に印加されるパルス電圧は、三角波パルス電圧、矩形波パルス電圧、のこぎり波パルス電圧及び三角関数波パルス電圧のうちの少なくとも1つを含む。
【0071】
そのうち、第2結晶体構造132の形態構造はパルス電圧の種類及び組合せに関わり、第2結晶体132の数、分岐強度及び延長された長さ(または底面の半径)はパルス電圧のパラメータに関わっている。具体的には、パルス電圧の電位範囲が大きいほど、第2結晶体構造132の構造強度が高くなり、パルス電圧の周波数が高いほど、第2結晶体構造132の数が多くなり、パルス電圧のサイクル数が多いほど、第2結晶体構造132の延長された長さが長くなり、または底面の半径が大きくなる。第4結晶体構造152の特性は第2結晶体132の特性と類似しており、ここで再び説明しない。
【0072】
幾つかの実施例では、パルス電圧の種類及び対応するパラメータを以下の表に示す。
【0073】
そのうち、電位範囲または波の振幅を制御することで第2結晶体構造132の構造強度を制御することにより、第2結晶体構造132が高い構造安定性を有することを確保し、第2結晶体構造が衝撃を受ける時、または延伸成長中に破断してしまうことを回避する。また、構造強度の要求が高いほど、第2結晶体構造132の延伸成長の速度が遅くなるため、第2結晶体構造の構造強度を制御することにより、第2結晶体構造132の成長時間を短縮し、工程時間を短縮することに有利である。
【0074】
それに対応して、スキャンレート、スキャン周期または角周波数を制御することで第2結晶体構造132の数を制御することにより、数が少なすぎることに起因して接触面積が小さくなるという問題を回避し、かつ、数が多すぎることに起因して全体が外に拡張してしまい、同様に接触面積が小さくなるという問題を回避する。また、スキャンサイクル数を制御することで第2結晶体構造132の延長された長さまたは底面の半径を制御することにより、第2結晶体構造132とエミッタ11との間に大きな接触面積を有することを基にして、第2結晶体構造132の延長された長さが長すぎたり、半径が大きすぎたりすることに起因してエミッタ11の特性を損傷させてしまうことを回避し、光起電力セルの高い光電変換効率を確保する。
【0075】
本実施例では、第1電極の一部は、第1共融体を貫通してエミッタと接触しており、第1共融体を介して基板とオーミック接触を形成することと比較して、第1電極がエミッタと直接に接触することで、第1電極とエミッタとの間の接触電気抵抗を低減させ、第1電極の電流収集能力を向上させることに有利であり、それと共に、キャリアが第1共融体を介さずに直接第1電極まで到達することができるため、第1共融体の表面の欠陥及び内部の欠陥に起因するキャリアの再結合率を低下させ、光電変換効率を向上させることに有利である。
【0076】
当業者が理解できるように、上記した各実施形態は本発明を実現するための具体的な実施例であり、実際の応用において、本発明の主旨及び範囲から逸脱しない限り、形式及び詳細について種々の変更を加えることができる。いずれの当業者であれば、本発明の主旨及び範囲から逸脱しない限り、それぞれ変更及び修正を行うことができるため、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって限定される範囲を基準とすべきである。

【要約】
【課題】本発明の実施例には、光起電力セル及びその製造方法、光起電力モジュールが提供される。
【解決手段】光起電力セルは、基板と、前記基板の第1表面に位置するエミッタ及び第1パッシベーション構造と、第1電極と、第1共融体とを備え、前記エミッタは前記基板と前記第1パッシベーション構造との間に位置し、前記第1電極は前記第1パッシベーション構造を貫通して前記エミッタと接触し、前記第1共融体は、前記第1電極と前記エミッタとの間に位置し、前記第1共融体には、前記第1電極の材料と前記エミッタの材料が含まれ、前記第1電極の一部は前記第1共融体を貫通して前記エミッタと接触している。本発明の実施例によれば、光起電力モジュールの光電変換効率を向上させることに有利である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11