(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】原子力機器の許認可取得のためのリアルタイム測定値と原子論的モデリングの統合
(51)【国際特許分類】
G21C 17/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
G21C17/00 020
G21C17/00 100
(21)【出願番号】P 2019527139
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(86)【国際出願番号】 US2017058650
(87)【国際公開番号】W WO2018111417
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-09-24
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ラホーダ、エドワード、ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】レイ、スミト
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-211177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉で使用される構成機器の許認可に必要なパラメータを実証するプロセスであって、
原子炉の運転の対象となる条件下での構成機器の少なくとも1つの物理特性の
原子論的なモデル(物理特性モデル)および
当該構成機器の挙動を
予測するモデル
(構成機器挙動モデル)をコンピュータにより作成するステップと、
当該
コンピュータにより作成される当該物理特性
モデルおよび当該
構成機器挙動モデルに
基づいて、当該構成機器の予備的な許認可申請書を作成し、原子炉内での当該構成機器の使用の承認について責任を負う規制機関に提出するステップと
、
当該構成機器の
少なくとも1つのサンプルを原子炉内に設置するステップと、
当該原子炉の運転中に対象となるパラメータを監視するためのセンサを当該原子炉内に設置するステップと、
当該原子炉を所定の
原子炉サイクル期間にわたって運転するステップと、
当該原子炉内の当該センサから当該対象となるパラメータの測定データを
当該原子炉サイクル期間中に即座に解析できるようにリアルタイムで回収するステップと、
当該リアルタイムデータを当該物理特性モデルおよび当該構成機器挙動モデルと比較するステップと、
当該比較されたリアルタイムデータと、当該物理特性モデルおよび当該構成機器挙動モデルとを使用して、(i)当該回収されたリアルタイムデータが当該これらのモデルに基づく予測に適合する場合には、当該これらのモデルと、当該これらのモデルに基づく当該構成機器挙動の予測とを認証し、(ii)当該回収されたリアルタイムデータが当該これらのモデルに基づく予測に適合しない場合には、当該コンピュータにより作成される当該これらのモデルに当該回収されたリアルタイムデータを組み入れ、当該これらのモデルに基づく当該構成機器挙動の予測が当該回収されたリアルタイムデータに適合するように調整することを、当該原子炉サイクル期間中に行うステップと、
当該コンピュータにより作成されるこれらのモデルと、当該これらのモデルによる構成機器挙動の予測とが調整されると、測定データをリアルタイムで回収するステップ、当該リアルタイムデータとの比較を行うステップ、および当該比較されたリアルタイムデータを使用するステップを繰り返すことを、当該これらのモデルおよび当該構成機器挙動の予測が認証されるまで当該原子炉サイクル期間中に行うステップと、
当該
認証されたリアルタイムデータと、当該物理特性モデルおよび
当該構成機器挙動モデルとを用いて、当該構成機器
の許認可申請書
が最終的に承認されるように当該規制機関
と対話することを、当該原子炉サイクル期間の終了前に行うステップと
からなるプロセス。
【請求項2】
前記構成機器は原子燃料である、請求項
1のプロセス。
【請求項3】
前記構成機器は原子力発電所の安全関連機器である、請求項
1のプロセス。
【請求項4】
前記対象となるパラメータは、圧力、温度、構成機器体積の変化、応力・ひずみ引張、エネルギー、熱容量、熱伝導率、核分裂生成ガス放出量、燃料スエリング、燃料融点、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項
1のプロセス。
【請求項5】
前記原子炉の運転の前記対象となる条件は、通常条件、事故条件およびそれらの組み合わせから選択される、請求項
1のプロセス。
【請求項6】
前記センサは、熱電対、熱音響センサ、真空マイクロエレクトロニクスデバイス、火花送信機、ひずみ計、運動センサ、融点センサ、中性子束センサ、電力センサ、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項
1のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によって本願に組み込まれる2016年12月15日出願の米国仮特許出願第62/434,530号に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
政府の権利に関する陳述
本発明は、エネルギー省との契約第DE-NE0008222号に基づく政府支援の下でなされたものである。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
本発明は原子力発電施設の試験方法に関し、特に、許認可要件を満たすために燃料および構成機器の挙動のリアルタイム測定値を得る方法に関する。
【0004】
現行の規制下において、原子力施設は、施設の運転や原子炉内で使用する構成機器または燃料の変更について管轄政府機関から許認可を得る前に、特定の基準を満たす必要がある。
【0005】
例えば、新型燃料を使用するための許認可を得る現行の方法では、燃料サンプルを作製して原子炉内での使用に対して承認を得る必要がある。このプロセスは通常約12~18カ月かかるが、試験する新型燃料がこれまでになく新しい発想のものであればさらに多くの時間を要する可能性がある。サンプルの試験は、試験サンプルの設計および作製ならびに原子炉内へのサンプルの受け入れに必要な計算を伴う。
【0006】
サンプルの試験は、新型燃料の最終使用時における予想サイクル長の照射時間に達するまでの必要な期間にわたって、試験炉または商用炉で行われる。商用炉でサンプルを試験する場合、燃料が使用される典型的なサイクル長に相当する照射時間は少なくとも18カ月であり、24カ月以上に及ぶこともある。しかし、試験炉で試験を行う場合、一般的に試験炉は商用炉と比べて直ちに利用できる割合が低い(利用を申込んだ時間に対する利用可能な時間の割合が通常、前者が約50%、後者が90%以上である)から、照射期間が全体としてはるかに長くなる可能性がある。しかし、商用炉での試験には、特に革新的な発想の燃料の場合、試験の時間ロスよりも重大なリスクがある。それは、実験により不具合が生じると、原子炉の運転継続に悪い影響が及んで、1日当たり100万米ドルに上る減収をもたらし、原子炉全体を危険に晒しかねないおそれがあるからである。
【0007】
試験サイクルの終了後、原子炉からサンプルを取り出して検査する。試験サンプルが検査可能な状態になるまで放射能を減衰させるための冷却期間が必要である。この冷却期間は輸送要件に左右され、短くて6カ月、長くて18カ月である。
【0008】
照射後、検査を行って、熱伝導率、燃料スエリング、核分裂生成ガス放出量、燃料融点などのデータを得る必要がある。かかるデータを得るにはサンプルを分解し、検査し、試験しなければならず、完了までに3~6カ月を要する。
【0009】
取得したデータは相関され、経験的モデルの作成に使用される。この経験的モデルは、試験データと共にしかるべき規制機関に提出される。米国の原子力規制委員会(NRC)または他の国の同格機関は、提出されたデータおよび経験的モデルを審査し、新型燃料を承認するか、または追加のデータを要求するための対話を開始する。これらのデータおよびモデルは、この燃料の働きは解明されていること、また、新型燃料を原子炉で使用しても一般住民への悪影響がないことをNRCに対して実証するために使用される。理論上は、十分な数のサンプルが原子炉に当初から装荷され、これら複数のサンプルから得られるデータにより、NRCにとって統計的および論理的に受け入れ可能な経験的な相関関係が形成される。しかし、実際にそのように進展するのはまれであり、たいていは、データを検証し、経験的な相関関係から大きく外れるデータ点を排除または説明するために新たなデータを取得するための追加の試験が要求される。追加の試験が必要な場合、上述の手順を繰り返す必要があるが、大きな追加コストと時間ロスを伴う。提案される新型燃料が許認可できることの実証に向けてのNRCとの共同作業に要する時間は、1年ないし多年に及ぶ可能性がある。次に、複数のサンプルから得られたデータを相互に関連付け、許認可報告書に記してNRCに提出するために、さらに3~6カ月を要する。
【0010】
原子燃料または他の原子力機器の許認可取得のための現行のやり方は、多大な時間と支出を要する。
【0011】
実効性および安全性の実証能力を損なわずして、NRCから新型原子燃料の許認可を得るために要する時間を短縮する必要がある。
【発明の概要】
【0012】
本願で説明する試験システムおよび方法は、原子力施設で使用される新型原子燃料または他の構成機器の使用許認可の取得に関して試験、データ収集、審査および承認に長い時間がかかるという問題に対処するものである。
【0013】
データを生成して許認可取得を進めるための新しい方法を提案する。この方法は、原子燃料の性能などに関する原子力機器の原子論的モデリングにより、炉内燃料の性能を予測する構成機器(燃料など)の特性を求め、リアルタイムデータの回収と組み合わせて原子論的モデルをリアルタイムで検証する。さまざまな局面において、原子力機器の許認可取得のために使用されるこのプロセスは、原子炉構成機器の少なくとも一部について所定の物理特性を予測するために原子論的モデルを作成するステップと、当該原子炉内で試験中のサンプルから収集されるリアルタイムデータによって当該モデルを検証するステップとから成る。
【0014】
さまざまな局面において、原子力機器の許認可取得のために使用されるこのプロセスは、原子炉燃料の予想サイクル長の少なくとも一部にわたり当該燃料の所定の物理特性を予測するために原子論的モデルを作成するステップと、原子炉内で試験中の燃料サンプルから収集されるリアルタイムデータによって当該モデルを検証するステップとから成る。当該リアルタイムデータは、圧力、温度、構成機器体積の変化、応力・ひずみ引張、エネルギー、熱容量、熱伝導率、核分裂生成ガス放出量、燃料スエリング、燃料融点、およびそれらの組み合わせから成る群より選択できる。このプロセスは、当該リアルタイムデータを当該物理特性モデルと比較し、当該物理特性モデルを当該リアルタイムデータに適合するように調整するステップをさらに含んでもよい。
【0015】
当該比較されたリアルタイムデータと、当該調整された物理特性モデルがあればそのモデルとは、当該燃料の最終許認可申請書を作成して規制当局に提出するために使用することができる。このプロセスは、追加策または代替策として、当該リアルタイムデータを当該物理特性モデルと比較し、当該リアルタイムデータに応じて当該燃料を調整するステップをさらに含んでもよい。当該比較されたリアルタイムデータと、当該調整された燃料があればその燃料とは、当該調整された燃料の最終許認可申請書を作成して規制当局に提出するために使用することができる。
【0016】
さまざまな局面において、原子炉内で使用される構成機器の許認可に要求されるパラメータの実証に有用である本願で説明するプロセスは、概して、原子炉の運転の対象となる条件下での構成機器の少なくとも1つの物理特性および構成機器の挙動をモデル化するステップと、当該物理特性および当該挙動の当該モデルを用いて、当該構成機器の予備的な許認可申請書を作成して当該構成機器の原子炉内での使用の承認について責任を負う規制機関に提出するステップと、構成機器のサンプルを作製するステップと、当該構成機器サンプルを実験炉および商用炉のうちの一方または両方に設置するステップと、当該原子炉の運転中に対象となるパラメータを監視するために当該原子炉内にセンサを設置するステップと、当該原子炉を所定の期間にわたって運転するステップと、当該原子炉内の当該センサから当該対象となるパラメータの測定データをリアルタイムで回収するステップと、当該リアルタイムデータを当該物理特性モデルおよび当該構成機器挙動モデルと比較するステップと、随意的に、当該物理特性モデルおよび当該構成機器挙動モデルのうちの一方または両方を当該リアルタイムデータに適合するように調整するステップと、当該比較されたリアルタイムデータと、当該物理特性モデルおよび構成機器挙動モデルの調整されたモデルがあればそのモデルとに基づき、当該構成機器の最終許認可申請書を作成して当該規制機関に提出するステップとから成る。当該規制機関は、NRCであるか、あるいは他国、他地域、または複数の国および政府の連合体から権限を与えられた同格の政府機関または民間機関であってもよい。
【0017】
さまざまな局面において、当該構成機器は、原子力発電所内の原子燃料または安全関連機器である。対象となるパラメータは、圧力、温度、構成機器体積の変化、応力・ひずみ引張、エネルギー、熱容量、熱伝導率、核分裂生成ガス放出量、燃料スエリング、燃料融点、およびそれらの組み合わせから成る群より選択できる。当該原子炉運転の当該対象となる条件には、通常条件と事故条件が含まれる。
【0018】
当該センサは、熱電対、熱音響センサ、真空マイクロエレクトロニクス(VME)デバイス、火花送信機、ひずみ計、運動センサ、融点センサ、中性子束センサ、電力センサのうちの1つまたは複数のもの、およびそれらの組み合わせである。従来の許認可取得方法で要求される照射後の冷却期間および報告期間を省くことにより、約12~18カ月の時間短縮が可能となる。さらに、サンプルから当該サンプルを取り壊すことなくリアルタイムでデータが得られるので、より多量のデータが得られ、不具合の徴候があれば試験の中断が可能であり、試験数とサンプル数を大幅に減らすことができる。認証試験と並行してNRC許認可の取得を進めることができるので、許認可に要する時間をさらに短縮できる。
【0019】
本願で説明する許認可取得方法は、NRCまたは外国政府の許認可を必要とする構成機器に使用できる。例えば燃料の場合の新しい許認可取得方法として、原子燃料性能の原子論的モデリングを使用し、炉内燃料性能を予測するために燃料特性を求め、NRCへの予備的な許認可申請と共にデータをリアルタイムで回収して原子論的モデルをリアルタイムで認証することが提案される。同様に、新しい構成機器の場合、原子論的モデリングは、新しい構成機器が燃料性能および原子炉運転にどのように影響すると予想されるかに目を向ける。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面を参照することにより、本発明の特徴と利点の理解が深まるであろう。
【0021】
【
図1】本発明の方法を説明するために、現行の方法と改良された方法をそれぞれの時間表で比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本願で使用する「a」、「an」および「the」に先導される単数形は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数形をも包含する。したがって、本願で使用する冠詞「a」および「an」は、1つまたは複数の(すなわち、少なくとも1つの)冠詞の文法上における対象物を表す。例として、「an element」は1つの要素または複数の要素を意味する。非限定的な例として、本願で使用する最上部、最下部、左、右、下方、上方、前、後ろ、およびそれらの変形例などの方向性を示唆する語句は、添付の図面に示す要素の幾何学的配置に関連し、特段の記載がない限り、本願の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0023】
特許請求の範囲を含み、本願では、特段の指示がない限り、量、値または特性を表すあらゆる数字は、すべての場合において「約」という用語により修飾されると理解されたい。したがって、数字と一緒に「約」という用語が明示されていない場合でも、数字の前に「約」という語があるものと読み替えることができる。したがって、別段の指示がない限り、以下の説明で記載されるすべての数値パラメータは、本発明に基づく組成物および方法が指向する所望の特性に応じて変わる可能性がある。最低限のこととして、また均等論の適用を特許請求の範囲に限定する意図はないが、本願に記載された各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を勘案し、通常の丸め手法を適用して解釈するべきである。
【0024】
また、本願で述べるあらゆる数値範囲は、そこに内包されるすべての断片的部分を含むものとする。例えば、「1~10」という範囲は、記述された最小値1と最大値10との間(最小値と最大値を内包)のあらゆる断片的部分を含むことを意図している。すなわち、最小値は1以上、最大値は10以下である。
【0025】
本願は、許認可のための試験の対象となる構成機器の一例としての新型燃料を試験する改良された試験方法およびデータ収集方法を説明する。本方法は概して以下のステップから成る。
(1)新しいシステムのモデルを作成する。
(2)サンプルを作製し、原子炉用としての承認を受ける。
(3)実験炉、試験炉、または商用炉において、燃料の最終使用時における予想サイクル長の照射時間に達するまでサンプルを試験する。
【0026】
新しい燃料システムのモデルを作成するために、燃料の挙動を記述するハイパワーコンピューティングおよびソフトウェアコードを用いて燃料システムの原子スケールモデリングを行う。適当なコーディングが最近利用可能になっている。原子燃料および原子炉の他の構成機器を試験するために、適当な既知のハイパワーコンピューティングシステムを使用してもよい。NRCへの予備的な許認可申請において、新型燃料の使用による一般住民の放射線被ばくリスクが現行の許容レベルを超えないことを実証するために、実験と並行して、このようなハイパワーコンピューティングおよび適当なコーディングの機能を使用することができる。NRCは、圧力、温度、燃料ペレットのスエリングのようないくつかのパラメータおよび変化に対する原子炉や燃料棒の応答などシステムに関わることに注目する。
【0027】
第1のステップにおけるモデリングおよび予備的な申請作業と並行して、試験サンプルを設計して作製し、それらサンプルを原子炉に導入できるようにする上で必要な計算を実施してもよい。とりわけ、中性子計算、通常運転時および非通常運転時に燃料ペレットの中心線で溶融が起きるか否かを判断するための計算、およびペレットの膨張によって被覆管が物理的な損傷を受けるか否かを判断するための計算などを実施できる。試験炉の場合、原子炉の所有者は、新しい構成機器の試験のために原子炉を使用させる前に計算を精査する可能性がある。商用炉の場合、NRCは、新しい構成機器を試験させる前に計算を精査することが考えられる。これらの作業は最善の状況でも完了までに約12~18カ月を要し、試験対象サンプルが新発想のものであればさらに長い時間がかかる可能性がある。原子力発電業界の関係者は、規制要件に精通している。例えば、米国で試験実施の承認と商業利用の許認可を得るための要件は、連邦規制基準タイトル10、関連する行政指針および決定、ならびに関連法規に定められており、それらはいずれも折々に改定される可能性がある。
【0028】
原子論的モデリングの目標は、材料中の各原子の挙動を理解し、モデル化することである。原子の集団的挙動は、原子炉内での材料の変形、相転移、および他の現象の理解に資する。分子動力学シミュレーションは、原子の位置、速度、力など微視的レベルの情報を生成する。微視的情報を観察可能な巨視的情報(例えば圧力、応力・ひずみ引張、エネルギー、熱容量、熱伝導率、核分裂生成ガス放出量、燃料スエリング、燃料融点など)に変換するために、統計的方法を用いる。特定の時間における特定の試験条件からの外挿である点で限界のある現行の試験および分析とは異なり、原子モデリングはより幅広い範囲にわたる予測を可能にする。
【0029】
当業者は、対象となる値を知っているか、またはその値を容易に計算できる。例えば、核分裂生成ガス放出量の算出は、理想気体の法則を用いて燃料棒内の圧力と、燃料ペレットの初期体積とスエリング後の最終体積との差を計算することにより行う。中性子計算によれば、どれだけの数の核分裂が起きるのかがわかり、どれだけのガスが放出されるか計算できる。容器圧力から、実際にどれだけのガスが放出されたか評価できる。実際の圧力および体積の変化から、実際の核分裂生成ガス放出量を算出できる。
【0030】
熱伝導率は材料の熱伝導能力の尺度であり、H=ΔQ/Δt=kAΔT/xと表すことができる。ここに、ΔQ/Δtすなわちqは熱流量、kは熱伝導率、Aは伝導面の合計断面積、ΔTは温度差、xは2つの温度を隔てる伝導面の厚さである。現行の試験方法では、熱伝導率kを求めるために、燃料棒を解体して最上部ペレットの境界および中心部の温度を測定することにより、燃料ペレット中心線の温度(Tcenterline)を求める。冷却材は底部から頂部へ流れて燃料棒を離脱するが、上昇につれて温度が上がるので、最上部ペレットの温度が最も高くなる。境界温度(Tsurface)は冷却材の温度である。中心線温度を測定し、中心線温度と境界温度の差に4*k/r2を掛けることにより、熱伝導率を求めることができる。ここに、qは発熱量、kは熱伝導率、rはペレットの半径である。
【0031】
UO2燃料を用いる原子燃料棒の熱伝導率の計算式を以下に例示する。
q=(Tcenterline-Tsurface)*4*kU02/r2
kU02=q*r2/4/(Tcenterline-Tsurface)
既知の値 r=0.4095cm
測定値 Tcenterline=2227℃
測定値 Tsurface=400℃
測定値 パワー密度=q=22.5kw/ft=1402W/cm3
計算値 kU02=0.032W/cm/℃
【0032】
前述のように原子論的モデリングによって計算し、測定値によって検証できる熱伝導率と同様に、例えば燃料ペレットからの核分裂生成ガス放出率などの燃料性能パラメータを測定して、原子論的モデリングによる予測値と比較することができる。原子論的モデリングは、不均質な燃料物質の熱機械的モデリングを伴い、平均場法および/またはフルフィールド法による均質化理論に基づく。平均場法では、不均質な材料の各相について単純な幾何形状を仮定し、各相の熱機械場の空間分布を平均値によって記述する。巨視的法則の構成方程式は、当業者が容易に導出することができる。不均質な材料は、数値モデル(有限要素またはグリッド)を用いて代表要素体積(REV)の中で詳細に記述できる。幾何学的離散化法の各セルについて熱機械場の空間分布を計算し、それを用いて平均場モデルを構築することができる。
【0033】
REV体系は、例えば燃料の粒子構造を記述するために適用できる。粒子凝集体の粘塑性挙動は、粒子の配向に強く左右される。炉内燃料のモデリングを改善するために、核分裂生成ガス放出のモデルおよびコードに微細構造効果を組み入れる必要がある。炉内またはイオン照射状況での微細構造の形成をモデル化するには、点欠陥、欠陥クラスタ、ならびに核分裂生成ガスの原子および気泡が分布することが必要である。これらはいずれも、材料の数々の特性および微視的発達を支配するので不可欠である。PLEIADESプラットフォーム内のMARGARETコード(Michel Freyssの「Multiscale Modelling of Nuclear Fuels under Irradiation」、Materials Innovation for Nuclear Optimized Systems Workshop、Centre of Excellence for Nuclear Materials、2012年12月5~7日、Commissariat a l’energie atomique et aux energies alternatives(CEA-INSTN)、Saclay、Franceを参照)のようなコンピュータコードを用いて、ほとんどの観察事項(例えばガス濃度、ガス放出、スエリング、空隙率)を正しくシミュレーションできることを示せる可能性がある。ただし、一部の現象(例えば気泡シンク強度および気泡サイズ分布)は経験的にモデル化される。
【0034】
燃料の研究に適した時間スケールおよび長さスケールで、欠陥および欠陥クラスタ(空洞/気泡/転位ループ)の濃度を経時的に計算するための包括的枠組みとして、クラスタ動力学のような速度論モデルを使用することがある。粒内現象に関しては、粒内核分裂生成ガスの挙動のクラスタ動力学を用いる研究のために、MARGARETなどのコードやクラスタ動力学によって同様のスケールを記述する。空間平均化のために原子の位置を考慮することはない。欠陥および欠陥クラスタ(空洞/気泡/格子間ループ)の濃度を経時的に計算するために、原子種の濃度に関する一連の微分方程式を使用することがある。数値解が得られる式の場合、クラスタの最大サイズは計算リソースによって制限される。S.C.Middleburghほかの「Non-stoichiometry in U3Si2」、Journal of Nuclear Materials、Vol.482、pp.300-305(2016)を参照。
【0035】
モデリングおよびシミュレーションを理論および実験と統合することにより、原子炉内で起きている複雑な現象に対する新たな知見を得る機会が提供されるが、そのような改良されたモデリングおよびシミュレーションは、原子力の性能と安全性を向上させることができると考えられる。比較的最近開発された原子力先進モデリング・シミュレーション(NEAMS)技術は、性能と安全性の向上のための新しいツールを提供する。
【0036】
NEAMSツールキットには、とりわけ、改良型マルチスケール燃料性能をモデル化できるMOOSE-BISON-MARMOTコードと呼ばれる3つの燃料コードなどが含まれる。MARMOTは、原子論的なメソスケール材料モデリングが可能である。燃料中の微細構造の発達を予測するこのコードは、原子論的方法と併用することにより、マルチスケール材料モデルを作成する。マルチスケールオブジェクト指向シミュレーション環境を提供するMOOSEは、FEMベースのアプリケーションの迅速な開発を可能にするシミュレーションの枠組みを与える。改良型3次元燃料性能コードであるBISONは、定常および過渡状態の原子炉運転に関して、軽水型原子炉、三重被覆(TRISO)燃料および金属燃料を2次元および3次元でモデル化する。その他の利用可能なソフトウェアパッケージには、輸送問題の解決、原子炉速度論、同位体減損、流体力学、熱力学、構造力学および地震解析のためのツールが含まれる。これらおよび他のシミュレーションモデルに関する情報は、米国エネルギー省原子力部門から入手できる。
【0037】
BISONは、実質的にあらゆる幾何形状のさまざまな形態の燃料に適用でき、新しい材料モデルを受け入れるように容易に変更可能である。このコードは、MARMOTのような長さスケールの小さいコードと容易に連結できるので、より機械論的な、あまり経験に頼らないモデリング手法が可能になる。これによってBISONは、検証に利用できるデータに限りがある改良型燃料/被覆管システムに関連する現象をより正確に予測することができる。有限要素法に基づく最新の原子燃料性能コードであるBISONは、2009年以来、アイダホ国立研究所(INL)が開発を続けてきたものである。BISONは、INLのマルチフィジックス・オブジェクト指向シミュレーション環境(MOOSE)を利用して構築されている。超並列有限要素法に基づく枠組みであるMOOSEは、Jacobian-FreeNewton Krylov(JFNK)法を用いて、連成された連立非線形方程式を解く。MOOSEは、1次元、2次元および3次元メッシュの使用に対応するので、BISONは、連成されたマルチフィジックスおよびマルチスケールの燃料挙動を1次元の球対称、2次元の軸対称または3次元の幾何形状においてシミュレーションできる。オブジェクト指向のコード構成であることにより、新たな材料および挙動モデルの追加に要する時間とプログラミングが最小限に抑えられる。BISONを用いた原子モデリングの例は、K.E.Metzgerほかの「Model of U3SI2 Fuel System Using Bison Fuel Code」、Proceedings of ICAPP(2014年4月6~9日)に記載されている。
【0038】
UO2原子燃料の核分裂生成ガスの保持および放出に関して、いくつかの経験的モデルや半経験的モデルが開発されている。D.A.Anderssonほかの「Atomistic modeling of intrinsic and radiation-enhanced fission gas(Xe) diffusion in UO2±x:Implications for nuclear fuel performance modeling」、Journal of Nuclear Materials、vol.451、pp.225-242(2014)と、同論文に引用されたM.V.Speight、Nuclear Science Engineering、Vol.37、pp.180-185(1969)およびA.H.Boothの「A method of calculating gas diffusion from UO2 fuel and its application to the X-2-f test」、Technical Report AECL、496 CRDC-721、Atomic Energy of Canada,Ltd.(1957)を参照。
【0039】
照射中の燃料要素では、温度、機械的負荷、放射線損傷、燃料物質と核分裂生成物との間の化学作用など、さまざまな現象が組み合わさって起きる。CEAが開発したPLEIADES燃料性能ソフトウェア環境により提供される別のモデリングコードは、さまざまな運転状況における標準的または革新的な燃料要素の挙動を予測することができる。燃料物質に関する基礎研究は、照射時における微細構造の形成と、欠陥、核分裂生成物およびヘリウムの輸送特性ならびにそれらの熱化学に重点を置いている。これは、原子燃料のマルチスケールモデリング体系の総合的戦略である。点欠陥の原子輸送特性を明らかにするために使用される第1原理電子構造計算および古典的な分子動力学を用いて、核分裂生成物の反跳によって形成される衝撃損傷をモデル化することもできる(G.Martin、P.Garcia、L.VanBrutzel、B.Dorado、S.Maillard、「Nuclear Instruments and Methods」、Physics Research B269、1727(2011)を参照)。このマルチスケールモデリング法は、サイクル期間の照射時の試験と組み合わされる。個別の効果に関する実験は、モデリング向けの情報を与え、モデリング法の近似を検証するためのツールを提供する。
【0040】
核分裂プロセスによって、さまざまな核分裂生成物が生まれる。多くの場合、中性子捕獲を経て重い同位体が分裂し、より小さな原子核が生成する。核分裂性物質の燃焼が進むと、燃料中の核分裂生成物の濃度が上昇する。燃焼度の高いUO2ペレット縁辺領域では、高燃焼度構造と呼ばれる物質への再構成が起こる。UO2において、この再構成は空孔率の高いサブミクロンサイズの粒子によって特徴づけられる。I.Ray、H.Matzke、H.ThieleおよびM.Kinoshita、Journal of Nuclear Materials、vol.245、no.2-3、pp.115-123、(1997)を参照。
【0041】
ペレット中心からのさまざまな距離における燃料ペレットの同位体組成を評価するために、決定論的な2次元幾何形状コードHELIOSにおいて単一ピンセルモデルを作成した。HELIOSによって、燃料の燃焼度を計算しながら中性子輸送方程式を解くことができる。燃焼度の関数としてのU:Si比は、HELIOSを用いて、ペレット中心からペレット周辺部までのさまざまな半径における燃焼度(最大60MWd/kgU)の関数として計算されている。HELIOSは、軽水型原子炉条件における燃焼度の関数としての化学量論的変化およびU3Si2の核分裂生成物濃度を首尾よくモデル化するために使用されている。
【0042】
第3のステップでは、試験炉または商用炉において、通常運転条件での最終使用時における予想サイクル長の照射時間に達するまでサンプルを試験してもよい。サンプルを商用炉で試験する場合、燃料が使用される典型的なサイクル長に相当する照射時間は、18カ月から24カ月である。試験炉で試験を行う場合、試験炉が利用可能になるまでの待機時間を勘案すると、最終的な期間はさらに長くなる可能性がある。通常の原子炉サイクル長にできるだけマッチさせた場合の実際の原子炉運転期間は、約18~24カ月である。
【0043】
新しいサンプルの作製は、リアルタイムによる監視と、燃料棒からデータ受信器へのデータの送信により即座の解析を可能にするさまざまなプローブおよび/またはセンサならびにモニタを試験炉内に組み込んで行うのが好ましい。原子炉照射サイクルのさまざまな段階で温度を測定するために、熱電対を使用してもよい。さまざまな局面で使用する別の適当なモニタとしては熱音響センサ(TAS)が挙げられる。TASは、温度に比例する指定周波数および核分裂熱入力に比例する振幅(すなわち音量)を有する音波を発生させる装置であって、給電用および信号伝送用ケーブルを必要としない装置である。音響出力信号は、原子炉容器の外で測定される。TASモニタは、炉心内に設置してもよい。例えば、各燃料集合体の計装シンブル内に、それぞれ指定された周波数で作動する複数のTASモニタを設置してもよい。TASを使用すると、3次元出力分布を連続して測定できるため、運転出力の余裕が改善する。TASモニタは、ガンマ線束または中性子束により誘起される熱が受動的な「給電」源となる(本件の場合は電気的に加熱された積層体)。共鳴チェンバ内のガスは加熱され、振動する圧力波を発生するが、その周波数および振幅は、TAS装置自体が経験する運転条件(熱流束と温度)に左右される。圧力波は、共鳴器の外側に伝送され、原子炉容器の外に取り付けられた受信器(加速度計など)の専用ネットワークによって測定される。
【0044】
共振器が発生する音響信号の振幅および周波数を予測するために、DeltaECの商標により市販されている熱音響ソフトウェアパッケージを使用することができる。次に、DeltaECモデルによって予測されたTAS本体の振動を、容器の構造・音響連成有限要素モデルの入力条件に用いる。一連のシミュレーションの結果には、容器の外壁で予想される振動が含まれる。当業者は、原子炉を継続して運転する間にセンサデータを監視し、そのデータを解析し、構成機器の特性を予測するための同様のソフトウェアを作成することができる。
【0045】
その他のモニタとしては、真空マイクロエレクトロニクス(VME)装置および火花送信機が挙げられる。VME装置には、オシレータまたは多段階無線送信機回路として構成可能な、放射線および高温に耐えられる電子機器が含まれる。熱電子放出による電子が真空中の電荷輸送を担う熱電子真空装置は、本質的に内部が高温で作動し、放射線耐性があるので、超常環境に適している。
【0046】
簡単なLC回路網から成る火花送信機は、自己給電型中性子束検出器によって第1のコンデンサが蓄電されるのに要する時間に等しい周期でパルス信号を発生させる。第1のコンデンサの両端間の電圧が火花送信機の絶縁破壊電圧より大きくなると、アンテナを介して信号が送信される。各送信パルスは、その送信周波数、パルス間隔、変調周波数、および減衰率に基づく最大4つの情報を運ぶことができる。さまざまな燃料パラメータを測定することができ、測定値は、各装置のさまざまなパルスパラメータに変換することができる。パルス送信周波数は装置ごとに異なる値に選択可能であり、そのような装置を何百個同時に作動させることができる。送信器から送られる情報は、離散的(不連続)な時間に、典型的には1秒間に1回受信される。
【0047】
別案として、燃料交換のための運転停止の合間に、ガンマ線断層撮影などの遠隔手段を用いて非破壊様式で監視を行ってもよい。燃料の熱伝導率を求めるために使える燃料中心線温度などのリアルタイムデータ、核分裂生成ガス放出量を求めるために使える燃料棒圧力、および軸方向スエリングを突き止めるために使えるペレット積層体の高さと組み合わせることにより、モデルに基づく予測を検証することができ、値が異なる場合は、実際の値に合うようにモデルを変えることができる。
【0048】
このステップにおける現行の方法との違いは、試験データがリアルタイムで得られるため燃料サイクル期間が終わるまで待つ必要がないことである。
図1は、新しい試験方法を説明すると共に、現行の方法と改良された方法とを時間表により比較したものである。そのデータは、受け取り次第、予備的な許認可申請に用いる原子スケールモデルの検証に利用することができる。データが予測と合わない場合は、モデルを評価しなおし、進行中の試験から得られる実際のデータを組み入れて新しいモデルを作成し、将来のデータ読取値について新たな予測を行い、その読取値を用いて新しいモデルの有効性を認証することができる。
【0049】
また新しい方法は、現行よりも早期の手続き段階でNRCと対話するステップを含むのが好ましい。なぜならば、現行よりはるかに迅速に試験データを入手して解析し検討することが可能となるし、最初の試験炉サイクルの完了を待って新しい試験サイクルを開始するのではなく、最初の試験炉サイクル中に追加試験の要求に応じることができるからである。最終的に認証が完了した場合、NRCは、2回目の炉内試験を要求することなく、最初の炉内試験の完了時に、新しいシステムのモデルおよび許認可申請を承認することができる。
【0050】
数年の大幅な時間短縮に加えて、作製および試験が必要なサンプルの数を減らせる。例えば、6、12、18および24カ月の時点で回収が必要なデータについては、重複サンプルが要求されない限り、4つのサンプルを作成する代わりに、1つのサンプルからすべてのデータ点のデータを当該サンプルの破壊検査をせずに取得できるから、必要なサンプルはただ1つであるに過ぎない。また、サンプルに不具合が生じた場合、その不具合は実験期間の割と早い時期に判明するので、代用となる新しいサンプルを作成して、実験期間の損失を最小限に抑えることができる。最後に、NRCは作業の初期段階から関与し、製品の開発・試験段階の早い時期に懸念する点を指摘できるのが好ましい。そうすることにより、種々の異なる条件で実験を繰り返すことに伴う時間が節約される。
【0051】
この考え方は、(1)稼働中の原子燃料内からの無線もしくは有線送信によるリアルタイムデータ送信または遠隔計測と、(2)試験および許認可取得プロセスに伴う費用と時間に劇的な影響を及ぼす原子スケールモデリングとを組み合わせたものである。提案される試験方法は、NRCがリアルタイム試験データおよびデータ点の集合よりもさらに厳密な背景知識に基づくモデリング予測に鑑みてリアルタイムで要件を変更するのを可能にする新しい方法である。
【0052】
このような試験および許認可取得の方法は、燃料および他の原子力機器の新しい発想の着想および商業化に伴う時間と開発コストを節減し、投資収益率を高めることができる。例えば、最近の計画では、6つの試験用燃料ピンの作製に、民間企業と政府は何百万ドルも支出し、2年の歳月を費やした。その後の製造および試験期間は4~8年にわたった。最終コストはさらに高くなる。開発プロセスの最後に、NRCが追加の試験とデータを要求したり、思わしくないデータが出た場合、開発プロセスを繰り返さなければならない。開発の開始から製品導入までの期間が長くなるにつれて、割引率のために投資収益率が経時的に減少するため、ごく些細な変更を除き対応するのは経済的にほとんど実施不可能になる。提案される試験および許認可の新しい方法を使えば、試験期間が劇的に短縮され、試験を繰り返す必要性と新製品の導入遅れに伴うリスクが低減するため、経済的に健全な方式で新技術が導入される可能性および漸進的な安全性の改善が商業化への道を大きく開く可能性が高まる。
【0053】
本発明をいくつかの例に基づいて説明してきたが、いずれの例も、すべての点において限定的ではなく例示的なものである。したがって、本発明は、詳細な実施態様において、通常の技量を有する当業者が本願の説明から導くことができる多くの変形例が可能である。
【0054】
本願で言及したすべての特許、特許出願、刊行物または他の開示資料は、各々の参考文献が参照により明示的に本願に組み込まれるように、その全体が参照により本願に組み込まれる。本願で参照により組み込まれると言及されたすべての参考文献およびあらゆる資料またはそれらの一部分は、本願に記載された既存の定義、言明または他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本願に組み込まれる。したがって、本願に記載の開示事項は、必要な範囲において、それと矛盾する、参照により本願に組み込まれた資料に取って代わり、本願に明示的に記載された開示事項が決定権をもつ。
【0055】
本発明を、さまざまな例示的な実施態様を参照して説明してきた。本願に記載の実施態様は、開示された発明のさまざまな実施態様のさまざまな詳細度の例示的な特徴を示すものとして理解されたい。したがって、特に断らない限り、可能な範囲において、開示した実施態様における1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、構造物、モジュールおよび/または局面は、本発明の範囲から逸脱することなく、当該開示した実施態様における他の1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、構造物、モジュールおよび/または局面との間で、複合、分割、置換えおよび/または再構成が可能であることを理解されたい。したがって、通常の技量を有する当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施態様のいずれにおいてもさまざまな置換え、変更または組み合わせが可能であることを理解するであろう。当業者はまた、本願を検討すれば、本願に記載された本発明のさまざまな実施態様に対する多くの均等物に気付くか、あるいは単に定常的な実験を用いてかかる均等物を確認できるであろう。したがって、本発明は、さまざまな実施態様の説明によってではなく、特許請求の範囲によって限定される。