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特許7004485ゲル固体電解質電池、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜及び製造方法
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  • 特許-ゲル固体電解質電池、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜及び製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ゲル固体電解質電池、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20220114BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20220114BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220114BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20220114BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20220114BHJP
   H01M 4/46 20060101ALI20220114BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H01B13/00 Z
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/054
H01M4/40
H01M4/46
H01B1/06 A
H01B13/00 501Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020109204
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2021180169
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2020-06-24
(31)【優先権主張番号】109116083
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】599171866
【氏名又は名称】行政院原子能委員會核能研究所
【住所又は居所原語表記】1000 Wenhua Rd.Jiaan Village,Longtan District,Taoyuan City 32546,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】薛天翔
(72)【発明者】
【氏名】劉尚恩
(72)【発明者】
【氏名】王敏全
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼柏憲
(72)【発明者】
【氏名】張淑美
【審査官】須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-003945(JP,A)
【文献】特開2011-180469(JP,A)
【文献】特開2013-194112(JP,A)
【文献】特開2001-335707(JP,A)
【文献】特開2001-229975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
H01M 10/0565
H01M 10/052
H01M 10/054
H01M 4/40
H01M 4/46
H01B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法であって、
高沸点溶剤を有する第1溶液を調製するステップ、
固体高分子材料を当該第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して第2溶液を形成するステップ、
難燃性イオン伝導材料と難燃高吸水性材料を当該第2溶液に添加し、均一に混合することで第3溶液とするステップ、
当該第3溶液が粘性体を形成するステップ、及び
当該粘性体を硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップ、を含む方法。
【請求項2】
上記の当該高沸点溶剤を有する当該第1溶液を調製するステップは、
大気圧下で200℃以上の沸点を持つ溶剤を当該高沸点溶剤とするステップ、
リチウム塩の固体又はリチウム塩溶液を当該リチウム塩材料として使用するステップ、及び
当該高沸点溶剤とリチウム塩材料を20℃から150℃の温度範囲で加熱し、均一に混合するステップ、を含む請求項1に記載の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項3】
上記の当該固体高分子材料を当該第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して当該第2溶液を形成するステップは、
当該固体高分子材料が当該第2溶液に占める重量パーセントを6~40%とし、且つ、当該固体高分子材料の重量を当該高沸点溶剤の重量の20~60%とするステップを含む請求項1に記載の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項4】
上記の当該固体高分子材料を当該第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して当該第2溶液を形成するステップは、
大気圧下で100℃以下の沸点を持つ溶剤を低沸点融剤として用いるステップ、
加熱撹拌ステップを実行し、当該固体高分子材料と当該低沸点融剤を均一に混合することで、当該低沸点融剤を有するプレ溶液を形成するステップ、及び
当該プレ溶液を当該第1溶液に添加して均一に混合することで当該第2溶液を形成するステップ、を含む請求項1に記載の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項5】
上記の当該プレ溶液を当該第1溶液に添加して均一に混合することで当該第2溶液を形成するステップは、
当該固体高分子材料が当該第2溶液に占める重量パーセントを6~40%とし、且つ、当該固体高分子材料の重量を当該高沸点溶剤の重量の20~60%とし、当該低沸点融剤が当該第2溶液に占める重量パーセントを1~80%とするステップを含み、硫黄含有高沸点溶媒が高沸点溶媒の重量パーセントの50~100%を占め、前記硫黄含有高沸点溶媒は、大気圧における融点が25℃以上であり、沸点が250℃以上である請求項4に記載の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項6】
上記の当該難燃性イオン伝導材料と当該難燃高吸水性材料を当該第2溶液に添加し、均一に混合することで当該第3溶液とするステップは、
電解質のイオン導電度を向上可能な材料を当該難燃性イオン伝導材料として用い、且つ、当該難燃性イオン伝導材料の粒子サイズを10nm~1μmとするステップ、
重量あたりの吸水量が0.1g/gよりも大きいものを当該難燃高吸水性材料として用い、且つ、当該難燃高吸水性材料の粒子サイズを1nm~1μmとするステップ、及び
当該難燃性イオン伝導材料が当該第3溶液に占める重量パーセントを1~90%とし、且つ、当該難燃高吸水性材料が当該第3溶液に占める重量パーセントを0.01~20%とするステップ、を含む請求項1に記載の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項7】
上記の当該第3溶液が当該粘性体を形成するステップは、
当該第3溶液を加熱攪拌することで、25℃以上で粘度が200ポアズよりも大きくなる当該粘性体を形成するステップを含む請求項1に記載の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項8】
上記の当該粘性体を硬化することで当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップは、
当該粘性体を冷却し、当該低沸点融剤を除去するステップを含む請求項に記載の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項9】
上記の当該粘性体を硬化することで当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップは、
当該粘性体の表面に大気プラズマ溶射又はエアゾールスプレーを施し、硬化することで当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップを含む請求項1に記載の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法。
【請求項10】
ゲル固体電解質電池の製造方法であって、
負の電極に活性金属を覆蓋(熱蒸着又は付着)して活性金属リッチ層を形成するステップ、
高沸点溶剤を有する第1溶液を調製するステップと、固体高分子材料を当該第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して第2溶液を形成するステップと、難燃性イオン伝導材料と難燃高吸水性材料を当該第2溶液に添加し、均一に混合することで第3溶液とするステップと、当該第3溶液が粘性体を形成するステップと、当該粘性体を硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップ、を含む難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を製造するステップ、及び
貼り付けのステップであって、当該負の電極と正の電極をそれぞれ当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の両面に貼り付け、当該活性金属リッチ層を当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜と当該負の電極の間に設置するステップ、を含む方法。
【請求項11】
上記の当該負の電極に当該活性金属を蒸着して当該活性金属リッチ層を形成するステップにおいて、当該活性金属は、リチウム、ナトリウム又はマグネシウムを含み、さらに、活性金属リッチ層を形成した後に、前記活性金属リッチ層を酸化させることにより酸化活性金属リッチ層を形成する請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項12】
上記の当該粘性体を硬化することで当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップの前に、
当該粘性体を当該活性金属リッチ層に塗布するステップを含む請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項13】
上記の当該高沸点溶剤を有する当該第1溶液を調製するステップは、
大気圧下で200℃以上の沸点を持つ溶剤を当該高沸点溶剤とするステップ、
リチウム塩の固体又はリチウム塩溶液を当該リチウム塩材料として使用するステップ、及び
当該高沸点溶剤とリチウム塩材料を20℃から150℃の温度範囲で加熱し、均一に混合するステップ、を含む請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項14】
上記の当該固体高分子材料を当該第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して当該第2溶液を形成するステップは、
当該固体高分子材料が当該第2溶液に占める重量パーセントを6~40%とし、且つ、当該固体高分子材料の重量を当該高沸点溶剤の重量の20~60%とするステップを含み、硫黄含有高沸点溶媒が高沸点溶媒の重量パーセントの50~100%を占め、前記硫黄含有高沸点溶媒は、大気圧における融点が25℃以上であり、沸点が250℃以上である請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項15】
上記の当該固体高分子材料を当該第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して当該第2溶液を形成するステップは、
大気圧下で100℃以下の沸点を持つ溶剤を低沸点融剤として用いるステップ、
加熱撹拌ステップを実行し、当該固体高分子材料と当該低沸点融剤を均一に混合することで、当該低沸点融剤を有するプレ溶液を形成するステップ、及び
当該プレ溶液を当該第1溶液に添加して均一に混合することで当該第2溶液を形成するステップ、を含む請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項16】
上記の当該プレ溶液を当該第1溶液に添加して均一に混合することで当該第2溶液を形成するステップは、
当該固体高分子材料が当該第2溶液に占める重量パーセントを6~40%とし、且つ、当該固体高分子材料の重量を当該高沸点溶剤の重量の20~60%とし、当該低沸点融剤が当該第2溶液に占める重量パーセントを1~80%とするステップを含み、硫黄含有高沸点溶媒が高沸点溶媒の重量パーセントの50~100%を占め、前記硫黄含有高沸点溶媒は、大気圧における融点が25℃以上であり、沸点が250℃以上である請求項15に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項17】
上記の当該難燃性イオン伝導材料と当該難燃高吸水性材料を当該第2溶液に添加し、均一に混合することで当該第3溶液とするステップは、
電解質のイオン導電度を向上可能な材料を当該難燃性イオン伝導材料として用い、且つ、当該難燃性イオン伝導材料の粒子サイズを10nm~1μmとするステップ、
重量あたりの吸水量が0.1g/gよりも大きいものを当該難燃高吸水性材料として用い、且つ、当該難燃高吸水性材料の粒子サイズを1nm~1μmとするステップ、及び
当該難燃性イオン伝導材料が当該第3溶液に占める重量パーセントを1~90%とし、且つ、当該難燃高吸水性材料が当該第3溶液に占める重量パーセントを0.01~20%とするステップ、を含む請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項18】
上記の当該第3溶液が当該粘性体を形成するステップは、
当該第3溶液を加熱攪拌することで、25℃以上で粘度が200ポアズよりも大きくなる当該粘性体を形成するステップを含む請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項19】
上記の当該粘性体を硬化することで当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップは、
当該粘性体を冷却し、当該低沸点融剤を除去するステップを含む請求項15に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項20】
上記の当該粘性体を硬化することで当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップは、
当該粘性体の表面に大気プラズマ溶射又はエアゾールスプレーを施し、硬化することで当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップを含む請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項21】
更に、ウェットコーティング、大気プラズマ溶射、エアゾールスプレー又はプラズマスパッタリングによって当該負の電極及び当該正の電極を製造する請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法。
【請求項22】
請求項10に記載のゲル固体電解質電池の製造方法で製造される難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜、
当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の両面にそれぞれ貼り付けられる当該正の電極と当該負の電極、及び
当該難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜と当該負の電極の間に設けられる当該活性金属リッチ層又は酸化活性金属リッチ層、を含むゲル固体電解質電池の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜電池、電解質薄膜及び製造方法に関し、特に、ゲル固体電解質電池、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の進歩や新素材の発見に伴って、各種電池が開発されている。また、携帯電話やノートパソコン等の携帯型電気機器の登場によって、電池の高性能化や小型・軽量化等へのニーズは増す一方である。こうしたニーズを満たすために、エネルギー密度の高さや迅速に充電可能であるといった特徴から、リチウムイオン電池が注目を集めるようになっており、且つ広く使用されている。
【0003】
一次電池又は二次電池及びコンデンサ等の電気化学部材の多くは、新たな電池を製造する際の導電材料として液体電解質を使用している。しかし、液体電解質には液漏れの危険や長時間の安定性に欠けるとの欠点がある。また、腐食や燃焼が生じやすく、安全性に劣り、信頼性が低い等の問題もある。そのため、前記液体電解質では大規模産業のエネルギー蓄積における安全要求を満たすことができない。メーカーは事態の改善を切実に望んではいるが、質の悪い電池による携帯機器の爆発事件が相次いでおり、人々の心配は絶えない。
【0004】
このほか、新エネルギー車の登場以降、リチウム電池が自然発火したとのニュースも途絶えることがない。そのため、リチウム電池を含む産業チェーン上の大手企業や研究機関、大学等の業界各所は、上述したような課題の改良及び改善に全力を尽くしており、これが業界において解決すべき課題となっている。
【0005】
また、現在の高分子固体電解質の製造方式である多孔膜浸透法(porous membrane wetting)や架橋法(crosslinking)等の方法はやや複雑である。且つ、組み立ての手順として、膜を電解液に浸漬するステップや前駆体の加熱、或いは光重合等のステップを加える必要があるため、プロセスが煩雑で冗長となるだけでなく、品質管理についても一考を要する議題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の構造及び製造方法とは異なり、一般的な屋内環境下で組立て可能なゲル固体電解質電池及び難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例では、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法を提供する。当該製造方法は、高沸点溶剤を有する第1溶液を調製するステップ、固体高分子材料を第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して第2溶液を形成するステップ、難燃性イオン伝導材料と難燃高吸水性材料を第2溶液に添加し、均一に混合することで第3溶液とするステップ、第3溶液が粘性体を形成するステップ、及び粘性体を硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップ、を含む。
【0008】
本発明の他の実施例では、上記の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法で製造される難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を提供する。
【0009】
本発明の更なる実施例では、ゲル固体電解質電池の製造方法を提供する。当該製造方法は、負の電極に活性金属を覆蓋(熱蒸着又は付着)して活性金属リッチ層を形成するステップ、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を製造するステップ、及び、貼り付けのステップであって、負の電極と正の電極をそれぞれ難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の両面に貼り付け、活性金属リッチ層を難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜と負の電極の間に設置するステップ、を含む。難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を製造するステップは、高沸点溶剤を有する第1溶液を調製するステップと、固体高分子材料を第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して第2溶液を形成するステップと、難燃性イオン伝導材料と難燃高吸水性材料を第2溶液に添加し、均一に混合することで第3溶液とするステップと、第3溶液が粘性体を形成するステップと、粘性体を硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップ、を含む。
【0010】
本発明の更なる実施例は、上記のゲル固体電解質電池の製造方法で製造されるゲル固体電解質電池を提供する。ゲル固体電解質電池は、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜、正の電極、負の電極及び活性金属リッチ層を含む。正の電極と負の電極は、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の両面にそれぞれ貼り付けられる。活性金属リッチ層は、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜と負の電極の間に設けられる。
【0011】
一実施例において、上記の高沸点溶剤を有する第1溶液を調製するステップは、大気圧下で200℃以上の沸点を持つ溶剤を高沸点溶剤とするステップ、リチウム塩の固体又はリチウム塩溶液をリチウム塩材料として使用するステップ、及び高沸点溶剤とリチウム塩材料を20℃から150℃の温度範囲で加熱し、均一に混合するステップ、を含む。
【0012】
一実施例において、上記の固体高分子材料を第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して第2溶液を形成するステップは、固体高分子材料が第2溶液に占める重量パーセントを6~40%とし、且つ、固体高分子材料の重量を高沸点溶剤の重量の20~60%とし、低沸点融剤が第2溶液に占める重量パーセントを1~80%とするステップを含み、硫黄含有高沸点溶媒が高沸点溶媒の重量パーセントの50~100%を占め、前記硫黄含有高沸点溶媒は、大気圧における融点が25℃以上であり、沸点が250℃以上である。
【0013】
一実施例において、上記の固体高分子材料を第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して第2溶液を形成するステップは、大気圧下で100℃以下の沸点を持つ溶剤を低沸点融剤として用いるステップ、加熱撹拌ステップを実行し、固体高分子材料と低沸点融剤を均一に混合することで、低沸点融剤を有するプレ溶液を形成するステップ、及びプレ溶液を第1溶液に添加して均一に混合することで第2溶液を形成するステップ、を含む。
【0014】
一実施例において、上記のプレ溶液を第1溶液に添加して均一に混合することで第2溶液を形成するステップは、固体高分子材料が第2溶液に占める重量パーセントを6~40%とし、且つ、固体高分子材料の重量を高沸点溶剤の重量の20~60%とし、低沸点融剤が第2溶液に占める重量パーセントを1~80%とするステップを含み、硫黄含有高沸点溶媒が高沸点溶媒の重量パーセントの50~100%を占め、前記硫黄含有高沸点溶媒は、大気圧における融点が25℃以上であり、沸点が250℃以上である。
【0015】
一実施例において、上記の難燃性イオン伝導材料と難燃高吸水性材料を第2溶液に添加し、均一に混合することで第3溶液とするステップは、電解質のイオン導電度を向上可能な材料を難燃性イオン伝導材料として用い、且つ、難燃性イオン伝導材料の粒子サイズを10nm~1μmとするステップ、重量あたりの吸水量が0.1g/gよりも大きいものを難燃高吸水性材料として用い、且つ、難燃高吸水性材料の粒子サイズを1nm~1μmとするステップ、及び難燃性イオン伝導材料が第3溶液に占める重量パーセントを1~90%とし、且つ、難燃高吸水性材料が第3溶液に占める重量パーセントを0.01~20%とするステップ、を含む。
【0016】
一実施例において、上記の第3溶液が粘性体を形成するステップは、第3溶液を加熱攪拌することで、25℃以上で粘度が200ポアズよりも大きくなる粘性体を形成するステップを含む。
【0017】
一実施例において、上記の粘性体を硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップは、粘性体を冷却し、低沸点融剤を除去するステップを含む。
【0018】
一実施例において、上記の粘性体を硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップは、粘性体の表面に大気プラズマ溶射又はエアゾールスプレーを施し、硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップを含む。
【0019】
一実施例において、上記の負の電極に活性金属を覆蓋(熱蒸着又は付着)して活性金属リッチ層を形成するステップにおいて、活性金属は、リチウム、ナトリウム又はマグネシウムを含む。
【0020】
一実施例において、上記の粘性体を硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップの前に、粘性体を活性金属リッチ層に塗布するステップを含む。
【0021】
一実施例において、上記のゲル固体電解質電池の製造方法は、更に、ウェットコーティング、大気プラズマ溶射、エアゾールスプレー又はプラズマスパッタリングによって負の電極及び正の電極を製造する。
【発明の効果】
【0022】
上記によれば、本発明のゲル固体電解質電池、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜及び製造方法では、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜が難燃高吸水性材料を有する。この高吸水性材料は、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜又は正の電極、負の電極内の微量の水を吸収して固定するために用いられる。また、吸水の前又は後に難燃性を形成することで(水は難燃性を有するため)、ゲル固体電解質電池の電気化学効果を向上させる。
【0023】
更に、ゲル固体電解質電池、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法では、低沸点融剤の特性(溶解を補助可能)を利用して、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造温度を低下させ、当該製造温度を100℃未満、ひいては室温近くまで低下可能としている。
【0024】
また、本発明のゲル固体電解質電池は活性金属リッチ層(例えば、リチウムリッチ層、ナトリウムリッチ層、マグネシウムリッチ層)を含む。活性金属を覆蓋(熱蒸着又は付着)することで、高い反応性をもって正極材料又は負極材料と反応し、結合するようになるため、ゲル固体電解質と正の電極、負の電極との界面に十分な金属又は金属イオンを補充可能となる。これにより、ゲル固体電解質と正極材料又は負極材料との界面の濃度分極現象が低減することから、電池構造における電気容量の数値を向上させられる。
【0025】
このほか、本発明の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜は、ナノ突起状表面を有するとともに、濡れ性、可塑性(plasticity)及び可撓性(flexibility)を有するため、電池構造の一部とするのにいっそう適している。
【0026】
本発明をより明瞭簡潔とするために、以下では特に実施例を挙げるとともに、図面を組み合わせて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明におけるゲル固体電解質電池の製造方法のフローチャートである。
図2】本発明における難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法のフローチャートである。
図3】本発明におけるゲル固体電解質電池の一実施例を示す図である。
図4】本発明におけるゲル固体電解質電池の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面と実施例を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に記載する。以下の実施例は本発明の技術手段をより明確に説明するためのものにすぎず、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【0029】
説明の便宜上及び明確化のために、図中の各部材の厚さ又はサイズは、当該技術を熟知する者の理解及び閲覧に供するべく、誇張又は省略して、或いは概略的に示している。且つ、各部材のサイズは完全に実際のサイズと同じではなく、本発明で実施可能な限定条件を規定しているわけでもないため、技術上の実質的意味はない。また、構造についての任意の補足、比率関係の変更又は大きさの調整は、本発明が奏し得る効果及び達成し得る目的に影響しないことを前提に、いずれも本願で開示する技術内容の範囲内に属する。
【0030】
図1は、本発明におけるゲル固体電解質電池の製造方法のフローチャートである。図2は、本発明における難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法のフローチャートである。図3は、本発明におけるゲル固体電解質電池の一実施例を示す図である。ここで、図1を参照する。本実施例のゲル固体電解質電池の製造方法S50は、以下のステップS52からステップS56を含む。即ち、ステップS52では、負の電極120に活性金属を覆蓋(熱蒸着又は付着)して活性金属リッチ層(reactive metal-rich layer)130(図3参照)を形成するか、又は活性金属リッチ層を酸化(空気への暴露など)することにより酸化活性金属リッチ層を形成する。ここで、活性金属リッチ層130の厚さHは50nmから20μmの範囲とする。なお、説明すべき点として、活性金属とは、リチウム、ルビジウム、カリウム、セシウム、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムのように、化学反応性がアルミニウムよりも大きな金属のことをいう。また、活性金属リッチ層130は、この層の活性金属が正極材料又は負極材料と反応することから、反応後の活性金属の含有量が元々の正極又は負極材料よりも高くなる。
【0031】
一実施例において、負の電極120の材料には、例えば活性物質や導電材料が含まれ得る。このうち、活性物質には、例えば、活性金属、高活性合金、グラファイト、グラフェン、活性炭、若しくはシリコン又はこれら2種以上の混合物を使用すればよい。また、導電材料には、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス、グラファイトシート等を用いてもよいし、金、銀、プラチナを保護層として、銅、アルミニウム、ステンレス、グラファイトシート、雲母、高分子材料の表面を被覆してもよい。なお、保護層の厚さは30nm~5μmの範囲とする。同様に、正の電極140の材料には、例えば活性物質や導電材料が含まれ得る。活性物質には、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルトニッケルマンガン酸リチウム、NCA(Lithium Nickel Cobalt Aluminum Oxide)及びリン酸鉄リチウムを使用すればよい。また、導電材料には、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス、グラファイトシート等を用いてもよいし、金、銀、プラチナを保護層として、銅、アルミニウム、ステンレス、グラファイトシート、雲母、高分子材料の表面を被覆してもよい。なお、保護層の厚さは30nm~5μmの範囲とする。電極内の組成物の含有量については、実際の製造要求に応じて調整すればよく、正の電極140と負の電極120の活性物質が電位差を発生させられればよい。
【0032】
本実施例では、ウェットコーティング、大気プラズマ溶射、エアゾールスプレー又はプラズマスパッタリングによって負の電極120及び正の電極140を製造すればよい。活性金属が例えばリチウムの場合には、負の電極にリチウム金属を覆蓋(熱蒸着又は付着)してリチウムリッチ層を形成するか、又は酸化(大気への暴露など)により酸化リチウムリッチ層を形成する。同様に、活性金属を例えばナトリウム又はマグネシウムとして、ナトリウムリッチ層、マグネシウムリッチ層、酸化ナトリウムリッチ層或いは酸化マグネシウムリッチ層を形成してもよい。
【0033】
次に、ステップS54において、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110(図3参照)を製造する。詳細には、図2を参照して、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110の製造方法S100は、以下のステップS110からステップS150を含む。まず、ステップS110において、高沸点溶剤を有する第1溶液を調製する。
【0034】
一実施例では、リチウム塩の固体又はリチウム塩溶液をリチウム塩材料として使用する。また、大気圧下で200℃以上の沸点を持つ溶剤を高沸点溶剤として使用する。低沸点融剤と比較して、高沸点溶剤は100℃を超えなければ固体高分子材料を溶解して第2溶液を形成することができない。これに対し、低沸点融剤は、固体高分子材料が100℃未満で溶解してプレ溶液となるよう補助する。また、高沸点溶剤は、正の電極と負の電極間でゲル固体電解質内の金属イオンが伝導及び移動するよう補助可能である。なお、高沸点溶剤のうち含硫高沸点溶剤が占める重量パーセントは50~100%である。また、含硫高沸点溶剤の大気圧下における融点は25℃よりも高く、沸点は250℃よりも高い。次に、高沸点溶剤とリチウム塩材料を20℃から150℃の温度範囲で加熱し、均一に混合して第1溶液とする。
【0035】
続いて、ステップS120において、固体高分子材料を第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して第2溶液を形成する。固体高分子材料は有機材料のため、加熱攪拌後の第2溶液は有機材料を有する粘性体を形成する。本実施例における固体高分子材料には、例えば、ポリエチレンオキシド(Polyethylene Oxide,PEO)、ポリプロピレンオキシド(Poly(propylene Oxide),PPO)、ポリシロキサン(Polysiloxanes)、ポリアクリルニトリル(Polyacrylonitrile,PAN)、ポリメタクリル酸メチル((Poly(Methyl Methacrylate),PMMA)、ポリ塩化ビニル((Poly(Vinyl Chloride),PVC)、ポリフッ化ビニリデン(Poly(Vinylidene Fluoride),PVDF)、及びポリ(ビニリデンフルオリド-CO-ヘキサフルオロプロピレン)(poly(vinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene),PVDF-HFP)等を使用すればよいが、本発明はこれらに限らない。
【0036】
一実施例において、固体高分子材料を第1溶液に添加し、加熱撹拌ステップを実行して第2溶液を形成するステップS120は、次のステップを含む。即ち、大気圧下で100℃以下の沸点を持つ溶剤を低沸点融剤として用いる。次に、加熱撹拌ステップを実行して、固体高分子材料と低沸点融剤を均一に混合することで、低沸点融剤を有するプレ溶液を形成する。そして、プレ溶液を第1溶液に添加して均一に混合することで第2溶液を形成する。一例を挙げると、一実施例では、固体高分子材料が第2溶液に占める重量パーセントは6~40%である。且つ、固体高分子材料の重量は高沸点溶剤の重量の20~60%であり、低沸点融剤が第2溶液に占める重量パーセントは1~80%である。
【0037】
続いて、ステップS130において、難燃性イオン伝導材料(Flame retardant with ion conductivity materials)と難燃高吸水性材料(water absorbent with flame retardant materials)を第2溶液に添加し、均一に混合することで第3溶液とする。詳細には、ステップS130は更に次のステップを含む。即ち、電解質のイオン導電度を向上可能な材料を難燃性イオン伝導材料として用いる。換言すれば、難燃性イオン伝導材料は電解質のイオン導電度を向上可能である。本実施例で記載する難燃性イオン伝導材料には、ケイ素含有酸化物、リチウム・硫黄含有酸化物、リチウム・硫黄・スズ含有酸化物、リチウム含有硫化物、リチウム含有酸化物、亜リン酸トリメチル(TMPI)、リン酸トリメチル(TMP)、コアシェル(core shell)、酸化チタンリチウム(Li4Ti512)、又はこれら2種以上の混合物等を使用すればよい。且つ、難燃性イオン伝導材料の粒子サイズは10nm~1μmである。次に、重量あたりの吸水量(water absorption,吸水率ともいう)が0.1g/gよりも大きいものを難燃高吸水性材料として用いる。且つ、難燃高吸水性材料の粒子サイズは1nm~1μmである。難燃高吸水性材料は、水のみを吸収し、高沸点溶剤及び低沸点融剤については吸収しないとの特性を有する。また、一実施例において、難燃性イオン伝導材料が第3溶液に占める重量パーセントは1~90%であり、難燃高吸水性材料が第3溶液に占める重量パーセントは0.01~20%である。
【0038】
次に、ステップS140において、第3溶液が粘性体を形成する。詳細には、ステップS140は、第3溶液を加熱攪拌することで、25℃以上で粘度が200ポアズ(cps)よりも大きくなる粘性体を形成するステップを含む。即ち。低沸点融剤は、前記粘性体を形成する固体高分子材料の溶解温度を低下可能とする。なお、説明すべき点として、前記第2溶液は有機材料を有する粘性体であり、難燃性イオン伝導材料は無機材料である。よって、加熱攪拌後の第3溶液は有機材料と無機材料の双方を有する粘性体を形成する。
【0039】
次に、成型ステップであるステップS150において、粘性体を硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成する。詳細には、一実施例において、ステップS150は、粘性体を冷却し、低沸点融剤を除去するとともに、硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップを含む。上記から明らかなように、冷却することで粘性体から難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110を形成可能である。また、低沸点融剤は常温で揮発して気体となり得るため、粘性体の冷却過程と同時に低沸点融剤を除去可能である。図3に示す難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110は、上述した難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法S100で製造される。
【0040】
本発明では、粘性体の硬化方式を特に制限しない。よって、他の実施例では、粘性体の表面に大気プラズマ溶射又はエアゾールスプレーを施し、硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110を形成する。また、例えば、粘性体との親和性(Affinity)に優れたセパレータに粘性体を先に塗布してから、或いは、粘性体に対する膨潤性に優れたセパレータに粘性体を先に塗布したり、セパレータを粘性体に浸漬したりしてから、ステップS150の成型ステップを実行してもよい。また、成型後に難燃性イオン伝導粉末材料を塗布してもよい。
【0041】
再び図1を参照して、上記の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110を形成するステップS54に続き、貼り付けのステップであるステップS56において、負の電極120と正の電極140をそれぞれ難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110の両面(難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110の第1の面112及び第1の面112と対向する第2の面114)に貼り付ける。このとき、活性金属リッチ層130は難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110と負の電極120の間に設けられる。換言すれば、この活性金属リッチ層130の負極材料は導電材料を含んでおり、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110に直接貼り付けることが可能である。
【0042】
ただし、本発明はこれに限らない。他の実施例では、前記ステップS150の前に、即ち、粘性体を硬化することで難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜を形成するステップS150の前に、粘性体を活性金属リッチ層130に塗布するステップを含む。一例を挙げると、粘性体を活性金属リッチ層130における負極材料の導電材料含有面に塗布してから、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110又は粘性体の他方の面を正の電極140に貼り付ける。そして、粘性体を成型することで、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110を含むゲル固体電解質電池100を形成する。
【0043】
図3は、本発明におけるゲル固体電解質電池の一実施例を示す図である。ここで、図3を参照する。本実施例のゲル固体電解質電池100は、上記のゲル固体電解質電池の製造方法S50により製造される。ゲル固体電解質電池100は、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110、負の電極120、活性金属リッチ層130及び正の電極140を含む。正の電極140及び負の電極120は、それぞれ難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110の第1の面112及び第2の面114に貼り付けられる。このとき、活性金属リッチ層130は難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜110と負の電極120の間に設けられる。
【0044】
図4は、本発明におけるゲル固体電解質電池の他の実施例を示す図である。ここで、図4を参照する。説明すべき点として、図4のゲル固体電解質電池200は図3のゲル固体電解質電池100と類似しており、同じ部材には同じ符号を付して示している。また、同じ機能については繰り返し説明せず、以下では異なる箇所についてのみ説明する。図4のゲル固体電解質電池200と図3のゲル固体電解質電池100の違いは次の通りである。図4のゲル固体電解質電池200は、更に、集電層150,160及び基板170,180を含む。基板170,180は、アルミニウム、銅、ニッケル、雲母シート、高分子(例えばPETやPI)等とすればよく、支持部材及び活性物質の担体となり得る。また、集電層150は負の電極120と基板170の間に設けられ、集電層160は正の電極140と基板180の間に設けられる。集電層150,160には、例えば、銀、銅、ニッケル、コバルト、アルミニウム、ステンレス、金、プラチナ等の導電材料を使用可能である。
【0045】
以上述べたように、本発明のゲル固体電解質電池、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜及び製造方法では、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜が難燃高吸水性材料を有する。この高吸水性材料は、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜又は正の電極、負の電極内の微量の水を吸収して固定するために用いられる。また、吸水の前又は後に難燃性を形成することで(水は難燃性を有するため)、ゲル固体電解質電池の電気化学効果を向上させる。
【0046】
更に、ゲル固体電解質電池、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法では、低沸点融剤の特性(溶解を補助可能)を利用して、難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造温度を低下させ、当該製造温度を100℃未満、ひいては室温近くまで低下可能としている。
【0047】
また、本発明のゲル固体電解質電池は活性金属リッチ層(例えば、リチウムリッチ層、ナトリウムリッチ層、マグネシウムリッチ層)を含む。活性金属を覆蓋(熱蒸着又は付着)することで、高い化学反応性をもって正極材料又は負極材料と反応し、結合するようになるため、ゲル固体電解質と正の電極、負の電極との界面に十分な金属又は金属イオンを補充可能となる。これにより、ゲル固体電解質と正極材料又は負極材料との界面の濃度分極現象が低減することから、電池構造における電気容量の数値を向上させられる。
【0048】
このほか、本発明の難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜は、ナノ突起状表面を有するとともに、濡れ性、可塑性(plasticity)及び可撓性(flexibility)を有するため、電池構造の一部とするのにいっそう適している。
【0049】
本発明は実施例を用いて上記のように開示したが、本発明を限定するとの主旨ではない。当業者であれば、本発明の精神を逸脱しない範囲において、わずかな修正や補足が可能である。よって、本発明の保護の範囲は貼付の特許請求の範囲の規定に準じるものとする。
【符号の説明】
【0050】
100,200 ゲル固体電解質電池
110 難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜
112 第1の面
114 第2の面
120 負の電極
130 活性金属リッチ層
140 正の電極
150,160 集電層
170,180 基板
S50 ゲル固体電解質電池の製造方法
S52~S56 ステップ
S100 難燃性イオン伝導ゲル固体電解質薄膜の製造方法
S110~S150 ステップ
H 厚さ
図1
図2
図3
図4