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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
   A61C 15/00 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
A61C15/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2016207711
(22)【出願日】2016-10-24
(65)【公開番号】P2018068342
(43)【公開日】2018-05-10
【審査請求日】2019-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】近藤 早紀
(72)【発明者】
【氏名】井出 浩子
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05970992(US,A)
【文献】国際公開第2007/061384(WO,A1)
【文献】特開昭64-015038(JP,A)
【文献】特開平06-277237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0080050(US,A1)
【文献】実開平03-000823(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0031536(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第04344110(DE,A1)
【文献】米国特許第5947132(US,A)
【文献】米国特許第4330014(US,A)
【文献】米国特許第1287926(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、
把持部に設けられ合成樹脂で形成されたブラシ部とを備え、
前記ブラシ部は、所定方向に延びる連結軸線と直交する中心軸線が延びる方向に全面的に開放されて貫通する空洞の周囲を取り囲んで形成された枠状部を複数有し、
前記複数の枠状部は、前記連結軸線に沿って連結されているとともに、隣り合う前記枠状部の前記中心軸線が前記連結軸線周り方向について異なる位置に配置され
前記複数の枠状部のうち、
前記連結軸線方向の一方側の端部に位置する前記枠状部は前記把持部と連結され、
前記連結軸線方向の他方側の端部に位置する前記枠状部は前記把持部と連結されず、且つ、前記連結軸線方向の他方側の先端から歯間に前記連結軸線方向に挿入されることを特徴とする歯間清掃具。
【請求項2】
前記複数の枠状部は、前記連結軸線に沿って連結されているとともに、隣り合う前記枠状部の前記中心軸線が前記連結軸線周り方向について直交して交差することを特徴とする請求項1記載の歯間清掃具。
【請求項3】
前記枠状部は、前記連結軸線と直交する方向の一方側に配置された導入部と、前記直交する方向の他方側に配置された清掃部とを有し、
前記清掃部の最大幅は、前記導入部の最大幅よりも広いことを特徴とする請求項1または2記載の歯間清掃具。
【請求項4】
前記導入部と前記清掃部との境界は、前記枠状部において最も前記所定方向の一方側および最も前記所定方向の他方側に配置され、
前記導入部および前記清掃部は、それぞれ前記境界から最も幅が広い位置まで幅が漸次広くなっていることを特徴とする請求項3記載の歯間清掃具。
【請求項5】
前記清掃部の厚さをT1、最大幅をW1とすると、
W1/T1は、1.0以上、2.0以下であることを特徴とする請求項3または4記載の歯間清掃具。
【請求項6】
前記導入部の厚さをT2、最大幅をW2とすると、
W2/T2は、0.5以上、1.0以下であることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の歯間清掃具。
【請求項7】
前記枠状部の表面に複数の突起が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の歯間清掃具。
【請求項8】
前記把持部は、前記合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の歯間清掃具。
【請求項9】
前記枠状部の断面は、矩形状であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の歯間清掃具。
【請求項10】
前記枠状部は、平面視円環状または平面視矩形枠状であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の歯間清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯間ブラシ等の歯間清掃具は、主として歯ブラシでは清掃が困難な歯と歯の間の隙間(隣接歯間)を清掃するための補助清掃用具として使用される。歯間清掃具については、「挿入性」、「清掃実感」、「清掃しやすさ」といった歯間清掃具の基本性能に加えて、「歯ぐきへの痛みの無さ」、「当り心地の良さ」といった為害性の無さについても重要視されている。
【0003】
歯間清掃具としては、弾力性のあるワイヤをU字状に折り曲げ、その先に取っ手をとり付けて、先端部分に空間が形成された歯間清掃具(例えば、特許文献1)が開示されている。また、特許文献2には、把持部(ハンドル部)の先端から延びる合成樹脂製の芯部にエラストマーが被覆してなる軸材と、前記軸材の延在方向から見て放射状に複数設けられたエラストマーからなる突起と、を備えた歯間ブラシが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-290353号公報
【文献】特開2013-192866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された歯間清掃具は、ブラシ部に金属ワイヤーを用いていたため、歯間にブラシ部を挿入する際に操作を誤って歯肉を傷つける虞があり、上記為害性の無さに課題がある。
また、特許文献2に記載された歯間清掃具は、歯や歯肉に接する部分が軟質樹脂であるため、ブラシ部に金属ワイヤーを用いた場合の不具合を解消できるが、突起が柔らかく、突起間隔も広いため、歯間の清掃力及び使用者の清掃実感が低いという課題がある。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、為害性を解消しつつ清掃力及び清掃実感を向上させる歯間清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に従えば、把持部と、把持部に設けられ合成樹脂で形成されたブラシ部とを備え、前記ブラシ部は、所定方向に延びる連結軸線と直交する中心軸線の周囲を取り囲んで形成された枠状部を複数有し、前記複数の枠状部は、前記連結軸線に沿って連結されているとともに、隣り合う前記枠状部の前記中心軸線が前記連結軸線周り方向について異なる位置に配置されていることを特徴とする歯間清掃具が提供される。
【0008】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記枠状部は、前記連結軸線と直交する方向の一方側に配置された導入部と、前記直交する方向の他方側に配置された清掃部とを有し、前記清掃部の最大幅は、前記導入部の最大幅よりも広いことを特徴とする。
【0009】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記導入部と前記清掃部との境界は、前記枠状部において最も前記所定方向の一方側および最も前記所定方向の他方側に配置され、前記導入部および前記清掃部は、それぞれ前記境界から最も幅が広い位置まで幅が漸次広くなっていることを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記清掃部の厚さをT1、最大幅をW1とすると、W1/T1は、1.0以上、2.0以下であることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記導入部の厚さをT2、最大幅をW2とすると、W2/T2は、0.5以上、1.0以下であることを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記枠状部の表面に複数の突起が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記把持部は、前記合成樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記枠状部の断面は、矩形状であることを特徴とする。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る歯間清掃具において、前記枠状部は、平面視円環状または平面視矩形枠状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、為害性を解消しつつ清掃力及び清掃実感を向上させる歯間清掃具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、歯間清掃具1の外観斜視図である。
図2】歯間清掃具1を+Z側から視た平面図である。
図3】歯間清掃具1の製造に用いられる金型MDの断面図である。
図4図3におけるA-A線視断面図である。
図5】歯間清掃具1を用いた清掃動作を説明するための図である。
図6】歯間清掃具1を用いた清掃動作を説明するための図である。
図7】平面視矩形の枠状部を有する歯間清掃具1の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の歯間清掃具の実施の形態を、図1ないし図7を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0019】
図1は、歯間清掃具1の外観斜視図である。歯間清掃具1は、合成樹脂製であり、把持部10とブラシ部20とを備えている。把持部10は、一方向に延びる、一例として断面矩形の軸状に形成されている。ブラシ部20は、把持部10の先端に設けられている。
【0020】
なお、以下の説明では、把持部10が延びる方向(すなわち、把持部10およびブラシ部20が並ぶ方向)をX方向とし、X方向と互いに直交する方向をZ方向およびY方向として説明する。
【0021】
歯間清掃具1を構成する合成樹脂としては、軟質樹脂あるいは硬質樹脂を用いることが可能であるが、歯間に挿入することを考慮すると軟質樹脂を用いることが好ましい。軟質樹脂としては、例えば、JIS K 7215に準拠して測定されるショアAの硬度が90以下の樹脂であり、熱可塑性エラストマー、シリコンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。また、硬質樹脂としては、例えば、JIS K7203に準拠して測定される曲げ弾性率が1000MPa以下のポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の樹脂が挙げられる。
【0022】
ブラシ部20は、複数(ここでは二つ)の枠状部21、22を有している。枠状部21、22は、X軸と同軸の連結軸線30に沿って連結されている。枠状部21は、断面が矩形状であり、連結軸線30と直交しY軸と平行な中心軸線21aの周囲を取り囲む円環状に形成されている。枠状部22は、断面が矩形状であり、連結軸線30と直交しZ軸と平行な中心軸線22aの周囲を取り囲む円環状に形成されている。中心軸線21aと中心軸線22aとは、連結軸線30周り方向について異なる位置、具体的には90°異なる位置に配置されている。
【0023】
図2は、歯間清掃具1を+Z側から視た平面図である。図1および図2に示すように、枠状部22は、中心軸線22a周りに円環状に形成されている。枠状部22の内側には、中心軸線22aを中心とする孔部32が形成されている。枠状部22は、連結軸線30の+Y側に配置された導入部22Gと、連結軸線30の-Y側に配置された清掃部22Cとを有している。導入部22Gと清掃部22Cとの境界は、枠状部22における最も+X側の位置および最も-X側の位置に配置されている。すなわち、導入部22Gと清掃部22Cとの境界は、連結軸線30上(図2における3時の位置と9時の位置)に配置されている。
【0024】
導入部22Gは、清掃部22Cとの境界の位置の幅が最も狭く、最も+Y側の位置(図2における12時の位置)の幅が最も広い。導入部22Gの幅は、清掃部22Cとの境界の位置から最大幅の位置まで漸次広くなっている。
【0025】
清掃部22Cは、導入部22Gとの境界の位置の幅が最も狭く、最も-Y側の位置(図2における6時の位置)の幅が最も広い。清掃部22Cの幅は、導入部22Gとの境界の位置から最大幅の位置まで漸次広くなっている。清掃部22Cの最大幅は、導入部22Gの最大幅よりも広く形成されている。
【0026】
同様に、枠状部21は、中心軸線21a周りに円環状に形成されている。枠状部21の内側には、中心軸線21aを中心とする孔部31が形成されている。枠状部21は、連結軸線30の-Z側に配置された導入部21Gと、連結軸線30の+Z側に配置された清掃部21Cとを有している。導入部21Gと清掃部21Cとの境界は、枠状部22における最も+X側の位置および最も-X側の位置に配置されている。
【0027】
導入部21Gは、清掃部21Cとの境界の位置の幅が最も狭く、最も-Z側の位置の幅が最も広い。導入部21Gの幅は、清掃部21Cとの境界の位置から最大幅の位置まで漸次広くなっている。
【0028】
清掃部21Cは、導入部21Gとの境界の位置の幅が最も狭く、最も+Z側の位置の幅が最も広い。清掃部21Cの幅は、導入部21Gとの境界の位置から最大幅の位置まで漸次広くなっている。清掃部21Cの最大幅は、導入部21Gの最大幅よりも広く形成されている。
【0029】
枠状部21、22の厚さとしては、0.1mm以上で任意に設定可能である。
清掃部21C、22Cの最大幅をW1、厚さをT1とすると、W1/T1で表される比は、1.0以上、2.0以下であることが好ましく、1.2以上、1.5以下であることがより好ましい。W1/T1で表される比が1.0未満であれば歯垢掻き取り力が低下する可能性がある。また、W1/T1で表される比が1.5を超えると歯間への挿入が困難になる可能性がある。従って、W1/T1で表される比が1.0以上、2.0以下であれば、歯垢掻き取り力(清掃力)の向上と、歯間への挿入のしやすさを両立させることが可能になる。
【0030】
導入部21G、22Gの最大幅をW2、厚さをT2とすると、W2/T2で表される比は、0.5以上、1.0以下であることが好ましく、0.6以上、1.0以下であることがより好ましい。W2/T2で表される比が0.5未満、あるいは1.0を超えると歯間への挿入が困難になる可能性がある。従って、W2/T2で表される比が0.5以上、1.0以下であれば、歯間への挿入性を向上させることができる。
【0031】
また、枠状部21の内側に形成された孔部31と、枠状部22の内側に形成された孔部32については、枠状部21、22が歯間への挿入時に歯または歯肉に接触したときに、導入部21G、22Gおよび清掃部21C、22Cが連結軸線30に接近する方向に撓んで歯間への挿入性が向上するように、挿入方向であるX方向を長軸とする楕円状または長円状であることが好ましい。
【0032】
上記構成の歯間清掃具1は、例えば、図3に示す金型MDを用いた射出成形により製造される。金型MDは、Y軸方向を型の開閉方向とする第1金型(例えば、固定型)MD1と第2金型(例えば、可動型)MD2とを有している。本実施形態における第1金型MD1と第2金型MD2とは、連結軸線30を含むXZ平面をパーティングラインPLとしている。
【0033】
第1金型MD1と第2金型MD2とが型閉めされた金型MDには、把持部10を成形するための空間であるキャビティ10M、枠状部21を成形するためのキャビティ21Mおよび枠状部22を成形するためのキャビティ22Mが形成されている。また、第2金型MD2には、孔部31を形成するための突部31Mが第2金型MD2に当接して設けられている。
【0034】
図4は、図3におけるA-A線視断面図であり、中心軸線22aを含みYZ平面と平行な平面で金型MDを切断した図である。図4に示すように、金型MDは、先端に孔部32を形成するための突部32Mを含む軸部材35Mを有している。軸部材35Mは、Z軸方向に移動可能に設けられており、第1金型MD1と第2金型MD2とが型閉めされたときに+Z側に移動して、図4に示すように、突部32Mの先端面が第1金型MD1と第2金型MD2とに当接し、第1金型MD1と第2金型MD2とが型開きされたときに-Z側に移動して、キャビティ22Mから突部32Mを退避させる。
【0035】
上記構成の金型MDを用いて歯間清掃具1を成形するには、まず、第1金型MD1と第2金型MD2とが型閉めされた状態で、例えば、把持部10に設けられたゲート部(図示せず)を介して溶融した合成樹脂をキャビティ10M、21M、22Mに充填する。この後、合成樹脂を冷却して固化させる。そして、第1金型MD1と第2金型MD2とを型開きさせて、キャビティ22Mから突部32Mを退避させた後に成形品を金型MDから離型させることにより歯間清掃具1が製造される。
【0036】
ここで、歯間清掃具1における枠状部21の中心軸線21aと、枠状部22の中心軸線22aとが90°で交差しているため、中心軸線21aと中心軸線22aの一方を型開き方向としたときに、中心軸線21aと中心軸線22aの他方をパーティングラインPLに沿った方向とすることが可能となり容易に射出成形を行うことができる。
【0037】
また、歯間清掃具1を成形する金型構造としては上記の構造の他に、例えば、X軸と直交し、Y軸およびZ軸に対して45°傾いた方向を金型の開閉方向とし、枠状部21については中心軸線21aと直交する面を部分的なパーティングラインとし、枠状部22については中心軸線22aと直交する面を部分的なパーティングラインとして成形する構成であってもよい。
この構成を採った場合には、軸部材35Mのように、金型MDの開閉方向とは異なる方向への移動が必要な部材を設けることなく歯間清掃具1を成形することが可能になり、製造コストの低減および製造効率の向上(サイクルタイム短縮化)に寄与できる。
【0038】
上記構成の歯間清掃具1を用いて歯間を清掃する際には、把持部10を把持して、図5に示すように、歯面Tの歯間Sに歯間清掃具1を挿入する。歯間清掃具1の先端部は、最も幅が狭いため円滑に歯間Sに挿入される。最初に歯間Sに挿入された枠状部22において、導入部22Gおよび清掃部22Cの双方が歯面Tに接触した場合、清掃部22Cよりも幅が狭く曲げ強度が低い導入部22Gは歯面Tに倣って大きな変形量で弾性変形し、清掃部22Cは導入部22Gよりも小さな変形量で弾性変形する。従って、枠状部22を歯間Sに挿入して奥側に押し込むと、導入部22Gは小さな接触圧で歯面Tに接触し、清掃部22Cは導入部22Gよりも大きな接触圧で歯面Tに接触した状態で歯面Tに対して摺動する。これにより、導入部22Gおよび清掃部22Cは、それぞれの接触圧に応じた掻き取り力で歯面Tおよび歯間Sを清掃することができる。
【0039】
歯間清掃具1をさらに押し込むと、枠状部22が歯間Sから奥側に離脱するとともに、枠状部21が歯間Sに挿入される。枠状部21においても枠状部22と同様に、清掃部21Cよりも幅が狭く曲げ強度が低い導入部21Gは歯肉(または歯面T)に倣って大きな変形量で弾性変形し、清掃部21Cは歯面Tに倣って導入部21Gよりも小さな変形量で弾性変形する。
【0040】
ここで、枠状部21と枠状部22とは、連結軸線30周りに90°交差して配置されているため、枠状部21は、歯面Tに対して枠状部22とは異なる位置に接触して摺動する。そのため、枠状部22および枠状部21の歯間Sへの連続的な挿入により、歯面Tを広範囲に亘って清掃することができる。また、枠状部22および枠状部21とでは、連結軸線30周り方向の清掃部22Cの位置と清掃部21Cの位置が異なり、清掃部22Cが歯面Tに接触した位置と、清掃部21Cが歯面Tに接触した位置とが変動するため、枠状部22および枠状部21を歯間Sに連続的に挿入した際には、歯間清掃具1に連結軸線30周り方向の回転力が生じる。そのため、歯面Tおよび歯間Sに対しては、歯間清掃具1の挿入方向の両方向での掻き取り力に加えて、連結軸線30周り方向の両方向での掻き取り力で清掃することができる。
【0041】
そして、歯間清掃具1を往復移動させることにより、枠状部22および枠状部21によって繰り返し歯面Tおよび歯間Sを清掃することができる。この場合には、歯間清掃具1を奥側に移動させる場合と、手前側に移動させる場合とでは、回転方向が逆方向となるため、歯面Tを回転方向の両方向で掻き取ることにより効率的に歯面Tおよび歯間Sを清掃することが可能となる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の歯間清掃具1は、合成樹脂で形成された枠状部21、22が連結軸線30に沿って連結されているとともに、隣り合う枠状部21、22の中心軸線21a、22aが連結軸線30周り方向について異なる位置に配置されているため、為害性を解消しつつ歯間Sに挿入した枠状部21、22が連結軸線30周り方向の異なる位置で歯面Tに摺動して効率的に清掃を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態の歯間清掃具1では、枠状部21、22が連結軸線30と直交する方向の一方側に、歯間Sへの挿入時に大きく弾性変形して挿入を容易にする導入部21G、22Gを有し、連結軸線30と直交する方向の他方側に、歯間Sへの挿入時に大きな接触圧で歯面Tに接触して大きな清掃力を有する清掃部21C、22Cを有しているため、歯間Sへの挿入の容易性と、歯面Tおよび歯間Sへの大きな清掃力の双方を発現できる。特に、本実施形態の歯間清掃具1では、枠状部21、22が連結軸線30周り方向で異なる位置に配置されているため、歯間Sへの挿入により歯間清掃具1に回転力が発生するため、一層効率的に歯面Tおよび歯間Sを清掃することが可能となる。
【0044】
さらに、本実施形態の歯間清掃具1では、導入部21G、22Gおよび清掃部21C、22Cのそれぞれが、連結軸線30の延びる方向の一方側および他方側で最も幅が狭く、連結軸線30と直交する方向の幅が最も広いため、歯間清掃具1歯間Sへの挿入時に弾性変形が容易であるとともに、歯面Tとの接触圧によるX軸方向の座屈を抑制することができる。また、導入部21G、22Gおよび清掃部21C、22Cのそれぞれが最も幅が狭い位置から最も幅が広い位置まで漸次幅が変化するため、段部をもって幅が変化する場合のように段部が歯面Tと係合して挿入時の操作に不具合が生じることなく、歯間Sへの円滑な挿入を実現できる。
【0045】
また、本実施形態の歯間清掃具1では、把持部10および枠状部21、22が合成樹脂材で形成されているため、射出成形によって歯間清掃具1を製造することができ、製造コストの低減および大量生産が可能になる。なお、例えば、把持部10が硬質樹脂で形成され、枠状部21、22が軟質樹脂で形成される構成であっても、順次異なる樹脂を用いて射出成形を行う二色成形を採用することで対応可能である。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、連結軸線30に沿って二つの枠状部21、22が連結された構成を例示したが、三つ以上の枠状部が連結される構成であってもよい。枠状部が三つ以上連結される構成の場合も、隣り合う枠状部における中心軸線が、連結軸線30周り方向について異なる位置に配置されることが好ましい。
【0048】
また、上記実施形態では、枠状部21、22が円環状である構成を例示したが、図7に示すように、各中心軸線21a、22aの周囲を取り囲む矩形枠状であってもよい。この構成においても、歯間清掃具1を歯間Sに挿入した際のX軸方向の座屈を回避するために、X軸方向の対角線がこの対角線と直交する対角線よりも長い菱形の枠状部とすることが好ましい。また、円環状の枠状部または矩形枠状の枠状部のみを有する構成ではなく、円環状の枠状部と矩形枠状の枠状部とが混合して配置される構成であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、枠状部21、22の表面が歯面Tに摺動して清掃する構成を例示したが、この構成の他に、例えば、枠状部21、22の表面にブラシ状に多数(複数)の微小突起を設け歯垢の除去性およびマッサージ性を高める構成であってもよい。微小突起の形成方法としては、枠状部21、22と一体成形してもよいし、放電加工等により二次成形してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、枠状部21、22の断面が正方形や長方形の矩形状である構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば真円や楕円形状であってもよい。枠状部21、22の断面としては、矩形状であれば清掃力やマッサージ力が向上することから好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1…歯間清掃具、 10…把持部、 20…ブラシ部、 21、22…枠状部、 21a、22a…中心軸線、 21C、22C…清掃部、 21G、22G…導入部、 30…連結軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7