(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】光電素子
(51)【国際特許分類】
H05B 33/28 20060101AFI20220128BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20220128BHJP
H01L 51/50 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
H05B33/28
H01L31/04 266
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2016215530
(22)【出願日】2016-11-02
【審査請求日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】10-2015-0163056
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】特許業務法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】金 東 贊
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-283020(JP,A)
【文献】特表2002-536814(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1901243(CN,A)
【文献】特開2009-199805(JP,A)
【文献】特開2006-066553(JP,A)
【文献】特開2010-056211(JP,A)
【文献】特表2004-521455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0026456(US,A1)
【文献】特表2007-506229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/28
H01L 31/0224
H01L 51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、
前記第1電極上に位置する発光層を含む発光素子層、および
前記発光素子層上に位置する第2電極を含み、
前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも一方は、
金属からなる第1物質および1族元素のヨウ化物、2族元素のヨウ化物、ランタン族元素のヨウ化物、アクチニウム族元素のヨウ化物、遷移金属のヨウ化物、およびポスト遷移金属のヨウ化物からなる群より選択される少なくとも一つからなる第2物質を含む透明導電膜
からなり、
前記透明導電膜には、所定の電圧が印加され、
前記透明導電膜は、前記発光素子層に隣接し、且つ単一層である、光電素子。
【請求項2】
前記第1物質の価電子数は、前記第2物質に含まれている金属の価電子数と同じか、またはこれよりも大きい、請求項1に記載の光電素子。
【請求項3】
前記第1物質は、1族元素、2族元素、ランタン族元素、アクチニウム族元素、遷移金属およびポスト遷移金属からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の光電素子。
【請求項4】
前記第1物質は、Yb、Tm、Sm、Eu、Gd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Tb、Dy、Ho、Er、Lu、Ac、Th、およびPaからなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光電素子。
【請求項5】
前記第2物質は、LiI、NaI、KI、RbI、CsI、BeI
2、MgI
2、CaI
2、SrI
2、BaI
2、YbI
2、YbI
3、SmI
2、SmI
3、EuI
2、EuI
3、TmI
2、TmI
3、CuI、TlI、AgI、CdI
2、HgI
2、SnI
2、PbI
2、BiI
3、ZnI
2、MnI
2、FeI
2、GeI
2、CoI
2、NiI
2、AlI
3、ThI
4、およびUI
3からなる群より選択される少なくとも一つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光電素子。
【請求項6】
前記透明導電膜において、前記第1物質が前記第2物質に比べて多く分布している、請求項1~5のいずれか1項に記載の光電素子。
【請求項7】
前記透明導電膜において、前記第1物質と前記第2物質とが同一の程度に分布するか、または前記第2物質が前記第1物質に比べて多く分布している、請求項1~5のいずれか1項に記載の光電素子。
【請求項8】
前記透明導電膜の上に位置する金属酸化物層をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の光電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に液晶表示装置、有機発光表示装置などの表示装置や太陽電池のような光電素子の電極材料として使用される透明導電膜として、酸化インジウムにスズをドーピングした酸化インジウムスズ(ITO)膜が広範囲に使用されている。
【0003】
特許文献1で開示されている酸化インジウムスズ(ITO)膜は、透明性、導電性、発光効率などに優れているだけでなく、エッチング加工が可能であり、基板との密着性に優れている長所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ITO膜は、スパッタリング法により形成することができるが、このような方法でITO膜を有機物を含む層上に形成する際、有機物層が損傷するおそれがある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ITO膜を代替する新規な透明導電膜を含む光電素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、以下の構成を有する光電素子により達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
1.金属からなる第1物質および金属ハロゲン化物からなる第2物質を含む透明導電膜を含む、光電素子。
【0009】
2.前記第1物質の価電子数は、前記第2物質に含まれている金属の価電子数と同じか、またはこれよりも大きい、上記1.に記載の光電素子。
【0010】
3.前記第1物質は、1族元素、2族元素、ランタン族元素、アクチニウム族元素、遷移金属、およびポスト遷移金属からなる群より選択される少なくとも一つを含む、上記1.または2.のいずれかに記載の光電素子。
【0011】
4.前記第2物質は、1族元素のハロゲン化物、2族元素のハロゲン化物、ランタン族元素のハロゲン化物、アクチニウム族元素のハロゲン化物、遷移金属のハロゲン化物、およびポスト遷移金属のハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも一つを含む、上記1.~3.のいずれかに記載の光電素子。
【0012】
5.前記第1物質は、Yb、Tm、Sm、Eu、Gd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Tb、Dy、Ho、Er、Lu、Ac、Th、およびPaからなる群より選択される少なくとも一つを含む、上記1.~4.のいずれかに記載の光電素子。
【0013】
6.前記第2物質は、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、BeF2、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、YbF2、YbF3、SmF2、SmF3、EuF2、EuF3、TmF2、TmF3、CuF、TlF、AgF、CdF2、HgF2、SnF2、PbF2、BiF3、ZnF2、MnF2、FeF2、GeF2、CoF2、NiF2、AlF3、ThF4、UF3、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、BeCl2、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、YbCl2、YbCl3、SmCl2、SmCl3、EuCl2、EuCl3、TmCl2、TmCl3、CuCl、TlCl、AgCl、CdCl2、HgCl2、SnCl2、PbCl2、BiCl3、ZnCl2、MnCl2、FeCl2、GeCl2、CoCl2、NiCl2、AlCl3、ThCl4、UCl3、LiBr、NaBr、KBr、RbBr、CsBr、BeBr2、MgBr2、CaBr2、SrBr2、BaBr2、YbBr2、YbBr3、SmBr2、SmBr3、EuBr2、EuBr3、TmBr2、TmBr3、CuBr、TlBr、AgBr、CdBr2、HgBr2、SnBr2、PbBr2、BiBr3、ZnBr2、MnBr2、FeBr2、GeBr2、CoBr2、NiBr2、AlBr3、ThBr4、UBr3、LiI、NaI、KI、RbI、CsI、BeI2、MgI2、CaI2、SrI2、BaI2、YbI2、YbI3、SmI2、SmI3、EuI2、EuI3、TmI2、TmI3、CuI、TlI、AgI、CdI2、HgI2、SnI2、PbI2、BiI3、ZnI2、MnI2、FeI2、GeI2、CoI2、NiI2、AlI3、ThI4、およびUI3からなる群より選択される少なくとも一つを含む、上記1.~5.のいずれかに記載の光電素子。
【0014】
7.前記透明導電膜において、前記第1物質が前記第2物質に比べて多く分布している、上記1.~6.のいずれかに記載の光電素子。
【0015】
8.前記透明導電膜において前記第1物質と前記第2物質とが同一の程度に分布するか、または前記第2物質が前記第1物質に比べて多く分布している、上記1.~6.のいずれかに記載の光電素子。
【0016】
9.前記透明導電膜の上に位置する金属酸化物層をさらに含む、上記1.~8.のいずれかに記載の光電素子。
【0017】
10.第1電極、前記第1電極上に位置する発光層、および前記発光層上に位置する第2電極をさらに含み、前記第1電極および前記第2電極のうちの少なくとも一方は、前記透明導電膜を含む、上記1.~9.のいずれかに記載の光電素子。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、透明導電膜としてITOなどを代替できる。また、本発明によれば、光電素子の一種である有機発光素子などで発光層の損傷なしに透明電極を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例に係る光電素子に含まれる透明導電膜を基板上に示す断面図である。
【
図2】
図1で説明した実施例の改変例を示す断面図である。
【
図3】
図2で説明した実施例の改変例を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る光電素子に含まれる透明導電膜が自由電子を有することを示す概略的な図面である。
【
図5】本発明の一実施例に係る光電素子に含まれる透明導電膜で金属と金属ハロゲン化物の反応による透過率上昇を示す写真である。
【
図6】本発明の一実施例に係る光電素子に含まれる透明導電膜で金属と金属ハロゲン化物の反応による波長-透過率を示すグラフである。
【
図7】本発明の一実施例に係る光電素子に含まれる透明導電膜で各成分の厚さの変化に応じた透過率変化を示す写真である。
【
図8】本発明の一実施例に係る光電素子に含まれる透明導電膜で波長-透過率を示すグラフである。
【
図9】本発明の一実施例に係る光電素子に含まれる透明導電膜で波長-反射率を示すグラフである。
【
図10】本発明の一実施例に係る光電素子に含まれる透明導電膜で波長-吸収率を示すグラフである。
【
図11】本発明の一実施例に係る有機発光素子を示す断面図である。
【
図12】
図11の実施例で電荷生成層が追加された実施例を示す断面図である。
【
図13】
図11の実施例で発光層の構造を改変した有機発光素子を示す断面図である。
【
図14】
図11の実施例で電極構造を改変した実施例を示す断面図である。
【
図15】
図11の実施例で電極構造を改変した実施例を示す断面図である。
【
図16】本発明の一実施例に係る光電素子が点灯されることを示す写真である。
【
図17】本発明の一実施例に係る有機発光表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して本発明の多様な実施例について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。本発明は多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0021】
本発明を明確に説明するために、説明上不要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似する構成要素については同一の参照符号を付した。
【0022】
また、図面に表示された各構成の大きさおよび厚さは、説明の便宜のために任意に示したため、本発明が必ず示されたものに限定されない。図面において複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して表示した。そして、図面において、説明の便宜のために、一部の層および領域の厚さを誇張して表示した。
【0023】
また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるという時、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の「直上」にあるという時には、中間にまた他の部分がないことを意味する。また、基準になる部分の「上」にあるということは、基準になる部分の上または下に位置することであり、必ず重力反対方向に向かって「上」に位置することを意味するのではない。
【0024】
また、本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのでなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0025】
また、本明細書において、「平面上」というとき、これは対象の部分を上方から見たときを意味し、「断面上」という時、これは対象の部分を垂直に切断した断面を側方から見たときを意味する。
【0026】
光電素子は、電気エネルギーを光エネルギーに、または光エネルギーを電気エネルギーに変換する素子をいう。光電素子は、太陽電池、有機発光素子、タッチスクリーンパネルなどを含むことができる。光電素子は電流が流れるようにするための導電膜を含み、このような導電膜は光を透過するために透明導電膜であってもよい。透明導電膜は電極として使用されることもできる。
【0027】
本明細書において、透明な電極または導電膜として、電極または導電膜が有する透過率が75%以上または好ましくは85%以上であることが好ましい。ここで、透過率は、可視光領域の透過率を指す。
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る光電素子に含まれる透明導電膜について詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態に係る光電素子に含まれる透明導電膜を基板上に示す断面図である。
図2は、
図1で説明した実施例の改変例を示す断面図である。
図3は、
図2で説明した実施例の改変例を示す断面図である。
【0030】
図1~3で示した基板110は、透明導電膜を蒸着するためのターゲットを説明するために使用したものであるが、基板という用語に限定されず、光電素子に含まれる透明導電膜が蒸着可能な多様なターゲットに代替可能である。また、前記ターゲットは、その模様が多様化することができ、ウエハーのように円板形態であってもよい。
【0031】
図1を参照すると、基板110の上に透明導電膜270が位置する。本発明に係る透明導電膜は、金属からなる第1物質および金属ハロゲン化物からなる第2物質を含む。
【0032】
第1物質は、1族元素、2族元素、ランタン族(ランタノイド)元素、アクチニウム族(アクチノイド)元素、遷移金属、およびポスト遷移金属からなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0033】
1族元素の例としては、Li、Na、K、CsおよびRb等が挙げられる。
【0034】
2族元素の例としては、Be、Mg、Ca、SrおよびBaからなる群より選択される元素をいう。
【0035】
ランタン族(ランタノイド)元素の例としては、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLu等が挙げられ、好ましくはEuまたはYbである。
【0036】
アクチニウム族(アクチノイド)元素の例としては、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、NoおよびLr等が挙げられ、好ましくはAc、ThまたはPaである。
【0037】
遷移金属とは、長周期型周期表の第3族元素から第11族元素を指し、遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、およびAuなどが挙げられる。
【0038】
ポスト遷移金属とは、長周期型周期表のpブロックに属する金属元素であり、遷移金属および半金属の間に位置し、電気陰性度が遷移金属に比べて小さく、かつ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属に比べて大きく、融点および沸点が遷移金属に比べて低く、脆い特性を有する元素をいう。具体例としては、Al、Ga、In、Sn、Tl、Pb、Bi、Po等が挙げられる。
【0039】
第2物質は、1族元素のハロゲン化物、2族元素のハロゲン化物、ランタン族元素のハロゲン化物、アクチニウム族元素のハロゲン化物、遷移金属のハロゲン化物、およびポスト遷移金属のハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0040】
1族元素のハロゲン化物は、上記1族元素のフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物)を指し、好ましくはヨウ化物である。具体的には、NaI、KI、CsI、RbI等が挙げられる。
【0041】
2族元素のハロゲン化物は、上記2族元素のフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物を指す。
【0042】
ランタン族元素のハロゲン化物は、上記ランタン族元素のフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物を指す。
【0043】
アクチニウム族元素のハロゲン化物は、上記アクチニウム族元素のフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物を指す。
【0044】
遷移金属のハロゲン化物は、上記遷移金属のフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物を指す。
【0045】
ポスト遷移金属のハロゲン化物は、上記ポスト遷移金属のフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物を指す。
【0046】
本発明に係る金属ハロゲン化物からなる第2物質の屈折率は、1.3~2.5であってもよい。
【0047】
本発明において第1物質と第2物質は、標準電極電位(Standard electrode potential)が互いに類似する金属を含むことができる。例えば、本発明者らは、第1物質と第2物質がそれぞれ1族元素またはランタン族元素を含む場合に、強い反応性により自発的反応を起こすことを実験的に確認した。実験を通じてYbまたはEuを含む第1物質と、RbIまたはCsIを含む第2物質とを組み合わせて共蒸着し、第1物質と第2物質とが反応して電極を形成することを確認した。この時、電極が透明になると共に導電率が上昇する結果を得た。しかし、Agを含む第1物質と、RbIまたはCsIを含む第2物質とを組み合わせて共蒸着を通じて電極を形成する時、透明になることもなく、導電率が上昇することもなかった。また、YbまたはEuを含む第1物質と、CuIを含む第2物質とを組み合わせて共蒸着を通じて反応させて電極を形成する時、透明になることもなく、導電率が上昇することもなかった。したがって、第1物質および第2物質に含まれる金属は、反応性が高くて自発的反応を誘導できる物質であることが好ましい。第1物質および第2物質を共蒸着する際、第1物質と第2物質との比(体積比)は、1:1~1:4であることが好ましく、光電素子の発光効率を一層向上させる観点から、1:2~1:4であることがより好ましい。
【0048】
ハロゲン化物のうちヨウ化物は、ヨウ素自体の電子親和力および電気陰性度が小さいため、ヨウ化物が解離してヨード空孔を形成したり、他の反応性金属と結合して新規化合物を生成したりしやすいため、本発明に係る第2物質として好ましい。
【0049】
以下、導電メカニズムについて説明する。
【0050】
本発明において、第1物質に含まれている金属と第2物質に含まれている金属とは、互いに置換されることが好ましい。この時、第1物質の価電子数は、第2物質に含まれている金属の価電子数と同じか、またはこれよりも大きいことが好ましく、これよりも大きいことがより好ましい。第1物質の価電子数が第2物質に含まれている金属の価電子数よりも大きい場合、追加に発生する自由電子により導電性が向上しうる。
【0051】
また、第2物質に含まれているハロゲン元素を第1物質が奪って新規な物質が生成されると、ハロゲン空孔(vacancy)により自由電子が発生して、導電性が向上しうる。
【0052】
また、反応に関与して残った金属イオンによっても、導電性が向上しうる。
【0053】
本発明において、第1物質は、Yb、Tm、Sm、Eu、Gd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Tb、Dy、Ho、Er、Lu、Ac、Th、およびPaからなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましく、このうちYb、EuまたはSmのようなランタン族元素であることがより好ましく、YbまたはEuであることがさらにより好ましい。
【0054】
本発明において、第2物質は、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、BeF2、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、YbF2、YbF3、SmF2、SmF3、EuF2、EuF3、TmF2、TmF3、CuF、TlF、AgF、CdF2、HgF2、SnF2、PbF2、BiF3、ZnF2、MnF2、FeF2、GeF2、CoF2、NiF2、AlF3、ThF4、UF3、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、BeCl2、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2、YbCl2、YbCl3、SmCl2、SmCl3、EuCl2、EuCl3、TmCl2、TmCl3、CuCl、TlCl、AgCl、CdCl2、HgCl2、SnCl2、PbCl2、BiCl3、ZnCl2、MnCl2、FeCl2、GeCl2、CoCl2、NiCl2、AlCl3、ThCl4、UCl3、LiBr、NaBr、KBr、RbBr、CsBr、BeBr2、MgBr2、CaBr2、SrBr2、BaBr2、YbBr2、YbBr3、SmBr2、SmBr3、EuBr2、EuBr3、TmBr2、TmBr3、CuBr、TlBr、AgBr、CdBr2、HgBr2、SnBr2、PbBr2、BiBr3、ZnBr2、MnBr2、FeBr2、GeBr2、CoBr2、NiBr2、AlBr3、ThBr4、UBr3、LiI、NaI、KI、RbI、CsI、BeI2、MgI2、CaI2、SrI2、BaI2、YbI2、YbI3、SmI2、SmI3、EuI2、EuI3、TmI2、TmI3、CuI、TlI、AgI、CdI2、HgI2、SnI2、PbI2、BiI3、ZnI2、MnI2、FeI2、GeI2、CoI2、NiI2、AlI3、ThI4およびUI3からなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましい。中でも、光電素子の発光効率向上の観点から、NaI、KI、CsIおよびRbIからなる群より選択される少なくとも一つを含むことが好ましく、KI、CsIおよびRbIからなる群より選択される少なくとも一つを含むことがより好ましい。さらに、第1物質がYbである場合、第2物質はKIまたは/およびRbIを含むことがさらにより好ましく、KIを含むことが特に好ましい。
【0055】
本発明の一実施形態に係る透明導電膜270は、第1物質と第2物質とが共蒸着された断層構造であってもよい。透明導電膜270において第1物質が第2物質に比べて多く分布していると、そうでない場合よりも相対的に導電性が増加するため好ましい。しかし、これに限定されず、透明導電膜270において第2物質が第1物質に比べて多く分布してもよく、透明性向上の観点から好ましい。このような場合でも光電素子が異常なく点灯されることを実験的に確認した。したがって、本発明において、第1物質と第2物質とが分布する程度(体積)は、光電素子に対して要求される面抵抗および透過率を考慮して最適化することができる。また、透明導電膜270に含まれている第1物質の体積と第2物質の体積とは同一であってもよい。すなわち、第1物質と第2物質とが同一の程度に分布してもよい。ここで、「分布」とは体積基準での分布をいい、例えば、透明導電膜において第1物質が第2物質に比べて多く分布するとは、透明導電膜において第1物質の占有体積が第2物質の占有体積に比べて多いことをいう。
【0056】
本発明において、透明導電膜270は、可視光領域における透過率が好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上であり、導電性が好ましくは500Ω/□以下である。
【0057】
以下、
図2を参照して
図1で説明した実施例の改変例を説明する。
【0058】
図2を参照すると、基板110の上に透明導電膜270が位置する構造を有する点および透明導電膜270が金属からなる第1物質および金属ハロゲン化物からなる第2物質を含む点で
図1の実施例と同一である。また、
図1で説明した第1物質と第2物質の例示に関する内容は本実施例に適用され得る。
【0059】
ただし、本実施例において透明導電膜270は、下部領域270aと上部領域270bを含み、下部領域270aには第2物質に比べて第1物質が多く分布し、上部領域270bには第1物質に比べて第2物質が多く分布する。下部領域270aと上部領域270bとの境界およびその周辺では、第1物質が第2物質に含まれている金属と互いに置換反応して新規化合物が生成することで、導電物質が形成され得る。このような導電物質には、自由電子および金属イオンが含まれうる。例えば、RbIとYbとが反応すると、RbIとYbが置換されたり、YbがRbIからヨウ素を奪ってYbI2またはYbI3を形成したり、RbYbI3のようなペロブスカイト構造を有する物質も生成することができる。このとき、Rb+がYb2+、Yb3+に置換されることによって生成した自由電子、ヨード空孔による自由電子および/またはRb+、Yb2+、Yb3+のような金属イオンにより導電性が向上しうる。
【0060】
本発明の一実施形態に係る透明導電膜270は、次のとおり形成され得る。基板110の上に第1物質からなる下部層を形成し、前記下部層上に第2物質からなる上部層を形成する。この時、別途の熱処理なしに下部層の第1物質と上部層の第2物質とがそれぞれ拡散し、第1物質と第2物質とが反応して、透明であると共に導電性に優れる膜を形成する。
【0061】
この際、光電素子の発光効率の観点から、第1物質からなる下部層の厚さは、10~200Åであることが好ましく、50~100Åであることがより好ましい。一方、第2物質からなる上部層の厚さの上限値は、1000Å未満であることが好ましく、500Å未満であることがより好ましく、400Å未満であることがさらにより好ましく、300Å以下であることが特に好ましい。また、下限値は10Å以上であることが好ましく、30Å以上であることがより好ましく、50Å以上であることがさらにより好ましい。
【0062】
以下、
図3を参照して
図2で説明した実施例の改変例を説明する。
【0063】
図3を参照すると、基板110の上に透明導電膜270が位置する構造を有する点、および透明導電膜270が金属からなる第1物質および金属ハロゲン化物からなる第2物質を含む点で、
図1および
図2の実施例と同一である。また、
図1および
図2で説明した第1物質と第2物質の例示に関する内容は本実施例に適用され得る。
【0064】
ただし、本実施例において透明導電膜270は、第1物質に比べて第2物質が多く分布する下部領域270cと、第2物質に比べて第1物質が多く分布する上部領域270dとを含む。下部領域270cと上部領域270dとの境界およびその周辺には、第1物質が第2物質に含まれている金属と互いに置換反応して導電物質が形成され得る。このような導電物質には自由電子および金属イオンが含まれる。
【0065】
本実施例による透明導電膜270は、次のとおり形成され得る。基板110の上に第2物質からなる下部層を形成し、前記下部層上に第1物質からなる上部層を形成する。この時、別途の熱処理なしに下部層の第2物質と上部層の第1物質が拡散し、第1物質と第2物質が反応して、透明であると共に導電性に優れる膜を形成する。
【0066】
この際、光電素子の発光効率の観点から、第2物質からなる下部層の厚さの上限値は、500Å未満であることが好ましく、400Å未満であることがより好ましく、200Å未満であることがさらにより好ましく、100Å以下であることが特に好ましい。また、下限値は、10Å以上であることが好ましく、50Å以上であることがより好ましい。一方、第1物質からなる上部層の厚さは、50~200Åであることが好ましい。
【0067】
図示されていないが、
図1~3で説明した実施例において透明導電膜270の上に金属酸化物層をさらに含むことができる。ここで、金属酸化物層は、ITOまたはIZOを含むことができる。このように、改変実施例として熱蒸発法などにより形成された透明導電膜270の上に金属酸化物層が位置する二重透明電極構造を形成することができる。この際、第2物質からなる層の厚さは、500Å未満であることが好ましく、400Å未満であることがより好ましく、300Å未満であることがさらに好ましく、200Å以下であることが特に好ましい。
【0068】
図4は、本発明の一実施形態に係る光電素子に含まれる透明導電膜が自由電子を有することを示す概略的な図面である。
【0069】
図4を参照すると、第1物質に含まれるYbと第2物質に含まれるRbIとを用いて一つの例に該当する透明導電膜を形成することができる。YbとRbIとが反応して導電体を形成することができ、具体的にRbとYbが互いに置換されて結果的に反応物のどこかに自由電子が1つまたは2つ発生し、YbI
2またはYbI
3化合物が生成される。これによって発生するヨード(I)空孔(vacancy)により、自由電子が1つまたは2つ形成され得る。このように、金属ハロゲン化物の一種類のRbIにより形成される自由電子、ならびに/またはヨード(I)空孔により形成される自由電子および金属イオンにより、本発明に係る透明導電膜が導電性を有することができる。
【0070】
図5は、本発明の一実施形態に係る光電素子に含まれる透明導電膜において、金属と金属ハロゲン化物との反応による透過率上昇を示す写真である。
【0071】
なお、好ましい蒸着条件は、目的化合物、目的とする層の構造および熱的特性などによって異なるが、例えば、蒸着温度は100~500℃、真空度は10-10~10-3torr、蒸着速度は0.01~100Å/secの範囲で適宜選択することができる。
【0072】
図6は、本発明の一実施形態に係る透明導電膜において、金属と金属ハロゲン化物の反応による波長-透過率を示すグラフである。
【0073】
図5および
図6を参照すると、未加工ガラス(bare glass)の上にYbまたはAgをそれぞれ100Å蒸着すると、不透明であった(
図5上段)。一方、未加工ガラスの上にYbまたはAgを蒸着し、その上にそれぞれRbIを30Å蒸着すると、Yb上にRbIを蒸着した場合に限り、透過率が上昇して透明になる(
図5下段左)。特に、
図6を参照すると、比較例1に該当する未加工ガラス上にYbが100Å蒸着された場合では、透過率50~60%程度であったのに対して、実施例1に該当するYbを100Å蒸着した膜の上にRbIを30Å蒸着した膜を形成した場合には、YbがRbIと反応して透過率が約85%以上に到達した。
【0074】
図7は、本発明の一実施形態に係る光電素子に含まれる透明導電膜で各成分の厚さの変化による透過率変化を示す写真である。
図8は、本発明の一実施形態に係る透明導電膜で波長-透過率を示すグラフである。
図9は、本発明の一実施形態に係る光電素子に含まれる透明導電膜で波長-反射率を示すグラフである。
図10は、本発明の一実施形態に係る光電素子に含まれる透明導電膜で波長-吸収率を示すグラフである。
【0075】
図7を参照すると、未加工ガラスの上にYbを蒸着した場合、および未加工ガラスの上にYbを蒸着した後にRbIを蒸着した場合、厚さに応じて透明性が変化している。
【0076】
図7上段に示された写真は、未加工ガラスの上にYbを400Å、200Åおよび100Å蒸着した場合である。この場合に、Ybの厚さが薄くなることに伴って透過率が上昇したが、透過率は約60%を越えなかった。
【0077】
図7中段に示された写真は、未加工ガラスの上に厚さを400Å、200Å、150Å、130Åおよび100Åに変化させながらYbを蒸着した後に、50ÅのRbIを蒸着した場合である。この場合、Ybの厚さが減少するほど透過率が向上し、透過率は約85%以上に到達した。
【0078】
図7下段に示された写真は、未加工ガラスの上に130Åまたは100ÅのYbをそれぞれ蒸着した後に、25ÅのRbIを蒸着した場合である。この場合に、
図7中段に示された写真のうち、130Åまたは100ÅのYbを蒸着した場合と比較すると、RbIの厚さの減少のためか透過率は多少低下したが、透過率が約75%以上であった。
【0079】
図8~10は、未加工ガラス(bare glass)の上に(i)Yb(120Å)を蒸着した後、RbI(25Å)を蒸着した透明導電膜(実施例2)、(ii)Yb(130Å)を蒸着した後、RbI(25Å)を蒸着した透明導電膜(実施例3)、ならびに(iii)Yb(130Å)を蒸着した後、RbI(25Å)を蒸着し、これを計2セット積層した透明導電膜(実施例4)における透過率、反射率、および吸収率を示す。実施例2、3、4いずれも大部分の可視光波長範囲で85%以上の透過率、10%以下の反射率、および10%以下の吸収率を示した。
【0080】
以下、前述した透明導電膜を用いて形成された光電素子(有機発光素子)について説明する。
【0081】
図11は、本発明の一実施形態に係る光電素子(有機発光素子)を示す断面図である。
図12は、
図11の実施例で電荷生成層が追加された実施例を示す断面図である。
図13は、
図11の実施例で発光層の構造を改変した光電素子(有機発光素子)を示す断面図である。
【0082】
図11を参照すると、本発明の一実施形態に係る光電素子(有機発光素子)は、第1電極10、第1電極10の上に位置する正孔輸送領域20、正孔輸送領域20の上に位置する発光層30、発光層30の上に位置する電子輸送領域40および電子輸送領域40の上に位置する第2電極50を含む。この際、第1電極10または第2電極50の少なくとも一方は、上記の透明導電膜を含むことが好ましい。
【0083】
本発明の一実施形態において、第1電極10は反射電極であることが好ましい。本明細書において、反射電極とは、発光層30で発生した光を第2電極50に送るために光を発する性質を有する物質を含む電極をいう。第1電極10が反射電極であるとき、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、金(Au)、パラジウム(Pd)またはこれらの合金膜を含むことができ、銀(Ag)/酸化インジウムスズ(ITO)/銀(Ag)の三重膜構造または酸化インジウムスズ(ITO)/銀(Ag)/酸化インジウムスズ(ITO)の三重膜構造などを有することができる。
【0084】
第1電極10は、スパッタリング法、気相蒸着法、イオンビーム蒸着法、または電子ビーム蒸着法などを用いて形成することができる。
【0085】
正孔輸送領域20は、第1電極10と発光層30の間に位置する付帯層を含むことができる。正孔輸送領域20は、正孔輸送層と正孔注入層のうちの少なくとも一つを含むことができる。正孔輸送層は、第1電極10から伝達される正孔を円滑に輸送する機能を果たすことができる。正孔輸送層は、有機物質を含むことができる。
【0086】
発光層30は、青色、赤色、または緑色の発光物質を含むことができ、発光層30は、ホストおよびドーパントを含むことができる。発光層30をなす物質は特に制限されない。
【0087】
図11に示したように、発光層30は互いに異なる色を発光する2つの層31、32を含むことができる。これはタンデム型白色有機発光素子であってもよく、互いに異なる色を発光する2つの層は互いに混合されて白色を示す色を発光することができる。例えば2つの層31、32のうち一つは青色発光層であり、他の一つは黄色発光層であってもよい。
図11の実施例を改変して
図12に示したように、2つの層31、32の間に電荷生成層35が位置することができる。電荷生成層35は、通常、隣り合う発光層間に形成されて隣り合う発光層間の電荷均衡を調節する役割を果たす。
【0088】
図13は、
図11とは異なり、発光層30が3つの層31、32、33を含み、3つの層31、32、33は、それぞれ赤色、緑色および青色を発光するか、または青色、黄色、青色を発光することができる。
図13に示されていないが、
図11で説明したものと類似に、3つの層31、32、33のうち互いに隣り合う層の間に電荷生成層が位置することができる。
【0089】
図11および
図13で説明した複数の発光層30の組み合わせは例示に過ぎず、互いに異なる色を発光する発光層の組み合わせにより白色光を実現できれば複数の発光層構造は改変され得る。
【0090】
図11および
図13を再び参照すると、発光層30の上に電子輸送領域40が位置することができる。電子輸送領域40は、発光層30と第2電極50の間に位置する付帯層を含むことができる。電子輸送領域40は、電子輸送層と電子注入層のうちの少なくとも一方を含むことができる。この時、電子輸送層は有機物質を含むことができる。
【0091】
または、電子輸送層は、前述した化合物群から選択された化合物が1族元素、2族元素、ランタン系元素またはこれらのハロゲン化物でnドーピングされていてもよい。この時、前記1族元素、2族元素、ランタン系元素またはそのハロゲン化物のドーピングにより電子輸送層のn型特性が向上する。
【0092】
本発明において、第2電極50は、前面有機発光素子を実現するために透明電極であってもよい。本明細書において、透明電極とは、発光層30で発生した光または発光層30で発生した光が反射電極である第1電極10で反射した光を大部分通過させて使用者に到達するようにする電極をいう。
【0093】
第2電極50は、電子注入が容易になるように仕事関数が小さい物質を含むことができる。第2電極50が透明導電性を有するために、PVD(plasma vapor deposition)法によりITOを蒸着させると、プラズマにより下部の有機物が損傷するおそれがある。そのため、本発明に係る第2電極50が透明電極であるとき、熱蒸発法、溶液法、または化学気相蒸着法など、PVD法以外の方法により透明電極を形成することが好ましい。このうち熱蒸発法を用いることが好ましい。
【0094】
本発明の一実施形態に係る第2電極50は、金属からなる第1物質および金属ハロゲン化物からなる第2物質を含むことが好ましい。第1物質は、1族元素、2族元素、ランタン族(ランタノイド)元素、アクチニウム族(アクチノイド)元素、遷移金属およびポスト遷移金属からなる群より選択される少なくとも一つを含むことができ、第2物質は、1族元素のハロゲン化物、2族元素のハロゲン化物、ランタン族ハロゲン化物、アクチニウム族ハロゲン化物、遷移金属のハロゲン化物およびポスト遷移金属のハロゲン化物からなる群より選択される少なくとも一つを含むことができる。本実施形態に係る金属ハロゲン化物からなる第2物質の屈折率は、1.3~2.5であってもよい。
【0095】
第2電極50は、下部領域50aと上部領域50bを含み、下部領域50aは第2物質に比べて第1物質が多く分布し、上部領域50bは第1物質に比べて第2物質が多く分布する。本実施例において下部領域50aに仕事関数が低いイッテルビウム(Yb)を含む第1物質が多く分布することによって第2電極50から電子が発光層30に円滑に注入され得る。しかし、本実施形態を改変して下部領域50aが第1物質に比べて第2物質が多く分布し、上部領域50bが第2物質に比べて第1物質が多く分布することもできる。
【0096】
下部領域50aと上部領域50bとの境界およびその周辺には、第1物質と第2物質に含まれている金属が互いに置換反応して新規化合物が生成されることで、導電物質が形成され得る。このような導電物質は、自由電子および金属イオンを含むことができ、例えば、RbIとYbが反応する際、RbIとYbとが置換されたり、YbがRbIからヨウ素を奪ってYbI2またはYbI3を形成したり、RbYbI3のようなペロブスカイト構造を有する物質も生成することができる。この時、Rb+がYb2+、Yb3+に置換されることによって生成された自由電子、ヨード空孔に応じた自由電子および/またはRb+、Yb2+、Yb3+のような金属イオンにより、導電性が向上しうる。
【0097】
本発明の一実施形態では、第1物質および第2物質は、標準電極電位(Standard electrode potential)が互いに類似する金属を含むことができる。第1物質に含まれている金属と第2物質に含まれている金属とが互いに置換されるために、第1物質の価電子数は第2物質に含まれている金属の価電子数と同じか、または大きいことが好ましい。第1物質の価電子数が第2物質に含まれている金属の価電子数より大きいと、追加に発生する自由電子により導電性が向上することができる。また、第2物質に含まれているハロゲン元素を第1物質が奪って新規な物質を形成するようになると、ハロゲン空孔(vacancy)により自由電子が形成されて導電性が向上しうる。また、反応に関与して残った金属イオンによっても、導電性が向上しうる。ここで、第1物質および第2物質としては、
図1の説明において述べたものがそれぞれ好ましい。
【0098】
本発明の一実施形態において、第2電極50は、可視光領域で透過率が好ましくは75%以上、より好ましくは85%以上であり、導電率が好ましくは500Ω/□以下である。
【0099】
本発明の一実施形態において、第1電極10が反射電極であり、第2電極50が透明電極であるものと説明したが、第1電極10が透明電極であり、第2電極50が反射電極であってもよい。
【0100】
前述した光電素子(有機発光素子)は、次のような方法により形成され得る。基板(図示せず)の上に反射電極として第1電極を形成し、第1電極上に発光層を形成する。発光層上に電子輸送領域に含まれる電子輸送層を形成することができる。電子輸送層上に第1物質からなる下部層を形成し、前記下部層上に第2物質からなる上部層を形成する。この時、別途の熱処理なしに下部層の第1物質と上部層の第2物質が拡散し、第1物質と第2物質が反応して透明であると共に導電性がある第2電極50を形成する。
【0101】
図14および
図15は、
図11の実施例で電極構造を改変した実施例を示す断面図である。
図14および
図15で説明する実施例は、大部分が
図11の実施例と同一であり、以下では差がある部分のみについて説明する。
【0102】
図14を参照すると、
図11の第2電極50が上部領域50bの上に位置する金属酸化物層50cをさらに含む。金属酸化物層50cは、ITOまたはIZOを含むことができる。第2電極50は、熱蒸発法などにより形成された下部領域50aと上部領域50bを含む透明電極と金属酸化物層50cからなる二重透明電極構造で形成され得る。
【0103】
図15を参照すると、
図11とは異なり、第2電極50が共蒸着により一つの層として形成され得る。共蒸着により形成された断層構造を有する第2電極50に関する説明は、
図1の実施例で説明した内容が適用され得る。
【0104】
図16は、本発明の一実施形態に係る光電素子が点灯されることを示す写真である。なお、
図16の光電素子に含まれる透明導電膜は、Yb層(100Å)およびRbI層(50Å)を有する。
【0105】
図16を参照すると、本発明の一実施形態に係る透明導電膜を含む光電素子は、赤色素子、緑色素子および青色素子を含み、各素子が赤色、緑色、および青色発光することを確認することができた。
【0106】
追加的に、下記表1は、
図11~15に示した有機発光素子の第2電極50を本発明の一実施形態に係る透明導電膜で形成した場合の発光効率を示したものである。表1で比較例2は、13Åのイッテルビウム(Yb)と85Åの銀-マグネシウム合金(AgMg)からなる電極であり、比較例3は1500ÅのITOのみからなる電極である。
【0107】
実施例5~14は、イッテルビウム(Yb)で下部層を形成し、ヨウ化ルビジウム(RbI)で上部層を形成した後に各物質が反応して透明導電膜を形成した場合である。実施例15~18は、ヨウ化ルビジウム(RbI)で下部層を形成し、イッテルビウム(Yb)で上部層を形成して透明導電膜を形成した場合である。
【0108】
実施例19~21の電極は、イッテルビウム(Yb)およびヨウ化ルビジウム(RbI)を共蒸着して透明導電膜を形成した場合である。なお、表1中におけるYbとRbIとの比は体積比を表す。
【0109】
実施例22~29の電極は、イッテルビウム(Yb)、ヨウ化ルビジウム(RbI)、およびITOを順次に積層して透明導電膜を形成した場合である。
【0110】
実施例30~43の電極は、イッテルビウム(Yb)およびユーロピウム(Eu)のうちの一つで下部層を形成し、ヨウ化セシウム(CsI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、およびヨウ化ルビジウム(RbI)のうちの一つで上部層を形成した後に各物質が反応して透明導電膜を形成した場合である。表1で各物質の右側の数値は厚さ(Å)を示す。
【0111】
【0112】
前記表1を参照すると、金属電極が使用された比較例2に比べて実施例3~43の場合に相対的に青色発光効率が落ちる。しかし、このような現象は、比較例2で反射電極による共振が発生するのに対し、実施例5~43は当該透明電極の使用による非共振特性のため、共振が低下して発生した結果である。したがって、このような結果は、本実施例により電極を形成した時、透明電極が形成されたことを間接的に確認できる。表1の実施例のようにYbとRbIを積層構造または共蒸着構造で透明導電膜を形成した時、すべて異常なく点灯され、積層構造と共蒸着構造の効率偏差が大きくないことを確認できる。これは積層構造および共蒸着で二つの物質間の反応が十分に安定化されて実質的に同一の特性を実現できることを示す結果である。
【0113】
以下、
図17を参照して、前述した光電素子(有機発光素子)を含む有機発光表示装置について説明する。
【0114】
図17は、本発明の一実施例に係る有機発光表示装置を示す断面図である。
【0115】
図17を参照すると、透明なガラスなどで作られた基板110の上に酸化ケイ素または窒化ケイ素などで作られた遮断層111が位置する。遮断層111は二重膜構造を有することができる。
【0116】
遮断層111の上に多結晶シリコンなどで作られた半導体層151が位置する。半導体層151は、n型またはp型の導電性不純物を含む複数の不純物領域(extrinsic region)と、導電性不純物をほとんど含まない少なくとも一つの真性領域(intrinsic region)とを含むことができる。
【0117】
半導体層151において、不純物領域はソースおよびドレイン領域153、155を含み、これらはp型不純物でドーピングされ、互いに分離されている。真性領域はソースおよびドレイン領域153、155の間に位置したチャンネル領域154と、ソースおよびドレイン領域153、155から上へ長く伸びた維持領域(図示せず)とを含むことができる。
【0118】
不純物領域は、チャンネル領域154とソースおよびドレイン領域153、155の間に位置した低濃度ドーピング領域(lightly doped region)(図示せず)をさらに含むことができる。このような低濃度ドーピング領域は、不純物をほとんど含まないオフセット領域に代替可能である。
【0119】
これとは異なり、ソースおよびドレイン領域153、155はn型不純物でドーピングされてもよい。p型の導電性不純物としては、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)などが挙げられ、n型の導電性不純物としては、リン(P)、砒素(As)などが挙げられる。
【0120】
半導体層151および遮断層111の上には酸化ケイ素または窒化ケイ素からなるゲート絶縁膜140が位置する。
【0121】
ゲート絶縁膜140の上にはゲート線(図示せず)および制御電極124が位置する。
【0122】
ゲート線は、ゲート信号を伝達し、主に横方向に伸びている。制御電極124は、ゲート線と分離しており、半導体層151のチャンネル領域154と重なる。
【0123】
制御電極124の上には層間絶縁膜160が位置する。層間絶縁膜160は、窒化ケイ素や酸化ケイ素などの無機絶縁物、有機絶縁物、低誘電率絶縁物などで作られる。
【0124】
層間絶縁膜160とゲート絶縁膜140には、ソースおよびドレイン領域153、155を露出する複数の接触孔163、165が形成されている。
【0125】
層間絶縁膜160の上には、データ線171、駆動電圧線(図示せず)および出力電極175を含む複数のデータ導電体(data conductor)が形成されている。
【0126】
データ線171は、データ信号を伝達し、主に縦方向に伸びてゲート線(図示せず)と交差する。
【0127】
駆動電圧線は、駆動電圧を伝達し、主に縦方向に伸びてゲート線と交差する。駆動電圧線は、接触孔163を通じてソース領域153と連結されている入力電極173を含む。
【0128】
データ導電体171、175の上には保護膜180が位置する。保護膜180は、無機物、有機物、低誘電率絶縁物質などからなる。
【0129】
保護膜180には、出力電極175を露出する接触孔185が形成されている。保護膜180にはまた、データ線171の端部を露出する複数の接触孔(図示せず)が形成され、保護膜180と層間絶縁膜160にはゲート線の端部を露出する複数の接触孔(図示せず)が形成されてもよい。
【0130】
保護膜180の上には第1電極190が形成されている。第1電極190は、接触孔185を通じて出力電極175と物理的且つ電気的に連結されており、前述した有機発光素子の実施例のように反射電極であってもよい。つまり、第1電極190は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、金(Au)、パラジウム(Palladium)(Pd)またはこれらの合金膜を含むか、または銀(Ag)/酸化インジウムスズ(ITO)/銀(Ag)の三重膜構造または酸化インジウムスズ(ITO)/銀(Ag)/酸化インジウムスズ(ITO)の三重膜構造などを有することができる。
【0131】
保護膜180の上には隔壁(partition)360が位置する。隔壁360は、第1電極190周縁の周りを土手(bank)のように囲んで開口部365を定義し、有機絶縁物または無機絶縁物で作られる。隔壁360はまた、黒色顔料を含む感光剤で作られてもよいが、この場合、隔壁360は遮光部材の役割を果たすことができる。
【0132】
第1電極190の上には発光素子層370が形成され、発光素子層370上には第2電極270が位置する。このように、第1電極190、発光素子層370および第2電極270を含む有機発光素子が形成される。
【0133】
有機発光素子に対する説明は前述した内容が適用され得る。特に、有機発光素子の第2電極270は、前面白色発光になることができるように前述した透明導電膜で形成された透明電極であり、このような透明電極は金属からなる第1物質および金属ハロゲン化物からなる第2物質を含む。
【0134】
この時、第1電極190は正孔注入電極のアノードであり、第2電極270は電子注入電極のカソードであってもよい。しかし、本発明による一実施例は、必ずこれに限定されるのではなく、有機発光表示装置の駆動方法により第1電極190がカソードになり、第2電極270がアノードになることもできる。第1電極190および第2電極270からそれぞれ正孔と電子または電子と正孔が発光素子層370内部に注入され、注入された正孔と電子が結合したエキシトン(exiton)が励起状態から基底状態に落ちる時に発光がなされる。
【0135】
本実施例において発光素子層370に含まれている発光層は、前述したように、互いに異なる色を発光する2つの層を含んだり3つの層を含むことができる。2つの層を含む発光層のそれぞれは、互いに混合されて白色を示す色を発光することができ、3つの層を含む発光層のそれぞれは、赤色、緑色および青色を発光するかまたは青色、黄色および青色を発光することができる。
【0136】
第2電極270を通過して出た白色光は、透明電極である第2電極270の上に位置するカラーフィルター230を通過しながら所望の色を実現することができる。
図17に示したように、カラーフィルター230は封止基板210の下部面に位置することができる。ただし、カラーフィルター230の配置がこのような構造に限定されず、第2電極270の上に薄膜封止層が形成される構造において前記薄膜封止層の上部または下部に位置することもできる。
【0137】
図17では一つのカラーフィルター230のみを示したが、これは一つのサブ画素に対応する部分のみを示すものであり、本実施例による有機発光表示装置で複数のサブ画素にそれぞれ位置する第2電極270に対応するように複数のカラーフィルター230が形成されてもよい。複数のカラーフィルター230は、赤色、青色、または緑色のカラーフィルターであってもよい。
【0138】
以上で、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な改変および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0139】
10、190…第1電極
20…正孔輸送領域
30、31、32、33…発光層
35…電荷生成層
40…電子輸送領域
50、270…第2電極
50b…上部領域
50c…金属酸化物層
110…基板
111…遮断層
124…制御電極
140…ゲート絶縁膜
151…半導体層
153、155…ソースおよびドレイン領域
154…チャンネル領域
160…層間絶縁膜
163、165、185…接触孔
171…データ線
173…入力電極
175…出力電極
180…保護膜
190…第1電極
210…封止基板
230…カラーフィルター
270…透明導電膜
270a、270c…下部領域
270b、270d…上部領域360…隔壁
365…開口部
370…発光素子層