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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20220114BHJP
【FI】
G06Q30/02 310
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017033209
(22)【出願日】2017-02-24
(65)【公開番号】P2018139036
(43)【公開日】2018-09-06
【審査請求日】2019-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000155469
【氏名又は名称】株式会社野村総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】武井 博一
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-169698(JP,A)
【文献】特開2009-169699(JP,A)
【文献】特開2003-263641(JP,A)
【文献】特開2014-191735(JP,A)
【文献】特開2002-123787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地理的に区画された複数のエリアを住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプのデータを取得する第1取得部と、
商品またはサービスが顧客へ販売された実績を示すデータであり、前記顧客が居住するエリアのデータを含む販売実績データを取得する第2取得部と、
前記商品またはサービスの販売実績データをエリアタイプごとに集計し、エリアタイプごとの集計結果に基づいて、前記商品またはサービスに関する分析情報を生成する分析部と、
を備え、
前記販売実績データは、商品またはサービスを購入した顧客のIDと、当該顧客が居住するエリアのデータと、当該商品またはサービスを示すデータとを含み、
前記分析部は、何らかの商品またはサービスを購入する頻度が所定の閾値以上の顧客を対象として各エリアタイプにおける顧客の総数を計数し、分析対象の商品またはサービスについて、各エリアタイプにおける販売数量を各エリアタイプにおける顧客の総数で除算することにより、各エリアタイプにおける平均販売数量を導出し、
前記分析部は、分析対象のエリアが属するエリアタイプにおける前記分析対象の商品またはサービスの平均販売数量と、前記分析対象のエリアの世帯数との積を、前記分析対象のエリアにおける前記分析対象の商品またはサービスの販売数量予測値として導出することを特徴とする分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ処理技術に関し、特にデータを分析する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの普及に伴い、顧客に商品を販売した実績を示す販売実績情報をデータベース等に蓄積させている企業が増加している。この販売実績情報を活用して、ユーザの販売活動を支援するための情報(以下、「販売活動支援情報」と呼ぶ。)をコンピュータシステムにより作成する企業もある。例えば特許文献1では、商品を各種観点から分類し、この分類情報と販売実績情報とを対応づけることにより販売活動支援情報を作成する。
【0003】
特許文献1とは別の方法として、商品を購入した顧客の属性と販売実績情報とを対応づけることにより販売活動支援情報が作成されることもある。この場合、ポイントカードやクレジットカードを利用して商品を購入した顧客について、それらのカード作成時に登録された顧客の属性情報が利用されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-167203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、実際に商品を購入する購入者と、実際にその商品を消費する消費者とは異なることもある。例えば、ある世帯の主婦が購入した商品の消費者は、その世帯の夫であることもある。したがって、購入者の属性に基づいて作成された販売活動支援情報は、消費者の属性を反映しないものになりがちであり、商品の販売者にとって有用な情報とならない場合もあった。
【0006】
このような背景を踏まえ、本発明者は、購入者が居住する地域(以下、「エリア」と呼ぶ。)に関し、住民の属性が類似する地域のグループ(以下、「エリアクラスタ」または「エリアタイプ」とも呼ぶ。)に注目した。すなわち、商品の購入者の属性に基づくミクロな観点からではなく、購入者が居住するエリアクラスタの住民属性に基づくマクロな観点から販売実績情報を分析することにより、商品の販売者にとって有用な販売活動支援情報を作成できると考えた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、商品またはサービスの販売を効果的に支援することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の分析装置は、地理的に区画された複数のエリアを住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプのデータを取得する第1取得部と、商品またはサービスが顧客へ販売された実績を示すデータであり、顧客が居住するエリアのデータを含む販売実績データを取得する第2取得部と、商品またはサービスの販売実績データをエリアタイプごとに集計し、エリアタイプごとの集計結果に基づいて、商品またはサービスに関する分析情報を生成する分析部と、を備える。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を、方法、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、商品またはサービスの販売を効果的に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態における販売情報分析システムの構成を示す図である。
図2】販促実績情報のデータ構造を示す図である。
図3】商品販売情報のデータ構造を示す図である。
図4】店舗顧客情報のデータ構造を示す図である。
図5】店舗販売情報のデータ構造を示す図である。
図6図1の販売情報分析装置の機能構成を示すブロック図である。
図7】エリアクラスタ情報のデータ構造を示す図である。
図8】販促効果情報のデータ構造を示す図である。
図9】商品カテゴリ情報のデータ構造を示す図である。
図10】商品指標値情報のデータ構造を示す図である。
図11】エリア販売量取得部により取得されたエリア販売量を示す図である。
図12】クラスタ販売量算出部により算出されたクラスタ販売量を示す図である。
図13】販促効果分析部の機能構成を示すブロック図である。
図14(a)】販促販売量取得部により取得された販促前販売量と販促後販売量を示す図である。
図14(b)】販促販売量集計部により集計された販促前販売量および販促後販売量を示す図である。
図14(c)】販売促進施策による販促対象商品の各エリアクラスタにおける販売量増加率を示す図である。
図15】販売量補正部の機能構成を示すブロック図である。
図16】販促実績情報のデータ構造を示す図である。
図17】商品販売情報のデータ構造を示す図である。
図18(a)】販促販売量取得部により取得された販促前販売量と販促後販売量を示す図である。
図18(b)】販促販売量補正部により補正された販促後販売量を示す図である。
図19】販売量補正部による補正後のクラスタ販売量を示す図である。
図20】商品シェア分析部の機能構成を示すブロック図である。
図21(a)】カテゴリ販売量算出部により算出されたカテゴリ販売量を示す図である。
図21(b)】カテゴリ販売量算出部により算出されたカテゴリ販売量を示す図である。
図22(a)】商品カテゴリ「コーヒー」についての各商品の占有率を示す図である。
図22(b)】商品カテゴリ「コーヒー」についての各商品の占有率を示す図である。
図23】購買要因分析部の機能構成を示すブロック図である。
図24】住民指標値とクラスタ販売量との関係を例示する図である。
図25】店舗顧客層分析部の機能構成を示すブロック図である。
図26(a)】図4の「木場店」のクラスタ顧客比率を示す図である。
図26(b)】図4の「葛西店」のクラスタ顧客比率を示す図である。
図26(c)】図4の「船橋店」のクラスタ顧客比率を示す図である。
図27】販売条件影響分析部の機能構成を示すブロック図である。
図28(a)】比較販売量取得部により取得された変更前販売量および変更後販売量を示す図である。
図28(b)】感応率評価部により算出された販売条件感応率を示す図である。
図29】リピート率分析部の機能構成を示すブロック図である。
図30(a)】クラスタリピート数算出部により算出されたクラスタリピート数を示す図である。
図30(b)】リピート率算出部により算出された各エリアクラスタにおけるリピート率を示す図である。
図31】リピート率と単位顧客販売量との対応付けを例示する図である。
図32】商品訴求度分析部の機能構成を示すブロック図である。
図33】分析情報取得部により取得された分析対象商品のクラスタ販売量を示す。
図34】クラスタ指標値算出部により算出されたクラスタ指標値を示す図である。
図35】商品訴求度補正部の機能構成を示すブロック図である。
図36】販売量傾向算出部により取得されたクラスタ販売量の推移を示す図である。
図37(a)】クラスタ指標値とクラスタ販売量の変化率とを示す図である。
図37(b)】補正前の商品指標値と、補正後の商品指標値とを示す図である。
図38】店舗販売量予測部の機能構成を示すブロック図である。
図39】各店舗における見込み販売量を示す。
図40】各店舗における販売量の実績と見込みとを対応づけて示す図である。
図41】第2の実施の形態のIDPOS分析システムの構成を示す図である。
図42】IDPOSデータの例を示す図である。
図43】エリアデータの例を示す図である。
図44図41の分析装置の機能構成を示すブロック図である。
図45】エリアタイプ付加IDPOSデータの例を示す図である。
図46】集計部による集計結果データの例を示す図である。
図47】商品プロファイル情報の例を示す図である
図48】商品プロファイル情報の例を示す図である。
図49】販売ポテンシャル情報の例を示す図である。
図50】販売ポテンシャル情報の例を示す図である。
図51】分析装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の構成を詳細にを説明する前に、まず概要を説明する。
企業間競争が激化している現在、商品の販売者には、販売活動における適切な意思決定が求められる。この意思決定を支援するために、販売活動支援情報の活用が重要になっている。ここで、販売活動支援情報の例を以下に示す。
【0013】
1.販売促進施策の効果情報。広告や店頭での値引きなどを含む販売促進施策の効果を示し、販売促進施策実施に対する販売者の意思決定を支援するための情報である。
2.商品シェア情報。同一の商品カテゴリにおける競合商品の占有率を示し、商品仕入れ・棚割等に対する販売者の意思決定を支援するための情報である。
3.購買要因情報。顧客の属性が商品の購入に及ぼす影響、言い換えれば、顧客の属性と商品の販売量との相関を示し、商品仕入れ・棚割等に対する販売者の意思決定を支援するための情報である。
4.店舗顧客層情報。店舗の顧客層がどのような構成になっているかを示し、顧客層の構成にあわせた販売者の意思決定を支援するための情報である。
【0014】
5.販売条件影響情報。商品の販売条件がその商品の売れ行きに及ぼす影響を示し、商品の販売条件設定に関する販売者の意思決定を支援するための情報である。
6.リピート率情報。同一の顧客が同一の商品を繰り返して購入する割合を示し、商品仕入れ・棚割等に対する販売者の意思決定を支援するための情報である。
7.商品訴求度情報。ある店舗の商品が顧客にどれだけ支持されているかを示し、商品仕入れ・棚割等に対する販売者の意思決定を支援するための情報である。
8.店舗販売量予測情報。ある店舗の商品が顧客にどれだけ購入されるかの予測を示し、商品仕入れ・棚割等に対する販売者の意思決定を支援するための情報である。
【0015】
これらの販売活動支援情報は、商品を実際に消費する消費者の属性と、商品の販売実績とを対応づけて作成されることが望ましい。言い換えれば、商品を実際に購入した購入者は、単に消費者の購入意思を代理で実行した者に過ぎない場合もあり、購入者の属性と、商品の販売実績を対応づけたとしても、有用な販売活動支援情報とはならない場合もある。
【0016】
例えば、商品が男性用育毛剤の場合、購入者は世帯の主婦である一方で、消費者はその世帯の夫であることが多い。この場合、購入者である主婦の属性に基づき販売活動支援情報を作成したとしても、その販売活動支援情報は、主婦をターゲットとしたものになってしまう。したがって、消費者の属性が反映されない販売活動支援情報は、販売者にとって有用な情報とはならない場合もある。
【0017】
顧客の属性を取得する従来の手段として、典型的には2つの方法がある。第1の方法は、ポイントカードやクレジットカードを利用して商品を購入した顧客について、カード作成時に登録された顧客の属性情報を利用する方法である。この第1の方法を、以下、「FSP(Frequent Shoppers Program)手法」と呼ぶことにする。また、第2の方法は、少数のモニター顧客の属性情報や、アンケートに記入された顧客の属性情報を利用する方法(以下、「モニター顧客手法」と呼ぶ。)である。
【0018】
しかし、FSP手法では、取得できる属性情報は購入者の属性情報であり、消費者の属性情報は取得できない。また、カード作成時に登録された顧客の属性情報は、あくまで過去の情報であり、商品が購買された時点での属性情報とは異なる場合もある。モニター顧客手法の場合、モニター顧客やアンケートの回答者を選別することで、消費者の属性を取得できる。しかし、モニター顧客数やアンケート数は一般的に少数であり、少数のモニター顧客やアンケート結果から顧客の属性を決定した場合、少人数のみに該当する属性が消費者全体の属性とされる結果、販売活動支援情報の精度が低くなることもあった。また、モニター顧客手法は、人手を介するため、一般的に時間がかかるという問題があった。
【0019】
第1の実施の形態は、商品の購入者が居住するエリアクラスタごとの住民属性と販売実績とを対応づけて販売活動支援情報を作成する技術を提案するものである。エリアクラスタは、住民属性が類似する複数のエリア、典型的には町丁目レベルの地図上の領域をグループ化したものであり、各エリアクラスタにはこれら複数のエリアに共通する住民属性が対応づけられている。したがって、エリアクラスタにおける消費者像と販売実績とを対応づけできるとともに、人手を介さない自動での分析を実現する。これにより、商品の販売者にとって有用な販売活動支援情報の作成を短時間で実現する。
【0020】
なお、上述した販売活動支援情報は、商品の製造者による商品開発や広告の効果測定等に対しても有用な情報となる。例えば、どのような消費者が商品を購入しているかを示す商品シェア情報や購買要因情報により、商品の製造者は、商品開発時に想定したターゲット顧客と商品の実際の消費者とが合致しているか否かをチェックできる。また、販売促進施策の効果情報により、商品の製造者は、テレビ等での商品広告や企業広告が反応を期待する消費者に影響を与えるものであったかを確認でき、莫大な広告費の費用対効果を検証する際の指標とすることができる。本実施の形態では、主に商品の販売者に対する支援情報を作成する観点から記載するが、第1の実施の形態で作成される情報は、商品を製造し販売する一連のサプライチェーンに登場する様々な企業にとって有用な情報である。
【0021】
以下、実施の形態を説明する。なお、実施の形態では、上述した8つの販売活動支援情報を作成するための販売情報分析システムについて説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態における販売情報分析システムの構成を示す。販売情報分析システム1000において、販売情報分析装置1は、LAN(Local Area Network)400を介して、ユーザ端末500で総称される第1のユーザ端末500a、第2のユーザ端末500b、および第3のユーザ端末500cに接続されている。ユーザ端末500は、ウェブブラウザを搭載した一般的なウェブ端末である。販売情報分析装置1は、ウェブサーバとしての機能を有し、ユーザ端末500にウェブページ、典型的にはHTML(HyperText Markup Language)ファイルを送信する。このウェブページがユーザ端末500のウェブブラウザに表示されることにより、ユーザが販売情報分析装置1にアクセスするためのユーザインタフェースが提供される。
【0023】
販売情報分析装置1は、LAN400を介して、販売情報保持装置300にも接続されている。販売情報分析装置1は、販売情報保持装置300から取得した販売情報を分析して、上述した販売活動支援情報を作成する。販売情報保持装置300は、各種の販売情報を保持する装置であり、典型的にはDBMS(DataBase Management System)ソフトウェアを搭載するデータベースサーバである。販売情報保持装置300は、販促実績情報保持部302と、商品販売情報保持部304と、店舗顧客情報保持部306と、店舗販売情報保持部308とを備える。
【0024】
販促実績情報保持部302は、商品に対する販売促進施策が実施された実績を示す販促実績情報を保持する。図2は、販促実績情報のデータ構造を示す。販促欄310には、販売促進施策の識別情報が記録される。この販売促進施策には、テレビCMや新聞広告から店舗での店頭大安売りまで様々な態様での販売促進施策が含まれる。対象商品欄312には、販売促進施策が対象とする商品(以下、「販促対象商品」と呼ぶ。)が記録される。販促対象商品には、複数の商品が記録されてもよく、例えば企業イメージCMの場合には、その企業が販売する多くの商品が販促対象商品となる。実施日欄314には、販売促進施策の実施日が記録される。なお、販促実績情報には、全国規模から地域規模まで様々な規模の販売促進施策が記録されてよく、この場合、販売促進施策の対象となったエリアを示す対象エリア欄がさらに設けられてもよい。図1に戻る。
【0025】
商品販売情報保持部304は、各商品について、各エリアにおける単位期間あたりの販売量を示す商品販売情報を保持する。図3は、商品販売情報のデータ構造を示す。同図は、各商品のエリアごとの販売量が日時にて記録されている。商品欄320には、商品の識別情報が記録される。エリア欄322には、商品が販売されたエリアが記録される。単位期間販売量欄324には、1日単位や1週単位等の特定の単位期間における販売量が記録される。図1に戻る。
【0026】
店舗顧客情報保持部306は、各店舗において商品を購入する顧客がどのエリアにどれだけ居住しているかを示す店舗顧客情報を保持する。図4は、店舗顧客情報のデータ構造を示す。店舗欄330には、店舗の識別情報が記録される。エリア欄332には、顧客が居住するエリアが記録される。エリア顧客数欄334には、各エリアに居住する顧客の数(以下、「エリア顧客数」と呼ぶ。)が記録される。なお、エリア顧客数は、エリアの人口そのものでもよいが、エリアの人口のうち、その店舗で実際に商品を購入する顧客数であってもよい。店舗の顧客数は、エリアの人口および店舗の属性情報から拡張ハフモデル等の既知の分析手法を用いることで算出されてもよい。実施の形態では説明の簡明化のため、エリアの人口を用いることとする。図1に戻る。
【0027】
店舗販売情報保持部308は、各店舗にて販売される商品について、単位期間あたりの販売量を示す店舗販売情報を保持する。図5は、店舗販売情報のデータ構造を示す。店舗欄340には、店舗の識別情報が記録される。商品欄342には、各店舗において販売される商品が記録される。単位期間販売量欄344には、特定の単位期間における販売量が記録される。図1に戻る。
【0028】
なお図1では、LAN400を介して各装置が接続された販売情報分析システムを示しているが、各装置が物理的に離れたロケーションに存在してもよく、また、各装置はWAN(Wide Area Network)やインターネットを介して接続されてもよい。また、販売情報分析装置1による分析サービスは、1企業内での提供に限定されず、ASP(Application Service Provider)やSaaS(Software as a Service)の形態にて、異なる企業に存在するユーザ端末500に対して提供されてもよい。
【0029】
図6は、図1の販売情報分析装置1の機能構成を示すブロック図である。本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところであり、これらのいずれかに限定されるものではない。
【0030】
また、販売情報分析装置1においては、当該装置を効率よく利用するための機能および環境を提供して当該装置の全体を統括的に制御するオペレーションシステム(以下、「OS」と呼ぶ。)が実行されている。かかるOSによってブロック図の各機能ブロックが動作させられることにより、複数のソフトウェアが実行される。
【0031】
販売情報分析装置1は、ユーザインタフェース処理部10と、データ保持部20と、データ処理部40とを備える。ユーザインタフェース処理部10は、ユーザ端末500とのユーザインタフェース処理を担当する。データ保持部20は、各種データを保持するための記憶領域である。データ処理部40は、ユーザインタフェース処理部10やデータ保持部20や販売情報保持装置300から取得されたデータをもとにして各種のデータ処理を実行する。さらに、データ処理部40は、ユーザインタフェース処理部10とデータ保持部20との間のインタフェースの役割も果たす。
【0032】
ユーザインタフェース処理部10:
ユーザインタフェース処理部10は、分析要求検出部12と、分析結果出力部14とを有する。分析要求検出部12は、LAN400を介して、ユーザ端末500から送信されるデータを受信する。例えば、商品を指定してその商品が属する商品カテゴリについての商品シェアの分析を要求する分析要求データや、商品を指定してその商品が購買された要因の分析を要求する分析要求データを受信する。分析結果出力部14は、LAN400を介して、ユーザ端末500に対してデータを送信する。例えば、商品シェアを示す分析結果データや、商品が購買された要因を示す分析結果データを送信する。
【0033】
データ保持部20:
データ保持部20は、エリアクラスタ情報保持部22と、販促効果情報保持部24と、商品カテゴリ情報保持部26と、商品指標値情報保持部28とを有する。
【0034】
エリアクラスタ情報保持部22は、エリアクラスタと各エリアと住民属性との対応関係を示すエリアクラスタ情報を保持する。図7は、エリアクラスタ情報のデータ構造を示す。エリアクラスタ欄200には、エリアクラスタの識別情報が記録される。エリア欄202には、エリアクラスタに含まれる複数のエリアが記録される。人口欄204には、各エリアの人口が記録される。
【0035】
住民属性欄206には、エリアクラスタの住民属性が記録される。エリアクラスタの住民属性とは、言い換えれば、エリア欄202の複数のエリアに共通して当てはまる住民属性である。この住民属性には、各エリアクラスタについての人口統計学的な属性データを示すデモグラフィック属性と、各エリアクラスタの住人が有する価値観やライフスタイルといった人間心理にかかわる属性データを示すサイコグラフィック属性が含まれる。
【0036】
デモグラフィック属性の例としては、「30~40代の比較的小さな子供がいる核家族」、「収入が平均よりもやや高く、大学卒以上の人が多い」などがある。一方で、サイコグラフィック属性の例としては、「女性20代について、ブランド・安全性・経済性を非常に重視するが、環境指向はほとんどない」、「女性30代について、ブランドをやや重視し、環境指向である」などがある。つまり、エリアクラスタ情報は、各エリアクラスタの消費者の生活環境や考え方、言い換えれば、消費者像を示す情報である。
【0037】
住民指標値欄208には、エリアクラスタの住民属性を指標値化した住民指標値が記録される。住民指標値とは、エリアクラスタの住民属性が複数種類の評価基準と適合する度合いを所定の評価関数によりそれぞれ指標化した複数種類の適合値である。住民指標値の具体例としては、平均年収、平均世帯人数、世帯あたりの平均子供数、30歳代割合、40歳代割合等である。言い換えれば、住民指標値は、コンピュータによる計算のために、住民属性を複数の数値に変換したものである。
【0038】
エリアクラスタ情報の作成方法の一例を説明する。エリアクラスタ情報の作成には、各エリアについての属性情報であって、公開された各種の統計情報と、独自の推計情報と、アンケートの結果情報を用いる。統計情報には、年代の比率、性別の比率、職業の比率、学歴比率等が含まれる。推計情報には、平均所得、平均資産、平均地価等が含まれる。アンケートの結果情報には、ライフスタイル、価値観、消費趣向等の回答結果が含まれる。定性的な情報は、所定の評価関数により指標値化する。図示しないエリアクラスタ情報作成部は、各エリアについて指標値化された各種属性情報を変量とするクラスタ分析により、各エリアをグループ分けする。なお、クラスタ分析に使用された各種指標値を住民指標値欄208の値としてもよく、住民指標値欄208の値に基づいて住民属性欄206に設定すべきデータを人間の判断により設定してもよい。また、各エリアにおける各種商品の販売実績についてもクラスタ分析の変量としてもよい。図6に戻る。
【0039】
販促効果情報保持部24は、販売促進施策が販促対象商品の販売量に及ぼす影響を示す販促効果情報を保持する。図8は、販促効果情報のデータ構造を示す。販促欄210には、販売促進施策の識別情報が記録される。対象商品欄212には、販促対象商品が記録される。エリアクラスタ欄214には、エリアクラスタの識別情報が記録される。販売量増加率欄216には、販促対象商品の販売量が販売促進施策により増加した割合(以下、「販売量増加率」と呼ぶ。)、言い換えれば、販売促進による効果が記録される。
【0040】
商品カテゴリ情報保持部26は、商品と商品カテゴリとの対応関係を示す商品カテゴリ情報を記録する。図9は、商品カテゴリ情報のデータ構造を示す。商品カテゴリ欄220には、商品カテゴリが記録される。商品欄222には、各商品カテゴリに対応づけられる商品が記録される。
【0041】
商品指標値情報保持部28は、複数の店舗と、各店舗において商品がどれだけ顧客に支持されているかを示す指標値(以下、「商品指標値」と呼ぶ。)とが対応づけられた商品指標値情報を保持する。図10は、商品指標値情報のデータ構造を示す。店舗欄230には、店舗の識別情報が記録される。商品欄232には、各店舗にて販売される商品が記録される。商品指標値欄234には、各店舗における各商品の商品指標値が記録される。図6に戻る。
【0042】
データ処理部40:
データ処理部40は、エリア販売量取得部42と、クラスタ販売量算出部44と、販促効果分析部50と、販売量補正部60と、商品シェア分析部70と、購買要因分析部80と、店舗顧客層分析部90と、販売条件影響分析部100と、リピート率分析部110と、商品訴求度分析部120と、商品訴求度補正部130と、店舗販売量予測部140とを有する。
【0043】
エリア販売量取得部42は、商品販売情報保持部304にアクセスして商品販売情報を参照し、エリアと商品との組み合わせごとに、エリアにおける商品の所定期間における販売量(以下、「エリア販売量」と呼ぶ。)を取得する。図11は、エリア販売量取得部42により取得されたエリア販売量を示す。同図のエリア販売量は、図3に示す商品販売情報の10/30から11/3の販売量を集計したものである。図6に戻る。
【0044】
クラスタ販売量算出部44は、エリアクラスタ情報保持部22にアクセスしてエリアクラスタ情報を参照する。そして、エリアクラスタと商品との組み合わせごとに、エリア販売量を集計して、エリアクラスタにおける商品の所定期間における販売量(以下、「クラスタ販売量」と呼ぶ。)を算出する。図12は、クラスタ販売量算出部44により算出されたクラスタ販売量を示す。同図のクラスタ販売量は、図11に示すエリア販売量を商品ごとエリアクラスタごとに集計したものである。図6に戻る。
【0045】
販促効果分析部50:
販促効果分析部50は、販売活動支援情報の1つである販売促進施策の効果情報を作成する。本実施の形態における販売促進施策の効果情報とは、販売促進施策による販促対象商品の販売量増加率をエリアクラスタごとに示す情報である。図13は、販促効果分析部50の機能構成を示すブロック図である。販促効果分析部50は、販促販売量取得部52と、販促販売量集計部54と、販促効果算出部56とを含む。
【0046】
販促販売量取得部52は、まず、販促実績情報保持部302にアクセスして販促実績情報を参照し、分析対象となる販売促進施策の販促対象商品と実施日とを特定する。例えば、図2の販売促進施策「テレビ広告α」が分析対象であるとき、販促対象商品を「○○コーヒー」、実施日を「11月1日」として特定する。なお、販促販売量取得部52は、分析要求検出部12を介して、分析対象となる販売促進施策の指定データをユーザ端末500から受信してもよい。また、ユーザ端末500による指定にかかわらず、販促実績情報に記録された販売促進施策を、分析対象の販売促進施策として自動で取得してもよい。
【0047】
販促販売量取得部52は、次に、商品販売情報保持部304にアクセスして商品販売情報を参照し、各エリアにおける販促対象商品について、販売促進施策実施前の所定期間における販売量(以下、「販促前販売量」と呼ぶ。)を取得する。また、販売促進施策実施後の所定期間における販売量(以下、「販促後販売量」と呼ぶ。)を取得する。この期間については、企業の経験や実験により、販売促進施策の効果を見極めるのに適切と考えられる期間が設定されればよい。上の例では、販売促進施策「テレビ広告α」の実施前後2日の販売量を取得することとする。
【0048】
図14(a)は、販促販売量取得部52により取得された販促前販売量と販促後販売量を示す。同図は、図3の「○○コーヒー」について、10/30~10/31の販売量を合算して販促前販売量として、また、11/1~11/2の販売量を合算して販促後販売量として取得されたことを示している。なお、上述したように販売促進施策が一部のエリアでのみ実施された場合には、販促販売量取得部52は、当該エリアの情報を販促実績情報から取得して、商品販売情報から当該エリアについてのみ販促前販売量および販促後販売量を取得してもよい。図13に戻る。
【0049】
販促販売量集計部54は、エリアクラスタ情報保持部22にアクセスしてエリアクラスタ情報を参照し、販促前販売量と販促後販売量とをエリアクラスタごとに集計する。図14(b)は、販促販売量集計部54により集計された販促前販売量および販促後販売量を示す。すなわち、エリアa、エリアb、およびエリアcの販促前販売量と販促後販売量とがそれぞれ集計されて、クラスタAの販促前販売量と販促後販売量とが算出されている。エリアdおよびエリアeとクラスタBとについても同様である。図13に戻る。
【0050】
販促効果算出部56は、各エリアクラスタについての販促前販売量の集計値と販促後販売量の集計値とを比較して、分析対象の販売促進施策による販促対象商品の販売量増加率をエリアクラスタごとに算出する。ここでは、販促効果算出部56は、集計値の比率を算出することで販売量増加率を算出することとする。例えば、販促前販売量の集計値と販促後販売量の集計値とが図14(b)の状態であるとき、販促効果算出部56は、クラスタAについての販売量増加率を「1.13」、クラスタBについての販売量増加率を「1.64」として算出する。
【0051】
販促効果算出部56は、販促効果情報保持部24にアクセスして、分析対象の販売促進施策について、各エリアクラスタにおける販促対象商品の販売量増加率を販促効果情報に記録する。また、分析対象の販売促進施策の指定をユーザ端末500から受け付けた場合には、分析結果出力部14を介して、その販売促進施策について算出した各エリアクラスタにおける販売量増加率をユーザ端末500に送信してもよい。
【0052】
販売促進施策による効果を分析する従来の方法では、販促対象商品の販売量が総数として増加したことはわかるものの、どんな特徴を持つ消費者への販売量が増加したのかはわからなかった。したがって、販売促進施策が、そのターゲットとする顧客層に訴求するものであったか否かもわからなかった。販促効果分析部50によれば、デモグラフィック属性やサイコグラフィック属性等の様々な観点からの顧客像と対応づけられたエリアクラスタごとに販売促進施策による効果を算出できる。
【0053】
図14(c)は、販売促進施策による販促対象商品の各エリアクラスタにおける販売量増加率を示す。同図の内容が、販売促進施策の効果情報としてユーザ端末500に表示されてもよい。商品販売者は各エリアクラスタにおける販売量増加率を確認することで、販売促進施策による効果を詳細に確認できる。例えば、図14(c)の結果から、クラスタBの顧客に対し強く訴求するものであったこと、クラスタCをターゲットにする場合には、異なる販売促進施策が必要であることを確認できる。
【0054】
変形例として、販促効果分析部50は、図示しない住民属性影響分析部を含んでもよい。住民属性影響分析部は、各エリアクラスタの住民属性を説明変数、特定の販売促進施策による各エリアクラスタにおける販売量増加率を目的変数とする回帰分析により、住民属性が販売量増加率に及ぼす影響の大きさを回帰係数として算出する。各住民属性について算出された回帰係数を比較することにより、販売量増加率に比較的大きな影響を及ぼす住民属性を特定できる。商品販売者は、その住民属性を有するエリアクラスタに限定して上述した特定の販売促進施策を実施することで、少ない費用で効果的な販売促進施策を実施できる。図6に戻る。
【0055】
販売量補正部60:
販売量補正部60は、販促販売量集計部54にて算出された販促後販売量から分析対象外の販売促進施策による販売量増加分を除去する。図15は、販売量補正部60の機能構成を示すブロック図である。販売量補正部60は、販促効果取得部62と、販促販売量補正部64と、販促販売量特定部66と、クラスタ販売量補正部68とを含む。
【0056】
販促効果取得部62は、まず、販促実績情報保持部302にアクセスして販促実績情報を参照する。そして、販促対象商品が分析対象の販売促進施策と同一である販売促進施策であって、分析対象の販売促進施策が実施されてから所定期間内に実施された分析対象外の販売促進施策を除去対象の販売促進施策として特定する。この所定期間は、分析対象の販売促進施策についての販促後販売量を取得する期間でもよく、企業の経験や実験等に基づいて適宜決定されてよい。図16は、販促実績情報のデータ構造を示す。同図は、図2の販促実績情報に加え、分析対象の販売促進施策「テレビ広告α」が実施された翌日に分析対象外の販売促進施策「新聞広告θ」が実施されたことを示している。この場合、「新聞広告θ」による「○○コーヒー」の販売量増加分を除去するために、販促効果取得部62は、「新聞広告θ」を除去対象の販売促進施策として特定する。図15に戻る。
【0057】
販促効果取得部62は、次に、販促効果情報保持部24にアクセスして販促効果情報を参照し、除去対象の販売促進施策による販促対象商品の販売量増加率を取得する。販促効果情報が図8に示す状態であるとき、販促効果取得部62は、「新聞広告θ」によるクラスタAにおける「○○コーヒー」の販売量増加率「1.4」と、クラスタBにおける「○○コーヒー」の販売量増加率「1.1」とを取得する。図15に戻る。
【0058】
販促販売量補正部64は、除去対象の販売促進施策についての販売量増加率が大きいほど、分析対象の販売促進施策についての販促後販売量が小さくなるように、販促後販売量をエリアクラスタごとに補正する。具体的には、販促販売量補正部64は、分析対象の販売促進施策についての販促後販売量を取得する期間と、除去対象の販売促進施策についての実施日からの所定期間とが重複する期間を特定する。この所定期間は、除去対象の販売促進施策の影響を強く受ける期間であり、企業の経験や実験等に基づいて適宜決定されてよい。販促販売量補正部64は、その重複する期間の販促後販売量から除去対象の販売促進施策による販売量増加率を除去する。
【0059】
図17は、商品販売情報のデータ構造を示す。同図における「○○コーヒー」について11/2および11/3の単位期間販売量には、図3と異なり、分析対象の販売促進施策「テレビ広告α」だけでなく、分析対象外の販売促進施策「新聞広告θ」による販売量増加分が上乗せされている。
【0060】
図18(a)は、販促販売量取得部52により取得された販促前販売量と販促後販売量を示す。同図のデータは、分析対象の販売促進施策「テレビ広告α」の実施前後2日、すなわち10/30から11/2における「○○コーヒー」の販売量が、図17の商品販売情報から取得されたものである。上述したように分析対象外の販売促進施策「新聞広告θ」による販売量増加分が上乗せされているため、販促後販売量が図14(a)よりも大きくなっている。したがって、この状態では「テレビ広告α」による販売量増加率が大きく算出されることになる。
【0061】
図18(b)は、販促販売量補正部64により補正された販促後販売量を示す。同図の販促後販売量は、11/2の各エリアにおける○○コーヒーの販売量から「新聞広告θ」による販売量増加量を除去したものである。具体的には、販促販売量補正部64は、クラスタAに属するエリアa、b、cにおける11/2の販売量については、販売量増加率「1.4」で除算しており、クラスタBに属するエリアd、eにおける11/2の販売量については、販売量増加率「1.1」で除算している。
【0062】
上述した販促販売量集計部54は、販促販売量取得部52により取得された販促前販売量と、販促販売量補正部64により補正された販促後販売量とをエリアクラスタごとに集計する。販促効果算出部56は、これらの集計値を比較して、分析対象の販売促進施策による販促対象商品の販売量増加率を算出する。
【0063】
分析対象の販売促進施策と分析対象外の販売促進施策とが同時期に実施された場合、分析対象の販売促進施策についての販促後販売量に分析対象外の販売促進施策による販売量増加分が上乗せされてしまう。その結果、分析対象の販売促進施策の効果が実際よりも大きく算出されることになる。販売量補正部60は、分析対象の販売促進施策についての販促後販売量から分析対象外の販売促進施策による上乗せ分を除去する。これにより、販促効果算出部56は、分析対象の販売促進施策による販促対象商品の販売量増加率を正しく算出できる。
【0064】
なお、販促販売量補正部64は、除去対象の販売促進施策が実施されたエリアが限定されているときには、その実施されたエリアに限定して、分析対象の販売促進施策についての販促後販売量を補正してもよい。例えば、分析対象の販売促進施策が全国規模のテレビ広告で、除去対象の販売促進施策が地域限定の店頭大安売りであるときには、店頭大安売りが実施されたエリアに限定して、テレビ広告についての販促後販売量を補正する。これにより、販売促進施策の実施範囲も考慮して、分析対象の販売促進施策による販促対象商品の販売量増加率を正しく算出できる。
【0065】
また、図18(a)および(b)に示す例では、販促販売量補正部64は、各エリアについての販促後販売量を補正したが、各エリアクラスタについての販促後販売量の集計値を補正してもよい。販促販売量補正部64は、販促後販売量の集計値のうち除去対象の販売促進施策による影響を強く受けた期間の値について、除去対象の販売促進施策による販売量増加率に応じて補正する。具体的には、除去対象の販売促進施策による販売量増加率が大きいほど、販促後販売量の集計値のうち除去対象の販売促進施策による影響を強く受けた期間についての値を小さくすることで、販促後販売量の集計値を小さくする。販促効果算出部56は、販促販売量集計部54により集計された販促前販売量の集計値と、販促後販売量の集計値であって、販促販売量補正部64により補正された集計値とを比較して、分析対象の販売促進施策による販促対象商品の販売量増加率を算出する。図15に戻る。
【0066】
販売量補正部60は、また、販促対象商品のクラスタ販売量がクラスタ販売量算出部44にて算出されたとき、そのクラスタ販売量から販売促進施策による販売量増加分を除去する。図19は、販売量補正部60による補正後のクラスタ販売量を示す。同図のクラスタ販売量は、図12のクラスタ販売量であり、これは販売促進施策「テレビ広告α」による販売量増加分を含む値である。以下の具体例では、図19を参照して説明する。
【0067】
販売促進施策による販売量増加分を除去するために、販促販売量取得部52は、まず、販促対象商品の販促前購買量を取得する。ここでは、販促対象商品が図3の「○○コーヒー」で、販売促進施策の実施日が11/1であるため、販促販売量取得部52は、10/31の各エリアにおける「○○コーヒー」の販売量を取得することとする。次に、販促販売量集計部54は、販促対象商品の販促前購買量をエリアクラスタごとに集計する。図3の「○○コーヒー」の場合、エリアa、b、cを含むクラスタAについて10/31の集計値は265となり、エリアd、eを含むクラスタBについて10/31の集計値は150となる。これを図19の販促前販売量に示している。
【0068】
販促販売量特定部66は、クラスタ販売量算出部44により算出されたクラスタ販売量の集計期間について、そのクラスタ販売量に対応づけられる商品を対象とした販売促進施策の実施日時が含まれるかを判定する。含まれると判定したときには、販売促進施策の実施日からその販売促進施策の影響が高いと想定される所定期間分のクラスタ販売量を特定する。この期間については、企業の経験や実験により適切な期間が設定されればよい。
【0069】
例えば、「○○コーヒー」について11/1に実施された販売促進施策「テレビ広告α」は、11/1および11/2における「○○コーヒー」の販売量に大きく影響することとする。このとき、販促販売量特定部66は、「テレビ広告α」の影響を大きく受けたクラスタ販売量として、クラスタ販売量のうちから11/1および11/2のクラスタ販売量を特定する。これを図19の販促影響分に示している。同図の販促影響分は、図3の11/1および11/2における「○○コーヒー」の販売量をエリアクラスタごとに集計したものである。図15に戻る。
【0070】
クラスタ販売量補正部68は、販売促進施策の影響を受けていない販促前販売量に基づいて、クラスタ販売量を補正する。1つの方法としては、販売促進施策の影響を受けたクラスタ販売量を販促前販売量に置き換える。例えば、図19の販促影響分の値、すなわち11/1および11/2の販売量の集計値を、販促前販売量欄の値、ここでは2日分とするために販促前販売量を2倍した値、と置き換える。そして、販売促進施策の影響を受けていないクラスタ販売量、すなわち10/30、10/31、11/3の販売量と集計する。このように補正されたクラスタ販売量を図19の補正後クラスタ販売量に示している。
【0071】
クラスタ販売量を補正する別の方法では、除去対象の販売促進施策による販促対象商品の販売量増加率を上述した販促効果分析部50に算出させる。クラスタ販売量補正部68は、その販売量増加率の値に応じて販売促進施策の影響を受けたクラスタ販売量を補正する。例えば、販売促進施策の影響を受けたクラスタ販売量を販売量増加率で除算して、販売促進施策の影響を受けていないクラスタ販売量と集計してもよい。
【0072】
クラスタ販売量を補正するさらに別の方法では、クラスタ販売量補正部68が、販促効果情報保持部24にアクセスして、除去対象の販売促進施策による販促対象商品の販売量増加率を取得する。クラスタ販売量補正部68は、その販売量増加率の値に応じて販売促進施策の影響を受けたクラスタ販売量を補正する。例えば、販売促進施策の影響を受けたクラスタ販売量を販売量増加率で除算して、販売促進施策の影響を受けていないクラスタ販売量と集計してもよい。
【0073】
販売量補正部60によれば、販売促進施策の影響を受ける商品のクラスタ販売量から販売促進施策による販売量増加分を除去できる。販売促進施策による販売量の増加は一時的な状態であることも多く、その増加分を含む販売量は商品そのものの実力を反映したものではないことも多い。販売量補正部60により販売促進施策による影響を除去できることで、商品そのものの実力を反映したクラスタ販売量を算出できる。
【0074】
なお、販売促進施策による影響を除去すべき期間を適切に設定することにより、販売促進施策による急速かつ一時的な販売量増加分については除去できる一方で、商品そのものの実力向上による販売量増加分はクラスタ販売量に残存させられる。すなわち、販売促進施策により商品の知名度が高まることによる販売量増加分については、商品そのものの実力向上による販売量増加と考えられるため除去の対象とすべきではない。このような効果は販売促進施策による影響を除去すべき期間のあとも継続するため、商品そのものの実力向上による販売量増加についてはクラスタ販売量に反映できる。
【0075】
クラスタ販売量補正部68により補正されたクラスタ販売量は、後述する商品シェア分析部70、購買要因分析部80、販売条件影響分析部100、リピート率分析部110、商品訴求度分析部120において使用できる。これにより、各機能ブロックにおいて作成される販売活動支援情報から販売促進施策による販売量増加の影響を除去でき、商品そのものの実力に基づいて販売活動支援情報を作成できる。後述する商品シェア分析部70において、その具体例を詳述する。図6に戻る。
【0076】
商品シェア分析部70:
商品シェア分析部70は、販売活動支援情報の1つである商品シェア情報を作成する。本実施の形態における商品シェア情報は、商品カテゴリにおいて、ある商品の販売量が占める割合をエリアクラスタごとに示す情報である。図20は、商品シェア分析部70の機能構成を示すブロック図である。商品シェア分析部70は、カテゴリ販売量算出部72と、占有率算出部74とを含む。
【0077】
カテゴリ販売量算出部72は、商品カテゴリ情報保持部26にアクセスして商品カテゴリ情報を参照する。そして、クラスタ販売量算出部44により算出されたクラスタ販売量をエリアクラスタと商品カテゴリとの組み合わせごとに集計して、各エリアクラスタにおける特定の商品カテゴリについて所定期間における販売量(以下、「カテゴリ販売量」と呼ぶ。)を算出する。図21(a)は、カテゴリ販売量算出部72により算出されたカテゴリ販売量を示す。同図のカテゴリ販売量は、商品カテゴリ「コーヒー」に属する「○○コーヒー」、「△△珈琲」「□□ブレンド」について、図12のクラスタ販売量をエリアクラスタごとに集計したものである。
【0078】
また、カテゴリ販売量算出部72は、上述したクラスタ販売量補正部68により補正されたクラスタ販売量を集計して、カテゴリ販売量を算出してもよい。図21(b)は、カテゴリ販売量算出部72により算出されたカテゴリ販売量を示す。同図のカテゴリ販売量は、「△△珈琲」および「□□ブレンド」については図12に示すクラスタ販売量を、「○○コーヒー」については図19の補正後クラスタ販売量をエリアクラスタごとに集計したものである。図20に戻る。
【0079】
占有率算出部74は、各エリアクラスタについてのカテゴリ販売量と、各エリアクラスタにおける各商品のクラスタ販売量との比率を占有率として算出する。例えば、図21(a)のクラスタAのカテゴリ販売量は「2795」であり、図12の「○○コーヒー」のクラスタ販売量は「1475」であるため、占有率は53%として算出する。図22(a)は、商品カテゴリ「コーヒー」についての各商品の占有率を示す。同図の内容がユーザ端末500に表示されてもよい。
【0080】
また、占有率算出部74は、クラスタ販売量補正部68により補正されたクラスタ販売量と、補正されたクラスタ販売量を集計したカテゴリ販売量との比率を占有率として算出してもよい。図22(b)は、商品カテゴリ「コーヒー」についての各商品の占有率を示す。同図では、販売促進施策「テレビ広告α」による販売量増加分を除去した「○○コーヒー」のクラスタ販売量と、それを集計したカテゴリ販売量との比率を示している。同図では、販売促進施策による「○○コーヒー」の販売量増加分が除去されているため、図22(a)と比較すると、「△△珈琲」、「□□ブレンド」の占有率が大きくなっている。
【0081】
なお、カテゴリ販売量算出部72は、分析要求検出部12を介して、ユーザ端末500から分析対象となる商品の指定データを受信してもよい。このとき占有率算出部74は、分析対象商品が属する商品カテゴリにおける分析対象商品の占有率を算出し、分析結果出力部14を介して、ユーザ端末500に商品シェア情報として送信する。同様に、カテゴリ販売量算出部72は、ユーザ端末500から分析対象となる商品カテゴリの指定データを受信してもよい。このとき占有率算出部74は、分析対象の商品カテゴリにおける各商品の占有率を算出してユーザ端末500に送信する。
【0082】
商品シェア分析部70によれば、商品販売者は商品カテゴリにおける各商品のシェアをエリアクラスタごとに確認できる。すなわち、詳細な競合商品分析を実現する。既述したようにエリアクラスタは消費者像と対応づけられているため、商品販売者は、商品カテゴリにおいて、どの商品がどの消費者に支持されているかを比較検討できる。これにより例えば、商品の仕入れや棚割等について適切な意思決定ができる。また、販売促進施策による販売量増加分が除外されたクラスタ販売量に基づいて占有率を算出することで、商品販売者は、商品そのものの実力による各商品のシェアについても確認できる。図6に戻る。
【0083】
購買要因分析部80:
購買要因分析部80は、販売活動支援情報の1つである購買要因情報を作成する。本実施の形態における購買要因情報は、顧客による商品の購買に影響を及ぼす住民属性を示す情報である。図23は、購買要因分析部80の機能構成を示すブロック図である。購買要因分析部80は、住民属性取得部82と、住民属性評価部84とを含む。
【0084】
住民属性取得部82は、分析要求検出部12を介して、ユーザ端末500から分析対象の商品の指定データを受信する。住民属性取得部82は、まず、各エリアクラスタにおける分析対象商品の販売量であって、クラスタ販売量算出部44により算出されたクラスタ販売量を取得する。住民属性取得部82は、次に、それぞれのクラスタ販売量に対応づけられたエリアクラスタを特定する。住民属性取得部82は、最後に、エリアクラスタ情報保持部22にアクセスしてエリアクラスタ情報を参照し、特定したエリアクラスタの住民属性を取得して、それぞれのクラスタ販売量に対応づける。
【0085】
例えば、分析対象商品「○○コーヒー」についてのクラスタ販売量が図12で示す状態であるとする。このとき、住民属性取得部82は、分析対象商品「○○コーヒー」について、クラスタAにおけるクラスタ販売量「1475」と、クラスタBにおけるクラスタ販売量「960」とを取得する。住民属性取得部82は、図7のエリアクラスタ情報を参照して、クラスタAの住民属性「30歳代比率が高い」等をクラスタ販売量「1475」と、クラスタBの住民属性「50歳代比率が高い」等をクラスタ販売量「960」と対応づける。図23に戻る。
【0086】
住民属性評価部84は、各エリアクラスタのクラスタ販売量を比較して、クラスタ販売量が比較的大きなエリアクラスタを特定する。そして、そのエリアクラスタの住民属性を分析対象商品の販売量との相関性が高い住民属性として決定する。例えば、「○○コーヒー」のクラスタ販売量はクラスタBよりもクラスタAの方が大きい。したがって、住民属性評価部84は、クラスタAの住民属性「30歳代比率が高い」等を「○○コーヒー」の販売量と相関性が高い住民属性として決定する。住民属性評価部84は、分析結果出力部14を介して、分析対象商品の販売量と相関性が高いと決定した住民属性を示す購買要因情報をユーザ端末500に送信する。
【0087】
購買要因分析部80によれば、顧客による商品の購買に影響を及ぼす住民属性を特定できる。すなわち、商品販売者は、購買要因分析部80により作成される購買要因情報を確認することで、各店舗の顧客の属性に応じて商品の品揃えや棚割を意思決定することにより、商品の販売量を増加させることができる。
【0088】
次に、分析対象商品と相関性が高い住民属性を決定する変形例を説明する。住民属性取得部82は、エリアクラスタ情報を参照して、住民属性とともに住民指標値を取得する。住民属性評価部84は、各エリアクラスタにおけるクラスタ販売量を目的変数とし、各エリアクラスタにおける住民指標値を説明変数とする回帰分析により、各住民指標値がクラスタ販売量に及ぼす影響を回帰係数として算出する。住民属性評価部84は、t検定やF検定等の既知の検定手法と、変数減少法や変数増加法等の既知の選択手法を用いて説明変数の選択をしてもよい。住民属性評価部84は、回帰係数の絶対値が比較的大きな住民指標値に対応づけられた住民属性を、分析対象商品の販売量と相関性が高い住民属性として決定して、ユーザ端末500に送信する。
【0089】
図24は、住民指標値とクラスタ販売量との関係を例示する。同図の内容が購買要因情報としてユーザ端末500に表示されてもよい。同図の数値は、上述の回帰分析により算出された回帰係数を示しており、数値が空白の住民指標値は、クラスタ販売量に有意な影響を及ぼさないことを示している。商品販売者は、例えば、「△△珈琲」は所得が低い顧客が購入すること、「○○コーヒー」は子供人数が多い世帯にはあまり購入されない、その一方で「△△珈琲」は子供人数が多い世帯によく購入されていること等をこの結果から確認できる。
【0090】
この変形例によれば、各商品の販売量と住民属性との相関を詳細に特定できる。すなわち、商品販売者は、各商品が顧客により購買される理由を把握できる。例えば、住民の平均所得が各商品の販売量に与える影響を把握できる。これにより、商品販売者は、主要顧客の平均所得に合致する商品を多く仕入れる等、各店舗における顧客の属性に応じて適切な商品の仕入れや棚割をすることにより、商品の販売量を増加させることができる。図6に戻る。
【0091】
店舗顧客層分析部90:
店舗顧客層分析部90は、販売活動支援情報の1つである店舗顧客層情報を作成する。本実施の形態における店舗顧客層情報は、店舗とエリアクラスタとの組み合わせごとに、店舗の総顧客数に対する各エリアクラスタに居住する顧客数の比率を示す情報である。図25は、店舗顧客層分析部90の機能構成を示すブロック図である。店舗顧客層分析部90は、クラスタ顧客数算出部92と、クラスタ顧客比率算出部94とを含む。
【0092】
クラスタ顧客数算出部92は、分析要求検出部12を介して、ユーザ端末500から分析対象の店舗の指定データを受信する。クラスタ顧客数算出部92は、店舗顧客情報保持部306にアクセスして店舗顧客情報を参照し、店舗とエリアクラスタとの組み合わせごとにエリア顧客数を集計して、各エリアクラスタに居住する顧客数(以下、「クラスタ顧客数」と呼ぶ。)を算出する。例えば図4の「木場店」の場合、クラスタAのクラスタ顧客数はエリアaの顧客数の「600」となり、クラスタCのクラスタ顧客数はエリアfとエリアiの顧客数の集計値である「1150」となる。なお、実際には、店舗の規模が大きいほど、店舗の顧客が居住するエリアも多数となるため、多数のエリアのエリア顧客数がエリアクラスタごとに集計されて、それぞれのクラスタ顧客数が算出される。
【0093】
クラスタ顧客比率算出部94は、店舗とエリアクラスタとの組み合わせごとに、店舗の総顧客数に対するクラスタ顧客数の比率(以下、「クラスタ顧客比率」と呼ぶ。)を算出する。例えば図4の木場店の場合、総顧客数はエリア顧客数欄334の値を集計した「2550」である。この総顧客数とクラスタAのクラスタ顧客数「600」との比率は「23%」となり、総顧客数とクラスタCのクラスタ顧客数「1150」との比率は「45%」となる。
【0094】
図26(a)は、図4の「木場店」のクラスタ顧客比率を示す。図26(b)は、図4の「葛西店」のクラスタ顧客比率を示す。図26(c)は、図4の「船橋店」のクラスタ顧客比率を示す。クラスタ顧客比率算出部94は、分析結果出力部14を介して、分析対象店舗について、各エリアクラスタのクラスタ顧客比率を示す店舗顧客層情報をユーザ端末500に送信する。
【0095】
店舗顧客層分析部90によれば、分析対象店舗の各エリアクラスタに居住する顧客の比率を算出できる。例えば、商品販売者は、図26(a)から、「木場店」の顧客にはクラスタCの住民が多いことを確認でき、クラスタCの住民属性を重視した店舗戦略を「木場店」にて実行することができる。図6に戻る。
【0096】
販売条件影響分析部100:
販売条件影響分析部100は、販売活動支援情報の1つである販売条件影響情報を作成する。本実施の形態における販売条件影響情報は、ある商品の販売条件の設定前後における販売量増加率をエリアクラスタごとに示す情報である。図27は、販売条件影響分析部100の機能構成を示すブロック図である。販売条件影響分析部100は、比較販売量取得部102と、感応率評価部104とを含む。
【0097】
比較販売量取得部102は、分析要求検出部12を介して、ユーザ端末500から分析対象となる商品の指定データを受信する。分析対象商品について、販売条件変更前の期間および販売条件変更後の期間の指定データをユーザ端末500から受信してもよく、各商品の販売条件変更の日時について、図示しない記憶部に保持されていてもよい。比較販売量取得部102は、クラスタ販売量算出部44により算出された分析対象商品のクラスタ販売量を参照して、販売条件変更前の所定期間のクラスタ販売量(以下、「変更前販売量」と呼ぶ。)と、販売条件変更後の所定期間のクラスタ販売量(以下、「変更後販売量」と呼ぶ。)とを取得する。
【0098】
図28(a)は、比較販売量取得部102により取得された変更前販売量および変更後販売量を示す。同図の変更前販売量および変更後販売量は、クラスタ販売量算出部44により算出されたクラスタ販売量のうち、分析対象商品「□□ブレンド」の販売条件変更前のクラスタ販売量および販売条件変更後のクラスタ販売量を示している。以下の例では、同図に基づいて説明する。
【0099】
感応率評価部104は、変更前販売量に対する変更後販売量の比率(以下、「販売条件感応率」と呼ぶ。)をエリアクラスタごとに算出する。例えば図28(a)の場合には、クラスタAからクラスタDの販売条件感応率は、それぞれ、「1.41」、「1.13」、「1.4」、「1.25」となる。図28(b)は、感応率評価部104により算出された販売条件感応率を示す。感応率評価部104は、分析結果出力部14を介して、各エリアクラスタにおける分析対象商品の販売条件感応率を示す販売条件影響情報をユーザ端末500に送信する。
【0100】
感応率評価部104は、また、クラスタ顧客比率算出部94により算出されたクラスタ顧客比率を参照して、販売条件感応率が所定の閾値以上であるエリアクラスタについてのクラスタ顧客比率が所定の閾値以上である店舗を特定する。そして、エリアクラスタと販売条件感応率と店舗とを対応づけて、ユーザ端末500に送信する。
【0101】
例えば、販売条件感応率の閾値が「1.4」、クラスタ顧客比率の閾値が「40%」であるとする。このとき、感応率評価部104は、図28(b)からクラスタAおよびCを特定する。そして、図26(a)から(c)にて示すクラスタ顧客比率を参照して、クラスタAのクラスタ顧客比率が高い店舗として「葛西店」を特定し、クラスタCのクラスタ顧客比率が高い店舗として「木場店」を特定する。商品販売者は、この結果から、販売条件の変更が特に有効である店舗を確認できる。
【0102】
販売条件影響分析部100によれば、各エリアクラスタに居住する顧客について、商品の販売条件に対する感応率を算出できる。商品販売者は、この感応率を確認することで、商品の販売条件を適切に設定しやすくなる。販売条件設定の典型例は商品の価格設定であり、商品販売者は商品の価格戦略についての意思決定が容易になる。また、感応率が高いエリアクラスタとそのエリアクラスタの住人を主要な顧客とする店舗とが対応づけられることにより、商品販売者は、商品の販売条件設定について店舗ごとの戦略立案が容易になる。例えば、ある商品の価格に対する感応率が高いエリアクラスタの住民を主要顧客とする店舗についてのみ、その商品の価格を値下げする等の判断ができる。
【0103】
リピート率分析部110:
リピート率分析部110は、販売活動支援情報の1つであるリピート率情報を作成する。本実施の形態のリピート率情報は、各エリアクラスタにおいて同一の顧客に同一の商品を繰り返して販売した割合を示す情報である。図29は、リピート率分析部110の機能構成を示すブロック図である。リピート率分析部110は、エリアリピート数取得部112と、クラスタリピート数算出部114と、リピート率算出部116と、リピート率評価部118とを含む。
【0104】
なお、図3で示す商品販売情報には、商品ごとエリアごとに図示しないエリアリピート数がさらに記録されており、所定期間において同一の顧客に商品を繰り返して販売した回数(以下、「エリアリピート数」と呼ぶ。)が記録されている。例えば、図3の10/30から11/3の期間における「△△珈琲」について、エリアaにおけるエリアリピート数、エリアbにおけるエリアリピート数、・・・が記録されている。なお、エリアリピート数は、同一の顧客であっても異なるタイミングに購入された場合には2回、3回、・・・とカウントされてもよく、同一の顧客であれば何回繰り返し購入されても1回のみカウントされてもよい。
【0105】
エリアリピート数取得部112は、商品販売情報保持部304にアクセスして商品販売情報を参照し、エリアと商品との組み合わせごとに所定期間におけるエリアリピート数を取得する。
【0106】
クラスタリピート数算出部114は、エリアクラスタ情報保持部22にアクセスしてエリアクラスタ情報を参照し、エリアクラスタと商品との組み合わせごとにエリアリピート数を集計する。以下、この集計値を「クラスタリピート数」と呼ぶことにする。例えば、エリアa、b、cについてのエリアリピート数を集計して、クラスタAについてのクラスタリピート数を算出する。図30(a)は、クラスタリピート数算出部114により算出されたクラスタリピート数を示す。同図は、「△△珈琲」についてのクラスタリピート数を示しており、同図のクラスタ販売量は、クラスタ販売量算出部44により算出されたクラスタ販売量を示している。
【0107】
リピート率算出部116は、分析要求検出部12を介して、ユーザ端末500から分析対象の商品の指定データを受信する。リピート率算出部116は、分析対象商品についてのクラスタ販売量とクラスタリピート数との比率(以下、「リピート率」と呼ぶ。)を算出する。例えば、分析対象商品「△△珈琲」のクラスタリピート数が図30(a)の状態であるとき、クラスタAにおける「△△珈琲」のリピート率は「8%」であると算出する。図30(b)は、リピート率算出部116により算出された各エリアクラスタにおけるリピート率を示す。
【0108】
リピート率評価部118は、リピート率算出部116により算出された各エリアクラスタにおけるリピート率について、リピート率が比較的大きいエリアクラスタを特定する。リピート率評価部118は、例えば、最もリピート率が高いエリアクラスタを特定してもよく、所定の閾値以上のリピート率が算出されたエリアクラスタを特定してもよい。後者の閾値が「20%」の場合、リピート率評価部118は、図30(b)に示すリピート率からエリアクラスタBおよびCを特定する。リピート率評価部118は、分析結果出力部14を介して、特定したエリアクラスタをユーザ端末500に送信する。
【0109】
リピート率分析部110によれば、エリアクラスタごとにリピート率を算出できる。商品販売者は、どのような属性を有する消費者が商品を繰り返し購入しているかを把握できる。また、主要な顧客の属性に応じて商品の販売戦略について意思決定できる。例えば、リピート率が高いエリアクラスタに居住する住民に対し、ダイレクトメールなどを送付することで、商品の販売量を効果的に増加させることができる。
【0110】
第1の変形例では、リピート率評価部118は、複数のエリアクラスタそれぞれについて、エリアクラスタの人口に対するクラスタ販売量の比率を示す一人あたり販売量(以下、「単位人口販売量」と呼ぶ。)を算出して、リピート率と単位人口販売量とを対応づける。
【0111】
具体的には、リピート率評価部118は、エリアクラスタ情報保持部22にアクセスしてエリアクラスタ情報を参照し、リピート率が算出されたエリアクラスタの人口を取得する。例えばエリアクラスタ情報が図7で示す状態であるとき、クラスタAの人口について、エリアa、b、cの人口を集計して「2150」を取得する。クラスタB、クラスタC、クラスタDについても同様に、「1150」、「2000」、「900」を取得する。
【0112】
リピート率評価部118は、エリアクラスタごとに単位人口販売量を算出する。例えば、クラスタAについては、人口が「2150」であり、クラスタ販売量が「505」であるため、単位人口販売量「0.23」を算出する。クラスタB、クラスタC、クラスタDについても同様に、「0.27」、「0.09」、「0.09」を算出する。リピート率評価部118は、リピート率と単位顧客販売量とを対応づけて、分析結果出力部14を介して、ユーザ端末500に送信する。
【0113】
図31は、リピート率と単位顧客販売量との対応付けを例示する。同図は、「△△珈琲」に対する顧客の購買傾向について、クラスタAの顧客は単位顧客販売量は大きいもののリピート率は小さい、クラスタCの顧客は単位顧客販売量は小さいもののリピート率は大きいことを示している。
【0114】
第1の変形例によれば、商品販売者は、販売量とリピート率の観点から、詳細な販売戦略を意思決定できる。例えば、図31の結果から、クラスタAの顧客を主要顧客とする店舗については、「△△珈琲」を発売当初に多く仕入れておき、時間の経過に伴って仕入れ数を大幅に減らすべきであると意思決定できる。また、クラスタCの顧客を主要顧客とする店舗については、「△△珈琲」の仕入れ量自体は少量でよいが、リピート顧客が多いため「△△珈琲」が品切れにならないように継続して仕入れるべきであると意思決定できる。
【0115】
第2の変形例では、リピート率評価部118は、クラスタ顧客比率算出部94により算出されたクラスタ顧客比率を参照して、リピート率が所定の閾値以上であるエリアクラスタについてのクラスタ顧客比率が所定の閾値以上である店舗を特定する。そして、リピート率が所定の閾値以上のエリアクラスタと、そのエリアクラスタの住人を主要顧客とする店舗とを対応づけて、ユーザ端末500に送信する。
【0116】
第2の変形例によれば、商品販売者は、ある商品のリピート率に応じて店舗ごとの販売戦略を意思決定できる。例えば、ある商品のリピート率が高いエリアクラスタの住人を主要顧客とする店舗については、その商品を現在販売していなければすぐに販売を開始させ、その後もその商品が品切れにならないように継続してチェックする等の意思決定ができる。図6に戻る。
【0117】
商品訴求度分析部120:
商品訴求度分析部120は、販売活動情報の1つである商品訴求度情報を作成する。本実施の形態における商品訴求度情報は、ある店舗にて販売される商品と、その店舗の全顧客がその商品をどれだけ支持するかを示す指標値(以下、「商品指標値」と呼ぶ。)とが対応づけられた情報である。図32は、商品訴求度分析部120の機能構成を示すブロック図である。商品訴求度分析部120は、分析情報取得部122と、分析対象特定部124と、クラスタ指標値算出部126と、商品指標値算出部128とを含む。
【0118】
分析情報取得部122は、分析要求検出部12を介して、分析対象となる商品および店舗の指定データをユーザ端末500から受信する。分析情報取得部122は、クラスタ販売量算出部44により算出された分析対象商品のクラスタ販売量と、クラスタ顧客比率算出部94により算出された分析対象店舗のクラスタ顧客比率とを取得する。
【0119】
図33は、分析情報取得部122により取得された分析対象商品のクラスタ販売量を示す。同図では、分析対象商品「○○コーヒー」、「△△珈琲」、「□□ブレンド」について、直近の12月のクラスタ販売量が取得された状態を示している。また、分析情報取得部122により取得された分析対象店舗、この例では「木場店」、「葛西店」、「船橋店」のクラスタ顧客比率については図26(a)、図26(b)、図26(c)にて示す内容を以下の説明で用いることとする。
【0120】
分析対象特定部124は、分析対象となるエリアクラスタ(以下、「分析対象クラスタ」と呼ぶ。)の顧客による商品の購買実績を示す指標値として、分析対象クラスタにおける分析対象商品のクラスタ販売量を特定する。例えば図33において、分析対象クラスタ「クラスタA」における分析対象商品「○○コーヒー」のクラスタ販売量「100」を特定する。
【0121】
分析対象特定部124は、また、分析対象店舗の分析対象クラスタについてのクラスタ顧客比率を特定する。例えば、図26(a)において、分析対象店舗「木場店」におけるクラスタAについてのクラスタ顧客比率「23%」を特定する。続いて、分析対象特定部124は、分析対象商品、分析対象クラスタ、および分析対象店舗の組み合わせごとに、クラスタ販売量とクラスタ顧客比率とを対応づける。上述の例では、分析対象特定部124は、特定したクラスタ販売量「100」とクラスタ顧客比率「23%」を対応づける。図32に戻る。
【0122】
クラスタ指標値算出部126は、クラスタ販売量およびクラスタ顧客比率に正相関する所定の評価関数により、分析対象店舗における特定のエリアクラスタに居住する顧客が分析対象商品をどれだけ支持するかを示す指標値(以下、「クラスタ指標値」と呼ぶ。)を算出する。具体的には、分析対象特定部124により特定されたクラスタ販売量とクラスタ顧客比率とを上述の評価関数に入力して得られる計算結果をクラスタ指標値とする。上述の評価関数は、既知の計算手法でよいが、以下の例では、クラスタ販売量とクラスタ顧客比率との積算の結果を出力する関数であることとする。
【0123】
上の例では、「○○コーヒー」の「クラスタA」におけるクラスタ販売量「100」と、分析対象店舗「木場店」における「クラスタA」についてのクラスタ顧客比率「23%」とを評価関数により積算して、クラスタ指標値「23」を算出する。同様に、クラスタ指標値算出部126は、分析対象商品、分析対象クラスタ、および分析対象店舗の組み合わせごとに、クラスタ指標値を算出する。図34は、クラスタ指標値算出部126により算出されたクラスタ指標値を示す。同図において指標値が「-」の部分は、該当の店舗の顧客にそのエリアクラスタの住人がいないことを示している。図32に戻る。
【0124】
商品指標値算出部128は、クラスタ指標値算出部126によりエリアクラスタごとに算出されたクラスタ指標値を分析対象店舗ごとに集計して、分析対象店舗で販売される分析対象商品に対する商品指標値を算出する。例えば図34では、木場店における「○○コーヒー」のクラスタA、B、Cにおけるクラスタ指標値がそれぞれ「23」、「16」、「270」、「48」である。このとき、商品指標値算出部128はこれらのクラスタ指標値を集計して、木場店における「○○コーヒー」の商品指標値「357」を算出する。
【0125】
商品指標値算出部128は、分析結果出力部14を介して、分析対象商品について、分析対象店舗における商品指標値をユーザ端末500に送信する。商品指標値算出部128は、また、商品指標値情報保持部28にアクセスして、算出した商品指標値を商品指標値情報に記録する。図10の商品指標値欄234には、上述の例において算出された商品指標値が記録されている。
【0126】
なお、商品訴求度分析部120は、ユーザ端末500からの要求にかかわらず、クラスタ販売量算出部44によりクラスタ販売量が算出された商品について、店舗顧客層分析部90によりクラスタ顧客比率が算出された店舗における商品指標値を算出してもよい。この場合も、商品指標値算出部128は、商品指標値情報保持部28にアクセスして、算出した商品指標値を商品指標値情報に記録する。
【0127】
商品訴求度分析部120により算出される商品指標値が、分析対象店舗の全顧客が分析対象商品をどれだけ支持するかを示す指標値となる理由を説明する。上述したように商品指標値を算出するための入力データは、分析対象商品のクラスタ販売量と、分析対象店舗のクラスタ顧客比率である。クラスタ販売量は、各エリアクラスタにおいて分析対象商品が販売された実績を示しており、分析対象商品に対する各エリアクラスタに居住する顧客の支持の大きさを示す指標値である。一方で、クラスタ顧客比率は、分析対象店舗の総顧客に占める各エリアクラスタに居住する顧客の割合を示しており、各エリアクラスタの顧客の購買行動が分析対象店舗に及ぼす影響の大きさを示す指標値である。
【0128】
クラスタ販売量およびクラスタ顧客比率に正相関する評価関数により算出されたクラスタ指標値は、一のエリアクラスタについて、クラスタ販売量が大きいほど大きくなり、また、クラスタ顧客比率が大きいほど大きくなる。このことから、クラスタ指標値は、分析対象商品に対する一のエリアクラスタに居住する顧客の支持の大きさが分析対象店舗に及ぼす影響の大きさを示す指標値であるといえる。したがって、クラスタ指標値を集計した商品指標値は、分析対象店舗の全顧客が分析対象商品をどれだけ支持するかを示す指標値となる。
【0129】
商品訴求度分析部120により算出される商品指標値により、商品販売者は、分析対象店舗における分析対象商品間について顧客の支持の大きさを比較でき、各商品の仕入れ量や棚割について適切な意思決定が可能となる。例えば、商品指標値が図10の状態であるとき、商品販売者は「葛西店」について、仕入れ量や棚割で優先すべき順序は、「□□ブレンド」、「△△珈琲」、「○○コーヒー」の順であると意思決定できる。
【0130】
また、商品指標値の入力であるクラスタ販売量は、各店舗における販売量がエリアクラスタごとに集計されたものであるため、分析対象店舗以外の店舗の販売実績から取得できるものである。したがって、分析対象商品を分析対象店舗にて販売していないときでも、商品指標値を算出できる。例えば、商品指標値が図10の状態で、船橋店では「○○コーヒー」を販売していないとする。このとき、商品販売者は、船橋店で「○○コーヒー」を販売することで、「□□ブレンド」以上に顧客から支持される可能性が高いことを把握でき、「○○コーヒー」を仕入れる意思決定ができる。
【0131】
店舗にて販売される商品がどれだけ顧客に指示されているかを特定する従来の方法は、顧客に対しアンケートを実施することであった。しかし、多数の顧客にアンケートを実施するのでは費用が高騰するため、アンケート数は少数となるのが一般的であり、アンケート結果は、少数の回答者の主観を強く反映したものになりがちであった。また、人手を介するため時間がかかってしまっていた。商品訴求度分析部120によれば、クラスタ販売量とクラスタ顧客比率という客観データに基づいて精度の高い商品指標値を短時間で算出できる。図6に戻る。
【0132】
商品訴求度補正部130:
商品訴求度補正部130は、分析対象商品についてのクラスタ販売量の推移に基づいて、その商品の将来の販売傾向が反映された商品指標値が算出されるようにクラスタ指標値を補正する。図35は、商品訴求度補正部130の機能構成を示すブロック図である。商品訴求度補正部130は、販売量傾向算出部132と、指標値補正部134とを含む。
【0133】
販売量傾向算出部132は、分析対象商品についてのクラスタ販売量の推移に基づいて、その商品の発売日からの時間経過に伴うクラスタ販売量の変化率をエリアクラスタごとに算出する。具体的には、販売量傾向算出部132は、クラスタ販売量算出部44により算出されたクラスタ販売量であって、分析対象商品の発売日から分析時点までの所定期間ごとのクラスタ販売量を取得する。図36は、販売量傾向算出部132により取得されたクラスタ販売量の推移を示す。同図は、分析対象商品である「△△珈琲」、「□□ブレンド」について、クラスタ販売量算出部44により算出された10月から12月までのクラスタ販売量の推移を示している。なお、どちらの分析対象商品についても10月に発売を開始したものとする。
【0134】
販売量傾向算出部132は、分析対象商品についてのクラスタ販売量の推移から、クラスタ販売量の変化率をエリアクラスタごとに算出する。変化率は既知の手法により求められてよいが、商品の販売量は時間の経過に伴って減少するのが一般的であるため、典型的には、0<変化率<1の値を取る。ここでは、販売量傾向算出部132は、図36に示すクラスタ販売量の変化率を漸化式により算出することとする。図36の場合、「△△珈琲」についてクラスタAにおける漸化式は、公比が「0.9」の等比数列であるため、販売量傾向算出部132は、「△△珈琲」のクラスタAにおける変化率を「0.9」として算出する。
【0135】
図37(a)は、クラスタ指標値とクラスタ販売量の変化率とを示す。同図の補正前クラスタ指標値は、クラスタ指標値算出部126により算出された「木場店」における分析対象商品のクラスタ指標値を示しており、図34の木場店クラスタ指標値の値と同じである。図37(a)の変化率は、図36で示すクラスタ販売量の推移に基づいて、販売量傾向算出部132により算出されたクラスタ指標値の変化率を示している。図35に戻る。
【0136】
指標値補正部134は、分析対象商品について、販売量傾向算出部132により算出された変化率に応じて、クラスタ指標値算出部126により算出されたクラスタ指標値を調整する。ここでは、指標値補正部134は、クラスタ指標値とクラスタ販売量の変化率とを積算することにより、クラスタ指標値を補正することとする。例えば、「△△珈琲」のクラスタAにおけるクラスタ指標値「46」と、クラスタ販売量の変化率「0.9」とを積算して、クラスタ指標値を「41」に補正する。
【0137】
図37(a)の補正後クラスタ指標値欄は、指標値補正部134により補正されたクラスタ指標値を示している。同図は、クラスタ販売量について時間経過に伴う減少が大きいエリアクラスタほど、そのエリアクラスタのクラスタ指標値が小さくなるように、クラスタ指標値が補正されていることを示している。
【0138】
商品訴求度分析部120の商品指標値算出部128は、指標値補正部134により補正されたクラスタ指標値を集計することで、商品指標値を算出する。図37(b)は、補正前の商品指標値と、補正後の商品指標値とを示す。同図の補正前商品指標値は、図37(a)の補正前クラスタ指標値を集計したものであり、補正後商品指標値は、図37(b)の補正後クラスタ指標値を集計したものである。
【0139】
商品訴求度補正部130によれば、分析対象商品の将来の販売傾向が反映された商品指標値が商品指標値算出部128において算出されるように、クラスタ指標値を補正できる。これにより商品販売者は、商品の仕入れや棚割について、さらに適切な意思決定ができる。例えば、現時点において減少率が大きい商品は将来の減少傾向も比較的大きいと考えられる。商品訴求度補正部130は、減少傾向が大きい商品ほど商品指標値が小さくなるように補正することで、商品指標値を商品販売者にとってさらに有用な指標値とする。
【0140】
図37(b)の補正前商品指標値が示された場合、商品販売者は、仕入れや棚割において「□□ブレンド」を優先するように意思決定しやすくなる。しかし、将来の販売傾向が反映された補正後商品指標値が示されることにより、商品販売者は、将来の販売傾向を踏まえた上で、「△△珈琲」を優先するように意思決定できる。図6に戻る。
【0141】
店舗販売量予測部140:
店舗販売量予測部140は、販売活動支援情報の1つである店舗販売量予測情報を作成する。本実施の形態における店舗販売量予測情報は、ある店舗における商品について予測される販売量(以下、「見込み販売量」と呼ぶ。)を示す情報である。図38は、店舗販売量予測部140の機能構成を示すブロック図である。店舗販売量予測部140は、単位販売量取得部142と、相関度分析部144と、見込み販売量算出部146とを含む。
【0142】
図39は、各店舗における見込み販売量を示す。同図は、各店舗における「○○コーヒー」の見込み販売量およびその算出に関連するデータを示しており、以下の例では同図を参照して説明する。
【0143】
単位販売量取得部142は、複数の店舗それぞれにおける商品の販売量の指標値であり、各店舗の顧客一人あたりへの販売量(以下、「単位顧客販売量」と呼ぶ。)を取得する。具体的には、単位販売量取得部142は、まず、店舗顧客情報保持部306にアクセスして店舗顧客情報を参照し、各店舗についての総顧客数を取得する。店舗顧客情報が図4に示す状態であるとき、単位販売量取得部142は、店舗ごとにエリア顧客数欄334を合算して、各店舗の総顧客数を取得する。次に、単位販売量取得部142は、また、店舗販売情報保持部308にアクセスして店舗販売情報を参照し、所定期間における商品販売量を取得する。ここでは、図5の店舗販売情報について、各店舗における「○○コーヒー」について12月の販売量を取得することとする。
【0144】
単位販売量取得部142は、最後に、各店舗についての総顧客数と各店舗における商品販売量との比率を算出することにより、単位顧客販売量を算出する。例えば、「木場店」における総顧客数は「2550」であり、「○○コーヒー」の12月の販売量は「255」であるため、この場合の単位顧客販売量は「0.1」となる。図39の単位顧客販売量は、単位販売量取得部142により算出された各店舗における「○○コーヒー」の単位顧客販売量を示している。なお、単位顧客販売量に値がない「幕張店」および「秋田店」は、「○○コーヒー」を販売していないことを示している。図38に戻る。
【0145】
相関度分析部144は、商品指標値情報保持部28にアクセスして商品指標値情報を参照し、各店舗における商品の商品指標値を取得し、また、各店舗における商品について単位販売量取得部142が算出した単位顧客販売量を取得する。図39の商品指標値は、各店舗における「○○コーヒー」の商品指標値である。
【0146】
相関度分析部144は、次に、商品の商品指標値と単位顧客販売量とをそれぞれ、説明変数、目的変数として、複数の店舗それぞれにおける商品指標値と単位顧客販売量とから回帰分析手法により、商品の商品指標値と単位顧客販売量との相関の大きさを示す回帰式を算出する。
【0147】
例えば、相関度分析部144は、図39の「木場店」、「葛西店」、「船橋店」における商品指標値と単位販売量とを回帰分析することで、以下の回帰式を算出する。
単位販売量 = 0.0002 × 商品指標値 + 0.0231
この回帰式における回帰係数「0.0002」は商品指標値が単位販売量に及ぼす影響の大きさを示している。なお、この例では、商品指標値のみを説明変数とする単回帰分析を示したが、相関度分析部144は、住民指標値やその他の統計情報等、複数の説明変数を加えて重回帰分析をしてもよく、既述した変数選択が実施されてもよい。図38に戻る。
【0148】
見込み販売量算出部146は、分析要求検出部12を介して、特定の商品(以下、「予測対象商品」と呼ぶ。)の販売量を予測する対象となる店舗(以下、「予測対象店舗」と呼ぶ。)の指定データをユーザ端末500から受信する。見込み販売量算出部146は、商品指標値情報保持部28にアクセスして商品指標値情報を参照し、予測対象店舗における予測対象商品についての商品指標値を取得する。
【0149】
見込み販売量算出部146は、次に、予測対象店舗における商品指標値を相関度分析部144により算出された回帰式に入力して、予測対象店舗における予測対象商品の単位顧客販売量(以下、「見込み単位販売量」と呼ぶ。)を算出する。図39の見込み単位販売量は、各店舗における○○コーヒーの商品指標値を上述の回帰式に入力することにより得られた見込み単位販売量を示している。
【0150】
見込み販売量算出部146は、見込み単位販売量を基に、予測対象店舗における予測対象商品の販売量(以下、「見込み販売量」と呼ぶ。)を算出する。ここでは、予測対象店舗の総顧客数と予測対象商品についての見込み単位販売量とを積算することにより、見込み販売量を算出することとする。図39の見込み販売量は、各店舗における○○コーヒーの見込み単位販売量と、図4の各店舗における総顧客数との積算結果を示している。なお、「幕張店」の総顧客数は「5000」、「秋田店」の総顧客数は「1000」であるとしている。
【0151】
見込み販売量算出部146は、分析結果出力部14を介して、予測対象店舗における予測対象商品についての見込み販売量をユーザ端末500に送信する。図40は、各店舗における販売量の実績と見込みとを対応づけて示す。同図における無地の販売量は、各店舗における「○○コーヒー」の販売量実績を示し、斜線の販売量は、各店舗における「○○コーヒー」の見込み販売量を示している。
【0152】
商品の販売量を予測する従来の方法は、サンプル店舗において予測対象商品を実際に販売して、その販売傾向から他店における販売量を予測するものであった。しかし、サンプル店舗を少数・販売期間を短期間にしたのでは分析の精度が低く、その精度を高めるためにサンプル店舗を多数・販売期間を長期間にしたのでは時間および調査費用が高騰してしまう問題があった。店舗販売量予測部140によれば、商品指標値に基づいて見込み販売量を算出することにより、妥当な販売予測を短時間で実現する。
【0153】
店舗販売量予測部140により妥当な見込み販売量を算出できる理由を説明する。上述したように、店舗販売量予測部140は、まず、商品指標値と単位顧客販売量との相関を示す回帰式を算出する。商品指標値は、各店舗の顧客が予測対象商品をどれだけ支持するかを示す指標値である。一方で、単位顧客販売量は、各店舗の総顧客数に対する各店舗における予測対象商品の販売量の比率である。予測対象商品を販売した各店舗についての商品指標値および単位販売量の組はそれぞれ対等に扱えるため、回帰分析により、指標値としての商品指標値と、実績値としての単位顧客販売量との相関を示す回帰式が算出できる。
【0154】
店舗販売量予測部140は、次に、予測対象商品について算出した回帰式に、予測対象店舗の商品指標値を入力することで、見込み単位販売量を算出する。見込み単位販売量は顧客一人あたりの値であるため、予測対象店舗の総顧客数と積算することで見込み販売量が算出できることになる。この見込み販売量は、他店での販売実績を示すクラスタ販売量を予測対象店舗のクラスタ顧客比率に基づき反映したものである。また、同一のエリアクラスタには同様の生活環境や考え方を有する住人が居住している。したがって、見込み販売量は、他店での販売実績を踏まえれば、予測対象店舗においても実現できる販売量であるといえる。
【0155】
また、既述したように商品指標値は実績に基づく客観データから算出された指標値であり、単位顧客販売量も実績に基づく客観データである。したがって、複数の店舗での販売実績に基づくために精度が高く、また、短時間での算出が実現される。
【0156】
さらに、店舗販売量予測部140によれば、商品販売者は、図40の「木場店」、「葛西店」、「船橋店」で示すように、実際の販売実績と見込み販売量とを比較できる。これにより商品販売者は、「船橋店」における「○○コーヒー」の販売量を増加できることを把握でき、販売促進施策等の販売活動を「船橋店」に対して実行する意思決定ができる。
【0157】
さらにまた、図40で示すように、「○○コーヒー」を販売していない「幕張店」、「秋田店」についても見込み販売量を商品販売者に提供できる。これにより商品販売者は、例えば「幕張店」でも「○○コーヒー」を販売するように意思決定できる。すなわち、商品販売者は、商品を販売すべき適切な店舗を特定し、その店舗に適切な量だけ商品を仕入れることができる。
【0158】
以上、本発明を第1の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0159】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、店舗等における商品の販売を支援する情報を作成する技術を提案する。以下の「エリアタイプ」は、第1の実施の形態におけるエリアクラスタに対応する。
【0160】
図41は、第2の実施の形態のIDPOS分析システム600の構成を示す。IDPOS分析システム600は、IDPOS-DB602、エリアDB604、分析装置606を備える情報処理システムである。IDPOS-DB602、エリアDB604、分析装置606は、LAN・WAN・インターネット等を含む通信網を介して接続される。
【0161】
IDPOS-DB602は、IDPOSデータを保持し、またIDPOSデータを日々更新するデータベースである。IDPOSデータは、何を、いつ、いくつ、いくらで販売したかを示すPOS(Point of Sales)データに、顧客を識別するためのID情報を付加したデータであり、「販売実績データ」とも言える。図42は、IDPOSデータの例を示す。実施の形態のIDPOSデータは、一般的なPOSデータとしての日付・販売商品・販売価格を含み、顧客識別情報としての顧客ID・住所(例えば顧客の居住エリアを示す町丁目レベルの情報)をさらに含む。IDPOSデータは、販売数量の項目をさらに含んでもよい。
【0162】
図41に戻り、エリアDB604は、地理的に区画された複数のエリア(町丁目レベル)を住民属性が類似するエリアごとにグループ化したエリアタイプを定めたデータ(以下「エリアデータ」とも呼ぶ。)を保持する。図43は、エリアデータの例を示す。実施の形態のエリアデータは、複数の住所(例えば地図上での町丁目レベルのエリア)、エリアタイプ(例えば20個程度)、各住所(エリア)に存在する世帯数を含む。世帯数は、顧客IDが付与されていない住民(世帯)を含み、例えばポイントカードやクレジットカードを保持しない住民(世帯)を含む。世帯数は、国勢調査の結果等に基づいて設定されてもよい。
【0163】
エリアDB604は、複数のエリアタイプと、各エリアタイプの住人に関する属性情報および指標値(例えば図7に記載の住民属性および住民指標値)とを対応付けたエリアタイプデータをさらに保持する。また、エリアタイプデータは、各エリアタイプにおける顧客ID総数を含む。顧客ID総数は、顧客IDを有する住民の数と言え、例えば、ポイントカードやクレジットカード等に基づいて顧客IDが付与された住民の数と言える。
【0164】
図41に戻り、ユーザ端末608は、IDPOS分析システム600の利用者(ユーザ)により操作される情報端末である。ユーザ端末608は、例えば、PC・タブレット端末・スマートフォンでもよい。ユーザ端末608は、LAN・WAN・インターネット等を含む通信網610を介して、分析装置606と接続される。
【0165】
分析装置606は、IDPOSデータを分析し、分析結果をユーザ端末608へ提供する情報処理装置である。図44は、図41の分析装置606の機能構成を示すブロック図である。分析装置606は、エリアデータ取得部620、販売実績取得部622、分析部624、分析結果出力部626を備える。
【0166】
図44の複数の機能ブロックに対応する複数のモジュールを含むコンピュータプログラムが記録媒体に格納されて流通し、分析装置606にインストールされてもよい。また、分析装置606は、そのコンピュータプログラムを外部のサーバからダウンロードしてインストールしてもよい。分析装置606のCPUは、そのコンピュータプログラムを実行することにより、各機能ブロックの機能を発揮してもよい。また、分析装置606は、所定の通信プロトコルで外部装置と通信する通信部(不図示)を備えてもよく、図44の機能ブロックは通信部を介して外部装置とデータを送受信してもよい。
【0167】
エリアデータ取得部620は、エリアDB604からエリアデータおよびエリアタイプデータを取得する。販売実績取得部622は、IDPOS-DB602からIDPOSデータを取得する。なお、エリアデータ、エリアタイプデータ、IDPOSデータの少なくとも1つは、分析装置606の外部装置でなく、分析装置606内のストレージ(不図示)に格納されてもよい。エリアデータ取得部620と販売実績取得部622の少なくとも一方は、ローカルのストレージに格納されたエリアデータ、エリアタイプデータ、またはIDPOSデータをストレージからメインメモリに読み込んでもよい。
【0168】
分析部624は、販売実績取得部622により取得されたIDPOSデータが示す販売実績をエリアタイプごとに集計し、エリアタイプごとの集計結果に基づいて、商品に関する分析情報を販売活動支援情報として生成する。分析結果出力部626は、分析部624により生成された分析情報であり、実施例では商品プロファイル情報または販売ポテンシャル情報をユーザ端末608へ提供する。
【0169】
分析部624は、エリアタイプ付与部628、エリアタイプ付加IDPOS保持部630、要求受付部632、集計部634、商品プロファイル生成部636、ポテンシャル情報生成部638を含む。
【0170】
エリアタイプ付与部628は、販売実績取得部622が取得したIDPOSデータのレコードごとに住所に対応するエリアタイプを特定し、IDPOSデータの各レコードにエリアタイプを付加したデータを、エリアタイプ付加IDPOSデータとして生成する。エリアタイプ付与部628は、生成したエリアタイプ付加IDPOSデータをエリアタイプ付加IDPOS保持部630に格納する。
【0171】
図45は、エリアタイプ付加IDPOS保持部630に保持されるエリアタイプ付加IDPOSデータの例を示す。同図のエリアタイプ付加IDPOSデータは、住所をキーとして、図42のIDPOSデータの各レコードに図43のエリアタイプを付加したものである。
【0172】
図44に戻り、要求受付部632は、ユーザ端末608から送信された、分析情報の作成を要求するデータ(以下「分析要求」と呼ぶ。)を受信する。分析要求は、分析の対象商品、分析の対象期間、および分析種別(実施の形態では商品プロファイル分析または販売ポテンシャル分析)の指定を含む。集計部634は、分析要求で指定された対象商品に関するエリアタイプ付加IDPOSデータであり、分析要求で指定された対象期間中の日付を含むエリアタイプ付加IDPOSデータをエリアタイプごとに集計する。
【0173】
図46は、集計部634による集計結果データの例を示す。集計結果データの各レコードは、エリアタイプ、顧客ID総数、販売数量、平均販売数量、平均販売価格、リピート率を含む。図46の「販売数量」と「販売価格」は、顧客の観点から「購買数量」と「購買価格」と言うこともできる。図46では、エリアタイプ10までを示しているが、実際には、エリアタイプの個数分(例えばエリアタイプ1~20)のレコードを生成する。
【0174】
集計部634は、各エリアタイプの顧客ID総数を、販売実績取得部622により取得されたエリアタイプ情報に基づいて設定する。なお、集計部634は、商品の購入頻度が所定の閾値以上の顧客を顧客ID総数の対象としてカウントしてもよい。例えば、集計部634は、対象期間内(または対象期間外を含む一定期間内)で、何らかの商品を購買した回数が所定回数以上(例えば1回または2回以上)の顧客を顧客ID総数の対象としてカウントしてもよい。このように、商品購入頻度の下限を設けて、分析の母集団に含める顧客を制限することにより、より現実に即した指標値を得やすくなる。
【0175】
集計部634は、対象期間内のエリアタイプ付加IDPOSデータのレコードのうち対象商品の販売を示すレコード(以下「対象レコード」と呼ぶ。)を特定する。集計部634は、エリアタイプごとの対象レコード数(各レコードが販売数量を含む場合は販売数量の合計値)を販売数量として導出する。また、集計部634は、平均販売数量として、単位期間における1世帯あたりの販売数量(言い換えれば購買数量)の平均値を導出する。例えば、以下の式により平均販売数量を算出してもよい。
平均販売数量(個/世帯・月) = 販売数量(1年分)÷顧客ID総数÷12
【0176】
集計部634は、エリアタイプごとの対象レコードが示す販売価格の平均値を導出し、その平均値を各エリアタイプの平均販売価格として設定する。平均販売価格は、例えば、販売価格を販売数量で重み付けした加重平均値でもよい。また、集計部634は、エリアタイプごとの対象レコードを参照し、同じ顧客(同じID)が、異なる日付で同じ商品を購入した場合にリピート数1回として、顧客(ID)ごとにリピート数をカウントする。集計部634は、顧客ごとのリピート数の平均値を算出し、その平均値をリピート率として設定する。なお、対象レコードの日付が時刻を含む場合、異なる時刻で同じ商品を購入した場合に、リピート数をインクリメントしてもよい。
【0177】
商品プロファイル生成部636は、分析要求で指定された分析種別が商品プロファイル分析である場合に、商品の購買者特性を可視化した情報である商品プロファイル情報を生成する。商品プロファイル生成部636は、生成した商品プロファイル情報を分析結果出力部626へ出力する。
【0178】
図47は、商品プロファイル情報の例を示す。同図の例では、横軸をエリアタイプとし、縦軸を図46の平均販売数量とした商品プロファイル情報を示している。商品プロファイル生成部636は、分析要求での指定に応じて、横軸をエリアタイプとし、縦軸を図46の平均販売価格またはリピート率とした商品プロファイル情報を生成してもよい。商品プロファイル情報により、クラスタタイプごとの商品購入量、クラスタタイプごとの購入価格、クラスタタイプごとのリピート率をユーザが把握しやすくなる。このように、分析装置606は、商品の仕入れ、価格設定、棚割等に有用な情報をユーザへ提供できる。
【0179】
また、分析要求では、複数の対象商品が指定されてもよい。この場合、集計部634は、複数の対象商品のそれぞれを単位としてエリアタイプ付加IDPOSデータを集計し、複数の集計結果データを生成する。商品プロファイル生成部636は、複数の集計結果データに基づいて、複数の対象商品に対応する複数のグラフを含む商品プロファイル情報を生成する。例えば、ユーザは、互いに価格が異なる複数の対象商品を指定することで、商品の販売数量に対する価格の影響を把握でき、また、価格の影響が大きいクラスタタイプを把握できる。また、ユーザは、互いに容量が異なる複数の対象商品を指定することで、商品の販売数量に対する容量の影響を把握でき、また、容量の影響が大きいクラスタタイプを把握できる。
【0180】
また、分析要求では、複数の対象期間が指定されてもよい。この場合、集計部634は、複数の対象期間のそれぞれに対応するエリアタイプ付加IDPOSデータを集計し、複数の集計結果データを生成する。商品プロファイル生成部636は、複数の集計結果データに基づいて、複数の対象期間に対応する複数のグラフを含む商品プロファイル情報を生成する。これにより、商品プロファイルの時系列での変動を把握しやすくなる。このような時系列分析は、例えば、販売促進施策の効果分析や、商品ニーズが強い地域を初期段階で見極める際に有用である。
【0181】
図48は、商品プロファイル情報の例を示す。ここでは、10月に販売促進施策が実施されたこととし、ユーザは、第1対象期間として9月を指定し、第2対象期間として10月を指定し、第3対象期間として11月を指定したこととする。図48の商品プロファイル情報は、9月の平均販売数量グラフ(点線)と、10月の平均販売数量グラフ(実線)と、11月の平均販売数量グラフ(二点鎖線)を重畳して示している。図48の商品プロファイル情報によると、10月の販売促進施策(例えばマス広告や店舗でのキャンペーン等)がエリアタイプ4の消費者と、エリアタイプ8の消費者に強く訴求したことをユーザは容易に把握できる。
【0182】
さらにまた、分析要求では、分析の対象地域がさらに指定されてもよい。例えば、国・都道府県・市区町村・町丁目等、様々な粒度で対象地域が指定されてもよい。また、特定の地点(例えば地図上の特定の地点)が指定され、さらに、その地点から対象地域とする範囲(半径1KMの円等)が指定されてもよい。この場合、集計部634は、対象地域内の住所を含むエリアタイプ付加IDPOSデータを集計し、集計結果データを生成する。これにより、販売地域が限定された商品についての商品プロファイル情報の精度を高めることができる。また、対象地域の指定は、上記の時系列分析による販売促進施策の効果判定に好適である。地域限定の販売促進施策(ローカルCMや店舗での特売等)が実施された場合、販売促進施策の実施地域を対象地域として指定し、販売促進施策の実施前後での商品プロファイル情報を比較することで、販売促進施策の効果を把握しやすくなる。
【0183】
図44に戻り、ポテンシャル情報生成部638は、分析要求で指定された分析種別が販売ポテンシャル分析である場合に、商品の潜在的な販売ポテンシャルを可視化した情報である販売ポテンシャル情報を生成する。具体的には、ポテンシャル情報生成部638は、各エリアタイプの平均販売数量と、各エリアの世帯数とに基づいて、各エリアでの対象商品の販売数量予測値(推定値)を含む販売ポテンシャル情報を生成する。ポテンシャル情報生成部638は、生成した販売ポテンシャル情報を分析結果出力部626へ出力する。
【0184】
図49は、販売ポテンシャル情報の例を示す。ここでは、分析要求において、対象商品として「ABCカレー甘口」が指定され、また、8つのエリア(町丁目レベル)が対象地域として指定されたこととする。この場合、ポテンシャル情報生成部638は、8つのエリアのそれぞれにおける販売ポテンシャル値を導出する。
【0185】
例えば、図43の「東京都千代田区富士見(1)(1丁目)」は、世帯数が100、エリアタイプが1である。また、図46では、エリアタイプ1での上記対象商品の平均販売数量は0.56である。この場合、ポテンシャル情報生成部638は、(エリアの世帯数×対応するエリアタイプでの平均販売数量)を計算することにより、「東京都千代田区富士見(1)」における対象商品の販売ポテンシャル値を「56」と推定する。他のエリアについても同様に販売ポテンシャル値を推定する。
【0186】
販売ポテンシャル分析により、実際に商品を販売しているエリアか否かに関わらず、様々なエリアにおいて本来見込まれる販売数量の推定値を提供できる。これにより、店舗における品揃えや棚割の判断を支援できる。また、ユーザは、実際の販売数量と推定値とを比較することで、販売促進施策の必要性を適切に判断しやすくなる。なお、分析装置606が提供する販売数量の推定値は、当該エリアと住民属性が類似する他のエリアでの販売実績に基づいており、一定の精度が担保される。
【0187】
また、商品プロファイル分析と同様に販売ポテンシャル分析でも、分析の対象地域は、国・都道府県・市区町村・町丁目等、様々な粒度で指定されてもよい。ポテンシャル情報生成部638は、対象地域に含まれる1つ以上のエリア(町丁目レベル)のそれぞれについて対象商品の販売ポテンシャル値を導出し、対象地域に含まれる各エリアの販売ポテンシャル値を合計することにより、対象地域の販売ポテンシャル値を導出してもよい。これにより、様々な粒度のエリアにおける販売ポテンシャル値を得ることができる。
【0188】
さらにまた、分析要求では、集計対象とする第1の地域と、分析対象とする第2の地域(第1の地域とは異なる)とが指定されてもよい。この場合、集計部634は、第1の地域に該当する住所が設定されたエリアタイプ付加IDPOSデータを集計して集計結果(例えば図46)を生成する。ポテンシャル情報生成部638は、第2の地域に該当する1つ以上のエリアについて対象商品の販売ポテンシャル値を導出してもよい。これにより、例えば、実際に商品を販売したエリアでの販売実績にもとづいて、その商品を未発売のエリアでの販売ポテンシャル値を得ることができる。例えば、関東圏でのみ販売した商品を新たに近畿圏で販売することとした場合の販売数量の推定値を得ることができる。
【0189】
さらにまた、分析要求では、分析対象とする店舗が指定されてもよい。この場合、分析装置606は、店舗と商圏(典型的には店舗周辺の1つ以上のエリア)との対応関係を含む店舗情報を保持する。例えば、第1の店舗「AAAマート富士見店」には、「東京都千代田区富士見(1)」「東京都千代田区富士見(2)」が商圏として対応付けられてもよい。また、第2の店舗「AAAマート一ツ橋店」には、「東京都千代田区一ツ橋(1)」「東京都千代田区一ツ橋(2)」が対応付けられてもよい。
【0190】
図50は、販売ポテンシャル情報の例を示す。ここでは、ポテンシャル情報生成部638は、「AAAマート富士見店」の「ABCカレー甘口」の販売ポテンシャル値として、図49の「東京都千代田区富士見(1)」と「東京都千代田区富士見(2)」の販売ポテンシャル値の合計である「123」を算出する。また、「AAAマート一ツ橋店」の「ABCカレー甘口」の販売ポテンシャル値として、図49の「東京都千代田区一ツ橋(1)」と「東京都千代田区一ツ橋(2)」の販売ポテンシャル値の合計である「94」を算出する。
【0191】
さらにまた、分析要求では、複数の対象商品が指定されてもよい。この場合、集計部634は、複数の対象商品のそれぞれを単位としてエリアタイプ付加IDPOSデータを集計し、複数の集計結果データを生成する。ポテンシャル情報生成部638は、複数の集計結果データに基づいて、複数の対象商品に対応する複数の販売ポテンシャル情報を生成する(例えば図50参照)。
【0192】
以上の構成による分析装置606の動作を説明する。
図51は、分析装置606の動作を示すフローチャートである。エリアデータ取得部620は、分析装置606の起動時等、定期的にエリアDB604からエリアデータおよびエリアタイプデータを読み込む(S10)。販売実績取得部622は、1日1回等、定期的にIDPOS-DB602からIDPOSデータを読み込む(S12)。エリアタイプ付与部628は、IDPOSデータの各レコードにエリアタイプを付加したエリアタイプ付加IDPOSデータを生成し、エリアタイプ付加IDPOS保持部630に格納する(S14)。
【0193】
ユーザは、IDPOSデータの分析における分析種別、対象商品、対象期間、対象地域等をユーザ端末608へ入力する。ユーザ端末608は、分析種別、対象商品、対象期間、対象地域等の指定を含む分析要求を分析装置606へ送信する。分析装置606の要求受付部632が、ユーザ端末608から分析要求を受信すると(S16のY)、集計部634は、エリアタイプ付加IDPOS保持部630から、対象商品、対象期間、および対象地域に対応するエリアタイプ付加IDPOSデータを抽出し、抽出したデータをエリアタイプ別に集計する(S18)。
【0194】
分析種別が商品プロファイル分析の場合(S20のY)、商品プロファイル生成部636は、集計部634による集計結果に基づいて、商品プロファイル情報を生成する(S22)。分析結果出力部626は、商品プロファイル情報を分析要求の送信元のユーザ端末608へ送信する(S24)。分析種別が販売ポテンシャル分析の場合(S20のN、S26のY)、ポテンシャル情報生成部638は、集計部634による集計結果に基づいて、対象地域における対象商品の販売数量を推定し、その推定結果を含む販売ポテンシャル情報を生成する(S28)。分析結果出力部626は、販売ポテンシャル情報を分析要求の送信元のユーザ端末608へ送信する(S30)。
【0195】
なお、商品プロファイル情報または販売ポテンシャル情報は、分析装置606の所定の記憶領域に保存されてもよい。ユーザ端末608は、通信網610を介して分析装置606にアクセスし、上記記憶領域に保存された商品プロファイル情報または販売ポテンシャル情報を閲覧してもよい。分析要求を未受信であり(S16のN)、または、分析種別が商品プロファイル分析と販売ポテンシャル分析のいずれでもなければ(S26のN)、以降の処理をスキップして本図のフローを終了する。
【0196】
以上、本発明を第2の実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0197】
上記分析装置606は商品の販売に関する分析情報を生成したが、分析装置606による分析対象は、販売対象になる様々な有体物および無体物を含み、例えばサービスを含む。また、商品またはサービスを販売する媒体は現実の店舗に制限されない。例えば、通信販売または電子商取引により販売された商品またはサービスも、分析装置606による分析対象となる。
【0198】
上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施の形態および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0199】
600 IDPOS分析システム、 606 分析装置、 620 エリアデータ取得部、 622 販売実績取得部、 624 分析部、 626 分析結果出力部、 634 集計部、 636 商品プロファイル生成部、 638 ポテンシャル情報生成部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図15
図16
図17
図18(a)】
図18(b)】
図19
図20
図21(a)】
図21(b)】
図22(a)】
図22(b)】
図23
図24
図25
図26(a)】
図26(b)】
図26(c)】
図27
図28(a)】
図28(b)】
図29
図30(a)】
図30(b)】
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37(a)】
図37(b)】
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51