(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】観測対象物内の観測装置、及び観測対象物内の観測方法
(51)【国際特許分類】
F23M 11/04 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
F23M11/04 102
(21)【出願番号】P 2017164354
(22)【出願日】2017-08-29
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 知弘
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097047(JP,A)
【文献】特開2005-331207(JP,A)
【文献】特開2015-155892(JP,A)
【文献】特開2017-044657(JP,A)
【文献】特開2016-206045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23M 11/04
G01N 21/00-21/958
G03B 17/56-17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞が形成された観測対象物の内部を観測する観測対象物内の観測装置であって、
撮影部と、
前記撮影部が取り付けられ、前記撮影部を前記観測対象物の内部に挿入する挿入部と、
前記撮影部の撮影角度を左右方向と上下方向においてそれぞれ調節する角度調節部と、
前記角度調節部による前記撮影部の撮影角度の調節を制御する制御部と、を備え
、
前記角度調節部によって、前記撮影部が上方を向くように倒され、かつ、前記撮影部の正面視での横方向が前記挿入部の長さ方向と一致するように前記撮影部が回転されることにより、前記撮影部が取り付けられている部分をコンパクト化できる、観測対象物内の観測装置。
【請求項2】
前記挿入部を観測対象物の内部に挿入した際に前記挿入部の観測対象物から露出している部分に水平器が設けられ、かつ、前記挿入部に、前記撮影部の挿入位置を決めるための前記挿入部の先端からの寸法がマーキングされている、請求項1に記載の観測対象物内の観測装置。
【請求項3】
前記観測対象物がガス化炉であり、前記挿入部が前記ガス化炉のバーナ挿入孔に挿入される棒状体である、請求項1
又は2に記載の観測対象物内の観測装置。
【請求項4】
前記撮影部の左右方向の両側にそれぞれ間接照明が設けられている、請求項1
~3のいずれか一項に記載の観測対象物内の観測装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の観測対象物内の観測装置を用いて観測対象物の内部を観測する方法であって、
前記挿入部により前記撮影部を観測対象物内に挿入し、前記角度調節部による前記撮影部の撮影角度の調節を前記制御部で制御しつつ前記観測対象物の内部を撮影する、観測対象物内の観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測対象物内の観測装置、及び観測対象物内の観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば石炭等の固形炭化水素燃料から一酸化炭素、水素、メタン等の燃料ガスを製造する石炭ガス化プロセスにガス化炉が用いられている(特許文献1)。ガス化炉においては、炉内メンテナンス指針や次回運転時の指針を決めるため、停止期間中に炉壁の損耗状態やスラグタップ閉塞状況を確認することが重要である。
【0003】
従来、ガス化炉内の観測は、棒の先に取り付けたカメラを炉内に挿入し、セルフタイマーで炉内を撮影することで行っていた。しかし、この方法で炉内を隅々まで観測するには、カメラの角度を調節し、セルフタイマーをセットして炉内に挿入して撮影し、炉内からカメラを抜き出すという操作を何度も繰り返す必要があり、膨大な労力がかかる。また、カメラの角度調節や挿入位置は手動で感覚的に決めており、撮影位置を高精度に調節できず、定点撮影は難しい。そのため、得られた観測データは、炉内のどの部分が撮影されたものかを正確に判断できず、過去の観測データと比較することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガス化炉等の観測対象物の内部を簡便に満遍なく定点撮影できる観測対象物内の観測装置、及び観測対象物内の観測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]内部に空洞が形成された観測対象物の内部を観測する観測対象物内の観測装置であって、
撮影部と、
前記撮影部が取り付けられ、前記撮影部を前記観測対象物の内部に挿入する挿入部と、
前記撮影部の撮影角度を左右方向と上下方向においてそれぞれ調節する角度調節部と、
前記角度調節部による前記撮影部の撮影角度の調節を制御する制御部と、を備える、観測装置。
[2]前記観測対象物がガス化炉であり、前記挿入部が前記ガス化炉のバーナ挿入孔に挿入される棒状体である、[1]に記載の観測対象物内の観測装置。
[3]前記撮影部の左右方向の両側にそれぞれ間接照明が設けられている、[1]又は[2]に記載の観測対象物内の観測装置。
[4]前記挿入部に水平器が設けられている、[1]~[3]のいずれかに記載の観測対象物内の観測装置。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の観測対象物内の観測装置を用いて観測対象物の内部を観測する方法であって、
前記挿入部により前記撮影部を観測対象物内に挿入し、前記角度調節部による前記撮影部の撮影角度の調節を前記制御部で制御しつつ前記観測対象物の内部を撮影する、観測対象物内の観測方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガス化炉等の観測対象物の内部を簡便に満遍なく定点撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の観測装置の一例を示した側面図である。
【
図3】
図1の観測装置の撮影部の上下方向において角度を調節する様子を示した側面図である。
【
図4】
図1の観測装置の撮影部の左右方向において角度を調節する様子を示した平面図である。
【
図5】
図1の観測装置の挿入時の撮影部近傍の様子を示した平面図である。
【
図6】
図1の観測装置の撮影部をガス化炉内に挿入した様子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、「左右方向」及び「上下方向」とは、撮影部を挿入部の後端から先端に向かう正面方向に向けた状態における左右方向及び上下方向を意味するものとする。
【0010】
[観測対象物内の観測装置]
本発明の観測対象物内の観測装置は、内部に空洞が形成された観測対象物の内部を観測する装置である。本発明の観測対象物内の観測装置は、撮影部と、前記撮影部が取り付けられ、前記撮影部を前記観測対象物の内部に挿入する挿入部と、前記撮影部の撮影角度を左右方向と上下方向においてそれぞれ調節する角度調節部と、前記角度調節部による前記撮影部の撮影角度の調節を制御する制御部と、を備える。
【0011】
観測対象物としては、内部に空洞が形成されているものであればよく、ガス化炉、高炉、塔、槽、配管を例示できる。本発明の観測装置は、ガス化炉の内部の定点観測に特に有用である。
【0012】
以下、本発明の観測対象物内の観測装置の一例を示して説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
本発明の観測対象物内の観測装置1(以下、単に「観測装置1」という。)は、
図1及び
図2に示すように、撮影部10と、挿入部12と、角度調節部14と、制御部16と、間接照明18と、水平器20とを備えている。撮影部10は挿入部12の先端部に角度調節部14を介して取り付けられている。制御部16と水平器20は、挿入部12の後端部に設けられている。間接照明18は、撮影部10の左右方向の両側にそれぞれ位置するように設けられている。
観測装置1は、ガス化炉の内部を観測するのに適した観測装置である。
【0014】
撮影部10は、ガス化炉内を撮影する部分である。撮影部10としては、静止画を撮影できるものであってもよく、動画を撮影できるものであってもよく、静止画と動画の両方を撮影できるものであってもよい。撮影部10としては、特に限定されず、例えば、デジタルカメラを使用でき、耐塵性に優れたカメラが好ましい。
撮影部10により撮影したデータは、無線で送受信できるようになっていてもよく、有線で送受信できるようになっていてもよい。
【0015】
挿入部12は、先端部に取り付けられた撮影部10をガス化炉の内部に挿入するための部分である。この例の挿入部12は、ガス化炉のバーナ挿入孔に挿入できる棒状体である。
挿入部12の長さ方向に垂直な断面形状は、幅方向が厚さ方向よりも長い長方形状である。なお、挿入部12の断面形状は長方形状には限定されず、円形状等であってもよい。挿入部12上に水平器20を設置しやすく、また撮影部10を取り付けた部分をコンパクト化しやすい点では、挿入部12の断面形状はこの例のように長方形状が好ましい。
【0016】
挿入部12には、先端からの寸法が所定の間隔でマーキングされていることが好ましい。これにより、挿入部12により撮影部10をガス化炉内に挿入する際、撮影部10の挿入位置を正確に決めることが容易になる。挿入部12に寸法をマーキングする態様としては、例えば、挿入部12の上面に先端から5cm毎にマーキングする態様が挙げられる。
【0017】
挿入部12の材質は、充分な剛性を有するものであればよく、アルミニウム、鉄等の金属、ポリ塩化ビニル等の樹脂、木を例示できる。なかでも、挿入部12の材質は、充分な剛性を得つつ挿入部12を軽量化でき、炉内の観測がより容易になる点から、アルミニウムが好ましい。挿入部12の材質は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0018】
挿入部12の長さは、挿入するガス化炉のバーナ挿入孔の長さに応じて適宜設定でき、例えば、100~3600mmとすることができる。
挿入部12の幅及び厚さは、挿入するガス化炉のバーナ挿入孔の内径や撮影部10の大きさに応じて適宜設定でき、例えば、バーナ挿入孔の内径が約110mmの場合、幅を40~45mm、厚さを10~30mmとすることができる。
【0019】
なお、撮影部10の撮影角度をしっかりと決められる範囲であれば、挿入部12の先端部には、観測対象物の内部に挿入された状態で、上下方向及び左右方向のいずれか一方又は両方に曲がるようになっていてもよい。
【0020】
角度調節部14は、撮影部10の撮影角度を左右方向と上下方向においてそれぞれ調節する部分である。角度調節部14により撮影部10の撮影角度が左右方向と上下方向においてそれぞれ調節できることで、ガス化炉内を隅々まで観察できる。
角度調節部14の角度調節機構は、撮影部10の撮影角度を上下方向と左右方向のそれぞれにおいて調節でき、その調節を制御部16で制御できるようになっていれば特に限定されない。
【0021】
この例の角度調節部14は、挿入部12の先端部に設けられた回動部22と、回動部22上に設けられた、撮影部10を取り付ける取り付け座24とを備えている。
回動部22は、撮影部10を上下方向に回動させて撮影部10の仰俯角を調節する機構と、撮影部10を左右方向に回動させて撮影部10の左右方向の角度を調節する機構をそれぞれ備えている。
【0022】
回動部22により、
図3(A)のように撮影方向が水平方向となる状態から、
図3(B)のように撮影方向が上向きとなるまで、また
図3(C)のように撮影方向が下向きとなるまで、撮影部10を上下方向に回動できるようになっている。このように、撮影部10の上下方向の撮影角度(仰俯角)の調節範囲は、-90°~90°になっている。なお、撮影部10の上下方向の撮影角度は、撮影部10が挿入部12の後端から先端に向かう正面方向に向いている状態を0°とし、そこから上方向(仰角方向)を正、下方向(俯角方向)を負とする。
撮影部10の上下方向の撮影角度の調節における刻み角度は、適宜設定でき、例えば、0.2~180°とすることができる。
【0023】
また、回動部22により、
図4(A)のように撮影方向が正面方向となる状態から、
図4(B)のように撮影方向が右向きとなるまで、また
図4(C)のように撮影方向が左向きとなるまで、撮影部10を左右方向に回動できるようになっている。このように、撮影部10の左右方向の撮影角度の調節範囲は、-90°~90°になっている。なお、撮影部10の上下方向の撮影角度は、撮影部10が挿入部12の後端から先端に向かう正面方向に向いている状態を0°とし、そこから右方向を正、左方向を負とする。
撮影部10の左右方向の撮影角度の調節における刻み角度は、適宜設定でき、例えば、0.2~180°とすることができる。
【0024】
ガス化炉においては、一般に、燃焼ガスが旋回流を形成するように4方向にそれぞれ延びるバーナ挿入孔が形成されている。例えば、
図6及び
図7に示すように、ガス化炉100の燃焼部110の下部には、平面視でそれぞれ90°に交差する4方向に延びる4つの下段バーナ挿入孔102aが形成されている。同様に、燃焼部110の上部に、平面視でそれぞれ90°に交差する4方向に延びる4つの上段バーナ挿入孔102bが形成されている。
【0025】
観測装置1を用いてガス化炉100の内部における下側を観察する際には、4つの下段バーナ挿入孔102aのそれぞれから観測装置1の撮影部10を挿入して撮影できる。同様に、観測装置1を用いてガス化炉100の内部における上側を観察する際には、4つの上段バーナ挿入孔102bのそれぞれから観測装置1の撮影部10を挿入して撮影できる。このように、上段又は下段において4つのバーナ挿入孔からそれぞれ撮影部10を挿入して撮影を行うことで、撮影部10の左右方向の撮影角度の調節範囲が-90°~90°であっても、360°の撮影範囲でガス化炉100の内部を隅々まで撮影できる。
【0026】
なお、本発明では、角度調節部による撮影部の撮影角度の左右方向の調節範囲は、-90°~90°の範囲には限定されず、-180°~180°の範囲で適宜設定できる。また、角度調節部による撮影部の撮影角度の上下方向の調節範囲は、-90°~90°の範囲には限定されず、-180°~180°の範囲で適宜設定できる。
【0027】
取り付け座24は、撮影部10の底部を支持する平面視形状が長方形状の下板24aと、下板24aの幅方向の一方の端部から立ち上がる平面視形状が長方形状の背板24bとを備えている。取り付け座24の下板24a上に載置した撮影部10をネジ等で下板24aに固定することで、回動部22の動きに連動して撮影部10が上下方向及び左右方向に回動される。
【0028】
撮影部10として市販のデジタルカメラ等を使用する場合、この例のように、取り付け座24の下板24aにおける、撮影部10のバッテリやメモリーカードの挿入位置に相当する部分には切欠き24cが形成されていることが好ましい。これにより、取り付け座24に撮影部10を固定した状態で、バッテリやメモリーカードの交換が容易に行える。
【0029】
撮影部10としてデジタルカメラ等を使用する場合、撮影部10は高さや厚さに比べて横方向の長さが最も長くなる。そのため、この場合には、
図5に示すように、撮影部10を上方に向けて倒し、かつ撮影部10を回転させて撮影部10の正面視での横方向と挿入部12の長さ方向とを一致させられるようになっていることが好ましい。これにより、撮影部10が取り付けられている部分をコンパクト化できるため、ガス化炉のバーナ挿入孔が内径110mm程度の細いものであっても撮影部10の出し入れが容易になる。
【0030】
取り付け座24の背板24bの長さ方向の両側には、それぞれ間接照明18が設けられている。これにより、取り付け座24に取り付けられた撮影部10の左右方向の両側にそれぞれ間接照明18が配置されている。この例の間接照明18は、回動部22によって撮影部10とともに回動する。本発明では、間接照明は回動しないように設置されていてもよい。
【0031】
本発明では、この例のように、撮影部の左右方向の両側にそれぞれ間接照明を設けることが好ましい。
ガス化炉内の観測では、特にガス化炉の内壁面にスラグが付着した場合に、撮影部10によってフラッシュを利用して撮影すると白飛びが生じやすく、撮影データから内部状況を正確に判断しにくくなる。また、下段バーナ挿入孔102aや上段バーナ挿入孔102bからガス化炉100内に撮影部10を挿入する際には、撮影部10はガス化炉100の内壁面の近傍に挿入される。そのため、撮影部10の撮影角度によって、10cm程度の近接撮影となる場合や、2m程度の遠距離撮影となる場合があり、特に近接撮影において白飛びが生じやすくなる。撮影部10の左右方向の両側にそれぞれ間接照明18を設け、間接照明18を常時点灯させた状態で撮影を行うことで、撮影時の白飛びを抑制できる。
【0032】
間接照明18としては、全方向を満遍なく照らすタイプの照明が好ましい。これにより、撮影部10の撮影角度がどの角度に調節されても、撮影部10の撮影方向が間接照明18によって充分に照らされ、白飛びを抑制できる。
【0033】
前記したように、ガス化炉100内を観測する観測装置1においては、上段バーナ挿入孔102bを通じて挿入された撮影部10がガス化炉100の内壁面に近い。そのため、挿入された撮影部10を回動部22によって左右方向に回動させた際に、間接照明18がガス化炉100の内壁面に引っ掛からないように、間接照明18はコンパクトなものを選定することが好ましい。
【0034】
間接照明18の設置方向についても、ガス化炉100の内壁面に引っ掛からないように調節する。例えば間接照明18の長手方向が上下方向となるように設置することで、回動部22によって撮影部10が左右方向に回動されても間接照明18がガス化炉100の内壁面に引っ掛かりにくくなる。
【0035】
間接照明18としては、観測対象物内において撮影方向を充分に明るく照らすことができるものであればよく、例えば、LED照明を使用できる。
間接照明18の数は、特に限定されず、一対であってもよく、二対以上であってもよい。
【0036】
制御部16は、角度調節部14と電気的に接続され、角度調節部14による撮影部10の撮影角度の調節を制御する部分である。制御部16は、角度調節部14によって撮影部10の撮影角度を上下方向及び左右方向において変化させるタイミング、刻み角度をプログラムのとおりに制御できるものであればよい。
【0037】
制御部16は、例えば赤外リモコン機能を利用して撮影部10による撮影のタイミングも制御できることが好ましい。これにより、定点撮影の枚数や撮影角度の変更がプログラムの変更で容易に行える。
【0038】
水平器20は、挿入部12の後端部に設けられている。すなわち、挿入部12により撮影部10をバーナ挿入孔からガス化炉内に挿入した際に、挿入部12においてバーナ挿入孔から露出している部分に設けられている。これにより、撮影部10をガス化炉内に挿入した状態で水平器20を確認できる。
水平器20としては、特に限定されず、公知の水平器を使用できる。
【0039】
測定対象物内の定点観測においては、挿入部12の長さ方向を軸方向とした回転方向に撮影部10が回転して傾くことを抑制することが重要である。そのため、水平器20は、挿入部12の幅方向の水平方向に対する傾斜角度を調節できるように設置することが好ましい。
挿入部12の長さ方向の水平方向に対する傾斜角度を調節できる水平器をさらに設けてもよい。
【0040】
以上説明したように、本発明の観測対象物内の観測装置においては、挿入部に取り付けた撮影部を観測対象物の内部に挿入した状態で、角度調節部によって撮影角度を左右方向と上下方向のそれぞれにおいて調節できる。さらに、角度調節部よる撮影部の撮影角度の調節は、制御部によって制御できる。これにより、観測対象物内の撮影位置を高い精度で調節できるため、定点撮影が可能となる。そのため、ガス化炉の停止期間中に炉壁の損耗状態やスラグタップ閉塞状況を確認するために観測を行う際には、停止期間毎の定点撮影で得られた同一の撮影位置の撮影データを比較して状況を把握することができる。
また、本発明の観測対象物内の観測装置では、制御部の制御により、自動で撮影角度を順次変化させながら撮影を連続して行える。そのため、撮影の度に撮影部を出し入れする必要がなく、観測対象物の内部を簡便に満遍なく定点撮影できる。
【0041】
なお、本発明の観測対象物内の観測装置は、前記した観測装置1には限定されない。
例えば、本発明の観測対象物内の観測装置は、挿入部によって撮影部を観測対象物内に挿入した状態で、撮影部の左右方向を水平方向に一致させることができる治具を備える場合等であれば、水平器を備えない装置であってもよい。このような治具としては、例えば、バーナ挿入部のフランジを利用してボルトで固定する固定具を例示できる。
【0042】
本発明の観測対象物内の観測装置は、撮影部の左右方向の両側に間接照明をそれぞれ設ける代わりに、撮影部のレンズを囲うようにリングライトを備える装置であってもよい。
本発明の観測対象物内の観測装置は、ガス化炉の内部を観測するための装置には限定されず、挿入部を高炉、塔、槽、配管等に応じた形状に設計した、それらの内部を観測するための装置であってもよい。
【0043】
ガス化炉のバーナ挿入孔のように、観測対象物の内部にアクセス可能な部分が観測対象物に既に存在している場合には、その部分から撮影部を挿入できるように観測装置の挿入部を設計することが好ましい。なお、挿入部によって撮影部を観測対象物の内部まで挿入可能な部分を観測対象物に別途設け、その部分に対応するように挿入部を設計してもよい。
【0044】
[観測対象物内の観測方法]
本発明の観測対象物内の観測方法は、本発明の観測対象物内の観測装置を用いて観測対象物の内部を観測する方法である。本発明の観測対象物内の観測方法では、挿入部により観測装置の撮影部を観測対象物内に挿入し、角度調節部による撮影部の撮影角度の調節を制御部で制御しつつ観測対象物の内部を撮影する。
【0045】
以下、本発明の観測対象物内の観測方法の一例として、前記した観測装置1を用いる方法について説明する。
ガス化炉100の停止期間において、4つの下段バーナ挿入孔102a及び4つの上段バーナ挿入孔102bから上段バーナ及び下段バーナを引き抜く。これにより、下段バーナ挿入孔102a及び上段バーナ挿入孔102bを撮影部10の挿入に利用することが可能となる。
【0046】
ガス化炉100内に撮影部10を挿入する際には、
図5に示すように、観測装置1において、回動部22により撮影部10を仰角方向に90°回動させて上方に向くように倒す。さらに撮影部10を回転させ、撮影部10の正面視での横方向と挿入部12の長さ方向とを一致させてコンパクト化する。
【0047】
本実施形態では、電源をONにしたときの初期状態が、
図5のように観測装置1における撮影部10が取り付けられた先端側の部分がコンパクト化された状態となるように、制御部16にプログラミングすることが好ましい。これにより、下段バーナ挿入孔102aや上段バーナ挿入孔102bを通じて撮影部10をガス化炉100内に容易に挿入できる。また、電源をOFFにしたときにも、撮影部10を取り付けた部分が
図5のようにコンパクト化された初期状態に戻るように、制御部16にプログラミングすることが好ましい。これにより、撮影中に予期せず観測装置1の電源がOFFになった場合でも、撮影部10が引っ掛かってガス化炉100から抜き出せなくなることを回避できる。
【0048】
このように撮影部10が取り付けられた先端側をコンパクト化した状態で、挿入部12を下段バーナ挿入孔102aや上段バーナ挿入孔102bに挿し込み、ガス化炉100の内部に撮影部10を挿入する。このとき、挿入部12に施したマーキングを利用して撮影部10の挿入位置を決め、水平器20を利用して撮影部10の左右方向を水平方向と一致させる。
【0049】
間接照明18を点灯させ、撮影角度及び撮影のタイミングを予めプログラミングしておいた制御部16による制御によって、撮影部10の撮影角度を上下方向及び左右方向においてそれぞれ調節しつつ、ガス化炉100内を順次、定点撮影する。定点撮影の枚数や撮影角度の変更は、制御部16のプログラムを変更することで容易に行える。
【0050】
撮影角度の上下方向及び左右方向の調節における刻み角度は、適宜設定できる。撮影角度の調節は、近接撮影となる間は刻み角度を-30~+30°の範囲で小さくし、遠距離撮影となる間は刻み角度を-30~-90°、+30~+90°の範囲で大きくすることが好ましい。これにより、ガス化炉100の内部を満遍なく撮影できる。
撮影部10により静止画を撮影する場合、撮影枚数は、ガス化炉100の内部を満遍なく撮影できる範囲で適宜設定すればよい。
【0051】
撮影が終了した後は、間接照明18を消灯させ、観測装置1における撮影部10が取り付けられた先端側の部分をコンパクト化された初期状態に戻してから撮影部10を引き出す。
【0052】
以上説明したように、本発明の観測対象物内の観測方法によれば、ガス化炉等の観測対象物の内部を満遍なく定点撮影することができる。そのため、ガス化炉の炉壁の損耗状態やスラグタップ閉塞状況等を、同一位置で定点撮影した過去の撮影データと比較しながら把握できる。また、本発明の観測方法によれば、観測対象物内を自動で簡便に観測できる。
なお、本発明の観測対象物内の観測方法は、前記した観測装置1を用いる方法には限定されず、本発明の他の態様の観測装置を用いる方法であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…観測装置、10…撮影部、12…挿入部、14…角度調節部、16…制御部、18…間接照明、20…水平器、22…回動部、24…取り付け座、24a…下板、24b…背板、24c…切欠き、100…ガス化炉、102a…下段バーナ挿入孔、102b…上段バーナ挿入孔、110…燃焼部。