(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 7/00 20060101AFI20220203BHJP
B60B 9/04 20060101ALI20220203BHJP
B60B 9/26 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B60C7/00 H
B60B9/04
B60B9/26
(21)【出願番号】P 2017239390
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 法行
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101210(JP,A)
【文献】特開2014-073758(JP,A)
【文献】特開2015-039986(JP,A)
【文献】特開2015-039987(JP,A)
【文献】特開2014-080164(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061405(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0173421(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C7/00
B60B9/00-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤにおいて、
前記支持構造体は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結し、タイヤ周方向に各々独立して設けられた複数の連結部とを備え、
前記複数の連結部は、前記内側環状部のタイヤ幅方向一方側から前記外側環状部のタイヤ幅方向他方側へ向かって延設される長尺板状の第1連結部と、前記内側環状部の前記タイヤ幅方向他方側から前記外側環状部の前記タイヤ幅方向一方側へ向かって延設される長尺板状の第2連結部とがタイヤ周方向に沿って配列されて構成され、
前記第1連結部と前記第2連結部は、板厚が板幅よりも小さく、板厚方向がタイヤ周方向を向いており、
前記第1連結部及び前記第2連結部のタイヤ幅方向の長さをS、タイヤ径方向の高さをHとしたとき、タイヤ周方向から見た前記第1連結部と前記第2連結部の交差部における前記第1連結部及び前記第2連結部の板幅の中心線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度Kが、下記の式(1)の関係を満た
し、
タイヤ周方向から見た前記第1連結部と前記第2連結部の少なくとも一方は、板幅の中心線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度が変化する第1屈曲部及び第2屈曲部を備え、
前記第1連結部又は前記第2連結部は、前記外側環状部から前記内側環状部へ向かって延び、前記第1屈曲部で前記内側環状部から離れる向きに屈曲して前記傾斜角度がα2変化した後に前記内側環状部へ向かって延び、前記第2屈曲部で前記内側環状部に近付く向きに屈曲して前記傾斜角度がα3変化した後に前記内側環状部へ向かって延びて前記内側環状部に連結され、
前記第1屈曲部における傾斜角度の角度変化α2の絶対値と前記第2屈曲部における傾斜角度の角度変化α3の絶対値の差は、30°以下であることを特徴とする非空気圧タイヤ。
30×(H/S)
0.7≦ K ≦ 75×(H/S)
0.7 (1)
【請求項2】
前記交差部における前記第1連結部と前記第2連結部の板幅の中心線同士の交点は、前記外
側環状部の内周面からタイヤ径方向内側へ向けて前記タイヤ径方向の高さHの30~70%の範囲に位置することを特徴とする請求項1に記載の非空気圧タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ構造部材として、車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤ(non-pneumatic tire)に関するものであり、好ましくは空気入りタイヤの代わりとして使用することができる非空気圧タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の非空気圧タイヤとしては、例えば例えばソリッドタイヤ、スプリングタイヤ、クッションタイヤ等が存在するが、空気入りタイヤの優れた性能を有していない。
【0003】
下記特許文献1には、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結し、タイヤ周方向に各々独立して設けられた複数の連結部とを備える非空気圧タイヤが記載されている。特許文献1では、複数の連結部が、内側環状部のタイヤ幅方向一方側から外側環状部のタイヤ幅方向他方側へ向かって延設される第1連結部と、内側環状部のタイヤ幅方向他方側から外側環状部のタイヤ幅方向一方側へ向かって延設される第2連結部とがタイヤ周方向に沿って配列されて構成されていることで、耐久性を向上させ、かつタイヤ転動時の接地圧分散を小さくしている。
【0004】
しかしながら、非空気圧タイヤの性能において、耐久性と乗り心地の両立は難しく、特許文献1の非空気圧タイヤであっても耐久性と乗り心地の両立が十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、耐久性と乗り心地を両立できる非空気圧タイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の非空気圧タイヤは、車両からの荷重を支持する支持構造体を備える非空気圧タイヤにおいて、
前記支持構造体は、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、前記内側環状部と前記外側環状部とを連結し、タイヤ周方向に各々独立して設けられた複数の連結部とを備え、
前記複数の連結部は、前記内側環状部のタイヤ幅方向一方側から前記外側環状部のタイヤ幅方向他方側へ向かって延設される長尺板状の第1連結部と、前記内側環状部の前記タイヤ幅方向他方側から前記外側環状部の前記タイヤ幅方向一方側へ向かって延設される長尺板状の第2連結部とがタイヤ周方向に沿って配列されて構成され、
前記第1連結部と前記第2連結部は、板厚が板幅よりも小さく、板厚方向がタイヤ周方向を向いており、
前記第1連結部及び前記第2連結部のタイヤ幅方向の長さをS、タイヤ径方向の高さをHとしたとき、タイヤ周方向から見た前記第1連結部と前記第2連結部の交差部における前記第1連結部及び前記第2連結部の板幅の中心線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度Kが、下記の式(1)の関係を満たすことを特徴とする非空気圧タイヤ。
30×(H/S)0.7≦ K ≦ 75×(H/S)0.7 (1)
【0008】
また、本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、前記交差部における前記第1連結部と前記第2連結部の板幅の中心線同士の交点は、前記外側側環状部の内周面からタイヤ径方向内側へ向けて前記タイヤ径方向の高さHの30~70%の範囲に位置することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、タイヤ周方向から見た前記第1連結部と前記第2連結部の少なくとも一方は、板幅の中心線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度が変化する屈曲部を備え、前記屈曲部における傾斜角度の角度変化は、45°以下であるようにしてもよい。
【0010】
また、本発明に係る非空気圧タイヤにおいて、タイヤ周方向から見た前記第1連結部と前記第2連結部の少なくとも一方は、板幅の中心線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度が変化する第1屈曲部及び第2屈曲部を備え、前記第1屈曲部における傾斜角度の角度変化と前記第2屈曲部における傾斜角度の角度変化の差は、30°以下であるようにしてもよい。
【0011】
本発明の非空気圧タイヤは、内側環状部と、その内側環状部の外側に同心円状に設けられた外側環状部と、内側環状部と外側環状部とを連結する複数の連結部とを備えている。複数の連結部は、複数の第1連結部と第2連結部とがタイヤ周方向に配列されて構成されている。第1連結部は、内側環状部のタイヤ幅方向一方側から外側環状部のタイヤ幅方向他方側へ向かって延設され、第2連結部は、内側環状部のタイヤ幅方向他方側から外側環状部のタイヤ幅方向一方側へ向かって延設されている。第1連結部と第2連結部は、板厚が板幅よりも小さい長尺板状をしており、その板厚方向がタイヤ周方向を向いている。
【0012】
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、第1連結部及び第2連結部のタイヤ幅方向の長さS、タイヤ径方向の高さHとで決定されるH/Sと、タイヤ周方向から見た第1連結部と第2連結部の交差部における第1連結部及び第2連結部の板幅の中心線のタイヤ幅方向に対する傾斜角度Kとを適切に調整することで、耐久性と乗り心地の両立が可能であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、H/SとKが式(1)の関係を満たすことにより、耐久性と乗り心地の両立が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4A】他の実施形態に係る非空気圧タイヤを示す断面図
【
図4B】他の実施形態に係る非空気圧タイヤを示す断面図
【
図4C】他の実施形態に係る非空気圧タイヤを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。初めに、本発明の非空気圧タイヤTの構成を説明する。
図1は、非空気圧タイヤTの一例を示す正面図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。
図3は、
図1の一部を拡大して示す図である。ここで、Oは軸芯を、hはタイヤ断面高さを、それぞれ示している。
【0015】
非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを備えるものである。本発明の非空気圧タイヤTは、このような支持構造体SSを備えるものであればよく、その支持構造体SSの外側(外周側)や内側(内周側)に、トレッドに相当する部材、補強層、車軸やリムとの適合用部材などを備えていてもよい。
【0016】
本実施形態の非空気圧タイヤTは、
図1の正面図に示すように、支持構造体SSが、内側環状部1と、その外側に同心円状に設けられた外側環状部2と、内側環状部1と外側環状部2とを連結し、タイヤ周方向CDに各々独立して設けられた複数の連結部3とを備えている。
【0017】
内側環状部1は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。また、内側環状部1の内周面には、車軸やリムとの装着のために、嵌合性を保持するための凹凸等を設けるのが好ましい。
【0018】
内側環状部1の厚みは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さhの2~7%が好ましく、3~6%がより好ましい。
【0019】
内側環状部1の内径は、非空気圧タイヤTを装着するリムや車軸の寸法などに併せて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、250~500mmが好ましく、330~440mmがより好ましい。
【0020】
内側環状部1のタイヤ幅方向の幅は、用途、車軸の長さ等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100~300mmが好ましく、130~250mmがより好ましい。
【0021】
内側環状部1の引張モジュラスは、連結部3に力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、装着性を図る観点から、5~180000MPaが好ましく、7~50000MPaがより好ましい。なお、本発明における引張モジュラスは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した値である。
【0022】
本発明における支持構造体SSは、弾性材料で成形されるが、支持構造体SSを製造する際に、一体成形が可能となる観点から、内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3は、補強構造を除いて基本的に同じ材質とすることが好ましい。
【0023】
本発明における弾性材料とは、JIS K7312に準じて引張試験を行い、10%伸び時の引張応力から算出した引張モジュラスが、100MPa以下のものを指す。本発明の弾性材料としては、十分な耐久性を得ながら、適度な剛性を付与する観点から、好ましくは引張モジュラスが5~100MPaであり、より好ましくは7~50MPaである。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0024】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等が例示される。架橋ゴム材料を構成するゴム材料としては、天然ゴムの他、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等の合成ゴムが例示される。これらのゴム材料は必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0025】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。
【0026】
上記の弾性材料のうち、成形・加工性やコストの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂が用いられる。なお、弾性材料としては、発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたもの使用可能である。
【0027】
弾性材料で一体成形された支持構造体SSは、内側環状部1、外側環状部2、及び連結部3が、補強繊維により補強されていることが好ましい。
【0028】
補強繊維としては、長繊維、短繊維、織布、不織布などの補強繊維が挙げられるが、長繊維を使用する形態として、タイヤ幅方向に配列される繊維とタイヤ周方向に配列される繊維とから構成されるネット状繊維集合体を使用するのが好ましい。
【0029】
補強繊維の種類としては、例えば、レーヨンコード、ナイロン-6,6等のポリアミドコード、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルコード、アラミドコード、ガラス繊維コード、カーボンファイバー、スチールコード等が挙げられる。
【0030】
本発明では、補強繊維を用いる補強の他、粒状フィラーによる補強や、金属製リング等による補強を行うことが可能である。粒状フィラーとしては、カーボンブラック、シリカ、アルミナ等のセラミックス、その他の無機フィラーなどが挙げられる。
【0031】
外側環状部2の形状は、ユニフォミティを向上させる観点から、厚みが一定の円筒形状であることが好ましい。外側環状部2の厚みは、連結部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、タイヤ断面高さhの2~7%が好ましく、2~5%がより好ましい。
【0032】
外側環状部2の内径は、その用途等応じて適宜決定される。ただし、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、420~750mmが好ましく、480~680mmがより好ましい。
【0033】
外側環状部2のタイヤ幅方向の幅は、用途等に応じて適宜決定されるが、一般の空気入りタイヤの代替を想定した場合、100~300mmが好ましく、130~250mmがより好ましい。
【0034】
外側環状部2の引張モジュラスは、
図1に示すように外側環状部2の外周に補強層7が設けられている場合には、内側環状部1と同程度に設定できる。このような補強層7を設けない場合には、連結部3からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、5~180000MPaが好ましく、7~50000MPaがより好ましい。
【0035】
外側環状部2の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。外側環状部2を補強繊維により補強することで、外側環状部2とベルト層などとの接着も十分となる。
【0036】
連結部3は、内側環状部1と外側環状部2とを連結するものであり、両者の間に適当な間隔を開けるなどして、タイヤ周方向CDに各々が独立するように複数設けられる。
【0037】
複数の連結部3は、第1連結部31と第2連結部32とがタイヤ周方向CDに沿って配列されて構成されている。この際、第1連結部31と第2連結部32は、タイヤ周方向CDに沿って交互に配列されていることが好ましい。これにより、タイヤ転動時の接地圧分散をより小さくできる。
【0038】
また、第1連結部31と第2連結部32との間のタイヤ周方向CDのピッチpは、ユニフォミティを向上させる観点から、一定とするのが好ましい。ピッチpは、0~10mmが好ましく、0~5mmがより好ましい。ピッチpが10mmよりも大きいと、接地圧が不均一となり、ノイズが増大する要因となり得る。
【0039】
第1連結部31は、内側環状部1のタイヤ幅方向一方側WD1から外側環状部2のタイヤ幅方向他方側WD2へ向かって延設されている。一方、第2連結部32は、内側環状部1のタイヤ幅方向他方側WD2から外側環状部2のタイヤ幅方向一方側WD1へ向かって延設されている。すなわち、隣り合う第1連結部31と第2連結部32は、タイヤ周方向CDから見ると、略X字状に配置されている。
【0040】
タイヤ周方向CDから見た第1連結部31と第2連結部32は、
図2に示すように、タイヤ赤道面Cに対して対称な形状であることが好ましい。そのため、以下では、主として第1連結部31について説明する。
【0041】
第1連結部31は、内側環状部1から外側環状部2へと延びる長尺板状をしている。第1連結部31は、板厚tが板幅wよりも小さく、板厚方向がタイヤ周方向CDを向いている。すなわち、第1連結部31は、タイヤ径方向RD及びタイヤ幅方向WDに延びる板状である。第1連結部31及び第2連結部32をこのような長尺板状とすることにより、仮に板厚tを薄くしても、板幅wを広く設定することで、第1連結部31及び第2連結部32は所望の剛性を得ることができるため、耐久性を向上できる。また、板厚tを薄くしつつ第1連結部31及び第2連結部32の数を増やすことで、タイヤ全体の剛性を維持しつつ、タイヤ周方向CDに隣り合う連結部同士の隙間を小さくすることができるため、タイヤ転動時の接地圧分散を小さくできる。
【0042】
第1連結部31のタイヤ幅方向WDの長さをS、タイヤ径方向RDの高さをHとする。本実施形態では、第1連結部31のタイヤ幅方向WDの長さSは、内側環状部1及び外側環状部2のタイヤ幅方向WDの幅と同じである。また、第1連結部31のタイヤ径方向RDの高さHは、外側環状部2の内周面の半径と内側環状部1の外周面の半径の差(外側環状部2の内径と内側環状部1の外径の差の1/2とも言える)と同じである。ここで、H/Sを非空気圧タイヤTの扁平率とする。
【0043】
タイヤ周方向CDから見た第1連結部31と第2連結部32は、内側環状部1から外側環状部2へ一定の幅wで直線状に延びている。第1連結部31と第2連結部32は、タイヤ周方向CDから見ると、延設方向の中央の位置で交差している。この交差部33における第1連結部31の板幅wの中心を通る中心線のタイヤ幅方向WDに対する傾斜角度Kは、下記の式(1)の関係を満たす。
30°×(H/S)0.7≦ K ≦ 75°×(H/S)0.7 (1)
扁平率H/Sと傾斜角度Kが式(1)の関係を満たすことにより、耐久性と乗り心地の両立が可能である。
【0044】
交差部33における第1連結部31の板幅wの中心線と第2連結部32の板幅の中心線との交点33aは、外側環状部2の内周面からタイヤ径方向内側へ向けてタイヤ径方向の高さHの30~70%の範囲に位置している。言い換えると、外側環状部2の内周面から交点33aまでのタイヤ径方向の高さdが、第1連結部31及び第2連結部32のタイヤ径方向RDの高さHの30~70%となっている。dがこの範囲であれば、耐久性と乗り心地の両立が可能である。
【0045】
板厚tは、内側環状部1および外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、8~30mmが好ましく、10~20mmがより好ましい。
【0046】
板幅wは、内側環状部1および外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、5~25mmが好ましく、10~20mmがより好ましい。また、板幅wは、耐久性を向上させつつ接地圧分散を小さくする観点から、板厚tの110%以上が好ましく、115%以上がより好ましい。
【0047】
第1連結部31は、内側環状部1との結合部付近及び外側環状部2との結合部付近において、内側環状部1又は外側環状部2へ向かって徐々に板幅を大きくした補強部34を有することが好ましい。補強部34は、第1連結部31と内側環状部1又は外側環状部2とのなす角が鋭角となる第1連結部31のタイヤ幅方向WD内側に設けられる。これにより、第1連結部31の耐久性をさらに向上させることができる。
【0048】
連結部3の数としては、車両からの荷重を十分支持しつつ、軽量化、動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、80~300個が好ましく、100~200個がより好ましい。
図1には、第1連結部31を50個、第2連結部32を50個設けた例を示す。
【0049】
連結部3の引張モジュラスは、内側環状部1および外側環状部2からの力を十分伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、5~180000MPaが好ましく、7~50000MPaがより好ましい。連結部3の引張モジュラスを高める場合、弾性材料を繊維等で補強した繊維補強材料が好ましい。
【0050】
本実施形態では、
図1に示すように、支持構造体SSの外側環状部2の外側に、その外側環状部2の曲げ変形を補強する補強層7が設けられている例を示す。また、本実施形態では、
図1に示すように、補強層7の更に外側にトレッド8が設けられている例を示す。補強層7、トレッド8としては、従来の空気入りタイヤのベルト層と同様のものを設けることが可能である。なお、トレッド8は、樹脂で形成してもよい。また、トレッドパターンとして、従来の空気入りタイヤと同様のパターンを設けることが可能である。
【0051】
本発明において、連結部3のタイヤ径方向外側端とトレッド8の間には、タイヤ幅方向の剛性を高める幅方向補強層をさらに配置することが好ましい。これにより、外側環状部2のタイヤ幅方向中央部での座屈を抑制して、連結部3の耐久性をさらに向上できる。幅方向補強層は、外側環状部2に埋設されるか、もしくは外側環状部2の外側に配置される。幅方向補強層としては、スチールコードやCFRP、GFRP等の繊維強化プラスチック製のコードをタイヤ幅方向に対して略平行に配列したもの、円筒状の金属製リングや高モジュラス樹脂製リングなどが例示される。
【0052】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、タイヤ周方向CDから見た第1連結部31と第2連結部32は、内側環状部1から外側環状部2へ直線状に延びているが、これに限定されない。
図4Aに示すように、タイヤ周方向CDから見た第1連結部31と第2連結部32の少なくとも一方は、板幅の中心線のタイヤ幅方向WDに対する傾斜角度が変化する屈曲部35を備えるようにしてもよい。屈曲部35におけるタイヤ幅方向WDに対する傾斜角度の角度変化α1は、45°以下であることが好ましく、35°以下であることが特に好ましい。角度変化α1が45°よりも大きいと、屈曲部35に応力が集中するため、耐久性と乗り心地の両立が困難となる。
【0053】
(2)また、
図4Bに示すように、タイヤ周方向CDから見た第1連結部31と第2連結部32の少なくとも一方は、板幅の中心線のタイヤ幅方向WDに対する傾斜角度が変化する第1屈曲部36及び第2屈曲部37を備えるようにしてもよい。第1屈曲部36における傾斜角度の角度変化α2及び第2屈曲部37における傾斜角度の角度変化α3は、45°以下であることが好ましく、35°以下であることが特に好ましい。また、第1屈曲部36における傾斜角度の角度変化α2と第2屈曲部37における傾斜角度の角度変化α3の差は、30°以下であることが好ましい。角度変化α2と角度変化α3の差が30°よりも大きいと、第1屈曲部36又は第2屈曲部37に応力が集中するため、耐久性と乗り心地の両立が困難となる。
【0054】
(3)また、タイヤ周方向CDから見た第1連結部31と第2連結部32の少なくとも一方は、3つ以上の屈曲部を備えるようにしてもよい。
図4Cに示す例では、第1連結部31と第2連結部32は、3つの屈曲部38~40を備えている。屈曲部38における傾斜角度の角度変化α4、屈曲部39における傾斜角度の角度変化α5、及び屈曲部40における傾斜角度の角度変化α6は、45°以下であることが好ましく、35°以下であることが特に好ましい。また、角度変化α4と角度変化α5と角度変化α6の差は、それぞれ30°以下であることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0056】
(1)耐久性
FMVSS109に準拠し、ドラム試験機により次のようにして測定を行った。試験速度は80km/hで一定とし、漸増する4ステップに分かれた荷重を負荷しながら、故障が発生するまでの走行時間を測定した。比較例1での走行時間を100としたときの指数で示し、この値が大きいほど耐久性が優れる。
【0057】
(2)乗り心地
2名乗車でテストコースにおける乗り心地について総合的に官能評価した。乗員が直接的に身体によって感じられる上下方向の突き上げの強さの程度であり、弱いほど良好と評価した。比較例1を100としたときの指数で示し、この値が大きいほど乗り心地が優れる。
【0058】
実施例1~6及び比較例1~6
図2、
図4A、
図4B、
図4Cに示す形態の非空気圧タイヤを実施例1~6及び比較例1~6とした。第1連結部31及び第2連結部32のタイヤ幅方向の長さS、タイヤ径方向の高さH、傾斜角度K、交点33aまでの高さd、角度変化α1~α6は表1及び表2に示す値とした。比較例1~6は、実施例1~6に対応する形態の非空気圧タイヤであるが、H/SとKが式(1)の関係を満たしていない。
【0059】
【0060】
【0061】
表1の結果のように、H/SとKが式(1)の関係を満たす実施例1~6は、耐久性と乗り心地を両立できた。
【符号の説明】
【0062】
1 内側環状部
2 外側環状部
3 連結部
31 第1連結部
32 第2連結部
33 交差部
33a 交点
SS 支持構造体
T 非空気圧タイヤ
CD タイヤ周方向
WD タイヤ幅方向
RD タイヤ径方向
WD1 タイヤ幅方向一方側
WD2 タイヤ幅方向他方側
t 板厚
w 板幅