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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-06
(45)【発行日】2022-01-21
(54)【発明の名称】ボトル缶
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20220114BHJP
   B65D 8/04 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
B65D1/02 210
B65D8/04 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017245161
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2018104094
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2016254019
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】飯村 友明
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-165539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0011702(US,A1)
【文献】特開2007-153376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 8/04
B21D 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶軸を中心とする有底筒状の缶本体の胴部から上端側に向かうに従い縮径する肩部と、この肩部からさらに上端側に向かって延びる首部と、この首部の上端側に設けられて上端に開口部を備えたキャップ取付部とを有する金属製のボトル缶であって、
上記肩部は、上記缶軸に沿った断面において、上記胴部の上端から上記缶本体の外周側に膨らむ凸曲線を描きつつ上端内周側に向かう凸曲線部と、上記首部の下端から上記缶本体の内周側に凹む凹曲線を描きつつ下端外周側に向かう凹曲線部とを備え、
上記凸曲線部の上端と上記凹曲線部の下端とは、上記缶本体の上端側に向かうに従い内周側に向かう直線部を介して接続されており、
上記缶軸に沿った断面において、上記開口部の内周縁に接して上記缶本体の内周側に向かうに従い下端側に延び、上記缶軸を越えて上記開口部の内周縁との接点とは反対側の上記首部の内周面に交差する延長線を想定し、
この延長線を、上記開口部の内周縁と接した状態を維持しつつ上記缶本体の下端側に回転させたとき、
上記肩部の内周面は、上記延長線と、常に1点で交差し、または上記直線部が重なり合うように形成され
上記直線部が上記延長線と1点で交差し、または重なり合ったとき、上記凸曲線部の内面は、上記缶軸に沿った断面において、上記延長線よりも外周側にはみ出すことがないことを特徴とするボトル缶。
【請求項2】
上記缶軸に沿った断面において、上記凹曲線部は凹円弧を描きつつ上記首部の下端から上記缶本体の下端外周側に向かっており、
この凹円弧の中心が、上記缶軸方向において上記開口部からの距離が30mm~50mmの範囲内に位置していることを特徴とする請求項1に記載のボトル缶。
【請求項3】
上記首部は上端側に向かうに従い漸次縮径する上記缶軸を中心とした円錐面状に形成されており、
上記缶軸に沿った断面において上記首部が上記缶軸に垂直な平面に対してなす傾斜角が70°~85°の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボトル缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部から上端側に向かうに従い縮径する肩部と、この肩部からさらに上端側に向かって延びる首部と、この首部の上端側に設けられて上端に開口部を備えたキャップ取付部とを有する金属製のボトル缶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなボトル缶として、例えば特許文献1には、例えば飲料缶として用いられるものとして、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属から成り、軸線に沿って延びる胴部を有して、この胴部の上端に開口部が設けられ、胴部の下端に底部が設けられた有底筒状をなす缶本体を備えたものが記載されている。胴部の開口部側部分には絞り加工が施されて一段小径とされており、軸線方向上方側に向かうに従い漸次縮径する肩部と、この肩部の上端に連なり、軸線に沿って延びる円筒状の首部とが設けられるとともに、この首部の上方部分には、ネジ部を有する口金部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-102042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなボトル缶では通常、肩部の胴部に連なる部分が、軸線(缶軸)に沿った断面において缶本体の外周側に膨らむ凸曲線を描く凸曲線部とされるとともに、肩部の首部に連なる部分は、同じく缶軸に沿った断面において缶本体の内周側に凹む凹曲線を描く凹曲線部とされて、肩部が缶本体の上端側に向かうに従い漸次縮径するように成形されている(例えば、特許文献1の図1参照。)。
【0005】
ところが、そのようなボトル缶において、口金部に口をつけて飲料等の液体の内容物を直接飲もうとしたり、コップやグラスに注ぎ出してから飲もうとしたりして、缶本体を傾けていったとき、上記凸曲線部の膨らみが大きすぎると、内容物の液面が凸曲線部と凹曲線部との境界に達した状態で、凸曲面部の内面が口金部とは反対側の液面の延長面よりも上側に位置してしまい、これら凸曲線部の内面と液面の延長面との間に間隔があいて閉ざされた空間が形成されることがある。
【0006】
そして、この空間には、液面が上記境界に達するまでは内容物が満たされて残されることになるが、液面が境界から離れた瞬間に上記空間が開放されて空気が取り込まれ、これにより該空間に満たされていた内容物が吹き出して直接飲むときの飲み心地を損ねたり、コップやグラスからこぼれたりすることがある。この点、ガラス瓶のような透明な容器であると、容器内の凸曲線部に空気が溜まっていることが分かるため、内容物が吹き出すであろうことも事前に察知するのは容易であるが、金属製のボトル缶のように内部が見えない容器では、飲料の吹き出しを予測することは困難である。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたもので、内部が見えない金属製のボトル缶において、内容物が吹き出すのを防ぐことが可能なボトル缶を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、缶軸を中心とする有底筒状の缶本体の胴部から上端側に向かうに従い縮径する肩部と、この肩部からさらに上端側に向かって延びる首部と、この首部の上端側に設けられて上端に開口部を備えたキャップ取付部とを有する金属製のボトル缶であって、上記肩部は、上記缶軸に沿った断面において、上記胴部の上端から上記缶本体の外周側に膨らむ凸曲線を描きつつ上端内周側に向かう凸曲線部と、上記首部の下端から上記缶本体の内周側に凹む凹曲線を描きつつ下端外周側に向かう凹曲線部とを備え、上記凸曲線部の上端と上記凹曲線部の下端とは、上記缶本体の上端側に向かうに従い内周側に向かう直線部を介して接続されており、上記缶軸に沿った断面において、上記開口部の内周縁に接して上記缶本体の内周側に向かうに従い下端側に延び、上記缶軸を越えて上記開口部の内周縁との接点とは反対側の上記首部の内周面に交差する延長線を想定し、この延長線を、上記開口部の内周縁と接した状態を維持しつつ上記缶本体の下端側に回転させたとき、上記肩部の内周面は、上記延長線と、常に1点で交差し、または上記直線部が重なり合うように形成され、上記直線部が上記延長線と1点で交差し、または重なり合ったとき、上記凸曲線部の内面は、上記缶軸に沿った断面において、上記延長線よりも外周側にはみ出すことがないことを特徴とする。
【0009】
このようなボトル缶に充填された飲料等の液体の内容物は、缶本体を傾けることによって傾けられた開口部内周縁の下端から注ぎ出されると、内容物の液面がこの開口部内周縁の下端から水平に延び、缶軸に沿った鉛直方向に延びる断面においては、液面は開口部の内周縁と接する水平線を維持しつつ上記開口部内周縁の下端から缶軸を越えて反対側に延びて、内容物が十分に充填されているときは、この反対側の首部の内周面に交差することになる。すなわち、この水平線は上記延長線と重なり合う。
【0010】
ここで、上記構成のボトル缶では、上記肩部の内周面は、上記延長線と、常に1点で交差し、または上記直線部が重なり合うように形成されているので、さらに缶本体を傾け続けて、この延長線(上記水平線)が缶本体に対して相対的に開口部の内周縁と接した状態を維持しつつ缶本体の下端側に回転することにより、首部の内周面から肩部の内周面に達し、さらに胴部の内周面に達するまでの間に、缶本体の内周面と液面との間に内容物が満たされる閉ざされた空間が形成されることがない。従って、金属製のボトル缶のように内部が見えない容器であっても、開口部に直接口をつけて飲むときの飲み心地が損なわれることがなく、またコップやグラスに飲料を注ぐときでも注ぎ出しがスムーズになる。
【0011】
すなわち、肩部の凹曲線部と凸曲線部とが互いに接して直接接続されている場合には、その接線が上記延長線と重なり合うようにすることにより、この延長線は缶本体の下端側に向かうに従い、凹曲線部に1点で交差しつつ下端側に向かい、凹曲線部と凸曲線部との接点においてこの接点における接線と重なって交差した後、凸曲線部と交差する。また、凹曲線部と凸曲線部とが曲折点を介して折れ曲がって直接接続されている場合でも、この曲折点における凹曲線部の缶本体上端側への接線と、曲折点における凸曲線部の缶本体上端への接線との間を通って上記曲折点に交差するようにすることにより、この延長線を凹曲線部と1点で交差した後、曲折点で首部の内周面と1点で交差し、さらに凸曲線部と1点で交差して延びるようにすることができる。
【0012】
さらに、凹曲線部と凸曲線部が直線部を介して接続されている場合に、この直線部が凹曲線部と凸曲線部に接するように形成されているときには、直線部を上記延長線と重なり合うようにすることにより、この延長線は凹曲線部と1点で交差するように延びた後、直線部と重なり合い、さらに凸曲線部と1点で交差して延びるようにすることができ、首部の内周面と液面との間に内容物が満たされる閉ざされた空間が形成されるのを防ぐことができる。また、こうして直線部が凹曲線部と凸曲線部に接するように形成されている場合や、直線部が凹曲線部および凸曲線部と曲折点を介して折れ曲がって接続されている場合でも、直線部と凹曲線部の曲折点を通る延長線と、直線部と凸曲線部の曲折点を通る延長線との間を、直線部に交差する延長線が延びるようにすることにより、やはり首部の内周面に延長線が常に1点で交差して延びるようにすることができる。
【0013】
ここで、上記缶軸に沿った断面において、上記凹曲線部が凹円弧を描きつつ上記首部の下端から上記缶本体の下端外周側に向かっている場合には、この凹円弧の中心は、上記缶軸方向において上記開口部からの距離が30mm~50mmの範囲内に位置していることが望ましい。このようなボトル缶に充填された飲料を直接開口部から飲む場合は、肩部の凹曲線部に指をかけて缶本体を把持することが多いが、上記中心の位置が開口部から30mmよりも短いと指をかけ難く、また首部が短くなってデザイン性が損なわれる。一方、上記中心の位置が開口部から50mmよりも長いと缶本体の容量が少なくなるとともに、肩部がいわゆるなで肩状となってやはりデザイン性が損なわれる。
【0014】
また、上記首部は上端側に向かうに従い漸次縮径する上記缶軸を中心とした円錐面状に形成されるのが望ましく、首部上端の外径が同じであれば容量を多く確保することができる。なお、この場合には、上記缶軸に沿った断面において上記首部が上記缶軸に垂直な平面に対してなす傾斜角は70°~85°の範囲内とされるのが望ましく、85°よりも大きいと上述のように容量を確保することができず、また70°よりも小さいと肩部上端の外径が同じなら首部が短くなって肩部に指をかけ難くなるとともにデザイン性が損なわれる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、缶本体を傾けたときに飲料等の液体の内容物の液面と肩部の凸曲線部の内面との間に閉ざされた空間が形成されるのを防いで、このような空間に残された内容物が、開口部に直接口をつけて飲料を飲むときやコップやグラスに飲料を注ぐときに吹き出すのを防ぐことができ、良好な飲み心地を確保するとともに、注ぎ出しをスムーズにして飲料がこぼれるような事態を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態を示す側面図である。
図2図1に示す実施形態の平面図である。
図3図1に示す実施形態の底面図である。
図4図1に示す実施形態の缶軸に沿った断面図である。
図5図4における缶本体の上端部の拡大断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態を示す側面図である。
図7図6におけるA部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1ないし図5は、本発明の第1の一実施形態を示すものである。本実施形態のボトル缶は、その缶本体1が図1および図4に示すように、底部2と、この底部2と一体に形成されて底部2の外周縁から上端側(図1および図4図5において上側)に延びる外周部3とを備えた缶軸Cを中心とする概略多段の有底円筒状をなしている。外周部3の外径は例えば52mm~68mmの範囲とされ、底部2の下端から缶本体1の上端までの缶高さは例えば100mm~170mmの範囲とされる。
【0018】
底部2には、缶軸C方向の内側(缶本体1の上端側)に凹む断面略円弧状のドーム部2aが中央に形成されるとともに、このドーム部2aの外周には缶軸C方向の外側(缶本体1の下端側)に突出する環状凸部2bが缶軸C回りの周方向に連続して形成されている。また、外周部3には底部2から缶本体1の上端側の開口部4に向けて順に、缶軸Cを中心とした円筒状の胴部5と、上端側に向かうに従い漸次縮径する肩部6と、この肩部6からさらに上端側に向かうに従い漸次縮径する円錐面状の首部7と、本実施形態では首部7の上端から外周側に張り出す膨出部8aおよび雄ネジ部8b、カール部8cを備えたキャップ取付部8とが形成されている。
【0019】
このようなボトル缶を製造するには、まずカッピングプレス機によるカッピングプレス工程においてアルミニウムまたはアルミニウム合金等の金属板を円板状に打ち抜いて絞り加工を施すことにより深さの浅いカップ状素材を製造する。次いで、このカップ状素材にDIプレス機によるDIプレス工程において再絞りおよびしごき加工を施して缶軸C方向に延伸することにより、底部2に上記ドーム部2aと環状凸部2bが形成された有底円筒体(DI缶)を成形する。
【0020】
カッピングプレス工程においてカップ状素材に成形される金属板は、本実施形態では元板厚が0.285mm~0.500mmのJIS H 4000におけるA3004またはA3104のアルミニウム合金板である。また、このカップ状素材から成形される有底円筒体には、外周部に上記缶軸Cを中心とした円筒部が形成され、この円筒部の外径は缶本体1の胴部5の外径と略等しい一定外径である。
【0021】
このように成形された有底円筒体は、第1の洗浄工程において洗浄、乾燥され、次いで塗装工程において内外面に塗装が施されて焼き付けられる。そして、塗装が施された有底円筒体は、ボトルネッカーによるボトルネック成形工程において、円筒部の上端側部分の下端側が金型によって縮径されて上記肩部6と首部7が成形され、次いで首部7の上端側が拡径工具によって拡径されて上記膨出部8aが形成されるとともに、この膨出部8aよりもさらに上端側にねじ切り加工が施されて上記雄ネジ部8bが形成された後、雄ネジ部8bよりも上端側が外周側に折り返されてカールされてからスロットル加工によって潰されてカール部8cが形成されてキャップ取付部8が成形され、図1ないし図5に示したようなボトル缶の缶本体1に成形される。
【0022】
こうして成形された缶本体1は、第2の洗浄工程によって洗浄、乾燥された後に、検査工程においてピンホールの有無や外面の異物付着、傷、汚れ、印刷不良等が検査されて飲料工場等に搬送され、飲料等の内容物が充填された後に、開口部4を覆ってキャップ取付部8のカール部8cから雄ネジ部8bおよび膨出部8aにかけて図示されないキャップが取り付けられて封止され、出荷される。なお、缶本体1の上記各工程の間には、有底円筒体の上端縁を切断するトリミングや、必要に応じて底部の環状凸部2bの断面形状を再成形するボトムリフォームが行われる。
【0023】
ここで、上記肩部6は、缶軸Cに沿った断面において図4および図5に示すように、本実施形態では、胴部5の上端において該胴部5に接し、缶本体1の外周側に膨らむ凸曲線を描きつつ胴部5から上端側に向かって延びる凸曲線部6aと、この凸曲線部6aの上端に接して直線状に缶本体1の上端側に向かうに従い内周側に向かって延びる直線部6bと、この直線部6bの上端に接して缶本体1の内周側に凹む凹曲線を描きつつ上端側に向かうに従い内周側に向かって延びる凹曲線部6cとにより形成されている。
【0024】
そして、缶軸Cに沿った断面において、開口部4の内周縁に接して缶本体1の内周側に向かうに従い下端側に延び、缶軸Cを越えて開口部4の内周縁との接点Lとは反対側の首部7の内周面に交差する延長線Mを想定し、この延長線Mを、開口部4の内周縁と接した状態を維持しつつ缶本体1の下端側に回転させたとき、肩部6の内周面は、上記延長線Mと、常に1点で交差し、または上記直線部6bが重なり合うように形成されている。ここで、本実施形態おいては、図5に示すように、上記直線部6bが延長線Mと重なり合うように形成されている。従って、肩部6の凸曲線部6aの内面は、缶軸Cに沿った断面において、上記延長線Mよりも外周側にはみ出すことはなく、すなわち凸曲線部6aの内面が開口部4内周縁を通り缶軸Cを越えて肩部6の内面に接する直線よりも外周側にはみ出すことはない。
【0025】
なお、本実施形態では、缶軸Cに沿った断面において、上記凹曲線部6cは凹円弧を描きつつ上端側に向かっており、この凹円弧の中心O1は缶軸C方向において開口部4からの距離N1が30mm~50mmの範囲内とされており、さらにこの凹円弧の半径R1は10mm~30mmの範囲とされている。また、肩部6の凸曲線部6aも凸円弧を描いていて、この凸円弧の中心O2は缶軸C方向において開口部4からの距離N2が55mm~75mmの範囲内とされており、さらにこの凸円弧の半径R2は10mm~30mmの範囲とされている。
【0026】
さらに、首部7は上端側に向かうに従い漸次縮径する円錐面状に形成されており、この首部7が同じく缶軸Cに沿った断面において缶軸Cに垂直な平面Pに対してなす傾斜角θ1は70°~85°の範囲内とされている。さらにまた、肩部6の直線部6bが缶軸Cに沿った断面において缶軸Cに垂直な平面Pに対してなす傾斜角θ2は45°~70°の範囲内とされている。また、開口部4の内径(直径)Dは、例えば20mm~40mmの範囲とされる。
【0027】
このような本実施形態のボトル缶において、缶本体1に充填された飲料等の液体の内容物は、開口部4に口を付けて直接飲んだり、コップやグラスに注いで飲んだりする際に缶本体1を傾け始めると、缶軸Cに沿った断面においては、その液面が開口部4の傾いた内周縁の下端から水平線をなして延び、この水平線は缶軸Cを越えて例えば首部7の内周面と交差し、さらに缶本体1を傾けると肩部6の凹曲線部6cの内面の上端に達する。すなわち、この水平線は上記延長線Mと重なり合う。そして、続けて缶本体1を傾けると、延長線M(水平線)と肩部6の凹曲線部6c内面との交点は、凹曲線部6cに沿って移動して、この凹曲線部6cの下端、すなわち凹曲線部6cと直線部6bとの接点に達する。
【0028】
ここで、本実施形態では、上述のように延長線M(水平線)は凹曲線部6cの下端に達したところで直線部6bと重なり合い、同時に直線部6bの下端、すなわち凸曲線部6aの上端における凸曲線部6aと直線部6bとの接点に達する。従って、凸曲線部6aが直線部6bと接していて、延長線Mよりも外周側にはみ出すことがないため、上記水平線が凸曲線部6aと直線部6bと重なり合ったところで、凸曲線部6aは上記水平線の缶本体1下端側への延長線である上記延長線Mよりも下方に位置することになる。
【0029】
このため、この凸曲線部6aの内面と液面の開口部4とは反対側への延長面との間に内容物が残されて満たされた空間が形成されることもないので、そのまま缶本体1を傾け続けても、内容物が吹き出すことはない。従って、上記構成のボトル缶によれば、アルミニウム合金等の金属製のボトル缶のように内部が見えない容器であっても、飲料等の内容物を開口部4に直接口をつけて飲むときの飲み心地が損なわれるようなことはなく、またコップやグラスに注ぐときの注ぎ出しをスムーズにして内容物がこぼれるような事態を防止することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、肩部6の凸曲線部6aと凹曲線部6cとの間に、これら凸曲線部6aの上端と凹曲線部6cの下端において凸曲線部6aと凹曲線部6cとに接する直線部6bが設けられているが、本発明の参考例では、凸曲線部6aと凹曲線部6cとが、これら凸曲線部6aの上端と凹曲線部6cの下端で互いに直接接するようにして接続されていてもよい。この場合には、これら凸曲線部6aの上端と凹曲線部6cの下端における凸曲線部6aと凹曲線部6cとの接線において上記延長線Mが交差するように延びていればよく、すなわち肩部6の内周面は、上記延長線Mと常に1点で交差することになる。
【0031】
また、本実施形態では、上記缶軸Cに沿った断面において、凹曲線部6cが凹円弧を描きつつ上端側に向かっており、この凹円弧の中心O1が、缶軸C方向において上記開口部4からの距離N1が30mm~50mmの範囲内とされているので、缶本体1の容量を確保しつつ、缶本体1を把持するときの把持性や缶本体1のデザイン性を向上させることができる。すなわち、凹曲線部6cの上記中心O1の位置が開口部4から30mmよりも短いと、凹曲線部6cに指をかけて缶本体1を把持しようとしたときに、指をかけ難くなって把持性が悪くなるとともに、首部7が短くなってデザイン性が損なわれる。逆に、上記中心O1の位置が開口部4から50mmよりも長いと、缶本体1の容量が少なくなるとともに、肩部6がなで肩状となってやはりデザイン性が損なわれる。
【0032】
さらに、本実施形態では、首部7が缶本体1の上端側に向かうに従い漸次縮径する円錐面状に形成されており、この首部7が缶軸Cに沿った断面において缶軸Cに垂直な平面Pに対してなす傾斜角θ1は70°~85°の範囲内とされているので、やはり缶本体1の容量を確保しつつ、缶本体1の把持性やデザイン性の向上を図ることができる。すなわち、傾斜角θ1が85°よりも大きいと、缶本体1の容量を十分に確保することができず、また傾斜角θ1が70°よりも小さいと、肩部6の上端(凹曲線部6cの上端)の外径が同じなら首部7が短くなって肩部6に指をかけ難くなるとともに缶本体1が寸詰まりとなってデザイン性が損なわれる。
【0033】
次に、図6および図7は、本発明の第2の実施形態を示すものであり、第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配してある。上記第1の実施形態では、肩部6の内周面において直線部6bが延長線Mと重なり合っていたのに対し、この第2の実施形態では、直線部6bも延長線Mと常に1点で交差していることを特徴とする。すなわち、直線部6bは、凸曲線部6aおよび凹曲線部6cとその接線として接してはおらず、これら凸曲線部6aの上端における接線および凹曲線部6cの下端における接線と角度をもって曲折している。
【0034】
ここで、缶軸Cに沿った断面において、上記開口部4の内周縁に接点Lで接して缶本体1の内周側に向かうに従い下端側に延び、缶軸Cを越えて開口部4の内周縁との接点Lとは反対側の缶本体1の内周面に凹曲線部6cと直線部6bとの曲折点Q1で交差する延長線M1は、図7に示すように凸曲線部6aと直線部6bとの曲折点Q2で交差する延長線M2よりも缶本体1の上端側を通るように延びており、直線部6bに交差する延長線M(図示略)は、これらの延長線M1、M2の間を通るように延びる。
【0035】
従って、本実施形態では、延長線M、M1、M2は、肩部6の内周面と常に1点で交差するように延び、肩部6の内周面が延長線M、M1、M2よりも外周側にはみ出すことがないので、やはり凸曲線部6aの内面と液面の開口部4とは反対側への延長面との間に内容物が残されて満たされた空間が形成されることもなく、缶本体1を傾け続けても内容物が吹き出すことはない。
【0036】
なお、この第2の実施形態の参考例のように凸曲線部6aと凹曲線部6cとが直線部6bを介さずに、曲折点を介して折れ曲がって直接接続されているような場合でも、延長線Mを、この曲折点における凹曲線部6cの下端における缶本体1下端側への接線と、この曲折点における凸曲線部6aの上端における缶本体1上端への接線との間を通って該曲折点に交差するようにすることにより、この延長線Mを凹曲線部6cと1点で交差した後、曲折点でも1点で交差して、さらに凸曲線部6aとも1点で交差して延びるようにすることができ、すなわち肩部6の内周面と延長面Mとを常に1点で交差するようにできる。
【符号の説明】
【0037】
1 缶本体
2 底部
3 外周部
4 開口部
5 胴部
6 肩部
6a 凸曲線部
6b 直線部
6c 凹曲線部
7 首部
8 キャップ取付部
C 缶軸
L 開口部4の内周縁への延長線M、M1、M2の接点
M、M1、M2 缶軸Cに沿った断面において、開口部4の内周縁に接して缶本体1の内周側に向かうに従い下端側に延び、缶軸Cを越えて開口部4の内周縁との接点Lとは反対側の肩部6の内周面に交差する延長線
O1 凹曲線部6cがなす円弧の中心
O2 凸曲線部6aがなす円弧の中心
N1 開口部4から中心O1までの缶軸C方向の距離
N2 開口部4から中心O2までの缶軸C方向の距離
θ1 首部7が缶軸Cに沿った断面において缶軸Cに垂直な平面Pに対してなす傾斜角
θ2 直線部6bが缶軸Cに沿った断面において缶軸Cに垂直な平面Pに対してなす傾斜角
D 開口部4の内径(直径)
Q1 凹曲線部6cと直線部6bとの曲折点
Q2 凸曲線部6aと直線部6bとの曲折点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7